登録免許税|税率・軽減と印紙税との違い
登録免許税の課税標準・登記別税率・住宅用家屋の軽減を条文根拠つきで整理し、行為への課税である登録免許税と文書への課税である印紙税の違いを対比します。
目次
この記事は、不動産の登記に課される登録免許税を条文の根拠を示しながら整理し、あわせて印紙税との違いを対比するものです。不動産に関わる税の全体像は不動産の税金の全体像、税分野をまたいだ比較は税の横断整理を先に読むと位置づけがつかめます。印紙税そのものの深掘りは印紙税の課税文書一覧にまとめてあります。
登録免許税と印紙税は、どちらも不動産取引の場面で登場する国税ですが、課税の対象がまったく違います。登録免許税は登記という行為に課され、印紙税は文書の作成に課されます。この出発点の違いから、納税義務者も、課税標準も、納付方法も、納めなかったときの効果も、すべて枝分かれしていきます。とりわけ電子化が進んだ現在、登記をオンラインで申請しても登録免許税はかかるのに、契約を電磁的記録で交わせば印紙税はかからないという逆転が生じます。この非対称が、2つの税を並べて学ぶ最大の意味です。
なお宅建試験は当該年度の4月1日現在施行の法令から出題されます。本記事は令和8年度に合わせ、2026年4月1日時点で施行されている登録免許税法(昭和42年法律第35号)、租税特別措置法(昭和32年法律第26号)およびその施行令、国税通則法、不動産登記法の条文を前提にしています。登録免許税法はこの日より後にも複数の改正が施行されているため、記述はすべて基準日の版に合わせてあります。
登録免許税は登記という行為に課される
課税されるのは別表第一に掲げられた登記等
登録免許税法2条は、次のように定めています。
登録免許税は、別表第一に掲げる登記、登録、特許、免許、許可、認可、認定、指定及び技能証明(以下「登記等」という。)について課する。
――登録免許税法2条
課税の範囲は、別表第一に掲げられているものに限られます。別表第一の第一号が不動産の登記で、その下に所有権の保存、所有権の移転、用益権の設定、抵当権の設定といった登記が並んでいます。ここに掲げられていない登記は、そもそも課税の範囲に入りません。この点は後の「表示に関する登記」の話でもう一度効いてきます。
不動産を取得しても登記をしなければ課されない
課税の対象は「不動産を取得したこと」ではなく「登記を受けること」です。売買によって所有権を取得しても、登記を申請しなければ登録免許税は発生しません。
もっとも、民法177条により、不動産に関する物権の変動は登記をしなければ第三者に対抗できません(物権変動と対抗要件)。登記をしないまま放置すれば、二重譲渡の相手方に負けるおそれがあります。だから実務では取得すれば登記を受けるのが通常で、結果的に取得と課税がセットで動いているように見えます。しかし法律上の順序は、あくまで登記が先です。登記そのものの仕組みは不動産登記の基礎、登記記録の読み方は登記簿の読み方で扱っています。
不動産取得税が「取得」という事実に課される道府県税であるのと比べると、この違いははっきりします。不動産取得税は登記をしなくても課されますが、登録免許税は登記をしなければ課されません(不動産取得税の軽減)。
納税義務者は登記等を受ける者
登録免許税法3条は、登記等を受ける者を納税義務者とし、その者が2人以上あるときはこれらの者が連帯して納付する義務を負うと定めています。
売買による所有権移転登記は、登記権利者である買主と登記義務者である売主が共同して申請します。したがって法律上は、売主と買主の双方が納税義務者であり、連帯納付義務を負います。
実務では買主が全額を負担する取り決めをするのが一般的ですが、それは当事者間の合意にすぎません。国に対する関係では売主も納税義務者のままです。当事者の合意で税法上の納税義務者が変わることはない、という一般原則がここでも働いています。ここは試験で狙われます。
一方、所有権の保存登記は表題部所有者などが単独で申請するため、納税義務者は1人です。相続による所有権移転登記も相続人が単独で申請できるので、納税義務者は相続人です。誰が申請するかによって納税義務者の数が変わる点も押さえておきます。
課税標準をどう決めるか
登録免許税法9条は、課税標準および税率は別表第一の課税標準欄と税率欄によると定めています。つまり、何を課税標準とするかは登記の種類ごとに別表第一が指定しています。不動産の登記では、大きく「不動産の価額」と「債権金額」の2系統に分かれます。
所有権に関する登記は不動産の価額
所有権の保存、所有権の移転、用益権の設定・移転、配偶者居住権の設定といった登記は、いずれも課税標準が「不動産の価額」です。
その価額の意味は登録免許税法10条1項が定めており、原則は「当該登記又は登録の時における不動産等の価額」です。さらに、その不動産の上に所有権以外の権利その他処分の制限が存するときは、それらがないものとした場合の価額によるとされています。抵当権が付いている土地でも、抵当権がないものとして評価するということです。
実際には固定資産課税台帳の登録価格
もっとも、登記のたびに時価を評価するのは現実的ではありません。そこで登録免許税法附則7条が特例を置いています。
新法別表第一の第一号に掲げる不動産の登記の場合における新法第十条第一項の課税標準たる不動産の価額は、当分の間、当該登記の申請の日の属する年の前年十二月三十一日現在又は当該申請の日の属する年の一月一日現在において地方税法……第三百四十一条第九号……に掲げる固定資産課税台帳に登録された当該不動産の価格を基礎として政令で定める価額によることができる。
――登録免許税法附則7条
つまり、固定資産税評価額を基礎とします。ここを取り違える受験生が非常に多いのですが、課税標準は売買価格ではありません。5,000万円で売買された土地でも、固定資産税評価額が3,500万円であれば、課税標準は3,500万円です。固定資産税評価額の性格そのものは固定資産税、土地の4つの価格の関係は土地の価格の4種類で扱っています。
条文が「前年12月31日現在又は当該申請の日の属する年の1月1日現在」と2つの基準時を並べているのは、年の初めに新年度の価格が固まるまでのずれに対応するためです。試験でここまで問われることは考えにくいものの、固定資産税の賦課期日が1月1日であること(固定資産税)と結びつけて覚えておくと記憶が安定します。
持分の取得なら価額に持分割合を乗じる
登録免許税法10条2項は、登記が不動産の所有権の持分の取得に係るものであるときは、その不動産の価額に当該持分の割合を乗じて計算した金額によるとしています。同条3項は、これを所有権以外の権利の持分の取得にも準用します。
共有物の持分を売買で取得して移転登記を受ける場合、課税標準は不動産全体の評価額ではなく、取得した持分に対応する部分です。共有の仕組みは共有で扱っています。
担保権の登記は債権金額
別表第一第一号(五)は、先取特権の保存、質権もしくは抵当権の設定、差押えその他権利の処分の制限の登記について、課税標準を「債権金額、極度金額又は不動産工事費用の予算金額」としています。
4,000万円の住宅ローンのために抵当権を設定するなら、課税標準は4,000万円です。担保に入れる不動産の評価額は計算に登場しません。根抵当権であれば極度金額が課税標準になります(根抵当権)。
なぜ2系統に分かれるのか。所有権の登記は物そのものの帰属を公示するものなので、物の価値を基礎にします。これに対して抵当権の登記は、いくらの債権を担保しているかを公示するものなので、債権の額を基礎にします。何を公示する登記なのかを考えれば、課税標準は導けます。抵当権の仕組みは抵当権の基本を参照してください。
用益権の設定登記は債権金額ではなく不動産の価額
ここは間違えやすいところです。地上権や土地の賃借権の設定登記は、担保権と違って課税標準が「不動産の価額」です。権利金の額でも、賃料の総額でもありません。
この点は印紙税と正反対になります。印紙税では、土地の賃借権の設定に関する契約書(第1号の2文書)の記載金額は、後日返還されることが予定されていない権利金などの金額であり、賃料や敷金は含まれません。同じ借地権の設定という一つの事象について、登録免許税は不動産の評価額を基礎にし、印紙税は権利金を基礎にする。課税の対象が「登記」と「文書」で違うのだから、基礎になる金額も違って当然です。借地権の性質は借地権の基本、契約書側の扱いは印紙税の課税文書一覧にあります。
債権金額が一定でないとき、増額したとき、共同担保のとき
登録免許税法11条1項は、債権金額を課税標準とする場合において一定の債権金額がないときは、その登記の時における債権の価額または処分の制限の目的となる不動産等に関する権利の価額をもって債権金額とみなすと定めています。
12条1項は、先取特権・質権・抵当権につき債権金額または極度金額を増加する登記は、その増加する部分についての設定登記とみなすとしています。増額分だけが新たな設定として課税されるということで、印紙税の変更契約書における「増額なら増加額が記載金額」という扱いと発想が似ています。
13条1項は、同一の登記官署において同時の申請により、同一の債権のために数個の不動産を目的とする抵当権の設定登記を受ける場合、これらを一の設定登記とみなすとしています。共同抵当を設定しても、債権額に対して一度だけ課税されるということです。さらに13条2項は、最初の申請以外のものであるときは、財務省令で定める書類を添付して申請するものに限り、不動産に関する権利の件数1件につき1,500円とするとしています。
端数の処理
計算の細部として、端数の扱いが二重に定められています。混同しやすいので、根拠を分けて押さえます。
課税標準の1,000円未満の端数は、国税通則法118条1項により切り捨てます。同項は、国税の課税標準を計算する場合において、その額に1,000円未満の端数があるとき、またはその全額が1,000円未満であるときは、その端数金額または全額を切り捨てると定めています。そのうえで登録免許税法15条が、別表第一に掲げる登記に係る課税標準の金額を計算する場合において、その全額が1,000円に満たないときは1,000円とすると定めています。通則法だけなら0円になってしまうところを、登録免許税法が1,000円に引き上げているという関係です。
税額の100円未満の端数は、国税通則法119条1項により切り捨てます。そのうえで登録免許税法19条が、別表第一に掲げる登記につき税率を適用して計算した金額が1,000円に満たない場合には、税額を1,000円とすると定めています。定率課税の最低税額が1,000円だということです。
なお国税通則法118条1項も119条1項も、括弧書きで印紙税を適用対象から除いています。印紙税は税額表であらかじめ額が定まっているため、端数計算になじまないからです。ここでも2つの税の構造の違いが顔を出します。計算の練習は税金の計算問題、計算問題の総まとめで扱っています。
税率は登記の原因で読む
税率は別表第一第一号に登記の種類ごとに定められています。数字を羅列して覚えるのではなく、原因によってなぜ差がつくのかという理屈とセットで押さえます。
所有権の保存の登記は1000分の4
まだ登記記録に権利部のない不動産について、最初に所有者を記録する登記が所有権の保存の登記です。建物を新築したときに行われるのが典型で、税率は1000分の4、0.4パーセントです。
保存登記は、誰かから誰かへ権利が移るわけではなく、権利関係を最初に公示するだけの登記です。移転を伴わないぶん、税率は低く設定されています。
所有権の移転の登記は三つに分かれる
別表第一第一号(二)は、所有権の移転の登記を三つに分けています。イが相続または法人の合併による移転の登記で1000分の4、ロが共有物の分割による移転の登記で1000分の4、ハがその他の原因による移転の登記で1000分の20です。
売買、贈与、交換、収用など、イとロに当たらない原因はすべてハに落ちます。したがって2パーセント、イ・ロの5倍です。
この差は移転の実質を反映しています。相続は被相続人の地位をそのまま承継するもので、当事者が意思をもって権利を動かしたわけではありません(相続の基本)。合併も法人格の包括承継です。共有物の分割は、もともと共有していた持分を整理し直すもので、外部に権利が出ていくわけではありません。これらは形式的な移転にすぎないため低い税率が適用されます。一方、売買や贈与は当事者の意思によって権利者が入れ替わる実質的な移転なので、高い税率になります。
とくに贈与が1000分の4ではなく1000分の20であることは繰り返し狙われます。「無償だから安いだろう」という直感は通用しません。有償か無償かではなく、形式的な承継か実質的な移転かで分かれます。贈与に関する税の全体像は贈与税と相続税を参照してください。
なお、相続人に対する遺贈は、登録免許税法17条1項の表の文言が「所有権の相続(相続人に対する遺贈を含む。以下同じ。)」としているとおり、相続と同じ扱いです。相続人以外の者に対する遺贈は「その他の原因」になります。
用益権の設定・移転
別表第一第一号(三)は、地上権、永小作権、賃借権または採石権の設定、転貸または移転の登記について、イの設定または転貸が1000分の10、ロの相続または法人の合併による移転が1000分の2、ハの共有に係る権利の分割による移転が1000分の2、ニのその他の原因による移転が1000分の10としています。
所有権と同じ構造が繰り返されています。設定と実質的な移転は高く、相続・合併と分割は低い。所有権では0.4と2.0、用益権では0.2と1.0で、いずれも5倍の開きです。借地権の対抗要件などは借地権の対抗力、定期借地権は定期借地権で扱っています。
配偶者居住権と地役権
別表第一第一号(三の二)は、配偶者居住権の設定の登記を1000分の2としています。配偶者居住権は建物についての権利で、その設定登記の課税標準は不動産の価額です(配偶者居住権)。
同(四)は、地役権の設定の登記について、課税標準を「承役地の不動産の個数」、税率を1個につき1,500円としています。定額課税であり、しかも基準になるのは承役地であって要役地ではありません。地役権は他人の土地を自分の土地の便益に使う権利ですから、負担を受ける側の土地の数で数える、という発想です。
抵当権の設定と移転
抵当権の設定の登記は、別表第一第一号(五)により1000分の4です。課税標準は債権金額、極度金額または不動産工事費用の予算金額です。
抵当権の移転の登記は同(六)で、イの相続または法人の合併による移転が1000分の1、ロのその他の原因による移転が1000分の2です。ここでも、相続・合併が低く、その他が高いという同じ構造が繰り返されています。
同(八)は抵当権の順位の変更の登記を、抵当権の件数1件につき1,000円としています。定額です。
所有権でも用益権でも抵当権でも、形式的な承継は安い。この一貫性に気づくと、覚える負担が大きく減ります。
仮登記と、本登記を受けるとき
別表第一第一号(十二)は仮登記の税率を定めています。所有権の移転の仮登記または移転請求権保全の仮登記は、相続・合併による場合が1000分の2、共有物の分割による場合が1000分の2、その他の原因による場合が1000分の10です。本登記の税率のちょうど半分になっています。用益権の設定の仮登記が1000分の5であるのも同じ関係です。
では、仮登記をした後に本登記を受けるときはどうなるのか。ここが登録免許税法17条1項の役割です。同項は、仮登記がされている不動産についてその仮登記に基づき本登記を受ける場合、本登記の税率から一定の割合を控除すると定めています。控除される割合は、所有権の保存が1000分の2、所有権の相続・合併による移転が1000分の2、所有権の共有物の分割による移転が1000分の2、所有権のその他の原因による移転が1000分の10、用益権の設定・転貸が1000分の5、といった具合です。
つまり、仮登記の段階で半分を払い、本登記の段階で残りの半分を払う、という設計になっています。二度払いにはなりません。仮登記の性質そのものは仮登記とはで扱っています。
借地人が底地を買い取るときは半分になる
登録免許税法17条4項は、実務的にも試験的にも面白い規定です。地上権、永小作権、賃借権もしくは採石権の設定の登記がされている土地、または賃借権もしくは配偶者居住権の設定の登記がされている建物について、その権利の登記名義人がその土地または建物の取得に伴い所有権の移転の登記を受けるときは、税率は別表第一第一号(二)の割合に100分の50を乗じた割合とされます。
借地人が地主から底地を買い取り、所有権移転登記を受ける場合、通常なら1000分の20のところが1000分の10になります。すでに用益権の設定登記の段階で1000分の10を負担しているのだから、その分を考慮する、という趣旨です。ただし前提として、用益権の設定登記がされていることが必要です。借地権を登記していない借地人が底地を買っても、この規定は使えません。
抹消と、それ以外の登記
別表第一第一号(十五)は、登記の抹消(土地または建物の表題部の登記の抹消を除く)について、不動産1個につき1,000円としています。そして、同一の申請書により20個を超える不動産について登記の抹消を受ける場合には、申請件数1件につき2万円とされています。
住宅ローンを完済して抵当権の抹消登記を受ける場合も、この定額課税です。債権額が4,000万円でも1億円でも、不動産1個につき1,000円です。設定のときは債権金額に0.4パーセントを掛けたのに、抹消のときは定額。これも「何を公示する登記か」から説明できます。抹消は権利が消えたことを記録するだけで、価値の大小と無関係だからです。
同(十四)は、付記登記、抹消された登記の回復の登記、登記事項の更正または変更の登記について、不動産1個につき1,000円としています。ただし(一)から(十三)までに掲げるものと、土地または建物の表示に関するものは除かれます。住所や氏名の変更の登記がここに当たります(住所変更登記の義務化)。
計算してみる
固定資産税評価額3,500万円の土地を売買により取得し、所有権移転登記を受ける場合、課税標準は3,500万円、税率は1000分の20ですから、税額は70万円です。同じ土地を相続によって取得した場合は税率が1000分の4になるため、税額は14万円です。原因が変わるだけで5倍の差が出ます。
4,000万円の住宅ローンについて抵当権の設定登記を受ける場合は、課税標準が債権金額の4,000万円、税率が1000分の4ですから、税額は16万円です。担保に入れる不動産の評価額がいくらであっても、この計算には登場しません。住宅取得資金の貸付けに係るものとして租税特別措置法75条の軽減が適用されれば、税率が1000分の1になり、税額は4万円になります(住宅ローンの基礎)。
表示に関する登記はなぜ課されないのか
ここは説明が雑になりやすいところなので、条文に即して整理します。
課税範囲に入っていないから課されない
建物を新築したときの表題登記、土地の地目の変更の登記、建物の床面積の更正の登記。これらに登録免許税は課されません。しかしその理由は、非課税とされているからではありません。別表第一に掲げられていないからです。
登録免許税法2条は、課税の範囲を「別表第一に掲げる登記等」に限定しています。別表第一第一号を通読すると、(一)から(十五)までに並んでいるのは所有権・用益権・担保権といった権利に関する登記が中心で、表示に関する登記は原則として現れません。(十四)は括弧書きで「土地又は建物の表示に関するものを除く」とし、(十五)も括弧書きで「土地又は建物の表題部の登記の抹消を除く」としています。つまり、表示に関する登記は課税範囲の外に置かれているのです。
非課税と課税範囲外は違います。非課税は、いったん課税範囲に入ったものを政策的に外す仕組みで、登録免許税法4条や5条がこれに当たります。課税範囲外は、そもそも入口に入っていない状態です。結論は同じ「課されない」でも、条文上の位置づけが違います。
例外的に課税される表示の変更の登記
ただし、表示に関する登記のうち二つだけが別表第一に掲げられています。第一号(十三)です。
同(十三)は「所有権の登記のある不動産の表示の変更の登記で次に掲げるもの」として、イに土地の分筆または建物の分割もしくは区分による登記事項の変更の登記を、ロに土地の合筆または建物の合併による登記事項の変更の登記を挙げ、それぞれ分筆・分割・区分後、または合筆・合併後の不動産の個数1個につき1,000円としています。
注意すべき限定が二つあります。一つは「所有権の登記のある不動産」に限られること。権利部に所有権の登記がない不動産の分筆であれば、この号には当たりません。もう一つは、掲げられているのが分筆・合筆・分割・区分・合併だけで、地目の変更や床面積の更正は含まれないことです。
したがって「表示に関する登記はすべて非課税である」という言い切りは誤りですし、逆に「表示に関する登記には登録免許税が課される」も誤りです。両方向の引っかけが作れる論点です。区分建物については区分所有法の基本もあわせて確認してください。
非課税とされる登記
課税範囲に入りながら政策的に課税されないものが、4条・5条・7条に定められています。
国や別表第二の者が自己のために受ける登記
登録免許税法4条1項は、国および別表第二に掲げる者が自己のために受ける登記等について登録免許税を課さないと定めています。同条2項は、別表第三の第一欄に掲げる者が自己のために受ける同表第三欄の登記等について、一定の書類の添付を条件に非課税としています。
公的主体に課税しても財政上の意味がない、という考え方によるものです。「自己のために受ける」という限定が付いている点にも注意します。他人のために代位して受ける登記は4条ではなく5条1号の方で処理されます。
5条が列挙する非課税登記
登録免許税法5条は非課税の登記等を14号にわたって列挙しています。宅建の視点で意味があるものを挙げると、1号が国または別表第二に掲げる者がこれらの者以外の者に代位してする登記、2号が登記機関が職権に基づいてする政令で定める登記、4号が住居表示に関する法律の規定による住居表示の実施または変更に伴う登記事項の変更の登記、5号が行政区画や字またはこれらの名称の変更に伴う登記事項の変更の登記、6号が土地改良事業または土地区画整理事業の施行のため必要な土地または建物に関する登記、11号が滞納処分に関してする登記、12号が登記機関の過誤による登記の抹消・更正などです。
ここで一つ注意を促しておきます。5条4号は「住居表示」の実施・変更に伴う変更登記であって、「表示に関する登記」一般ではありません。町名や街区符号が変わったときに登記記録の住所表示を直す登記のことです。この二つを混同して「表示に関する登記は5条4号により非課税」と説明する教材がありますが、条文上そうはなっていません。前節で見たとおり、表示に関する登記が課されないのは課税範囲外だからです。
6号の土地区画整理事業に関する登記が非課税とされるのは、換地処分によって多数の登記が一斉に動くためです(土地区画整理法)。
信託による形式的な移転は非課税
登録免許税法7条1項は、信託による財産権の移転の登記のうち、委託者から受託者に信託のために財産を移す場合、一定の要件を満たす受託者から受益者への移転、受託者の変更に伴う移転について、登録免許税を課さないと定めています。
いずれも実質的な帰属が動いていない形式的な移転です。ここでも「形式的な移転には課税しない、または軽く課税する」という登録免許税の基本思想が現れています。なお、信託の登記そのものは別表第一第一号(十)により課税され、所有権の信託の登記が1000分の4です。移転の登記が非課税でも、信託の登記は課税される。この組み合わせに注意します。
住宅用家屋の軽減措置
本則の税率に対し、一定の住宅については租税特別措置法により税率が軽減されます。宅建試験でも実務でも頻出です。
三つの中心的な軽減
宅建で問われる中心は次の三つです。いずれも適用期限は令和9年3月31日までに登記を受けるものとされています。
租税特別措置法72条の2は、個人が昭和59年4月1日から令和9年3月31日までの間に住宅用家屋を新築し、または建築後使用されたことのない住宅用家屋を取得して自己の居住の用に供した場合、その所有権の保存の登記の税率を1000分の1.5とします。本則1000分の4に対して0.15パーセントです。
同法73条は、個人が同じ期間に建築後使用されたことのない住宅用家屋、または建築後使用されたことのある住宅用家屋で政令で定めるものを取得して自己の居住の用に供した場合、その所有権の移転の登記の税率を1000分の3とします。本則1000分の20に対して0.3パーセントで、およそ7分の1です。効果が最も大きい軽減です。
同法75条は、個人が同じ期間に住宅用家屋の新築または取得をし、自己の居住の用に供した場合において、その資金の貸付け等が行われるときに、その債権を担保するために受ける抵当権の設定の登記の税率を1000分の1とします。本則1000分の4に対して0.1パーセントです。
認定住宅と、宅建業者が手を入れた中古住宅
このほか三つの軽減があり、いずれも適用期限は令和9年3月31日です。
同法74条は特定認定長期優良住宅について、保存登記を1000分の1、移転登記を1000分の1としています。ただし移転登記については、一戸建ての特定認定長期優良住宅は1000分の2です。マンションより一戸建てのほうが高い、という珍しい形なので覚えておく価値があります。
同法74条の2は認定低炭素住宅について、保存登記・移転登記とも1000分の1としています。
同法74条の3は、個人が平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に、宅地建物取引業者が増改築等をした建築後使用されたことのある住宅用家屋を当該宅地建物取引業者から取得して自己の居住の用に供した場合、その移転登記の税率を1000分の1とします。宅建業法2条3号の宅地建物取引業者が明文で登場する規定です。増改築等の要件として、工事に要した費用の総額が譲渡対価の額の100分の20に相当する金額(その金額が300万円を超える場合には300万円)以上であることなどが定められています。中古住宅の流通促進を狙った措置で、宅建業者の役割が制度に組み込まれている点が特徴です。
共通する適用要件
これらの軽減を受けるには、次の要件を満たす必要があります。
第一に、取得するのが個人であること。条文はいずれも「個人が」で始まっており、法人が取得した住宅には適用がありません。
第二に、その個人の居住の用に供すること。投資用として購入し他人に貸す住宅は対象外です。
第三に、床面積の要件です。租税特別措置法施行令41条1号は、専らその個人の住宅の用に供される一棟の家屋で床面積の合計が50平方メートル以上であるものとしています。区分所有の場合は同条2号により、専ら住宅用の部分の床面積が50平方メートル以上であることが必要です。この床面積は登記記録上の床面積で判定します。
第四に、新築または取得後1年以内に登記を受けるものであること。条文が「新築又は取得後一年以内に登記を受けるものに限り」と明記しています。ただし移転登記については、施行令42条4項が例外を定めており、新築した者が所有権移転登記に応じないため新築後1年以内に訴えを提起した場合には、その訴えに係る判決の確定等の日から1年を経過する日までとされています。
第五に、市町村長または特別区の区長の証明を受けること。施行令41条が「当該個人の申請に基づき当該家屋の所在地の市町村長又は特別区の区長が証明したもの」としており、実務ではこれが住宅用家屋証明書として登記申請書に添付されます。
中古住宅の耐震要件
建築後使用されたことのある住宅用家屋、つまり中古住宅について73条の軽減を受ける場合には、施行令42条1項2号の要件が加わります。
同号は、当該家屋が建築基準法施行令第3章および第5章の4の規定もしくは国土交通大臣が財務大臣と協議して定める地震に対する安全性に係る基準に適合するものであること、または昭和57年1月1日以後に建築されたものであることとしています。
かつては築後20年以内、耐火建築物であれば25年以内という築年数の要件でしたが、令和4年度の税制改正でこの築年数要件は廃止され、現行の形になりました。昭和57年1月1日という日付は、新耐震基準が施行された昭和56年6月1日以降に確認を受けた建物が翌年初めには登記されているであろう、という割り切りに基づくものです。二つの要件は選択的で、どちらかを満たせば足ります。古い教材には築年数要件のまま書かれているものがあるので注意してください。
取得の原因は売買または競落に限られる
見落としやすい、しかし出題価値の高い要件があります。73条の括弧書きは、対象となる取得を「売買その他の政令で定める原因によるものに限る」としており、その政令、すなわち租税特別措置法施行令42条3項は「法第七十三条に規定する政令で定める原因は、売買又は競落とする」と定めています。
つまり、贈与によって住宅を取得した場合、交換によって取得した場合、相続によって取得した場合には、73条の軽減は使えません。相続については本則自体が1000分の4なので実害は小さいのですが、贈与は本則1000分の20のままです。「個人が自己の居住用に取得した50平方メートル以上の住宅なら常に0.3パーセント」と覚えていると、贈与のケースで誤ります。
土地には適用がない
これらの軽減は「住宅用家屋」に対する措置であって、土地には適用がありません。土地付きの一戸建てを購入した場合、建物の所有権移転登記には73条の1000分の3が適用されますが、土地の所有権移転登記には適用されません。
ただし、土地には別の軽減があります。租税特別措置法72条1項は、個人または法人が平成25年4月1日から令和11年3月31日までの間に、土地に関する登記で売買による所有権の移転の登記を受ける場合、税率を1000分の15とし、所有権の信託の登記については1000分の3としています。
この72条は住宅用家屋の軽減とは性格が違います。第一に、取得するのが個人でも法人でもよい。第二に、居住用である必要も、床面積の要件もない。第三に、適用期限が令和11年3月31日で、住宅用家屋の軽減より2年長い。第四に、対象が土地であって建物ではない。宅地でも農地でも、売買による所有権移転登記であれば1000分の15です。
土地付き住宅を個人が購入した場合、土地は72条により1000分の15、建物は73条により1000分の3が適用されることになります。同じ一つの売買でも、土地と建物で根拠条文も税率も違うわけです。
期限のある特例であること
租税特別措置法による軽減は、その名のとおり期限を区切った特例です。72条の2から75条までの住宅用家屋に係る軽減は令和9年3月31日まで、72条の土地の売買による移転登記の軽減は令和11年3月31日までとされています。ただし、これまでも期限が到来するたびに延長や要件の見直しが繰り返されてきました。
宅建試験は当該年度の4月1日現在施行の法令から出題されますから、受験年度の4月1日時点でどうなっているかを確認するのが正しい対応です。試験対策としては、期限の日付そのものより、「これは期限のある特例である」という性格と、軽減後の税率、そして要件を押さえるのが有効です。
納付と還付
現金納付が原則、印紙納付は例外
登録免許税法21条は、登記等を受ける者は登録免許税を国に納付し、その領収証書を登記等の申請書に貼り付けて登記官署等に提出しなければならないと定めています。これが原則で、現金納付といいます。
同法22条は例外を定めています。登記等につき課されるべき登録免許税の額が3万円以下である場合その他政令で定める場合には、その額に相当する金額の印紙を申請書に貼り付けて提出することにより納付できます。
印紙税と混同しやすいところですが、登録免許税の本来の納付方法は現金であり、印紙はあくまで一定の場合に認められる方法です。「登録免許税は収入印紙で納付する税である」という記述は、原則と例外を逆にした誤りになります。
同法23条は、官庁または公署が登記等を嘱託する場合の納付について定めており、この場合も3万円以下であれば印紙で納付できます。同法24条の2は、電子情報処理組織を使用する方法等による納付の特例を置いており、オンライン申請に対応した納付ができるようになっています。
納期限は登記を受ける時
登録免許税法27条1号は、免許等に係るもの以外の登録免許税について、納期限を「当該登録免許税の納付の基因となる登記等を受ける時」としています。申告して後日納めるのではなく、登記を受けるその時までに納付するということです。
納付しなければ登記が却下される
納付が済んでいなければ、登記そのものが受けられません。不動産登記法25条は登記官が申請を却下しなければならない場合を列挙しており、その12号が「登録免許税を納付しないとき」です。
印紙税を納めなくても契約は有効であるのに対し、登録免許税を納めなければ登記という目的が達成できない。同じ流通税でも、未納の効果はまったく違います。この対比は後の節でもう一度扱います。
不足があれば税務署長が徴収する
登録免許税法28条1項は、登記機関が納期限後に納付不足の事実を知ったときは、遅滞なく納税地の所轄税務署長に通知しなければならないと定めています。同条2項は、登記等を受けた者が2人以上ある場合には、登記機関が選定した者(権利者および義務者の申請に係るものであるときは権利者のうちから選定した者)の所轄税務署長に通知するとしています。
そして29条1項は、税務署長がその通知に係る登録免許税を、登記等を受けた者から徴収すると定めています。登記官が直接取り立てるのではなく、税務署長が徴収するという役割分担です。
過誤納があれば還付される
登録免許税法31条1項は、登録免許税を納付して登記等の申請をした者につき申請が却下された場合、申請の取下げがあった場合、または過大に登録免許税を納付して登記等を受けた場合に、登記機関が所轄税務署長に通知しなければならないと定めています。この通知に基づいて還付が行われます。
同条2項は、課税標準または税額の計算が法令に従っていなかったこと、または計算に誤りがあったことにより過誤納があるときは、登記等を受けた日から5年を経過する日までに、その旨を登記機関に申し出て通知をすべき旨を請求できるとしています。5年という期間制限があります。
同条3項は実務的に重要な仕組みです。登記等の申請の取下げにあわせて、申請書に貼り付けられた領収証書または印紙で消印がされたものを、取下げの日から1年以内に再使用したい旨の申出があったときは、登記機関は再使用することができる証明をすることができます。取り下げてもう一度出し直すときに、納めた分を無駄にしないための規定です。
印紙税では、いったん過怠税として徴収されたものは還付の確認手続に乗りません。登録免許税には過怠税に当たる制裁がなく、そもそも納付しなければ登記が却下されるだけです。制裁の設計そのものが違います。
行為への課税と文書への課税
ここからが2つの税を並べる意味です。登録免許税は登記という行為に、印紙税は文書の作成に課される。この起点の違いから、性質がどう枝分かれするかを軸ごとに見ます。
課税の起点
登録免許税は、別表第一に掲げる登記等について課されます(登録免許税法2条)。印紙税は、別表第一の課税物件の欄に掲げる文書に課されます(印紙税法2条)。
したがって、登記をしなければ登録免許税はかからず、文書を作らなければ印紙税はかかりません。そして、契約書を2通作れば2通とも印紙税がかかるのに対し、1個の登記について登録免許税が2回課されることはありません。文書は数えられる物ですが、登記は一つの行為だからです。
納税義務者
登録免許税の納税義務者は登記等を受ける者、印紙税の納税義務者は課税文書の作成者です。どちらも2人以上あるときは連帯納付義務を負います(登録免許税法3条、印紙税法3条2項)。連帯という結論は同じでも、誰が義務者になるかの決め方が違います。
さらに印紙税には、登録免許税にない仕掛けがあります。印紙税法4条5項は、国等と国等以外の者とが共同して作成した文書について、国等が保存するものは国等以外の者が作成したものとみなし、国等以外の者が保存するものは国等が作成したものとみなすと定めています。誰が作成者かが保存者によって入れ替わるのです。文書という物理的な存在を課税物件にしたからこそ、こういう規定が必要になります。行為に課税する登録免許税には、こうした逆転はありません。
課税標準
登録免許税の課税標準は不動産の価額または債権金額です。印紙税の課税標準は文書に記載された金額、すなわち記載金額です。
同じ取引でも基礎になる金額が違います。5,000万円で売買された土地の所有権移転登記は、固定資産税評価額を基礎に計算されます。ところが同じ売買の契約書の印紙税は、契約書に書かれた5,000万円を基礎に判定されます。評価額と契約金額のどちらを見るのか、税ごとに答えが違います。
用益権でも同じずれが生じます。地上権の設定登記の課税標準は不動産の価額ですが、土地の賃借権の設定に関する契約書の記載金額は権利金の額です。詳細は印紙税の課税文書一覧にあります。
納付の方法
登録免許税は現金納付が原則で、3万円以下等の場合に印紙納付が認められます(21条・22条)。印紙税は印紙の貼付と消印が原則で、税印・納付計器・書式表示といった特例があります(印紙税法8条から12条)。
名前に「印紙」とついているのは印紙税のほうで、登録免許税は原則現金。ここを反対に覚えると失点します。
納めなかったときの効果
これが最も差が大きい軸です。
登録免許税を納めなければ、不動産登記法25条12号により登記の申請が却下されます。目的が達成できません。制裁としての加算はなく、あとから税務署長が徴収します。
印紙税を納めなくても、契約は有効です。契約書が証拠として使えなくなるわけでもありません。制裁は過怠税で、貼付を怠れば本来の税額の3倍、自主的な申出があれば1.1倍、消印を怠れば消されていない印紙の額面金額相当額です(印紙税法20条)。
登録免許税は「払わないと先に進めない」税、印紙税は「払わなくても取引は進むが罰される」税。この違いは、登記が国の手続であるのに対し、文書の作成は私人が勝手にできる行為だという性質の違いから来ています。
電子化で扱いが逆になる
対比の山場がここです。
登記は、電子情報処理組織を使用したオンライン申請ができます。登録免許税法21条の括弧書きも24条の2も、オンライン申請を前提にした規定を置いています。しかし、オンラインで申請したからといって登録免許税がかからなくなるわけではありません。課税物件は登記という行為であって、申請書という紙ではないからです。
一方、印紙税は電磁的記録として作成され紙の文書が交付されない電子契約に課されません。印紙税法8条1項が「当該課税文書に……印紙を……はり付ける方法により」納付すると定めているとおり、納付の仕組み自体が紙を前提にしています。国税庁も電磁的記録には課税しない取扱いを示しています。
一つの不動産売買を完全に電子化した場合を考えてみます。契約は電子契約で結び、決済も電子的に行い、登記もオンラインで申請する。このとき、印紙税はゼロになりますが、登録免許税は1円も減りません。「電子化すれば税が減る」のではなく、「文書に課税する税だけが電子化で消える」のです。不動産取引の電子化の流れはIT重説と書面電子化、ITを活用した重要事項説明で扱っています。
抵当権をめぐる非対称
もう一つ、この対比が鮮やかに出る場面があります。
抵当権の設定登記には登録免許税が課されます。別表第一第一号(五)により、債権金額の1000分の4です。ところが抵当権の設定契約書には印紙税が課されません。印紙税法別表第一の課税物件表に、抵当権の設定に関する契約書は掲げられていないからです。
同じ抵当権について、登記という行為には課税し、契約書という文書には課税しない。課税物件が違うのだから、そうなるほかありません。委任状や媒介契約書に印紙税が課されないのも同じ理屈です(媒介契約の種類と規制)。
贈与をめぐる非対称
贈与でも逆向きの非対称が出ます。
登録免許税では、贈与による所有権移転登記は「その他の原因による移転」として1000分の20、本則で最も高い部類です。ところが印紙税では、不動産の贈与契約書は記載金額のない契約書として200円で済みます。贈与は無償の契約で、譲渡の対価となる金額が存在しないからです。
登録免許税は移転する物の価額を基礎にするので、無償でも物の価値がある限り高額になります。印紙税は文書に書かれた対価の金額を基礎にするので、対価がなければ最低額です。何を課税の手がかりにしているかの違いが、そのまま結論の違いになっています。
印紙税の最小限
対比のために必要な範囲で、印紙税の骨格を確認しておきます。詳細と出題パターンは印紙税の課税文書一覧にまとめてあります。
宅建で問われるのは1号・2号・17号
印紙税法別表第一の第1号文書には、不動産等の譲渡に関する契約書、地上権または土地の賃借権の設定または譲渡に関する契約書、消費貸借に関する契約書、運送に関する契約書が掲げられています。土地・建物の売買契約書、土地の賃貸借契約書、金銭消費貸借契約書がここに入ります。本則の税率は契約金額10万円以下が200円から始まり、50億円超の60万円まで段階的に上がります。記載金額が1万円未満のものは非課税です。
第2号文書は請負に関する契約書で、建物の建築工事請負契約書がこれに当たります。ここで注意が必要なのは、第2号の本則税率は契約金額100万円以下が一律200円だという点です。第1号は10万円で最初の段が切り替わるのに対し、第2号は100万円まで200円のまま。下のほうの刻みが第1号と違います。500万円超からは両者が完全に一致します。記載金額が1万円未満のものが非課税である点は第1号と同じです。
第17号文書は金銭または有価証券の受取書、すなわち領収書です。売上代金に係る受取書は受取金額に応じて課税され、記載金額が5万円未満のものは非課税です。「5万円以下」ではなく「5万円未満」なので、5万円ちょうどの領収書は課税されます。また、営業に関しない受取書は非課税です。個人が自宅を売却して受け取った代金の領収書は課税されず、宅建業者が自ら売主として受け取ったものは課税されます。
なお、不動産の譲渡に関する契約書と建設工事の請負に関する契約書については、租税特別措置法91条により税率が軽減されています。平成26年4月1日から令和9年3月31日までに作成されるもので、不動産譲渡契約書は契約金額10万円超、建設工事請負契約書は100万円超が対象です。
第7号文書の除外要件
第7号文書は継続的取引の基本となる契約書で、一通につき4,000円です。除外要件の読み方に注意が必要です。
課税物件表が掲げているのは「継続的取引の基本となる契約書(契約期間の記載のあるもののうち、当該契約期間が三月以内であり、かつ、更新に関する定めのないものを除く。)」です。除外されるのは、契約期間の記載があり、その期間が3か月以内であり、なおかつ更新に関する定めがないもの、という三つの条件をすべて満たす場合に限られます。
したがって、契約期間の記載がない契約書は除外されません。「3か月以内なら課税されない」という覚え方をしていると、期間無記載の契約書まで非課税だと誤ります。三つの条件がAND条件であることを押さえてください。
建物の賃貸借契約書は課税文書ではない
印紙税で最も狙われるのがここです。土地の賃貸借契約書は、土地の賃借権の設定に関する契約書として第1号文書に該当し課税されます。しかし建物の賃貸借契約書は、課税物件表のどこにも掲げられていないため課税文書に該当しません。
第1号が掲げているのは「地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書」であり、条文が土地に限定しているからです。賃貸借契約の実務上の注意点は賃貸借契約の注意点、賃貸借の法律関係そのものは賃貸借で扱っています。
試験での出題ポイント
課税標準の取り違え
「抵当権の設定登記の課税標準は、抵当権が設定される不動産の価額である」は誤りです。債権金額が課税標準です。逆に「所有権の移転登記の課税標準は、売買代金の額である」も誤りで、固定資産課税台帳に登録された価格を基礎とします。さらに「地上権の設定登記の課税標準は権利金の額である」も誤りで、不動産の価額です。何を公示する登記かという原理に戻れば判断できます。
税率の原因による違い
相続・法人の合併による移転が1000分の4、共有物の分割による移転が1000分の4、その他の原因による移転が1000分の20という区別が、原因を入れ替えて出題されます。とくに贈与を1000分の4とする選択肢は定番です。共有物の分割が低いほうに入ることも押さえてください。
軽減措置の対象と要件
「法人が取得した住宅用家屋にも軽減税率が適用される」は誤りです。個人が自己の居住の用に供する場合に限られます。「住宅用家屋の敷地である土地の所有権移転登記にも72条の2の軽減が適用される」も誤りで、軽減の対象は家屋です。床面積50平方メートル以上、取得後1年以内の登記という数字も、45平方メートルや2年に置き換えられます。そして、73条の対象となる取得の原因が売買または競落に限られる点も、贈与や交換に置き換えて出題できる箇所です。
表示に関する登記の両方向の引っかけ
「建物を新築した場合の表題登記にも登録免許税が課される」は誤りです。表題登記は別表第一に掲げられていないため課税範囲外です。しかし「表示に関する登記には一切登録免許税が課されない」も誤りで、所有権の登記のある不動産の分筆・合筆・分割・区分・合併による表示の変更の登記は、不動産1個につき1,000円が課されます。両方向の引っかけがあります。
納付方法と未納の効果
「登録免許税は収入印紙を貼り付けて納付するのが原則である」は誤りです。原則は現金納付で、3万円以下等の場合に印紙納付ができます。また「登録免許税を納付しなくても登記は受けられる」も誤りで、不動産登記法25条12号により申請は却下されます。印紙税との対比が問われる形もあります。
印紙税との比較で問われる形
「登録免許税も印紙税も、納付しなければ登記または契約の効力が生じない」といった、両者を同一視させる選択肢が作られます。登録免許税の未納は登記申請の却下、印紙税の未納は過怠税であって契約は有効です。また「登記をオンラインで申請した場合、登録免許税は課されない」も誤りです。電子化で消えるのは文書課税である印紙税のほうです。
覚え方・整理の仕方
課税標準は「何を公示する登記か」から引く
所有権の登記は物の帰属を公示するから物の価額、用益権の登記も物の上の権利を公示するから物の価額、抵当権の登記は債権の担保を公示するから債権金額。この一文を覚えておけば、課税標準を丸暗記する必要がありません。そのうえで、物の価額は売買価格ではなく固定資産税評価額である、という点だけを追加で押さえます。
税率は「形式的な移転は安い」で束ねる
低いほうに集まるのは、保存登記、相続・合併による移転、共有物の分割による移転、そして抵当権の設定です。高いほうに集まるのは、売買・贈与・交換など当事者の意思で権利者が入れ替わる移転と、用益権の設定です。
個別の数字を並べるのではなく、「形式的な承継や整理は安く、実質的な移転は高い」という一本の軸で束ねてください。所有権では0.4と2.0、用益権では0.2と1.0、抵当権の移転では0.1と0.2。いずれも同じ構造が繰り返され、比率もおおむね一定です。
軽減税率は本則との組で覚える
保存登記は0.4パーセントが0.15パーセント、移転登記は2パーセントが0.3パーセント、抵当権設定は0.4パーセントが0.1パーセント。数字を三つ覚えるのではなく、「本則がいくらで軽減後がいくらか」の三組として覚えると、どちらを問われても答えられます。並べると、移転登記の下げ幅だけが突出して大きいことも見えます。
土地は別枠で、売買による移転登記が2パーセントから1.5パーセントへ、期限は令和11年3月31日。家屋の軽減が令和9年3月31日であるのと2年ずれている点も、区別の手がかりになります。
要件は「誰が・何を・いつまでに」で三点固定
住宅用家屋の軽減の要件は、誰が(個人が自己の居住用に)、何を(床面積50平方メートル以上の住宅用家屋を、売買または競落により)、いつまでに(取得後1年以内に登記)の三点で固定します。中古住宅ならこれに耐震要件が一つ足され、手続として市町村長の証明が要る。この形で覚えると、要件の一部を入れ替えた選択肢に気づけます。
2つの税は「行為か文書か」で対比する
登録免許税は登記を受けるという行為に課され、印紙税は課税文書を作成するという行為に課されます。この起点の違いから、他の性質はすべて導けます。
納税義務者は、登記を受ける者か、文書の作成者か。課税標準は、不動産の価額または債権金額か、記載金額か。納付は、現金が原則で3万円以下等は印紙か、印紙の貼付と消印か。未納の効果は、登記申請の却下か、過怠税のみで契約は有効か。電子化の影響は、受けないか、課税されなくなるか。
抵当権の設定登記には登録免許税が課されるのに抵当権設定契約書には印紙税が課されない、という一見ちぐはぐな結論も、課税の起点が違うと理解すれば迷いません。
学習の優先順位
税・その他の分野で税に割り当てられるのは例年2問程度です。登録免許税は印紙税と並ぶ国税側の出題候補で、毎年出るわけではありません。不動産取得税・固定資産税といった地方税や譲渡所得の特例を先に固めたうえで、登録免許税は課税標準と原因別税率、住宅用家屋の軽減の三点に絞って回すのが効率的です。分野全体の配分は税・その他の攻略法、譲渡時の税は譲渡所得税を参照してください。
理解度チェッククイズ
第1問
住宅用の家屋を購入して抵当権の設定登記を受ける場合、登録免許税の課税標準は、抵当権が設定される当該家屋の固定資産課税台帳に登録された価格である。
答えは誤りです。抵当権の設定登記の課税標準は、別表第一第一号(五)により債権金額、極度金額または不動産工事費用の予算金額です。不動産の価額を課税標準とするのは所有権に関する登記や用益権の設定登記であり、抵当権の設定登記ではありません。抵当権の登記はいくらの債権を担保しているかを公示するものなので、債権の額が基礎になります。なお、住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記については、租税特別措置法75条により税率が1000分の1に軽減されます。
第2問
個人が自己の居住の用に供するため、床面積60平方メートルの中古住宅を父からの贈与により取得し、取得後6か月で所有権移転登記を受けた場合、租税特別措置法73条の軽減税率の適用を受けることができる。
答えは誤りです。個人であること、自己の居住の用に供すること、床面積50平方メートル以上であること、取得後1年以内に登記を受けることという要件は満たしています。しかし73条は対象となる取得を「売買その他の政令で定める原因によるものに限る」としており、租税特別措置法施行令42条3項がその原因を「売買又は競落」に限定しています。贈与による取得は対象外です。したがって本則の1000分の20が適用されます。
第3問
建物を新築した場合に受ける表題登記については登録免許税が課されないので、所有権の登記のある土地の分筆の登記についても登録免許税は課されない。
答えは誤りです。前段は正しく、表題登記は登録免許税法別表第一に掲げられていないため課税範囲に入りません。しかし別表第一第一号(十三)イは、所有権の登記のある不動産の表示の変更の登記のうち、土地の分筆または建物の分割もしくは区分による登記事項の変更の登記を掲げており、分筆後の不動産1個につき1,000円が課されます。同(十三)ロにより、合筆や建物の合併も同様です。「表示に関する登記はすべて課されない」と言い切ると誤りになります。
第4問
売買による所有権の移転登記を受ける場合、登記権利者である買主のみが登録免許税の納税義務者であり、登記義務者である売主は納税義務を負わない。
答えは誤りです。登録免許税法3条は、登記等を受ける者を納税義務者とし、その者が2人以上あるときは連帯して納付する義務を負うとしています。売買による所有権移転登記は買主と売主が共同して申請しますから、双方が納税義務者であり連帯納付義務を負います。実務上は買主が全額を負担する取り決めをすることが多いのですが、当事者間の合意によって国に対する納税義務者が変わるわけではありません。
第5問
登録免許税を納付しないまま登記を申請した場合、登記官はその申請を却下しなければならない。
答えは正しい記述です。不動産登記法25条は登記官が申請を却下しなければならない場合を列挙しており、その12号が「登録免許税を納付しないとき」です。この点は印紙税と対照的で、印紙を貼らなかった契約書であっても契約は有効であり、制裁は過怠税にとどまります。登録免許税は納めなければ目的である登記が得られない税、印紙税は納めなくても取引は進むが制裁を受ける税だと整理できます。
第6問
不動産の売買契約を電子契約により締結し、その所有権移転登記をオンラインで申請した場合、印紙税も登録免許税も課されない。
答えは誤りです。印紙税については、電磁的記録として作成され紙の文書が交付されない電子契約に課税しない取扱いがとられており、この部分は正しいといえます。しかし登録免許税は登記という行為に対して課される税であって、申請書という紙に課される税ではありません。オンライン申請であっても登録免許税は通常どおり課されます。文書課税である印紙税だけが電子化によって消える、という非対称が問われる形です。
まとめ
登録免許税は、別表第一に掲げる登記等について課される国税です(2条)。納税義務者は登記等を受ける者で、2人以上あるときは連帯納付義務を負います(3条)。課税標準は、所有権や用益権に関する登記であれば不動産の価額、担保権の登記であれば債権金額です。不動産の価額は附則7条により固定資産課税台帳の登録価格を基礎とし、売買価格ではありません。
税率は原因で分かれます。所有権の保存と、相続・合併による移転、共有物の分割による移転が1000分の4、その他の原因による移転が1000分の20。用益権は設定とその他の原因による移転が1000分の10、相続・合併と分割による移転が1000分の2。抵当権の設定が1000分の4、移転は相続・合併が1000分の1、その他が1000分の2。形式的な承継は安く、実質的な移転は高い、という一本の軸で束ねられます。
住宅用家屋については、租税特別措置法72条の2で保存が1000分の1.5、73条で移転が1000分の3、75条で抵当権設定が1000分の1に軽減されます。個人が自己の居住用に、床面積50平方メートル以上の住宅を、売買または競落により取得し、取得後1年以内に登記を受けることが要件です。中古住宅には耐震要件が加わります。土地には適用がなく、土地は72条により売買による移転登記が1000分の15とされています。いずれも期限のある特例です。
納付は現金が原則で、3万円以下等の場合に印紙納付が認められます(21条・22条)。納めなければ不動産登記法25条12号により登記申請が却下されます。過誤納があれば還付され、取下げの場合は再使用証明という仕組みもあります(31条)。
そして印紙税との関係は、行為への課税か文書への課税かという一点に尽きます。登記をしなければ登録免許税はかからず、文書を作らなければ印紙税はかかりません。契約書を2通作れば印紙税は2通分ですが、登録免許税は登記の回数で決まります。取引を完全に電子化すると印紙税は消えますが、登録免許税は残ります。印紙税の側の詳細は印紙税の課税文書一覧にまとめてあります。
登録免許税の課税標準と原因別税率、住宅用家屋の軽減要件は、アプリの税・その他の分野別演習で繰り返し確認できます。
税と価格の評定は毎年ほぼ同じ形で出ます。出題パターンを肢別で押さえれば取りこぼしません。