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宅建で最後の二択を外す原因と直し方|肢別で精度を上げる

試験対策・勉強法 読了 約35分

宅建で四肢を二つまで絞れるのに最後の二択で外す原因を五つに分け、演習記録からの見分け方、肢別演習での直し方、本番での二択の決め方と時間の上限を収録問題の実例つきで整理します。

目次

    この記事は、四肢のうち二つまでは消せるのに、残った二つで外してしまうという症状だけを扱います。正解した問題に紛れ込んだまぐれ当たりの洗い出しは「宅建の弱点克服法」、引っかけに使われる表現の実測は「宅建の引っかけ問題のパターン」、不合格になる構造全体は「宅建に落ちる原因」、模試の復習法は「模試の活用法」、肢別演習と年度別演習の使い分けは「過去問の活用法」に分けています。ここでは、その手前の「なぜ最後の二択で外すのか」と「どうすれば二択が二択でなくなるのか」だけを掘り下げます。

    先に結論を書きます。最後の二択で外すのは、運が悪いからでも、本番に弱いからでもありません。残った二つの肢は、同じ論点について一か所だけ条件を変えて作られていることが多く、その一か所を区別する知識が頭の中で分かれていないから迷うのです。したがって直し方は、二択の「選び方」を磨くことではなく、二択の片方を肢別演習の段階で確定できるようにすることです。本番の二択処理は、それでも残った迷いに時間の上限をかけて被害を小さくする手続にすぎません。

    以下で使う数字は、宅建試験AIブートラボが収録する平成28年度から令和7年度までの試験問題500問(令和2年度・令和3年度は収録した1回分)と、その自社模範解答2,000肢から集計したものです。

    「最後の二択で外す」とはどういう状態か

    二つ消せて、二つ残る

    四肢択一の問題を解いていて、四つの肢のうち二つは「これは違う」と自信を持って外せる。ところが残る二つがどちらも正しそうに見え、あるいはどちらも誤りに見え、決め手がないまま一方を選んで外す。この記事が扱うのは、この状態です。

    「全然わからない問題」とは違います。全然わからない問題は、四つの肢のどれにも手がかりがなく、当てずっぽうで選ぶしかありません。最後の二択で外す問題は、途中までは知識で進めています。知識で進めた分だけ、外したときの悔しさも大きく、「あと一歩だったのに」という印象が残ります。

    この「あと一歩」という感覚が、対策を誤らせます。あと一歩なら、少し注意深く読めば取れるはずだ、と考えてしまうからです。しかし実際には、二つを消したところまでと、最後の一つを決めるところとでは、使っている知識の種類が違います。前者は「この論点について大筋で知っている」ことで足りますが、後者は「この論点の中の、どの条件で結論が分かれるかを知っている」ことを要求します。後で見るように、出題者が二択の片側に置く肢は、この後者の知識がないと区別できないように作られています。

    二つ消せるのは、知識が半分あるからである

    二つの肢を消せたということは、その論点についての知識がゼロではないことを示しています。具体的には、論点の外側にある誤り、つまり明らかに別の制度の話をしている肢や、数字が大きく外れている肢は見抜けている、ということです。

    一方で、残った二つを区別できないということは、論点の内側の区別がついていないことを示しています。制度の名前と大まかな効果は知っているが、「誰が」「どの場面で」「いくらまで」という条件の分かれ目を知らない。知識が半分ある、というのはこういう意味です。

    この半分の知識は、演習の成績の上では見えにくい性質を持っています。二択まで絞って選べば、正解する確率はおよそ2分の1です。二択まで絞った問題が10問あれば、5問前後は正解として記録されます。正答率だけを見ていると、この論点は「半分くらいできている」ように見えます。実際には、区別の知識は一つもないまま、確率で半分が当たっているだけです。この構造は弱点克服法が「まぐれ当たり」と呼ぶものと同じで、記録の上では正解と不正解に分かれてしまうので、同じ原因から出ていることに気づきにくくなります。

    二択の正答率が5割に張りつくなら、判断はしていない

    ここから、自己診断の最初の目安が出てきます。二択まで絞った問題だけを取り出して、その正答率を数えます。もし5割前後に張りついているなら、最後の一つは判断で決めているのではなく、確率で決まっています。

    5割より明らかに高ければ、二択の段階でも何らかの知識が働いています。5割より明らかに低ければ、むしろ何かが系統的に逆向きに働いている可能性があります。たとえば問題文が「誤っているもの」を問うているのに正しい肢を選んでしまう、という読み違いは、二択の正答率を5割より下に押し下げます。この点は原因の分類で改めて扱います。

    どの場合でも、二択まで絞った問題を他の問題と分けて数えないかぎり、この診断はできません。演習のたびに、二択まで絞った問題に印をつける運用が前提になります。印のつけ方は、自己採点の場面では「宅建の自己採点」で扱っていますが、この記事では演習の段階から同じ印を使うことを勧めます。

    残る二択はどう作られているか

    正解肢の隣には、それと一番似た誤肢が置かれる

    四肢択一の問題は、正解の肢が一つ、正解でない肢が三つという構成です。正解でない三つの肢がすべて簡単に見抜けるものなら、問題は知識の有無を測れません。そこで問題は、少なくとも一つの肢を、正解肢と同じ論点・同じ文の形で作り、結論を分ける条件だけを変えて置くように作られることが多くなります。二択で迷うというのは、この一組の肢に行き当たった状態です。

    出題の意図は公表されていないので、「出題者はこう考えている」と断定することはできません。しかし過去の問題を肢ごとに並べてみると、正解肢と同じ主語、同じ述語の形を取りながら、条件の一か所だけが違う肢が同じ問題の中に置かれている例は繰り返し見つかります。次の節で、収録問題からその例を具体的に取り出します。

    分かれ目は五つの型に集まる

    二つの肢を分けている「一か所」は、ばらばらに見えて、いくつかの型に集まります。

    • 似た制度の区別。免責的債務引受と併存的債務引受、手付と中間金、事務所等とそれ以外の場所のように、名前や仕組みが似ている二つの制度を入れ替える型です。
    • 要件の一つの差。要件が三つあるうちの一つだけを満たさない事例を置く型です。欠格事由の罪名の限定、特例の面積や金額の上限などがこれに当たります。
    • 主体の差。同じ行為を、する人を入れ替える型です。債権者と債務者、売主と買主、宅建業者と宅地建物取引士、都道府県知事と国土交通大臣などが入れ替えの対象になります。
    • 数字の差。期間、金額、面積、割合の一つを動かす型です。数字そのものを変える場合と、数字は同じまま起算点や「以上・未満」を変える場合があります。
    • 原則と例外。原則の結論を書いたうえで、例外が適用される事例にしておく型、あるいはその逆です。「ただし書」がある条文はほぼすべてこの型の材料になります。

    五つに分けたのは覚えやすくするためで、実際の肢は二つ以上の型を重ねていることもあります。主体を入れ替えたうえで結論も逆にする、といった組み合わせです。大事なのは、迷ったときに「この二つの肢は、どの型で分かれているのか」を言葉にできるかどうかです。型が言えれば、確認すべき知識が一つに絞れます。型が言えないまま迷っているなら、二つの肢の違いそのものを見つけられていない可能性があります。

    引っかけに使われる語の側から同じことを調べた記事が「引っかけ問題のパターン」で、数字を囲む語や起算点、承諾という装置などを実測しています。この記事は語ではなく、二つの肢の関係の側から見ています。

    文面がそっくりな二択は、実はそれほど多くない

    「二つの肢が対になっている」と聞くと、一語だけ違う、ほとんど同じ文が二つ並んでいる姿を想像するかもしれません。実際にどの程度そうなっているかを、収録問題で確かめました。

    選択肢が文章になっている問題(個数問題のように選択肢が「一つ」「二つ」といった短い語になっているものを除く)423問について、正解肢と他の三つの肢の文字列の一致度を機械的に計算し、最も似ている肢との一致度を出しました。一致度が8割以上の、ほぼ同じ文と言える組を含む問題は423問中16問、7割以上でも39問、6割以上でも63問でした。

    つまり、文面がそっくりな二択は多数派ではありません。多くの問題では、二択の片側は、事例の設定や言い回しを変えたうえで、同じ論点の別の条件を突いています。見た目は似ていないのに、論点としては対になっている、ということです。

    この事実は、対策に直接響きます。「一語違いを探す」という読み方は、16問のような問題には効きますが、それ以外の多くの問題では役に立ちません。二つの肢を並べて文字の違いを探すのではなく、二つの肢がそれぞれどの条件を述べているかを言葉にして、その条件の違いが結論を変えるのかを判断する。これが二択を割るときの基本の動作です。

    収録問題に見る「対になる肢」の実例

    ここでは、宅建試験AIブートラボ収録の問題から、正解肢と正解でない肢が一か所の違いで対になっている例を四つ取り出します。問題文そのものは転載せず、肢の内容を要約して示します。正誤と根拠は自社模範解答によります。

    令和6年度 問9|主体を入れ替えた併存的債務引受

    宅建試験AIブートラボ収録の令和6年度 問9(権利関係)は、正しいものを選ぶ問題です。正解の肢2は、第三者(引受人)が債務者との間で併存的債務引受の契約をした場合、債権者が引受人に承諾をした時点で効力が生ずる、という内容でした。これは民法470条3項のとおりで、正しい記述です。

    これと対になっていたのが肢3です。肢3は、第三者が債権者との間で併存的債務引受の契約をした場合、債務者が第三者に承諾をした時点で効力が生ずる、という内容でした。契約の相手方を債務者から債権者に、承諾する者を債権者から債務者に入れ替えています。文の形は肢2とほぼ同じで、両者の文字列の一致度は収録問題の中で最も高い組でした。民法470条2項は、併存的債務引受は債権者と引受人との契約によってすることができると定めており、この形では債務者の承諾は要りません。したがって肢3は誤りです。

    この二択を割るのに必要な知識は、「併存的債務引受には成立の仕方が二通りあり、誰と誰の契約かによって、誰の承諾が要るかが変わる」という一点です。「債務引受には承諾が要る」とだけ覚えていると、二つの肢はどちらも正しく見えます。なお同じ問題の肢1は免責的債務引受で債権者の承諾が不要とする内容で、民法472条3項によれば、債務者と引受人との契約による免責的債務引受は債権者が引受人に承諾をすることで効力を生ずるので誤りです。一つの問題の中に、似た制度の区別と主体の差が重ねて置かれていたことになります。

    令和6年度 問30|場所を一つ入れ替えたクーリング・オフ

    宅建試験AIブートラボ収録の令和6年度 問30(宅建業法)は、誤っているものを選ぶ問題です。買主が自ら申し出た場所で買受けの申込みと契約をした場合に、クーリング・オフによる解除ができるかどうかが問われました。

    肢2は、買主が自らの申出により、自分の勤務する会社の事務所で申込みと契約をした場合、クーリング・オフによる解除はできない、という内容でした。宅建業法37条の2第1項と同法施行規則16条の5第2号により、買主が自ら申し出た場合の買主の自宅または勤務する場所は「事務所等」に含まれるので、解除はできません。肢2は正しい記述です。

    肢4は、買主が自らの申出により、融資を受ける銀行(宅建業者ではない)で申込みと契約をした場合、クーリング・オフによる解除はできない、という内容でした。文の形は肢2と同じで、場所だけが「勤務する会社の事務所」から「融資を受ける銀行」に変わっています。買主の申出によって事務所等となるのは自宅と勤務する場所に限られ、銀行はどちらにも当たりません。したがって解除はでき、肢4は誤った記述です。問題は誤っているものを問うているので、正解は肢4でした。

    この例には、二択で外す原因が二つ同時に潜んでいます。一つは、申出による事務所等の範囲が「自宅または勤務する場所」に限られるという要件を持っていないこと。もう一つは、問題の指示が「誤っているもの」であることを、二択の最終判断の段階で見失うことです。肢2と肢4の正誤を正しく判定できても、最後に「正しい方」を選んでしまえば外れます。クーリング・オフの場所の要件は「クーリング・オフ」で条文から整理しています。

    令和5年度 問29|罪名を一つ変えた欠格事由

    宅建試験AIブートラボ収録の令和5年度 問29(宅建業法)は、正しいものを選ぶ問題です。宅建業者の役員や本人が刑に処せられた場合に、免許が取り消されるかどうかが問われました。

    正解の肢2は、宅建業者である法人の取締役が所得税法違反で罰金刑に処せられても、その法人の免許は取り消されない、という内容でした。罰金刑が欠格事由になるのは、宅建業法5条1項6号が列挙する罪(宅建業法違反、傷害・暴行・脅迫・背任などの一定の刑法犯、暴力行為等処罰に関する法律の罪など)に限られ、所得税法違反はここに入っていません。肢2は正しい記述です。

    対になっていたのが肢4で、宅建業者である法人の非常勤の取締役が脅迫罪で罰金刑に処せられても免許は取り消されない、という内容でした。「法人の役員が罰金刑」という骨格は肢2と同じで、罪名が所得税法違反から脅迫罪に、役員の性格が「取締役」から「非常勤の取締役」に変わっています。脅迫罪は5条1項6号に列挙された罪なので欠格事由に当たり、役員が欠格事由に該当すれば法人も欠格となります(5条1項12号)。非常勤であることは役員に当たるかどうかに影響しません。したがって肢4は誤りです。

    この二択では、「非常勤」という語が目を引きます。しかし結論を分けているのは罪名のほうで、非常勤という語は、役員の範囲について迷わせるために添えられています。要件の一つの差(罪名)と、結論に影響しない修飾語が重ねられた例です。どの語が結論を分けているのかを判定できないと、目立つ語に引かれて判断を誤ります。欠格事由の全体は「欠格事由の一覧」にまとめています。

    令和元年度 問37|数字を一つ変えて結論を反転させた手付金等の保全

    宅建試験AIブートラボ収録の令和元年度 問37(宅建業法)は、正しいものを選ぶ問題です。宅建業者が自ら売主となる建築工事完了前の建物の売買(代金3,000万円)で、手付金等の保全措置が問われました。

    正解の肢3は、手付金150万円を受領した後、さらに中間金50万円を受領しようとする場合、手付金と中間金の合計200万円について保全措置を講じれば中間金を受領できる、という内容でした。未完成物件の保全措置は、受領しようとする手付金等の額が代金の100分の5以下かつ1,000万円以下なら不要ですが(宅建業法41条1項)、ここでの基準額は150万円で、合計200万円はこれを超えます。そして手付金等には中間金も含まれるので、合計額について保全措置を講じればよい、という肢3の記述は正しいことになります。

    対になっていたのが肢4で、中間金を500万円とし、合計650万円について保全措置を講じても中間金を受領できない、という内容でした。中間金の額を変えたうえで、結論を「受領できる」から「受領できない」に反転させています。額が大きくなっても、合計額について保全措置を講じれば受領できることに変わりはありません。代金の10分の2という手付の額の制限(39条1項)は手付についての規制で、中間金には及びません。したがって肢4は誤りです。

    この二択で迷うのは、「650万円は大きすぎるのではないか」という印象が働くからです。代金の10分の2という別の数字を思い出して、それが中間金にも及ぶように感じてしまう。数字の差の型に、似た制度の区別(手付の額の制限と、手付金等の保全措置)が重なっています。数字を見たときに「この数字はどの制度の、どの要件の数字か」を言えるかどうかで分かれます。保全措置の仕組みは「手付金等の保全措置」、手付の制限は「手付の制限」で扱っています。

    四つの例に共通すること

    四つの例を並べると、共通点が見えてきます。

    第一に、二択の片側は、正解肢と同じ論点について、結論を分ける条件を一つだけ変えて作られていました。主体(債権者と債務者)、場所(勤務先と銀行)、罪名(所得税法違反と脅迫罪)、金額(50万円と500万円)です。

    第二に、その変えられた一か所の知識は、どれも条文の要件そのものでした。民法470条2項と3項の違い、施行規則16条の5第2号の範囲、宅建業法5条1項6号の罪名の列挙、41条1項の手付金等の範囲です。テキストの太字で覚える要点ではなく、条文の中の細かい条件に近い部分です。

    第三に、結論を分けない語が目立つ位置に置かれていることがありました。非常勤、650万円という大きな額などです。この目立つ語に反応して判断すると、結論を分けている条件を読み飛ばすことになります。

    したがって、二択に強くなるというのは、この「一か所」をあらかじめ知っていることです。本番で探し当てる技術ではありません。

    二択で外す原因は五つあり、演習の記録で見分ける

    同じ「最後の二択で外した」という結果でも、原因は一つではありません。原因が違えば直し方も違うので、まず分けます。ここでは五つに分けます。

    原因1 知識が分かれていない

    二つの肢が述べている条件の違いについて、そもそも区別の知識を持っていない状態です。前の節の例でいえば、併存的債務引受に二通りの成立の仕方があることを知らない、申出による事務所等が自宅と勤務先に限られることを知らない、という場合です。

    この原因の特徴は、解説を読んだときに「そういう区別があったのか」と感じることです。二つの肢の違いには気づいていた、あるいは気づいていなかったが、いずれにしてもどちらが正しいかを決める材料が頭の中になかった。最も素直な原因で、直し方も知識を入れることに尽きます。

    ただし、知識を入れるといっても、テキストを最初から読み直すことではありません。足りないのは、論点全体ではなく、二つの肢を分ける一点です。その一点を条文で確認し、どちらの条件のときにどちらの結論になるのかを、一文で言えるようにします。

    原因2 問題文の指示を読み違えた

    二つの肢の正誤は正しく判定できていたのに、「正しいものはどれか」と「誤っているものはどれか」を取り違えて、逆の肢を選んだ状態です。令和6年度 問30のように、誤っているものを問う問題で二択まで絞った場合、二つの肢の一方は正しい記述、他方は誤った記述です。判定が正しくても、最後に指示と逆の方を選べば外れます。

    この原因の特徴は、解説を読んだときに「わかっていたのに」と感じることです。二つの肢それぞれの正誤は、自分の判定と解説が一致している。一致しているのに不正解になっている、という食い違いが、読み違いの確かな証拠になります。

    二択で迷っていた問題ほど、この読み違いは起きやすくなります。一方の肢について「これは正しいはずだ」と考え込んでいるうちに、その「正しい」という判定がそのまま選択の理由にすり替わるからです。読み違いは知識の問題ではないので、知識を足しても直りません。

    原因3 肢の一部だけを読んで判断した

    肢の前半、あるいは目立つ語だけで判断し、結論を分けている条件の部分を読んでいなかった状態です。令和5年度 問29でいえば、「非常勤の取締役」という語で判断して、罪名を確認しなかった場合がこれに当たります。

    この原因の特徴は、解説を読んだあとで肢を読み直すと、判定を誤った理由が肢の中にはっきり書いてあることです。知識はある。読み直せば正しく判定できる。それなのに試験中は判定を誤った。原因2と似ていますが、原因2は問題文の指示を読み違えるのに対して、原因3は肢の中身を読み落とします。

    この原因は、時間に追われているときや、同じ論点の問題を何度も解いて肢の形に見覚えがあるときに起きやすくなります。見覚えのある形をしていると、最後まで読まずに「あの肢だ」と判断してしまうからです。過去問を何周も回したときに起きやすい癖で、その扱いは「過去問だけで受かるか」でも触れています。

    原因4 「どちらも正しそう」を「どちらも正しい」と処理した

    四肢択一で正しいものを選ぶ問題なら、正しい肢は一つしかありません。それなのに二つの肢がどちらも正しく見えるということは、どちらかの判定が誤っているということです。この当然の事実を使わずに、「どちらも正しいように思えるから、どちらでもよい」と処理して、片方を選んだ状態です。

    この原因の特徴は、迷ったときに二つの肢のどちらかを「疑い直す」作業をしていないことです。二つとも正しく見えるなら、少なくとも一方には自分が見落としている条件がある。その条件を探しにいくのが本来の動作ですが、それをせずに印象で決めています。

    原因1と重なるように見えますが、区別する意味があります。原因1は、疑い直しても決める材料がない状態です。原因4は、疑い直せば決められたかもしれないのに、疑い直していない状態です。前者には知識が要り、後者には手順が要ります。

    原因5 時間が足りず、勘で決めた

    二つの肢を比べる時間が残っておらず、考えずに一方を選んだ状態です。時間配分全体が崩れていて、後半の問題でこの形が集中して出ます。

    この原因の特徴は、同じ問題を時間の制約なしで解き直すと、正しく判定できることです。知識はあり、手順も知っている。時間があれば取れた問題です。

    ただし、時間切れで勘に頼ったのか、それとも時間をかけても決められなかったのかは、後から区別しにくくなります。区別するには、解いた時点で「時間がなくて決めた」という印を残しておく必要があります。時間配分そのものの組み立ては、直前期の過ごし方と合わせて「直前期の勉強法」で扱っています。

    記録する項目は四つ

    五つの原因を見分けるには、演習の時点で少しだけ記録を残しておく必要があります。解き終わってから記憶で分類しようとしても、どこで迷ったのか、何を考えていたのかはほとんど残っていません。記録するのは次の四つです。

    • 二択まで絞ったかどうか。二択まで絞った問題に印をつけます。
    • 二択の相手はどの肢だったか。「肢2と肢4で迷った」のように、残った二つの番号を書きます。
    • 自信度。丸(根拠を言える)、三角(迷った)、バツ(勘)の三段階です。二択まで絞った問題は、原則として三角かバツになります。
    • 時間に追われていたかどうか。時間がなくて決めた問題には別の印をつけます。

    四つといっても、一問あたりの記録は数文字です。「2-4△」「1-3×時」のように書けば足ります。この記録を問題番号の横に残しておくだけで、原因の判定ができるようになります。

    判定は解説を読みながら、上から順に行う

    採点のあと、二択の印がついた問題について、解説を読みながら次の順に判定します。上から順に当てはめ、最初に当てはまったものをその問題の原因とします。

    • 第一に、時間の印があるかを見ます。あって、時間をかけて解き直せば正しく判定できるなら、原因5(時間切れ)とします。
    • 第二に、残った二つの肢それぞれについて、自分の判定と解説の正誤を比べます。二つとも一致しているのに不正解なら、原因2(指示の読み違い)です。
    • 第三に、判定が食い違っていた肢を読み直し、結論を分ける条件が肢の中に書いてあるのに、それを読んでいなかったかを確かめます。読んでいなかったなら、原因3(一部だけ読んだ)です。
    • 第四に、読んではいたが、その条件で結論が変わることを知らなかったなら、原因1(知識が分かれていない)です。
    • 第五に、条件で結論が変わることは知っていたのに、試験中にその条件を探しにいかなかったなら、原因4(どちらも正しいと処理した)です。

    この順序には理由があります。原因2と原因5は知識と関係がなく、見分けるのが最も簡単なので先に外します。残った問題について、肢の読み方の問題(原因3)か、知識の問題(原因1)か、手順の問題(原因4)かを分けます。

    原因ごとに記録の現れ方が違う

    判定を何回か続けると、原因ごとに記録の現れ方が違うことがわかってきます。

    原因1が多い場合、二択の印は特定の論点に集中します。同じ論点で、何度も同じ組の肢の間で迷います。これは知識の穴がその論点にあるからで、弱点の場所がはっきりしている状態です。

    原因2が多い場合、二択の印は論点と関係なく散らばり、「誤っているものを選べ」という問題に偏ります。

    原因3が多い場合、二択の印は後半の問題、あるいは見覚えのある形の肢に偏ります。解き直せば取れるので、正答率が上下に大きくぶれるのも特徴です。

    原因4が多い場合、二択の印は論点を問わず出ますが、解説を読むと知っている知識で決められたものが多くなります。

    原因5が多い場合、二択の印とバツの自信度が、演習の終盤に集中します。

    この現れ方は、一回の演習ではわかりません。三回、四回と記録を重ねて、どこに偏るかを見ます。原因の分類そのものは、模試の復習で使う「知識不足・混同・読み違い・時間不足」の四分類とも対応しています。模試での分類の仕方は「模試の活用法」を参照してください。この記事の五分類は、そのうち二択という場面に絞って、混同をもう一段細かく割ったものだと考えてください。

    直し方|肢別演習で二択の片側を消す

    原因が知識の側(原因1と原因4)にある場合、直す場所は本番ではなく演習です。二択は、本番で割るものではなく、演習の段階で二択にならないようにしておくものです。そのために使うのが肢別演習です。肢別演習と年度別演習の役割分担は「過去問の活用法」で整理していますが、ここでは二択の対策に絞って、肢別演習の中で何をするかを書きます。

    正解した肢も、根拠を一文で言う

    肢別演習では、一つの肢について正誤を判定し、すぐに答え合わせをします。このとき、正解した肢についても、なぜそう判定したのかを一文で言います。「民法470条2項で、債権者と引受人の契約なら債務者の承諾は要らないから誤り」という具合です。

    正解した肢の根拠を言う作業を省くと、まぐれで当たった肢が記録上「できている」に分類されます。二択で迷う論点は、まさにこのまぐれ当たりが混ざりやすい論点です。肢別演習では一つの肢の正誤が五分五分になるので、根拠を言わずに判定した肢は、正解でも半分は偶然です。

    根拠が一文で言えなかった肢は、正解していても不正解と同じ扱いにします。これは厳しく見えますが、四肢択一の本番では、根拠を言えない肢が二つ残った時点で二択になり、そこから先は確率の勝負になります。演習で根拠を言えなかった肢は、本番で二択を作る材料そのものです。

    誤っている肢は、正しい文に直す

    誤りの肢については、どこが誤っているかを指摘するだけでなく、正しい文に書き直します。令和6年度 問30の肢4なら、「買主が自らの申出により、融資を受ける銀行で申込みと契約をした場合、クーリング・オフによる解除をすることができる」と直します。あるいは、場所の側を直して「買主が自らの申出により、自宅で申込みと契約をした場合、解除はできない」としてもかまいません。

    直し方が二通りあるということ自体が、二択の構造を示しています。誤りの肢は、正しい文から一か所を変えて作られています。その一か所を元に戻すと正しい文になります。どこを戻せば正しくなるかを言えるということは、どこが変えられていたかを言えるということで、次に同じ論点で二択になったとき、その一か所を真っ先に確かめられるようになります。

    正しい肢についても同じ作業を逆向きに行えます。「この肢のどこを変えれば誤りになるか」を考えるのです。令和5年度 問29の肢2なら、「所得税法違反」を「脅迫罪」に変えれば誤りになる、と言えれば、罰金刑の罪名の限定という要件を持っていることになります。この逆向きの作業は、個数問題の対策として「個数問題の解き方」でも勧めているもので、肢の判定精度を上げる作業としては同じものです。

    自信度を三段階で記録し、三角が集まる論点を潰す

    肢別演習でも、判定のたびに自信度を三段階で記録します。丸は根拠を一文で言えた、三角は判定したが迷った、バツは勘で判定した、です。

    記録を論点ごとに集めると、三角が特定の論点に固まって出てきます。たとえば、クーリング・オフの論点で場所に関する肢にだけ三角が並ぶ、欠格事由の論点で罰金刑に関する肢にだけ三角が並ぶ、という具合です。この三角が固まっている論点が、本番で二択を作る論点です。

    潰し方は、その論点の肢をまとめて解くことです。一日に一つの論点を選び、その論点の肢を収録分すべて続けて解いて、三角だった肢の根拠を条文で確かめます。同じ論点の肢を続けて解くと、どの条件で結論が分かれるのかが、肢と肢の比較から見えてきます。一問ずつ別の日に解いていると、この比較は起こりません。自信度の記録の付け方と、優先順位の付け方の詳細は「弱点克服法」にあります。

    迷った肢は、ノートではなく演習履歴に残す

    二択で迷った肢を書き写して「迷った肢ノート」を作りたくなるかもしれません。しかし、書き写したノートは、時間がたつと読むだけのものになります。読むだけでは、その肢を本番と同じ条件で判定できるかどうかは確かめられません。

    迷った肢は、演習の履歴の中に印つきで残し、間隔を空けて同じ肢をもう一度判定します。判定し直したときに丸になっていれば解消、三角のままなら未解消です。この確認は、書き写したノートではできません。ノートが要るのは、条文の要件を自分の言葉でまとめ直す必要があるときに限られます。ノートを作るかどうかの判断は「宅建にノートは必要か」で扱っています。

    演習の履歴に残す利点はもう一つあります。二択の相手の肢も一緒に残ることです。「肢2と肢4で迷った」という記録があれば、再判定のときに二つの肢を並べて見直せます。二択は一組の肢の関係なので、片方だけを残しても意味が半分になります。

    対比表ではなく「軸」で覚える

    似た制度を区別するとき、二つの制度を左右に並べた対比表を作る方法がよく勧められます。しかし対比表は、覚えた項目の数が増えるほど、どの項目が結論を分けるのかが見えにくくなります。すべての項目が同じ大きさで並ぶからです。

    代わりに、二つの制度を分ける「軸」を一つずつ言葉にして覚えます。軸とは、結論を変える条件のことです。併存的債務引受なら、軸は「誰と誰の契約か」の一本で、債権者と引受人の契約ならそれだけで成立し、債務者と引受人の契約なら債権者の承諾で効力が生じる。免責的債務引受も同じ軸で並べられ、債権者と引受人の契約なら債権者から債務者への通知で、債務者と引受人の契約なら債権者の承諾で効力が生じる(民法472条2項・3項)。こう覚えると、四つの組み合わせが一本の軸の上に並びます。

    クーリング・オフの場所なら、軸は「誰が場所を決めたか」と「その場所は何か」の二本です。宅建業者の事務所や、専任の宅地建物取引士を置くべき土地に定着した案内所などは、誰が決めたかに関係なく事務所等に当たる。買主が自ら申し出た場合は、自宅と勤務先だけが事務所等に加わる。喫茶店や銀行は、誰が決めても事務所等にならない。

    軸で覚える利点は、二択に行き当たったとき、「この二つの肢はどの軸の上で違っているか」を問えることです。軸が言えれば、確かめる知識は一つに絞られます。この覚え方は、暗記全般の組み立てとしては「暗記術」で扱っている、理由とセットで覚える方法の応用です。

    本番での二択の処理

    演習でどれだけ潰しても、本番では初めて見る形の肢が出ます。二択は必ず残ります。ここでは、残った二択を本番でどう処理するかを決めておきます。目的は二択の正答率を上げることではなく、二択に時間を吸われて他の問題を落とすことを防ぐことです。

    決める順序は五段階

    二択になったら、次の順序で確かめます。順序を固定しておくと、迷っている間に同じところを何度も読み返すことを防げます。

    • 第一段階として、問題文の指示をもう一度読みます。「正しいもの」か「誤っているもの」か、「適切なもの」か「不適切なもの」かを確かめ、問題番号の横に丸やバツの印を書きます。原因2を防ぐための段階で、二択になった時点で必ず行います。
    • 第二段階として、二つの肢の主語と条件を比べます。誰が、誰に対して、どの場面で、という部分が同じかどうかを確かめます。主語や相手方が入れ替わっていれば、それが分かれ目である可能性が高くなります。
    • 第三段階として、数字と期間を比べます。金額、面積、日数、割合と、その数字を囲む「以上」「未満」「以内」、起算点を確かめます。数字が同じでも起算点が違うことがあります。
    • 第四段階として、原則と例外のどちらを述べているかを確かめます。その肢の事例が、原則の場面か、ただし書の場面かを判定します。
    • 第五段階として、ここまでで決まらなければ、初見の印象ではなく、条文の言い回しに近い方を選びます。

    第五段階は最後の手段で、根拠のある判断ではありません。正しい肢は条文の文言をそのまま使って書かれることが多く、誤りの肢は条文にない限定や言い換えを加えて作られることがある、という経験則に頼っているだけです。実際には条文の文言のまま誤りにした肢も作られるので、この判断は外れることがあります。引っかけに使われる語が条文由来かどうかで正誤の傾向が分かれることは「引っかけ問題のパターン」が実測しています。それでも、「最初に正しいと感じた方」という印象で選ぶよりは、判断の手がかりとして条文を使っている分だけましです。

    時間の上限を先に決めておく

    二択に使う時間には、上限を決めておきます。五段階を一通り確かめても決まらない問題は、それ以上考えても決まらないことが多いからです。考え続けると、その問題に使った時間が、後ろの問題の見直しの時間を削ります。

    上限の長さは、自分の解答速度から決めます。50問を2時間で解く試験なので、一問あたりの平均は2分強です。二択で迷った問題にその平均を大きく超える時間をかけると、全体の配分が崩れます。二択の五段階を確かめるのに使う時間を、たとえば1分と決めておき、そこで決まらなければ次の段階に進まずに打ち切ります。この長さは演習の段階で自分の手順を回して確かめ、模試で試しておきます。

    マークし、印を残して見直しに回す

    打ち切った問題は、その場で二つのうち一方をマークします。後で戻るつもりでも、空欄のままにしておくと、時間切れで戻れなかったときに0点が確定します。一方をマークしておけば、少なくとも2分の1の期待値が残ります。

    マークしたうえで、問題冊子の問題番号の横に印を残します。「2-4」のように迷った二つの肢の番号を書いておくと、見直しのときにどこから読めばよいかがすぐにわかります。印は演習のときと同じものを使います。本番で初めて新しい記号を使うと、見直しのときに意味を取り違えます。

    見直しで答えを変えるかどうかの基準

    見直しの時間に二択の問題に戻ったとき、答えを変えるかどうかの基準も決めておきます。基準は一つで、「最初に選んだ時点になかった根拠を見つけたときだけ変える」です。

    見直しで二つの肢を読み直すと、最初とは違う方が正しく見えてくることがあります。しかし、それが新しい根拠に基づくものでなく、単に印象が変わっただけなら、変えても正答率は上がりません。新しい根拠とは、たとえば後ろの問題を解いているうちに同じ論点の条文を思い出した、問題文の指示を読み違えていたことに気づいた、肢の中の条件を読み落としていたことに気づいた、といったものです。これらは原因2、原因3、原因4を見直しの段階で拾うことに当たります。試験当日の時間の使い方全体は「試験当日の過ごし方」にまとめています。

    二択の精度が上がったかをどう測るか

    正答率だけを見ない理由

    直し方を続けたあと、効果が出ているかを確かめます。このとき、演習全体の正答率だけを見るのは不十分です。

    理由は三つあります。第一に、二択まで絞った問題の正答率は、何も改善していなくても2分の1前後で上下します。10問程度の小さな数では、偶然だけで3問になったり7問になったりします。正答率が上がったように見えても、それが改善なのか偶然なのか区別できません。

    第二に、二択の対策が効くと、二択そのものが減ります。二択まで絞って迷っていた問題が、迷わずに一つに決まるようになる。これは改善ですが、二択の問題の正答率という数字には現れません。むしろ、簡単な二択が消えて難しい二択だけが残るので、二択の正答率は下がって見えることさえあります。

    第三に、全体の正答率は、二択と関係のない問題の出来にも左右されます。新しい論点を学んだ、得意な分野の問題が多かった、という事情で上下します。

    見るべき指標は四つ

    そこで、次の四つを並べて見ます。

    • 二択の印がついた問題の数。演習一回あたりの数が減っていれば、演習の段階で二択を潰せていることになります。これが第一の指標です。
    • 同じ組の肢で再び迷った回数。一度迷った論点で、再判定のときにも三角がつくかどうかを数えます。再び迷う回数が減っていれば、潰した論点が定着しています。
    • 自信度が丸の肢の正答率。丸をつけた肢がほぼ全部正解していれば、自分の「わかった」という判断が信用できる状態です。丸なのに外れる肢が出るなら、根拠を言えたつもりで言えていなかった論点があり、そこは原因1の候補です。
    • 二択にかけた時間。本番の手順で、二択を上限時間内に処理できているかを見ます。決め切れずに打ち切った問題の数が減っていれば、五段階の手順が回るようになっています。

    この四つは、どれも正答率より手前にある数字です。二択の数が減り、再び迷う回数が減り、丸の信頼度が上がれば、正答率はその結果として後からついてきます。逆に、正答率だけが上がってこの四つが動いていないなら、それは偶然の可能性を疑います。

    確認は間隔を空けて行う

    潰した論点が本当に定着したかどうかは、潰した直後には確かめられません。直後は記憶が新しいので、根拠を言えて当然だからです。一週間程度の間隔を空けて、同じ論点の肢をもう一度判定し、そこで丸がつくかを確かめます。間隔を空けた再判定で三角に戻っていれば、潰したつもりで潰せていなかったということです。

    この確認は、試験直前の数週間に集中させると間に合いません。試験日は2026年10月18日(日)なので、直前期に入る前から、潰した論点の再判定を演習の予定に組み込んでおきます。合格点を取るために、どの科目のどの論点で点を積むかという全体の設計は「宅建の合格戦略」で扱っています。

    試験での出題ポイント

    二択に行き当たりやすい論点と、そこで分かれ目になる条件を、前の節までの例に沿って整理します。

    主体を入れ替える論点

    債務引受のように、契約の当事者の組み合わせによって要件が変わる制度は、主体の入れ替えで二択が作られます。併存的債務引受は、債権者と引受人の契約ならそれだけで成立し(民法470条2項)、債務者と引受人の契約なら債権者が引受人に承諾をした時に効力を生じます(同条3項)。二つの肢で「誰と誰の契約か」と「誰が承諾するか」が入れ替わっていないかを見ます。宅建業法でも、宅建業者がすべきことと宅地建物取引士がすべきこと、免許権者が都道府県知事か国土交通大臣か、という主体の入れ替えが繰り返し使われます。

    場所や対象の範囲を一つずらす論点

    クーリング・オフの事務所等のように、範囲が列挙で決まっている制度は、範囲の内側の例と外側の例で二択が作られます。買主が自ら申し出た場合に事務所等になるのは自宅と勤務する場所だけで(宅建業法37条の2第1項、同法施行規則16条の5第2号)、喫茶店や銀行は含まれません。列挙された範囲を、列挙のとおりに言えるかどうかが問われます。

    列挙された要件の一つを差し替える論点

    欠格事由の罰金刑のように、対象が限定列挙されている要件は、列挙に含まれるものと含まれないもので二択が作られます。罰金刑で欠格になる罪は宅建業法5条1項6号に列挙されたものに限られ、所得税法違反はそこに入らない一方、脅迫罪は入ります。列挙を丸ごと覚えていなくても、「罰金刑は罪名が限定されている」「拘禁刑以上なら罪名を問わない」という軸を持っていれば、二択の半分は決められます。

    数字を動かして結論を反転させる論点

    手付金等の保全措置のように、数字の基準で結論が変わる制度は、数字を動かしたうえで結論まで反転させる形で二択が作られます。未完成物件の保全措置は、手付金等の額が代金の100分の5以下かつ1,000万円以下なら不要で(宅建業法41条1項)、手付金等には中間金も含まれます。数字を見たら、それがどの制度のどの基準の数字かを言えるかどうかが問われます。数字全般の整理は「宅建業法の数字」にまとめています。

    問題の指示が「誤っているもの」の問題

    二択が最も危なくなるのは、誤っているものを選ぶ問題です。二択に残った二つのうち、一方は正しい記述、他方は誤った記述で、判定が合っていても最後に選ぶ方を取り違えれば外れます。二択になったら、まず指示を読み直す、という手順はこのためにあります。

    覚え方・整理の仕方

    二択は「どの型で分かれているか」を一語で言う

    二択に行き当たったら、二つの肢がどの型で分かれているかを一語で言います。主体、要件、数字、原則例外、似た制度、の五つのどれかです。一語で言えれば、確かめる知識が決まります。言えなければ、二つの肢の違いをまだ見つけていないので、肢を読み直します。

    原因は「知・指・部・両・時」で分ける

    外した二択の原因は、知(知識が分かれていない)、指(指示の読み違い)、部(一部だけ読んだ)、両(どちらも正しいと処理した)、時(時間切れ)の五文字で記録します。判定は時、指、部、知、両の順に当てはめます。知識と関係のない時と指を先に外すためです。

    演習では「根拠を一文」「誤りを直す」「自信度を三段階」

    肢別演習でやることは三つだけです。正解した肢も根拠を一文で言う。誤った肢は正しい文に直す。判定のたびに丸・三角・バツの自信度をつける。三角が固まった論点が、本番で二択を作る論点です。

    本番の五段階は「指示・主語・数字・原則・条文」

    本番で二択になったら、指示、主語と条件、数字と期間、原則と例外、条文の言い回し、の順に確かめます。上限時間で打ち切り、一方をマークし、迷った二つの肢の番号を書いて見直しに回します。見直しで答えを変えるのは、新しい根拠を見つけたときだけです。

    制度の区別は、表ではなく軸で持つ

    似た制度は、左右に並べた一覧で覚えるのではなく、結論を変える軸を一本ずつ言葉にして覚えます。「誰と誰の契約か」「誰が場所を決めたか」「罪名が列挙に入るか」「その数字はどの制度の基準か」。軸が言えれば、見たことのない形の二択でも、その軸の上で二つの肢を比べられます。

    理解度チェッククイズ

    二択の片側になりやすい知識から出題します。どの問題も、対になる肢を思い浮かべながら、どの軸で結論が分かれるかを言ってから答えてください。

    Q1. 宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地の売買で、買主が自ら申し出て、買主が融資を受ける銀行(宅地建物取引業者ではない)で買受けの申込みと売買契約をした場合、買主はクーリング・オフによる解除をすることができない(○か×か)

    答えを見る ×:宅地建物取引業法37条の2第1項は、宅建業者の事務所等で買受けの申込みや契約をした場合にクーリング・オフを認めていません。買主が自ら申し出たことで事務所等に加わるのは、同法施行規則16条の5第2号が定める買主の自宅または勤務する場所に限られます。融資を受ける銀行はこのどちらにも当たらないので、事務所等ではなく、他の要件を満たすかぎりクーリング・オフによる解除ができます。場所を「勤務する場所」に置き換えると結論が反転する、という対で覚えてください。

    Q2. 宅地建物取引業者である法人の取締役が、所得税法違反により罰金の刑に処せられた場合、その法人は、そのことを理由に免許の欠格事由に該当することはない(○か×か)

    答えを見る ○:罰金刑が免許の欠格事由になるのは、宅地建物取引業法5条1項6号が列挙する罪(宅建業法違反、傷害・暴行・脅迫・背任などの一定の刑法犯、暴力行為等処罰に関する法律の罪など)により処せられた場合に限られます。所得税法違反はこの列挙に含まれていないので、取締役は欠格者に当たらず、法人も欠格事由に該当しません。罪名を脅迫罪に置き換えると、取締役が欠格者となり、役員に欠格者がいる法人として法人も欠格となります(5条1項12号)。非常勤かどうかは役員に当たるかどうかに影響しません。

    Q3. 宅地建物取引業者が自ら売主となる建築工事完了前の建物の売買(代金3,000万円)で、宅建業者でない買主から手付金150万円を受領した後に中間金50万円を受領しようとする場合、保全措置を講ずべき額は、中間金の50万円だけである(○か×か)

    答えを見る ×:宅地建物取引業法41条1項により、未完成物件では、受領しようとする手付金等の額が代金の100分の5以下かつ1,000万円以下であれば保全措置は不要です。本問の基準額は150万円で、手付金150万円だけの段階では保全措置は要りません。しかし手付金等には中間金も含まれるので、中間金50万円を受領しようとすると合計200万円となって基準額を超え、既に受領した手付金を含む合計200万円について保全措置を講じなければ中間金を受領できません。「超えた部分だけ」ではなく「合計額」である点が、二択の分かれ目になります。

    Q4. 併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができ、この場合、債務者の承諾は要しない(○か×か)

    答えを見る ○:民法470条2項は、併存的債務引受は債権者と引受人となる者との契約によってすることができると定めており、債務者の承諾は要件になっていません。併存的債務引受ではもとの債務者も債務を負い続けるので、債務者に新たな不利益が生じないためです。これに対して、債務者と引受人となる者との契約による場合は、債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に効力を生じます(同条3項)。「誰と誰の契約か」を軸にして、承諾する者が入れ替わる対で押さえてください。

    Q5. 免責的債務引受は、債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができる(○か×か)

    答えを見る ○:民法472条3項は、免責的債務引受は債務者と引受人となる者が契約をし、債権者が引受人となる者に対して承諾をすることによってもすることができると定めています。一方、債権者と引受人となる者との契約による場合は、債権者が債務者に対してその契約をした旨を通知した時に効力を生じます(同条2項)。免責的債務引受ではもとの債務者が債務を免れるので、どちらの形でも債権者の関与が必要になります。併存的債務引受(Q4)と同じ「誰と誰の契約か」という軸の上に、四つの組み合わせを並べて覚えると、主体を入れ替えた二択に対応できます。

    まとめ

    最後の二択で外すという症状について、押さえておく点を整理します。

    第一に、二択まで絞れるのは知識が半分あるからで、残る二択を割れないのは、結論を分ける一か所の条件を区別する知識がないからです。二択まで絞った問題の正答率が5割前後に張りつくなら、最後の一つは判断ではなく確率で決まっています。

    第二に、残る二択の片側は、正解肢と同じ論点で、主体、要件、数字、原則と例外、似た制度のいずれかを一か所だけ変えて作られていることが多くあります。収録問題でも、令和6年度 問9、令和6年度 問30、令和5年度 問29、令和元年度 問37に、その対が見つかりました。ただし文面がほぼ同じ組は423問中16問にとどまり、多くは文面ではなく論点の上で対になっています。

    第三に、外した原因は、知識が分かれていない、指示の読み違い、一部だけ読んだ、どちらも正しいと処理した、時間切れ、の五つに分かれます。二択の印、相手の肢、自信度、時間の印を演習の時点で残し、時、指、部、知、両の順に判定します。

    第四に、直す場所は本番ではなく肢別演習です。正解した肢も根拠を一文で言い、誤った肢は正しい文に直し、自信度を三段階で記録して三角の集まる論点を潰します。迷った肢は演習の履歴に相手の肢と一緒に残し、間隔を空けて再判定します。似た制度は一覧ではなく軸で覚えます。

    第五に、本番では、指示、主語と条件、数字と期間、原則と例外、条文の言い回しの順に確かめ、上限時間で打ち切って一方をマークし、印を残して見直しに回します。見直しで答えを変えるのは、新しい根拠を見つけたときだけです。

    第六に、効果は正答率ではなく、二択の数、同じ組で再び迷う回数、丸の信頼度、二択にかけた時間で測ります。

    宅建試験AIブートラボでは、過去問を肢ごとに分解した演習で、二択に残りやすい肢を一つずつ根拠つきで判定できるかを確かめられます。

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