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用途地域の調べ方と暮らしへの影響

不動産の基礎知識 読了 約25分

住まいや土地を選ぶときに用途地域がどう効いてくるかを解説。調べ方、静けさと利便性の違い、隣地の影響、建てられる家の大きさ、日当たり、中古住宅の注意点まで。

目次

    この記事は、これから家や土地を選ぼうとしている人が、用途地域という仕組みを自分の判断にどう使えばよいかを扱う記事です。制度としての用途地域と13種類それぞれの建築制限は用途地域と建築制限に、13種類を覚えるための方法は用途地域13種の覚え方にまとめてあるので、体系的に学びたい場合はそちらを参照してください。

    住まい探しでは、駅からの距離、間取り、価格といった条件が先に来ます。用途地域は、物件情報の片隅に「第一種低層住居専用地域」などと小さく書かれているだけで、見落とされがちです。しかしこの一行は、その場所が今どういう街で、これから何が建ちうるのかを示しています。買ってから「隣に大きなマンションが建って日が入らなくなった」「思ったより車の通りが多かった」と気づいても、遡って変えることはできません。

    この記事では、用途地域の調べ方から始めて、暮らしがどう変わるか、隣の土地をどう見るか、その土地にどれくらいの家が建てられるか、日当たりはどうなるか、中古住宅を買うときに何が問題になるかを順に扱います。13種類の一覧を暗記する必要はありません。自分が検討している場所について、何をどこまで確認すればよいかが分かれば十分です。

    用途地域とは、街の使い方を先に決めておく仕組み

    まず、この仕組みが何のためにあるのかを押さえます。ここが分かると、あとの話がすべてつながります。

    混ざると困るものを分ける

    住宅街のすぐ隣に大きな工場ができれば、騒音や振動、トラックの往来で暮らしにくくなります。逆に、繁華街の真ん中に静けさを求める住宅ばかりが建てば、商業の集積が進みません。用途に応じて場所を分けておいたほうが、どちらにとっても都合がよい。この考え方を制度にしたのが用途地域です。

    都市計画法8条1項1号は、地域地区の一つとして用途地域を掲げており、同法9条が13種類それぞれの性格を定めています。そして建築基準法48条と別表第二が、用途地域ごとに建ててよい建物と建ててはいけない建物を具体的に定めています。都市計画法が場所を決め、建築基準法が中身を決める、という二段構えです。都市計画法全体の枠組みは都市計画法の基本で扱っています。

    13種類あるが、性格は3つに分かれる

    用途地域は13種類ありますが、大きく住居系、商業系、工業系の3つに分かれます。住居系が8種類と最も多く、住環境をどれだけ厳しく守るかによって細かく段階が設けられています。商業系が2種類、工業系が3種類です。

    住まい選びの実感に近い言い方をすれば、住居系の中でも「低層住居専用」と名のつく地域は静けさを最優先する場所、「住居地域」は住宅を中心としつつ店舗やオフィスも受け入れる場所、商業系は利便性を最優先する場所、工業系は生産活動を優先する場所です。名前の中に、その場所が何を大事にしているかが書かれています。

    2018年4月に田園住居地域が加わって、それまでの12種類が13種類になりました。農地と住宅が混在する市街地を対象とする地域で、指定されている自治体は限られます。

    用途地域が定められている場所、いない場所

    用途地域は、どこにでもあるわけではありません。都市計画法13条1項7号は、市街化区域については少なくとも用途地域を定めるものとし、市街化調整区域については原則として用途地域を定めないものとしています。

    つまり、すでに市街地になっている、あるいはこれから計画的に市街化を進める区域には必ず用途地域があります。一方、市街化を抑える市街化調整区域には原則として用途地域がありません。ただし用途地域がないから自由に建てられるという意味ではなく、市街化調整区域では建築そのものが厳しく制限されます。この区域で住宅を検討する場合は別の注意が必要で、市街化調整区域とはで扱っています。

    都市計画区域の外や、区域区分が定められていないいわゆる非線引き区域では、用途地域が定められていない場所もあります。用途地域の指定がない区域は「無指定」「白地地域」などと呼ばれ、建物の用途の制限が緩やかになります。区域の種類そのものは都市計画区域の種類を参照してください。

    例外が認められることもある

    用途地域の制限は絶対のものではありません。建築基準法48条は各項のただし書で、特定行政庁がその用途地域における良好な住居の環境を害するおそれがないと認め、または公益上やむを得ないと認めて許可した場合には、制限にかかわらず建築できるとしています。

    この許可は簡単に下りるものではなく、原則として利害関係者の意見を聴く公開の意見聴取と、建築審査会の同意を経る必要があります。とはいえ、制度上こうした例外の余地があることは知っておいて損はありません。住宅街の中に、用途地域からは建てられないはずの施設が建っている場合、この許可を受けているか、あるいは次に述べる既存不適格の扱いを受けている可能性があります。

    気になる土地の用途地域を調べる

    制度が分かったら、次は自分が検討している場所を調べる番です。無料で、その場でできます。

    自治体の都市計画情報で調べる

    最も手軽なのは、市区町村が公開している都市計画情報の地図を見る方法です。多くの自治体が、地図上をクリックすると用途地域、建蔽率、容積率、防火地域の指定、地区計画の有無などが表示される仕組みをインターネットで公開しています。

    自治体名と「都市計画図」「用途地域」といった語を組み合わせて検索すれば、たいていたどり着けます。無料で、会員登録も不要なことがほとんどです。住所を入力するか、地図を拡大して該当地点を指定すると、その土地に適用される規制の一覧が出てきます。

    ここで確認しておきたいのは、用途地域の名称だけではありません。同じ画面に出てくる建蔽率と容積率の数字、防火地域または準防火地域の指定、高度地区の指定、地区計画の有無まで見ておくと、その土地でできることの輪郭がつかめます。

    役所の窓口で確認する

    インターネットの地図は便利ですが、境界付近にある土地では、地図上のどちら側に属するのか判断がつかないことがあります。用途地域の境界は道路の中心線などで引かれていることが多く、その線をまたぐ敷地もあります。

    判断に迷う場合や、正確を期したい場合は、市区町村の都市計画課や建築指導課の窓口で確認します。窓口では都市計画図を閲覧でき、担当者に住所を伝えれば適用される規制を教えてもらえます。用途地域だけでなく、その土地に固有の制限が他にないかもあわせて聞けるのが窓口の利点です。

    全国の情報をまとめて見る

    国土交通省の国土数値情報ダウンロードサイトでは、全国の用途地域のデータが公開されています。地図上で一件ずつ確認するというより、広い範囲を俯瞰したり、複数の候補地を比べたりする場面で役に立ちます。

    不動産広告と重要事項説明書で確認する

    物件を紹介する広告やチラシにも、用途地域が記載されていることがあります。ただし記載の仕方は媒体によってまちまちで、書かれていないこともあります。広告だけを頼りにせず、自分で地図を確認するのが確実です。

    そして、実際に売買や賃貸の契約に進む場合には、契約の前に必ず用途地域の説明を受けることになります。宅地建物取引業法35条1項2号は、都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限に関する事項の概要を、重要事項として説明することを宅建業者に義務づけています。用途地域とそれに伴う建蔽率・容積率、防火地域の指定などは、この項目として重要事項説明書に記載されます。

    説明は宅地建物取引士が行い、書面が交付されます。分からない記載があればその場で質問してください。専門用語が並ぶ書面ですが、契約前に確認できる最後の機会でもあります。重要事項説明書の読み方は重要事項説明書の読み方、説明される項目の全体像は重要事項説明とはで扱っています。物件そのものの調査については物件調査の進め方も参考になります。

    用途地域で暮らしはどう変わるか

    ここからが、住まい選びで最も実益のある部分です。用途地域が違うと、日々の暮らしの何が変わるのかを見ていきます。

    静けさを取るか、利便性を取るか

    第一種低層住居専用地域は、13種類のうち最も規制が厳しい地域です。建てられるのは低層の住宅が中心で、店舗は住宅と兼用のごく小規模なものに限られます。一般的な広さのコンビニやスーパーは建てられません。

    この地域の良さは、静けさと日当たりです。高い建物が建たないため空が広く、車の通りも生活道路の範囲にとどまります。一方で、日常の買い物には出かける必要があり、飲食店も近くにはありません。徒歩圏で用事が済む暮らしを望む人にとっては、不便に感じられる可能性があります。

    対極にあるのが商業地域です。ここはほぼあらゆる用途の建物を建てることができ、容積率も最大で1300パーセントまで指定できます。駅前の商業ビルやタワーマンションが建ち並ぶエリアは、多くが商業地域です。買い物、飲食、通勤の利便性は非常に高くなります。

    その代わり、人通りと車の交通量が多く、夜間も明かりと音があります。周囲に高い建物が建つため、日当たりや眺望が将来変わる可能性も高くなります。どちらが良いということではなく、何を優先するかの問題です。

    住居系の中にも段階がある

    静けさと利便性の間には、いくつもの段階があります。第二種低層住居専用地域では、小規模な店舗が建てられるようになります。中高層住居専用地域では、名前のとおり中高層のマンションが建ち、店舗の規模の上限も上がります。第一種住居地域、第二種住居地域と進むにつれて、建てられる店舗や施設の規模はさらに大きくなります。

    住居系の中でも規制が緩い側にあたる第二種住居地域では、パチンコ店やカラオケボックスといった遊技・娯楽の施設も建てられます。準住居地域は、幹線道路沿いで自動車関連の施設と住宅が共存することを想定した地域です。

    「住居」という言葉が入っているからといって、静かな住宅街とは限りません。どこまでの用途が許されているかは地域によって大きく違います。地域ごとの具体的な建築制限は用途地域と建築制限にまとめてあります。

    住宅を建てられない地域がある

    工業系の3種類のうち、住宅を建てられないのは工業専用地域だけです。13種類の用途地域の中で、住宅の建築が認められていないのはこの地域のみです。

    一方、工業地域には住宅を建てることができます。ここが誤解されやすいところです。ただし、工業地域には学校、病院、ホテル・旅館を建てることができません。住むこと自体は可能でも、子どもの通う小中学校や入院できる病院が地域内にないという状態になります。生活の周辺環境まで含めて考えると、子育て世帯にとっては選びにくい条件になります。

    準工業地域は、危険性や環境への影響が大きい工場を除けば幅広い用途が認められる地域で、住宅も学校も病院も建てられます。工場と住宅が混在している市街地でよく見られる指定です。

    名称だけで判断せず、実際の街を歩く

    用途地域は、その場所で何が許されているかを示すものであって、今そこに何が建っているかを示すものではありません。商業地域に指定されていても実際には低層の住宅が多い場所もあれば、住居系の地域でも幹線道路沿いで交通量が多い場所もあります。

    したがって、用途地域は「今の街の様子」と「将来ありうる姿」を照らし合わせるための道具として使うのが正しい使い方です。地図で用途地域を確認したうえで、平日と休日、昼と夜に現地を歩いてみると、その場所の実際の性格が見えてきます。住まい探しの全体の流れは不動産売買の流れ、戸建てとマンションの比較はマンションと戸建てで扱っています。

    借りるときにも効いてくる

    用途地域は建物を建てるときの規制なので、すでに建っている物件を借りる場合には直接の関係がないように見えます。しかし、周囲に何が建ちうるかという点では、借りる人にも同じように影響します。長く住むつもりの賃貸であれば、確認しておく価値があります。

    ここで知っておきたいのが、建物を借りる場合の重要事項説明の扱いです。宅建業法35条1項2号が説明を求める法令上の制限の範囲は、契約の内容に応じて政令で定められており、建物の貸借については都市計画法や建築基準法に基づく制限が対象から外れています。借りるだけの人にとって、建て替えの際の制限は判断材料にならないという整理です。

    つまり、建物の賃貸借では用途地域の説明を受けられないことになります。周辺環境の見通しを持ちたいのであれば、自分で自治体の地図を確認するしかありません。無料で見られるので、契約を決める前に一度目を通しておくとよいでしょう。

    隣の土地と、その先の街並みまで見る

    自分が買う土地の用途地域だけを見ていては足りません。暮らしの快適さは、周囲に何が建つかで決まるからです。

    自分の敷地が低層でも、隣が違えば話が変わる

    用途地域の境界は、思いのほか細かく引かれています。自分の敷地が第一種低層住居専用地域であっても、道路を一本隔てた向かいが第一種住居地域や近隣商業地域ということは珍しくありません。

    この場合、自分の敷地には高さの制限がかかっていても、向かいの土地には同じ制限がかかりません。今は低い建物しか建っていなくても、将来そこにマンションや商業施設が建つ可能性があります。特に、自分の敷地から見て南側にあたる土地の用途地域は、日当たりに直結するため必ず確認してください。

    地図で調べるときは、検討している敷地だけを見るのではなく、少し引いた縮尺にして周囲の色分けを眺めるのが有効です。用途地域の境界線がどこを走っているか、自分の敷地がどちら側の縁にあるかが見えてきます。

    幹線道路沿いは帯状に指定が変わる

    大きな道路の沿道は、道路に沿って帯状に別の用途地域が指定されていることがよくあります。住宅街の中を通る幹線道路の両側だけが近隣商業地域や準住居地域になっている、といった具合です。

    沿道に指定された地域では、店舗や事務所、自動車関連施設が建てられます。買い物には便利ですが、交通量と騒音は増えます。物件が幹線道路からどれだけ離れているか、その帯がどこまで及んでいるかを地図で確認しておくと、将来の環境の変化を予測しやすくなります。

    空き地や駐車場、古い建物に注目する

    近くに空き地、平面駐車場、老朽化した低層の建物がある場合、そこはいずれ建て替えられる可能性が高い場所です。その土地の用途地域と建蔽率・容積率を調べれば、そこにどの程度の規模の建物が建ちうるかの上限が分かります。

    上限まで建つとは限りませんが、「最大でこうなる可能性がある」という想定を持っておけば、後で驚くことは減ります。特に日当たりを重視する場合は、南側の空き地に何が建てられるかを確認しておく価値があります。

    同じ広さの土地でも、建てられる家は変わる

    用途地域は、建物の種類だけでなく、建てられる大きさにも関わります。土地の面積が同じでも、家の規模はまったく違ってきます。

    建蔽率と容積率という2つの上限

    建蔽率は、敷地面積に対して建築面積をどこまで取れるかの割合です。建物を真上から見たときの広がりの上限だと考えてください。容積率は、敷地面積に対して延べ面積、つまり各階の床面積の合計をどこまで取れるかの割合です。

    この2つの上限は、用途地域ごとに指定できる範囲が決まっていて、その範囲内で都市計画によって具体的な数値が定められます。低層住居専用地域では建蔽率30から60パーセント、容積率50から200パーセントの範囲で指定され、商業地域では建蔽率80パーセント、容積率200から1300パーセントの範囲で指定されます。

    同じ100平方メートルの土地でも、容積率が100パーセントなら延べ面積の上限は100平方メートル、容積率が200パーセントなら200平方メートルです。二階建てで各階50平方メートルの家しか建てられない土地と、各階100平方メートル取れる土地では、住み方がまるで違います。仕組みの詳細は建蔽率と容積率の基本、計算の仕方は建蔽率と容積率の計算で扱っています。

    表示された数値がそのまま使えるとは限らない

    都市計画で指定された容積率が、そのまま上限になるとは限りません。前面道路の幅員が12メートル未満の場合は、道路の幅に一定の係数を掛けた値と、指定された容積率の低いほうが適用されます。狭い道路にしか接していない土地では、指定容積率いっぱいまで使えないことがあるということです。

    逆に、建蔽率には緩和もあります。特定行政庁が指定する角地であれば10パーセント加算され、防火地域内で耐火建築物を建てる場合にも一定の加算があります。

    これらは土地ごとの条件で変わるため、購入前に建築士や施工会社に確認するのが確実です。「容積率200パーセントだから200平方メートルの家が建つ」と単純に計算して土地を決めると、後で計画が縮小することがあります。

    敷地が2つの用途地域にまたがるとき

    敷地が用途地域の境界をまたいでいる場合、建物の用途については、敷地の過半が属する地域の制限が敷地全体に適用されます(建築基準法91条)。半分より広いほうの地域のルールで判断するということです。

    建蔽率と容積率は扱いが違い、それぞれの部分の面積で加重平均して求めます。たとえば200平方メートルの敷地のうち、建蔽率60パーセントの地域が120平方メートル、建蔽率80パーセントの地域が80平方メートルであれば、敷地全体の建蔽率の上限は、60パーセントの120平方メートル分と80パーセントの80平方メートル分を合計して敷地面積で割った68パーセントになります。

    用途は過半で決まり、数値は按分する。境界にかかる土地を検討するときは、この違いを頭に入れておいてください。

    道路との関係も見ておく

    用途地域とは別の話になりますが、土地選びで必ず確認したいのが接道の状況です。建築基準法は、建物の敷地が幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していることを原則としています。前面道路の幅が4メートルに満たない場合、道路の中心線から2メートル後退した線が敷地の境界とみなされ、その部分には建物を建てられません。

    この後退のことをセットバックといい、実際に使える敷地が図面上の面積より狭くなります。セットバックとはで詳しく扱っています。建築の可否を確認する手続については建築確認とはも参考になります。

    日当たりを左右する高さのルール

    住み心地に直結するのが日当たりです。用途地域は、ここにも深く関わっています。

    低層住居専用地域の絶対高さ制限

    建築基準法55条1項は、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域において、建築物の高さを10メートルまたは12メートルのうち都市計画で定められた限度以下としなければならないと定めています。

    これは斜線などによる相対的な制限ではなく、地域内のすべての建物にかかる絶対的な上限です。10メートルであればおおむね3階建てが限度になります。この制限があるおかげで、低層住居専用地域では周囲に高い建物が建たず、日照と眺望が安定します。

    裏を返せば、この制限があるのは3つの地域だけです。それ以外の地域では、絶対的な高さの上限はなく、斜線制限や日影規制といった別のルールで高さが決まります。高さの制限全体の仕組みは高さ制限の種類で扱っています。

    斜線制限

    建築基準法56条は、道路斜線、隣地斜線、北側斜線という3種類の斜線制限を定めています。敷地の境界線から一定の勾配で引いた斜めの線の内側に建物を収めるという規制で、道路や隣地に対する圧迫感を抑え、採光と通風を確保するためのものです。

    このうち北側斜線は、北側の隣地の日照を守るための規制で、低層住居専用地域と田園住居地域、そして中高層住居専用地域の一部に適用されます。住居系の中でも住環境を重視する地域に限って設けられている点が特徴です。隣地斜線は、絶対高さ制限のある低層住居専用地域と田園住居地域には適用されません。すでに高さの上限があるためです。

    日影規制

    建築基準法56条の2は、一定の高さを超える建物について、冬至の日に周囲へ落とす日影の時間を制限しています。これが日影規制です。対象となる区域と規制の内容は、法の別表第四に基づいて地方公共団体が条例で定めます。

    対象となる建物の規模は地域によって異なります。低層住居専用地域と田園住居地域では、軒の高さが7メートルを超えるものまたは地階を除く階数が3以上のもの、中高層住居専用地域では高さが10メートルを超えるものが対象です。

    重要なのは、商業地域、工業地域、工業専用地域は日影規制の対象区域として指定できないという点です。これらの地域では、隣接する建物が落とす日影の時間について規制がありません。日当たりを重視するなら、自分の敷地の南側がこれらの地域に指定されていないかを確認する意味があります。

    ただし、対象区域の外にある建物であっても、高さが10メートルを超えていて、冬至の日に対象区域内へ日影を落とす場合には、対象区域内にあるものとみなして規制が及びます。境界のすぐ外側に高い建物を建てて規制を逃れることはできない仕組みになっています。

    防火地域の指定も見ておく

    高さとは別に、建物の構造に関わるのが防火地域と準防火地域の指定です。商業地域の多くは防火地域に指定されており、この区域では建物の規模に応じて耐火建築物などとすることが求められます。準防火地域でも一定の構造上の制限がかかります。

    構造の要求が上がれば建築費も上がります。土地の価格だけを比べていると、建物の費用で差がつくことがあります。防火地域と準防火地域で仕組みを扱っています。

    中古住宅を買うとき、そして用途地域が変わるとき

    新築の土地探しとは別に、中古住宅の購入では固有の注意点があります。

    既存不適格建築物

    建築基準法3条2項は、法令の規定が施行または適用される際に現に存在する建築物について、その規定に適合しない部分があっても、その規定を適用しないと定めています。この扱いを受ける建物を既存不適格建築物といいます。

    用途地域が変更されたり、法令が改正されたりすると、建築当時は適法だった建物が現行の規定に合わなくなることがあります。それでも直ちに違法になるわけではなく、そのまま使い続けることが認められます。違法建築とは根本的に違うものです。

    問題になるのは建て替えのときです。既存不適格建築物を取り壊して新たに建てる場合、現行の規定に従うことになるため、今と同じ規模の建物を建てられないことがあります。容積率が引き下げられた地域にある建物、道路の幅員の関係でセットバックが必要になる敷地、絶対高さ制限が新たにかかった地域の建物などが典型例です。

    中古住宅を検討するときは、現況の延べ面積が現行の容積率の範囲に収まっているか、敷地が現行の接道の要件を満たしているかを確認してください。既存不適格の建物は、住宅ローンの審査で不利に扱われることや、売却時に買主が付きにくいことがあります。中古住宅の注意点は中古住宅を買うときの注意でも扱っています。

    建て替えを前提に土地を見る

    いま建っている建物と同じものが建てられるとは限らない、という視点は、古家付きの土地を買う場合にも当てはまります。取り壊して新築するつもりで購入したのに、現行の規制では希望する規模の家が建てられなかった、という事態は避けなければなりません。

    用途地域、建蔽率、容積率、前面道路の幅員、高さの制限。この5つを確認したうえで、建てたい家の規模が収まるかを事前に検討してください。判断がつかない場合は、契約前に建築士や施工会社に図面の当たりをつけてもらうのが確実です。

    自宅で商売を始めたいとき

    住まいの一部を使って店や事務所を開きたい場合、用途地域が直接効いてきます。規制が最も厳しい第一種低層住居専用地域では、独立した店舗や事務所を建てることができません。

    ただし完全に不可能というわけではなく、住宅と兼ねる形であれば一定の範囲で認められます。建築基準法別表第二と施行令130条の3は、延べ面積の2分の1以上を住宅として使い、かつ店舗や事務所として使う部分の床面積の合計が50平方メートルを超えないものについて、事務所、日用品を売る店舗、食堂や喫茶店、理容室や美容室、学習塾、アトリエなど、業種を限定して認めています。

    第二種低層住居専用地域になると、住宅を兼ねない独立した店舗も、一定規模までは建てられるようになります。中高層住居専用地域、住居地域と進むにつれて、認められる規模はさらに大きくなります。

    将来的に自宅で仕事をする可能性がある人、店を持ちたいと考えている人は、住まいを選ぶ段階でこの点を確認しておく価値があります。買ってから用途地域を理由に断念することになれば、選び直しはききません。地域ごとにどこまで認められるかは用途地域と建築制限で扱っています。

    用途地域は変わることがある

    用途地域は永続的なものではありません。都市計画の一部である以上、見直しによって変更されることがあります。人口や土地利用の実態が変わったとき、新しい駅や道路ができてエリアの性格が変わったとき、都市機能の集約を進めるときなどに、変更が検討されます。

    変更の手続は都市計画法に定められており、案の縦覧、住民の意見書の提出、都市計画審議会の議を経て決定され、告示によって効力を生じます。住民の知らないうちに突然変わるものではありませんが、日常的に情報を追っている人は多くありません。

    長く住む予定の場所であれば、その自治体の都市計画マスタープランに目を通しておくと、将来の方向性が見えます。多くの自治体がウェブサイトで公開しています。

    用途地域より細かいルールがあることも

    用途地域に加えて、より狭い範囲に細かなルールが定められていることがあります。都市計画法12条の4以下の地区計画がその代表で、建物の用途や規模だけでなく、壁面の位置、垣や柵の構造、建物の形態や意匠まで定められることがあります。

    このほか、都市計画法9条14項の特別用途地区によって、学校の周辺で特定の営業を制限するといった上乗せの規制がかかることもあります。地図上で地区計画の網がかかっている場合は、その内容まで確認してください。制限の内容は地区計画とは、都市計画による制限の全体像は都市計画法上の制限で扱っています。

    宅建試験ではどう問われるか

    この記事は住まい選びの視点で書いていますが、用途地域は宅建試験の法令上の制限で毎年のように出題される論点でもあります。ここでは、どういう角度で問われるかだけを簡単に整理します。詳しい対策は他の記事に譲ります。

    用途制限の可否

    ある建物がある用途地域に建てられるかどうかを問う形式が中心です。工業専用地域に住宅を建てられるか、工業地域に学校を建てられるか、第一種低層住居専用地域に一定規模の店舗を建てられるか、といった問い方をします。すべての組合せを暗記するのではなく、どこを境に建てられなくなるかという境界線で覚えるのが定石です。整理の仕方は用途地域13種の覚え方にまとめています。

    数値の入れ替え

    絶対高さ制限の10メートルまたは12メートル、日影規制の対象となる軒の高さ7メートルや高さ10メートル、店舗の規模の上限といった数値が、別の値に置き換えられて出題されます。数値だけを覚えると入れ替えに気づけないため、どの地域に適用される数値かとセットで押さえます。

    適用される地域の範囲

    絶対高さ制限は低層住居専用地域と田園住居地域だけ、日影規制は商業地域・工業地域・工業専用地域では指定できない、隣地斜線制限は低層住居専用地域と田園住居地域には適用されない。どの規制がどの地域に及ぶかという範囲の問題が繰り返し問われます。

    またがる敷地の処理

    敷地が2つの用途地域にまたがる場合、用途制限は過半の属する地域のもの、建蔽率と容積率は加重平均。この違いを入れ替えた選択肢が定番です。制度の詳細は用途地域と建築制限、建築基準法全体の枠組みは建築基準法の全体像を参照してください。

    整理の仕方と確認の手順

    最後に、覚え方と、実際に土地を見るときの手順をまとめます。

    名前を読めば性格が分かる

    13種類を丸暗記する必要はありません。名前の構造を読み解けば、おおよその性格は分かります。「専用」がつく地域は、その用途を優先して他を強く制限する地域です。低層住居専用は低層の住宅だけ、工業専用は工業だけ。「専用」がつかない住居地域や工業地域は、主たる用途を中心としつつ他の用途も受け入れます。

    「第一種」と「第二種」の関係も一定していて、第二種のほうが規制が緩く、建てられる用途の幅が広くなります。この2つの読み方だけで、初めて見る地域名でもおおよその見当がつきます。

    静けさの順に並べて自分の位置を決める

    住まい選びの観点では、第一種低層住居専用地域を静けさの極、商業地域を利便性の極として、その間に他の地域が並んでいると考えるのが分かりやすい整理です。自分が求める暮らしがこの軸のどのあたりにあるかを先に決めておくと、物件情報の用途地域の欄を見た瞬間に、検討対象かどうかの見当がつきます。

    そのうえで、工業専用地域は住宅を建てられない、工業地域は住めるが学校と病院がない、という2点だけを例外として覚えておけば、大きく外すことはありません。

    確認する順序を決めておく

    土地や中古住宅を検討するときは、次の順序で確認すると漏れが出ません。

    第一に、自治体の都市計画情報でその敷地の用途地域、建蔽率、容積率、防火地域の指定、地区計画の有無を調べる。第二に、少し縮尺を広げて、周囲、特に南側の用途地域を確認する。第三に、前面道路の幅員と接道の状況を確認する。第四に、現地を昼と夜、平日と休日に歩いて、地図では分からない実際の様子を見る。第五に、既存の建物がある場合は、その建物が現行の規定に適合しているかを確認する。第六に、重要事項説明で説明される内容と、自分が調べた内容が一致しているかを照合する。

    自分で調べたうえで説明を受けると、書面のどこを見ればよいかが分かり、質問すべき点も明確になります。不動産の取引の流れ全体は不動産売買の流れ、暮らしと不動産の関わりは暮らしの中の不動産でも扱っています。

    理解度チェッククイズ

    次の記述が正しいか誤りかを判断してください。

    第1問

    工業地域および工業専用地域には、いずれも住宅を建てることができない。

    答えは誤りです。住宅を建てることができないのは工業専用地域だけで、工業地域には住宅を建てることができます。13種類の用途地域のうち、住宅の建築が認められていないのは工業専用地域のみです。ただし工業地域には学校、病院、ホテル・旅館を建てることができないため、住むことは可能でも生活の利便に影響が出る点は押さえておく必要があります。

    第2問

    第一種低層住居専用地域内の敷地であれば、道路を隔てた向かい側の土地に高層の建物が建つことはない。

    答えは誤りです。用途地域の制限は、あくまでその敷地が属する地域について適用されます。用途地域の境界は道路の中心線などで引かれていることが多く、道路の向かい側が別の用途地域に指定されていることは珍しくありません。向かい側が住居地域や近隣商業地域であれば、絶対高さ制限は適用されないため、高い建物が建つ可能性があります。検討している敷地だけでなく、周囲、特に南側の用途地域を確認する必要があります。

    第3問

    敷地が第一種住居地域と近隣商業地域にまたがる場合、建築物の用途の制限については、敷地の過半が属する用途地域の制限が敷地全体に適用される。

    答えは正しい記述です。建築基準法91条により、建築物の敷地が2以上の用途地域にわたる場合、用途の制限については敷地の過半の属する地域の規定が敷地全体に適用されます。一方、建蔽率と容積率については過半で決めるのではなく、それぞれの部分の面積で加重平均して算出します。用途は過半、数値は按分、という違いを取り違えないでください。

    第4問

    商業地域では、隣接する建物が落とす日影について、建築基準法56条の2の日影規制による制限を受けることはない。

    答えは誤りです。商業地域は日影規制の対象区域として指定することができないため、その地域内にある建物が規制の対象になることはありません。しかし、対象区域外にある高さ10メートルを超える建築物であっても、冬至の日に対象区域内へ日影を落とす場合には、対象区域内にあるものとみなして規制が適用されます。したがって、商業地域内の建物が日影規制の適用をまったく受けないとは言い切れません。

    第5問

    用途地域が変更された結果、現行の規定に適合しなくなった既存の建物は、直ちに違法建築物となり、是正が命じられる。

    答えは誤りです。建築基準法3条2項により、規定が適用される際に現に存在する建築物については、適合しない部分についてその規定は適用されません。これを既存不適格建築物といい、そのまま使い続けることができます。違法に建てられた建築物とは性質が異なります。ただし、建て替える場合には現行の規定に従うことになるため、従前と同じ規模の建物を建てられないことがあります。

    まとめ

    用途地域は、その場所で何が建てられるかをあらかじめ決めておく仕組みです。都市計画法8条と9条が13種類の地域を定め、建築基準法48条と別表第二がそれぞれの建築制限を定めています。市街化区域には必ず指定があり、市街化調整区域には原則としてありません。

    住まい選びで効いてくるのは、静けさと利便性のトレードオフです。第一種低層住居専用地域は静かで日当たりが安定する代わりに買い物に出る必要があり、商業地域は利便性が高い代わりに人通りと音があり、周囲の建物によって日照が変わりやすくなります。工業専用地域には住宅を建てられず、工業地域は住めるものの学校と病院がありません。

    そして、確認すべきは自分の敷地だけではありません。隣の土地、特に南側の用途地域は日当たりに直結します。建蔽率と容積率は建てられる家の大きさを決め、前面道路の幅員によってはさらに制限されます。中古住宅では既存不適格の可能性を確認し、用途地域が将来変更されうることも頭に入れておいてください。調べる手段は無料で公開されており、契約前には重要事項として説明を受けられます。

    用途地域と建築制限、建蔽率・容積率、高さ制限といった法令上の制限は、アプリの法令上の制限の分野別演習で繰り返し確認できます。

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