宅建の勉強スケジュール表|6ヶ月・3ヶ月・1ヶ月の学習計画
宅建の勉強スケジュールを、立ち上げ期・基礎固め期・演習期・直前期の4段階で組み立てる方法。6ヶ月・3ヶ月・1ヶ月それぞれの分岐、配点から導く科目配分、遅れたときの組み直し方まで解説します。
目次
この記事は、宅建試験までの学習を「立ち上げ期・基礎固め期・演習期・直前期」の4段階に分けて設計し、残り期間が6ヶ月・3ヶ月・1ヶ月それぞれの場合にどう組み替えるかを示すものです。総学習時間の目安から考えたい場合は宅建の勉強時間を、科目ごとの攻め方を先に知りたい場合は宅建の科目別攻略法をあわせて読むと、計画の粒度が決めやすくなります。
スケジュールを立てるときに最初にやるべきことは、カレンダーを埋めることではありません。何点取れば合格するのか、その点はどの科目から取るのか、そのために各段階をいつまでに終えるのか、という3つを決めることです。ここが決まっていれば、日々の予定が崩れても組み直せます。逆にここが曖昧なまま日割りの表だけを作ると、1週間遅れただけで計画全体が使えなくなります。以下では、まず設計の土台を固めたうえで、時期ごとにやること・つまずきやすい場所・遅れたときの対処を順に見ていきます。
スケジュールを立てる前に決める3つのこと
試験日から逆算する
試験を行う主体は、宅地建物取引業法16条1項により都道府県知事です。ただし同法16条の2により、知事は国土交通大臣の指定する者に試験事務を行わせることができ、実際にはすべての都道府県が指定試験機関である一般財団法人不動産適正取引推進機構に委任しているため、申込先も受験票の発送元も機構になります。この二層構造は本試験でも問われるので、条文に即した扱いは後半の「試験での出題ポイント」に置きます。逆算の実務としては、日程を出すのが機構であるという一点だけを押さえておけば足ります。
実施の頻度にも法令の根拠があります。宅地建物取引業法施行規則10条1項は「試験は、毎年少なくとも一回行なう」と定めるだけで、10月の第3日曜日という日付はどこにも書かれていません。日付を確定させるのは同条2項で、試験を施行する期日、場所その他試験の施行に関し必要な事項をあらかじめ公告しなければならない、とされています。つまり毎年6月上旬の官報公告が出るまで、その年の日程は法令上は確定していません。第3日曜日という慣行が実務上ほぼ外れないという話と、法令が日付を固定しているという話は別物です。年間カレンダーへの落とし込み方は試験日ガイド、確定した日程の一覧は宅建試験の日程にまとめてあります。
令和8年度でいえば、公告は6月5日、試験日は10月18日(日)の13時から15時、合格発表は11月25日です。申込は郵送が7月15日、インターネットが7月31日で締め切られています。したがって、いまこの記事を開いて計画を立てる人は、令和8年度の受験者として残り期間を配分する立場か、令和9年度以降を前提に一年の骨格を組む立場かのどちらかになります。前者なら後述の「1ヶ月で組む場合」から読み、後者なら「6ヶ月で組む場合」を骨格にしたうえで、開始時期そのものの判断は宅建の勉強をいつから始めるかと突き合わせてください。
なお、令和8年度の受験票の発送予定日は10月2日(金)で、試験日の10月18日までは16日しかありません。具体的な会場が分かるのはこの時点です。申込のときに選べるのは試験地であって会場そのものではないため、自宅から遠い会場に割り当てられる可能性を計画に織り込んでおきます。移動に片道2時間かかる会場になった場合、前日の使い方も当日の起床時刻も変わります。試験地の決まり方と会場の傾向は試験会場と受験地の選び方で扱っています。
逆算の起点は試験日そのものではなく、「試験日の6週間前」に置くのが実用的です。この6週間は後述する直前期にあたり、新しいことを覚える時間ではなく、模試と確認に充てる期間として先に空けておく必要があります。ここを新規学習の締切と考えると、実質的に使える期間は思っているより短いことが分かります。令和8年10月18日から6週間戻すと9月上旬なので、4月開始なら実質約5ヶ月、7月開始なら約2ヶ月しかありません。
もう一つ、申込期間を計画に書き込んでおきます。学習が軌道に乗る前に申込を忘れると、その年は受験そのものができません。7月に入ったら申込を済ませる、と最初のカレンダーに書いておくだけで防げます。
目標点を配点と公表値から決める
合格に必要な学習時間として特定の時間数が広く出回っていますが、この種の数字に公的な出典はありません。試験機関も行政も学習時間の目安を公表しておらず、市販教材や講座が経験則として示している値が繰り返し引用されているだけです。前提となる知識や1日に確保できる時間によって必要量は大きく変わるので、他人の総時間をそのまま自分の目標に据えても意味がありません。時間ではなく到達度で管理するという考え方は宅建の勉強時間で正面から扱っているので、そちらを土台にしてください。この記事では、配点構成から配分の比率だけを割り出します。
宅建試験は50問の四肢択一で、試験時間は2時間です。登録講習を修了している場合は問46から問50までの5問が免除され、45問・1時間50分になります。出題の内訳は、問1から問14までが権利関係で14問、問15から問22までが法令上の制限で8問、問23から問25までが税・その他で3問、問26から問45までが宅建業法で20問、問46から問50までが免除科目で5問です。税・その他を免除科目とあわせて数えると8問になります。
合格に必要な点数は年度ごとに動きます。不動産適正取引推進機構が公表している試験実施概況(令和7年度以前10年間)によれば、一般受験者の合格基準点は直近10年で33点から38点のあいだを往復しており、最高は令和2年度10月試験の38点、最低は令和7年度の33点です。点数が動くのは、合格基準点が受験者全体の得点分布を見てから設定されるためで、分布は試験が終わるまで存在しません。つまり試験前に「今年は何点か」を当てることは、原理的にできません。
したがって計画の目標点は、直近の合格点を基準にするのではなく、公表値として観測されている上限である38点を明確に超える位置に置きます。直近が33点だったからといって35点を目標にすると、38点が出た年と同じ分布に当たった時点で届きません。年度別の推移と目標設定の根拠は宅建の合格ライン、合格率の側からの見え方は合格率の推移、令和8年度の見通しは合格点の推移と令和8年度の見通しにあります。
38点を明確に超える、すなわち39点以上という目標を50問に割り付けると、落とせるのは11問です。この11問をどの科目に配るかが配分の実体で、20問ある宅建業法に多く配ると残りが破綻します。科目ごとの目標点の配り方そのものは宅建の科目別攻略法が正面から扱っているので、この記事では踏み込みません。ここで決めるのは、その配分を実行するために各期に何週を割り当てるか、という時間の側だけです。
科目の優先順位を配点で決める
学習の順序は、宅建業法から始めます。理由は3つあります。第一に配点が20問と最も大きいこと。第二に、条文の要件と数字を押さえれば得点が安定し、学習量が点数に直結しやすいこと。第三に、この科目で高い正答率を作れると、権利関係で難問が出ても合格ラインに届く余裕が生まれることです。
次に法令上の制限、その次に権利関係、最後に税・その他という順が標準です。法令上の制限を先に置くのは、宅建業法と同じく暗記型で学習リズムを維持しやすいからです。権利関係を後ろに回すのは、理解に時間がかかるうえ、最初に取り組むと進まなさに挫折しやすいからです。ただし後回しにしすぎると演習量が足りなくなるため、基礎固め期の後半には必ず着手します。権利関係の全体像は権利関係の全体像で、苦手になりやすい理由と対処は権利関係が苦手なときの対処で扱っています。
なお、この順序は「1科目を完璧にしてから次に進む」という意味ではありません。1科目に何週間もかけている間に、前の科目は確実に抜けます。一巡目は各科目を早く通し、二巡目以降は全科目を並行して回すのが原則です。
5問免除を使うかどうかは計画の前提になる
学習範囲そのものを変える判断なので、スケジュールを引く前に決めておきます。根拠は宅地建物取引業法16条3項と宅地建物取引業法施行規則10条の14です。登録講習修了者については、登録講習修了試験に合格した日から3年以内に行われる試験について、規則8条に掲げる試験すべき事項のうち1号(土地および建物の形質・構造など)と5号(宅地および建物の需給に関する法令および実務)に掲げるものが免除されます。本試験の問46から問50までがこの2つの号に対応します。制度の中身、受講できる人の範囲、修了までの手順は5問免除とはが条文から順に扱っているので、ここでは計画への影響だけを見ます。
計画に効くのは3点です。第一に、演習の総量が変わります。後述する日数換算でいえば、免除を使う人の過去問10年分は2,000肢ではなく1,800肢になり、1周目に必要な日数が5日短くなります。第二に、免除されるのは1号と5号だけで、規則8条4号の「宅地及び建物についての税に関する法令」と6号の「宅地及び建物の価格の評定」は残ります。問23から問25までの税・その他3問は免除者にも出題されるので、「免除を受ければ税は捨ててよい」という前提で組むと3問を丸ごと失います。第三に、免除の効力は修了試験に合格した日から3年以内の試験に及ぶため、前年に講習を修了して不合格だった人は、翌年の計画で講習の時間と費用を再投資せずに済みます。立て直しの手順は再受験の戦略で扱っています。
免除を使う人の計画では、基礎固め期から問46・問47・問49・問50に相当する範囲を丸ごと外し、その分を宅建業法と法令上の制限に振り替えます。使わない人の計画では、この5問を「直前期の得点源」として固定枠に入れます。取り方は5問免除科目の攻略にまとめてあります。どちらを前提にするかで基礎固め期の週数が1週間前後ずれるので、教材を決める段階で確定させておきます。
学習を4つの時期に分ける
日割りのカレンダーを作る前に、学習期間を4つの時期に区切ります。それぞれの時期には「終了条件」があり、その条件を満たしたら次に進む、という運用にすると、日付どおりに進まなくても計画が崩れません。
立ち上げ期は、試験の全体像をつかみ、学習の習慣を作る時期です。終了条件は、試験の出題構成を説明できることと、毎日決まった時間に机に向かえるようになっていることの2つです。期間は2週間から3週間を見ます。
基礎固め期は、4科目のテキストを一巡させる時期です。終了条件は、全科目のテキストを最後まで通したことと、各科目の頻出テーマがどこかを言えることです。この時期の目的は理解の完成ではなく、地図を手に入れることです。
演習期は、過去問を繰り返し解いて知識を使える形にする時期です。終了条件は、過去問を3周し、宅建業法の正答率が安定して高い水準に達していることです。全体の学習時間のうち、最も長い割合を占めます。
直前期は、模試で本番の形式に慣れ、暗記事項と最新の統計・法改正を確認する時期です。終了条件は試験日そのものです。この時期に新しい教材を増やさないことが最大のルールになります。詳しい過ごし方は直前期の勉強法にまとめています。
この4区分の比率は、後述する日数換算から逆算して置いています。演習期に必要な実日数を先に確保し、直前期を6週間で固定すると、残りが立ち上げ期と基礎固め期に配分されます。6ヶ月から逆算した場合、立ち上げ期が全体の7パーセント、基礎固め期が28パーセント、演習期が45パーセント、直前期が20パーセント前後という並びになります。よくある失敗は、基礎固め期が長引いて演習期が圧迫されることです。テキストを読んでいる時間は進んでいる感覚が得やすい一方、点数には直結しません。演習期に半分の時間を残せているかどうかを、常に確認の基準にします。
立ち上げ期にやること
最初の1週間は教材と時間を固定する
立ち上げ期に決めるべきは、使う教材と学習する時間帯です。テキストは1冊に絞り、過去問は肢単位で解けるものを1つ用意します。教材を複数持つと、どれも中途半端になり、進捗も測れなくなります。
時間帯は、平日に必ず確保できる枠を先に決めます。朝の30分、通勤中の30分、帰宅後の1時間、というように場所と時間をセットで決めておくと、その時間になったら自動的に始められるようになります。移動時間の使い方は隙間時間の活用で扱っています。
出題構成を先に頭に入れる
立ち上げ期のうちに、50問がどの科目に何問割り振られているかを覚えてしまいます。これを知らないまま学習すると、配点8問の法令上の制限に配点20問の宅建業法と同じ時間をかける、といった配分ミスが起きます。あわせて、どのテーマが繰り返し出ているかを出題傾向で確認しておくと、テキストを読むときに強弱をつけられます。
この時期のつまずき方
立ち上げ期で最も多いつまずきは、最初から完璧を目指して1ページ目で止まることです。テキストの1章目は用語の定義が並ぶため退屈で、ここで挫折する人が多くなります。分からない語句が出てきても止まらず、まず最後まで通すと決めておきます。理解は二巡目以降に追いつきます。
もう一つは、学習記録をつけないまま進めることです。記録がないと、遅れているのか進んでいるのかが分からず、修正のしようがありません。日付と学習時間と学習範囲の3項目だけでよいので、毎日残します。記録の付け方は学習記録の管理で扱っています。
基礎固め期にやること
宅建業法を最初に一巡させる
基礎固め期は宅建業法から入ります。免許制度、宅地建物取引士、営業保証金と保証協会、媒介契約、重要事項説明(35条書面)、37条書面、8種制限、報酬額の制限、監督処分という順で進めると、条文の並びとおおむね一致します。全体像は宅建業法の全体像で確認できます。
この科目では、テキストを1章読んだらその範囲の問題をすぐ解く、という進め方が効きます。宅建業法は「誰が」「いつまでに」「何をしなければならないか」という形の規律の集まりなので、読むだけでは主語と期限が混ざります。問題を解くと、どこを取り違えていたかがその場で分かります。
法令上の制限は数字を後回しにしない
法令上の制限は、都市計画法、建築基準法、国土利用計画法、農地法、宅地造成及び特定盛土等規制法、土地区画整理法という順で進みます。この科目の特徴は、面積・年数・割合といった数字がそのまま正誤を分けることです。数字は後でまとめて覚えようとすると必ず後回しになるので、その分野を読んだその週のうちに覚え始めます。数字の覚え方は法令上の制限の暗記法で、得点源にする組み立ては法令上の制限で得点するで扱っています。
権利関係は範囲を絞って通す
権利関係は民法を中心に、借地借家法、区分所有法、不動産登記法が加わります。範囲が広く、全部を同じ深さでやると時間が足りません。基礎固め期では、意思表示、代理、時効、物権変動、抵当権、債務不履行と契約不適合責任、賃貸借、相続、借地借家法、区分所有法という頻出テーマを優先し、それ以外は一読にとどめます。
権利関係で時間を使いすぎるのが、基礎固め期の最大の落とし穴です。14問のうち半分取れれば合格圏に残れる科目に、宅建業法と同じ熱量をかけると全体が破綻します。深追いしないと最初に決めておきます。
税・その他と免除科目は短く済ませる
税・その他は、不動産取得税、固定資産税、印紙税、登録免許税、譲渡所得の特例、地価公示法、不動産鑑定評価基準という構成です。問23から問25までの3問しかないため、頻出のものに絞って早く一巡させます。組み立て方は税・その他の攻略を参照してください。
免除科目(問46から問50)は、住宅金融支援機構、景品表示法、統計、土地、建物の5分野です。登録講習を修了していれば免除されますが、そうでなければ確実に取りにいく5問です。統計は最新年度の数値が問われるため、基礎固め期ではなく直前期に回します。全体の攻め方は5問免除科目の攻略、免除制度そのものは5問免除とはで確認できます。
この時期のつまずき方
基礎固め期で崩れる典型は、テキストを読んだだけで進捗にカウントしてしまうことです。読んだ範囲について一問一答を解いていないと、翌週にはほとんど残っていません。1章読んだら必ず問題を解く、を例外なく守ります。
もう一つは、二巡目に入る前に前の科目を忘れていることに気づき、慌てて戻ることです。忘れるのは正常なので、戻る前に予定どおり最後まで通します。忘却を前提に、演習期で全科目を並行して回すことで取り戻します。
演習期にやること
周回の設計は預け、日数への換算だけをここで決める
演習期の中心は過去問です。何年分を、どの順で、何周するか。周ごとに何を目的にし、印をどうつけるか。この周回の設計そのものは過去問の活用法が正面から扱っています。骨格だけ引いておくと、1周目は出題のされ方を知るために、2周目は自力で解いて弱点を特定するために、3周目は印のついた肢に絞って潰すために回す、という三段構えです。
この記事で決めるのは、その三段構えがカレンダーの何日ぶんになるか、という一点だけです。演習期に何ヶ月を確保しなければならないかは、意欲ではなく割り算で出ます。
分量を日数に換算する
必要な数字は、総肢数、1日に処理できる肢数、誤答率の3つだけです。
総肢数は教材によって確定します。宅建試験AIブートラボが収録している2016年から2025年までの10年分は、50問掛ける10年で500問、選択肢では2,000肢です。科目別の内訳は、権利関係が560肢、法令上の制限が320肢、税・その他が320肢、宅建業法が800肢になります。1年あたりに直すと、権利関係56肢、法令上の制限32肢、税・その他32肢、宅建業法80肢です。ここで注意が要るのは税・その他の320肢で、この内訳は問23から問25までの税3問(10年で120肢)と、問46から問50までの免除科目5問(10年で200肢)の合計です。5問免除を使う人は後者の200肢が丸ごと落ちるため、税・その他は120肢、10年分の総量は1,800肢になります。
次に、1日に処理できる肢数を決めます。ここでいう処理とは、正誤を判断し、間違えた肢だけ解説を読み、テキストに戻る場合は戻る、までを含みます。仮に1日40肢とすると、1周目は2,000肢を50日で通す計算になります。科目別では、宅建業法800肢に20日、権利関係560肢に14日、法令上の制限320肢に8日、税・その他320肢に8日です。5問免除を使う人は1,800肢なので45日、5日ぶん短くなります。
2周目の対象は1周目の誤答だけです。1周目の誤答率を4割と見込むと800肢、同じ処理速度で20日。3周目は2周目の誤答だけなので、同じ誤答率なら320肢、8日です。合計すると50日、20日、8日で78日になります。週に1日の休息日を先に入れる前提なら、78日を7分の6で割り戻して約91日、およそ13週です。
この13週という数字が、演習期に必要な実日数の下限になります。ここに模試の受験と復習、年度別の通し演習、直前期の暗記事項の確認が乗るので、演習期に3ヶ月を確保できる計画かどうかが分岐点になります。3ヶ月を取れないなら、1日の処理量を増やすか、10年分ではなく直近の年数に絞るか、誤答率を下げるために基礎固め期の精度を上げるか、いずれかの調整が必要です。「頑張って追いつく」という選択肢はこの式には現れません。
自分の1日の処理量は、演習期の最初の1週間で実測します。想定より少なければ、その時点で総日数を計算し直します。1日40肢のつもりが実際は25肢だった場合、1周目だけで50日が80日になり、演習期は13週では収まりません。この誤差に気づくのが直前期に入ってからだと、削る余地がほとんど残っていません。
肢単位と4肢択一を使い分ける
過去問は、選択肢を1つずつ正誤判断する肢単位の演習と、4つの選択肢から1つを選ぶ本来の形式の両方で解けます。演習期の前半は肢単位が有効です。4肢択一では、消去法で正解できてしまい、どの肢の理解が足りないのかが記録に残りません。肢単位なら、2000肢のうちどれを間違えたかがそのまま弱点の一覧になります。
一方で、肢単位だけを続けると、4つの肢を比べて最も適切なものを選ぶ判断が鈍ります。「正しいものはどれか」ではなく「誤っているものはいくつあるか」という個数問題や、組み合わせを選ばせる形式は、肢単位の演習だけでは対応しきれません。個数問題は4肢すべての正誤を確定させないと答えが出ないため、1肢でも曖昧だと得点にならず、消去法も働きません。演習期の後半からは、4肢択一の形式に戻して解く回を混ぜます。
肢単位の演習を積むときに一緒に蓄積しておきたいのが、誤りの作られ方です。宅建の誤り肢は無作為に作られているわけではなく、数字の入れ替え、主語のすり替え、「必ず」「すべて」といった断定語の挿入、期間の起算点のずらしなど、限られた型の組み合わせでできています。型を先に知っていると、知識が完全でない肢でも誤りの疑いを持てるようになります。型の一覧と見分け方は引っかけ表現のパターンにまとめてあるので、演習期に入る前に一度通しておくと、1周目の誤答の理由を分類しやすくなります。
判断の目安は、肢単位で正答率が8割を超えた科目から4肢択一に移す、というものです。肢単位で6割の状態で4肢択一に進んでも、消去法が働かず時間だけを消費します。
年度別の通し演習を日付で固定する
分野別に解くか、年度別に50問通しで解くかという使い分けの理屈は宅建の過去問活用術にまとめてあります。スケジュールの側で決めるのは、切り替えの時期だけです。
年度別の通し演習を初めて行う日を、試験日の8週間前として先に日付で決めてしまいます。「分野別が一通り終わったら年度別に移る」という条件で管理すると、分野別が終わらないまま試験日が近づき、通し演習を1回もやらずに本番を迎えることになります。分野別の進捗と関係なく、その日が来たら1年分を通しで解く、という固定枠にしておきます。1回目の通し演習は、時間内に解き終わらない可能性が高い状態で受けることになりますが、それでかまいません。解き終わらないという事実を、残り8週間のうちに知ることが目的です。
8週間前という位置には理由があります。50問を2時間で解く配分は1回では安定せず、間隔をあけて4回から6回は通す必要があります。試験日の8週間前から、模試2回とあわせて2週間に1回のペースで通し演習を置くと、ちょうどその回数が確保できます。逆に、切り替えを4週間前まで遅らせると、時間切れの原因を分析して解く順序を組み替える余地がなくなります。
正答率をどう読むか
演習期の進捗は、解いた問題数ではなく正答率で測ります。科目ごとに水準を置くと判断しやすくなります。宅建業法は9割、法令上の制限は7割5分、税・その他と免除科目は7割、権利関係は6割5分が、演習期を終えるときの目安です。宅建業法だけ突出して高いのは異常ではなく、そう設計しているからです。
これは公表された基準ではなく、先に置いた39点という目標点を逆算した設計値です。問数に直すと、宅建業法20問で18問、法令上の制限8問で6問、税・その他と免除科目8問で5問から6問、権利関係14問で9問。足すと38問から39問になり、目標に届きます。目標点を別の位置に置くなら、この水準もそれに合わせて置き換えてください。
宅建業法が8割に届かない場合は、演習を増やす前にテキストに戻ります。この科目で取りこぼしがあるのは、演習不足ではなく知識の穴であることが多いためです。逆に権利関係が6割に届かない場合は、範囲を広げるのではなく、頻出テーマだけを繰り返します。
この時期のつまずき方
演習期で最も多いのは、同じ問題を何度も解いて正答率が上がったように見えるのに、初見の問題に対応できない状態です。答えを覚えてしまっているだけの可能性があります。防ぐには、選択肢ごとに「なぜ誤りなのか」を口に出して説明できるかを確認します。説明できないなら、正解していても理解していません。出力を伴う学習の効果は宅建の暗記術で扱っています。
もう一つは、間違えた問題の記録を残さずに周回することです。印をつけていないと2周目の対象が絞れず、全問を同じ労力で解き直すことになって時間が足りなくなります。
直前期にやること
残り6週間の配分
直前期は試験日のおよそ6週間前から始まります。この6週間は、模試に2週、弱点補強に2週、最終確認に2週、と大きく分けて考えると組みやすくなります。
模試を何回いつ受けるか、返ってきた結果をどう読むかは模試の活用法にまとめてあります。スケジュールの側で決めるのは枠取りだけで、1回目を直前期の入口(試験日の5週間前あたり)、2回目を残り2週間から3週間の時点に置き、それより後には新しい模試を入れない、という3点です。最後の模試を残り1週間の位置まで引っ張ると、判明した弱点を補強する時間が残らず、点数を見て動揺するだけの回になります。
統計と法改正はこの時期にやる
免除科目のうち統計は、最新年度の数値が問われます。地価公示、住宅着工戸数、宅地建物取引業者数、不動産業の売上高といった項目が対象で、いずれも公表元が異なります。基礎固め期にやっても数値が古くなるだけなので、直前期にまとめて確認します。統計問題の対策と最新統計で扱っています。
法改正も同様です。その年度の試験に反映される改正は、その年の4月1日現在で施行されている法令に限られます。令和8年度なら2026年4月1日が基準日で、4月2日以降に施行された改正は、たとえ試験日の時点で現に施行されていても出題範囲に入りません。ここを取り違えると、最新の条文に合わせたつもりで誤答することになります。市販教材の改訂が追いつかず旧要件のまま残っている論点もあるため、基準日と施行日の関係は自分で確認しておく価値があります。
計画上の扱いとしては、改正論点の確認を直前期の固定枠に1週間ぶん確保します。改正があった論点は出題側が問いやすく、しかも受験者全体の正答率が読みにくいため、押さえておくと相対的に有利になります。令和8年度の基準日で何が変わったかは令和8年度の法改正まとめに一覧があり、民法まわりの改正点は民法改正のポイントで整理しています。ここで重要なのは、改正点の確認を基礎固め期に前倒ししないことです。基礎固め期の段階では改正の全体像が公表資料として揃っていないことがあり、中途半端な情報で覚え直すと二度手間になります。
解く順序を決めておく
本番で問1から順に解くと、権利関係の難問で時間と気力を消耗した状態で宅建業法に入ることになります。得点源から先に解く順序を決め、模試で試しておきます。宅建業法(問26から問45)を先に解き、次に法令上の制限(問15から問22)と税・その他(問23から問25)、免除科目(問46から問50)を処理し、最後に権利関係(問1から問14)に戻る順序が一般的です。
この順序を本番で初めて試すと、マークシートの記入位置を間違えるおそれがあります。必ず模試で1回以上通して練習します。当日の動き方は試験当日ガイドにまとめています。
試験前日と当日
前日と当日の動き方そのものは試験当日ガイドにまとめてあります。計画の側でやっておくのは、前日に見返すものを事前に固定しておくことだけです。数字のまとめ、間違えた肢のリスト、統計の数値という3つに絞ると決めておけば、前日に新しい問題集を開いて動揺する事態を避けられます。
この3つはいずれも直前期の作業の産物なので、直前期の計画に「前日用の教材を作る」という項目を明示的に入れておきます。作る作業を計画に載せていないと、前日になって手元にあるのは通常のテキストだけ、ということになります。着席刻限は12時30分ですから、会場までの経路と所要時間の確認も前日までに済ませておく作業に含めます。
6ヶ月で組む場合
残り6ヶ月、たとえば4月から始めて10月の試験に臨む場合は、最も無理のない配分ができます。1日あたり2時間前後を平日に確保し、週末に少し多めに取る形で、週14時間から16時間を目安にします。
配分は、演習期に必要な13週を先に確保するところから決めます。4月1日から10月18日までは約29週あるので、そこから演習期13週と直前期6週を引き、立ち上げ期に2週を置くと、基礎固め期に残るのは8週です。カレンダーに落とすと、立ち上げ期が4月の最初の2週間、基礎固め期が4月後半から6月中旬まで、演習期が6月中旬から9月上旬まで、直前期が9月上旬から試験日まで、という並びになります。
基礎固め期の8週は、宅建業法に3週間、法令上の制限に2週間、権利関係に2週間、税・その他と免除科目に1週間という配分です。6ヶ月あっても基礎固め期は2ヶ月しかない、という点がこの計算の要点になります。テキストを3ヶ月かけて読むプランをよく見かけますが、それをやると演習期が13週を割り、後で必ず削ることになります。
このプランで注意すべきなのは、期間に余裕があるぶん中だるみが起きやすいことです。特に基礎固め期の後半、権利関係に入ったあたりで進みが遅くなります。対策として、月末に必ず前月分の一問一答を解き直す日を作り、忘却の量を可視化します。学習が長期化する場合の続け方は社会人の合格戦略や独学で合格する方法も参考になります。
3ヶ月で組む場合
残り3ヶ月、たとえば7月から始める場合は、インプットとアウトプットを分離する余裕がありません。テキストを1章読んだらその範囲の問題を必ず解く、という単位で進め、基礎固め期と演習期を重ねます。1日あたり3時間前後、週20時間程度が目安になります。
配分の目安は、7月に宅建業法と法令上の制限、8月に権利関係と税・その他を進めながら全科目の過去問1周目を終え、9月から直前期に入る、というものです。立ち上げ期は数日に圧縮し、教材を決めたらすぐ本編に入ります。
このプランで割り切るべきなのは、権利関係の範囲です。頻出テーマ以外は最初から扱わないと決めます。14問のうち7問取れれば十分という前提で、宅建業法で18問以上を確保する設計にします。3ヶ月での進め方は3ヶ月で合格する学習法でも扱っています。
つまずきやすいのは、8月に権利関係へ入った時点で宅建業法の記憶が薄れ、両方が中途半端になることです。これを防ぐため、8月以降は毎日の最初の30分を宅建業法の一問一答に固定します。分量は少なくても、毎日触れていれば落ちません。
1ヶ月で組む場合
残り1ヶ月の場合、全範囲を均等に扱うことは不可能です。取れる科目に資源を集中させる判断が必要になります。1日あたり4時間から5時間を確保できることが前提で、それが難しければ翌年に回すという判断も現実的です。
配分は、最初の2週間で宅建業法を集中的に仕上げます。テキストを読む時間は最小限にし、過去問の肢を解きながら間違えた箇所だけテキストに戻る形にします。20問中18問を目標にします。次の1週間で法令上の制限と税・その他、免除科目を回します。数字を中心に暗記し、理解が浅くても正誤判断ができる状態を目指します。最後の1週間で権利関係の頻出テーマだけを回し、あわせて全科目の間違い直しと統計の確認を行います。
このプランでは、権利関係の難問と、法令上の制限の細かい手続規定は最初から捨てます。捨てる範囲を決めることが計画そのものになります。短期集中の考え方は再受験の戦略や未経験から合格する方法にある優先順位の付け方が応用できます。
なお、1ヶ月プランは前提知識がある場合に成立しやすく、完全な初学者には厳しい設計です。届かないと判断したときに素直に翌年へ切り替えるほうが、結果的に短い時間で合格できます。不合格になる要因の分析は不合格になる原因で扱っています。
期間別プランに共通する判断基準
3つのプランを比べると、変わるのは各期の長さだけで、優先順位は変わりません。どのプランでも宅建業法が最優先で、権利関係が最初に削られる対象です。期間が短くなるほど、この優先順位が露骨に効いてきます。
もう一つ共通するのは、演習期に全体の半分の時間を残せているかという基準です。6ヶ月プランなら3ヶ月、3ヶ月プランなら1ヶ月半、1ヶ月プランなら2週間が、過去問に充てるべき最低量です。この量を確保できない配分になっているなら、基礎固め期の範囲を削って前倒しします。テキストを最後まで読んでいなくても、演習期の開始を遅らせないほうが結果は良くなります。
自分がどのプランに当てはまるかは、残り期間ではなく「残り期間と1日に確保できる時間の積」で判断します。残り3ヶ月でも1日1時間しか取れないなら、実質は1ヶ月プランに近い総量になります。逆に残り1ヶ月でもまとまった時間が取れるなら、3ヶ月プランの内容を圧縮して実行できます。カレンダー上の月数だけで判断すると、配分を誤ります。
1週間の型をつくる
曜日ごとに科目を固定する
日々の予定を毎回考えるのは負担が大きく、迷っている時間そのものが消耗になります。曜日と科目を固定してしまうのが最も簡単な解決です。たとえば平日の月曜から木曜を宅建業法、法令上の制限、権利関係、税・その他に割り当て、金曜を休みにし、土曜に週の復習、日曜に翌週の計画と全科目の一問一答を置く、という型です。
この型の利点は、週に1回は必ず全科目に触れる構造になっていることです。1科目を何日も連続でやると他が抜けるため、ローテーションを組み込んでおきます。
平日と休日で役割を分ける
平日は時間が細切れになるため、一問一答や暗記のように中断できる作業を割り当てます。休日はまとまった時間が取れるため、年度別の通し演習やテキストの読み直しのように中断しにくい作業を割り当てます。この役割分担を決めておくと、平日に大きな作業を始めて中途半端に終わる、という失敗が減ります。1日の組み立て方は1日の学習スケジュール、連休のまとめ取りは連休の勉強法を参考にしてください。
復習の枠を先に確保する
週の型に必ず入れておくのが、前週までの範囲を解き直す枠です。新しい範囲を進める枠と、すでに終えた範囲を確認する枠を、同じ「勉強時間」として混ぜないことが要点になります。混ぜると、進捗が見えやすい前進のほうに時間が寄り、復習が消えます。
分量の目安は、週の学習時間の2割から3割です。6ヶ月プランで週14時間なら3時間から4時間、3ヶ月プランで週20時間なら4時間から6時間。この枠で解くのは、その週に新しく学んだ範囲ではなく、1週間前と1ヶ月前に学んだ範囲です。直前に学んだ範囲は解けて当たり前なので、確認の意味がありません。
もう一つ、復習の対象を「間違えた肢」に限定しないことも決めておきます。まぐれで正解した肢は、次に出たときに落とします。演習のときに、正解したが自信がなかった肢に別の印をつけておき、復習枠ではその印の肢も対象に含めます。間隔をあけた復習が定着に効く理屈と、印の付け方の実際は宅建の暗記術で扱っています。
休息日を先に入れる
週に1日は学習しない日を先に決めておきます。休息日を計画に入れないと、疲れて休んだ日が「計画からの遅れ」になり、罪悪感が積み重なって継続が難しくなります。最初から休む日と決めていれば、休んでも計画どおりです。
休息日は固定の曜日にします。「疲れた日に休む」という運用にすると、休むかどうかの判断を毎日することになり、その判断自体が負担になります。曜日で決めておけば判断は要りません。なお、休息日を試験日と同じ日曜に置くのは避けたほうが安全です。日曜の午後に机に向かう習慣がないまま本番を迎えると、その時間帯の集中の持ち方が分かりません。休むなら金曜か土曜に置き、日曜の13時から15時は何らかの学習に充てておきます。
遅れたときの組み直し方
計画は3層で持つ
遅れの対処が難しくなるのは、計画を1枚の表として持っているからです。日付と作業が一対一で対応した表は、1日ずれた瞬間に全部がずれます。そうならないように、計画を3つの層に分けて持ちます。
第1層は期の層です。立ち上げ期、基礎固め期、演習期、直前期の4つと、それぞれの終了条件。ここは原則として書き換えません。書き換えるのは、受験年そのものを変える判断をするときだけです。
第2層は週の層です。今週どの科目に何時間を割り当て、どの範囲を終わらせるか。ここは毎週書き換えます。日曜に翌週分を決める、というように書き換えの日を固定しておきます。
第3層は日の層です。今日やる具体的な作業。ここは当日の朝に決め、翌日には捨てます。前日の未消化を翌日に繰り越す運用にすると、繰り越しが雪だるま式に増えて、どの層を見ても遅れているという状態になります。未消化は日の層では処理せず、週の層の書き換えで吸収します。
この3層で持っておくと、「遅れた」という言葉が何を指しているのかを切り分けられます。日の層の未消化は遅れではありません。週の層で2週続けて予定範囲に届かないなら、それは配分の設定が実態と合っていないという信号です。期の層の終了条件に届かないまま次の期の開始予定日が来たときだけが、本当の意味で計画を組み直す場面になります。
1週間の遅れ
1週間程度の遅れは、調整日で吸収できる範囲です。計画を作り直す必要はありません。週末の復習日を進捗の埋め合わせに使い、翌週から通常の型に戻します。ここで慌てて1日の学習時間を倍にすると、その反動でさらに遅れることが多くなります。
2週間から1ヶ月の遅れ
2週間以上の遅れが出た場合は、時間を増やすのではなく範囲を削ります。最初に削るのは権利関係の非頻出テーマ、次に法令上の制限の細かい手続規定です。宅建業法と免除科目は削りません。配点と学習効率の両方で優位だからです。
このとき、削った範囲を明示的に書き出しておきます。「やらないと決めた範囲」が曖昧なままだと、直前期に気になって手を出し、確認すべき範囲の時間を奪います。
1ヶ月以上の遅れ
1ヶ月以上遅れた場合は、残り期間に応じて前述の3ヶ月プランまたは1ヶ月プランに乗り換えます。元の計画の続きをやろうとせず、残り期間から組み直すのが正解です。基礎固め期が終わっていなくても、残り2ヶ月を切っているなら演習期に移ります。テキストを読み終えていない範囲は、過去問を解きながら必要な箇所だけ読む形に切り替えます。
遅れの原因を分けて考える
遅れには、確保できる時間が足りていない場合と、確保した時間の使い方が非効率な場合の2種類があります。前者なら隙間時間の追加や休日の配分変更で対処します。後者なら、テキストを読む時間が長すぎないか、同じ問題を解き直すだけになっていないかを点検します。原因を分けずに「もっと頑張る」で対処すると、同じ遅れを繰り返します。
試験での出題ポイント|傾向をスケジュールに織り込む
試験制度そのものが出題される
スケジュールを組むために調べた制度知識は、そのまま宅建業法の得点になります。宅地建物取引士に関する規定は問26から問45までの範囲に含まれており、受験手続を調べる過程で触れる条文がそのまま問われるからです。
最も出題されやすいのが、実施主体の二層構造です。宅地建物取引業法16条1項は「都道府県知事は、国土交通省令の定めるところにより、宅地建物取引士資格試験を行わなければならない」と定め、試験を行う主体を知事に置いています。これに対して16条の2第1項は、知事が国土交通大臣の指定する者に試験の実施に関する事務を行わせることができるとし、同条2項でその指定は試験事務を行おうとする者の申請により行うとしています。そのうえで同条3項が、指定を受けた者に試験事務を行わせるときは知事は試験事務を行わないものとする、と定めています。知事と指定試験機関が並行して事務を担うのではなく、委任すれば知事の側が退く構造です。「試験は指定試験機関が行う」という言い方は、事務の主体としては正しくても、試験を行う主体としては不正確ということになります。
実施の形式にも条文があります。施行規則9条は「試験は、筆記試験により行なう」と定めています。四肢択一という出題形式は規則の文言ではなく、筆記試験の枠内での運用です。同10条1項は「試験は、毎年少なくとも一回行なう」とだけ定めており、年1回に固定されているわけではありません。現に令和2年度は10月と12月の2回に分けて実施され、機構の公表値でも基準点が38点と36点に分かれています。合格の側は規則11条1項で、知事が合格者の受験番号を公告し、当該合格者に合格証書を交付する、とされています。
不正受験に対する措置(17条)と、合格から登録・取引士証の交付に至る手続(18条、22条の2)も同じ範囲から問われますが、前者は試験日ガイド、後者は宅建合格後にやることがそれぞれ条文に即して扱っています。計画を立てる段階で押さえておく価値があるのは、法22条の2第2項が取引士証の交付申請前6月以内に行われる指定講習の受講を義務づけたうえで、そのただし書が「試験に合格した日から一年以内に宅地建物取引士証の交付を受けようとする者」を除外している点です。令和8年度の合格発表は11月25日ですから、この1年の期限は翌年11月下旬までということになります。合格後に取引士証まで進む予定があるなら、その期限を試験前のカレンダーに書き込んでおくと、合格してから講習を1つ余計に受ける事態を避けられます。
これらは学習計画を立てる過程で自然に触れる条文なので、立ち上げ期のうちに一度読んでおくと、宅建業法の最初の数問がただで手に入ります。
宅建業法を落とさない設計にする
宅建業法は20問と最も配点が大きく、条文の要件と数字が正誤を分ける形で問われます。重要事項説明の記載事項、37条書面の記載事項、8種制限の適用範囲、報酬額の計算、営業保証金と保証協会の金額と期限といったテーマは繰り返し出題されるため、演習期に集中的に回します。この科目を9割で仕上げる前提を崩すと、他の科目にしわ寄せが行きます。
権利関係は難問が混ざる前提で組む
権利関係は、頻出テーマから素直に出る問題と、判例や条文の細部を問う難問が混在します。全問正解を狙う設計にすると時間がいくらあっても足りません。頻出テーマを確実に取り、難問は捨てるという方針を、演習期の段階で決めておきます。この割り切りができていないと、直前期に権利関係の細かい論点を追いかけて、確認すべき暗記事項が手つかずのまま試験日を迎えることになります。
法令上の制限は数字の入れ替えで問われる
法令上の制限は、面積・年数・割合などの数字を別の値に置き換えて誤りにする作りが定番です。したがって、この科目の対策は理解よりも数値の正確な記憶に寄ります。数字は直前期に急に覚えられるものではないので、基礎固め期から積み上げ、直前期は確認だけにします。難問の扱いは法令上の制限は何問出るかで扱っています。
統計と法改正は時期が決まっている
統計は最新年度の数値、法改正はその年度の試験に反映される改正が問われます。どちらも直前期でなければ確定した情報が揃いません。逆に言えば、直前期に必ず入れなければならない固定枠です。スケジュールを作る段階で、この枠を先に押さえておきます。
時間配分そのものが得点を左右する
50問を2時間で解くと、1問あたり2分24秒です。見直しの時間を確保するなら、実質2分で判断する必要があります。この感覚は年度別の通し演習でしか身につかないため、直前期の演習を分野別だけで終わらせないよう、通し演習を計画に組み込みます。
覚え方・整理の仕方|計画を続ける型
「終わらせる単位」を小さくする
1日の目標を「2時間勉強する」と置くと、達成できたかどうかが時間でしか測れず、内容が空でも達成になってしまいます。「宅建業法の8種制限の肢を40問解く」のように、終わりが判定できる単位で置きます。単位が小さいほど、細切れの時間でも着手できます。
達成率は7割から8割で設計する
計画は、100パーセント実行できる前提で作ると必ず破綻します。仕事や体調で崩れる日が一定割合あることを織り込み、7割から8割の達成で予定どおりと考えます。そのために、週の予定に最初から余白を1日分入れておきます。
記録は3項目だけにする
学習記録は、続かなければ意味がありません。日付、学習時間、解いた問題数と正答率という3項目だけに絞ります。項目を増やすと記録自体が負担になり、やめてしまいます。週に一度、記録を見返して、どの科目に時間を使いすぎているかだけを確認します。
忘却を前提に組み込む
覚えたことが抜けるのは異常ではありません。抜ける前提で、週に1回は全科目に触れる型を組んでおきます。復習を「遅れの穴埋め」として扱うと後回しになるので、最初から予定に固定枠として入れておきます。暗記の技術そのものは宅建の暗記術で扱っています。
迷ったら演習に寄せる
どちらをやるべきか迷ったときは、読む側ではなく解く側を選びます。読んでいる時間は進んでいる実感が得やすいぶん、進捗の錯覚を生みます。合格に必要なのは、問題を見て正誤を判断できることであり、それは解くことでしか身につきません。習慣として何を優先しているかは一発合格する人の習慣でも整理しています。
理解度チェッククイズ
次の記述が正しいか誤りかを判断してください。
第1問 宅建試験の出題は50問で、そのうち宅建業法が20問と最も多い。
正しい記述です。内訳は権利関係14問(問1から問14)、法令上の制限8問(問15から問22)、税・その他3問(問23から問25)、宅建業法20問(問26から問45)、免除科目5問(問46から問50)です。宅建業法が全体の4割を占めるため、学習時間の配分でも最優先に置きます。なお、この配点そのものは法令で決まっているわけではありません。宅地建物取引業法施行規則8条が試験すべき事項を7号に分けて列挙しているだけで、各号に何問を割り当てるかは書かれていません。実際の配分は長年の運用によって安定しているものです。登録講習修了者は問46から問50が免除され、45問・1時間50分での受験になります(法16条3項、規則10条の14)。
第2問 テキストを完全に理解してから過去問に進むのが、宅建の学習の正しい順序である。
誤りです。テキストを読んだだけの知識は、問題の形で問われると使えません。1章読んだらその範囲の問題を解く、という単位で進めるほうが定着します。特に残り期間が3ヶ月を切っている場合は、インプットとアウトプットを分離する時間そのものがないため、必ず並行させます。
第3問 学習計画が1ヶ月以上遅れた場合は、1日の学習時間を増やして元の計画に追いつくべきである。
誤りです。1ヶ月以上の遅れが出た時点で、元の計画は残り期間に合っていません。学習時間を増やして追いつこうとすると反動で崩れやすくなります。残り期間から組み直し、権利関係の非頻出テーマや法令上の制限の細かい手続規定を削って、宅建業法と免除科目を守る配分に切り替えます。
第4問 統計問題の対策は、学習の早い段階でやっておくほど有利である。
誤りです。統計は最新年度の数値が問われるため、早い時期に覚えても数値が入れ替わります。地価公示や住宅着工戸数などの数値は直前期にまとめて確認するのが合理的です。同じ理由で、その年度に反映される法改正の確認も直前期の固定枠として計画に入れます。ただし「直前期にやるから今は無視してよい」という意味ではなく、直前期に必ず入れる枠として計画の段階で場所を確保しておく、という趣旨です。枠を取っていないと、直前期に他の作業に押し出されます。なお、出題対象になる法令はその年度の4月1日現在で施行されているものに限られるので、基準日より後に施行された改正を追いかける必要はありません。
第5問 本番では問1から順番に解いていくのが、時間配分の面で最も安全である。
誤りです。問1から問14は権利関係で、難問が混ざる可能性が高い区画です。ここで時間と集中力を消耗すると、配点の大きい宅建業法に不利な状態で入ることになります。得点源である宅建業法から解き、権利関係を最後に回す順序を決めておき、模試で一度は通して練習しておきます。
まとめ
宅建のスケジュールは、日割りの表を作ることではなく、4つの時期の終了条件を決めることで組み立てます。立ち上げ期で教材と時間帯を固定し、基礎固め期で4科目を一巡させ、演習期で過去問を3周し、直前期で模試と統計・法改正を確認する。この骨格が決まっていれば、残り6ヶ月でも3ヶ月でも1ヶ月でも、各期の長さを変えるだけで組み替えられます。
配分の基準は配点です。宅建業法20問を落とさない設計を最優先に置き、権利関係14問は頻出テーマに絞り、法令上の制限8問は数字を積み上げ、税・その他と免除科目8問は短時間で仕上げる。遅れたときは時間を増やすのではなく範囲を削り、削った範囲を書き出して迷いを消します。
計画は7割から8割の達成で予定どおりと考え、休息日を先に入れておきます。完璧な計画を作ることより、崩れたときに組み直せる計画にしておくことのほうが、結果に効きます。
日々の進捗は、解いた問題数と正答率で確認するのが最も分かりやすい方法です。アプリの肢別トレーニングと年度別演習を使って、科目ごとの正答率を記録しながら進めてみてください。
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肢別演習と年度別演習で、立てた学習計画をそのまま実行に移せます。間違えた肢だけを繰り返す復習にも対応しています。