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供託所等に関する説明義務|35条の2を条文から

宅建業法 読了 約27分

宅建業法35条の2の供託所等に関する説明義務を、営業保証金制度と保証協会制度の全体像から解き起こして解説。説明事項、努力義務であること、業者間で不要な理由、35条重要事項説明との違いを条文根拠つきで整理します。

目次

    この記事は、宅地建物取引業法35条の2が定める「供託所等に関する説明」を、その土台にある営業保証金制度と保証協会制度までさかのぼって説明するものです。法律全体の中での位置づけは宅建業法とは、35条の重要事項説明そのものは35条書面の記載事項一覧を先に読むと、違いが立体的に見えてきます。

    供託所等の説明義務は、条文一つ、説明事項も数行という小さな規定です。それにもかかわらず本試験で繰り返し問われるのは、この規定が営業保証金制度と保証協会制度の出口に位置しているからです。「どこに供託されているかを説明せよ」という義務の内容は、「誰が、どこに供託しているのか」を知らなければ理解できません。逆に言えば、二つの供託制度を押さえてしまえば、35条の2は自動的に読めるようになります。そこで本記事では、まず条文を正確に読み、次に営業保証金と弁済業務保証金の仕組みを必要な範囲で通し、そのうえで35条の重要事項説明との違いを軸ごとに整理します。結論を先に述べれば、押さえるべき核は三つです。第一に、この義務は「説明をするようにしなければならない」という努力義務であり、書面の交付も宅地建物取引士の関与も求められないこと。第二に、説明事項は保証協会の社員かどうかで切り替わること。第三に、相手方が宅建業者であるときは条文上そもそも義務が生じないことです。

    供託所等の説明義務とは何か(法35条の2)

    条文をそのまま読む

    法35条の2は次のように定めています。

    宅地建物取引業者は、宅地建物取引業者の相手方等(宅地建物取引業者に該当する者を除く。)に対して、当該売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、当該宅地建物取引業者が第64条の2第1項の規定により指定を受けた一般社団法人の社員でないときは第1号に掲げる事項について、当該宅地建物取引業者が同項の規定により指定を受けた一般社団法人の社員であるときは、第64条の8第1項の規定により国土交通大臣の指定する弁済業務開始日前においては第1号及び第2号に掲げる事項について、当該弁済業務開始日以後においては第2号に掲げる事項について説明をするようにしなければならない。
    一 営業保証金を供託した主たる事務所の最寄りの供託所及びその所在地
    二 社員である旨、当該一般社団法人の名称、住所及び事務所の所在地並びに第64条の7第2項の供託所及びその所在地

    一読して長いのは、保証協会の社員かどうかで説明事項を場合分けしているからです。骨格だけを取り出すと、「宅建業者は、相手方等に対して、契約が成立するまでの間に、供託所等について説明をするようにしなければならない」となります。ここから読み取るべき要素は五つです。義務を負うのは宅建業者であること。相手方は「宅地建物取引業者の相手方等」であって、そこから宅建業者が除かれていること。時期は契約が成立するまでの間であること。説明事項は社員か否かで切り替わること。そして文末が「しなければならない」ではなく「するようにしなければならない」であることです。

    「するようにしなければならない」の意味

    法令用語として「するようにしなければならない」は、努力義務を表す言い回しです。結果として説明が行われることまでを義務づけるのではなく、説明するよう努めることを求める規定です。35条1項の重要事項説明は「交付して説明をさせなければならない」、37条の書面交付は「交付しなければならない」と、いずれも結果を義務づける形で書かれています。35条の2だけが一段弱い書き方になっているという事実そのものが、この規定の性格を示しています。

    なぜ弱いのかは、義務の中身を見れば見当がつきます。供託所の名称と所在地は宅建業者側の情報であって、取引物件の内容とは関係がありません。物件の瑕疵や法令上の制限のように、知らなければ取引の判断を誤る事項とは性質が違い、万一の場合に備えて知っておくと役立つ情報にとどまります。だからこそ、宅建士による説明も書面の交付も要求されず、義務の強さも一段落とされているのだと理解できます。

    説明の相手方は「宅地建物取引業者の相手方等」

    「宅地建物取引業者の相手方等」は、法35条1項が定義している用語です。同項は「宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)」と定めています。つまり、自ら当事者として取引する場合の相手方、代理を依頼してきた依頼者、媒介をする場合の各当事者の三つを束ねた概念です。

    ここが35条の重要事項説明との重要な分かれ目になります。35条1項は、この「相手方等」に対して、さらに「その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し」と限定を加えています。つまり実際に説明を受けるのは買主側・借主側だけで、売主や貸主は対象外です。ところが35条の2にはこの限定がありません。「相手方等」に対して説明するよう努めればよいのですから、媒介における売主も貸主も対象に入ります。供託所の情報は、その業者と取引をする者すべてにとって意味を持つ情報だからです。売主から媒介手数料を受け取る取引で売主に損害が生じることもありうる以上、説明の相手を買主側に絞る理由がありません。

    説明の時期は契約が成立するまでの間

    時期の定めは「当該売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に」です。これは35条1項の重要事項説明と同じ表現で、契約成立の前であればいつでもよく、直前でも構いません。逆に、契約が成立してしまった後に説明しても義務を果たしたことにはなりません。37条書面が「契約が成立したときは遅滞なく」交付するものであるのと、時間軸がちょうど逆になります。この時間軸の対比は35条書面と37条書面の違いでも扱っていますが、供託所等の説明は35条側、つまり契約前の情報提供のグループに属する、と位置づけておくのが理解の近道です。

    何を説明するのか

    保証協会の社員でない場合(1号)

    営業保証金を自ら供託している宅建業者、つまり保証協会に加入していない業者が説明するのは、「営業保証金を供託した主たる事務所の最寄りの供託所及びその所在地」の一点だけです。名称と所在地であって、供託した金額を説明する必要はありません。何円供託しているかは事務所の数から機械的に決まる話であり、還付を請求する相手方にとって必要なのは「どこへ行けばよいか」だからです。

    条文が「主たる事務所の最寄りの供託所」と書いていることにも意味があります。営業保証金は支店の分も含めてすべて主たる事務所の最寄りの供託所にまとめて供託するのであって(法25条1項)、支店ごとに近くの供託所へ分散するのではありません。したがって支店で契約する場合でも、説明する供託所は本店の最寄りの供託所です。「従たる事務所で契約するときは当該従たる事務所の最寄りの供託所を説明する」といった選択肢が定番です。

    保証協会の社員である場合(2号)

    保証協会に加入している業者が説明すべき事項は四つに分解できます。第一に、その保証協会の社員である旨。第二に、当該保証協会の名称。第三に、当該保証協会の住所および事務所の所在地。第四に、法64条の7第2項の供託所およびその所在地です。

    説明事項が増えるのは、お金の流れに一段階クッションが入るからです。社員である業者は供託所に直接お金を預けているわけではありません。保証協会に弁済業務保証金分担金を納め、保証協会がそれを弁済業務保証金として供託所に供託します。相手方から見れば、還付を受けるにはまず保証協会の認証を受ける必要があるため、供託所だけを知らされても手続きに入れません。そこで、認証の窓口となる保証協会そのものの情報が説明事項に加わっています。制度の手続きの流れが、そのまま説明事項の一覧になっているわけです。

    なお、2号が指す「第64条の7第2項の供託所」とは、法務大臣および国土交通大臣が定める供託所のことです。現に指定されているのは東京法務局で、国土交通省の告示によって定められています。したがって、社員である業者は全国どこに事務所があっても、説明する供託所は東京法務局ということになります。営業保証金の場合は業者ごとに供託所が異なるのに対し、弁済業務保証金の場合は全社員に共通である、という違いが生じます。

    弁済業務開始日という条文上の場合分け

    条文をもう一度見ると、社員である場合について「弁済業務開始日前においては第1号及び第2号」「弁済業務開始日以後においては第2号」と、さらに細かい場合分けがあります。弁済業務開始日とは、保証協会が弁済業務を開始する日として国土交通大臣が指定する日のことで、法64条の8第1項に根拠があります。保証協会が指定を受けた直後、まだ弁済業務が動き出していない移行期には、営業保証金と弁済業務保証金の両方の情報が意味を持つため、1号と2号の両方を説明することとされていました。

    現在は二つの保証協会がいずれも古くから弁済業務を行っており、この移行期の規定が実際に問題となる場面はありません。学習上は、社員である業者は2号の事項を説明すると単純化して構いませんが、条文にこの場合分けがあること自体を知っておくと、条文を読んだときに面食らわずに済みます。

    説明事項の要点

    • 社員でない業者は、営業保証金を供託した主たる事務所の最寄りの供託所とその所在地のみ。
    • 社員である業者は、社員である旨、保証協会の名称・住所・事務所の所在地、供託所とその所在地。
    • いずれの場合も、供託している金額そのものは説明事項ではない。
    • 社員が説明する供託所は、法務大臣および国土交通大臣が定める供託所(東京法務局)である。

    なぜ説明させるのか

    還付先を知らなければ制度は動かない

    営業保証金も弁済業務保証金も、宅建業者と取引をした者が損害を受けたときに、そこから弁済を受けられるようにしておく制度です。ところが、この二つの制度はいずれも、権利者の側から請求して初めて動きます。供託所が自動的に被害者を探して支払ってくれるわけではありません。したがって、取引の相手方が「どこに供託されているのか」「誰に認証を求めればよいのか」を知らないままでは、制度は紙の上のものになってしまいます。

    35条の2は、この情報のギャップを埋めるために置かれた規定です。制度そのものは25条以下と64条の7以下で作られており、35条の2はその制度を使えるようにするための情報提供義務にすぎません。この位置づけを理解しておけば、営業保証金なら供託所だけでよく保証協会なら協会の情報も要るという差が、還付を受けるための手続きの差そのものだと見えてきます。

    相手方が宅建業者であるときに義務がない理由

    35条の2の柱書には「宅地建物取引業者に該当する者を除く」というかっこ書があります。つまり、取引の相手方が宅建業者である場合、供託所等の説明義務はそもそも発生しません。ここを「業者間取引でも説明は必要」と覚えていると、そのまま失点につながります。

    この除外は、営業保証金と弁済業務保証金の還付を受けられる者の範囲と対応しています。法27条1項は「宅地建物取引業者と宅地建物取引業に関し取引をした者(宅地建物取引業者に該当する者を除く。)は、その取引により生じた債権に関し、宅地建物取引業者が供託した営業保証金について、その債権の弁済を受ける権利を有する」と定めており、還付請求権者から宅建業者が除かれています。弁済業務保証金についても法64条の8第1項に同様の除外があります。還付を受けられない者に対して、還付先を説明させても意味がありません。義務を課す実益がないから外した、という筋の通った除外です。

    したがって、この論点は「35条の2のかっこ書」として単独で暗記するのではなく、「還付を受けられない者には説明しなくてよい」という一本の理屈で覚えるのが確実です。還付請求権者の範囲は営業保証金と弁済業務保証金の違いで詳しく扱っています。

    なお、この除外の仕方は35条の重要事項説明とは構造が違います。35条は業者間取引でも義務そのものは残り、6項の読替えによって説明が不要になるだけで、書面の交付と宅建士の記名は残ります。一方35条の2は、義務の対象からそもそも外れます。「業者間だと軽くなる」という点は共通していても、軽くなり方が違うわけです。

    説明が努力義務にとどまる理由

    先に触れたとおり、35条の2は努力義務です。制度を使えるようにするための情報提供であって取引判断の材料ではないこと、そして相手方が知ろうと思えば免許権者の備える宅地建物取引業者名簿からも確認できることが、義務の強さを一段落とす理由として整理できます。名簿には保証協会の社員である場合はその旨や協会の名称などが登載され、一般の閲覧に供されます(法8条、法10条)。説明義務は情報への唯一の経路ではないわけです。名簿制度の全体像は宅建業の免許制度で整理しています。

    土台となる営業保証金制度

    説明義務の内容を丸暗記せずに導けるようにするため、二つの供託制度を必要な範囲で通しておきます。細部は営業保証金と弁済業務保証金の違いに譲り、ここでは35条の2を読むために要る骨格に絞ります。

    供託の場所と額

    宅建業者は、営業保証金を主たる事務所の最寄りの供託所に供託しなければなりません(法25条1項)。額は政令で定められ、主たる事務所につき1,000万円、その他の事務所につき1事務所あたり500万円です。本店1か所と支店3か所であれば、1,000万円に1,500万円を加えた2,500万円を、すべて本店の最寄りの供託所にまとめて供託します。支店を新設したときは、その分を供託して届け出た後でなければ、新設した事務所で事業を開始できません(法26条)。事務所の意味そのものについては宅建業の事務所の要件を参照してください。

    供託物

    供託は金銭に限られません。法25条3項は、国債証券、地方債証券その他の国土交通省令で定める有価証券をもって充てることができると定めています。評価額は券種によって異なり、国債証券は額面金額どおり、地方債証券および政府保証債は額面金額の90パーセント、その他の一定の有価証券は額面金額の80パーセントで評価されます。金銭と有価証券を組み合わせることもできます。この供託物の違いは、後で述べる保管替えの可否に効いてきます。

    供託しただけでは営業できない

    供託の手順は、免許を受ける、供託する、供託した旨を免許権者に届け出る、事業を開始する、という順序です。法25条4項が届出を定め、同条5項が「前項の規定による届出をした後でなければ、その事業を開始してはならない」と明記しています。免許を受けた時点ではまだ営業できない、という点が繰り返し問われます。

    さらに、免許権者は免許をした日から3月以内に届出がないときは届出をすべき旨の催告をしなければならず(法25条6項)、催告が到達した日から1月以内に届出がないときは免許を取り消すことができます(同条7項)。「3月以内の催告は義務、その後の免許取消しは任意」という強弱の違いが、この二項の対比の要点です。

    還付と不足額の供託

    宅建業者と宅建業に関し取引をした者(宅建業者に該当する者を除く)は、その取引により生じた債権について、営業保証金から弁済を受ける権利を有します(法27条1項)。還付が行われると供託額が政令の額を下回るため、宅建業者は法務省令・国土交通省令で定める日から2週間以内に不足額を供託し(法28条1項)、供託したときは供託書の写しを添えて2週間以内にその旨を免許権者に届け出なければなりません(同条2項)。二つの2週間が並ぶ形になっています。

    取戻しと保管替え

    免許が失効した、事務所を減らして供託額が過大になったなど、営業保証金を取り戻せる事由が生じたときでも、すぐに引き揚げられるわけではありません。法30条2項は、6月を下らない一定期間内に還付を受ける権利を有する者が申し出るべき旨を公告し、その期間内に申出がなかった場合でなければ取り戻せないとしています。ただし、主たる事務所の移転にともなって新たな供託所に供託した場合の取戻しや、取戻し事由が発生した時から10年を経過したときは、この公告が不要になります。

    主たる事務所を移転して最寄りの供託所が変わったときの処理は、供託物によって分かれます。金銭のみで供託しているときは、供託した供託所に対して保管替えを請求します。有価証券が含まれているときは保管替えができないため、移転後の最寄りの供託所に新たに供託したうえで、従前の供託所から取り戻すという二段構えになります。有価証券は現物の移送を伴うため単純な帳簿上の付け替えができない、と理解しておくと忘れにくくなります。

    土台となる保証協会(弁済業務保証金)制度

    営業保証金の額は、本店だけでも1,000万円です。開業時にこれを用意できる事業者は多くありません。そこで用意されているのが保証協会の制度です。仕組みの全体は保証協会の仕組みで扱いますが、ここでも35条の2に必要な範囲を通しておきます。

    分担金の額と納付の時期

    保証協会に加入しようとする者は、弁済業務保証金分担金を納付します。額は主たる事務所につき60万円、その他の事務所につき1事務所あたり30万円です。営業保証金と比べると、本店で1,000万円が60万円に、支店で500万円が30万円になりますから、いずれも約17分の1という水準です。

    納付の時期は、加入しようとする日までです(法64条の9第1項1号)。加入後に新たに事務所を設置したときは、設置した日から2週間以内に納付しなければならず(同条2項)、この期間内に納付しないときは社員の地位を失います(同条3項)。営業保証金の場合は「供託して届け出るまで新事務所で営業できない」という形で縛られるのに対し、保証協会の場合は「2週間以内に納めないと社員でなくなる」という形で縛られる点が対照的です。

    供託するのは保証協会である

    分担金を受け取った保証協会は、その日から1週間以内に、納付を受けた額に相当する額の弁済業務保証金を供託しなければなりません(法64条の7第1項)。供託先は、法務大臣および国土交通大臣が定める供託所です(同条2項)。ここが35条の2第2号の「第64条の7第2項の供託所」に当たります。

    つまり、社員である業者は供託所に対して何もしていません。お金は業者から保証協会へ、保証協会から供託所へと二段階で流れます。説明事項に保証協会の情報が入るのは、この二段階構造をそのまま反映したものです。

    還付の限度額

    社員と宅建業に関し取引をした者(宅建業者に該当する者を除く)は、弁済業務保証金から弁済を受ける権利を有します。ここで最も重要なのが限度額です。法64条の8第1項は、その額を「当該社員が社員でないとしたならばその者が供託すべき第25条第2項の政令で定める営業保証金の額に相当する額の範囲内」と定めています。

    本店のみの社員であれば、納めた分担金は60万円ですが、還付の限度額は営業保証金相当額である1,000万円です。60万円が上限になるわけではありません。ここは制度の趣旨が最もよく表れている部分で、業者の負担を軽くしつつ、取引の相手方の保護水準は営業保証金の場合と同じに保つ、という設計になっています。試験でも「還付の限度額は納付した分担金の額である」という誤りの選択肢が定番です。

    また、権利を実行しようとする者は、弁済を受けることができる額について保証協会の認証を受けなければなりません(法64条の8第2項)。営業保証金の還付にはこの認証の手続きがありません。35条の2第2号で保証協会の名称や事務所の所在地まで説明させるのは、この認証窓口を知らせるためだと考えると、条文が読みやすくなります。

    還付充当金と社員の地位

    還付が行われると、保証協会が供託している弁済業務保証金が不足します。保証協会は還付額に相当する額を再び供託する義務を負い(法64条の8第3項)、そのうえで、原因を作った社員に対して還付充当金を納付すべき旨を通知します。社員は通知を受けた日から2週間以内に還付充当金を納付しなければならず、この期間内に納付しないときは社員の地位を失います(法64条の10)。

    そして、社員の地位を失った者は、その日から1週間以内に営業保証金を供託しなければなりません(法64条の15)。分担金を納めることで免除されていた営業保証金の供託義務が、社員でなくなった瞬間に復活する、という構造です。この1週間という期間は、宅建業法の中でも特に短い部類に入るため、宅建業法の数字まとめでもよく取り上げられます。

    供託所等の説明義務との関係で言えば、社員の地位を失った業者は、その後の取引では35条の2第1号の事項、すなわち自ら供託した営業保証金の供託所を説明することになります。説明事項が入れ替わるわけです。

    二つの制度の違いは説明内容にどう表れるか

    比較の軸を立てて、両制度の差が説明義務の内容にどう跳ね返るかを見ていきます。

    供託している主体が違う

    営業保証金は宅建業者自身が供託します。弁済業務保証金は保証協会が供託します。業者が納めるのはあくまで分担金であって、弁済業務保証金そのものではありません。この主体の違いがあるために、社員である業者は「自分がどこに供託したか」を説明できません。代わりに「自分はどの協会の社員で、その協会がどこに供託しているか」を説明することになります。35条の2第2号が「社員である旨」から始まっているのは、まずこの立場を明かさなければ後の情報が意味を持たないからです。

    供託所が違う

    営業保証金の供託所は、その業者の主たる事務所の最寄りの供託所です。したがって業者ごとに異なります。弁済業務保証金の供託所は、法務大臣および国土交通大臣が定める供託所、実際には東京法務局であり、全国の社員に共通です。「供託所の名称と所在地を説明する」という行為自体は共通でも、答えの中身の決まり方がまったく違います。

    説明する項目の数が違う

    社員でない業者は1項目、社員である業者は実質4項目です。この非対称は、還付を受けるまでの手続きの段数に対応しています。営業保証金なら供託所へ直接、弁済業務保証金なら保証協会の認証を経てから供託所へ。段数が多い分だけ、知らせるべきことも多くなります。

    金額が違っても保護水準は変わらない

    供託される額は、営業保証金なら本店1,000万円、弁済業務保証金なら本店分の分担金60万円に対応する額です。しかし還付の限度額は、いずれの場合も営業保証金相当額です。相手方から見れば、取引相手が社員かどうかで受けられる保護の上限は変わりません。この点は説明事項そのものには現れませんが、「なぜ社員かどうかを説明させるのか」の答えでもあります。保護の上限が同じでも、たどる手続きが違うからです。

    この節の要点

    • 供託の主体が違うから、社員は「協会の社員である旨」から説明が始まる。
    • 供託所は、営業保証金なら業者ごと、弁済業務保証金なら全社員共通で東京法務局。
    • 説明項目の数の差は、還付手続きの段数の差に対応している。
    • 還付の限度額は、社員であっても営業保証金相当額で変わらない。

    35条の重要事項説明との違い

    供託所等の説明が試験で狙われる最大の理由は、35条の重要事項説明と名前も時期も似ているのに、要件がほとんど逆だからです。軸ごとに押さえます。

    説明をする人

    35条1項は、宅建業者が「宅地建物取引士をして」説明をさせなければならないと定めています。説明する行為者は宅建士でなければなりません。これに対し35条の2には、宅建士に説明させるという文言がありません。したがって、供託所等の説明は宅建士でない従業者が行っても差し支えありません。宅建士に留保された事務の範囲については宅建業者と宅建士の義務の違いで整理しています。

    書面の交付

    35条は「これらの事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならない」と、書面の交付を義務の内容に組み込んでいます。35条の2にはこの部分がありません。口頭のみの説明でも、条文上は義務を果たしたことになります。書面交付義務がないことの帰結として、35条の2には電磁的方法による提供の規定も置かれていません。35条書面については法35条8項が承諾を得たうえでの電磁的方法による提供を認めていますが、そもそも交付すべき書面がなければ、代替手段を定める必要もないという理屈です。オンラインでの重要事項説明については重要事項説明のIT化を参照してください。

    宅地建物取引士証の提示

    法35条4項は、宅建士が重要事項の説明をするときは、説明の相手方に対して宅地建物取引士証を提示しなければならないと定めています。相手方から請求がなくても提示が必要で、怠れば10万円以下の過料の対象です(法86条)。35条の2の説明にはこの提示義務がありません。そもそも宅建士が説明する必要がないのですから、提示義務が生じる余地もありません。

    記名

    35条書面には宅建士が記名しなければなりません(法35条5項)。2021年の改正で押印は不要となり、記名のみでよくなっています。35条の2には交付すべき書面自体がないため、記名の問題も生じません。

    説明の相手方の範囲

    先に述べたとおり、35条1項は「その者が取得し、又は借りようとしている」という限定があるため、実際の相手方は買主側・借主側です。35条の2にはこの限定がなく、相手方等一般が対象です。売主や貸主にも説明する、という点だけを取り出すと、35条の2のほうが広いことになります。

    業者間取引での扱い

    35条は、相手方等が宅建業者であるときも義務そのものは残ります。法35条6項が1項を読み替え、「交付して説明をさせなければ」を「交付しなければ」とし、あわせて4項・5項の適用を外します。つまり説明と士証の提示が不要になるだけで、書面の交付義務は残り、7項によって宅建士の記名義務も残ります。これに対し35条の2は、柱書のかっこ書によって相手方から宅建業者が除かれているため、義務が発生しません。「業者間では説明不要」という結論だけを見ると同じに見えますが、条文上の仕組みは別物です。

    義務の強さ

    35条は結果を義務づける規定であり、違反すれば監督処分の対象となるほか、書面の不交付や不実記載には罰則も用意されています。35条の2は努力義務であり、この規定に対応する罰則はありません。義務の性質が違うことは、違反の効果の違いに直結します。

    実務での運用

    実務では、供託所等の説明は重要事項説明の場面であわせて行われるのが一般的で、国土交通省が示す重要事項説明書の様式にも供託所等に関する説明の欄が設けられています。ただしこれは運用にすぎず、35条書面に記載したからといって二つの義務が一つになるわけではありません。試験で問われるのは運用ではなく条文の建て付けです。35条書面の記載事項そのものは35条書面の覚え方で整理しています。

    違反の効果と、紛らわしい説明義務との区別

    罰則はない

    35条の2に違反したことに対する罰則は、宅建業法に定められていません。書面の不交付が50万円以下の罰金の対象となる35条や37条とは異なります。宅建業法の罰則の全体像は宅建業法の罰則一覧で確認できます。

    監督処分については

    監督処分については、法65条1項が、宅建業者がこの法律の規定に違反した場合に必要な指示をすることができると定めています。供託所等の説明を怠ったことがこれに該当すると整理されることはありますが、努力義務である以上、単に説明しなかったというだけで処分に至る例は考えにくいところです。試験対策としては「罰則の規定はない」を確実に押さえ、深入りしないのが得策です。監督処分の体系は監督処分の違いで扱っています。

    住宅瑕疵担保履行法15条の説明との区別

    供託所の説明という点で紛らわしいのが、特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律15条です。同条は、住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしている宅建業者が、自ら売主となる新築住宅の買主に対し、その売買契約を締結するまでに、供託所の所在地その他国土交通省令で定める事項を記載した書面を交付して説明しなければならないと定めています。

    宅建業法35条の2と並べると、時期はどちらも契約前で共通ですが、こちらは「書面を交付して説明しなければならない」であり、努力義務ではなく書面の交付も必要です。対象も自ら売主となる新築住宅の売買に限られます。同じ「供託所の説明」でも要件が正反対に近いため、どちらの話かを取り違えないようにしてください。新築住宅の売主の資力確保措置は手付金等の保全措置と並べて整理しておくと混線しにくくなります。

    試験での出題ポイント

    宅建士の関与を問う形

    最も多いのが、供託所等の説明を宅建士がしなければならないか、宅建士証の提示が要るか、という問い方です。いずれも不要です。「専任の宅地建物取引士をして説明させなければならない」という形で、専任性まで盛り込んだ選択肢が作られることもありますが、宅建士すら要らない以上、専任かどうかは検討するまでもありません。

    書面の要否を問う形

    「書面を交付して説明しなければならない」「相手方の承諾を得れば電磁的方法により提供できる」といった選択肢が出ます。書面の交付義務がないのですから、いずれも誤りです。ただし住宅瑕疵担保履行法15条の説明については書面の交付が必要なので、問題文がどちらの説明を指しているのかを最初に確定させる必要があります。

    説明事項の中身を問う形

    社員である業者について、供託所の情報だけを説明すればよいとする選択肢、逆に社員でない業者について保証協会の情報まで求める選択肢が典型です。また、営業保証金の額や分担金の額を説明事項に含める選択肢も見かけますが、金額は説明事項ではありません。

    相手方が宅建業者である場合

    かっこ書によって義務が生じないという点は、2018年以降の改正を反映した論点として問われます。「相手方が宅建業者であっても供託所等の説明をしなければならない」という選択肢は誤りです。同じ問題の中で、37条書面の交付義務は業者間でも省略できない、媒介契約に基づく申込みの報告義務も業者間で省略できない、といった記述が並べられ、どれが業者間で不要になるのかを識別させる出題形式が使われます。

    時期を問う形

    「契約が成立するまでの間」が正解です。「契約締結後遅滞なく」「重要事項説明と同時に」といった選択肢は誤りです。同時である必要はなく、契約成立前であればよい、という点を押さえてください。

    供託所そのものと制度側の数字を問う形

    営業保証金の供託所は主たる事務所の最寄りの供託所、弁済業務保証金の供託所は法務大臣および国土交通大臣が定める供託所である、という基本が、説明義務の設問に紛れ込む形で問われます。「従たる事務所の最寄りの供託所」「各社員が任意に定める供託所」といった記述は誤りです。同じ問題の中で供託額、分担金の額、還付の限度額、還付充当金の納付期限などが問われることもあり、とくに還付の限度額を分担金の額と取り違えさせる選択肢は繰り返し登場します。頻出論点の優先順位は宅建業法の頻出論点ランキングを参考にしてください。

    覚え方・整理の仕方

    「三つの不要」で35条と切り分ける

    供託所等の説明について不要なものを三つ並べます。宅建士による説明、書面の交付、宅地建物取引士証の提示。この「三つの不要」を、35条の重要事項説明が三つとも必要であることと対にして覚えます。必要なものは「契約成立前という時期」だけだと押さえれば、時期以外はすべて緩いという単純な形になります。

    説明事項は手続きの順路で思い出す

    社員である業者の説明事項を四つ丸暗記しようとすると抜けます。代わりに、還付を受ける人の動線をたどってください。まず、この業者は協会に入っているのか(社員である旨)。入っているならどの協会か(名称)。その協会はどこにあるのか(住所・事務所の所在地)。認証を受けたあとどこへ行くのか(供託所とその所在地)。この順路がそのまま条文の並び順です。

    数字は「営業保証金の17分の1」でまとめる

    供託額と分担金は、1,000万円と60万円、500万円と30万円の二組です。どちらも約17分の1で、比率が揃っています。片方を覚えればもう片方が出せる関係なので、1,000万円と500万円を先に固め、そこから60万円と30万円を引き出すのが安全です。そして、額が17分の1でも還付の限度額は営業保証金相当額のまま、という一文を必ずセットで思い出すようにします。

    期間は「保証協会は短い」で寄せる

    営業保証金側の期間は2週間が中心です。不足額の供託が2週間、その届出が2週間。保証協会側は短い期間が並びます。協会の供託が1週間、社員の地位を失った後の営業保証金の供託が1週間。還付充当金の納付だけが2週間です。「協会がらみは1週間、ただし還付充当金は2週間」という形で覚えると、選択肢を見たときに違和感を持てます。

    業者間は「還付できない相手には説明しない」

    35条の2のかっこ書は、条文の位置で覚えるより、理屈で覚えるほうが定着します。宅建業者は営業保証金からも弁済業務保証金からも還付を受けられません(法27条1項、法64条の8第1項)。還付を受けられない相手に還付先を教える必要はない。だから説明義務の相手方から外れている。この一本の線でつながります。

    判断の手順

    問題文を読んだら、次の順に切っていくと迷いません。第一に、これは宅建業法35条の2の話か、住宅瑕疵担保履行法15条の話か。第二に、相手方は宅建業者か否か。宅建業者なら義務なしで終わりです。第三に、その業者は保証協会の社員か否か。社員でなければ供託所だけ、社員なら協会の情報も要ります。第四に、宅建士・書面・士証を要求する記述が混ざっていないか。混ざっていれば誤りです。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 宅地建物取引業者は、取引の相手方が宅地建物取引業者である場合であっても、供託所等に関する説明をしなければならない。(○か×か)

    答えを見る×:法35条の2の柱書は説明の相手方を「宅地建物取引業者の相手方等(宅地建物取引業者に該当する者を除く。)」と定めており、相手方が宅建業者であるときは説明義務そのものが生じません。宅建業者は営業保証金からも弁済業務保証金からも還付を受けられないため(法27条1項、法64条の8第1項)、還付先を知らせる実益がないからです。35条の重要事項説明が、業者間でも書面の交付義務と宅建士の記名義務を残したまま説明だけを不要とする(法35条6項・7項)のとは、仕組みが異なります。

    Q2. 供託所等に関する説明は、宅地建物取引士が宅地建物取引士証を提示して行わなければならない。(○か×か)

    答えを見る×:法35条の2には、宅建士に説明させるという文言も、士証の提示を求める文言もありません。士証の提示義務は法35条4項が重要事項の説明について定めるもので、供託所等の説明には及びません。したがって、宅建士でない従業者が説明しても差し支えありません。

    Q3. 保証協会の社員である宅地建物取引業者は、社員である旨、当該保証協会の名称・住所・事務所の所在地に加えて、保証協会が弁済業務保証金を供託している供託所とその所在地を説明するよう努めなければならない。(○か×か)

    答えを見る○:法35条の2第2号がそのとおり定めています。社員である業者は自ら供託所に供託しているわけではなく、還付を受けようとする者はまず保証協会の認証を受ける必要がある(法64条の8第2項)ため、認証の窓口である協会の情報が説明事項に加わります。供託所は法64条の7第2項の定めにより法務大臣および国土交通大臣が定める供託所で、現に指定されているのは東京法務局です。

    Q4. 供託所等に関する説明においては、営業保証金として供託している金額または納付した弁済業務保証金分担金の額も説明しなければならない。(○か×か)

    答えを見る×:法35条の2第1号・第2号が挙げているのは供託所や保証協会の名称・所在地であり、金額は説明事項に含まれていません。還付を請求する者にとって必要なのは請求先の情報であって、供託額そのものではないためです。なお、保証協会の社員に対する還付の限度額は納付した分担金の額ではなく、その者が社員でないとしたならば供託すべき営業保証金の額に相当する額です(法64条の8第1項)。

    Q5. 供託所等に関する説明を怠った宅地建物取引業者は、50万円以下の罰金に処せられる。(○か×か)

    答えを見る×:法35条の2の違反に対する罰則は宅建業法に置かれていません。同条は「説明をするようにしなければならない」という努力義務の形で定められています。書面の不交付等に罰金が科されるのは35条書面や37条書面についての規定であり、供託所等の説明には対応する罰則がありません。

    まとめ

    供託所等に関する説明義務は、条文としては短いものの、その内容は営業保証金制度と保証協会制度の構造をそのまま映しています。押さえるべき点を整理します。

    第一に、法35条の2は努力義務です。宅建士による説明も、書面の交付も、宅地建物取引士証の提示も求められていません。求められているのは「契約が成立するまでの間に」という時期だけであり、この一点において35条の重要事項説明と共通し、それ以外の点ではほぼすべて緩やかです。

    第二に、説明事項は保証協会の社員かどうかで切り替わります。社員でなければ、営業保証金を供託した主たる事務所の最寄りの供託所とその所在地。社員であれば、社員である旨、協会の名称・住所・事務所の所在地、そして協会が供託している供託所とその所在地です。この差は、還付を受けるまでの手続きの段数の差に対応しています。

    第三に、相手方が宅建業者であるときは義務そのものが生じません。宅建業者が還付を受けられないことと表裏の関係にあり、35条が業者間でも書面交付義務を残すのとは仕組みが違います。この三点を、営業保証金の1,000万円と500万円、分担金の60万円と30万円、還付の限度額は営業保証金相当額、という数字とあわせて固めれば十分です。

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    宅建業法は20問と配点が最も大きく、確実に得点したい科目です。免許制度・重要事項説明・8種制限を肢別で固めましょう。

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