宅建の弱点克服法|まぐれ当たりまで拾って潰す
正答率だけでは弱点の半分しか見えません。自信度チェックでまぐれ当たりを検出し、誤答原因を4つに分類して打ち手を変え、潰した弱点の再発まで確認する手順を解説します。
目次
この記事は、宅建試験の学習で「どこが弱いのか」を特定し、潰し、潰れたことを確認するまでの一連の手順を扱います。何点を目標に置くかという設計は宅建の科目別攻略法と宅建の科目別攻略法、過去問そのものの回し方は過去問活用術で扱っているので、この記事はその手前と後ろ、つまり「解いた結果から何を読み取るか」に絞ります。
結論を先に書きます。正答率を見ているだけでは、自分の弱点の半分は見えません。見えないのは、わかっていないのに正解してしまった問題です。四肢択一である以上、選択肢を二つに絞って当てた問題や、消去法でたまたま残った選択肢を選んだ問題は必ず生じます。それらは記録上「正解」として処理され、復習の対象から外れ、そのまま本番まで残ります。この取りこぼしを拾う仕組みが自信度チェックです。この記事では、弱点を四つの型で定義し直したうえで、自信度チェックの運用、誤答原因の分類、科目ごとの現れ方の違い、そして潰した弱点が再発していないかの確認方法までを順に説明します。
弱点とは何か、正答率だけでは半分しか見えない
弱点は四つの型で現れる
多くの学習者は、弱点を「正答率が低い分野」と同義に扱っています。それは間違いではありませんが、狭すぎます。本番で失点につながる状態は、少なくとも次の四つに分かれます。
第一に、正答率が低い分野。これは誰でも把握できます。第二に、正解したが根拠を言えない肢。当てずっぽうや二択の勘で当てたもので、記録上は正解として残ります。第三に、時間がかかりすぎる問題。正解はしているが、本番の時間配分ではその時間を使えないもの。第四に、毎回同じところで迷う論点。最終的には正解するが、判断のたびに立ち止まるもの。
この四つのうち、正答率の集計で捕まえられるのは第一の型だけです。残る三つは、集計表を眺めていても永久に見つかりません。だから、正答率だけを追っている限り、弱点対策は必ず途中で頭打ちになります。
「正解したが根拠を言えない」の規模を見積もる
第二の型がどれくらいあるかは、算術で見当がつきます。四肢択一で完全に当てずっぽうに答えた場合、正解する確率は4分の1です。選択肢を二つに絞ったうえで選んだ場合は2分の1になります。
仮に、一回の演習50問のうち、選択肢を二つまで絞ってから勘で選んだ問題が10問あったとします。そのうちおよそ5問は正解します。この5問は成績表の上では正解として数えられ、復習リストには載りません。しかし内容としては、わかっていない5問です。本番で肢の組合せが変われば、そのまま失点に転じます。
この見積もりは、統計調査でも学習法の実験結果でもなく、四肢択一という形式そのものから出てくる数字です。だからこそ確実に起きます。演習の回数を重ねるほど積み上がり、放置すれば直前期になって「模試では取れていたのに本番で落とした」という形で表面化します。
時間がかかりすぎる問題も弱点である
宅建試験は50問を2時間で解きます。単純に割れば1問あたり2分24秒です。実際には権利関係の事例問題に時間を要し、宅建業法や法令上の制限はそれより短く処理することになります。
ここで、正解はするが1問に5分かかる論点があったとします。正答率の表では「できている」に分類されますが、本番でその5分を使えば、どこか別の問題を削るしかありません。削られるのは、たいてい後半のマークと見直しです。つまりこの論点は、自分の点数ではなく他の問題の点数を削る形で失点をもたらします。
時間は正答率と同じ重みで記録する価値があります。論点ごとの所要時間を測るのは面倒に思えますが、演習の際に「明らかに手が止まった問題」に印をつけるだけでも十分です。
毎回同じところで迷う論点
四つ目は、最終的に正解するけれども判断のたびに立ち止まる論点です。35条書面と37条書面のどちらの記載事項だったか、この期間は30日だったか2週間だったか、この許可権者は知事だったか市町村長だったか。毎回思い出せるうちは正解しますが、その思い出す作業は本番の緊張下では成功率が落ちます。
この型は自覚しやすい反面、記録に残りにくいのが特徴です。正解しているので誤答リストに載らず、時間も数十秒しか超過しないので目立ちません。だから意識して記録する必要があります。
四つの型を一枚の記録に落とす
四つの型を別々に管理すると続きません。演習のときに各問へ二つの情報を付けるだけで足ります。ひとつは正誤、もうひとつは自信度です。この二つを掛け合わせると、四つの型のうち三つまでが自動的に浮かび上がります。所要時間だけは別に「手が止まった」印を足します。
次の節で、この自信度の付け方を具体的に説明します。
自信度チェックでまぐれ当たりを検出する
解答と同時に自信度を記録する
やることは単純です。各問に解答するとき、その解答にどれだけ確信があるかを同時に記録します。三段階で足ります。
- 確信あり。根拠を条文や制度の趣旨まで遡って言える
- あいまい。たぶんこうだと思うが、根拠を説明しろと言われると詰まる
- 勘。二択まで絞って選んだ、または完全に当てずっぽう
記号は何でも構いません。問題番号の横に丸・三角・バツを書く、肢別で解くならチェックボックスを一つ足す。学習アプリを使っている場合は、正誤とは別に自己申告のフラグを立てられる機能があればそれを使います。
決定的に重要なのは、解答した直後、答え合わせをする前に記録することです。答えを見てから「これはあいまいだった」と書き足すのは意味がありません。答えを知った後の記憶は、必ず「わかっていた気がする」方向に歪みます。その歪みを避けるためだけに、順序を守ってください。
正誤と自信度を掛け合わせる
記録が溜まると、各問が四つのどれかに分類されます。
- 確信あり、かつ正解。ここは仕上がっている。触らなくてよい
- 確信あり、かつ不正解。最も危険。知識が誤った形で固定されている
- 勘またはあいまい、かつ正解。まぐれ当たり。放置すると本番で落ちる
- 勘またはあいまい、かつ不正解。素直な弱点。対策の効果が出やすい
対策の優先順位は、この並びのとおりです。最優先は「確信あり、かつ不正解」です。これは単に知らないのではなく、誤った理解を正しいと思い込んでいる状態で、放っておいても自然に直りません。しかも本人には弱点の自覚がないため、演習を重ねるほど誤った知識が強化されます。数としては少ないのが普通ですが、見つけたら最優先で潰してください。
次が「勘またはあいまい、かつ正解」、つまりまぐれ当たりです。
まぐれ当たりを放置してはいけない理由
まぐれ当たりを弱点として扱う理由は三つあります。
第一に、本番では肢の組合せが変わります。過去問で「Aが明らかに誤りだったので消去法でBを選んだ」という解き方をしていた場合、本番でAに相当する肢が出題されなければ、その解き方は使えません。消去法が成立するかどうかは他の肢の作りに依存しており、自分ではコントロールできません。
第二に、宅建試験には個数問題と組合せ問題があります。「正しいものはいくつあるか」という形式では、すべての肢について独立に正誤を判断する必要があり、消去法が働きません。四肢択一の消去法で乗り切ってきた論点は、この形式で出題された瞬間に失点します。出題形式ごとの対処は出題傾向の分析で扱っています。
第三に、まぐれ当たりは自己認識を歪めます。演習の正答率が実力より高く出るため、「この分野はもう大丈夫」という判断を誤らせ、学習配分そのものを狂わせます。
拾ったまぐれ当たりをどう処理するか
まぐれ当たりとして拾った問題は、誤答と同じ扱いにします。つまり、解説を読み、条文に戻り、次の演習で再度出題されるようにします。
そのうえで、ひとつ足す作業があります。その問題の四つの肢すべてについて、正しいか誤りか、そしてその理由を口に出して言ってみることです。正解の肢だけでなく、誤りの肢についても「どこがどう誤っているのか」を言えるかを確認します。まぐれ当たりの多くは、正解の肢を積極的に選んだのではなく、他の肢を消したことで残ったものです。だから正解の肢そのものの根拠が抜けています。ここを埋めない限り、同じ論点で再び勘に頼ることになります。
運用上の注意
自信度チェックが続かなくなる原因は、たいてい細かくしすぎることです。次の三点だけ守ってください。
段階を増やさないこと。五段階や十段階にすると、記録のたびに迷いが生じて演習のリズムが崩れます。三段階、迷うなら「確信あり」と「それ以外」の二段階でも機能します。
後付けで書かないこと。答え合わせの後に自信度を記入するのは、記録として無価値です。書き忘れた問題は空欄のままにしておきます。
全問に付けようとしないこと。時間がないときは「勘で選んだ問題だけに印をつける」でも目的は達せられます。拾いたいのはまぐれ当たりであって、完璧な記録ではありません。
記録をどこに置くか
記録の媒体は、集計のしやすさと、演習中に手が止まらないかの二点で選びます。
紙は入力の手間が最も小さく、演習のリズムを崩しません。問題番号の横に記号を書くだけなので数秒で済みます。弱点は集計に手作業が要ることで、論点別に並べ替えるといった操作ができません。演習量が少ないうちや、一冊の問題集を繰り返す使い方には向きます。
表計算は集計と並べ替えが自由にできる反面、演習のたびに入力する手間がかかります。演習が終わってからまとめて転記する運用にすると、自信度が事後の記憶で歪むという先の問題が起きます。転記するなら、紙に付けた記号をそのまま写す形にしてください。
学習アプリは、正誤と解答履歴が自動で残るのが利点です。ただし自信度は自己申告の情報なので、アプリ側が記録してくれるとは限りません。多くの場合、正誤はアプリに任せ、自信度だけを別に記録する併用になります。スキマ時間の演習では紙を開けないので、この併用が現実的です。アプリを使う場合の全体的な組み立ては宅建の勉強にアプリを使う理由で扱っています。
どれを選んでも構いませんが、途中で変えないでください。媒体を変えると、それまでの記録と後の記録を突き合わせられなくなり、再発の確認ができなくなります。
誤答の原因を四つに分類して打ち手を変える
同じ不正解でも、原因が違えば対策も違います。原因を分けずに「間違えたから復習する」と処理すると、読み違いのタイプが最後まで直りません。分類は四つで足ります。
知識不足
そもそも学習していない、または完全に忘れている状態です。解説を読んで「知らなかった」と思うものがこれに当たります。
打ち手は素直です。テキストの該当箇所に戻り、条文の要件と効果を確認します。ここで重要なのは、その一問の答えだけを覚えて済ませないことです。知識不足は面で空いていることが多く、一問だけ埋めても隣の問題で落ちます。該当する論点のまとまりごと読み直してください。
演習の初期段階では、誤答の大半がこの型になります。それは正常です。この段階で原因分類にこだわりすぎる必要はありません。
混同
似た制度を取り違える型です。宅建業法で最も多く現れます。35条書面と37条書面のどちらの記載事項か、営業保証金と弁済業務保証金のどちらの金額か、免許の変更の届出と宅建士の変更の登録のどちらが30日以内か。
打ち手は、単独で覚え直すことではなく、対比で当たることです。混同している二つを並べて、どの軸で違うのか、なぜ違うのかを説明できる状態にします。「なぜ」まで遡ると混同は起きにくくなります。たとえば35条書面が契約前で37条書面が契約後なのは、前者が契約するかどうかの判断材料であり、後者が合意内容の記録だからです。目的が違うから時期が違う、と理解していれば取り違えません。35条と37条の対比は35条書面と37条書面の横断比較にまとめています。
混同型を知識不足として処理すると、両方を別々に丸暗記することになり、かえって混ざります。分類を誤ると打ち手も誤る典型例です。
問題文の読み違い
知識はあったのに、問われ方を取り違えた型です。「正しいもの」を選ぶ問題で誤りを選んだ、「誤っているものはいくつあるか」の個数を数え間違えた、「宅地建物取引業者が自ら売主となる場合」という前提を読み飛ばした、といったものです。
打ち手は知識の補強ではありません。読み方の手続きを固定することです。問題文を読むときに、問われている方向(正しいものか誤っているものか)、主語(誰が)、前提条件(どういう場合か)の三点に必ず印をつける。この三点だけを機械的にマークする習慣にすると、読み違いは目に見えて減ります。
この型を「知識不足」に分類して復習を重ねても、まったく改善しません。読み違いは知識量とは独立した問題だからです。誤答の原因分類が必要な最大の理由がここにあります。
時間不足
考える時間が足りず、後半を埋められなかった、あるいは焦って雑に処理した型です。
打ち手は二段階です。まず、時間がかかった原因が知識の欠落なのか、処理手順の非効率なのかを切り分けます。前者なら知識不足として扱います。後者、たとえば権利関係の事例で関係図を描かずに読み返しを繰り返している、といった場合は手順を変えます。
そのうえで、解く順序を固定します。得意な科目を先に処理して確実な得点を確保し、時間を要する科目を後ろに回すのが基本形です。順序と時間配分の具体は直前期の学習戦略と模試の活用法で扱っています。
分類は当日中に行う
原因分類は、演習した当日のうちに済ませてください。時間が経つと、なぜ間違えたのかの記憶が消え、後から見返しても「知識不足」に分類するしかなくなります。そうなると分類する意味がありません。
かける時間は1問あたり数秒で構いません。誤答の横に「知」「混」「読」「時」の一字を書くだけです。この一字が、後で対策を組むときの唯一の手がかりになります。
科目ごとに弱点の現れ方が違う
四つの原因分類は全科目に共通しますが、どの型が多く出るかは科目によって偏ります。偏りを知っておくと、原因の見当が早くつきます。
権利関係は「理解の穴」として現れる
権利関係の弱点は、知識の量ではなく理解の構造に空きがある形で現れます。条文の文言は覚えているのに、登場人物が三人以上になった途端に判断できない。対抗要件の話だとわかっているのに、誰が誰に何を対抗するのかを取り違える。
これは暗記量を増やしても埋まりません。埋め方は二つあります。ひとつは、事例を必ず図に落とすこと。誰から誰へ何が移転したか、時系列でどちらが先か、を紙の上に固定してから条文を当てはめます。もうひとつは、制度の趣旨に戻ることです。なぜ善意の第三者が保護されるのか、なぜ登記が対抗要件とされるのかを言えれば、初見の事例でも方向が決まります。
権利関係は14問と配点が大きい一方、深追いすると際限がありません。頻出論点に絞る判断は権利関係の頻出論点、苦手意識の解きほぐし方は権利関係が苦手な人の対処で扱っています。
宅建業法は「数字と主語の混同」として現れる
宅建業法の弱点は、ほぼ混同型です。知らない制度があるというより、似た制度の数字や主語を取り違えます。
数字では、30日以内なのか2週間以内なのか、5年なのか3年なのか、1,000万円なのか60万円なのか。主語では、宅建業者がするのか宅建士がするのか、免許権者に届け出るのか知事に申請するのか。
対策は前述のとおり対比です。加えて宅建業法特有の注意として、条文の括弧書きに例外が埋め込まれていることが多い点があります。「建物の貸借の契約以外のものにあっては」といった括弧書きを読み飛ばすと、正しく覚えたつもりの知識が別の場面で誤りになります。宅建業法を得点源にする組み立ては宅建業法の満点戦略、8種制限の整理は8種制限の全体像を参照してください。
宅建業法は20問と配点が最大で、しかも出題パターンが安定しています。ここに弱点を残したまま他科目を伸ばそうとするのは、最も効率の悪い選択です。
法令上の制限は「暗記の抜け」として現れる
法令上の制限の弱点は、単純な暗記の抜けです。開発許可が必要な面積、建蔽率の緩和条件、農地法の3条・4条・5条で許可権者が誰か。覚えていれば取れ、覚えていなければ取れません。理解の深さで補える余地が他科目より小さい科目です。
だから対策も単純で、抜けている数字を特定して繰り返すことに尽きます。ただし、数字を裸で覚えると混ざります。市街化区域の開発許可が1,000平方メートル以上で、市街化調整区域が面積を問わず原則必要なのは、前者が市街化を促進する区域で後者が抑制する区域だからです。区域の性格と数字を結びつけておくと、思い出せなかったときに推論で辿り着けます。暗記の具体的な手順は法令上の制限の暗記法にまとめています。
税・その他は「適用要件の取りこぼし」として現れる
税分野の弱点は、制度は知っているが適用要件のひとつを落とす形で現れます。居住用財産の3,000万円特別控除に所有期間の要件がないこと、軽減税率の特例には10年超の要件があること、両者が併用できること。要件をひとつ落とすだけで正誤が反転します。
制度ごとに、課税主体、課税客体、課税標準、税率、特例の適用要件を同じ枠で整理するのが確実です。計算問題の扱いは税金の計算問題で扱っています。
なお統計の問題は、知識の抜けではなく情報の鮮度の問題です。学習の早い段階で覚えても意味がなく、直前期に最新の公表値を確認する扱いにしてください。
どの弱点から潰すか
弱点をすべて潰す時間は、通常ありません。順序を決める必要があります。
出題数という動かせない事実から考える
宅建試験は50問四肢択一で、例年、権利関係14問、法令上の制限8問、税・その他3問、宅建業法20問、免除科目5問という構成です。この配分は動きません。
合格判定基準は年によって動きます。不動産適正取引推進機構の公表によれば、令和6年度は50問中37問以上、令和7年度は33問以上でした。この幅を前提に置くと、どの科目の弱点が何点分の重みを持つかが計算できます。宅建業法の弱点を3点分潰すのと、税・その他の弱点を3点分潰すのとでは、前者のほうが対象となる問題数が多いぶん実現しやすい。目標点の設計は宅建の科目別攻略法で扱っています。
改善しやすさで割る
出題数の次に見るのは、その弱点が暗記で埋まるのか、理解の組み替えが要るのかです。暗記で埋まるものは投じた時間がそのまま点になります。理解の組み替えが要るものは、時間をかけても短期では動きません。
出題数が多く、かつ暗記で埋まるものが最優先になります。宅建業法の数字、法令上の制限の基準値がここに入ります。出題数が多いが理解が要るもの、たとえば権利関係の頻出論点は、期限を切って取り組みます。出題数が少なく理解も要るものは、後回しか、割り切りの対象です。
一度に扱う弱点は絞る
複数の弱点に同時に手をつけると、どれも中途半端になります。一度に扱うのは一つか二つに限り、そのひとつが安定するまで次に進まないほうが、結果的に速く進みます。
「安定した」の判断は、次節で述べる再テストで行います。一回の演習で正解しただけでは安定とは言えません。
深追いをやめる判断
何周しても正答率が動かない論点があります。ここで判断が要ります。
判断材料は二つです。ひとつは、その論点が毎年出るのか、数年に一度なのか。もうひとつは、その論点に投じている時間を他へ回した場合に何点分の期待値があるか。毎年出るなら、正答率が低くても取り組む価値があります。数年に一度で、かつ理解に時間がかかるなら、その時間を出題数の多い科目の底上げに回したほうが合計点は伸びます。
割り切りは敗北ではなく配分の問題です。不合格になった人に共通する行動パターンは宅建試験に落ちた人の共通点、二度目の受験での組み立て直しは再受験の戦略で扱っています。
弱点を潰す手順
対象を決めたら、潰し方は共通です。
論点単位でまとめて解く
年度別に解くのをやめ、同じ論点の問題を横断して集めて連続で解きます。同じ論点が年度ごとにどう形を変えて問われるかが見え、出題の型が把握できます。年度別演習は本番の時間配分を確認するためのもので、弱点を潰す作業には向きません。
四つの肢すべてについて理由を言う
正解した肢だけでなく、誤りの肢についても「どこがどう誤っているのか」を言えるようにします。これが弱点対策の核心です。正解の選択肢を選べたかどうかは、その問題における結果にすぎません。四つの肢それぞれが独立した知識であり、本番では別の問題の肢として再登場します。
この作業を口に出して行うと、言えるか言えないかがはっきりします。頭の中で「わかっている」と思っていても、声に出すと止まる箇所があります。止まった箇所が、まだ埋まっていない部分です。
混同型には必ず対比で当たる
混同と分類したものは、単独で覚え直さないでください。取り違えている二つを並べ、違う軸を三つか四つ挙げ、それぞれについてなぜ違うのかを言う。この形にしないと、片方を覚え直した結果もう片方が押し出される、という現象が起きます。
説明できるかで理解を測る
理解型の弱点、とくに権利関係については、その論点を法律を学んでいない人に説明するつもりで組み立ててみると、穴が見つかります。専門用語を使わずに説明しようとすると、自分がその用語に寄りかかっていただけの箇所が浮かび上がります。
これは特別な技法ではなく、単に出力してみるということです。読んで理解した気になるのと、説明できるのとのあいだには差があり、その差が本番での差になります。
潰した弱点が再発していないかを確認する
弱点対策で最も抜けやすいのが、この工程です。潰したつもりのものが元に戻っていないかを、確認する仕組みが要ります。
間隔をあけた再テストが唯一の確認方法
潰した直後に解けるのは当然です。解説を読んだ記憶が残っているのだから解けます。確認になるのは、間隔をあけてから、答えを見ずにもう一度解いたときだけです。
間隔の長さに絶対的な正解はありませんが、実務的には、潰した数日後に一度、二週間ほど後にもう一度、という二段構えで十分に機能します。二度目で正解し、かつ自信度が「確信あり」であれば、その論点は安定したと判断してよい。
ここで自信度チェックがふたたび効きます。二度目に正解しても自信度が「あいまい」なら、まだ安定していません。正誤だけを見ていると、この差を見逃します。
「解き直し」と「再テスト」は違う
間違えた問題をその場でもう一度解くのは解き直しであって、再テストではありません。解き直しは解説の理解を確認する作業、再テストは記憶に残っているかを確認する作業で、目的が違います。
両方必要ですが、混同しないでください。解き直しだけを繰り返していると、「何度も解いたのに本番で出てこない」という状態になります。答えを見た直後に解ける状態と、時間をおいて何もない状態から思い出せる状態は別物です。
再発の兆候は自信度と時間に出る
再発は、いきなり不正解として現れるとは限りません。多くの場合、先に自信度が下がり、次に所要時間が延び、最後に不正解になります。
だから、正解している論点でも、自信度が「確信あり」から「あいまい」に落ちていたら、そこは再発の入口です。同様に、以前は即答できていた論点で手が止まるようになったら、記憶が薄れ始めています。この段階で短く復習すれば、数分で戻せます。不正解になってから対処すると、また同じだけの時間がかかります。
模試は再発チェックとして使う
模試の使い方はいくつかありますが、弱点対策の観点では「潰したはずの論点が本番形式で出たときに取れるか」を測る装置として使うのが最も価値があります。
受けた後にやることは、総合点を見ることではありません。事前に潰したと判断していた論点をリストにしておき、模試でそれらが出題されたときに取れていたかを一つずつ照合します。取れていなければ、対策が定着していなかったということです。この照合をしない限り、模試は点数を知るだけのイベントに終わります。模試の受け方と復習の手順は模試の活用法で扱っています。
直前期の扱いを先に決めておく
直前期に新しい弱点が見つかった場合、どう扱うかを事前に決めておいてください。原則は、新しい範囲に手を出さず、これまで潰してきた論点の維持に徹することです。
理由は二つあります。ひとつは、新しい論点を直前に入れると、隣接する既存の知識と混ざって、取れていたはずの問題まで落とす危険があること。もうひとつは、直前期に見つかる弱点は、たいてい出題頻度の低い周辺論点で、投じた時間に対する見返りが小さいことです。
例外は、頻出論点で明らかな穴が見つかった場合だけです。この判断を本番直前の焦った状態で下すのは難しいので、いま決めておきます。
学習段階によって弱点対策の意味が変わる
ここまでの手順は、いつ始めても同じように効くわけではありません。段階を誤ると、正しい手順が空回りします。
序盤は弱点を特定しない
インプットを一巡していない段階で正答率を集計しても、出てくるのは「まだ学習していない範囲の正答率が低い」という当たり前の結果だけです。この時点で弱点分析にコストをかけるのは、母数のないデータを眺めているのと同じです。
序盤にやるべきなのは、範囲の全体像を把握することと、演習の際に自信度を記録する習慣そのものを作っておくことです。記録の習慣は後から始めようとすると定着しません。分析はしなくてよいので、印だけは付けておく。これが後の工程を楽にします。学習量の見積もりは宅建の勉強時間で扱っています。
中盤は特定に徹する
過去問を一巡し終えたあたりから、集計に意味が出てきます。この段階では、潰すことより特定することを優先してください。
理由は、この時点で見つかる弱点の数が多すぎるからです。片端から潰しにかかると、優先順位のない場当たり的な対応になります。まず全体を見渡し、どの科目のどの論点にどの型の弱点があるかを一覧にする。そのうえで前述の基準で順序を決めます。特定に一週間かけても、その後の配分が正しくなれば十分に回収できます。
後半は一点集中で潰す
順序が決まったら、上位から順に潰します。この段階での失敗として多いのが、苦手分野を避けて得意分野の演習に流れることです。得意分野を解くと正答率が高く出るので気分がよく、勉強した感覚も得られます。しかし合計点は動きません。
対策は単純で、一日の学習の最初に苦手分野を置くことです。気力のあるうちに苦手と向き合い、得意分野の維持は後ろに回します。逆にすると、疲れた頭で苦手分野に取り組むことになり、続きません。
得意分野を完全に放置してよいわけでもありません。触らなければ落ちます。時間配分としては苦手に多く、得意には維持できる程度を割り当てる、という形が現実的です。短期での組み立て方は3ヶ月で合格する学習プランを参照してください。
直前期は維持に切り替える
直前期は、新しい弱点を探す時期ではなく、潰した弱点が残っているかを確認する時期です。前述の再テストと模試の照合を回し、落ちているところだけ短く戻す。これに徹します。
この切り替えの時期をあらかじめ決めておいてください。決めていないと、直前になっても新しい論点に手を出し続け、既存の知識と混ざって取れていた問題まで落とす、という最悪の形になります。
試験での出題ポイント
弱点が本番でどう失点に変わるかを、出題形式の側から整理します。ここを知っておくと、どの弱点を優先すべきかの判断が変わります。
第一に、個数問題と組合せ問題です。「正しいものはいくつあるか」「正しいものの組合せはどれか」という形式では、すべての肢を独立に判定する必要があり、消去法が使えません。四肢択一を消去法で乗り切ってきた論点は、この形式で確実に落ちます。まぐれ当たりを弱点として拾う実益がもっとも大きく出るのがここです。
第二に、程度を示す表現です。「以上」と「超える」、「以下」と「未満」、「原則として」と「常に」、「することができる」と「しなければならない」。知識が正確でも、この一語を読み飛ばせば誤答になります。読み違い型の弱点は、この形で失点します。
第三に、主語のすり替えです。宅建業者がすべき行為を宅建士がするように書く、免許権者を知事から市町村長に置き換える、届出を申請に変える。混同型の弱点は、この形で狙われます。
第四に、括弧書きの例外です。条文の括弧書きに埋め込まれた除外規定を落とすと、原則としては正しい知識が、その場面では誤りになります。「貸借では不要」と大づかみに覚えていて、実は建物の貸借だけが除外されていた、という取り違えが典型です。
第五に、時間切れによる後半の失点です。時間がかかりすぎる論点は、自分の失点ではなく、解く時間を奪われた他の問題の失点として現れます。だから所要時間も弱点として記録する必要があります。
覚え方・整理の仕方
記録は二列だけにする
弱点管理が続かない最大の原因は、記録項目を増やしすぎることです。必要なのは二列です。正誤と自信度。これに、誤答だった場合のみ原因の一字(知・混・読・時)を足します。
論点名、出題年度、解説の要約、対策予定日といった項目を並べたくなりますが、増やすほど記録が止まります。止まった記録はゼロと同じです。二列で始めて、続くようなら足してください。
優先順位は「確信あり×不正解」から
四象限のうち、手をつける順序を一言で覚えます。誤って確信しているものが最優先、次にまぐれ当たり、次に素直な誤答、最後は触らない。誤った確信は自然に直らないから最優先、まぐれ当たりは記録に現れないから次点、という理由とセットで覚えると迷いません。
原因の分類は四文字で
知・混・読・時。知識不足、混同、読み違い、時間不足。打ち手も一対一で決めておきます。知は面で読み直す、混は対比で当たる、読は問題文に三点マークする、時は手順を変える。分類した瞬間に打ち手が決まる状態にしておくと、分類する動機が生まれます。
科目と原因を結びつけておく
権利関係は理解の穴、宅建業法は数字と主語の混同、法令上の制限は暗記の抜け、税・その他は適用要件の取りこぼし。科目ごとの典型を頭に入れておくと、原因の見当が早くつきます。ただし典型に引きずられて実際の原因を誤分類しないよう、迷ったら解説に戻ってください。
再発確認は二回
潰した数日後に一度、二週間ほど後にもう一度。二度目に「確信あり」で正解したら安定。正解しても自信度が落ちていたら未完了。この二回だけを固定ルールにします。
理解度チェッククイズ
Q1. 過去問演習で正解した問題は、復習の対象から外してよい。(○か×か)
答えを見る
×:正解の中には、選択肢を二つに絞って勘で選んだものや、他の肢を消した結果として残ったものが含まれます。四肢択一で二択まで絞って選べば的中率は2分の1ですから、そうした問題が10問あればおよそ5問は正解します。この5問は記録上は正解ですが内容としては未習得で、本番で肢の組合せが変われば失点します。正誤とは別に自信度を記録し、まぐれ当たりを拾う必要があります。Q2. 自信度は、答え合わせをして正誤がわかった後に記入するのが正確である。(○か×か)
答えを見る
×:答えを知った後の記憶は「わかっていた気がする」方向に歪むため、事後に記入した自信度は記録として機能しません。解答した直後、答え合わせをする前に記入します。書き忘れた問題は空欄のままにし、無理に埋めないでください。Q3. 「正しいものを選べ」という問題で誤りの肢を選んでしまった場合、その論点をテキストで復習するのが適切な対策である。(○か×か)
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×:これは問題文の読み違いであり、知識不足とは原因が異なります。知識はあったのに問われ方を取り違えたのですから、テキストを読み直しても改善しません。打ち手は読み方の手続きを固定することで、問題文の「問われている方向」「主語」「前提条件」の三点に必ず印をつける習慣にします。誤答の原因を分類する必要があるのは、分類を誤ると打ち手も誤るからです。Q4. 弱点として潰した論点を、その日のうちにもう一度解いて正解できれば、克服できたと判断してよい。(○か×か)
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×:解説を読んだ直後に解けるのは当然で、それは解き直しであって再テストではありません。確認になるのは、間隔をあけてから答えを見ずに解いたときだけです。実務的には数日後に一度、二週間ほど後にもう一度という二段構えで判断し、二度目に正解し、かつ自信度が「確信あり」であれば安定したとみなします。正解しても自信度が「あいまい」なら未完了です。Q5. 個数問題(正しいものはいくつあるか)では、四肢択一の消去法が使えないため、まぐれ当たりで乗り切ってきた論点が失点につながりやすい。(○か×か)
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○:個数問題や組合せ問題では、すべての肢について独立に正誤を判断する必要があり、他の肢を消して正解を残すという解き方が成立しません。消去法に依存してきた論点は、この形式で出題された時点で失点します。まぐれ当たりを弱点として拾う実益が最も大きく出るのがこの形式です。まとめ
弱点は四つの型で現れます。正答率が低い分野、正解したが根拠を言えない肢、時間がかかりすぎる問題、毎回同じところで迷う論点。このうち正答率の集計で捕まえられるのは最初のひとつだけです。
残りを拾うのが自信度チェックです。解答と同時に確信の度合いを三段階で記録し、正誤と掛け合わせる。最優先は「確信あり、かつ不正解」、次が「勘またはあいまい、かつ正解」、つまりまぐれ当たりです。四肢択一である以上まぐれ当たりは必ず生じ、記録上は正解として処理されて対策から漏れます。
誤答は知識不足・混同・読み違い・時間不足の四つに分類し、それぞれ違う打ち手を当てます。分類を誤ると打ち手も誤ります。科目ごとの典型は、権利関係が理解の穴、宅建業法が数字と主語の混同、法令上の制限が暗記の抜け、税・その他が適用要件の取りこぼしです。
そして潰した弱点は、間隔をあけて二度、答えを見ずに再テストして確認します。自信度が落ちていれば、正解していても再発の入口です。
宅建試験AIブートラボのアプリでは、肢ごとの正誤と解答履歴が残るので、自信度の記録と組み合わせれば、この記事の手順をそのまま演習に乗せることができます。
肢別演習と年度別演習で、立てた学習計画をそのまま実行に移せます。間違えた肢だけを繰り返す復習にも対応しています。