宅建試験AIブートラボ 宅建試験AIブートラボ

譲渡所得税の特例|3,000万円控除・軽減税率を解説

税・その他 読了 約23分

不動産の譲渡所得を条文から整理。1月1日基準の長短区分と税率、3,000万円特別控除・軽減税率・買換え特例の要件と、条文が定める併用可否の根拠まで解説します。

目次

    本記事の役割 — この記事は不動産を譲渡したときの所得課税を扱います。取得時・保有時を含む税の全体像は不動産にかかる税金の全体像、国税と地方税の切り分けは宅建試験の税金を横断整理にまとめています。

    譲渡所得の分野で最も問われるのは、特例をどう組み合わせられるかです。3,000万円特別控除、軽減税率、買換え特例。この三つのうちどれとどれが一緒に使えるのかが繰り返し出題されます。

    そして、この併用可否は覚える必要がありません。条文に書いてあります。租税特別措置法の各条は、除外される譲渡や適用を受けられない場合を本文の括弧書きで列挙しており、そこを読めば組み合わせの可否が確定します。この記事では、その根拠を条文で示しながら整理します。

    もう一つ注意点があります。租税特別措置法の特例には適用期限が設けられているものがあります。条文本文に「令和九年十二月三十一日までの間に」と書かれているものと、期限の定めがないものが混在しています。以下は2026年8月時点で施行されている条文にもとづきますが、期限は延長されることがあるため、実際に適用を検討する際は国税庁の最新情報で確認してください。

    譲渡所得と分離課税

    所得税法33条が定めるもの

    出発点は所得税法33条です。1項は「譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいう」と定めます。2項は、たな卸資産の譲渡その他営利を目的として継続的に行われる資産の譲渡による所得と、山林の伐採または譲渡による所得は含まれないとしています。

    3項が計算方法です。総収入金額から、その資産の取得費およびその資産の譲渡に要した費用の額の合計額を控除し、その残額(譲渡益)から譲渡所得の特別控除額を控除した金額が譲渡所得の金額になります。4項により、この特別控除額は50万円です。

    そして3項は所得を二つに分けています。1号が「資産の譲渡でその資産の取得の日以後5年以内にされたものによる所得」、2号がそれ以外です。

    土地建物等には別の物差しが当たる

    ところが、土地建物等の譲渡にはこの枠組みがそのままでは適用されません。

    租税特別措置法31条1項は、土地等または建物等でその年1月1日において所有期間が5年を超えるものの譲渡について、所得税法22条・89条等の規定にかかわらず、他の所得と区分し、長期譲渡所得の金額の100分の15に相当する所得税を課すると定めます。32条1項が5年以下の場合について同様に100分の30を課します。

    つまり土地建物等については、分離課税という別の仕組みに乗ります。給与所得などと合算せず、独立して税額を計算するということです。

    区分の基準も違います。所得税法33条3項は「取得の日以後5年以内」ですが、措置法31条・32条は「その年1月1日において所有期間が5年を超えるか」です。同じ「5年」でも測り方が違うので、混ぜないでください。

    さらに、措置法31条1項は括弧書きで「所得税法33条3項に規定する譲渡所得の特別控除額の控除をしないで計算した金額」としています。50万円の特別控除は土地建物等の譲渡には使えません。

    課税譲渡所得金額の計算

    三つを引く

    課税される金額は、収入金額から順に三つを引いて求めます。

    収入金額は譲渡の対価です。取得費はその資産を取得するために要した費用で、購入代金のほか購入時の仲介手数料、登録免許税、不動産取得税などが含まれます。建物については、取得に要した金額から減価償却費相当額を控除した金額が取得費になります。譲渡費用は譲渡するために直接要した費用で、譲渡時の仲介手数料、測量費、建物の取壊し費用、立退料などです。

    そこから特別控除額を引いた残りが課税譲渡所得金額です。仲介手数料の計算そのものは仲介手数料の計算方法と上限にまとめています。

    譲渡費用に含まれるかどうかの判断基準は「譲渡のために直接要した費用か」です。所有している間の固定資産税や修繕費、管理費は、譲渡のための支出ではないので含まれません。保有時の税は固定資産税にあります。

    取得費を引き継ぐ場面

    相続や贈与で取得した資産については、被相続人や贈与者の取得費を引き継ぎます。相続時や贈与時の時価が取得費になるわけではありません。

    したがって、先代が安く買った土地を相続して売れば、値上がり分がまとめて譲渡所得として課税されます。相続不動産の扱いは相続不動産の基礎知識、相続そのものの法律関係は相続にまとめています。

    概算取得費の条文の射程

    取得費が分からない場合に収入金額の5パーセントを取得費とする取扱いが広く知られています。ここは条文の射程を正確に押さえてください。

    措置法31条の4第1項は「個人が昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地等又は建物等を譲渡した場合における長期譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費は、……当該収入金額の100分の5に相当する金額とする」と定めます。ただし書により、実際の取得費等がこれを上回ることが証明された場合はその金額によります。

    条文が定めているのは、昭和27年12月31日以前から所有していた場合です。それ以外の資産について取得費が不明なときに5パーセントを用いる取扱いは、条文ではなく国税庁の通達による運用です。条文の規定と運用上の取扱いは別という区別を持っておいてください。

    長期と短期の分かれ目

    判定は「その年1月1日」

    最も出題されるのがここです。判定の基準日は譲渡した日ではなく、譲渡した年の1月1日です。

    措置法31条1項が「その年一月一日において所有期間が五年を超えるもの」、32条1項が「その年一月一日において……所有期間が五年以下であるもの」と定めています。

    そして所有期間の起算点も条文にあります。31条2項は「当該個人がその譲渡をした土地等又は建物等をその取得(建設を含む。)をした日の翌日から引き続き所有していた期間として政令で定める期間をいう」としています。取得した日ではなく、その翌日から数えるということです。

    実際の所有期間とずれる

    この仕組みのため、実際には5年を超えて持っていても短期になることがあります。

    たとえば2020年4月に取得した不動産を2025年6月に譲渡した場合、実際の所有期間は5年2か月です。しかし判定基準日は2025年1月1日で、その時点の所有期間は4年9か月ほどにとどまります。5年以下なので短期です。この不動産が長期になるのは2026年1月1日以後の譲渡からです。

    「実際に5年を超えたか」ではなく「その年の1月1日に5年を超えていたか」。この置き換えが選択肢の作り方として定番です。

    税率と内訳

    所得税の税率は措置法が定めます。長期が100分の15(31条1項)、短期が100分の30(32条1項)です。

    これに住民税と復興特別所得税が加わります。復興特別所得税は、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法により、基準所得税額の2.1パーセントが課されるものです。

    内訳を計算すると次のようになります。長期は所得税15パーセント、復興特別所得税0.315パーセント、住民税5パーセントで、合計20.315パーセント。短期は所得税30パーセント、復興特別所得税0.63パーセント、住民税9パーセントで、合計39.63パーセント。

    復興特別所得税は所得税額に対する上乗せなので、15の2.1パーセントが0.315、30の2.1パーセントが0.63という計算です。合計値を丸暗記するより、所得税の率から導けるようにしておくほうが確実です。税額計算の型は宅建の計算問題まとめ不動産の税金の計算にまとめています。

    居住用財産の3,000万円特別控除

    控除の仕組み

    措置法35条1項は、居住用財産を譲渡した場合に該当することとなったときは、31条1項および32条1項の読み替えにより、長期譲渡所得の金額または短期譲渡所得の金額から3,000万円を控除すると定めます。

    読み替えという形を取っているため、長期でも短期でも使えます。35条1項2号が32条1項(短期)についての読み替えも定めていることから明らかです。

    この特例に所有期間の要件はありません。「所有期間が5年を超えていなければ3,000万円控除は使えない」という記述は誤りです。

    適用される場面

    35条2項が「居住用財産を譲渡した場合」の中身を定めています。

    1号が、その居住の用に供している家屋(居住用家屋)の譲渡、または居住用家屋とともにするその敷地の譲渡をした場合。2号が、災害により滅失した居住用家屋の敷地の譲渡、または居住の用に供されなくなった居住用家屋等の譲渡を、居住の用に供されなくなった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間にした場合です。

    「3年以内」ではなく「3年を経過する日の属する年の12月31日まで」という点に注意してください。年末までという区切りが加わるので、実際にはやや長くなります。

    使えない場合

    1号の括弧書きが、除外される譲渡を列挙しています。

    第一に、当該個人の配偶者その他政令で定める特別の関係がある者に対してするもの。親族間の譲渡には使えません。

    第二に、所得税法58条の規定または33条から33条の4まで、37条、37条の4、37条の8の規定の適用を受けるもの。ここに33条の4、すなわち収用交換等の場合の5,000万円特別控除が入っています。35条と33条の4を併用できない根拠は、この括弧書きです。

    さらに2項の柱書に、もう一つの制限があります。「当該個人がその年の前年又は前々年において既に同項(3項により適用する場合を除く)又は第36条の2、第36条の5、第41条の5若しくは第41条の5の2の規定の適用を受けている場合を除く」。

    前年・前々年に同じ3,000万円控除を受けている場合だけでなく、買換え特例(36条の2)や譲渡損失の特例(41条の5、41条の5の2)を受けている場合も使えません。「3年に1回」という言い方は、同じ特例についてはそのとおりですが、他の特例との関係も条文に書き込まれている点を押さえてください。

    10年超の居住用財産の軽減税率

    6,000万円で税率が変わる

    措置法31条の3第1項は、その年1月1日において所有期間が10年を超える居住用財産の譲渡について、31条1項の税率に代えて次の額を課すると定めます。

    課税長期譲渡所得金額が6,000万円以下である場合は、その金額の100分の10(1号)。6,000万円を超える場合は、600万円と、6,000万円を超える部分の100分の15との合計額(2号)です。

    2号の600万円は、6,000万円の10パーセントにあたります。つまり6,000万円までは10パーセント、超えた部分は15パーセントという二段階の構造を、条文が金額で書いているわけです。

    復興特別所得税と住民税を加えた合計は、6,000万円以下の部分が14.21パーセント(所得税10パーセント、復興特別所得税0.21パーセント、住民税4パーセント)、超える部分が20.315パーセントとなります。

    適用の要件

    所有期間が10年を超えることのほか、35条と共通の制限がかかります。配偶者その他政令で定める特別の関係がある者に対する譲渡は除かれ、その年の前年または前々年において既にこの項の適用を受けている場合も除かれます。

    そして31条の3第1項の括弧書きは、除外される譲渡として36条の2などを挙げています。軽減税率と買換え特例を併用できない根拠がここです。

    31条の3第2項2号も、居住の用に供されなくなった家屋については3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡に限るとしており、35条と同じ区切りを置いています。

    3項により、この特例は確定申告書に適用を受けようとする旨の記載があり、かつ財務省令で定める書類の添付がある場合に限り適用されます。申告が要件になっているということです。

    特定の居住用財産の買換え特例

    課税を先送りする制度

    措置法36条の2は、居住用財産を譲渡して代わりの居住用財産を取得した場合に、譲渡がなかったものとする(または超える部分だけ譲渡があったものとする)ことで、課税を将来に繰り延べる制度です。

    条文の効果を正確に読んでください。譲渡資産の譲渡による収入金額が買換資産の取得価額以下である場合は「当該譲渡資産の譲渡がなかったものとし」、収入金額が取得価額を超える場合は「当該譲渡資産のうちその超える金額に相当するものとして政令で定める部分の譲渡があったものとして」31条を適用する、というものです。

    非課税ではありません。買換資産を将来売るときに、繰り延べた分もあわせて課税されます。「課税が免除される」という記述は誤りです。

    主な要件

    条文から要件を拾います。適用期間は平成5年4月1日から令和9年12月31日までの間の譲渡です。所有期間は、その年1月1日において10年を超えること。譲渡対価は、1億円を超えるものが除外されているので1億円以下であることが必要です。譲渡先について、配偶者その他政令で定める特別の関係がある者に対するものは除かれます。

    1号は、譲渡資産となる家屋について「当該個人がその居住の用に供している期間として政令で定める期間が10年以上であるものに限る」としています。所有期間10年超に加えて、居住期間10年以上という二つの10年が要求されるということです。

    買換資産の取得時期は、1項本文により、譲渡の日が平成7年1月1日以後であるときは譲渡の日の属する年の前年1月1日から譲渡の日の属する年の12月31日までです。そして2項が、譲渡をした日の属する年の翌年1月1日から同年12月31日までの間に取得する見込みである場合について1項を準用しています。両方を合わせると、前年から翌年までの三年の幅で取得できることになります。

    居住の時期は、取得の日から譲渡の日の属する年の翌年12月31日まで(2項の準用による場合は取得の日の属する年の翌年12月31日まで)に居住の用に供すること、または供する見込みであることです。

    併用可否は条文に書いてある

    三つの組み合わせ

    3,000万円特別控除(35条1項)、軽減税率(31条の3)、買換え特例(36条の2)の三つについて、組み合わせの可否を条文で確認します。

    3,000万円特別控除と軽減税率は併用できます。31条の3第1項が除外する譲渡のリストに35条は入っておらず、逆に35条が除外するリストにも31条の3は入っていません。むしろ35条は31条1項の税率規定を読み替えて3,000万円を控除する形なので、控除後の課税長期譲渡所得金額に31条の3の税率が乗るという関係になります。控除してから軽減税率をかけるという順序で機能します。

    3,000万円特別控除と買換え特例は併用できません。根拠は双方向にあります。35条2項柱書が「前年又は前々年において既に……第36条の2……の規定の適用を受けている場合を除く」とし、36条の2第1項が「その年又はその年の前年若しくは前々年において……第35条第1項……の規定の適用を受けている場合を除き」としています。

    軽減税率と買換え特例も併用できません。31条の3第1項の括弧書きが、除外される譲渡として36条の2の適用を受けるものを明記しています。

    つまり、併用できるのは3,000万円特別控除と軽減税率の組み合わせだけで、買換え特例はどちらとも組めません。

    なぜそうなるのか

    理由も制度の性格から説明できます。

    3,000万円控除は課税所得を減らす制度、軽減税率は税率を下げる制度です。働く場所が違うので重ねられます。課税標準を減らしてから、残った額に低い税率を当てる、という順に並びます。

    これに対して買換え特例は、譲渡そのものがなかったものとして扱う制度です。譲渡がなかったことにするのですから、その譲渡について控除を適用したり税率を下げたりする余地がありません。課税を消すのではなく先送りする代わりに、他の恩典を使わせないという設計です。

    「減らす」と「下げる」は重ねられるが、「なかったことにする」とは重ねられない。この整理で覚えてください。

    収用の特別控除との関係

    収用交換等の場合には、措置法33条の4第1項により長期譲渡所得の金額または短期譲渡所得の金額から5,000万円を控除できます。

    この5,000万円控除と3,000万円控除も併用できません。前述のとおり35条2項1号が「第33条から第33条の4まで……の規定の適用を受けるもの」を除外しているためです。どちらも特別控除という同じ性質の制度なので、重ねる理由がありません。

    その他の特例

    相続財産を譲渡した場合の取得費加算

    措置法39条は、相続または遺贈により財産を取得した個人で相続税額があるものが、相続の開始があった日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間にその財産を譲渡した場合に、納めた相続税額のうち一定の金額を取得費に加算できるとする特例です。

    相続税を払ったうえに譲渡所得税もかかると負担が重くなるため、取得費を増やして譲渡所得を減らす形で調整しています。相続税の枠組みは贈与税と相続税にあります。

    居住用財産の譲渡損失

    譲渡して損が出た場合の特例が二つあります。41条の5が居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除、41条の5の2が特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除です。

    いずれも、譲渡所得の計算上生じた損失について所得税法69条1項の損益通算などを認めるもので、確定申告書への記載と明細書の添付が要件です。また、その年の前年以前3年内の年に生じた別の譲渡損失についてこの特例の適用を受けているときは使えません。

    前述のとおり、これらの適用を前年・前々年に受けていると3,000万円控除が使えなくなり(35条2項柱書)、買換え特例も使えなくなります(36条の2第1項)。損失の特例も併用制限の輪の中にいるということです。

    被相続人の居住用家屋を譲渡した場合

    いわゆる空き家の3,000万円特別控除が措置法35条3項です。

    相続または遺贈により被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を取得した相続人が、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に一定の譲渡をした場合に適用されます。

    条文から要件を拾うと、相続の開始があった日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間にした譲渡であること、39条(取得費加算)の適用を受けるものを除くこと、譲渡の対価の額が1億円を超えるものを除くこと、そして同じ相続に係る対象譲渡について既にこの項の適用を受けていないことなどが並びます。

    さらに、家屋を譲渡する場合には、譲渡の時から譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に家屋が耐震基準に適合することとなるか、家屋の全部の取壊し等がされることが求められています。要件が細かく、条文の括弧書きが幾重にも入る特例なので、実際の適用にあたっては国税庁の資料で確認してください。

    適用期限をどう扱うか

    租税特別措置法という名前が示すとおり、この法律の規定には期限付きのものが含まれます。

    条文本文に期限が書かれているものを挙げると、買換え特例(36条の2)が令和9年12月31日まで空き家の3,000万円特別控除(35条3項)が令和9年12月31日までです。前者は「平成五年四月一日から令和九年十二月三十一日までの間に」、後者は「平成二十八年四月一日から令和九年十二月三十一日までの間に」という形で、条文そのものに適用期間が組み込まれています。

    一方、3,000万円特別控除(35条1項)、軽減税率(31条の3)、収用の5,000万円特別控除(33条の4)には、条文本文にこうした期限の定めがありません。恒久的な措置として置かれているということです。

    期限があるものとないものが混在しているという構造をまず押さえてください。そのうえで、期限のあるものは延長されることが多いという点も知っておく必要があります。過去にも繰り返し延長されてきており、条文に書かれた期限がそのまま最終期限になるとは限りません。

    したがって実務的な結論はこうなります。この記事の内容は2026年8月時点で施行されている条文にもとづきます。適用を検討する際は、必ず国税庁の最新情報で期限と要件を確認してください。試験対策としても、期限そのものを暗記するより、期限がある特例とない特例の区別を押さえるほうが実益があります。税分野全体の配分は税・その他の得点戦略を参照してください。

    譲渡は税の一場面にすぎない

    譲渡所得は不動産を手放すときの税ですが、同じ不動産には取得のときも保有のときも税がかかっています。譲渡所得だけを切り離して覚えると、税分野全体の見取り図がぼやけます。

    取得の場面では不動産取得税と登録免許税、契約書には印紙税がかかります。それぞれの軽減措置は不動産取得税の非課税・軽減まとめ登録免許税と印紙税、印紙税の課税文書の区分は印紙税の課税文書一覧にまとめています。保有の場面は固定資産税と都市計画税で、住宅用地の特例は固定資産税を安くする方法にあります。

    そして買主の側では、住宅ローンを組んで取得した場合に住宅借入金等特別控除が使えます。ここで注意したいのが、居住用財産を売って3,000万円控除を受けた場合、買換え先について住宅ローン控除を受けられないことがあるという点です。売る側の特例と買う側の控除が干渉するので、実際には両者を通算して有利な選択を検討することになります。控除の要件は所得税の住宅ローン控除にまとめています。

    譲渡の特例どうしの併用制限だけでなく、取得側の制度との関係もあるという点を頭の隅に置いておいてください。

    試験での出題ポイント

    1月1日基準

    「令和2年4月に取得した土地を令和7年6月に譲渡した場合、所有期間が5年を超えるので長期譲渡所得となる」は誤りです。判定は譲渡した年の1月1日時点で行うため、令和7年1月1日の時点では5年に達していません。措置法31条1項・32条1項がいずれも「その年一月一日において」と定めています。

    3,000万円控除の所有期間

    「3,000万円特別控除は、所有期間が5年を超える居住用財産の譲渡にのみ適用される」は誤りです。35条1項は31条1項(長期)と32条1項(短期)の双方について読み替えを定めており、所有期間の要件はありません

    買換え特例の効果

    「買換え特例の適用を受けた場合、譲渡所得に対する課税は免除される」は誤りです。36条の2は譲渡がなかったものとする(または超える部分について譲渡があったものとする)という繰延べの規定で、買換資産を将来譲渡する際に精算されます。

    併用の可否

    「3,000万円特別控除と特定の居住用財産の買換え特例は、いずれも適用を受けることができる」は誤りです。35条2項柱書と36条の2第1項が相互に排除しています。他方、「3,000万円特別控除と10年超の軽減税率は併用できない」も誤りで、この組み合わせだけが併用できます

    親族への譲渡

    「配偶者に居住用財産を譲渡した場合にも3,000万円特別控除の適用がある」は誤りです。35条2項1号の括弧書きが、配偶者その他政令で定める特別の関係がある者に対する譲渡を除いています。31条の3第1項にも同じ制限があります。

    3年を経過する日の属する年の12月31日

    住まなくなった家屋の譲渡について「3年以内に譲渡しなければならない」という記述は、条文が「3年を経過する日の属する年の12月31日まで」としている以上、正確ではありません。

    二つの10年

    買換え特例では、所有期間が10年超であることに加え、1号により居住期間が10年以上であることも要求されます。所有期間だけで判断する選択肢に注意してください。

    概算取得費

    「取得費が不明な場合は、常に収入金額の5パーセントを取得費とすることが法律で定められている」という記述は、31条の4が対象を昭和27年12月31日以前から所有していた資産に限っている以上、条文の説明としては不正確です。

    覚え方・整理の仕方

    「1月1日」を最初に確認する習慣

    長短の区分は、問題文を読んだらまず譲渡した年の1月1日を紙に書くことから始めてください。取得日と1月1日の間隔を数える。譲渡日は使いません。

    取得の日の翌日から数える(31条2項)という細部も、境界ぎりぎりの事例で効いてきます。1月1日に取得した資産を5年後の1月1日に譲渡する、といった作り方をされたときに差が出ます。

    税率は所得税から導く

    合計税率を丸暗記すると、20.315と39.63と14.21が混ざります。所得税の率だけ覚えて、あとは足すようにしてください。

    長期は所得税15、短期は30、軽減税率の6,000万円以下は10。これに復興特別所得税として所得税額の2.1パーセントを乗せ、住民税を足す。住民税は長期5、短期9、軽減部分4です。

    15プラス0.315プラス5で20.315。30プラス0.63プラス9で39.63。10プラス0.21プラス4で14.21。計算できれば覚える必要がありません。

    併用は「働く場所」で判断する

    三つの特例の併用可否は、それぞれ何をする制度かで判別できます。

    3,000万円控除は課税標準を減らす。軽減税率は税率を下げる。働く場所が違うので重ねられます。買換え特例は譲渡そのものをなかったことにする。譲渡がないのだから、控除も税率も出番がありません。

    「減らす」と「下げる」は重なる、「なかったことにする」とは重ならない。この一文で三つの組み合わせが決まります。

    期限の有無で二群に分ける

    特例を覚えるとき、条文に期限が書いてあるかどうかで二群に分けておくと、改正情報に接したときに反応できます。

    期限があるのが買換え特例(36条の2)と空き家の特別控除(35条3項)。期限がないのが3,000万円控除(35条1項)、軽減税率(31条の3)、収用の5,000万円控除(33条の4)

    期限が書いてあるものは延長の有無を確認する必要がある、という意識を持っておけば、古い情報のまま覚え続ける事態を避けられます。

    数字は場面ごとに箱に入れる

    この分野には数字が集中します。5年は長短の区分、10年は軽減税率と買換え特例の所有期間(買換えは居住期間も10年)、3年は住まなくなってからの猶予と取得費加算の期間、3,000万円は居住用の特別控除、5,000万円は収用、6,000万円は軽減税率の境界、1億円は買換え特例と空き家特例の対価の上限。

    数字だけを並べず、必ず「何の数字か」とセットで格納する。同じ10年でも所有期間なのか居住期間なのかで意味が違います。

    理解度チェッククイズ

    問1 令和2年4月に取得した居住用建物を令和7年6月に譲渡した場合、実際の所有期間が5年を超えているため、長期譲渡所得として課税される。

    答え:×。租税特別措置法31条1項は「その年一月一日において所有期間が五年を超えるもの」を長期とし、32条1項は「その年一月一日において……所有期間が五年以下であるもの」を短期としています。この事例では判定基準日が令和7年1月1日となり、その時点の所有期間は4年9か月ほどで5年を超えていません。したがって短期譲渡所得として扱われます。なお所有期間は取得をした日の翌日から数えます(31条2項)。実際の所有期間と1月1日基準の所有期間がずれる点が繰り返し問われます。

    問2 居住用財産の3,000万円特別控除は、譲渡した年の1月1日における所有期間が5年を超える場合にのみ適用を受けることができる。

    答え:×。措置法35条1項は、31条1項(長期譲渡所得)と32条1項(短期譲渡所得)の双方について読み替えを定める形で3,000万円の控除を認めており、所有期間の要件はありません。所有期間が要件になるのは、31条の3の軽減税率(1月1日において10年超)と36条の2の買換え特例(同じく10年超)です。なお3,000万円控除には、配偶者その他政令で定める特別の関係がある者への譲渡が除かれること、前年・前々年に一定の特例の適用を受けていないことといった別の制限があります。

    問3 居住用財産の3,000万円特別控除と、10年超所有の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例は、いずれも適用を受けることができる。

    答え:○。31条の3第1項が除外する譲渡のリストに35条は挙げられておらず、35条2項が除外するリストにも31条の3は挙げられていません。35条は31条1項の規定を読み替えて3,000万円を控除する構造なので、控除後の課税長期譲渡所得金額に31条の3の軽減税率が適用されるという関係になります。3,000万円控除が課税標準を減らす制度、軽減税率が税率を下げる制度で、働く場所が異なるため重ねられます。他方、買換え特例(36条の2)はこのどちらとも併用できません。

    問4 特定の居住用財産の買換え特例の適用を受けた場合、譲渡した年分の譲渡所得に対する課税は免除される。

    答え:×。36条の2は、譲渡による収入金額が買換資産の取得価額以下である場合には「当該譲渡資産の譲渡がなかったものとし」、収入金額が取得価額を超える場合にはその超える部分に相当する部分の譲渡があったものとして31条を適用する、と定めています。これは課税を将来に繰り延べる仕組みであって、免除ではありません。買換資産を将来譲渡する際に、繰り延べられた分もあわせて精算されます。なお同条の適用期間は令和9年12月31日までとされており、所有期間10年超に加えて居住期間10年以上、譲渡対価1億円以下といった要件があります。

    問5 特定の居住用財産の買換え特例は、譲渡した年の1月1日における所有期間が10年を超えていれば、その家屋に居住していた期間の長短を問わず適用を受けることができる。

    答え:×。36条の2第1項1号は、譲渡資産となる家屋について「当該個人がその居住の用に供している期間として政令で定める期間が十年以上であるものに限る」としています。したがって所有期間10年超と居住期間10年以上の両方が必要です。二つの10年が別々の要件であることを押さえてください。なお軽減税率(31条の3)のほうは所有期間10年超のみが要件で、居住期間の長さは問われません。

    まとめ

    • 土地建物等の譲渡所得は分離課税で、長短の区分は譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるかで決まります(措置法31条1項、32条1項)。所有期間は取得をした日の翌日から数えます(31条2項)。税率は所得税が長期15パーセント・短期30パーセントで、これに復興特別所得税(所得税額の2.1パーセント)と住民税を加えると20.315パーセントと39.63パーセントになります。
    • 主要な特例は、3,000万円特別控除(35条1項。所有期間の要件なし)軽減税率(31条の3。1月1日に所有期間10年超、6,000万円以下の部分が所得税10パーセント)買換え特例(36条の2。所有期間10年超かつ居住期間10年以上、譲渡対価1億円以下、課税の繰延べ)です。いずれも配偶者その他特別の関係がある者への譲渡は除かれます。
    • 併用できるのは3,000万円特別控除と軽減税率の組み合わせだけで、根拠は条文にあります。35条2項柱書と36条の2第1項が相互に排除し、31条の3第1項の括弧書きが36条の2を除外しているためです。「減らす」と「下げる」は重なるが「なかったことにする」とは重ならない、と整理してください。

    譲渡所得の特例と併用可否は、宅建試験AIブートラボの肢別トレーニングで論点ごとに演習できます。

    読んだ内容を、税・その他の肢で確かめる

    税と価格の評定は毎年ほぼ同じ形で出ます。出題パターンを肢別で押さえれば取りこぼしません。

    関連記事

    Android版アプリの先行テスターを募集しています

    正式公開に先立ち、先行してご利用いただける方を募集しています。学習記録や有料プランはWeb版と同じアカウントで、そのまま引き継げます。3ステップで、通常その場で使い始められます。

    1
    テスターグループに参加する

    お使いのGoogleアカウントで参加ボタンを押すだけです。承認を待つ必要はありません。

    参加ページを開く
    2
    テスト版を受け取る

    手順1と同じGoogleアカウントでログインしたAndroid端末で受け取りページを開き、「テスターになる」を押してGoogle Playからインストールします。

    受け取りページを開く
    3
    いつものアカウントでログインする

    Web版と同じメールアドレス・パスワードでログインすれば、学習記録がそのまま表示されます。

    「まだご利用いただけません」と表示された場合は、反映待ちの可能性があります。時間をおいて再度お試しいただくか、info@takken-bootlab.com までお知らせください。