宅建試験AIブートラボ 宅建試験AIブートラボ

借地借家法の全体像|適用範囲と借地・借家

権利関係 読了 約25分

借地借家法を条文の構造から整理。適用される契約とされない契約の判定、借地権の存続期間と更新、対抗要件と判例、建物買取請求権、借家の更新拒絶と解約までを解説します。

目次

    この記事は、借地借家法という特別法が何にどう働くのかを、条文の構造に沿って整理するものです。民法の賃貸借の一般則は民法の賃貸借で扱うので繰り返しません。数字の一覧は借地借家法の数字、定期建物賃貸借の詳細は定期借家がそれぞれ担当します。権利関係全体での位置づけは権利関係の全体像を参照してください。

    結論を先に述べます。借地借家法の問題は、まず「この契約に借地借家法が適用されるか」を判定するところから始まります。適用されなければ民法の原則で処理し、適用されれば存続期間も更新も対抗要件も全部変わります。この一手を飛ばして数字だけを覚えると、駐車場の土地賃貸借に30年を当てはめるような誤りが起きます。以下、適用範囲の判定、借地、借家の順に条文をたどります。

    借地借家法はどの契約に適用されるか

    適用対象は2つしかない

    借地借家法が適用されるのは2つです。ひとつが借地権、もうひとつが建物の賃貸借です。

    借地権について、借地借家法2条1号は「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう」と定義しています。この定義に3つの条件が入っています。対象が土地であること。権利が地上権または賃借権であること。そして目的が建物の所有であること。

    3つ目が判定の要になります。土地を借りていても、そこに建物を建てて所有するためでなければ借地権にあたりません。地上権と賃借権の違いそのものは用益物権で扱っています。

    建物の賃貸借については、借地借家法が定義規定を置いていません。第3章の各条文が「建物の賃貸借」を対象として規定しているだけです。したがって建物を借りる契約であれば、住居でも店舗でも倉庫でも、原則として借地借家法が適用されます。

    適用されない典型を先に押さえる

    適用されない場面を先に覚えておくと、判定が速くなります。

    駐車場として土地を借りる契約は、建物の所有を目的としていないので借地権にあたりません。資材置場、看板の設置場所、屋外の運動場なども同じです。これらは民法の賃貸借の規定だけで処理するので、存続期間の上限は50年(民法604条1項)、更新に正当の事由は不要、対抗要件は賃借権の登記のみになります。

    一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合には、借地借家法25条により、存続期間、更新、建物買取請求権、借地条件の変更、定期借地権に関する規定が適用されません。建物の賃貸借についても、一時使用のために建物の賃貸借をしたことが明らかな場合には、40条により第3章の規定が適用されません。工事期間中の仮設事務所のような場面を想定した規定です。

    そして使用貸借には適用がありません。借地借家法が対象とするのは地上権と賃借権であり、無償で借りる使用貸借はそもそも対象外です。使用貸借の仕組みは使用貸借で扱っています。親の土地を無償で借りて家を建てても、借地借家法の保護は受けられないということです。

    片面的強行規定という構造

    適用されると何が起きるのかを、条文の構造として押さえておきます。借地借家法の主要な規定は片面的強行規定です。借主に不利な特約は無効になり、借主に有利な特約は有効なままです。

    借地については、借地借家法9条が3条から8条までの規定に反する特約で借地権者に不利なものを無効とし、16条が10条、13条、14条について同様に定めています。借家については、30条が26条から29条までの規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものを無効とし、37条が31条、34条、35条について同様に定めています。

    この構造を知っていると、条文を全部覚えていなくても答えが出ます。「借地の存続期間を20年とする特約」は、3条が30年としているところを借地権者に不利に変える特約なので、9条により無効です。一方「存続期間を40年とする特約」は借地権者に有利なので有効です。

    そして37条の列挙に33条が入っていない、という一点が後で効いてきます。造作買取請求権を排除する特約が有効になるのは、この列挙漏れによるものです。

    借地権の存続期間と更新

    当初は30年

    借地借家法3条は「借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする」と定めています。

    条文の書き方に注意が必要です。原則が30年で、より長い定めだけが例外として認められています。30年より短い期間を定めた場合、その特約は9条により無効となり、本文に戻って30年になります。期間の定めをまったく置かなかった場合も30年です。

    建物の構造による区別はありません。旧借地法には堅固建物と非堅固建物で期間を分ける仕組みがありましたが、現行の借地借家法にはその区別がなく、一律30年です。

    更新後は20年、その後は10年

    借地借家法4条は、当事者が借地契約を更新する場合においては、その期間は更新の日から10年とし、借地権の設定後の最初の更新にあっては20年とすると定めています。ただし当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間によります。

    当初30年、最初の更新後20年、2回目以降の更新後10年。この階段は借地の学習の骨格です。細かい数字の整理は借地借家法の数字に集約しています。

    法定更新には2つの入口がある

    合意で更新するのは当然として、借地借家法は合意がなくても更新される仕組みを2つ置いています。

    ひとつが更新請求です。5条1項は、借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなすとしています。ただし借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りではありません。

    もうひとつが土地使用の継続です。5条2項は、借地権の存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するときも、建物がある場合に限り、同様とするとしています。

    いずれも「建物がある場合に限り」という条件が付いています。借地権は建物の所有を目的とする権利なので、建物がなくなっていれば更新して保護する理由がありません。この条件は出題で外されることがあるので、条文の言葉として覚えておく必要があります。

    更新を拒むには正当の事由が要る

    借地権設定者が遅滞なく異議を述べれば更新されませんが、その異議には正当の事由が必要です。借地借家法6条は、異議は、借地権設定者および借地権者が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過および土地の利用状況、ならびに借地権設定者が土地の明渡しの条件としてまたは土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ述べることができないとしています。

    条文の並び方が判断の重みを表しています。中心にあるのは、双方が土地の使用を必要とする事情です。従前の経過と利用状況がそれに続き、財産上の給付、いわゆる立退料の申出は最後に「考慮して」と書かれています。

    したがって立退料は正当の事由を補完する要素であって、立退料さえ払えば必ず明渡しが認められるわけではありません。「相当額の立退料を支払えば正当の事由が認められる」という記述は、条文の構造に反します。

    建物が滅失したとき

    当初の存続期間中に建て直す場合

    借地の期間中に建物が焼失したり取り壊されたりすることがあります。借地借家法7条1項は、借地権の存続期間が満了する前に建物の滅失があった場合において、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、その建物を築造することにつき借地権設定者の承諾がある場合に限り、借地権は、承諾があった日または建物が築造された日のいずれか早い日から20年間存続すると定めています。

    承諾が要件になっている点が重要です。無断で建て直しても期間は延びません。もっとも7条2項が、借地権者が残存期間を超えて存続すべき建物を新たに築造する旨を通知した場合において、借地権設定者がその通知を受けた後2か月以内に異議を述べなかったときは、承諾があったものとみなすとしています。黙っていると承諾したことになる、という仕組みです。

    ただしこのみなし承諾は、契約の更新の後に建物が滅失した場合には適用されません。更新後は別の規律が働きます。

    更新後に建て直す場合

    借地借家法8条1項は、契約の更新の後に建物の滅失があったときは、借地権者は地上権の放棄または土地の賃貸借の解約の申入れをすることができると定めています。更新後の借地は残り期間が短いので、建物を失った借地権者に契約から抜ける道を用意しています。

    8条2項は逆方向の規定です。契約の更新の後に建物の滅失があった場合において、借地権者が借地権設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべき建物を築造したときは、借地権設定者は地上権の消滅請求または土地の賃貸借の解約の申入れをすることができます。

    そして8条3項が、これらの場合に借地権は、地上権の放棄、消滅請求または解約の申入れがあった日から3か月を経過することによって消滅すると定めています。

    更新前は「承諾があれば20年延びる」、更新後は「承諾がなければ3か月で消滅しうる」。同じ再築でも、更新の前後で向きが正反対になります。

    借地権の対抗要件

    借地上の建物の登記で足りる

    土地が第三者に売却されたとき、借地権者はどうやって自分の権利を主張するのか。民法605条の原則によれば賃借権の登記が必要ですが、賃貸人に登記へ協力する義務がないため、実際にはほとんど使えません。

    そこで借地借家法10条1項が、借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができると定めています。土地の登記ではなく、その上に建っている建物の登記で足りるということです。建物であれば借地権者が単独で表題登記と所有権保存登記を申請できるので、地主の協力なしに対抗力を備えられます。登記記録の仕組みは不動産登記の基礎登記簿の読み方で扱っています。

    建物の登記は借地権者名義でなければならない

    条文は「借地権者が登記されている建物を所有するとき」と書いています。ここから、建物の登記名義が借地権者自身でなければならないという帰結が出ます。

    最高裁大法廷昭和41年4月27日判決は、借地権者が同居の長男名義で建物の保存登記をしていた事案について、借地権の対抗力を否定しました。建物の所有者と登記名義人が一致していなければ、その登記は借地権者が建物を所有していることを公示していないから、というのが理由です。

    したがって、相続を見越して子の名義にしたり、配偶者の名義にしたりすると、対抗力を失います。実際の宅建試験でも、配偶者名義で登記された建物を前提に対抗できるかを問う出題があり、答えは対抗できないになります。対抗要件の細部は借地権の対抗要件で扱っています。

    建物が滅失した場合の掲示

    建物が滅失すると登記も失われるので、そのままでは対抗力がなくなります。借地借家法10条2項は、この場合において、借地権者が、その建物を特定するために必要な事項、その滅失があった日および建物を新たに築造する旨を土地の上の見やすい場所に掲示するときは、借地権はなお対抗力を有すると定めています。

    ただし但書があります。建物の滅失があった日から2年を経過した後にあっては、その前に建物を新たに築造し、かつ、その建物につき登記した場合に限られます。

    順序を正確に押さえる必要があります。掲示をすれば滅失の日から2年間は対抗力が続き、その2年の間に建物を新築して登記すれば、その後も対抗力が続きます。掲示をしなければ2年の猶予そのものが得られません。「2年以内に建て直せば対抗力を維持できる」という説明は、掲示という要件が抜けているので正確ではありません。

    建物買取請求権と借地非訟

    借地権者の建物買取請求権

    借地借家法13条1項は、借地権の存続期間が満了した場合において、契約の更新がないときは、借地権者は借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができると定めています。

    これは形成権です。借地権者が請求の意思表示をすれば、それだけで時価による売買契約が成立したのと同じ効果が生じ、借地権設定者の承諾は要りません。

    制度の趣旨は2つあります。ひとつは、まだ使える建物を取り壊させるのは社会経済的に無駄だということ。もうひとつは、更地に戻して返せという負担を借地権者に負わせないことです。そして16条により、これを排除する特約は借地権者に不利なものとして無効になります。

    なお、借地権者の債務不履行によって契約が解除された場合には、この請求権は認められません。条文が「存続期間が満了した場合において、契約の更新がないとき」という場面を指定しているからです。

    第三者の建物買取請求権

    借地借家法14条は、第三者が賃借権の目的である土地の上の建物その他借地権者が権原によって土地に附属させた物を取得した場合において、借地権設定者が賃借権の譲渡または転貸を承諾しないときは、その第三者は借地権設定者に対し、これらを時価で買い取るべきことを請求することができると定めています。

    建物を買った第三者が、地主に承諾してもらえずに借地権を得られなかった場面の救済です。13条が借地権者の権利であるのに対し、14条は建物を取得した第三者の権利という違いがあります。16条は14条についても不利な特約を無効としています。

    承諾が得られないときの裁判

    地主が承諾しない場合の道は、買取請求だけではありません。借地借家法は、裁判所が地主の承諾に代わる許可を与える手続を用意しています。

    19条1項は、借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得しても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者が承諾しないときは、裁判所は借地権者の申立てにより、承諾に代わる許可を与えることができると定めています。20条1項は、競売等により建物を取得した第三者についての同様の規定です。

    17条は借地条件の変更および増改築についての許可を定めています。土地の利用状況の変化などにより、建物の種類、構造、規模または用途を制限する借地条件を変更することが相当であるにもかかわらず当事者間で協議が調わないとき、裁判所が借地条件を変更できるという規定です。

    これらは借地非訟事件と呼ばれる手続で処理されます。民法612条が譲渡・転貸に賃貸人の承諾を要求していることの、借地における修正にあたります。譲渡・転貸の一般則は賃借権の譲渡と転貸で扱っています。

    定期借地権の3類型

    更新のない借地権という発想

    普通借地権は、正当の事由がなければ更新を拒めません。地主から見れば、一度貸したら半永久的に返ってこない可能性があります。この硬さが土地の供給を妨げるという問題意識から、更新のない借地権が3つ用意されました。

    3つの見分け方は、期間、方式、目的の3軸です。

    一般定期借地権(22条)

    存続期間を50年以上として借地権を設定する場合に、契約の更新がないこと、建物の築造による存続期間の延長がないこと、13条による買取りの請求をしないことを定めることができます。この3つの特約は、公正証書による等書面によってしなければなりません。

    「公正証書による等書面」という書き方が要点です。公正証書は例示であり、書面であれば足ります。なお、電磁的記録によってされたときは書面によってされたものとみなされます(22条2項)。

    事業用定期借地権等(23条)

    専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ存続期間を30年以上50年未満として設定する類型(1項)と、存続期間を10年以上30年未満として設定する類型(2項)があります。合わせて10年以上50年未満の範囲です。

    目的が絞られています。専ら事業の用に供する建物であり、居住の用に供するものは除かれます。社宅や賃貸マンションのように居住に使う建物は、事業として営んでいてもこの類型を使えません。

    そして23条3項が、これらの借地権の設定を目的とする契約は公正証書によってしなければならないと定めています。ここだけは書面では足りず、公正証書に限られます。3類型のなかで方式がもっとも厳格です。

    建物譲渡特約付借地権(24条)

    借地権を消滅させるため、その設定後30年以上を経過した日に借地上の建物を借地権設定者に相当の対価で譲渡する旨を定めることができます。期間の満了で更地に戻すのではなく、建物ごと地主に移すことで借地権を消滅させる仕組みです。

    方式についての定めがありません。したがって書面によらなくても成立します。3類型のなかで唯一、方式が自由です。

    なお24条2項は、建物の譲渡により借地権が消滅した場合において、その建物の使用を継続している借地権者または建物の賃借人が請求をしたときは、期間の定めのない賃貸借がされたものとみなすとしています。建物に住んでいる人が突然追い出されないための手当てです。

    3類型の詳しい比較は定期借地権、借地権の実務面は借地権の基本で扱っています。

    借家の存続期間と更新

    1年未満の定めは期間の定めがなくなる

    借地借家法29条1項は「期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす」と定めています。

    効果の書き方が独特です。借地の場合、30年より短い定めは30年に引き上げられます。借家の場合は1年に引き上げられるのではなく、期間の定めがない賃貸借に変わります。ここを取り違えさせる出題が繰り返されています。

    期間の定めがない賃貸借になると、賃貸人からの解約申入れには6か月と正当の事由が必要になるので、結果として賃借人が保護されます。短い期間で追い出す仕組みを封じる、という発想です。

    29条2項は「民法第六百四条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない」と定めています。したがって建物賃貸借には存続期間の上限がなく、100年でも設定できます。民法の50年の上限は働きません。

    なお29条1項は定期建物賃貸借には適用されないため、定期借家では1年未満の期間が有効です。詳細は定期借家で扱っています。

    期間の定めがあるときの更新拒絶

    借地借家法26条1項は、建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6か月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知または条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなすと定めています。そしてただし書が「その期間は、定めがないものとする」としています。

    このただし書が出題の的になります。通知を怠って法定更新されると、従前と同一の条件で更新されますが、期間だけは引き継がれず、期間の定めがない賃貸借になります。「従前と同一の期間で更新される」という記述は誤りです。

    26条2項は、更新拒絶の通知をした場合であっても、期間満了後に賃借人が使用を継続する場合において、賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときは、同様とすると定めています。通知だけでは足りず、実際に使い続けられたら異議を述べる必要があるということです。

    期間の定めがないときの解約申入れ

    借地借家法27条1項は「建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する」と定めています。

    主語が「建物の賃貸人」に限定されています。賃借人からの解約申入れについて借地借家法は規定を置いていないので、民法617条1項が適用され、建物については3か月になります。

    この非対称は繰り返し出題されます。「賃貸人または賃借人のいずれから解約を申し入れた場合も6か月の経過で終了する」という形の記述は誤りです。賃貸人からは6か月、賃借人からは3か月です。

    更新拒絶と解約申入れには正当の事由が要る

    借地借家法28条は、賃貸人による更新拒絶の通知および解約の申入れは、建物の賃貸人および賃借人が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況および建物の現況ならびに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件としてまたは建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければすることができないと定めています。

    借地の6条と同じ構造です。使用の必要性が中心にあり、立退料の申出は補完要素として最後に置かれています。借地の6条にはない「建物の現況」が加わっている点だけが違いです。

    そして30条が、26条から29条までの規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものを無効としています。「更新しない旨の特約」は26条に反して賃借人に不利なので無効です。この原則を条文の側から破ったのが、次に見る定期建物賃貸借です。

    借家権の対抗要件と造作買取請求権

    引渡しだけで対抗できる

    借地借家法31条は「建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる」と定めています。

    借地が建物の登記を要求するのに対し、借家は引渡しだけで足ります。実際に住み始めれば対抗力が生じるので、賃借人にとって非常に使いやすい要件です。登記も掲示も不要で、外形的な占有だけで足ります。

    建物が売却されても、引渡しを受けている賃借人は新所有者に賃借権を主張できます。このとき賃貸人たる地位は新所有者に移転し、敷金返還債務も承継されます(民法605条の2)。敷金の扱いは民法の賃貸借敷金と礼金で扱っています。

    抵当権が設定された建物の賃借人がどう扱われるかは、抵当権設定登記と引渡しの前後で決まります。この関係は抵当権で扱っています。

    造作買取請求権は排除できる

    借地借家法33条1項は、建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了または解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができると定めています。

    ここで冒頭の片面的強行規定の話が効いてきます。強行規定を列挙する37条は、31条、34条、35条を挙げており、33条を挙げていません。したがって造作買取請求権を排除する特約は有効です。

    借地の建物買取請求権が16条により排除できないのと、正反対の扱いです。建物は借地の目的そのものであるのに対し、造作は建物の付属物にすぎないという、保護の重さの違いから来ています。実際の宅建試験でも、造作買取請求権を行使しない旨の特約が有効かを問う出題があり、答えは有効です。造作の詳細は造作買取請求権で扱っています。

    賃料の増減額請求

    借地借家法32条1項は、建物の借賃が、土地建物に対する租税その他の負担の増減により、土地建物の価格の上昇もしくは低下その他の経済事情の変動により、または近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができると定めています。

    そして同項ただし書が、一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従うとしています。

    ここに非対称があります。増額しない特約は賃借人に有利なので、条文が明示的に有効としています。これに対し減額しない特約は賃借人に不利なので、効力が認められません。「増額しない特約も減額しない特約も無効」という記述は誤りです。

    なお定期建物賃貸借については38条9項が、借賃の改定に係る特約がある場合には32条を適用しないとしています。特約の内容がそのまま効力を持つということです。

    定期建物賃貸借の骨格

    借地借家法38条1項は、期間の定めがある建物の賃貸借をする場合において、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、30条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができるとしています。

    要点は3つです。書面によること(電磁的記録でも可、38条2項)。あらかじめ、更新がなく期間の満了により終了する旨を記載した書面を交付して説明すること(38条3項)。そして説明をしなかったときは、更新がないこととする旨の定めが無効になること(38条5項)。

    説明用の書面は契約書とは別個独立のものである必要があるとされています。契約書に条項として書いただけでは、38条3項の説明をしたことになりません。期間が1年以上の場合の終了通知(38条6項)、居住用で床面積200平方メートル未満の建物についての中途解約(38条7項)を含め、詳細は定期借家で扱っています。

    試験での出題ポイント

    宅建試験の権利関係では、借地借家法から例年2問が出題されています。宅建試験AIブートラボの過去問データで2016年度から2025年度までを確認すると、10年度すべてで問11と問12が借地借家法からの出題で、問11が借地、問12が借家という並びが続いています。

    適用の有無を先に判定させる出題

    問題文が「Aは自己の所有する甲土地をBに賃貸した」とだけ書いているとき、その土地に建物を建てる目的かどうかで結論が変わります。駐車場や資材置場であれば借地借家法は適用されず、存続期間の上限は民法604条1項の50年、更新に正当の事由は不要です。

    出題は、建物所有目的でない土地賃貸借に借地権のルールを当てはめさせる形で作られます。目的を確認せずに30年や更新拒絶の正当事由を当てはめると誤ります。

    建物の登記名義を入れ替える

    借地権の対抗要件では、建物の登記名義を借地権者以外の者に置き換えた選択肢が繰り返し出ます。配偶者名義、子の名義、同居の親族名義。いずれも対抗力は認められません(最高裁大法廷昭和41年4月27日判決)。

    滅失の場面では、掲示という要件を落とした選択肢が作られます。掲示をしなければ2年の猶予は生じません。

    借地と借家で効果が逆になる箇所

    短い期間を定めたときの効果が、借地と借家で違います。借地は30年に引き上げられ、借家は期間の定めがない賃貸借になります。「1年未満の建物賃貸借は期間を1年とする」という選択肢は誤りです。

    買取請求権の扱いも逆です。借地の建物買取請求権は16条により排除特約が無効、借家の造作買取請求権は37条の列挙外なので排除特約が有効。この組み合わせを入れ替えた選択肢が頻出します。

    解約申入れの主体を隠す

    借家の解約申入れでは、主語を「賃貸人または賃借人」と書いて6か月を当てはめる選択肢が作られます。27条1項の主語は賃貸人だけです。賃借人からの解約は民法617条1項により3か月になります。

    更新拒絶の通知を怠った場合についても、「従前と同一の期間で更新される」とする選択肢が誤りです。26条1項ただし書により期間は定めがないものとなります。

    定期借地権は3軸で判定させる

    定期借地権の出題は、期間、方式、目的の3軸のどれかをずらして作られます。事業用定期借地権を書面で足りるとする、一般定期借地権に公正証書を要求する、事業用定期借地権に居住用建物を認める、建物譲渡特約付借地権に書面を要求する。いずれも誤りです。

    実際の出題では、存続期間50年で居住用の建物所有を目的とする借地権について事業用定期借地権の特約を定められるかを問う形などが使われます。目的の要件で切れます。

    覚え方・整理の仕方

    判定は「建物が絡むか」から始める

    借地借家法が適用されるのは、建物の所有を目的とする土地の権利と、建物の賃貸借です。どちらにも建物が出てきます。駐車場、資材置場、看板用地には建物がないので、民法だけで処理します。

    問題を読んだらまず「建物が絡むか」を確認し、絡まないなら借地借家法の知識をいったん脇に置く。この一手を習慣にすると、数字の当てはめ間違いがなくなります。

    短くしようとすると借主が守られる、で方向を固定する

    借主に不利な特約が無効になるという片面的強行規定の構造は、「短くしようとすると跳ね返される」と覚えると方向を間違えません。

    借地の期間を20年にしようとすると30年に戻される(3条、9条)。借家の期間を6か月にしようとすると期間の定めがなくなり、賃貸人からの解約に6か月と正当の事由が必要になる(29条1項、27条1項、28条)。どちらも、短くしようとした側が不利になります。

    混同しやすい組み合わせを対にする

    似た制度が並ぶので、対で持っておくと取り違えません。

    • 対抗要件は、借地が「建物の登記」、借家が「建物の引渡し」
    • 短い期間を定めたときは、借地が「30年に引き上げ」、借家が「期間の定めなし」
    • 買取請求権の排除特約は、借地の建物買取が「無効」、借家の造作買取が「有効」
    • 解約申入れの期間は、賃貸人からが「6か月」、賃借人からが「3か月」
    • 再築は、更新前が「承諾があれば20年延長」、更新後が「承諾がなければ3か月で消滅」

    いずれも左右を入れ替えた選択肢が作られます。数字だけの整理は借地借家法の数字に集めているので、そちらと往復すると定着が速くなります。

    定期借地権は「期間・方式・目的」の3マスで持つ

    一般定期借地権は50年以上、書面、目的の制限なし。事業用定期借地権等は10年以上50年未満、公正証書、事業用のみ。建物譲渡特約付借地権は30年以上、方式の定めなし、目的の制限なし。

    3類型それぞれについて、この3マスを埋められるようにしておけば、どの軸をずらされても気づけます。方式がもっとも厳しいのが事業用(公正証書)、もっとも緩いのが建物譲渡特約付(定めなし)という両端を先に覚えると、真ん中の一般定期借地権が書面であることも出てきます。

    正当の事由は「使用の必要性が中心、立退料は最後」

    借地の6条も借家の28条も、条文の並びが同じです。当事者双方が使用を必要とする事情を中心に置き、従前の経過や利用状況を続け、財産上の給付の申出を最後に「考慮して」と書いています。

    したがって立退料は補完要素です。「立退料を提供すれば正当の事由が認められる」という断定は、条文の構造から誤りだと判断できます。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 駐車場として利用する目的で土地を賃貸する契約について、存続期間を20年と定めた場合、その定めは無効となり存続期間は30年となる。

    答えを見る 誤り。借地借家法2条1号の借地権は「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」をいうので、駐車場として利用する目的の土地賃貸借には借地借家法が適用されません。したがって民法の規定によることになり、存続期間の上限は民法604条1項の50年ですから、20年の定めはそのまま有効です。借地借家法3条の30年は適用されません。

    Q2. 借地権者が借地上の建物を所有していれば、その建物の登記が借地権者の配偶者名義であっても、借地権を土地の譲受人に対抗することができる。

    答えを見る 誤り。借地借家法10条1項は、土地の上に「借地権者が登記されている建物」を所有するときに対抗できると定めています。最高裁大法廷昭和41年4月27日判決は、同居の長男名義で建物の保存登記がされていた事案について、建物の所有者と登記名義人が一致していなければ借地権者が建物を所有していることが公示されないとして、対抗力を否定しました。配偶者名義でも同じです。

    Q3. 期間を6か月と定めた建物の賃貸借契約は、期間を1年とする建物の賃貸借となる。

    答えを見る 誤り。借地借家法29条1項は「期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす」と定めています。1年に引き上げられるのではなく、期間の定めがない賃貸借になります。借地で30年より短い定めが30年に引き上げられるのとは効果が異なる点に注意が必要です。なお定期建物賃貸借には29条1項が適用されないため、1年未満の期間も有効です。

    Q4. 建物の賃貸借について、造作買取請求権を行使しない旨の特約は無効である。

    答えを見る 誤り。造作買取請求権を定めるのは借地借家法33条ですが、強行規定を列挙する37条は31条、34条、35条を挙げるのみで33条を含んでいません。したがって造作買取請求権を排除する特約は有効です。これに対して借地の建物買取請求権(13条)は16条により片面的強行規定とされ、排除する特約は無効になります。

    Q5. 期間の定めのない建物の賃貸借において、賃借人が解約の申入れをしたときは、その日から6か月を経過することによって契約が終了する。

    答えを見る 誤り。借地借家法27条1項が6か月と定めているのは「建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合」です。賃借人からの解約申入れについて借地借家法に規定はなく、民法617条1項により建物は3か月になります。賃貸人からは6か月かつ正当の事由が必要(28条)、賃借人からは3か月で理由も不要、という非対称を押さえます。

    まとめ

    借地借家法について、条文の構造で押さえるべき点を整理します。

    適用されるのは、建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権(2条1号)と、建物の賃貸借です。駐車場や資材置場、一時使用(25条、40条)、使用貸借には適用されず、民法の原則で処理します。適用されるかどうかの判定を最初に置くことが、この分野の出発点です。

    借地では、存続期間が当初30年、最初の更新後20年、その後は10年です(3条、4条)。更新請求と土地使用の継続による法定更新があり、いずれも建物があることが条件で、更新を拒むには正当の事由が要ります(5条、6条)。対抗要件は借地上の建物の登記で足りますが、その登記は借地権者名義でなければならず(10条1項、最高裁大法廷昭和41年4月27日判決)、滅失後は掲示によって2年間対抗力が維持されます(10条2項)。更新がないときは建物買取請求権が使え、これを排除する特約は無効です(13条、16条)。

    借家では、1年未満の期間の定めは期間の定めがない賃貸借になり(29条1項)、民法604条の上限は適用されません(29条2項)。更新拒絶の通知は期間満了の1年前から6か月前までで、怠れば期間の定めがないものとして更新されます(26条1項)。賃貸人からの解約申入れは6か月かつ正当の事由が必要で(27条1項、28条)、賃借人からは民法617条1項により3か月です。対抗要件は建物の引渡しで足り(31条)、造作買取請求権を排除する特約は37条の列挙外なので有効です(33条、37条)。

    更新のない類型として、借地には定期借地権の3類型(22条から24条)、借家には定期建物賃貸借(38条)と取壊し予定の建物の賃貸借(39条)があります。数字の整理は借地借家法の数字、賃貸借契約の実務上の注意点は賃貸借契約の注意点、重要事項説明での扱いは賃貸借の重要事項説明を参照してください。

    宅建試験AIブートラボの肢別トレーニングでは、権利関係の問11と問12にあたる借地借家法の肢を単元別に演習できます。適用の有無を判定するところから確認しながら進めてください。

    読んだ内容を、権利関係の肢で確かめる

    民法・借地借家法・区分所有法など、条文だけでは判断しづらい論点は、過去問の肢で覚えるのが最短です。

    App Storeからダウンロード Google Play で手に入れよう

    関連記事