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契約不適合責任|買主の4つの権利と期間制限

権利関係 読了 約23分

契約不適合責任を民法562条以下から整理。追完請求・代金減額・損害賠償・解除の要件と帰責事由の要否、566条の通知期間、危険の移転567条、競売の特則568条まで解説します。

目次

    本記事の役割 — この記事は民法の一般則としての契約不適合責任を扱います。宅地建物取引業法40条による特約の制限は契約不適合責任の特約制限、新築住宅についての上乗せである品確法と住宅瑕疵担保履行法は住宅瑕疵担保履行法にそれぞれ譲ります。

    契約不適合責任は、2020年4月1日施行の債権法改正で最も大きく組み替えられた領域の一つです。改正前は「瑕疵担保責任」と呼ばれていましたが、名称が変わっただけではありません。法律構成そのものが入れ替わり、買主が使える手段の数も、期間制限の中身も変わりました。

    したがって、この分野で最も危険なのは古い理解が混ざることです。「隠れた瑕疵」という要件を探す、1年以内に権利行使が必要だと考える、買主の手段を損害賠償と解除の二つだと思う。いずれも改正前の枠組みです。

    この記事では現行の民法562条以下を条文の順にたどり、どこがどう変わったのかを対照しながら整理します。「瑕疵」という語は現行の売買の規定では使われていません。ただし住宅の品質確保の促進等に関する法律と特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律は、現在も「瑕疵」という語を用いる法律なので、その文脈では言い換えません。

    瑕疵担保責任から契約不適合責任へ

    法律構成が入れ替わった

    改正前の瑕疵担保責任については、その法的性質をめぐって議論がありました。売買の目的物に隠れた瑕疵があった場合の責任を、契約から生じる債務不履行責任と見るのか、それとは別に法が特別に定めた責任と見るのか。後者の理解が有力とされ、そのため賠償の範囲や期間制限の扱いが債務不履行の一般則と切り離されて論じられていました。

    現行法はこの対立を立法的に決着させました。引き渡された目的物が契約の内容に適合しないことを、売主の債務が履行されていない状態として捉える。つまり契約責任として整理されたわけです。

    この整理から結論が導かれます。買主が使えるのは債務不履行の一般則で用意された手段であり、損害賠償は415条、解除は541条・542条によることになります。だから564条は「前二条の規定は、第415条の規定による損害賠償の請求並びに第541条及び第542条の規定による解除権の行使を妨げない」という書き方をしているのです。契約不適合責任は独立した特別な制度ではなく、債務不履行の枠の中に置かれていると理解してください。債務不履行の一般則は債務不履行と損害賠償・解除にまとめています。

    「隠れた」という要件は消えた

    改正前の条文は「隠れた瑕疵」を要件としていました。買主が知らず、かつ知らなかったことに過失がない場合に限って責任を追及できるという構造です。

    現行法にこの限定はありません。562条1項は「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」と定めるだけで、買主が知っていたかどうかを要件にしていません。

    判断の基準が「隠れているか」から「契約の内容に適合しているか」に移ったということです。買主が不適合を知っていた場合の扱いは、その事情を踏まえて何が契約の内容とされていたかという解釈の問題になります。要件のレベルから解釈のレベルへ移ったという整理です。

    買主の手段が四つに整理された

    改正前に条文が用意していたのは、損害賠償請求と契約の解除でした。修補を求める権利や代金の減額を求める権利は、条文上明確ではありませんでした。

    現行法は四つを明文化しています。追完請求(562条)、代金減額請求(563条)、損害賠償請求(564条・415条)、解除(564条・541条・542条)です。

    改正の要点を一言でまとめれば、契約責任として整理され、隠れているという要件が外れ、手段が四つに増え、期間制限が「権利行使」から「通知」に変わったということになります。改正論点の全体像は権利関係の民法改正まとめにあります。

    何が「契約不適合」か

    種類・品質・数量の不適合

    562条1項が挙げる不適合は三つです。種類、品質、数量。

    種類の不適合は、契約で定めた物とは別の種類の物が引き渡された場合。品質の不適合は、引き渡された物が契約で想定された品質を備えていない場合で、建物の雨漏りやシロアリ被害、土壌汚染などが典型です。数量の不適合は、契約で定めた数量に足りない場合です。

    いずれの基準も「契約の内容に適合しないこと」です。したがって何が契約の内容だったのかが出発点になります。契約書の文言だけでなく、契約の性質や目的、締結に至る経緯といった事情を踏まえて判断されます。

    たとえば中古住宅であれば、築年数に応じた通常の劣化は契約の内容として織り込まれているのが普通なので、それ自体は不適合になりません。他方、通常想定される範囲を超える構造上の欠陥があれば不適合となりえます。新築か中古か、価格や説明の内容がどうだったかによって、同じ状態でも結論が変わりうるというのが契約責任として整理したことの帰結です。中古住宅の実務的な注意点は瑕疵(契約不適合)とは?中古住宅購入時の注意点にまとめています。

    権利の不適合も対象になる

    対象は物の状態だけではありません。565条は「前三条の規定は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合(権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときを含む。)について準用する」と定めます。

    売った土地に他人の地上権が付いていた、所有権の一部が他人に属していて全部を移転できなかった、といった場面です。物の不適合と権利の不適合が、同じ枠組みで扱われるようになりました。

    ここで条文の技術的な部分を押さえてください。565条が準用するのは「前三条」、すなわち562条・563条・564条です。566条は準用されていません。この点が後で述べる期間制限の適用範囲に直結します。

    買主の四つの権利

    追完請求(562条)

    562条1項は、買主は売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる、と定めます。

    三つの方法が並んでいます。修補は物を直すこと、代替物の引渡しは契約に適合する別の物を渡すこと、不足分の引渡しは足りない分を追加で渡すこと。まず選ぶのは買主です。

    ただし同項ただし書があります。売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。買主が代替物を求めても、修補で足りて買主に不相当な負担を課さないのであれば、売主は修補で対応できるということです。

    2項は、その不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は追完の請求をすることができないと定めます。

    代金減額請求(563条)

    563条1項は、562条1項本文の場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主はその不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる、と定めます。

    順序が条文に組み込まれている点が要点です。いきなり減額を求めるのではなく、まず追完を求め、それがされないときに減額に進む。追完が原則で、代金減額はその次という関係です。

    理由も筋が通っています。契約は本来のとおり履行されるのが望ましいので、まず直す機会を売主に与える。それでも直らないなら、受け取った物の価値に見合うところまで代金を下げる。契約の維持を優先し、次善の策として対価を調整するという段階構成です。

    もっとも、催告が無意味な場面もあります。2項は、次の場合には催告をすることなく直ちに代金の減額を請求できるとして四つを挙げます。履行の追完が不能であるとき(1号)。売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき(2号)。契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき(3号)。前三号に掲げる場合のほか、買主が催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき(4号)。

    いずれも催告しても追完が期待できない場合という共通点があります。3項は、不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは代金減額請求ができないと定め、562条2項と同じ制限を置いています。

    損害賠償請求(564条・415条)

    564条により、買主は415条の規定による損害賠償を請求できます。415条がそのまま働くということです。

    したがって415条1項ただし書も適用されます。その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、損害賠償を請求できません。

    四つの権利のうち、売主の帰責事由が必要なのは損害賠償だけです。ここが最も問われます。

    賠償の範囲も416条の一般則によります。通常生ずべき損害に加え、特別の事情によって生じた損害については予見すべきであった場合に賠償の対象になります。改正前は賠償の範囲が限定的に解されていましたが、契約責任として整理されたことで一般則に揃いました。

    同じ理由から、債務不履行についての規定がそのまま働きます。買主の側にも落ち度があれば418条の過失相殺が適用され、裁判所は損害賠償の責任及びその額を定めます。契約不適合責任のためだけの特別な賠償ルールは用意されていないと理解しておけば、周辺の規定を個別に覚える必要がなくなります。

    解除(564条・541条・542条)

    564条により、買主は541条・542条の規定による解除権を行使できます。

    催告解除(541条)は、相当の期間を定めて追完の催告をし、その期間内に追完がないときにできます。ただし同条ただし書により、その期間を経過した時における債務の不履行が契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは解除できません。

    無催告解除(542条)は、全部の履行が不能であるとき、債務者が履行を拒絶する意思を明確に表示したときなど、542条1項各号の場合にできます。

    そして重要な点として、解除に売主の帰責事由は必要ありません。改正により、解除は債務者への制裁ではなく債権者を契約の拘束から解放する制度として整理されたためです。「売主に帰責事由がなければ解除できない」は誤りになります。

    四つを帰責事由で分ける

    四つの権利を整理すると、境目は明快です。

    売主の帰責事由が必要なのは損害賠償のみ。追完請求、代金減額請求、解除はいずれも不要です。

    買主の帰責事由があると使えないのは追完請求と代金減額請求。562条2項と563条3項が明文で定めています。

    催告が原則として必要なのは代金減額請求と催告解除。追完請求と損害賠償請求には催告の要件がありません。

    この三つの軸で並べれば、四つの権利の要件は再現できます。

    期間制限は「通知」で足りる

    566条の構造

    566条は、売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主はその不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない、と定めます。

    求められているのは「通知」であって「権利行使」ではありません。改正前は1年以内に権利を行使することが必要とされていましたが、現行法は不適合がある旨を伝えれば足ります。1年以内に損害額を算定して請求する必要はなく、どの権利を行使するかを決めておく必要もありません。

    「1年以内に権利を行使しなければならない」は誤り。「1年以内に通知しなければならない」が正しい。この置き換えが最も狙われます。

    ただし書もあります。売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この期間制限は適用されません。知りながら引き渡した売主を保護する必要はないという趣旨です。

    対象は種類と品質だけ

    566条の見出しは「目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限」です。条文の本文も「種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物」と限定しています。

    したがって、数量の不適合には566条の期間制限が適用されません。562条1項が種類・品質・数量の三つを対象にしているのに対し、566条は二つに絞られているという構造です。

    権利の不適合にも適用されません。565条が準用するのは「前三条」すなわち562条から564条までであり、566条は準用の対象に入っていないからです。

    期間制限を置いた趣旨から考えると理解しやすくなります。種類や品質の不適合は、時間が経つと引渡し時の状態が分からなくなり、売主が防御しにくくなります。他方、数量の不足は測れば分かり、権利の状態は登記等で確認できます。証拠が失われやすい類型についてだけ、早めの通知を求めているという整理です。

    通知しても時効にはかかる

    566条をクリアしても、それで無期限になるわけではありません。166条の消滅時効は別に働きます。

    166条1項は、債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、または権利を行使することができる時から10年間行使しないときに、時効によって消滅すると定めます。

    566条の通知は「入口の門」、166条の時効は「出口の門」です。1年以内に通知して入口を通っても、その後に権利を行使しないまま5年または10年が過ぎれば時効で消滅します。時効の起算点や完成猶予・更新の仕組みは時効にまとめています。

    引渡し後に滅失したらどうなるか

    567条は危険の移転を定めます。

    1項は、売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、買主は、その滅失又は損傷を理由として、追完請求、代金減額請求、損害賠償請求及び解除をすることができない、と定めます。そして「この場合において、買主は、代金の支払を拒むことができない」と続きます。

    引渡しを境に危険が買主に移るという規律です。引渡し後に地震や火災で建物が損傷しても、買主は代金を全額支払わなければならず、契約不適合を理由とする手段も使えません。

    2項は受領遅滞の場合を同じに扱います。売主が契約の内容に適合する目的物をもって引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず、買主が受領を拒み、又は受けることができない場合において、その履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失・損傷したときも1項と同様、というものです。

    引渡しがあれば引渡し時、引渡しがなくても適合する物の提供があって買主が受け取らなければ提供時。どちらも買主側に落ち度がある場面に危険を移す形になっています。危険負担の一般的な枠組みは危険負担にあります。

    なお、引渡し前に当事者双方の責めに帰することができない事由で滅失した場合は567条の場面ではなく、危険負担の一般則(536条1項)により買主は反対給付の履行を拒むことができます。境目は引渡しまたは適合する物の提供です。取引の流れの中でいつ引渡しが来るかは不動産売買の流れで確認できます。

    競売には特則がある

    568条は競売における担保責任の特則を置きます。

    1項は、民事執行法その他の法律の規定に基づく競売における買受人は、541条・542条および563条(565条において準用する場合を含む)の規定により、債務者に対し、契約の解除をし、又は代金の減額を請求することができると定めます。

    2項は、債務者が無資力であるときは、買受人は代金の配当を受けた債権者に対し、その代金の全部または一部の返還を請求することができるとします。

    3項は、債務者が物もしくは権利の不存在を知りながら申し出なかったとき、または債権者がこれを知りながら競売を請求したときは、買受人はこれらの者に対し損害賠償を請求することができるとします。

    そして最も重要なのが4項です。前三項の規定は、競売の目的物の種類又は品質に関する不適合については、適用しない。

    つまり、競売では種類・品質の不適合について担保責任を追及できません。競売の目的物は債務者の意思によらずに売却され、買受人も現況で買うことが前提になっているためです。

    通常の売買と競売の違いを整理しておいてください。通常の売買では種類・品質・数量・権利のすべてが対象になりますが、競売では種類・品質が外れ、しかも使えるのは解除と代金減額に限られます。損害賠償ができるのは3項の悪意の場合だけです。

    免責特約はどこまで有効か

    民法の契約不適合責任の規定は任意規定です。当事者の合意で内容を変えることができ、責任を負わない旨の特約も原則として有効です。

    ただし572条が限界を定めています。売主は、562条1項本文または565条に規定する場合における担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実および自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。

    二つの場面が挙げられています。不適合を知りながら買主に告げなかった場合と、売主自身が第三者のために権利を設定したり第三者に譲り渡した場合です。いずれも売主の側に責められる事情があるので、免責特約の効力を認める理由がありません。後者は、免責特約を結んでおきながら自分で不適合を作り出すという場面であり、そのような行為まで特約で覆えるとするのは筋が通らないからです。

    免責特約は有効だが、知って黙っていた分は免れない。これが民法レベルの限界です。条文が「知りながら告げなかった事実」と書いていることにも注意してください。単に知らなかった場合は免責特約の効力が及び、知っていて言わなかったことが要件になっています。売主に不適合の調査義務まで課しているわけではありません。

    そのうえで、売主が宅地建物取引業者で買主が宅建業者でない場合には、宅地建物取引業法40条による別の制限がかかります。民法572条の限界とは別の、業法上の規制です。中身は契約不適合責任の特約制限にまとめており、8種制限の中での位置づけは8種制限とはで扱っています。

    新築住宅については、住宅の品質確保の促進等に関する法律による上乗せがあり、その履行を確保するための制度が特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律です。これらは現在も「瑕疵」という語を用いる法律で、詳細は住宅瑕疵担保履行法住宅瑕疵担保履行法の供託額にあります。

    不動産取引での現れ方

    物理的な不具合

    実務で問題になる典型が、雨漏り、シロアリ被害、給排水設備の不具合、土壌汚染、地中埋設物です。いずれも品質の不適合として扱われることになります。

    これらは重要事項説明の場面とも接続します。既存建物については建物状況調査の結果の概要が説明事項になっており(宅地建物取引業法35条1項6号の2)、調査で判明した事項が契約の内容の形成に影響します。説明を受けて了解したうえで買ったのであれば、その状態は契約の内容に織り込まれたと評価される余地が生じます。説明事項の全体像は35条書面の記載事項一覧にあります。

    心理的な事情

    物件で人が亡くなったといった事情も、品質の不適合として争われることがあります。物理的な欠陥がなくても、買主や借主の判断に影響する事情だからです。

    宅建業者の告知のあり方については、国土交通省が令和3年10月8日に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表し、どのような場合に告げる必要があるかについての考え方を示しています。判断の枠組みは心理的瑕疵と告知義務で詳しく扱っています。

    なお、告知義務の問題と契約不適合責任の問題は別の話です。告知しなかったことが宅建業法上の問題になるかどうかと、引き渡された物が契約の内容に適合していたかどうかは、それぞれ別に判断されます。

    他の制度との競合

    同じ事実が別の制度の要件も満たすことがあります。土地の面積が契約と違っていた場合、数量の不適合であると同時に錯誤(95条)の要件を満たす可能性があります。この場合、買主は契約不適合責任に基づく手段と錯誤による取消しのいずれも主張しうると解されています。意思表示の瑕疵の枠組みは意思表示の瑕疵にまとめています。

    不適合によって人身損害が生じた場合には、不法行為責任(709条)も別に問題になります。契約責任と不法行為責任の関係は不法行為で扱っています。

    試験での出題ポイント

    旧制度の用語と枠組み

    「引き渡された建物に隠れた瑕疵があった場合」という記述は、現行の売買の規定に「隠れた」という要件がない以上、条文の枠組みとしては誤りです。現行法の基準は「契約の内容に適合しないこと」です。

    ただし品確法と住宅瑕疵担保履行法の文脈では「瑕疵」が現行法の用語なので、そちらを「契約不適合」と言い換えた記述は逆に不正確になります。どの法律の話かで用語が変わる点に注意してください。

    期間制限は通知

    「買主は、不適合を知った時から1年以内に損害賠償を請求しなければならない」は誤りです。566条が求めているのはその旨を売主に通知することです。

    期間制限の対象

    「数量の不足を理由とする代金減額請求は、不適合を知った時から1年以内に通知しなければ行使できない」は誤りです。566条の対象は種類又は品質に限られます。権利の不適合についても、565条が準用するのは前三条だけなので566条は及びません。

    帰責事由の要否

    「売主に帰責事由がなければ、買主は契約を解除することができない」は誤りです。解除に帰責事由は不要で、必要なのは損害賠償だけです。逆に「追完請求には売主の帰責事由が必要」も誤りになります。

    代金減額の順序

    「買主は、追完の催告をすることなく直ちに代金の減額を請求することができる」は、原則としては誤りです。563条1項は相当の期間を定めた追完の催告を要求しており、催告なしに請求できるのは同条2項各号に当たる場合に限られます。

    追完方法の選択

    「買主が代替物の引渡しを請求した場合、売主は修補による追完をすることができない」は誤りです。562条1項ただし書により、買主に不相当な負担を課するものでないときは、売主は買主が請求した方法と異なる方法で追完できます。

    引渡し後の滅失

    「引渡し後に当事者双方の責めに帰することができない事由で建物が焼失した場合、買主は代金の支払を拒むことができる」は誤りです。567条1項は「買主は、代金の支払を拒むことができない」と明記しています。

    競売の特則

    「競売により建物を買い受けた者は、その建物に品質の不適合があった場合、債務者に対して代金の減額を請求することができる」は誤りです。568条4項が、競売の目的物の種類又は品質に関する不適合については前三項を適用しないと定めています。

    免責特約の限界

    「担保責任を負わない旨の特約をした売主は、不適合を知りながら買主に告げなかった場合でも責任を免れる」は誤りです。572条が、知りながら告げなかった事実については責任を免れることができないとしています。

    覚え方・整理の仕方

    「原則は直す、次に下げる」

    四つの権利の関係は、契約をどこまで生かすかという順序で並べると自然に頭に入ります。

    まず追完。契約どおりの物にしてもらう。これが本筋です。次に代金減額。直らないなら、受け取った物に見合う値段まで下げる。契約は維持したままです。そして損害賠償。それでも埋まらない損失を金銭で埋める。最後に解除。契約そのものをやめる。

    直す、下げる、埋める、やめる。この順に契約から離れていくと捉えれば、代金減額に催告が要る理由(まず直す機会を与える)も、解除に軽微性の限界がある理由(軽微な不履行で契約全体をやめるのは行き過ぎ)も、同じ発想から出ていることが見えます。

    帰責事由は「損害賠償だけ」

    四つのうち売主の帰責事由が必要なのは損害賠償だけです。理由も一貫しています。

    追完・代金減額・解除は、受け取った物が契約に合っていないという客観的な状態を是正する手段です。売主に落ち度があるかは関係ありません。これに対して損害賠償は、不履行によって生じた損失を売主に転嫁するものなので、転嫁を正当化する事情として帰責事由が要る。

    「状態の是正」に帰責事由は要らず、「損失の転嫁」に帰責事由が要る。この線引きで覚えてください。

    買主の帰責事由は「請求系だけ」を封じる

    買主の側に帰責事由がある場合を封じているのは、562条2項と563条3項、すなわち追完請求と代金減額請求です。損害賠償と解除については、これに対応する明文の規定が置かれていません。

    買主の帰責事由の規定があるのは前二条だけという形で、条文の配置ごと覚えるのが確実です。

    566条は「種類・品質」の二つだけ

    期間制限の対象を覚えるには、562条と566条の対象のずれに注目してください。

    562条1項は種類・品質・数量の三つ。566条は種類・品質の二つ。そして565条が準用するのは562条から564条までで、566条は入っていない。

    手段の入口は四類型(種類・品質・数量・権利)に開かれているが、1年の通知が要るのは種類・品質の二つだけ。この対比を押さえれば、数量不足や権利の不適合について1年の通知を要求する選択肢に反応できます。

    引渡しを境界線として意識する

    567条の危険の移転は、引渡しという一点を境界線にする規定です。

    引渡し前に双方に責任のない事由で滅失すれば、買主は代金の支払を拒める(536条1項)。引渡し後なら拒めない(567条1項)。そして引渡しがなくても、適合する物の提供があって買主が受け取らなければ、提供の時が境界になる(同条2項)。

    「渡したか」「渡そうとしたのに受け取らなかったか」で危険が移る。どちらも買主の側に事情がある場面です。

    競売は「種類・品質が外れる」

    568条は4項が結論を決めています。競売では種類・品質の不適合について責任を追及できない。

    裏返せば、追及できるのは権利の不適合と数量の不適合についてであり、手段も解除と代金減額に限られます(1項)。損害賠償は3項の悪意の場合だけです。

    通常の売買より狭い。この方向だけ覚えておけば、競売で建物の雨漏りを理由に減額を求められるかという問いに即答できます。権利関係全体での位置づけは権利関係の頻出論点を参照してください。

    理解度チェッククイズ

    問1 売買の目的物である土地の面積が契約で定めた面積より不足していた場合、買主は、その不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければ、代金の減額を請求することができない。

    答え:×。566条の期間制限の対象は「種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物」に限られており、数量の不適合には適用されません。面積の不足は数量の不適合なので、1年以内の通知は要件になりません。ただし166条の消滅時効は別に働くため、権利を行使することができることを知った時から5年、行使することができる時から10年で時効消滅します。なお権利の不適合についても、565条が準用するのは562条から564条までであり566条は準用されないため、同様に1年の通知は要件になりません。

    問2 引き渡された建物に雨漏りがあった場合、買主は、売主に帰責事由がなければ契約を解除することができない。

    答え:×。契約不適合を理由とする解除は564条により541条・542条の規定によりますが、解除に債務者の帰責事由は必要ありません。改正により、解除は債務者への制裁ではなく債権者を契約の拘束から解放する制度として整理されました。四つの権利のうち売主の帰責事由が必要なのは損害賠償だけで(415条1項ただし書)、追完請求・代金減額請求・解除には不要です。ただし催告解除については、催告期間経過時の不履行が契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは解除できません(541条ただし書)。

    問3 買主が代替物の引渡しによる追完を請求した場合、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、修補による追完をすることができる。

    答え:○。562条1項ただし書がそのとおり定めています。追完の方法は修補、代替物の引渡し、不足分の引渡しの三つで、まず買主が選びますが、売主は買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができます。買主の選択が絶対ではないという点が条文の要点です。なお不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は追完請求そのものができません(同条2項)。

    問4 売主が買主に建物を引き渡した後、当事者双方の責めに帰することができない事由により当該建物が焼失した場合、買主は、代金の支払を拒むことができる。

    答え:×。567条1項は、引渡しがあった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によって目的物が滅失・損傷したときは、買主は追完請求、代金減額請求、損害賠償請求および解除をすることができないとしたうえで、「この場合において、買主は、代金の支払を拒むことができない」と明記しています。引渡しを境に危険が買主へ移るという規律です。なお売主が適合する目的物の引渡しの債務の履行を提供したにもかかわらず買主が受領を拒んだ場合は、その提供の時以後について同様に扱われます(同条2項)。

    問5 競売により建物を買い受けた者は、その建物に品質に関する契約不適合があった場合、債務者に対して代金の減額を請求することができる。

    答え:×。568条1項は競売の買受人が債務者に対して解除または代金減額を請求できるとしていますが、同条4項が「前三項の規定は、競売の目的物の種類又は品質に関する不適合については、適用しない」と定めています。したがって品質の不適合を理由に代金減額を請求することはできません。競売では権利の不適合や数量の不適合について解除・代金減額ができるにとどまり、損害賠償ができるのは、債務者が不存在を知りながら申し出なかったとき、または債権者が知りながら競売を請求したときに限られます(同条3項)。

    まとめ

    • 2020年4月1日施行の改正で、瑕疵担保責任は契約責任として整理されました。「隠れた」という要件はなくなり、基準は「契約の内容に適合しないこと」(562条1項)。買主の手段は追完請求(562条)、代金減額請求(563条)、損害賠償請求(564条・415条)、解除(564条・541条・542条)の四つに明文化され、権利の不適合にも562条から564条が準用されます(565条)。
    • 要件の分かれ目は三つです。売主の帰責事由が必要なのは損害賠償だけ。買主の帰責事由があると使えないのは追完請求と代金減額請求(562条2項、563条3項)。催告が原則として必要なのは代金減額請求と催告解除。期間制限は566条で、求められるのは「1年以内の通知」であり、対象は種類又は品質の不適合に限られます。通知しても166条の消滅時効は別に進行します。
    • 周辺の規律も条文で押さえてください。引渡し後の滅失・損傷は買主が負担し代金の支払を拒めません(567条1項)。競売では種類・品質の不適合について担保責任を追及できません(568条4項)。免責特約は有効でも、知りながら告げなかった事実については責任を免れません(572条)。宅建業者が売主となる場合の業法上の制限は別の規律です。

    契約不適合責任の四つの権利と期間制限は、宅建試験AIブートラボの肢別トレーニングで条文ごとに演習できます。改正前の枠組みで書かれた古い解説と混ざりやすい領域なので、条文の文言に戻りながら進めてください。

    読んだ内容を、権利関係の肢で確かめる

    民法・借地借家法・区分所有法など、条文だけでは判断しづらい論点は、過去問の肢で覚えるのが最短です。

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