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建ぺい率と容積率の計算問題攻略|角地緩和・前面道路制限

法令上の制限 読了 約27分

建ぺい率と容積率の計算を、面積の定義、角地・防火地域の加算、前面道路の法定乗数、不算入部分、敷地がまたがる場合の按分まで、建築基準法53条・52条の条文根拠つきで例題を追って解説します。

目次

    本記事は、建ぺい率と容積率の計算問題を、面積の定義から緩和規定、敷地が複数の地域にまたがる場合の按分まで順に追い、本番で数値を出しきれる状態にするためのものです。制度そのものの入口や、受験目的ではなく自分の土地に何が建てられるかを知りたい場合は建ぺい率と容積率とはを、建築基準法全体の中での位置づけは建築基準法の全体像を参照してください。この記事は計算そのものを扱います。

    この計算でつまずく人の多くは、公式を覚えていないのではなく、公式に入れる数字を間違えています。敷地面積からセットバック部分を引き忘れる、角地の加算と防火地域の加算のどちらか一方しか足さない、前面道路が二本あるときに狭いほうを使う、地階の住宅部分を全部引いてしまう。落とし方はほぼこの数種類に限られます。どの数字をどの順で確定させるかという手順を固定すれば、確実に得点できる分野になります。以下では、建ぺい率が建築基準法53条、容積率が同法52条という条文の並びに沿って、各段階でどの数字が動くのかを追います。なお条文の表記は「建蔽率」ですが、本記事では「建ぺい率」で統一します。

    建ぺい率と容積率は何を制限しているのか

    建ぺい率は平面を、容積率は総量を制限する

    建ぺい率は、建築面積の敷地面積に対する割合です。敷地を真上から見たとき、そのうち何割までを建物で覆ってよいかという制限で、平面の話に閉じています。容積率は、延べ面積の敷地面積に対する割合です。各階の床面積を合計した総量が敷地面積の何倍までかという制限で、階数を積み上げれば増えていく立体の話です。

    同じ敷地面積200平方メートルでも、建ぺい率10分の5・容積率10分の20なら建築面積100平方メートルの4階建てまで、建ぺい率10分の8・容積率10分の20なら建築面積160平方メートルで2階建てと少しになります。前者は細く高い建物、後者は太く低い建物です。二つの数値は独立に働き、一方でも超えれば違反です。両方を出させて建築可能な組合せを選ばせる形が典型的な出題になります。

    建ぺい率の趣旨は日照・通風と延焼防止

    建ぺい率が敷地に空地を残させるのは、隣家との間に距離を確保して日照と通風を保ち、火災が起きたときに隣へ燃え移りにくくするためです。土地の高度利用が優先される商業地域では限度が10分の8と高く、住環境を守る低層住居専用地域では10分の3から10分の6にとどまります。

    この趣旨を押さえると緩和の理由が読めます。角地は二方向が道路に面し、敷地の外側にすでに空地があるのと同じ状態なので、敷地内の空地を少し減らしてよい。耐火建築物なら延焼のおそれが小さいので、これも建て詰まりを許してよい。緩和は「趣旨が別のかたちで満たされているから」で一貫しています。防火地域と耐火建築物の関係は防火地域・準防火地域の制限にまとめてあります。

    容積率の趣旨は都市基盤とのつりあい

    容積率が延べ面積を制限するのは、そこに住む人や働く人の数、すなわち発生する交通量や上下水道の需要を、道路や下水道といった都市の基盤が受け止められる範囲に抑えるためです。人が増えれば道路が混み、電車が混み、水道の使用量が増えます。容積率は、その総量をあらかじめ地域単位で頭打ちにする仕組みです。

    だから容積率には、建ぺい率にはない前面道路の幅員による制限が加わります。都市計画でいくら大きな容積率が定められていても、接している道路が細ければ、その道路が支えられる人数しか受け入れられません。都市計画による数値と目の前の道路の実力値の両方を見て小さいほうをとる。この二段構えが、容積率の計算を建ぺい率より一手間多くしています。逆に建ぺい率に道路幅員の制限がないのは、日照や延焼の問題が前面道路の広さと直接は結びつかないからです。

    計算の土台になる三つの面積

    敷地面積とセットバック

    計算のすべての分母になるのが敷地面積です。建築基準法施行令2条1項1号は、敷地面積を敷地の水平投影面積とし、ただし42条2項の規定により道路の境界線とみなされる線と道との間の部分は算入しないと定めています。ここが最初の罠です。

    建築基準法42条2項は、幅員4メートル未満の道でも、法の適用時にすでに建築物が建ち並んでいて特定行政庁が指定したものは道路とみなし、その中心線から水平距離2メートルの線を道路の境界線とみなすとしています。この後退部分は登記上は自分の土地でも敷地面積に算入できません。問題文に42条2項の道路と書かれていれば、まず敷地面積を減らす作業から始まり、容積率の前面道路の幅員は後退後の4メートルとして扱います。仕組みはセットバックとはで扱っています。

    建築面積と軒・ひさしの1メートル

    建築面積は、施行令2条1項2号により、建築物の外壁またはこれに代わる柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積とされます。壁の芯で測ります。地階で地盤面上1メートル以下にある部分は含めません。

    問われやすいのは軒とひさしの扱いです。同号は、軒、ひさし、はね出し縁その他これらに類するもので外壁の中心線から水平距離1メートル以上突き出たものがある場合は、その端から水平距離1メートル後退した線で囲まれた部分とすると定めています。突出が1メートル未満なら建築面積に影響せず、1メートル以上なら先端から1メートル戻した位置までが入る。全部が入るのでも全部が除かれるのでもない中間的な処理です。

    延べ面積と容積率算定用の延べ面積

    延べ面積は、施行令2条1項4号により、建築物の各階の床面積の合計です。ただし容積率の計算に使う延べ面積は、これとは別に定義されます。建築基準法52条3項と6項、および施行令2条3項が、一定の部分を容積率算定の基礎となる延べ面積から除いているためです。

    この区別は言葉の上でも問われます。単に「延べ面積」なら各階の床面積の合計、「容積率の算定の基礎となる延べ面積」なら不算入部分を引いた後の数値です。建築基準法の数値をまとめて確認したい場合は建築基準法の数字まとめが使えます。

    建ぺい率の基本と用途地域ごとの限度

    「都市計画で定める」という言い回しの意味

    建築基準法53条1項は、建ぺい率は用途地域の区分に応じて各号に定める数値以下でなければならないとし、多くの地域では複数の候補値を挙げたうえで「これらのうち当該地域に関する都市計画において定められたもの」としています。法律が幅を決め、その中から実際の数値を選ぶのは都市計画です。用途地域の決定権者は原則として市町村なので、建ぺい率の数値も市町村が都市計画の手続を経て決めています。用途地域の全体像は用途地域13種類と建築制限を参照してください。

    試験では「第一種住居地域の建ぺい率は10分の6である」といった断定形が出ますが、これは候補のひとつにすぎず、10分の5や10分の8と定められることもあります。断定できるのは商業地域だけです。

    用途地域ごとの限度

    第一種・第二種低層住居専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、田園住居地域、工業専用地域では、10分の3、10分の4、10分の5、10分の6のうち都市計画で定めるものが限度です。住環境の保護を最優先する地域と工場に特化する地域が同じ枠なのは、どちらも建て詰まりを想定していないからです。

    第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、準工業地域では、10分の5、10分の6、10分の8のうち都市計画で定めるものが限度です。10分の8という選択肢が入るのがこのグループからで、後述する適用除外に直結するため重要です。近隣商業地域は10分の6または10分の8、工業地域は10分の5または10分の6です。

    商業地域だけは選択の余地がなく10分の8と決まっています。商業地域が出てきたら建ぺい率は必ず10分の8であり、かつ「限度が10分の8とされている地域」に該当する。この二重の意味を持つため、建ぺい率の設問で最もよく使われる地域です。

    用途地域の指定のない区域

    用途地域が定められていない区域については、10分の3、10分の4、10分の5、10分の6、10分の7のうち、特定行政庁が土地利用の状況等を考慮して区域を区分し、都道府県都市計画審議会の議を経て定める数値が限度となります。用途地域内にはない10分の7が登場する点と、決めるのが都市計画ではなく特定行政庁である点が他と異なります。

    建ぺい率の緩和と制限の不適用

    特定行政庁が指定する角地

    建築基準法53条3項2号は、街区の角にある敷地またはこれに準ずる敷地で特定行政庁が指定するものの内にある建築物について、建ぺい率の限度に10分の1を加えると定めています。ここで落としてはならないのは「特定行政庁が指定するもの」という限定です。地図の上で角地に見えるだけでは加算されません。設問が「街区の角にある敷地であるから10分の1が加算される」と書いていれば、指定の要件を落としているので誤りです。

    「これに準ずる敷地」も含まれるため、厳密な角でなくとも、二方向が道路等に接するなど同等の敷地であれば指定の対象になり得ます。

    防火地域内の耐火建築物等

    53条3項1号は、防火地域内にある耐火建築物等について10分の1を加えると定めています。ただし括弧書きで、53条1項2号から4号までの規定により建ぺい率の限度が10分の8とされている地域は除かれています。これは加算されないという意味ではなく、後述するとおり、そこでは加算ではなく制限そのものが適用されなくなるからです。

    「耐火建築物等」は平成30年の法改正で導入された表現で、耐火建築物のほか、これと同等以上の延焼防止性能を有する建築物を含みます。押さえるべきは、耐火建築物等であることが要件であって、防火地域内にあるだけでは加算されない点です。木造の一般建築物なら加算はありません。

    準防火地域内の耐火建築物等または準耐火建築物等

    同じ53条3項1号は、準防火地域内にある耐火建築物等または準耐火建築物等についても10分の1の加算を認めています。準防火地域では準耐火建築物でも加算の対象になるという点が、防火地域との違いです。防火地域では耐火建築物等に限られ、準耐火建築物では加算されません。

    角地と防火の両方に該当すれば10分の2

    53条3項は、1号または2号のいずれか一方に該当する建築物には10分の1を、1号および2号の両方に該当する建築物には10分の2を加えると定めています。角地の加算と防火・準防火の加算は併用でき、合計で10分の2、すなわち20パーセント分の上乗せになります。これが建ぺい率の設問で最も頻繁に問われる形です。

    限度が10分の6の地域にある特定行政庁指定の角地で、防火地域内の耐火建築物であれば、限度は10分の8になります。準防火地域内の準耐火建築物で角地の場合も同じく10分の8です。加算の上限は10分の2で、これ以上積み増すことはできません。

    限度が10分の8の地域と防火地域の組合せは制限なし

    建築基準法53条6項1号は、防火地域内にある耐火建築物等のうち、53条1項2号から4号までの規定により建ぺい率の限度が10分の8とされている地域内にあるものについて、建ぺい率の制限を適用しないと定めています。加算して10分の9になるのではなく、制限そのものがなくなり、理屈のうえでは敷地いっぱいに建てられます。

    対象となるのは、商業地域のほか、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、準工業地域、近隣商業地域のうち都市計画で10分の8と定められた地域です。「商業地域だから」ではなく「限度が10分の8とされているから」が理由です。同項2号は巡査派出所、公衆便所、公共用歩廊その他これらに類するものについても、制限を適用しないとしています。

    なお角地は加算にとどまり、適用除外の理由にはなりません。「10分の8の地域の角地だから制限がなくなる」とする選択肢は誤りです。

    敷地が防火地域の内外にわたるときのみなし規定

    53条7項は、建築物の敷地が防火地域の内外にわたる場合において、その敷地内の建築物の全部が耐火建築物等であるときは、その敷地は全部が防火地域内にあるものとみなして、加算および適用除外の規定を適用すると定めています。同8項は、敷地が準防火地域と、防火地域および準防火地域以外の区域とにわたる場合において、建築物の全部が耐火建築物等または準耐火建築物等であるときは、その敷地は全部が準防火地域内にあるものとみなすとしています。

    敷地の一部しか防火地域に入っていなくても、建物全体を耐火建築物にすれば敷地全体で加算を受けられるという緩和です。一部が木造であればみなしは働きません。

    例題1 建ぺい率の加算

    敷地面積400平方メートル、第一種住居地域で都市計画により建ぺい率の限度は10分の6と定められている。この敷地は特定行政庁が指定する角地にあり、準防火地域内に準耐火建築物を建築する。建築面積の限度はいくらか。

    1. 基準となる限度を確認します。第一種住居地域で都市計画により定められた10分の6です。
    2. 角地の加算を確認します。特定行政庁の指定がある角地なので、53条3項2号により10分の1が加わります。
    3. 防火関係の加算を確認します。準防火地域内の準耐火建築物なので、同項1号により10分の1が加わります。
    4. 両方に該当するため加算は合計10分の2となり、限度は10分の6に10分の2を加えて10分の8です。
    5. 建築面積の限度は400平方メートルに10分の8を乗じて320平方メートルとなります。

    この敷地が防火地域内で、建築するのが準耐火建築物にとどまるなら防火の加算は得られず、限度は角地の10分の1だけを加えた10分の7、建築面積は280平方メートルです。地域と建築物の性能の組合せで答えが変わります。

    容積率の基本と前面道路による制限

    都市計画で定められる指定容積率

    建築基準法52条1項は、建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合は、用途地域の区分に応じて各号に定める数値以下でなければならないと定めています。建ぺい率と同じく、法律が候補を並べ、その中から都市計画が数値を選ぶ構造です。この都市計画で定められた数値を指定容積率と呼びます。

    候補の幅は地域によって異なり、低層住居専用地域と田園住居地域では10分の5から10分の20まで、中高層住居専用地域から準住居地域までと近隣商業地域・準工業地域では10分の10から10分の50まで、商業地域だけは10分の20から10分の130までと突出して大きくなっています。建ぺい率と違い商業地域でも一つに決まらないのは、都心と地方都市の商店街とで必要な床の量がまったく違うからです。

    前面道路の幅員が12メートル未満なら二段構え

    52条2項は、前面道路の幅員が12メートル未満である建築物の容積率は、その前面道路の幅員のメートルの数値に一定の数値を乗じたもの以下でなければならないと定めています。この計算で出た数値と指定容積率のうち、小さいほうが実際の限度です。

    裏返すと、前面道路の幅員が12メートル以上ならこの規定は働かず、指定容積率がそのまま限度になります。12メートルちょうどは「未満」に当たらないため制限はかかりません。

    法定乗数は住居系が10分の4、それ以外が10分の6

    前面道路の幅員に乗じる数値は用途地域によって決まります。第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域、第一種・第二種中高層住居専用地域、第一種・第二種住居地域、準住居地域が10分の4です。それ以外、すなわち近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域、および用途地域の指定のない区域は10分の6となります。

    例外として、第一種中高層住居専用地域から準住居地域までは、特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内では10分の6となります。10分の6が原則の地域も、同様の手続で指定された区域では10分の4または10分の8となることがあります。

    前面道路が二つ以上あるとき

    52条2項の括弧書きは、前面道路が二以上あるときはその幅員の最大のものによる、と定めています。狭いほうではなく広いほうです。二方向に道路が接している敷地は、交通を分散して受け止められるため、広いほうを基準にしてよいという考え方です。

    ここは建ぺい率の角地緩和と混線しやすい箇所です。角地の建ぺい率加算は特定行政庁の指定が要件ですが、容積率で広いほうの道路を使うことに指定は不要です。二方向道路の敷地が出たら、建ぺい率は指定の有無を確認し、容積率は無条件に広いほうを使う、と処理を分けてください。

    例題2 前面道路による制限が勝つ場合

    敷地面積300平方メートル、第二種住居地域、指定容積率は10分の30、前面道路は幅員6メートルの道路一本のみ。延べ面積の限度はいくらか。

    1. 前面道路の幅員が12メートル未満かを確認します。6メートルなので52条2項の制限がかかります。
    2. 用途地域から法定乗数を決めます。第二種住居地域は住居系なので10分の4です。
    3. 前面道路による容積率を計算します。6に10分の4を乗じて10分の24、すなわち240パーセントです。
    4. 指定容積率と比較します。10分の30と10分の24では後者が小さいため、限度は10分の24です。
    5. 延べ面積の限度は300平方メートルに2.4を乗じて720平方メートルとなります。

    例題3 指定容積率が勝つ場合

    敷地面積200平方メートル、近隣商業地域、指定容積率は10分の40。この敷地は幅員4メートルの道路と幅員8メートルの道路の二つに接している。延べ面積の限度はいくらか。

    1. 前面道路を確定します。二以上あるので幅員の最大のもの、すなわち8メートルを用います。
    2. 8メートルは12メートル未満なので、前面道路による制限がかかります。
    3. 近隣商業地域は住居系ではないため、法定乗数は10分の6です。
    4. 前面道路による容積率は8に10分の6を乗じて10分の48、すなわち480パーセントです。
    5. 指定容積率10分の40と比較すると指定容積率のほうが小さいため、限度は10分の40です。
    6. 延べ面積の限度は200平方メートルに4.0を乗じて800平方メートルとなります。

    狭いほうの4メートルを使うと10分の24となり、答えは480平方メートルになります。誤答の選択肢として必ず用意されている数値です。あわせて、前面道路による制限が常に勝つわけではなく、比較して小さいほうをとる操作だという点も、この例題で確認できます。

    容積率の算定に含めない部分と特定道路の緩和

    地階の住宅部分は3分の1まで不算入

    建築基準法52条3項は、建築物の地階でその天井が地盤面からの高さ1メートル以下にあるものの住宅または老人ホーム等の用途に供する部分の床面積を、住宅または老人ホーム等の用途に供する部分の床面積の合計の3分の1を限度として、容積率算定の基礎となる延べ面積に算入しないと定めています。

    要件が三つ重なっています。地階であること、天井が地盤面から1メートル以下にあること、住宅または老人ホーム等の用途であること。地下の店舗や事務所は対象外です。また限度は住宅部分の床面積の合計の3分の1であって、建築物全体の延べ面積の3分の1ではありません。分母を全体と読ませる出題があります。

    住宅の用途に供する部分の床面積の合計が300平方メートル、うち地階部分が120平方メートルなら、不算入は300平方メートルの3分の1である100平方メートルまでで、残り20平方メートルは算入されます。

    共用の廊下・階段とエレベーターの昇降路

    52条6項は、共同住宅または老人ホーム等の共用の廊下または階段の用に供する部分の床面積、およびエレベーターの昇降路の部分の床面積を、容積率算定の基礎となる延べ面積に算入しないと定めています。こちらには割合の限度がなく、全部が不算入です。

    地階の住宅部分と自動車車庫には限度があり、共用廊下・階段とエレベーターの昇降路には限度がない、という二分で整理してください。共用廊下・階段の不算入は共同住宅と老人ホーム等に限られ、事務所ビルは対象外です。

    自動車車庫は5分の1まで不算入

    施行令2条3項1号は、自動車車庫その他の自動車または自転車の停留または駐車のための施設の用に供する部分について、建築物の各階の床面積の合計の5分の1を限度として、容積率算定の基礎となる延べ面積に算入しないと定めています。こちらの分母は建築物全体の延べ面積であり、地階の住宅部分とは分母が違います。

    延べ面積1,000平方メートルの建築物に250平方メートルの駐車場がある場合、不算入は1,000平方メートルの5分の1である200平方メートルまでで、残る50平方メートルは算入され、容積率算定用の延べ面積は800平方メートルとなります。

    同じ施行令2条3項は、備蓄倉庫部分と蓄電池設置部分について50分の1、自家発電設備・貯水槽・宅配ボックスの設置部分について100分の1を限度として不算入としています。車庫の5分の1だけが大きく、それ以外は50分の1か100分の1という感覚で判別できます。

    特定道路からの距離による緩和

    建築基準法52条9項は、敷地が、幅員15メートル以上の道路すなわち特定道路に接続する幅員6メートル以上12メートル未満の前面道路のうち、特定道路からの延長が70メートル以内の部分で接する場合に、前面道路の幅員へ一定の数値を加えて計算することを認めています。加える数値は施行令135条の18により、12から前面道路の幅員を引いた値に、70から特定道路までの延長を引いた値を乗じ、70で割ったものです。

    適用の要件は三つです。特定道路の幅員が15メートル以上、前面道路の幅員が6メートル以上12メートル未満、特定道路からの延長が70メートル以内。前面道路が6メートル未満なら適用されず、12メートル以上ならそもそも前面道路による制限自体がかかりません。太い道路の近くにある敷地は交通の便がよいので、もう少し容積を認めてよいという発想です。

    例題4 特定道路の緩和

    敷地面積250平方メートル、第一種住居地域、指定容積率は10分の40。前面道路は幅員8メートルで、この道路は幅員15メートルの道路に接続しており、敷地は接続点から35メートルの位置にある。延べ面積の限度はいくらか。

    1. 適用要件を確認します。特定道路の幅員は15メートル以上、前面道路は8メートルで6メートル以上12メートル未満、延長は35メートルで70メートル以内なので、緩和が適用されます。
    2. 加える数値を計算します。12から8を引いて4、70から35を引いて35、4に35を乗じて140、これを70で割って2メートルです。
    3. 前面道路の幅員を8メートルに2メートルを加えた10メートルとして扱います。
    4. 第一種住居地域なので法定乗数は10分の4です。10に10分の4を乗じて10分の40、すなわち400パーセントです。
    5. 指定容積率10分の40と比較すると同値なので、限度は10分の40です。
    6. 延べ面積の限度は250平方メートルに4.0を乗じて1,000平方メートルとなります。

    緩和を使わなければ10分の32となり、延べ面積は800平方メートルにとどまります。200平方メートルの差が出るため、要件を満たしているのに適用し忘れると必ず誤答になります。

    敷地が二つ以上の地域にわたる場合

    建ぺい率と容積率は加重平均

    建築基準法53条2項は、敷地が建ぺい率の異なる地域にわたる場合について、各地域に属する敷地部分の割合に応じて按分した数値を限度とする趣旨を定めており、52条7項も容積率について同様です。地域ごとに面積と割合を掛けて足し、敷地全体の面積で割るという加重平均になります。

    実際の計算では、全体の割合をいったん出さずに、各部分の面積に各地域の限度を掛けて足すほうが速く済みます。その合計がそのまま建築面積の限度であり、容積率も同様に部分ごとの限度を足した数値が延べ面積の限度になります。選択肢が面積で示されているなら、割合に戻す必要はありません。

    容積率では、前面道路による制限も部分ごとに処理します。前面道路は敷地に一つでも、乗じる法定乗数は各部分が属する用途地域によって変わるからです。住居系の部分には10分の4、それ以外には10分の6を用い、それぞれ指定容積率と比較して小さいほうをとってから面積を掛けます。

    用途制限は過半主義

    同じ「またがる」でも、用途の制限は扱いが異なります。建築基準法91条は、建築物の敷地が用途の制限を受ける区域の二以上にわたる場合には、その敷地の過半が属する区域内の建築物に関する規定を適用すると定めています。按分ではなく、多いほうに寄せる処理です。

    第一種低層住居専用地域が300平方メートル、近隣商業地域が200平方メートルの敷地なら、用途制限は全体が第一種低層住居専用地域として扱われ、そこで建てられない用途は敷地のどこにも建てられません。一方で建ぺい率と容積率は按分であり、同じ敷地に二つの処理が同時に働きます。

    防火地域は厳しいほうに寄せる

    建築基準法65条1項は、建築物が防火地域または準防火地域と、これらの地域として指定されていない区域とにわたる場合には、その全部について防火地域または準防火地域内の建築物に関する規定を適用すると定めています。同条2項は、建築物が防火地域および準防火地域にわたる場合には、その全部について防火地域内の建築物に関する規定を適用するとしています。いずれも厳しいほうに統一する処理で、防火壁で区画されている場合の例外があります。

    なお65条の基準は「建築物」がまたがるかどうかで、91条や53条2項が「敷地」を基準にしているのと対象が違います。防火地域の指定線が敷地を横切っていても、建物自体が防火地域内に収まっていれば防火地域の規定によります。

    三つの扱いを並べて確認する

    処理は三通りです。用途制限は過半が属する区域の規定を全体に適用し、建ぺい率と容積率は面積比で加重平均し、防火地域と準防火地域は厳しいほうを全体に適用します。第一種住居地域と近隣商業地域にまたがり一部が防火地域にかかる敷地、といった設定で三つを同時に問う形が定番です。地域ごとの数値の暗記は用途地域の覚え方を使ってください。

    例題5 二つの用途地域にわたる敷地

    敷地面積600平方メートルのうち、400平方メートルが第一種住居地域(建ぺい率の限度10分の6、指定容積率10分の30)に、200平方メートルが近隣商業地域(建ぺい率の限度10分の8、指定容積率10分の40)に属している。前面道路は幅員6メートルの道路一本のみで、角地の指定や防火地域の指定はない。建築面積と延べ面積の限度はいくらか。

    1. 建築面積は部分ごとに計算します。第一種住居地域の部分は400平方メートルに10分の6を乗じて240平方メートル、近隣商業地域の部分は200平方メートルに10分の8を乗じて160平方メートルです。
    2. 合計すると建築面積の限度は400平方メートルとなります。敷地全体でみれば600分の400、すなわち約66.7パーセントに相当します。
    3. 容積率は部分ごとに前面道路による制限を確認します。前面道路は6メートルで12メートル未満なので制限がかかります。
    4. 第一種住居地域の部分は乗数10分の4なので6に0.4を乗じて10分の24です。指定容積率10分の30と比べて小さいため10分の24を採ります。
    5. 近隣商業地域の部分は乗数10分の6なので6に0.6を乗じて10分の36です。指定容積率10分の40と比べて小さいため10分の36を採ります。
    6. 延べ面積は400平方メートルに2.4を乗じた960平方メートルと、200平方メートルに3.6を乗じた720平方メートルの合計で1,680平方メートルとなります。

    計算問題を解く手順と総合例題

    数字を確定させる順序

    計算問題は次の順で処理すると抜けが生じません。順序を固定することが、安定して得点する近道です。

    1. 敷地面積を確定します。42条2項道路によるセットバックがあれば、後退部分を除いた面積に直します。
    2. 敷地が複数の地域にわたるかを確認します。わたるなら、以降の建ぺい率と容積率の計算を部分ごとに行うことを決めておきます。
    3. 建ぺい率の基準となる限度を、用途地域と都市計画で定められた数値から読み取ります。
    4. 建ぺい率の加算を確認します。特定行政庁が指定する角地かどうか、防火地域内の耐火建築物等または準防火地域内の耐火建築物等・準耐火建築物等かどうかを見て、該当する数だけ10分の1ずつ、最大10分の2まで加えます。
    5. 建ぺい率の適用除外に当たるかを確認します。限度が10分の8とされている地域で防火地域内の耐火建築物等なら、制限は適用されません。
    6. 建築面積の限度を計算します。敷地面積に確定した建ぺい率を乗じます。
    7. 前面道路の幅員を確定します。二以上あれば最大のもの、42条2項道路なら4メートル、特定道路の緩和が使えるなら加算後の数値です。
    8. 前面道路の幅員が12メートル未満なら、用途地域に応じた法定乗数を乗じ、指定容積率と比較して小さいほうを採ります。12メートル以上なら指定容積率がそのまま限度です。
    9. 延べ面積の限度を計算します。敷地面積に確定した容積率を乗じます。不算入部分がある設問なら、算定用の延べ面積との対応を確認します。

    総合例題 セットバックと緩和が同時に出る場合

    第一種住居地域内にあり、都市計画で建ぺい率の限度は10分の6、指定容積率は10分の30と定められている。敷地の登記上の面積は210平方メートルで、間口10メートルの側が幅員3メートルの道路(建築基準法42条2項の規定により道路とみなされるもの)に接している。道路の反対側は宅地である。この敷地は準防火地域内にあり、準耐火建築物を建築する。特定行政庁による角地の指定はない。建築面積と延べ面積の限度はいくらか。

    1. セットバックを処理します。道路の中心線から2メートルの線が境界線とみなされるため、幅員3メートルの道路の中心線から2メートル、すなわち自分の敷地側に0.5メートル後退します。
    2. 後退部分の面積は間口10メートルに0.5メートルを乗じて5平方メートルです。これを除いた205平方メートルが敷地面積となります。
    3. 建ぺい率を確定します。基準は10分の6、角地の指定はないので加算はなく、準防火地域内の準耐火建築物なので10分の1が加算されて10分の7です。
    4. 建築面積の限度は205平方メートルに0.7を乗じて143.5平方メートルとなります。
    5. 前面道路の幅員を確定します。42条2項道路はセットバック後の4メートルとして扱います。
    6. 12メートル未満なので法定乗数を乗じます。第一種住居地域は10分の4なので、4に0.4を乗じて10分の16、すなわち160パーセントです。
    7. 指定容積率10分の30と比較すると10分の16が小さいため、容積率の限度は10分の16です。
    8. 延べ面積の限度は205平方メートルに1.6を乗じて328平方メートルとなります。

    登記面積210平方メートルのまま計算すると建築面積147平方メートル、延べ面積336平方メートルとなり、いずれも誤りです。計算問題全般の解き方は宅建の計算問題まとめに整理してあります。

    試験での出題ポイント

    建ぺい率で狙われるところ

    第一に、角地の加算に「特定行政庁が指定する」という要件が付いている点です。単に街区の角にあるだけで加算されるとした選択肢は誤りです。第二に、防火地域では耐火建築物等、準防火地域では耐火建築物等または準耐火建築物等という性能要件の違いで、防火地域内の準耐火建築物には加算がありません。第三に、限度が10分の8の地域と防火地域内の耐火建築物等の組合せが、加算ではなく適用除外である点です。

    53条6項2号の巡査派出所、公衆便所、公共用歩廊も問われます。用途地域や防火地域と無関係に制限を受けない点が要点です。

    容積率で狙われるところ

    前面道路の幅員が12メートル未満かどうかという分岐が最頻出で、12メートル以上の場合に法定乗数を掛けさせる誤りが定番です。次に法定乗数の値そのもので、住居系が10分の4、それ以外が10分の6という対応を逆にした選択肢が出ます。三つ目が、前面道路が二以上ある場合に幅員の最大のものを用いる点で、狭いほうや平均を使わせる誤りが用意されます。前面道路による容積率が常に採用されるわけではなく、例題3のように指定容積率が勝つ場合がある点も問われます。

    面積の定義で狙われるところ

    セットバック部分を敷地面積に算入しないという施行令2条1項1号のただし書きは、計算問題の入口として頻繁に使われます。軒やひさしが1メートル以上突き出ている場合に、その端から1メートル後退した線で建築面積を測る処理も問われます。容積率算定の延べ面積では、地階の住宅部分が住宅部分の3分の1まで、自動車車庫が全体の延べ面積の5分の1までという分母の違いが狙われます。高さの制限は高さ制限と斜線制限、建ぺい率・容積率が集団規定として原則的に都市計画区域および準都市計画区域内にのみ適用される点は建築基準法の全体像を参照してください。

    覚え方・整理の仕方

    加算は10分の1を二回まで

    建ぺい率の加算は、角地で一回、防火または準防火で一回、合計二回までと覚えます。一回につき10分の1なので最大10分の2で、三つ目の加算理由は存在しません。そして「限度が10分の8プラス防火地域内の耐火建築物等」だけは加算の枠外で、制限そのものがなくなります。加算は二回まで、除外は一通り、という数え方です。

    乗数は住居系が4、それ以外が6

    前面道路に乗じる数値は、住居系が10分の4、それ以外が10分の6です。住居系のほうが人を詰め込まない地域なので数値が小さい、と趣旨で覚えると入れ替わりません。乗数が小さいほど容積率は小さくなり規制は厳しくなる、という向きも確認しておいてください。

    分母が違う二つの不算入

    容積率の不算入で限度があるのは地階の住宅部分と自動車車庫で、前者は住宅部分の3分の1、後者は全体の延べ面積の5分の1と分母が違います。住宅は住宅の中で、車庫は建物全体の中で、と対にして覚えてください。共用廊下・階段とエレベーターの昇降路には限度がなく全部が不算入です。

    またがるときは過半・按分・厳しいほう

    敷地が複数の地域にわたるときは、用途制限が過半、建ぺい率と容積率が按分、防火地域が厳しいほうです。三つの言葉の順に、建築基準法91条、53条2項および52条7項、65条という条文が対応します。ひとつの設問で二つ以上が同時に問われるため、言葉のレベルで固定しておくと迷いません。暗記全体の設計は法令上の制限の暗記法、他分野との関係は法令上の制限の横断整理にまとめてあります。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 商業地域内で、かつ防火地域内にある耐火建築物については、建ぺい率の限度が10分の8に10分の1を加えた10分の9となる。(○か×か)

    答えを見る ×:商業地域は建築基準法53条1項4号により建ぺい率の限度が10分の8とされている地域です。この地域内で防火地域内にある耐火建築物等については、同条6項1号により建ぺい率の制限が適用されません。10分の9になるのではなく、制限そのものがなくなります。

    Q2. 前面道路の幅員が12メートル以上である場合であっても、当該幅員に用途地域に応じた数値を乗じて得た容積率と指定容積率とを比較し、小さいほうが限度となる。(○か×か)

    答えを見る ×:前面道路の幅員による容積率の制限は、建築基準法52条2項により前面道路の幅員が12メートル未満である場合に働きます。12メートル以上であれば同項の適用はなく、都市計画で定められた指定容積率がそのまま限度となります。12メートルちょうどの場合も「未満」に当たらないため制限はかかりません。

    Q3. 敷地が幅員4メートルの道路と幅員10メートルの道路に接している場合、容積率の算定にあたっては幅員4メートルの道路を前面道路とする。(○か×か)

    答えを見る ×:建築基準法52条2項は、前面道路が二以上あるときはその幅員の最大のものによると定めています。この事例では幅員10メートルの道路が前面道路です。なお、建ぺい率の10分の1加算には特定行政庁による角地の指定が必要ですが、容積率で広いほうを使うことに指定は不要です。

    Q4. 建築物の敷地が第一種住居地域と近隣商業地域にわたる場合、建ぺい率および容積率は、敷地の過半が属する地域の数値を敷地全体に適用する。(○か×か)

    答えを見る ×:過半が属する区域の規定を全体に適用するのは建築物の用途の制限です(建築基準法91条)。建ぺい率と容積率は、各地域に属する敷地部分の面積比に応じた加重平均で求めます(同法53条2項、52条7項)。用途は過半、規模は按分、防火地域は厳しいほう、という三通りの区別が要点です。

    Q5. 共同住宅の共用の廊下および階段の用に供する部分の床面積は、容積率の算定の基礎となる延べ面積に算入しない。(○か×か)

    答えを見る ○:建築基準法52条6項により、共同住宅または老人ホーム等の共用の廊下または階段の用に供する部分、およびエレベーターの昇降路の部分は、割合の限度なく全部が不算入です。限度が定められているのは、地階の住宅部分(住宅部分の床面積の合計の3分の1まで、同条3項)と自動車車庫等(延べ面積の5分の1まで、施行令2条3項1号)で、分母も限度も異なります。

    まとめ

    建ぺい率と容積率の計算は、公式そのものより、公式に入れる数字を確定させる手順で決まります。敷地面積はセットバックの有無で変わり、建ぺい率は角地と防火の加算が最大10分の2、限度が10分の8の地域と防火地域内の耐火建築物等の組合せでは制限自体がなくなります。容積率は前面道路の幅員が12メートル未満かどうかで分岐し、未満なら住居系10分の4、それ以外10分の6を乗じた数値と指定容積率のうち小さいほうを採ります。

    敷地が複数の地域にわたるときは、用途制限が過半、建ぺい率と容積率が按分、防火地域が厳しいほうという三通りを取り違えないことです。同じ「またがる」で三つの扱いが動くため、設問はここを集中的に突いてきます。建築確認との関係は建築確認で扱っています。

    宅建試験AIブートラボのアプリでは、建ぺい率と容積率の計算を肢ごとに演習でき、加算の見落としや按分の取り違えといった間違え方の傾向を確認しながら繰り返し解けます。

    読んだ内容を、法令上の制限の肢で確かめる

    都市計画法・建築基準法・農地法は数字の暗記が中心です。繰り返しの肢別トレーニングが一番効きます。

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