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宅建業の免許の欠格事由|5条1項を系統別に整理

宅建業法 読了 約26分

宅建業法5条1項の免許の欠格事由を、破産・免許取消し・かけこみ廃業・刑罰・暴力団員等・事務所要件・役員への波及という系統ごとに、なぜ排除されるのかという理由から解説します。

目次

    この記事は、宅地建物取引業の免許を受けられない事由、すなわち宅地建物取引業法5条1項が定める免許の欠格事由を扱います。免許制度そのものの仕組み(免許権者、有効期間、更新、免許換え)は免許制度の全体像で、宅建業法という科目全体の中での位置づけは宅建業法の全体像で確認してください。

    結論から述べます。欠格事由は15個の号を丸暗記するものではありません。「なぜこの人物を宅建業の市場から排除するのか」という理由ごとに、経済的信用、過去の処分、刑罰、反社会的勢力、事務所の人的構成、そして他人への波及という6系統に分けて理解すると、条文を見ないでも判断できるようになります。そして試験で問われるのは、ほぼ例外なく「5年をどこから数えるか」と「この事由は本人以外にも及ぶか」の2点です。この記事はその2点に答えられる状態を目標にします。

    免許の基準という制度がなぜ置かれているのか

    宅建業は他人の財産を預かる仕事である

    宅地建物取引業は、多くの人にとって生涯で最も高額な取引を仲介し、あるいは自ら売主として行う業務です。手付金や中間金といった多額の金銭を一時的に預かる場面もあります。売主と買主の情報量の差は大きく、買主が業者の説明を検証する手段は限られています。だからこそ宅建業法は、業を営もうとする者に免許を要求し(3条1項)、免許を与える段階で一定の適格性を審査する仕組みを置きました。これが5条の「免許の基準」です。

    規制の構造は二段構えになっています。市場に入る前の事前規制が免許制度と欠格事由であり、市場に入った後の事後規制が監督処分罰則です。事後規制だけでは、被害が出てからしか動けません。取引の相手方が被る損害は回復が難しく、金額も大きい。そこで、明らかに不適格と判断できる者については、そもそも参入させないという判断を法律が先取りしています。欠格事由が「これに該当したらどんな事情があっても免許を与えない」という強い書き方になっているのは、この趣旨によります。

    「免許をしてはならない」の意味

    5条1項の柱書は、免許権者は申請者が各号のいずれかに該当する場合においては「免許をしてはならない」と定めています。「免許をしないことができる」ではありません。つまり免許権者に裁量はなく、該当すれば必ず拒否しなければならない羈束的な処分です。逆に、どの号にも該当しなければ、免許権者の主観的な判断で免許を拒むことはできません。

    このため、条文は排除すべき者の範囲を具体的に書き切る必要がありました。15個の号があり、括弧書きが長く、他の条文を引用する形になっているのは、裁量がない以上、外縁を条文で確定させなければならないからです。読みにくさには理由があると理解しておくと、条文を追いかける気力が続きます。

    なお、免許をしない場合、免許権者はその理由を付した書面で申請者に通知しなければなりません(5条2項)。拒否処分の理由を明示させることで、申請者が不服を申し立てる機会を確保しています。

    6つの系統に分ける

    15個の号は、排除する理由から次のように整理できます。以下、この順で説明します。

    • 経済的信用と判断能力に関する事由(1号、10号)
    • 過去に免許を取り消されたことに関する事由(2号)
    • 処分を免れるための廃業に関する事由(3号、4号)
    • 刑罰に関する事由(5号、6号)
    • 反社会的勢力と不正行為に関する事由(7号、8号、9号、14号)
    • 事務所の人的構成と、他人の欠格が波及する事由(15号、11号、12号、13号)

    経済的信用と判断能力に関する事由

    破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者(1号)

    5条1項1号は、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者を欠格としています。宅建業者は手付金や預り金を扱い、営業保証金の供託という金銭的な義務も負います。支払能力を失った状態にある者に業務を委ねれば、取引の相手方が直接の損害を受けます。経済的信用が回復するまでは市場に入れない、という単純な理由です。

    この号で最も重要なのは、欠格期間が「5年」ではないという点です。条文は「復権を得ない者」と書いています。復権とは、破産者が受けていた資格制限が消滅することで、免責許可の決定が確定した場合などに、法律上当然に生じます。したがって、復権を得れば、その時点で欠格事由から外れ、直ちに免許を申請できます。破産手続開始の決定から5年を待つ必要はまったくありません。

    試験では「破産者は破産手続開始の決定の日から5年間免許を受けることができない」という形で出題されます。欠格事由の大半が5年であることを利用した、典型的な引っかけです。破産だけは期間ではなく状態で判断する、と押さえてください。逆に、破産手続開始の決定を受けただけで復権を得ていない状態が続いている限りは、何年経っても欠格のままです。

    もうひとつの注意点として、破産を理由に免許を取り消された業者が、その後に復権を得た場合を考えます。この取消しは後述する2号の対象外なので、5年を待つ必要はなく、復権後すぐに免許を受け直せます。取消しという言葉だけを見て5年と反応しないよう、取消しの理由まで確認する癖をつけてください。

    心身の故障により業務を適正に営むことができない者(10号)

    5条1項10号は、心身の故障により宅地建物取引業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるものを欠格としています。国土交通省令は、精神の機能の障害により宅地建物取引業を適正に営むに当たって必要な認知、判断および意思疎通を適切に行うことができない者、という趣旨の定めを置いています。

    この号は2019年(令和元年)の法改正で現在の形になりました。改正前は「成年被後見人若しくは被保佐人」が名指しで欠格事由とされていましたが、成年後見制度を利用したという一事をもって一律に資格を奪う扱いは、職業選択の自由の制約として過剰であるとの批判がありました。そこで、成年被後見人・被保佐人という類型による一律排除をやめ、実際に業務を適正に営めるかどうかを個別に審査する方式へ切り替えたのです。

    したがって現在は、成年被後見人であることそれ自体は欠格事由ではありません。免許権者が個別に判断し、業務遂行に必要な認知・判断・意思疎通ができないと認められる場合に限って欠格となります。成年被後見人や被保佐人がどういう制度かは制限行為能力者制度で整理しておくと、権利関係との横断で得をします。

    試験対策としては、「成年被後見人は宅建業の免許を受けることができない」という断定的な選択肢が誤りである、という形で覚えておけば足ります。同じ改正は宅建士の登録欠格事由(18条1項)にも及んでおり、こちらは宅建士の登録で扱っています。

    過去に免許を取り消されたことに関する事由

    5年欠格になる取消しは3つだけである(2号)

    5条1項2号は、66条1項8号または9号に該当することにより免許を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者を欠格としています。ここが欠格事由の中で最も出題される場所であり、同時に最も誤解されやすい場所です。

    誤解というのは、「免許を取り消されたら5年間は免許を受けられない」と丸ごと覚えてしまうことです。条文は取消し一般を対象にしていません。66条1項8号と9号という、2つの号に限定しています。その中身は次の3つです。

    • 不正の手段により免許を受けたとき(66条1項8号)
    • 業務停止処分に該当する事由に当たり、情状が特に重いとき(66条1項9号前段)
    • 業務停止の処分に違反したとき(66条1項9号後段)

    この3つは、いずれも業者自身の悪質性が際立つ場合です。免許を騙し取った、行政処分に従わなかった、処分に値する違反の程度が特に重かった。こうした者を短期間で市場に戻せば、監督処分の実効性が失われます。だから取消しに加えて、5年間の再参入禁止という重い効果を上乗せしています。

    裏を返せば、これ以外の理由による免許取消しでは5年欠格になりません。免許換えが必要なのに新しい免許を受けていないとき、免許を受けてから1年以内に事業を開始せずまたは引き続き1年以上事業を休止したとき、破産や後発的な欠格事由への該当により取り消されたときなどは、取消しの日から5年という制限はかかりません。欠格事由が解消していれば、すぐに免許を申請できます。監督処分の全体像と取消事由の並びは監督処分の記事で確認してください。

    問題文が「免許を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者は」と始まったら、まず取消しの理由が書かれているかを探します。理由が書かれていて、それが3つのいずれでもなければ誤り。理由が書かれていない抽象的な選択肢なら、3つに限られるという文脈で読むことになります。

    法人が取り消された場合の60日ルール(2号括弧書き)

    2号には長い括弧書きが付いています。免許を取り消された者が法人である場合、その取消しに係る聴聞の期日および場所の公示の日前60日以内にその法人の役員であった者も、取消しの日から5年間は免許を受けられません。

    これは法人格を使った迂回を防ぐための規定です。法人が悪質な違反で免許取消しを受けそうになったとき、責任者である役員が取消しの直前に辞任し、別の法人を立ち上げて免許を取り直せば、規制は空振りになります。そこで、処分手続の開始が公になった時点をさかのぼる基準日として、その60日前までに役員だった者を、法人と同じ5年欠格の枠に取り込みました。

    押さえるべき点は3つあります。第一に、起算点は役員を辞任した日ではなく、法人に対する取消しの日です。第二に、基準となる日は取消処分の日ではなく、聴聞の期日および場所が公示された日です。第三に、対象は役員であって、政令で定める使用人は含まれません。支店長が辞めて別法人を作る場合は、この括弧書きでは捕まらないということです。

    なお、ここでいう役員には、業務を執行する社員、取締役、執行役またはこれらに準ずる者のほか、相談役、顧問その他いかなる名称であるかを問わず、法人に対してこれらの者と同等以上の支配力を有すると認められる者が含まれます。登記簿上の肩書きではなく、実質的な支配力で判断するという考え方です。

    処分を免れるための廃業に関する事由

    かけこみ廃業に処分と同じ効果を与える(3号)

    2号だけでは、なお抜け道が残ります。免許取消処分は聴聞を経て行われるため、聴聞の期日および場所が公示された時点で、業者は自分が取消しを受けようとしていることを知ります。そこで処分が下りる前に自ら廃業の届出をしてしまえば、「取り消された者」には当たらず、2号の5年欠格を免れることができてしまいます。

    これを封じるのが5条1項3号です。66条1項8号または9号に該当するとして免許の取消処分の聴聞の期日および場所が公示された日から、その処分をする日またはその処分をしないことを決定する日までの間に、11条1項4号(解散)または5号(廃業)の規定による届出をした者は、その届出の日から5年を経過するまで免許を受けられません。ただし、解散または廃止について相当の理由がある者は除かれます。

    構造を分解します。対象期間の始まりは「聴聞の期日および場所の公示の日」、終わりは「処分をする日または処分をしないことを決定する日」です。この期間内の解散・廃業の届出が捕捉されます。そして5年の起算点は、処分の日ではなく「届出の日」です。処分が出ないまま終わるのですから、当然そうなります。

    ここから2つの結論が導けます。公示の日より前に廃業の届出をしていた者は、この号に該当しません。まだ処分手続が始まっていない段階の廃業は、通常の廃業と区別できないからです。また、公示後に届出をした場合でも、廃業に相当の理由があれば除外されます。代表者の病気など、処分逃れとは評価できない事情がある場合を想定した規定です。

    対象となる届出が11条1項4号と5号に限られている点も見ておきます。11条1項が定める届出事由のうち、1号の死亡、2号の合併による消滅、3号の破産手続開始の決定は、本人の意思で選べるものではないため、かけこみ廃業として扱う理由がありません。届出義務そのものの整理は廃業届と免許の失効で確認してください。

    廃業した法人の役員にも及ぶ(4号)

    5条1項4号は、3号に規定する期間内に合併により消滅した法人、または11条1項4号もしくは5号の届出があった法人について、3号の公示の日前60日以内にその法人の役員であった者を、消滅または届出の日から5年間欠格としています。合併・解散・廃止について相当の理由がある法人は除かれます。

    2号の括弧書きと同じ発想です。法人が処分を受ける前に消滅・廃業してしまえば、役員は責任を負わないまま別法人で再出発できてしまう。そこで、公示の日前60日以内の役員を、法人と同じ5年欠格に取り込みます。ここでも起算点は「消滅または届出の日」であり、辞任の日ではありません。

    まとめると、60日という数字は2つの場面で登場します。ひとつは法人が実際に取り消された場合(2号括弧書き、起算点は取消しの日)、もうひとつは法人が処分前に消滅・廃業した場合(4号、起算点は消滅または届出の日)です。どちらも基準日は「聴聞の期日および場所の公示の日」です。数字は同じ、起算点が違う、と覚えると混乱しません。

    刑罰に関する事由

    拘禁刑以上の刑は犯罪の種類を問わない(5号)

    5条1項5号は、拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者を欠格としています。

    2025年(令和7年)6月1日に施行された改正刑法により、従来の懲役と禁錮が拘禁刑に一本化されました。これに伴い、宅建業法の条文も「禁錮以上の刑」から「拘禁刑以上の刑」に改められています。刑の重さの順序は、死刑、拘禁刑、罰金、拘留、科料であり、「拘禁刑以上の刑」とは拘禁刑と死刑を指します。改正は文言の置き換えであって、欠格となる範囲も5年という期間も変わっていません。この改正の詳細は拘禁刑と欠格事由で扱っています。

    この号の特徴は、犯罪の種類をまったく問わないことです。宅建業とは無関係な罪でも、過失による罪でも、拘禁刑に処せられれば欠格になります。身体の自由を奪う刑を受けたという事実自体を、業務を任せられない事情と評価しているからです。

    期間の起算点は、判決が確定した日ではなく、刑の執行を終わった日、または執行を受けることがなくなった日です。実刑であれば刑期を終えて出所した日から数え始めます。「執行を受けることがなくなった日」とは、刑の時効が完成した場合や、恩赦により執行が免除された場合を指します。

    執行猶予が満了したらどうなるか

    拘禁刑に執行猶予が付いた場合の扱いは、毎年のように問われます。執行猶予の期間中は、刑に処せられた状態が続いているため、欠格事由に該当します。この間は免許を受けられません。

    これに対し、執行猶予の期間が無事に満了すると、刑法27条により刑の言渡しが効力を失います。刑に処せられたという法律上の効果そのものが消滅するため、5号の要件を満たさなくなります。したがって、猶予期間が満了した日の翌日から、5年を待たずに免許を申請できます。ここで5年を数え始めると誤りです。

    もうひとつ、判決に対して控訴・上告している間の扱いも押さえておきます。刑が確定していない段階では、まだ「刑に処せられた」とはいえません。したがって上訴中の者は欠格事由に該当せず、免許を受けられます。有罪判決が出たという事実だけで反応しないよう注意してください。

    罰金刑は対象となる罪が限定されている(6号)

    5条1項6号は、罰金刑について欠格となる場合を限定列挙しています。次のいずれかに当たる罰金刑を受け、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者が欠格です。

    • 宅地建物取引業法の規定に違反したこと
    • 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反したこと
    • 刑法204条の傷害罪、206条の現場助勢罪、208条の暴行罪、208条の2の凶器準備集合および結集の罪、222条の脅迫罪、247条の背任罪を犯したこと
    • 暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯したこと

    なぜこの並びなのかを考えると、記憶が安定します。宅建業法違反は、その法律を守れない者に免許を与える理由がないという当然の帰結です。暴力団対策法違反、傷害・現場助勢・暴行・凶器準備集合・脅迫、暴力行為等処罰法違反は、いずれも暴力性に着目したものです。宅建業は取引の相手方や近隣住民と直接向き合う業務であり、威圧的な手段を用いる者を排除する必要があります。そして背任罪だけが性質を異にします。背任は他人の事務処理者がその信頼を裏切る犯罪であり、他人の財産取引を託される宅建業の適格性と正面から衝突するため、罰金でも排除の対象とされました。

    裏返せば、ここに挙がっていない罪は、罰金刑にとどまる限り欠格事由になりません。詐欺罪、横領罪、窃盗罪、過失運転致傷罪、道路交通法違反などが典型です。詐欺罪が入っていないのは直感に反しますが、条文が限定列挙している以上、そのまま受け入れるほかありません。ただし、同じ詐欺罪でも拘禁刑に処せられれば、5号により犯罪の種類を問わず欠格になります。「詐欺は罰金ならセーフ、拘禁刑ならアウト」という二段構えで確認する習慣をつけてください。

    なお、罰金より軽い科料、および刑罰ではない過料は、いずれも欠格事由になりません。宅建業法違反の罰則がどの行為にどの刑を定めているかは罰則一覧で整理しています。

    反社会的勢力と不正行為に関する事由

    暴力団員等(7号、14号)

    5条1項7号は、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律2条6号に規定する暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者を欠格とし、これらをまとめて「暴力団員等」と定義しています。現に暴力団員である間は、期間の経過とは無関係に該当し続けます。脱退した場合に初めて、その日から5年という時間が動き出します。

    さらに14号は、暴力団員等がその事業活動を支配する者を欠格としています。名義上の代表者を立てて、背後で暴力団員が実質的に経営を握るという形態を封じる規定です。7号が人そのものを見るのに対し、14号は事業への支配関係を見ます。

    不正・著しく不当な行為と、そのおそれ(8号、9号)

    5条1項8号は、免許の申請前5年以内に宅地建物取引業に関し不正または著しく不当な行為をした者を欠格としています。この号の起算点は他と異なり、「免許の申請前5年以内」です。申請の日から過去5年をさかのぼって、その期間内に不正行為があったかどうかを見ます。刑事罰や行政処分を受けていなくても、事実として不正行為があれば該当し得ます。無免許で宅建業を営んでいた者などが典型です。

    9号は、宅地建物取引業に関し不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者を欠格としています。過去の行為ではなく、将来の危険性を理由とする規定です。「おそれが明らかな」という限定が付いており、漠然とした不安では足りません。

    8号と9号は、他の号で拾いきれない事案に対応するための受け皿として機能します。要件が抽象的なので細かい出題はされにくい一方、「処分を受けたことがなければ欠格にならない」という誤った選択肢を見抜くために必要な知識です。

    事務所の人的構成と、他人の欠格が波及する事由

    専任の宅建士を欠く事務所(15号)

    5条1項15号は、事務所について31条の3に規定する要件を欠く者を欠格としています。31条の3は、事務所その他国土交通省令で定める場所ごとに、業務に従事する者の数に対して国土交通省令で定める割合以上の成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければならないと定めています。事務所については従業者5人に1人以上、契約の締結や申込みの受付を行う案内所等については1人以上が必要です。

    ここまでの号がすべて「人の属性」を問題にしてきたのに対し、15号だけは組織の体制を問題にします。免許を申請する時点で専任の宅建士が足りていなければ、申請者本人にまったく問題がなくても免許は下りません。重要事項の説明や35条書面・37条書面への記名は宅建士でなければできず、体制が整っていない事務所では法定の業務を適正に遂行できないからです。設置義務の詳細は専任の宅建士の設置義務、事務所として認められる場所の要件は宅建業の事務所の要件で扱っています。

    免許を受けた後に人数が不足した場合は、2週間以内に必要な措置を執らなければなりません(31条の3第3項)。この場合は免許の欠格ではなく、監督処分の対象になります。参入時の話なのか、参入後の話なのかを区別してください。

    未成年者の場合に法定代理人を見る(11号)

    5条1項11号は、営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者で、その法定代理人が1号から10号までのいずれかに該当するものを欠格としています。

    まず、未成年者であること自体は欠格事由ではありません。条文が対象にしているのは「営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者」だけです。法定代理人から営業の許可を受けた未成年者は、その営業に関して成年者と同一の行為能力を有します(民法6条1項)。したがって、本人が他の号に該当しない限り、自ら免許を受けられます。

    これに対し、営業の許可を受けていない未成年者は、法定代理人の判断に依存して営業することになります。そこで法は、本人ではなく法定代理人の側を審査対象とし、法定代理人が1号から10号までのいずれかに該当すれば、未成年者本人も免許を受けられないとしました。実質的な意思決定者を見るという発想です。

    ここで注意したいのが、かつて「婚姻した未成年者」が成年擬制により成年者と同一の行為能力を有するとされていた点です。2022年4月1日から成年年齢が18歳に引き下げられ、婚姻適齢も男女とも18歳に統一されたため、未成年者が婚姻することはなくなり、成年擬制の規定(旧民法753条)は削除されました。現在、未成年者が成年者と同一の行為能力を得る経路は、営業の許可だけです。古い教材の記述が残っている場合があるので、更新しておいてください。

    法人の役員・政令使用人への波及(12号、13号)

    5条1項12号は、法人でその役員または政令で定める使用人のうちに1号から10号までのいずれかに該当する者があるものを欠格としています。13号は、個人で政令で定める使用人のうちに1号から10号までのいずれかに該当する者があるものを欠格としています。

    法人は自ら罪を犯したり破産したりする場面が限られる一方、実際に業務を動かすのは自然人です。役員に不適格者がいれば、法人の看板があっても取引の安全は守れません。そこで、役員や事務所の責任者に欠格事由があれば、法人そのものを排除する構造がとられています。個人業者についても、支店の責任者が不適格であれば同じ問題が生じるため、13号が置かれています。

    役員の範囲は、2号の括弧書きの定義が及びます。業務を執行する社員、取締役、執行役またはこれらに準ずる者に加えて、相談役や顧問など名称を問わず同等以上の支配力を有すると認められる者が含まれます。常勤か非常勤かは問いません。さらに免許審査の実務では、各都道府県が公表している免許申請の手引きにおいて監査役も役員として欠格要件の審査対象とされており、試験でも監査役を役員に含めて判断するのが通例です。会社法上の役員概念と一致するかどうかではなく、免許審査の対象として広く捉える、と理解してください。

    政令で定める使用人とは、宅地建物取引業法施行令2条の2により、宅地建物取引業者の使用人で、事務所の代表者であるものをいいます。支店長や営業所長が典型です。単なる従業者は含まれません。

    もうひとつ、12号・13号が引用しているのは「1号から10号まで」であり、11号(未成年者と法定代理人)は含まれていない点も確認しておきましょう。条文が引用する号の範囲は、選択肢の正誤を分ける材料になります。

    そして実務上重要なのが、この欠格が解消可能だという点です。欠格事由に該当する役員を退任させれば、法人はその時点で12号に該当しなくなり、免許を申請できます。役員の5年が経過するのを待つ必要はありません。「役員が欠格なら法人は5年間免許を受けられない」という言い切りは誤りです。役員の変更は宅建業者名簿の登載事項の変更にもあたるため、既存業者であれば変更の届出も必要になります(宅建業者名簿と変更届)。

    5年をどこから数えるか

    欠格事由の学習で最後まで残る負荷が、起算点の区別です。期間はほとんどが5年で共通しているため、差が出るのは「いつから数えるか」だけになります。号ごとに整理します。

    • 拘禁刑以上の刑(5号):刑の執行を終わった日、または執行を受けることがなくなった日。判決確定の日ではありません。
    • 罰金刑(6号):罰金の執行を終わった日、すなわち納付した日、または執行を受けることがなくなった日。
    • 執行猶予(5号の例外的処理):猶予期間の満了により刑の言渡しが失効するため、5年を数えません。満了の翌日から免許を受けられます。
    • 免許取消し(2号):取消しの日。処分の日であって、違反行為をした日でも聴聞の日でもありません。
    • 取り消された法人の役員(2号括弧書き):法人に対する取消しの日。役員を辞任した日ではありません。
    • かけこみ廃業(3号):解散または廃業の届出の日。
    • 消滅・廃業した法人の役員(4号):法人が消滅した日、または届出の日。
    • 暴力団員(7号):暴力団員でなくなった日。現役の間は起算しません。
    • 申請前の不正行為(8号):免許の申請の日から5年をさかのぼる。他の号と向きが逆です。
    • 破産(1号):期間ではなく復権という状態で判断します。

    こうして並べると、起算点は「効果が発生した日」で統一されていることがわかります。刑なら執行が終わった日、処分なら処分の日、届出なら届出の日、脱退なら脱退の日です。個別に暗記するのではなく、その事由の効果がいつ確定したかを考えれば導けます。

    試験での出題ポイント

    取消しの理由が書かれているかを見る

    免許取消しを扱う選択肢では、取消しの根拠が示されているかどうかが第一のチェックポイントです。不正の手段による免許取得、業務停止処分違反、業務停止事由に該当し情状が特に重い場合の3つ以外の理由で取り消された場合には、5年の欠格期間はありません。「免許を取り消された者は、その取消しの日から5年間は免許を受けられない」という無限定な言い回しは誤りです。

    罰金刑は罪名を確認する

    罰金刑が出てきたら、罪名を6号の列挙と照合します。傷害、現場助勢、暴行、凶器準備集合および結集、脅迫、背任、暴力行為等処罰法違反、宅建業法違反、暴力団対策法違反であれば該当します。詐欺、横領、窃盗、道路交通法違反であれば該当しません。同時に、刑の種類が拘禁刑に変わっていないかも見ます。罪名が対象外でも、拘禁刑なら5号で欠格です。

    執行猶予の満了と上訴中を見分ける

    執行猶予の期間中は欠格、満了後は直ちに免許可能、という対比が定番です。「執行猶予期間の満了後、さらに5年を経過しなければ免許を受けられない」は誤りです。あわせて、控訴中・上告中は刑が確定していないため欠格にならない、という論点も押さえます。

    公示の日の前か後かを読む

    かけこみ廃業の選択肢では、廃業の届出が聴聞の期日および場所の公示の日より前か後かが分岐点です。公示の前日に届出をしていれば該当しません。公示後から処分の日までの間の届出であれば、届出の日から5年です。日付の前後関係を必ず確認してください。

    誰に波及するかを確認する

    法人の役員と政令で定める使用人には波及し、単なる従業者には波及しません。60日ルールは役員だけが対象で、政令で定める使用人は含まれません。また、欠格役員を退任させれば法人の欠格は解消します。波及の範囲と解消手段の両方を問われます。

    期間ではなく状態で判断するものを見分ける

    破産(復権するまで)、暴力団員(暴力団員である間)、心身の故障(該当する間)は、いずれも5年という期間ではなく状態で判断します。5年という数字に引き寄せられた選択肢が用意されているので、この3つは別枠として意識してください。宅建業法全体でどの論点が繰り返し出るかは宅建業法の頻出論点にまとめています。

    覚え方・整理の仕方

    3つの問いに答える手順にする

    欠格事由の選択肢は、次の順で処理すると安定します。第一に「何が原因か」を分類します。破産か、取消しか、廃業か、刑罰か、暴力団か、事務所か、他人か。第二に「期間か状態か」を判定します。破産・暴力団員・心身の故障は状態、それ以外は原則5年です。第三に「いつから数えるか」を確認します。この3段階を機械的に回せば、条文を思い出せなくても正誤を判断できます。

    罰金で欠格になる罪の並べ方

    罰金刑で欠格となる刑法上の罪は、傷害、現場助勢、暴行、凶器準備集合および結集、脅迫、背任の6つです。前の5つは暴力に関する罪で条文の並び順(204条、206条、208条、208条の2、222条)どおりに並んでおり、最後の背任(247条)だけが信頼を裏切る罪として付け足されている、という構造で覚えます。「暴力5つプラス背任1つ、それに宅建業法・暴力団対策法・暴力行為等処罰法の3法令」と、6罪と3法令に分けて記憶すると再現しやすくなります。詐欺が入っていないことを、あえて例外として一緒に覚えておくと引っかかりません。

    60日は2か所、5年は起算点だけが違う

    60日という数字が出てくるのは、法人が取り消された場合の役員(2号括弧書き)と、法人が処分前に消滅・廃業した場合の役員(4号)の2か所だけです。どちらも基準日は聴聞の期日および場所の公示の日で共通し、5年の起算点だけが「取消しの日」と「消滅または届出の日」で異なります。同じ図に2本の矢印を書き分けるイメージを持っておくと、選択肢を読んだ瞬間にどちらの話かを判別できます。

    3つの取消事由をひとまとまりで唱える

    「不正取得、停止違反、情状特に重い」。この6語を口に出せる状態にしておけば、2号と3号の両方に使えます。3号のかけこみ廃業も、対象になるのはこの3事由で取消処分にかけられた場合に限られるからです。取消しの3事由は監督処分の学習でも中心になるので、監督処分とセットで固めておくと効率がよくなります。

    免許の欠格と登録の欠格を並べて確認する

    宅建士の登録にも、ほぼ同内容の欠格事由が18条1項に置かれています。拘禁刑以上の刑で5年、限定された罪の罰金刑で5年、といった骨格は共通です。一方で、登録には事務所要件のような組織に関する事由がなく、代わりに登録消除処分に関する固有の事由があります。共通部分をまとめて覚え、差分だけを別に管理すると学習量が減ります。免許と登録の対応関係は免許制度の横断整理宅建士の登録で確認してください。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 詐欺罪により罰金の刑に処せられた者は、その刑の執行を終わった日から5年を経過するまで、宅地建物取引業の免許を受けることができない。(○か×か)

    答えを見る×:罰金刑で欠格となるのは、宅建業法違反、暴力団対策法違反、暴力行為等処罰法の罪、および刑法の傷害罪・現場助勢罪・暴行罪・凶器準備集合および結集の罪・脅迫罪・背任罪に限られます(5条1項6号)。詐欺罪はこの列挙に含まれないため、罰金刑であれば欠格事由に該当しません。ただし詐欺罪で拘禁刑に処せられた場合は、犯罪の種類を問わない5条1項5号により、執行を終わった日から5年間欠格となります。

    Q2. 拘禁刑に処せられ、その刑の全部の執行を猶予された者は、猶予期間が満了しても、満了の日から5年を経過するまでは宅地建物取引業の免許を受けることができない。(○か×か)

    答えを見る×:執行猶予の期間が満了すると、刑法27条により刑の言渡しが効力を失います。「拘禁刑以上の刑に処せられた」という状態そのものが消滅するため、5条1項5号に該当しなくなり、満了の翌日から直ちに免許を受けることができます。5年を数えるのは誤りです。なお、猶予期間中は刑に処せられた状態が続いているため、欠格事由に該当します。

    Q3. 業務停止処分に違反したことにより免許を取り消された法人において、当該取消しに係る聴聞の期日および場所の公示の日の50日前に取締役を辞任していた者は、当該取消しの日から5年を経過するまで免許を受けることができない。(○か×か)

    答えを見る○:5条1項2号の括弧書きにより、免許を取り消された法人の、取消しに係る聴聞の期日および場所の公示の日前60日以内に役員であった者は、取消しの日から5年間欠格となります。公示の日の50日前に辞任した者は「公示の日前60日以内に役員であった者」に当たるため該当します。起算点は辞任の日ではなく、法人に対する取消しの日である点にも注意してください。

    Q4. 免許取消処分の聴聞の期日および場所が公示される前に廃業の届出をした者は、その届出の日から5年を経過するまで宅地建物取引業の免許を受けることができない。(○か×か)

    答えを見る×:5条1項3号が対象とするのは、聴聞の期日および場所が公示された日から、処分をする日または処分をしないことを決定する日までの間に解散・廃業の届出をした場合です。公示の日より前の届出は、処分を免れる目的の廃業とはいえないため、この号に該当しません。また、公示後の届出であっても、廃業について相当の理由がある者は除外されます。

    Q5. 破産手続開始の決定を受けた者は、復権を得た日から5年を経過するまで、宅地建物取引業の免許を受けることができない。(○か×か)

    答えを見る×:5条1項1号が欠格とするのは「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」であり、期間ではなく状態で判断します。復権を得れば、その時点で欠格事由から外れ、直ちに免許を受けることができます。免責許可の決定が確定した場合などに復権が生じます。5年を待つ必要はありません。

    Q6. 宅地建物取引業を営もうとする法人の監査役が、暴力団員でなくなった日から3年しか経過していない場合であっても、当該監査役を退任させれば、その法人は免許を受けることができる。(○か×か)

    答えを見る○:5条1項12号は、役員または政令で定める使用人のうちに1号から10号までに該当する者がある法人を欠格としています。免許審査の実務では監査役も役員として審査の対象とされるため、暴力団員でなくなってから5年を経過していない監査役が在任していれば、法人は免許を受けられません。もっとも、この欠格は当該役員を退任させることで解消します。役員本人の5年が経過するのを待つ必要はありません。

    まとめ

    宅地建物取引業法5条1項の欠格事由は、他人の財産を扱う業務にふさわしくない者を参入段階で排除するための仕組みです。15個の号を丸暗記するのではなく、経済的信用(1号)、判断能力(10号)、過去の免許取消し(2号)、処分を免れるための廃業(3号・4号)、刑罰(5号・6号)、反社会的勢力と不正行為(7号・8号・9号・14号)、事務所の人的構成(15号)、他人への波及(11号・12号・13号)という系統で捉えてください。

    試験で得点を分けるのは、次の3点です。第一に、5年欠格となる免許取消しは、不正の手段による取得、業務停止処分違反、情状が特に重い場合の3つに限られること。第二に、罰金刑は罪名が限定列挙されており、詐欺・横領・窃盗は含まれないこと。第三に、5年の起算点はその事由の効果が確定した日であり、破産・暴力団員・心身の故障だけは期間ではなく状態で判断すること。

    免許を受けた後の話、すなわち違反があった場合にどのような処分が下るかは監督処分、どの行為にどの罰則が科されるかは罰則一覧に続きます。欠格事由は監督処分の免許取消事由と表裏一体なので、両方を往復しながら固めるのが最短です。

    宅建試験AIブートラボのアプリでは、欠格事由を扱う過去問を肢別に演習でき、選択肢ごとに条文の号まで示した解説を確認できます。

    読んだ内容を、宅建業法の肢で確かめる

    宅建業法は20問と配点が最も大きく、確実に得点したい科目です。免許制度・重要事項説明・8種制限を肢別で固めましょう。

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