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レインズ(REINS)とは|指定流通機構の仕組み

不動産の基礎知識 読了 約28分

宅建業法の条文に「レインズ」という語はありません。あるのは指定流通機構です。50条の2の5以下が定める指定の要件、業務の範囲、機構にかかる監督を条文から整理します。

目次

    本記事の役割 — この記事は指定流通機構という組織そのものを扱います。誰が指定し、何をする組織で、どんな監督を受けるのか。宅建業者の側が負う登録義務や報告義務(34条の2第5項以下)は媒介契約書の記載事項不動産の売却方法が条文単位で扱っているので、日数や頻度を確認したい場合はそちらへ進んでください。媒介契約の3類型そのものは媒介契約の3類型にあります。

    レインズという言葉は、不動産業界では毎日使われます。ところが、宅地建物取引業法の条文をどれだけ探しても「レインズ」という語は出てきません。

    条文にあるのは「指定流通機構」です。34条の2第5項が「国土交通大臣が指定する者(以下「指定流通機構」という。)」と定義し、50条の2の5から50条の15までがこの機構について定めています。試験で問われるのは当然こちらの名前です。

    この通称と法令用語のずれが、この分野を分かりにくくしています。実務の言葉で覚えた知識と、条文の言葉で出題される問題とが、頭の中でつながらないからです。しかも両者は指しているものが微妙に違います。指定流通機構は組織、レインズはその組織が運営しているシステム。主体と道具の関係です。

    この記事は、この区別を出発点に、機構の側から制度を見ていきます。宅建業者に登録義務があることは多くの教材が扱いますが、その情報を受け取る側の機構がどういう法人で、何を義務づけられ、誰に監督されているのかは、あまり書かれていません。ここを条文で押さえておくと、業者側の義務の意味も違って見えてきます。

    「レインズ」は法律の言葉ではない

    条文が使うのは「指定流通機構」

    出発点を確認します。34条の2第5項は、専任媒介契約を締結した宅建業者に対し、契約の相手方を探索するため、省令で定める期間内に、その物件の所在・規模・形質・売買すべき価額その他省令で定める事項を「国土交通大臣が指定する者(以下「指定流通機構」という。)」に登録しなければならないと定めています。

    定義がここで置かれている点に注意してください。指定流通機構という語は、機構について定める50条の2の5以下ではなく、業者の義務を定める34条の2第5項で初めて登場します。そして50条の2の5は「第三十四条の二第五項の規定による指定(以下この節において「指定」という。)は……」と、逆に34条の2を引き返す形で書かれています。

    条文の配置としてはやや変則的ですが、意味は明快です。この制度は、業者に登録義務を課すことが先にあり、その受け皿として機構を用意したという順序で組み立てられています。機構が先にあって業者に登録させているのではありません。

    通達にはレインズの定義がある

    では「レインズ」という語はどこにも存在しないのかというと、そうではありません。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」には定義があります。

    第34条の2関係1(4)が、依頼者へ周知すべき事項を挙げる中で「レインズ(指定流通機構が運営する宅地建物取引業者間の物件情報交換システムをいう。以下同じ。)」と書いています。同じ箇所で、機構が発行する書面を「登録済証(以下「登録証明書」という。)」とも定義しています。

    つまり階層はこうなっています。法律・政令・省令のレベルには「指定流通機構」しかなく、通達のレベルで初めて「レインズ」が定義される。この階層の違いは、そのまま出題可能性の違いになります。宅建試験は法令から出題されるので、選択肢に現れるのは指定流通機構のほうです。「宅地建物取引業法は、専任媒介契約を締結した業者にレインズへの登録を義務づけている」という記述は、内容としては正しくても、条文の用語としては不正確だということになります。

    REINSは何の略か

    レインズは Real Estate Information Network System の頭文字から名づけられたもので、「不動産流通標準情報システム」の英語訳とされています。運営主体である機構の公式サイトがそう説明しています。

    システムの名前であってレインズという法人があるわけではない、という点をここでも確認しておいてください。登録するのは指定流通機構に対してであり、レインズという相手に対してではありません。条文が「指定流通機構に登録しなければならない」と書いているのは、この関係を反映しています。

    機構とシステムを取り違えない

    主体と道具を分けると、他の条文も読みやすくなります。

    50条の6が「指定流通機構は……登録を証する書面を発行しなければならない」と定めるのは、機構という法人に課された義務です。システムが自動的に発行するから機構に義務がない、という話にはなりません。50条の9が「指定流通機構の役員若しくは職員又はこれらの職にあつた者は……」と定めるのも、システムではなくそこで働く人に向けられた規律です。

    宅建業法という科目全体での位置づけは宅建業法の全体像にまとめています。

    誰が、どういう法人を指定するのか

    指定するのは国土交通大臣

    50条の2の5第1項は、34条の2第5項の指定は、次の要件を備える者であって、50条の3第1項各号に掲げる業務を適正かつ確実に行うことができると認められるものにつき、省令で定めるところにより、その者の同意を得て行わなければならないと定めています。

    「その者の同意を得て」という文言が入っている点が特徴的です。指定は一方的な処分ではなく、相手の同意を前提とするという建て付けです。公益的な業務を担わせる以上、引き受ける意思のない法人を無理に指定することはできません。

    三つの要件

    要件は三つです。

    第一に、宅地及び建物の取引の適正の確保及び流通の円滑化を目的とする一般社団法人または一般財団法人であること(1号)。株式会社は指定を受けられません。営利法人が物件情報を独占すれば、後で見る差別的取扱いの禁止(50条の4)が形だけのものになりかねないからです。

    第二に、50条の14第1項により指定を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者でないこと(2号)。取消しから5年という期間は、宅建業者の免許の欠格事由と同じ長さです。

    第三に、役員のうちに一定の者がないこと(3号)。イが5条1項1号(破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者)、5号(拘禁刑以上の刑に処せられ5年を経過しない者)、6号(宅建業法違反等による罰金刑から5年を経過しない者)に該当する者。ロが、指定を取り消された機構の役員だった者で取消しから5年を経過しない者。ハが、心身の故障により指定流通機構の業務を適正に行うことができない者として国土交通省令で定めるものです。

    3号イが宅建業者の免許の欠格事由を直接引用している点は覚えておく価値があります。機構の役員に求められる資格は、業者の免許基準と地続きに設計されています。ハの受け皿は施行規則19条の2の8で、「精神の機能の障害により指定流通機構の業務を適正に行うに当たつて必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者」と定められています。免許の欠格事由(施行規則3条の2)と同じ書き方です。欠格事由の全体像は欠格事由の一覧、免許制度は宅建業の免許制度にあります。

    公示と変更の届出

    50条の2の5第2項は、国土交通大臣は指定をしたときは、機構の名称および主たる事務所の所在地、指定をした日その他省令で定める事項を公示しなければならないと定めています。

    3項は、機構がその名称または主たる事務所の所在地を変更しようとするときは、変更しようとする日の2週間前までに国土交通大臣に届け出なければならないとし、4項が、届出があったときは大臣がその旨を公示しなければならないとしています。

    事後の届出ではなく、事前の届出である点に注意してください。しかも「2週間前まで」と期限が切られています。宅建業者の変更の届出が事後30日以内であるのと向きが逆です。業者側の届出については宅建業者名簿と変更の届出で扱っています。

    なぜ全国に四つなのか

    レインズは全国に四つある、とよく説明されます。この数字の根拠も省令にあります。

    施行規則19条の2の7は、50条の2の5第1項の規定による指定は、宅地建物の流通の実情、相当数の登録の見込み、情報ネットワークの効率的な構築の見通し等を勘案して国土交通大臣が定める地域ごとに一を限り行うものとする、と定めています。

    「地域ごとに一を限り」。ここが要点です。同じ地域に二つの機構が並立することはありません。国土交通大臣が地域を区切り、その各地域に一つずつ指定する。結果として、全国は東日本・中部・近畿・西日本の四つに分かれています。運営主体の公式サイトによれば、たとえば東日本を管轄するのは公益財団法人東日本不動産流通機構(通称:東日本レインズ)で、北海道、東北6県、北関東3県、首都圏の1都3県、甲信越3県の合わせて17都道県を管轄しています。

    そして施行規則15条の12が、業者はどの機構に登録すべきかを定めています。当該宅地建物の所在地を含む地域を対象として登録業務を現に行っている指定流通機構に対して行う、というものです。業者が自分の事務所の所在地で選ぶのでも、好きな機構を選ぶのでもありません。物件の所在地で決まります。

    指定流通機構は何をする組織か

    50条の3が定める三つの業務

    50条の3第1項は、指定流通機構が行う業務を三つ挙げています。

    1号が、専任媒介契約その他の宅地建物取引業に係る契約の目的物である宅地建物の登録に関すること。

    2号が、1号の登録に係る宅地建物についての情報を、宅地建物取引業者に対し、定期的にまたは依頼に応じて提供すること。

    3号が、前二号のほか、2号の情報に関する統計の作成その他宅地及び建物の取引の適正の確保及び流通の円滑化を図るために必要な業務。

    1号が受け入れ、2号が提供、3号が加工と考えると整理できます。情報を集め、業者に配り、統計にする。この三段が機構の仕事です。

    「登録業務」という定義語

    条文を読むときに引っかかるのが「登録業務」という語です。これは50条の4の括弧書きで定義されています。「前条第一項第一号及び第二号に掲げる業務(以下この節において「登録業務」という。)」。

    つまり登録業務とは1号と2号のことで、3号の統計作成等は含まれません。この定義が効いてくる場面があります。50条の5の登録業務規程、50条の13の登録業務の休廃止、50条の14の登録業務の停止命令は、いずれも1号・2号だけを対象としています。他方、50条の9の目的外使用の禁止や50条の11の監督命令は「50条の3第1項に規定する業務」と書かれており、3号も含む全業務が対象です。

    条文が「登録業務」と書いているか「50条の3第1項に規定する業務」と書いているかで、射程が変わる。細かい部分ですが、条文を正確に読む練習としては良い材料です。

    一般消費者が使えない理由は条文にある

    レインズは宅建業者しか使えない、とよく説明されます。これは運営上のルールというより、条文から出てくる帰結です。

    50条の3第1項2号を読み直してください。情報を提供する相手として書かれているのは「宅地建物取引業者に対し」だけです。一般消費者に提供することは、機構の業務として定められていません。業務でない以上、機構がそれを行う根拠がない、という構造です。

    もっとも、情報がまったく外に出ないわけではありません。次に見る50条の7が、件数等の公表を機構の義務として定めています。また、機構は一般向けに REINS Market Information というサイトを設けており、専任媒介契約・専属専任媒介契約を締結した依頼者については、登録内容を確認するためのログインが用意されています。業者向けのシステムそのものは開かれていないが、統計と、自分が依頼した物件の登録内容は外から見えるという設計です。

    業務の一部委託

    50条の3第2項は、指定流通機構は省令で定めるところにより、その業務の一部を、国土交通大臣の承認を受けて、他の者に委託することができると定めています。

    「一部を」であって全部ではないこと、そして「承認を受けて」であり届出では足りないことが要点です。指定を受けた法人が業務を丸投げすることは認められていません。

    機構の側にかかる規律

    指定流通機構は、単に情報を扱う民間団体ではありません。国土交通大臣の監督下に置かれた特別な法人です。50条の4から50条の15までが、その監督の中身を定めています。ここは他の教材でほとんど触れられない部分なので、条文の順に見ていきます。

    差別的取扱いの禁止(50条の4)

    50条の4は、指定流通機構は登録業務の運営に関し、宅地建物を登録しようとする者その他指定流通機構を利用しようとする宅建業者に対して、不当に差別的な取扱いをしてはならないと定めています。

    地域ごとに一つしか指定されないということは、その地域の業者にとって選択肢がないということです。独占の裏返しとして中立性が要求されているという関係になります。1号の要件が営利法人を排除しているのも、同じ発想から来ています。

    登録業務規程の認可(50条の5)

    50条の5は、指定流通機構は登録業務に関する規程を定め、国土交通大臣の認可を受けなければならないとし、変更しようとするときも同様としています。

    規程に定めるべき事項は施行規則19条の5が挙げており、登録業務の実施方法(他の指定流通機構との協定の締結を含む)、登録業務に関する料金、登録業務に関する契約約款、登録業務の一部委託に関する事項、その他登録業務に関し必要な事項の五つです。

    ここで一点、実務上の誤解を正しておきます。「レインズは無料」と説明されることがありますが、省令は登録業務に関する料金を規程事項として明示しています。機構が業者から料金を徴収すること自体は制度上想定されているということです。

    無料と言われるのは、依頼者との関係の話です。解釈・運用の考え方(第34条の2関係)は、「指定流通機構への情報登録はもちろんのこと、通常の広告、物件の調査等のための費用は、宅地建物取引業者の負担となる」と述べています。つまり登録にかかる費用を依頼者に請求することはできないという意味であって、機構が誰からも料金を取らないという意味ではありません。報酬とは別に受け取れるものの範囲は報酬額の制限で扱っています。

    登録を証する書面の発行(50条の6)

    50条の6は、指定流通機構は34条の2第5項の規定による登録があったときは、省令で定めるところにより、当該登録をした宅地建物取引業者に対し、当該登録を証する書面を発行しなければならないと定めています。

    発行事項は施行規則19条の6が定めており、登録番号、登録年月日、34条の2第5項の規定により登録された事項の三つです。

    この条文で最も出題価値が高いのは主体の流れです。発行するのは機構、その相手は業者。そして34条の2第6項により、業者が遅滞なくこれを依頼者に引き渡す。機構→業者→依頼者という二段の受け渡しになっています。「指定流通機構は登録を証する書面を依頼者に交付しなければならない」という記述は、相手を一段飛ばしている点で誤りです。

    件数等の公表(50条の7)

    50条の7は、指定流通機構は、当該機構に登録された宅地建物について、省令で定めるところにより、毎月の売買または交換の契約に係る件数その他省令で定める事項を公表しなければならないと定めています。

    「公表しなければならない」という義務規定です。機構に集まった成約情報が、市況情報として外に出ていく法的な経路がここにあります。解釈・運用の考え方も、成約情報について「指定流通機構が公表している平均取引価格等の市況情報の基になるものであり、不動産流通の円滑化に極めて重要な役割を果たしている」と述べています。不動産の価格指標の全体像は土地の価格の4種類にまとめています。

    事業計画等の認可(50条の8)

    50条の8は、指定流通機構は毎事業年度、事業計画および収支予算を作成し、当該事業年度の開始前に(指定を受けた日の属する事業年度にあっては指定を受けた後遅滞なく)、国土交通大臣の認可を受けなければならないとし、変更しようとするときも同様としています。

    事業計画と収支予算まで認可の対象になっているという点に、この法人の性格が表れています。財務運営そのものが大臣の管理下にあるということです。

    目的外使用の禁止(50条の9)

    50条の9は、指定流通機構の役員もしくは職員またはこれらの職にあった者は、登録業務に関して得られた情報を、50条の3第1項に規定する業務の用に供する目的以外に使用してはならないと定めています。

    三つ確認してください。第一に、名宛人が機構という法人ではなく、役員・職員という個人であること。第二に、「これらの職にあつた者」、つまり退職後も義務が続くこと。第三に、禁じられているのが「漏らす」ことではなく「使用する」ことであること。

    45条の守秘義務が「秘密を他に漏らしてはならない」と定めているのと、動詞が違います。外に出さなくても、目的外に使えばそれだけで違反になる。漏洩の禁止ではなく、目的外利用の禁止です。宅建業者の守秘義務や禁止行為との関係は宅建業法47条の禁止行為で扱っています。

    なお、解釈・運用の考え方は、業者が取引事例を機構に報告する行為について、34条の2第2項の価額の根拠明示義務を果たすために必要な限度で45条および75条の3の「正当な理由」があると解されるとしています。そのうえで、収集する情報は成約価額・成約の時期・物件に関する情報とし、取引の当事者の氏名等の情報については収集をしないこととしています。機構に集まるのは物件と価格の情報であって、誰が売ったかではない、ということです。

    役員の選任・解任の認可(50条の10)

    50条の10第1項は、指定流通機構の役員の選任及び解任は、国土交通大臣の認可を受けなければ、その効力を生じないと定めています。

    「認可を受けなければ効力を生じない」という書き方です。届出でも承認でもなく、認可がなければ人事そのものが無効になります。

    2項は、役員がこの法律の規定(法律に基づく命令・処分を含む)もしくは認可を受けた登録業務規程に違反する行為をしたとき、または登録業務に関し著しく不適当な行為をしたときは、国土交通大臣は指定流通機構に対し、その役員を解任すべきことを命ずることができると定めています。命令の名宛人は役員本人ではなく機構です。大臣が役員を直接クビにするのではなく、機構に解任させる、という組み立てになっています。

    監督命令・報告・検査(50条の11・50条の12)

    50条の11は、国土交通大臣は50条の3第1項に規定する業務の適正な実施を確保するため必要があると認めるときは、指定流通機構に対し、当該業務に関し監督上必要な命令をすることができるとしています。

    50条の12は、同じ必要があるときに、機構に対し業務の状況に関し必要な報告を求め、または職員に事務所に立ち入り、業務の状況や帳簿書類等を検査させることができると定めています。

    どちらも対象が「50条の3第1項に規定する業務」と書かれているので、登録業務に限らず3号の統計作成等まで含みます。前に述べた定義語の使い分けが、ここで効いてきます。

    休廃止・指定の取消し・代行(50条の13から50条の15)

    50条の13は、指定流通機構が登録業務の全部または一部を休止し、または廃止しようとするときは、その日の30日前までに省令で定める事項を国土交通大臣に届け出なければならないと定めています。名称変更の2週間前と数字が違うので、混ぜないでください。

    50条の14は、機構が登録業務を適正かつ確実に実施することができないと認められるときなどに、大臣が指定を取り消し、または期間を定めて登録業務の全部もしくは一部の停止を命ずることができるとしています。この取消しを受けると、5年間は再指定を受けられません(50条の2の5第1項2号)。

    50条の15は、休廃止の届出があったとき、指定を取り消したとき、または登録業務の停止を命じたときなどについて、他の指定流通機構に登録業務を行わせる等の措置を定めています。地域ごとに一つしかない以上、その一つが止まれば地域全体の情報流通が止まります。それを避けるための受け皿です。

    指定から取消しまで、すべての段階に国土交通大臣が関与している。これが機構に対する規律の全体像です。監督処分の考え方そのものは監督処分にまとめています。

    業者の義務と機構の義務がどうつながるか

    情報が集まる仕組みは法が担保している

    ここまで機構の側を見てきましたが、機構に情報が集まること自体は、業者に課された義務によって支えられています。

    34条の2第5項が専任媒介契約と専属専任媒介契約について登録を義務づけているのは、依頼者の自由を制限したことの代償として説明されます。専任型では依頼者は他の業者に重ねて依頼できません。窓口が1社に固定される以上、その1社が情報を抱え込めば物件はどこにも出ません。そこで、囲い込める立場に置いた業者には、情報を業界全体へ強制的に開かせる。一般媒介では依頼者が自分で複数の業者に声をかけられるので、法が強制するまでもない、という整理です。

    同じ理屈が報告義務の頻度(34条の2第9項)にも通っています。拘束が強いほど義務が重くなる。日数や頻度の具体的な数字と数え方は媒介契約書の記載事項、売却の流れの中での位置づけは不動産の売却方法にあります。数字の横断整理は宅建業法の数字まとめです。

    「媒介契約締結の日」がいつかは通達が定める

    登録期限の起算点について、解釈・運用の考え方が重要な補足をしています。

    「媒介契約締結の日」とは媒介の契約締結の意思の合致のあった日であって、同日以後に遅滞なく交付することとされている媒介契約に係る書面の交付の日ではない。そして、契約を締結した当日そのものについては民法上の原則(初日不算入)により、登録期間には含まれない

    書面を作った日ではなく合意した日から数え、その当日は数えない。この二点は条文ではなく通達に書かれています。根拠の階層を意識しておくと、なぜ教材によって説明が違って見えるのかが分かります。

    成約したら機構に通知する

    34条の2第7項は、登録した物件について売買または交換の契約が成立したときは、遅滞なくその旨を当該指定流通機構に通知しなければならないと定めています。通知事項は施行規則15条の13が定める登録番号、宅地または建物の取引価格、売買または交換の契約の成立した年月日の三つです。

    通知先が依頼者ではなく機構である点を取り違えないでください。そして、この通知があるからこそ50条の7の公表が成り立ち、次に登録される物件の価額判断の材料になります。制度が自分で自分の精度を上げる循環がここにあります。

    もう一点、解釈・運用の考え方が見落とされやすい補足をしています。「一般媒介契約の場合も、指定流通機構に登録した物件については、契約が成立した場合において、当該指定流通機構の定める規程等に従い、成約情報を通知すること。

    一般媒介には34条の2第7項の法律上の通知義務がありません。しかし任意で登録した以上、機構の規程に従って成約情報を通知することが求められる、というわけです。登録義務がないことと、登録した後に何もしなくてよいことは別だということになります。

    囲い込みに対して制度は何をしているか

    条文が直接「囲い込み」を禁じているわけではない

    いわゆる囲い込みは、売主から媒介の依頼を受けた業者が、他の業者からの引き合いを適切に扱わず、自社で買主も見つけて双方から報酬を得ようとする行為を指す言い方です。売主と買主の双方から報酬を受けること自体は、それぞれについて上限の枠が立つ以上、違法ではありません(仲介手数料の計算方法と上限)。問題になるのは、そのために情報を止めることのほうです。

    まず確認しておくべきは、宅建業法に「囲い込みを禁止する」という条文はないということです。制度は、いくつかの規定の組み合わせで対処しています。裏取りのできない手口の類型をここで並べることはしませんが、条文と通達が用意している手当ては明確なので、そちらを見ていきます。

    ステータス管理機能と、事実と異なる登録

    解釈・運用の考え方の第34条の2関係9(1)が、この論点の中心です。

    まず、業者は指定流通機構に物件を登録したときは、登録証明書を交付する際に、レインズのステータス管理機能を通じて当該物件に係る取引の申込みの受付に関する状況等の最新の登録内容が確認できることに関し、依頼者に対して分かりやすく説明を行うことが望ましいとされています。

    そのうえで決定的なのが次の一文です。専属専任媒介契約および専任媒介契約に基づき登録した物件について、当該物件に係る取引の申込みの受付に関する状況等の登録内容が事実と異なるときは、法第65条第1項の指示処分の対象となる。

    「望ましい」という努力目標にとどまる部分と、指示処分という具体的な効果が結びついている部分が、同じ箇所に書き分けられています。実際に申込みが入っているのに登録上そう表示しない、といった状態が、監督処分の対象として名指しされているということです。

    なお、施行規則15条の11は登録事項の一つとして「当該宅地又は建物の取引の申込みの受付に関する状況」を挙げています。申込みの受付状況は、そもそも省令が定める登録事項です。通達はその内容が事実と一致していることを求めている、という関係になります。

    依頼者が自分で確認できる

    同じ通達の第34条の2関係1(4)は、媒介契約を締結する際に依頼者へ周知すべき事項として、登録証明書の交付を受けることにより登録されたことを確認するとともに、ステータス管理機能を通じて最新の登録内容を確認することを挙げています。

    制度の設計としては、依頼者自身に確認手段を与えることで抑止する形になっています。機構の側も、専任媒介契約・専属専任媒介契約を締結した依頼者向けのログインを用意しています。

    申込みの報告義務は一般媒介にも及ぶ

    もう一つの手当てが34条の2第8項です。媒介契約を締結した宅建業者は、目的物である宅地建物の売買または交換の申込みがあったときは、遅滞なくその旨を依頼者に報告しなければならない。

    主語が「専任媒介契約を締結した」ではなく「媒介契約を締結した」である点が要点で、一般媒介契約にも及びます。他社経由の申込みを依頼者に伝えないまま握りつぶす、という事態を封じる規定です。定期的な業務処理状況の報告(9項)が専任型限定であるのに対し、申込みの報告は全類型。二層構造になっています。

    試験での出題ポイント

    通称と条文用語を入れ替える

    選択肢が「レインズ」と書いてくることは、通常ありません。問われるのは「指定流通機構」です。逆に、解説や教材でレインズと書かれている箇所を条文用語に翻訳できるようにしておいてください。指定するのは国土交通大臣であって、都道府県知事ではありません。

    発行する主体と引き渡す主体を入れ替える

    登録を証する書面について、発行するのは指定流通機構(50条の6)、依頼者に引き渡すのは宅建業者(34条の2第6項)です。「指定流通機構は、登録を証する書面を遅滞なく依頼者に引き渡さなければならない」は、主体を取り違えているので誤りになります。

    発行事項が登録番号・登録年月日・登録された事項であること(施行規則19条の6)も、細部として問われる余地があります。

    通知先を依頼者にすり替える

    成約したときの通知先は指定流通機構です(34条の2第7項)。依頼者ではありません。通知事項は登録番号・取引価格・契約成立年月日の三つ(施行規則15条の13)で、ここに依頼者の氏名は入りません。

    同じく、登録事項(施行規則15条の11)にも依頼者の氏名は含まれていません。機構に集まるのは物件と価格の情報であって、誰が売ったかではない。この線引きを覚えておくと、氏名を混ぜた肢に反応できます。

    数字を入れ替える

    機構まわりには数字が三つあります。名称・主たる事務所の所在地の変更は2週間前までに届出(50条の2の5第3項)、登録業務の休廃止は30日前までに届出(50条の13第1項)、指定を取り消されると5年間は再指定を受けられない(50条の2の5第1項2号)。

    いずれも事前の届出であり、期限の数字が違います。業者側の変更の届出が事後30日以内であることと混ざりやすいので、機構は事前、業者は事後という向きで押さえてください。

    法人形態を入れ替える

    指定を受けられるのは一般社団法人または一般財団法人です(50条の2の5第1項1号)。「株式会社であっても、要件を満たせば指定を受けることができる」という記述は誤りになります。

    「一を限り」を落とす

    指定は国土交通大臣が定める地域ごとに一を限り行われます(施行規則19条の2の7)。同一地域に複数の機構が指定されることはありません。また、業者がどの機構に登録するかは物件の所在地で決まります(施行規則15条の12)。「宅建業者は、いずれの指定流通機構に登録するかを選択することができる」は誤りです。

    一般消費者の利用を正しいと書く

    50条の3第1項2号は、情報提供の相手を「宅地建物取引業者に対し」と定めています。一般消費者への提供は機構の業務ではありません。「指定流通機構は、登録された物件の情報を一般消費者に対しても提供しなければならない」という記述は誤りです。

    ただし、50条の7の件数等の公表義務は別にあります。「指定流通機構には情報を公表する義務はいっさいない」という書き方も、こちらの条文を落としている点で正確ではありません。

    覚え方・整理の仕方

    「集める・配る・数える」で業務を持つ

    50条の3の三つの業務は、動詞で持つと崩れません。1号が集める(登録)、2号が配る(業者への提供)、3号が数える(統計の作成等)。

    そして登録業務という定義語が指すのは1号と2号だけです。3号は入りません。条文が「登録業務」と書いているか「50条の3第1項に規定する業務」と書いているかで射程が変わるので、迷ったらこの三段に戻ってください。

    主体の流れを一本の線にする

    この分野の出題は、ほとんどが主体のすり替えです。だから流れを線で持ちます。

    業者が機構に登録する(34条の2第5項)→ 機構が業者に登録を証する書面を発行する(50条の6)→ 業者が依頼者に引き渡す(34条の2第6項)→ 成約したら業者が機構に通知する(34条の2第7項)→ 機構が件数等を公表する(50条の7)。

    登場人物は依頼者・業者・機構の三者だけで、一周して戻ってきます。この輪を書けるようにしておけば、どこか一箇所を入れ替えた肢は違和感で気づけます。売買取引全体の時系列にこの輪を置き直すと不動産売買の流れになります。

    大臣の関与を「認可・承認・命令・届出」で分ける

    機構に対する国土交通大臣の関与は四種類あります。混ざりやすいので語で分けます。

    認可が三つ。登録業務規程(50条の5)、事業計画および収支予算(50条の8)、役員の選任および解任(50条の10)。いずれも認可がなければ効力を生じない、あるいは定められない事柄です。

    承認が一つ。業務の一部委託(50条の3第2項)。

    命令が二つ。役員の解任命令(50条の10第2項)と監督命令(50条の11)。

    届出が二つ。名称・所在地の変更(50条の2の5第3項、2週間前まで)と登録業務の休廃止(50条の13第1項、30日前まで)。

    重いものほど認可、軽いものほど届出。そして届出はいずれも事前です。

    通称・条文・通達の三層で持つ

    この記事の出発点に戻ります。レインズは通達の言葉、指定流通機構は条文の言葉。

    さらに細かく見ると、この分野の知識は三層に分かれています。法律が骨格(34条の2、50条の2の5から50条の15)、省令が数字と細目(7日と5日、登録事項、通知事項、地域ごとに一を限り、発行事項)、通達が運用(レインズの定義、締結日の意味と初日不算入、ステータス管理機能、一般媒介の成約通知、登録費用は業者負担)。

    試験で条番号を問われるのは法律と省令、実務の言葉が出てくるのは通達。根拠がどの層にあるかを意識しておくと、教材ごとの説明の違いに振り回されません。

    理解度チェッククイズ

    問1 指定流通機構は、宅地建物取引業者から登録があったときは、登録を証する書面を遅滞なく当該登録に係る依頼者に引き渡さなければならない。

    答え:×。主体と相手方の両方が誤りです。50条の6は「指定流通機構は……当該登録をした宅地建物取引業者に対し、当該登録を証する書面を発行しなければならない」と定めています。機構が書面を渡す相手は業者です。そのうえで34条の2第6項が、業者に対し、この書面を遅滞なく依頼者に引き渡すことを義務づけています。機構から業者へ、業者から依頼者へ、という二段の流れです。なお発行事項は施行規則19条の6により、登録番号、登録年月日、34条の2第5項の規定により登録された事項の三つです。

    問2 宅地建物取引業者は、専任媒介契約を締結したときは、自らが選択した指定流通機構に当該物件を登録することができる。

    答え:×。施行規則15条の12は、34条の2第5項の登録は、当該宅地又は建物の所在地を含む、施行規則19条の2の7の規定により国土交通大臣が定める地域を対象として登録業務を現に行っている指定流通機構に対して行うものとする、と定めています。物件の所在地で登録先が決まるので、業者が選ぶ余地はありません。前提として、施行規則19条の2の7は指定を「国土交通大臣が定める地域ごとに一を限り」行うとしており、同じ地域に複数の機構が並立することもありません。

    問3 株式会社であっても、宅地及び建物の取引の適正の確保及び流通の円滑化を目的とし、業務を適正かつ確実に行うことができると認められれば、指定流通機構の指定を受けることができる。

    答え:×。50条の2の5第1項1号は、指定の要件として「宅地及び建物の取引の適正の確保及び流通の円滑化を目的とする一般社団法人又は一般財団法人であること」を挙げています。株式会社は要件を満たしません。あわせて2号が、指定を取り消され取消しの日から5年を経過しない者でないこと、3号が、役員のうちに5条1項1号・5号・6号に該当する者などがないことを求めています。3号イが宅建業者の免許の欠格事由を直接引用している点も押さえておいてください。なお指定は「その者の同意を得て」行うものとされています。

    問4 指定流通機構は、登録された宅地又は建物についての情報を、宅地建物取引業者だけでなく一般消費者に対しても、依頼に応じて提供しなければならない。

    答え:×。50条の3第1項2号は、情報の提供先を「宅地建物取引業者に対し」と定めており、一般消費者への提供は機構の業務とされていません。レインズが業者専用のシステムだと説明されるのは、運用上の取り決めではなく条文上の帰結です。ただし、機構がまったく外に情報を出さないわけではありません。50条の7が、毎月の売買又は交換の契約に係る件数その他省令で定める事項の公表を義務づけています。「一般消費者にも提供義務がある」も「公表義務はいっさいない」も、どちらも誤りになります。

    問5 指定流通機構の職員は、登録業務に関して得られた情報を、その職を退いた後であっても、指定流通機構の業務の用に供する目的以外に使用してはならない。

    答え:○。50条の9は「指定流通機構の役員若しくは職員又はこれらの職にあつた者は、登録業務に関して得られた情報を、第五十条の三第一項に規定する業務の用に供する目的以外に使用してはならない」と定めています。名宛人が法人ではなく役員・職員という個人であること、退職後も義務が続くこと、そして禁じられているのが「漏らす」ことではなく「使用する」ことの三点が要点です。宅建業者の守秘義務(45条)が「秘密を他に漏らしてはならない」と定めているのとは動詞が違い、外部に出さなくても目的外に使えば違反になります。

    問6 指定流通機構は、その名称を変更しようとするときは、変更の日から30日以内に国土交通大臣に届け出なければならない。

    答え:×。50条の2の5第3項は、指定流通機構がその名称または主たる事務所の所在地を変更しようとするときは、変更しようとする日の2週間前までに国土交通大臣に届け出なければならないと定めています。事後30日以内ではなく、事前2週間前までです。30日という数字が出てくるのは50条の13第1項の登録業務の休廃止の届出で、こちらも「休止し、又は廃止しようとする日の30日前までに」という事前の届出です。宅建業者の変更の届出が事後の届出であることと向きが逆なので、機構は事前、業者は事後と対にして覚えてください。

    まとめ

    • 宅建業法の条文に「レインズ」という語はありません。あるのは「指定流通機構」で、定義は34条の2第5項の「国土交通大臣が指定する者」に置かれ、機構自体の規律は50条の2の5から50条の15までにあります。レインズという語が定義されているのは解釈・運用の考え方という通達のレベルです。指定流通機構は組織、レインズはその組織が運営するシステムという関係になります。
    • 指定を受けられるのは一般社団法人または一般財団法人に限られ、取消しから5年を経過しない者や、5条1項1号・5号・6号に該当する役員がいる者は除かれます(50条の2の5第1項)。指定は「その者の同意を得て」行われ、国土交通大臣が定める地域ごとに一を限りなされます(施行規則19条の2の7)。だから全国に四つあり、業者がどこに登録するかは物件の所在地で決まります(施行規則15条の12)。
    • 機構の業務は集める・配る・数えるの三つです(50条の3第1項)。このうち1号と2号だけが「登録業務」という定義語の中身で、3号の統計作成等は含まれません。2号が提供先を「宅地建物取引業者に対し」と限っているため、一般消費者が直接利用できないのは条文上の帰結です。他方で50条の7が件数等の公表を義務づけています。
    • 機構は国土交通大臣の監督下にあります。認可が登録業務規程・事業計画および収支予算・役員の選任解任、承認が業務の一部委託、命令が役員の解任命令と監督命令、届出が名称等の変更(2週間前まで)と登録業務の休廃止(30日前まで)。届出はいずれも事前です。50条の9の目的外使用の禁止は役員・職員個人を名宛人とし、退職後も及びます。
    • 主体の流れを一本で持ってください。業者が機構に登録し(34条の2第5項)、機構が業者に登録を証する書面を発行し(50条の6)、業者が依頼者に引き渡し(34条の2第6項)、成約したら業者が機構に通知し(34条の2第7項)、機構が件数等を公表する(50条の7)。この輪のどこかを入れ替えた肢が繰り返し作られます。
    • 囲い込みを直接禁じる条文はありませんが、手当てはあります。申込みの受付に関する状況は省令が定める登録事項であり(施行規則15条の11)、通達は、専任型で登録した物件についてその登録内容が事実と異なるときは65条1項の指示処分の対象となると明記しています。あわせて、申込みがあったときの依頼者への報告義務(34条の2第8項)は一般媒介にも及びます。

    指定流通機構と媒介契約の関係は、宅建試験AIブートラボの肢別トレーニングで条文ごとに演習できます。

    読んだ内容を、税・その他の肢で確かめる

    税と価格の評定は毎年ほぼ同じ形で出ます。出題パターンを肢別で押さえれば取りこぼしません。

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