不動産にかかる税金の全体像|取得・保有・譲渡で整理
不動産の税金を、取得・保有・賃貸・譲渡という所有の局面に沿って通しで整理します。誰が課すのか、いつ払うのか、申告が要るのかを条文根拠つきで解説します。2026年8月時点の内容です。
目次
本記事は、一つの不動産を買ってから売るまでのあいだに、どの局面でどの税が出てくるのかを順に追う記事です。取得、保有、賃貸、譲渡という所有の時間軸に沿って通しで読めるようにしてあります。税を国税と地方税という区分で切り、特例の構造から整理したい場合は宅建試験の税金を横断整理を参照してください。あちらが税制の地図、こちらが一つの物件をたどる道順にあたります。
先に、この記事を貫く二つの見方を述べます。第一に、不動産の税は「持っているだけで課されるもの」と「動かしたときに課されるもの」に分かれます。固定資産税と都市計画税は前者、不動産取得税や譲渡所得に対する所得税は後者です。第二に、納め方が二通りあります。役所が計算して納税通知書を送ってくる賦課課税と、自分で計算して申告する申告納税です。この違いは実務上きわめて重要で、申告納税の税では、特例があっても申告しなければ適用されません。以下、局面ごとに見ていきます。
なお、本記事の税率や控除額は2026年8月時点の法令にもとづきます。租税特別措置法や地方税法附則に置かれた特例には適用期限が定められているものが多く、延長・改正が繰り返されています。実際の取引や申告にあたっては、必ず国税庁や各自治体の最新の案内で確認してください。
不動産の税を局面で並べる
四つの局面と、そこで出てくる税
不動産を取得すると、まず取得の一回限りの税がかかります。地方税である不動産取得税、国税である登録免許税と印紙税、そして建物部分には消費税です。贈与や相続で取得した場合は、これに贈与税や相続税が加わります。
保有しているあいだは、毎年、市町村が課す固定資産税がかかります。市街化区域内であれば都市計画税も併せて課されます。この二つだけが、何もしなくても毎年発生する税です。
その不動産を人に貸せば、賃料から必要経費を引いた不動産所得に所得税と住民税がかかります。そして売れば、譲渡益に対して所得税と住民税がかかります。
この並びを覚えておくと、問題文が「取得したとき」「保有中」「譲渡したとき」のどれを問うているかで、検討すべき税が絞れます。税目を五十音順に暗記するより、この時間軸に沿って置いたほうが取り出しやすくなります。
課税主体で分けると、手続の姿が分かる
同じ不動産の税でも、国が課すものと地方公共団体が課すものがあります。国税は登録免許税、印紙税、消費税、所得税、贈与税、相続税。地方税は不動産取得税(道府県税)、固定資産税と都市計画税(市町村税)、住民税です。
この区分が効いてくるのは、特例がどの法律に置かれているかという点です。国税の特例は租税特別措置法に、地方税の特例は地方税法本体か同法附則に置かれます。したがって、条文を確認しようとしたときに探す先が変わります。区分と特例の構造そのものを掘り下げたい場合は税金の横断整理にまとめてあります。
課税標準になる価格
不動産の税の多くは、実際の取引価格ではなく、行政が定めた評価額を課税標準にします。不動産取得税、固定資産税、都市計画税、登録免許税は、いずれも固定資産課税台帳に登録された価格、いわゆる固定資産税評価額を基礎とします。
売買代金がいくらであっても、これらの税額は評価額で決まります。高く買っても安く買っても不動産取得税は変わらない、という結論は直感に反しますが、台帳の価格を基準にする以上そうなります。評価額と公示価格などの関係は地価公示と不動産の鑑定評価で扱っています。
一方、譲渡所得の計算は実際の収入金額と取得費で行い、印紙税は契約書の記載金額で決まります。何を課税標準にするかは税ごとに違うので、ここを取り違えないでください。
取得するときにかかる税
不動産取得税は道府県が課す
不動産取得税は、不動産の取得に対して、その不動産の所在する道府県が課す地方税です(地方税法73条の2第1項)。納税義務者は取得した者で、登記をしたかどうかは関係ありません。登記をしていなくても取得の事実があれば課税されます。
課税標準は固定資産課税台帳に登録された価格です(地方税法73条の21)。標準税率は4%ですが(同法73条の15)、住宅および土地の取得については同法附則により3%に軽減されています。この軽減には適用期限が定められており、これまで繰り返し延長されてきました。2026年8月時点では期限内ですが、期限そのものは改正のたびに動くため、実際の取引では都道府県の案内で確認してください。
宅地および宅地評価された土地については、課税標準が価格の2分の1とされる特例もあります(地方税法附則)。これも期限つきの措置です。したがって宅地の税額は、評価額の2分の1に3%を乗じた金額が基本の形になります。
徴収は普通徴収です。都道府県から納税通知書が届き、それに従って納めます。自分で税額を計算して申告する必要はありません。
免税点と、取得に当たらない場合
課税標準となるべき額が一定額に満たない場合は課税されません(地方税法73条の15の2)。土地は10万円、家屋の建築による取得は23万円、売買など建築以外による家屋の取得は12万円が境目です。家屋だけ二通りある点が狙われます。
非課税となる取得も定められています(地方税法73条の7)。代表的なのが相続による取得です。相続は被相続人の地位を引き継ぐ形式的な移転であり、新たに財産を取得したとみるべき実質がないためです。包括遺贈による取得、および被相続人から相続人に対してなされた遺贈による取得も非課税とされています。法人の合併や一定の分割による取得、共有物の分割による取得のうち分割前の持分に応じた部分も非課税です。
ここで注意すべきなのが遺贈の扱いです。包括遺贈は非課税、被相続人から相続人への遺贈も非課税ですが、相続人以外の者に対する特定遺贈は課税されます。そして贈与は、生前の贈与である以上、当然に課税されます。「相続は非課税、贈与は課税」という対比に、遺贈の分岐を重ねて覚えてください。
住宅を取得したときの控除
新築住宅を取得した場合、課税標準から一定額を控除できます(地方税法73条の14第1項)。床面積が50平方メートル以上240平方メートル以下であることが要件で、貸家用の共同住宅等については下限が40平方メートルになります。控除額は1,200万円で、認定長期優良住宅については附則により1,300万円とされています。
既存住宅、いわゆる中古住宅にも同様の控除があります(同条第3項)。ただし要件が厳しく、個人が自己の居住用として取得すること、床面積が同じく50平方メートル以上240平方メートル以下であること、そして新耐震基準に適合していることが求められます。控除額は一律ではなく、その住宅が新築された時期に応じて段階的に定められており、新しいものほど控除額が大きくなります。
さらに、住宅用の土地を取得した場合には税額そのものから一定額を控除する措置もあります(地方税法73条の24)。ここで重要なのは、これらの軽減は自動的に適用されるとは限らず、都道府県の条例に従って申告が必要になる場合があるということです。賦課課税だから何もしなくてよい、とは言い切れません。不動産取得税の非課税と軽減を個別に確認したい場合は不動産取得税の非課税・軽減まとめを参照してください。
登録免許税は登記に対して課される
所有権を取得しても、登記をしなければ第三者に対抗できません。その登記の申請に対して課されるのが登録免許税で、国税です。納税義務者は登記等を受ける者であり、売買であれば売主と買主が連帯して納付義務を負います(登録免許税法3条)。実務上は買主が負担する取り決めが一般的ですが、法律上の義務者は当事者双方です。
課税標準は不動産の価額で、固定資産税評価額を基礎とします。抵当権の設定登記だけは債権金額が課税標準になります。本則の税率は、所有権の保存登記が0.4%、売買による所有権移転登記が2%、相続による所有権移転登記が0.4%、抵当権の設定登記が0.4%です。売買が2%であるのに対し相続が0.4%と低いのは、相続が形式的な移転だからで、不動産取得税が相続を非課税にしているのと同じ発想です。
個人が自己の居住用として一定の家屋を取得した場合には、租税特別措置法により税率が軽減されます。この軽減にも適用期限があります。登録免許税と印紙税の詳細は登録免許税と印紙税にまとめています。
印紙税は文書に課される
印紙税は、課税文書を作成した者に課される国税です(印紙税法3条)。不動産の売買契約書は1号文書、建設工事の請負契約書は2号文書、金銭消費貸借契約書は1号文書として課税されます。
課税されないものも押さえておく必要があります。建物の賃貸借契約書は課税文書ではありません。委任状も課税されません。ただし土地の賃借権の設定に関する契約書は1号文書として課税対象になるため、「賃貸借契約書は非課税」と単純化すると誤ります。建物か土地か、賃貸借か賃借権の設定かで結論が変わります。
納付は収入印紙を貼り付けて消印する方法によります。貼り忘れた場合は過怠税が課され、その額は本来の印紙税額とその2倍に相当する金額の合計、つまり本来の3倍です(印紙税法20条1項)。ただし調査を受ける前に自主的に申し出た場合は1.1倍に軽減されます。消印を忘れた場合は、消印されていない印紙の額面と同額の過怠税です。
重要なのは、印紙を貼らなくても契約そのものは有効だという点です。印紙税を納めていないことは税法上の問題であって、私法上の契約の効力とは無関係です。文書ごとの税額は印紙税の課税文書一覧で確認できます。
消費税は建物にかかり、土地にはかからない
土地の譲渡および貸付けは、消費税の非課税取引とされています(消費税法6条1項、別表第二第1号)。土地は消費されるものではないという考え方によります。これに対して建物の譲渡は課税取引です。
したがって、土地付き建物を事業者から買うと、代金のうち建物部分にだけ消費税がかかります。売買契約書で土地と建物の代金が区分されているのはこのためです。仲介手数料も課税されます。
住宅の貸付けも非課税です(別表第二第13号)。居住用として貸す家賃に消費税はかかりませんが、事務所や店舗として貸す場合の賃料は課税されます。同じ建物でも用途で結論が変わる点が問われます。
なお、個人が自宅を売る場合は、事業として行うものではないため消費税の課税対象になりません。売主が事業者かどうかで扱いが変わります。
借入れで取得したときの住宅ローン控除
取得の局面で税が増えるだけでなく、減る仕組みもあります。住宅借入金等特別控除、いわゆる住宅ローン控除です(租税特別措置法41条)。住宅ローンを組んで自己の居住用の家屋を取得した場合に、年末の借入金残高に一定の控除率を乗じた金額を、その年の所得税額から差し引ける制度です。
ここまで見てきた特例の多くが課税標準を減らすものだったのに対し、これは税額そのものから引く税額控除です。所得税から引ききれない場合には、一定額を限度に翌年度の個人住民税からも控除されます。効き方が強いぶん、要件も細かく定められています。自己の居住用であること、取得等の日から6か月以内に居住すること、床面積が原則として50平方メートル以上であること、借入期間が10年以上であること、その年の合計所得金額が一定額以下であることなどです。
控除率、控除期間、借入限度額は改正が重ねられており、住宅の環境性能や居住を開始した年によって細かく分かれます。制度の骨格は安定していますが、数値は動きます。適用を検討する段階では住宅ローン控除を確認したうえで、必ず国税庁の最新の案内にあたってください。
なお、この控除を受けるには初年度に確定申告が必要です。給与所得者であっても、初年度だけは自分で申告しなければ適用されません。二年目以降は年末調整で処理できます。
贈与や相続で取得したとき
贈与税の二つの課税方式
生前に不動産の贈与を受けた場合、受贈者に贈与税がかかります。課税方式は二つあり、選択できます。
暦年課税は、1年間に受けた贈与の合計額から基礎控除額を差し引いて課税する方式です。もう一つが相続時精算課税で、一定の親子・祖父母孫間の贈与について、特別控除額の範囲内では贈与時に課税せず、相続の際に精算する方式です(相続税法21条の9以下)。令和5年度の改正により、相続時精算課税にも年ごとの基礎控除が設けられ、暦年課税における生前贈与の加算期間も段階的に延長されています。制度が動いている領域なので、実際の判断では国税庁の最新の案内を確認してください。
このほか、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税措置が租税特別措置法70条の2に置かれています。この措置には明確な適用期限があり、これまで延長を重ねてきました。期限が近い時期には特に、現在も有効かどうかの確認が欠かせません。
相続税と不動産取得税の関係
相続によって不動産を取得した場合、相続税の課税対象にはなりますが、前述のとおり不動産取得税は課されません。同じ「取得」でも税目によって扱いが違う典型例です。登録免許税は課されますが、税率は売買より低い0.4%です。
相続税には基礎控除があり、3,000万円に法定相続人の数に600万円を乗じた額を加えた金額が控除されます(相続税法15条)。遺産の総額がこれを下回れば申告も納税も不要です。
不動産に固有の制度として重要なのが、租税特別措置法69条の4の小規模宅地等の特例です。被相続人の居住用や事業用として使われていた宅地について、一定の面積まで評価額を大きく減額できます。この特例は申告することが適用の要件であり、適用の結果として税額がゼロになる場合でも申告が必要です。贈与税と相続税の基礎は贈与税と相続税、相続不動産の手続全般は相続不動産の基礎知識にまとめています。
保有しているあいだにかかる税
固定資産税は誰にいつ課されるか
固定資産税は、土地、家屋および償却資産に対して、その所在する市町村が課す地方税です。東京都の特別区の区域内については、都が課税します。
納税義務者は、賦課期日において固定資産課税台帳に所有者として登録されている者です(地方税法343条1項)。賦課期日は当該年度の初日の属する年の1月1日と定められています(同法359条)。この一点が最頻出です。
したがって、1月2日に不動産を売却しても、その年度の固定資産税を納める義務を負うのは1月1日時点の所有者、つまり売主です。年の途中で買った買主に、その年度分の納税義務はありません。実務では引渡日を基準に日割りで精算する取り決めをしますが、それは当事者間の合意にすぎず、市町村に対する納税義務者が変わるわけではありません。試験で問われるのは法律上の納税義務者のほうです。
正確に言えば、義務を負うのは「登記簿上の所有者」ではなく「課税台帳に所有者として登録されている者」です。登記されている土地家屋については登記名義人が台帳に登録されるので結果は一致しますが、根拠は台帳への登録にあります。所有者が賦課期日前に死亡している場合は、現に所有している者、すなわち相続人が納税義務者になります。
課税標準、税率、免税点
課税標準は固定資産課税台帳に登録された価格です(地方税法349条)。この価格は市町村長が固定資産評価基準に従って決定し、原則として3年ごとに評価替えが行われます。評価替えの年度を基準年度といい、その翌年度と翌々年度は原則として価格が据え置かれます。
税率は標準税率が1.4%です(地方税法350条1項)。標準税率とは通常よるべき税率という意味であり、市町村は条例でこれと異なる税率を定めることができます。現在、固定資産税に制限税率は設けられていません。ここは後述する都市計画税との違いになります。
免税点は、土地が30万円、家屋が20万円、償却資産が150万円です(地方税法351条)。不動産取得税の免税点とは金額がまったく違うので、混同しないよう分けて覚えてください。
住宅用地の課税標準の特例
住宅の敷地として使われている土地については、課税標準が大きく引き下げられます(地方税法349条の3の2)。住宅1戸あたり200平方メートル以下の部分を小規模住宅用地といい、課税標準は価格の6分の1になります。200平方メートルを超える部分は一般住宅用地として3分の1です。ただし住宅用地として扱われる範囲は、家屋の床面積の10倍までとされています。
この特例が置かれているのは、居住の場である住宅の敷地に、他の土地と同じ負担を求めるのは重すぎるという政策判断によります。逆に言えば、住宅を取り壊して更地にすると特例の適用がなくなり、翌年度から税負担が増えます。空き家が放置されやすい一因がここにあると言われます。
計算の順序は、まず土地を200平方メートル以下の部分と超える部分に分け、それぞれに6分の1と3分の1を乗じて課税標準を出し、合計に税率を乗じます。300平方メートルの住宅用地で1平方メートルあたりの評価額が10万円であれば、200平方メートル分は2,000万円の6分の1、残り100平方メートル分は1,000万円の3分の1となり、これらを合計した課税標準に1.4%を乗じます。実際の節税の観点からの解説は固定資産税を安くする方法にあります。
新築住宅の税額の減額
新築住宅については、一定期間、税額そのものが2分の1に減額される措置があります。床面積が50平方メートル以上280平方メートル以下であることが要件で、貸家用は下限が40平方メートルです。減額の対象は居住部分の床面積120平方メートル相当分までで、期間は一般の住宅が新築後3年度分、3階建て以上の中高層耐火建築物が5年度分です。認定長期優良住宅についてはさらに長い期間が定められています。
この措置は地方税法の附則に置かれた期限つきのもので、これまで繰り返し延長されてきました。適用期限は改正のたびに動くため、現時点で有効かどうかは市町村または総務省の案内で確認してください。制度の中身自体は長く変わっていません。
ここで押さえておきたい対比があります。不動産取得税の新築住宅の特例は「課税標準から1,200万円を控除する」ものであるのに対し、固定資産税の新築住宅の措置は「税額を2分の1にする」ものです。前者は課税標準の特例、後者は税額の特例で、計算のどの段階で効くかが違います。面積の上限も、不動産取得税が240平方メートル、固定資産税が280平方メートルと異なります。固定資産税の特例をまとめて確認したい場合は固定資産税を参照してください。
都市計画税は固定資産税と似て非なるもの
都市計画税は、都市計画事業や土地区画整理事業の費用に充てるために市町村が課す目的税です(地方税法702条)。課税対象は都市計画区域のうち原則として市街化区域内に所在する土地および家屋で、償却資産は含まれません。
固定資産税との違いは三点です。第一に、税率は制限税率0.3%で、これを超える税率を定めることはできません。固定資産税が標準税率1.4%で制限がないのと逆の構造です。第二に、住宅用地の特例の割合が違い、小規模住宅用地が3分の1、一般住宅用地が3分の2です。固定資産税の6分の1・3分の1と数字が異なるので、必ず分けて覚えてください。第三に、目的税である点です。使途が定められています。
賦課期日と納税義務者は固定資産税と同じで、実務上も固定資産税と併せて一枚の納税通知書で賦課徴収されます。
貸したときにかかる税
不動産所得の計算
不動産や不動産の上に存する権利を貸し付けて得た所得は、不動産所得です(所得税法26条1項)。総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。
総収入金額には賃料のほか、礼金や更新料、返還を要しない敷金なども含まれます。必要経費には、建物の減価償却費、その不動産にかかる固定資産税や都市計画税、修繕費、損害保険料、管理委託料、借入金の利子などが入ります。ここで注目したいのは、保有の局面で払った固定資産税が、賃貸の局面では必要経費になるという点です。局面をまたいで税同士がつながっています。
不動産所得は分離課税ではなく総合課税で、給与所得など他の所得と合算して超過累進税率が適用されます。この点が、次に見る譲渡所得と根本的に違います。
建物は減価償却できるが、土地はできない
必要経費のうち金額が大きくなりやすいのが減価償却費です。建物は時の経過によって価値が減っていく資産なので、取得価額を耐用年数にわたって配分し、各年の必要経費に算入します。これに対して土地は減価しない資産とされ、減価償却の対象になりません。
土地は消費税が非課税で、減価償却もできない。建物は消費税が課税され、減価償却もできる。この一貫した対比は、土地と建物を区分して考える習慣をつけるうえで役に立ちます。売買契約書で土地と建物の代金を区分するのは、消費税の計算のためだけでなく、買主側の減価償却の基礎を確定させる意味もあります。
規模によって扱いが変わる
賃貸の規模が一定以上になると、税務上の扱いが変わります。いわゆる事業的規模かどうかで、青色申告特別控除の額や、貸倒れが生じた場合の処理などに差が出ます。判定には、独立家屋であればおおむね5棟以上、貸間やアパートであればおおむね10室以上という形式基準が所得税基本通達で示されており、実務ではこれが目安として使われます。
青色申告の承認を受けていれば、青色申告特別控除を適用できます(租税特別措置法25条の2)。控除額は、事業的規模であるか、正規の簿記の原則により記帳しているか、電子帳簿保存や電子申告によっているかによって段階的に変わります。
損失が出たときの通算に制限がある
不動産所得に損失が生じた場合、原則として他の所得と損益通算できます(所得税法69条)。給与所得者が賃貸で赤字を出すと給与の税負担が下がるのはこのためです。
ただし例外があります。土地等を取得するために要した負債の利子に対応する部分の損失は、生じなかったものとみなされ、損益通算の対象になりません(租税特別措置法41条の4)。土地の値上がり益を狙った借入れによって、賃貸の赤字を意図的に作り出す形を防ぐための規定です。建物の取得にかかる利子には、この制限はありません。ここでも土地と建物で扱いが分かれます。
申告が必要になる場面
不動産所得がある場合、原則として確定申告が必要です。賦課課税の固定資産税とは違い、誰も計算して通知してくれません。
必要経費の範囲で注意したいのが、税金そのものの扱いです。その不動産にかかる固定資産税や都市計画税、不動産取得税、印紙税は必要経費に算入できますが、所得税と住民税は算入できません。所得に対して課される税を、その所得の計算上の経費にすることはできないという理屈です。
消費税の扱いも押さえておきましょう。住宅として貸す場合の家賃は非課税ですが、事務所や店舗として貸す場合の賃料は課税取引です。同じ大家でも、貸す相手と用途によって消費税の扱いが分かれます。
売ったときにかかる税
譲渡所得は分離課税
不動産を売って利益が出た場合、その譲渡所得に所得税と住民税がかかります。給与などと合算せず、他の所得と分離して税率を適用する分離課税である点が、不動産所得との大きな違いです。
譲渡所得の金額は、収入金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します(所得税法33条3項)。取得費が不明な場合は、収入金額の5%を概算取得費とすることが認められています(租税特別措置法31条の4)。先祖代々の土地のように取得時の資料が残っていない場合に使われますが、実額のほうが大きければ実額を使うほうが有利です。
長期と短期の分かれ目
税率は所有期間によって二つに分かれます。長期譲渡所得は所得税15%と住民税5%、短期譲渡所得は所得税30%と住民税9%です(租税特別措置法31条、32条、地方税法附則)。これに復興特別所得税が所得税額の2.1%として上乗せされるため、実際の合計負担率は長期が20.315%、短期が39.63%になります。復興特別所得税は令和19年分まで課されます。
分かれ目は所有期間5年ですが、判定の基準時が独特です。「譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるかどうか」で判定します。取得日から譲渡日までの実際の期間ではありません。2021年4月に取得して2026年6月に売った場合、実際には5年2か月保有していますが、2026年1月1日時点では4年9か月なので短期に区分されます。ここは毎年のように問われる論点です。
居住用財産の三つの特例
自分が住んでいた家屋とその敷地を売る場合には、特例が用意されています。
第一に、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除です(租税特別措置法35条1項)。譲渡益から最大3,000万円を控除できます。所有期間の要件はありません。住まなくなってから売る場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡する必要があります。配偶者や直系血族、生計を一にする親族などへの譲渡には適用されません。身内への形式的な売買で控除を受けることを防ぐためです。
第二に、所有期間が10年を超える居住用財産についての軽減税率の特例です(同法31条の3)。3,000万円を控除した後の課税長期譲渡所得のうち6,000万円以下の部分について、通常の長期譲渡より低い税率が適用されます。3,000万円特別控除と併用できます。
第三に、特定の居住用財産の買換えの特例です(同法36条の2)。売却代金で新しい住まいを買う場合に課税を将来へ繰り延べる制度で、所有期間や居住期間、譲渡対価の上限などの要件があります。これは3,000万円特別控除や軽減税率とは選択適用であり、併用できません。また適用期限が定められた措置なので、利用を検討する際は現在も有効かどうかの確認が必要です。
このほか、相続した空き家を売った場合の特別控除(同法35条3項)や、収用等の場合の特別控除(同法33条の4)など、事情に応じた控除が用意されています。特例ごとの要件は譲渡所得税の特例にまとめています。
損失が出たとき
譲渡損失は原則として他の所得と通算できませんが、居住用財産については例外があります。買換えを伴う場合と、住宅ローンが残る住まいを売った場合について、損益通算と、控除しきれない部分の翌年以後3年内の繰越控除が認められています(租税特別措置法41条の5、41条の5の2)。いずれも期限つきの措置で、適用には申告が要件です。
特例は申告しなければ効かない
譲渡所得に関する特例に共通するのが、確定申告をすることが適用の要件だという点です。3,000万円の特別控除を適用した結果、納める税額がゼロになる場合であっても、申告しなければ適用を受けられません。「税額がゼロだから申告不要」という理解は誤りです。
同じことが相続税の小規模宅地等の特例にも当てはまります。申告納税方式の税では、特例は自分から使いに行くものだと考えてください。
納め方の違いが、特例の効き方を決める
賦課課税と申告納税
不動産の税は、納め方で二つに分かれます。
賦課課税方式は、行政が税額を計算して納税通知書を送り、納税者はそれに従って納める方式です。不動産取得税、固定資産税、都市計画税がこれにあたります。いずれも地方税で、徴収方法は普通徴収です。
申告納税方式は、納税者が自分で課税標準と税額を計算し、申告して納める方式です。所得税、贈与税、相続税がこれにあたり、いずれも国税です。
この違いを押さえると、いつ何をしなければならないかが見えてきます。固定資産税は放っておいても通知が来ますが、譲渡所得は自分で申告しなければ始まりません。
賦課課税でも申告が要る場面がある
ここで注意したいのが、賦課課税だから何もしなくてよいとは限らないという点です。不動産取得税の住宅や住宅用地に関する軽減は、都道府県の条例に従って申告することで適用されるのが通常です。固定資産税の住宅用地の特例についても、市町村が現況を把握できるよう申告を求める仕組みが設けられています。
税額の計算自体は行政がしてくれますが、軽減を受けるための事実は納税者側から伝えないと行政には分かりません。「通知が来た金額が軽減前のものだった」という事態は実際に起こります。
納付のタイミングも税ごとに違う
登録免許税と印紙税は、賦課課税でも申告納税でもない第三の形をとります。登録免許税は登記の申請時に納付し、印紙税は課税文書を作成したときに印紙を貼って消印します。どちらも行為の時点で完結する納付です。
固定資産税と都市計画税は、市町村の条例で定める納期に分割して納めます。所得税は原則として翌年の確定申告期限までに納付します。この時間差があるため、不動産を売った年は、譲渡代金を受け取った時期と納税の時期がずれることになります。売却代金を使い切ってから納税資金がないと気づく、という失敗はここから生じます。
内容に不服があるときの争い方も違う
賦課課税の税では、行政が決めた金額に納得できない場合の手続が用意されています。固定資産税で特徴的なのが、価格そのものへの不服と、それ以外への不服で行き先が分かれる点です。
固定資産課税台帳に登録された価格に不服がある場合は、固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をします(地方税法432条)。これは市町村長から独立した機関で、価格の適否だけを審査します。一方、価格以外の事項、たとえば納税義務者の認定や住宅用地の特例の適用の有無についての不服は、通常の審査請求によります。
あわせて、納税者が自分の土地や家屋の価格を他と比べられるよう、縦覧制度が設けられています(地方税法416条)。毎年一定の期間、市町村内の土地や家屋の価格を記載した縦覧帳簿を見ることができます。自分の資産の価格だけを確認する台帳の閲覧とは別の制度です。
申告納税の税では、申告が誤っていた場合に修正申告や更正の請求という手続によります。争い方の入口が違うのも、納め方の違いから来ています。
試験での出題ポイント
課税主体を取り違えさせる出題
最も多いのが、誰が課す税かを入れ替える形です。不動産取得税を市町村税とする、固定資産税を都道府県税とする、といった選択肢が繰り返し出ます。不動産取得税は道府県、固定資産税と都市計画税は市町村、と対で覚えてください。
賦課期日と納税義務者
固定資産税の賦課期日が1月1日であること、そして納税義務者が賦課期日時点で課税台帳に所有者として登録されている者であることは、毎年のように問われます。年の途中で売買した場合に買主が納税義務者になるとする選択肢は誤りです。日割り精算という実務の話に引きずられないでください。
数字を入れ替える出題
住宅用地の特例で、固定資産税の6分の1・3分の1と、都市計画税の3分の1・3分の2を入れ替える形が典型です。免税点も、不動産取得税の土地10万円・建築23万円・その他12万円と、固定資産税の土地30万円・家屋20万円・償却資産150万円が混ぜられます。新築住宅の面積上限も、不動産取得税の240平方メートルと固定資産税の280平方メートルが入れ替えられます。
所有期間の判定
譲渡所得の長期・短期を、取得日から譲渡日までの実際の期間で判定させる選択肢が定番です。正しくは譲渡した年の1月1日時点での判定です。軽減税率の10年超も同じ基準時で判定します。
相続と贈与の分岐
不動産取得税が相続に課されないこと、登録免許税は相続でも課されるが税率が低いこと、遺贈のうち相続人以外への特定遺贈は不動産取得税の課税対象になること。この三段の分岐が組み合わされます。税・その他の科目全体の得点戦略は税・その他の得点戦略にまとめています。
覚え方・整理の仕方
局面と課税主体を二次元で置く
税目を一列に並べて覚えるのではなく、取得・保有・譲渡という横軸と、国税・地方税という縦軸の二次元に置いてください。取得かつ地方税なら不動産取得税、取得かつ国税なら登録免許税と印紙税、保有かつ地方税なら固定資産税と都市計画税、譲渡かつ国税なら所得税。この位置が言えれば、課税主体を取り違える出題は落としません。
「一回か毎年か」で性格が分かる
不動産取得税、登録免許税、印紙税は一回限りです。固定資産税と都市計画税は毎年です。譲渡所得に対する所得税は、売った年に一回だけです。毎年課されるのは保有の二税だけ、と覚えておくと、問題文の「毎年」という語に反応できます。
特例は「どこで効くか」で二種類
特例には、課税標準を減らすものと、税額そのものを減らすものがあります。不動産取得税の1,200万円控除や住宅用地の6分の1は課税標準の特例、固定資産税の新築住宅の2分の1や住宅ローン控除は税額の特例です。計算のどの段階で効くかが違うので、掛け算の順序を間違えないためにも区別しておいてください。
5年と10年は「1月1日」で数える
譲渡所得で出てくる所有期間は、5年でも10年でも、譲渡した年の1月1日を基準に数えます。取得日からの実期間ではありません。基準時は一つだけと覚えれば、5年と10年で混乱しません。
数字は三つの組で覚える
免税点は不動産取得税が10万円・23万円・12万円、固定資産税が30万円・20万円・150万円。住宅用地の特例は固定資産税が6分の1と3分の1、都市計画税が3分の1と3分の2。税率は不動産取得税が原則4%で住宅と土地が3%、固定資産税が1.4%、都市計画税が0.3%。三つずつの組にして、税ごとにまとめて覚えると混ざりません。計算問題としての練習は税金の計算問題を攻略と宅建の計算問題まとめが使えます。
理解度チェッククイズ
Q1. 年の途中で土地を売却した場合、その年度の固定資産税の納税義務者は、売買契約の日以後については買主となる。(○か×か)
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×:固定資産税の納税義務者は、賦課期日である1月1日において固定資産課税台帳に所有者として登録されている者です(地方税法343条1項、359条)。年の途中で所有者が変わっても、その年度の納税義務者は1月1日時点の所有者、つまり売主のままです。実務では引渡日を基準に日割りで精算しますが、それは当事者間の合意であって、市町村に対する納税義務者が変わるわけではありません。Q2. 相続により不動産を取得した場合、不動産取得税は課されないが、登録免許税は課される。(○か×か)
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○:相続による不動産の取得は不動産取得税の非課税とされています(地方税法73条の7)。相続は被相続人の地位を引き継ぐ形式的な移転だからです。一方、相続を原因とする所有権移転登記には登録免許税が課されます。ただし税率は本則0.4%で、売買による所有権移転の2%より低く設定されています。同じ「形式的な移転だから軽くする」という発想が、非課税と軽減という違う形で現れています。Q3. 都市計画税の住宅用地に対する課税標準の特例は、小規模住宅用地について価格の6分の1とするものである。(○か×か)
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×:6分の1は固定資産税の割合です(地方税法349条の3の2)。都市計画税の住宅用地の特例は、小規模住宅用地が3分の1、一般住宅用地が3分の2です(同法702条の3)。二つの税は賦課期日も納税義務者も同じで、一枚の納税通知書で徴収されるため混同しやすいのですが、税率も特例の割合も別に定められています。Q4. 2021年4月に取得した土地を2026年6月に譲渡した場合、所有期間は5年を超えているため長期譲渡所得に区分される。(○か×か)
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×:長期・短期の判定は、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるかどうかで行います(租税特別措置法31条1項、32条1項)。この事例では2026年1月1日時点で4年9か月しか経過していないため、短期譲渡所得に区分されます。実際の保有期間が5年2か月であっても結論は変わりません。基準時が譲渡日ではなく譲渡した年の1月1日である点が要点です。Q5. 居住用財産の3,000万円の特別控除を適用した結果、納付すべき所得税額がゼロになる場合には、確定申告をする必要がない。(○か×か)
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×:租税特別措置法35条の特別控除は、確定申告をすることが適用の要件です。申告しなければ特例は適用されず、控除前の譲渡所得に対して課税されることになります。税額がゼロになるのは特例を適用した結果であって、申告しない理由にはなりません。申告納税方式の税では特例は自分から使いに行くものだという点を押さえてください。まとめ
不動産の税は、取得のときに一回、保有しているあいだは毎年、貸せば毎年の所得として、売れば売った年に一回、という形で現れます。この時間軸に沿って並べておけば、問題文がどの局面を問うているかで検討すべき税目が絞れます。
課税主体は、不動産取得税が道府県、固定資産税と都市計画税が市町村、登録免許税・印紙税・所得税・贈与税・相続税が国です。この区分は、特例がどの法律に置かれているかと、納め方が賦課課税か申告納税かに直結します。賦課課税でも軽減を受けるには申告が必要な場合があり、申告納税では特例は申告しなければ効きません。
数字については、免税点、住宅用地の特例の割合、新築住宅の面積上限が、税をまたいで入れ替えられる形で問われます。税ごとにまとめて覚えることが混同を防ぐ最短の方法です。あわせて、本記事の税率や控除額は2026年8月時点のものであり、租税特別措置法や地方税法附則の特例には適用期限があります。実際の取引や申告では、必ず国税庁や自治体の最新の案内を確認してください。
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税と価格の評定は毎年ほぼ同じ形で出ます。出題パターンを肢別で押さえれば取りこぼしません。