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高さ制限と斜線制限|どの地域に何がかかるか

法令上の制限 読了 約24分

建築基準法の高さ制限を条文と別表から整理します。絶対高さ55条、道路斜線・隣地斜線・北側斜線56条、日影規制56条の2の適用地域と数値、緩和の仕組みまで。

目次

    この記事は、建築基準法が定める建築物の高さの制限を、条文と別表にもとづいて整理するものです。同じ集団規定でも建蔽率・容積率は敷地に対する大きさの制限なので建ぺい率と容積率とは|制度の意味と物件の見方に、集団規定全体での位置づけは建築基準法の全体像|単体規定と集団規定にまとめてあります。

    先に結論を述べます。高さを制限する規定は四つあり、それぞれ守ろうとしているものが違います。絶対高さ制限は低層住宅地の街並みを、道路斜線制限は道路の上空を、隣地斜線制限は隣地の通風と採光を、北側斜線制限と日影規制は北側の日照を守っています。

    そして、この記事でもっとも重要なのは「どの地域にどれがかかるか」です。絶対高さ制限は低層住居専用地域と田園住居地域だけ。隣地斜線制限はその3地域には適用がありません。北側斜線制限は低層住専・田園住居・中高層住専の5地域だけ。日影規制は商業地域・工業地域・工業専用地域が対象外です。

    この対応関係は丸暗記すると崩れます。なぜその地域にその制限があるのか、あるいはないのかを趣旨から導けるようにしておくと、取り違えなくなります。

    高さを制限する規定は四つある

    四つの規定と、それぞれが守るもの

    建築基準法の高さ制限は、条文の位置で四つに分かれます。

    55条が絶対高さ制限です。低層住居専用地域と田園住居地域で、建築物の高さそのものに上限を設けます。

    56条1項1号が道路斜線制限。前面道路の反対側から斜めに引いた線の内側に建物を収めさせ、道路の上空を確保します。

    56条1項2号が隣地斜線制限。隣地境界線の上の一定の高さから斜線を引き、隣地側の通風と採光を確保します。

    56条1項3号が北側斜線制限。北側の境界線から真北方向に斜線を引き、北側の敷地の日照を守ります。

    そして56条の2が日影規制です。斜線という形ではなく、冬至日に一定時間以上の日影を生じさせないという形で規律します。

    「形で規制する」ものと「結果で規制する」もの

    四つを性格で分けると理解が進みます。

    絶対高さ制限と三つの斜線制限は、建物の形を直接に規律します。この線の内側に収めなさい、という規制です。設計の段階で図面上で判定できます。

    これに対し日影規制は、建物の形ではなく、その建物が周囲に落とす影の時間を規律します。同じ高さの建物でも、敷地の形や建物の配置によって影の落ち方が変わるので、結果として許される形が変わります。

    この違いは、規制の後発性からきています。斜線制限のような形の規制だけでは、細長い建物や配置の工夫で実質的な日照被害を防げない場面が出てきます。そこで結果で縛る仕組みが加えられました。

    高さの制限はすべて集団規定

    四つとも建築基準法第3章に置かれた集団規定です。41条の2により、都市計画区域および準都市計画区域の内に限って適用されます。都市計画区域外の建築物には、これらの高さ制限はかかりません。単体規定との違いは建築基準法の全体像|単体規定と集団規定で扱っています。

    絶対高さ制限(55条)

    10メートルまたは12メートル

    55条1項は「第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域又は田園住居地域内においては、建築物の高さは、十メートル又は十二メートルのうち当該地域に関する都市計画において定められた建築物の高さの限度を超えてはならない」と定めています。

    適用されるのは三つの地域だけです。第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域。中高層住居専用地域には適用されません。名前が似ているので取り違えやすい箇所です。用途地域の全体像は用途地域13種類と建築制限を参照してください。

    数値は10メートルまたは12メートルで、どちらになるかは都市計画で定められます。法律が二つの選択肢を用意し、地域の実情に応じて都市計画が選ぶという構造です。

    三つの地域だけに置かれている理由

    なぜこの三つなのか。低層住宅の環境を守るための地域だからです。低層住居専用地域は、二階建て程度の戸建て住宅が並ぶ街並みを想定しています。そこに高い建物が建てば、日照も通風も景観も一変します。

    斜線制限のように隣地との関係で相対的に決めるのではなく、絶対的な上限を切ってしまうほうが、街並みの均質さを保てます。だから「絶対」高さ制限と呼ばれます。

    この趣旨を押さえておくと、あとで出てくる「低層住専と田園住居には隣地斜線制限が適用されない」という結論も自然に導けます。

    四つの例外

    55条には例外が用意されています。整理しておきます。

    55条2項は、高さの限度が10メートルと定められた地域について、敷地内に政令で定める空地を有し、かつ敷地面積が政令で定める規模以上である建築物で、特定行政庁が低層住宅に係る良好な住居の環境を害するおそれがないと認めるものの限度を12メートルとするものです。ここは12メートルまでの引き上げであって、制限がなくなるわけではありません。

    55条3項は、再生可能エネルギー源の利用に資する設備の設置のため必要な屋根に関する工事などを行う建築物で、構造上やむを得ないものとして国土交通省令で定めるものについて、特定行政庁が許可した範囲内で限度を超えられるとするものです。

    55条4項は、1号がその敷地の周囲に広い公園、広場、道路その他の空地を有する建築物で特定行政庁が許可したもの、2号が学校その他の建築物でその用途によってやむを得ないと認めて特定行政庁が許可したものについて、1項と2項を適用しないとしています。

    そして55条5項が、3項および4項各号の許可について44条2項を準用しています。44条2項は建築審査会の同意を要求する規定なので、これらの許可には建築審査会の同意が必要になります。

    2項が特定行政庁の認定で足りる引き上げ、3項と4項が建築審査会の同意を得た許可による適用除外。手続の重さが違う点が問われます。

    外壁の後退距離(54条)

    同じ三つの地域には、隣接する条文にもうひとつ制限があります。54条1項は、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域内において、建築物の外壁またはこれに代わる柱の面から敷地境界線までの距離が、都市計画で外壁の後退距離の限度が定められた場合には、その限度以上でなければならないと定めています。

    54条2項は、その限度を1.5メートルまたは1メートルとしています。高さではなく水平方向の制限ですが、低層住宅地の環境を守るという目的は共通です。都市計画で定められた場合にのみ働く点に注意してください。定められていない地域では後退の義務はありません。

    道路斜線制限(56条1項1号)

    反対側の境界線から測る

    56条1項1号は、前面道路の反対側の境界線からの水平距離に一定の数値を乗じた高さ以下としなければならないと定めています。起点が「自分の側の道路境界線」ではなく「反対側の境界線」である点が最初のポイントです。道路の幅員が広いほど、高く建てられることになります。

    具体的な数値と距離は別表第三が定めています。

    勾配は1.25と1.5

    別表第三(に)欄の数値が勾配にあたります。

    一の項は、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、田園住居地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域で、数値は1.25です。

    二の項が近隣商業地域と商業地域、三の項が準工業地域、工業地域、工業専用地域で、いずれも1.5です。

    四の項は、第一種住居地域・第二種住居地域・準住居地域・準工業地域内について定められた高層住居誘導地区内の建築物で、住宅の用途に供する部分の床面積の合計が延べ面積の3分の2以上であるもので、1.5です。住居系の地区でありながら1.5になる例外なので、「住居系はすべて1.25」と言い切ると誤ります。

    五の項が用途地域の指定のない区域で、1.25または1.5のうち特定行政庁が定めるものです。

    住居系は緩やかな勾配で低く抑え、商業系・工業系は急な勾配で高く建てられるようにする。これが数値の意味です。

    適用距離という考え方

    道路斜線制限には、他の斜線制限にない特徴があります。適用される範囲に距離の限界があることです。

    別表第三(は)欄が「距離」を定めており、前面道路の反対側の境界線からこの距離以下の範囲内でのみ道路斜線制限がかかります。距離を超えた奥の部分には、道路斜線制限は及びません。

    距離は容積率の限度に応じて変わります。一の項では、容積率の限度が10分の20以下なら20メートル、10分の20を超え10分の30以下なら25メートル、10分の30を超え10分の40以下なら30メートル、10分の40を超える場合は35メートルです。二の項の近隣商業・商業では、容積率に応じて20メートルから50メートルまで、より長く設定されています。

    容積率が大きい地域ほど適用距離が長い。大きな建物が建つ地域では、道路から遠い部分まで規律する必要があるからです。容積率そのものの考え方は建ぺい率と容積率とは|制度の意味と物件の見方にあります。

    後退による緩和(56条2項)

    56条2項は、建築物が前面道路の境界線から後退している場合について、反対側の境界線を後退距離だけ外側に移動したものとみなすと定めています。

    道路から下がって建てれば、そのぶん斜線の起点が遠ざかり、高く建てられます。後退距離は、建築物から前面道路の境界線までの水平距離のうち最小のものです。42条2項によるセットバックとは別の話ですが、いずれも「下がる」という語が使われるので混同しないでください。セットバックはセットバックとは?道路幅員4mルールをわかりやすく解説で扱っています。

    前面道路が12メートル以上のとき(56条3項)

    56条3項は、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域で前面道路の幅員が12メートル以上である場合について、別表第三の1.25を読み替える規定を置いています。反対側の境界線からの水平距離が前面道路の幅員に1.25を乗じて得たもの以上の区域内では、1.5になります。

    広い道路に面していれば、遠い部分については商業系と同じ勾配でよい、という緩和です。

    隣地斜線制限(56条1項2号)

    立ち上がりがあるのが特徴

    隣地斜線制限は、隣地境界線からの水平距離に数値を乗じたものに、一定の高さを加えた高さ以下とする制限です。この「加える一定の高さ」を立ち上がりと呼びます。

    道路斜線が地面から斜線を引くのに対し、隣地斜線は一定の高さまでは垂直に立てられ、そこから斜線が始まります。したがって、立ち上がりの高さ以下の建物には隣地斜線制限が実質的にかかりません。

    数値は1.25と2.5、立ち上がりは20メートルと31メートル

    56条1項2号はイからニまでで区分しています。

    イが第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域で、数値は1.25です。ただし括弧書きで、容積率の限度が10分の30以下とされている中高層住専以外の地域のうち特定行政庁が指定する区域内の建築物は2.5とされています。

    ロが近隣商業地域、準工業地域、商業地域、工業地域、工業専用地域で2.5。

    ハが高層住居誘導地区内の建築物で住宅部分が延べ面積の3分の2以上のもので2.5。

    ニが用途地域の指定のない区域で、1.25または2.5のうち特定行政庁が定めるものです。

    そして立ち上がりは、数値が1.25の場合は20メートル、2.5の場合は31メートルです。数値と立ち上がりが連動している点を押さえてください。1.25なら20メートル、2.5なら31メートル、という組で覚えます。

    低層住専と田園住居には適用がない

    条文のイからニまでを見ると、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域が出てきません。これらの地域には隣地斜線制限が適用されないということです。

    理由は明快です。これらの地域には55条の絶対高さ制限があり、そもそも10メートルまたは12メートルまでしか建てられません。隣地斜線の立ち上がりは低いほうでも20メートルなので、絶対高さ制限を満たしていれば隣地斜線には絶対に触れません。規定を置く意味がないのです。

    「絶対高さ制限があるから隣地斜線は不要」という関係を理解しておけば、この一点だけを暗記する必要がなくなります。

    北側斜線制限(56条1項3号)

    真北方向に測る

    56条1項3号は、前面道路の反対側の境界線または隣地境界線までの真北方向の水平距離に1.25を乗じたものに、一定の高さを加えた高さ以下とする制限です。

    他の斜線制限と違い、方角が指定されています。北側の敷地の日照を守るための制限だからです。勾配は1.25で固定されており、地域による違いはありません。

    立ち上がりは地域によって二段階です。第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域では5メートル。第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域では10メートルです。

    低層のほうが立ち上がりが低い、つまり制限が厳しい。低層住宅地のほうが日照への要求が高いという価値判断が数値に表れています。

    適用されるのは五つの地域

    北側斜線制限が適用されるのは、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域の五つです。

    第一種住居地域や第二種住居地域には適用されません。同じ住居系でも、住居専用地域と住居地域では扱いが違います。名称が紛らわしいので、「専用」が付くものと田園住居だけ、と押さえてください。

    中高層住専で外れる場合がある

    56条1項3号には括弧書きがあります。第一種中高層住居専用地域と第二種中高層住居専用地域のうち、56条の2第1項の条例で別表第四の二の項に規定する(一)、(二)または(三)の号が指定されているものを除く、というものです。

    平たく言えば、日影規制の対象区域として指定された中高層住居専用地域では、北側斜線制限が適用されなくなります。日影規制のほうがより直接に日照を守る仕組みなので、両方をかける必要がないという整理です。

    注意したいのは、この除外が中高層住居専用地域についてのものだということです。低層住居専用地域と田園住居地域では、日影規制の対象区域であっても北側斜線制限は適用され続けます。

    日影規制(56条の2)

    条例で指定された区域にかかる

    56条の2第1項は、別表第四(い)欄の各項に掲げる地域または区域の全部または一部で地方公共団体の条例で指定する区域を対象区域とし、その区域内にある一定の建築物について、冬至日に一定時間以上の日影を生じさせないことを求めています。

    ここでの構造は二段階です。まず法律が別表第四で対象になりうる地域を列挙し、次にその中から地方公共団体が条例で実際の対象区域を指定します。法律だけでは対象区域は決まりません。

    対象になりうる地域と、ならない地域

    別表第四(い)欄が挙げるのは四つの項です。

    一の項が第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域。二の項が第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域。三の項が第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、準工業地域。四の項が用途地域の指定のない区域です。

    裏返すと、商業地域、工業地域、工業専用地域は別表第四に登場しません。これらの地域は日影規制の対象になりえません。商業地域は高密度の利用が予定されており、工業地域と工業専用地域は住環境の保護を主眼としていないためです。

    なお、用途地域の指定のない区域も対象になりうる点は落とされがちです。

    対象となる建築物

    別表第四(ろ)欄が定めています。

    一の項の低層住居専用地域と田園住居地域では、軒の高さが7メートルを超える建築物、または地階を除く階数が3以上の建築物です。「地階を除く」という限定に注意してください。地下1階地上2階の建物は階数3以上にあたりません。

    二の項の中高層住居専用地域と三の項の住居地域・準住居・近隣商業・準工業では、高さが10メートルを超える建築物です。

    四の項の用途地域の指定のない区域では、イとロのどちらを適用するかを条例で指定します。イが軒の高さ7メートル超または地階を除く階数3以上、ロが高さ10メートル超です。

    低層系は軒7メートルまたは3階、それ以外は高さ10メートル。この二本立てで覚えます。

    測る条件

    56条の2第1項が定める測定の条件も押さえておきます。

    日時は冬至日の真太陽時による午前8時から午後4時までです。北海道については午前9時から午後3時までとされています。冬至日を基準にするのは、一年で太陽高度がもっとも低く、影がもっとも長くなる日だからです。

    測定面の高さは別表第四(は)欄が定めており、一の項が平均地盤面から1.5メートル、二の項と三の項が4メートルまたは6.5メートル(条例で指定)、四の項はイが1.5メートル、ロが4メートルです。1.5メートルは1階の窓、4メートルは2階の窓の高さに相当します。

    そして規制される範囲は、敷地境界線からの水平距離が5メートルを超える範囲です。別表第四はこれを、10メートル以内の範囲と10メートルを超える範囲に分けて、それぞれ許される日影時間を定めています。敷地のすぐ際まで規制するのではなく、5メートルより外側を守る仕組みです。

    二つのみなし規定と、許可

    56条の2第2項は、同一の敷地内に2以上の建築物がある場合に、これらを一の建築物とみなすと定めています。棟を分ければ規制を逃れられる、ということにはなりません。

    同条4項が重要です。対象区域外にある高さが10メートルを超える建築物で、冬至日において対象区域内の土地に日影を生じさせるものは、対象区域内にある建築物とみなして規制が適用されます。対象区域の外に建てても、影が対象区域に届けば規制されるということです。

    そして1項ただし書に、特定行政庁が土地の状況等により周囲の居住環境を害するおそれがないと認めて建築審査会の同意を得て許可した場合の例外があります。

    どの地域に何がかかるか

    ここまでの適用関係をまとめます。用途地域を上から順に見ていきます。

    第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域の三つでは、絶対高さ制限が適用され、道路斜線制限が適用され、北側斜線制限が適用されます。隣地斜線制限は適用されません。日影規制の対象になりえます。外壁の後退距離が都市計画で定められることもあります。この三つは高さ規制がもっとも厳しい地域です。

    第一種中高層住居専用地域と第二種中高層住居専用地域では、絶対高さ制限がなく、道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限がすべて適用されます。ただし日影規制の対象区域に指定されると北側斜線制限が外れます。日影規制の対象になりえます。

    第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域では、絶対高さ制限と北側斜線制限がなく、道路斜線制限と隣地斜線制限が適用されます。日影規制の対象になりえます。

    近隣商業地域と準工業地域では、道路斜線制限と隣地斜線制限が適用され、日影規制の対象になりえます。

    商業地域、工業地域、工業専用地域では、道路斜線制限と隣地斜線制限だけです。北側斜線制限はなく、日影規制の対象にもなりません。

    用途地域の指定のない区域では、道路斜線制限と隣地斜線制限が適用され、日影規制の対象になりえます。

    道路斜線制限だけが例外なくすべてに適用される、という点をまず押さえ、そこから引き算で考えると整理が速くなります。用途地域そのものの覚え方は用途地域13種の一覧と覚え方にまとめてあります。

    複数の制限と、緩和の仕組み

    すべてを満たす必要がある

    56条1項の柱書は「建築物の各部分の高さは、次に掲げるもの以下としなければならない」と書いています。各号のいずれか、ではありません。適用される号のすべてを満たす必要があります。

    したがって、道路斜線と北側斜線の両方が適用される地域では、両方の斜線の内側に収める必要があり、結果として厳しいほうが実際の上限を決めます。絶対高さ制限がある地域では、それも含めて最も厳しいものが効きます。

    「複数の制限があるときは最も厳しいものが適用される」という説明は、この構造を言い換えたものです。

    天空率による適用除外(56条7項)

    56条7項は、斜線制限によって高さが制限された場合に確保される採光、通風等と同程度以上のものが確保されるものとして政令で定める基準に適合する建築物について、それぞれの斜線制限を適用しないと定めています。これが天空率と呼ばれる仕組みです。

    判定の位置も条文が定めています。1号の道路斜線については前面道路の反対側の境界線上の政令で定める位置、2号の隣地斜線については隣地境界線からの水平距離が16メートル(数値1.25の場合)または12.4メートル(数値2.5の場合)だけ外側の線上の位置、3号の北側斜線については隣地境界線から真北方向への水平距離が4メートル(低層住専・田園住居)または8メートル(中高層住専)だけ外側の線上の位置です。

    斜線を守る代わりに、同等の採光・通風が確保されていることを別の方法で示す。形の規制を、結果の規制に置き換える選択肢だと考えると理解しやすくなります。

    なお、天空率は三つの斜線制限についての制度であり、絶対高さ制限と日影規制には適用されません。

    高度地区は別の法律の制度

    高さの制限としてもう一つ、高度地区という言葉が出てきます。これは建築基準法ではなく都市計画法の制度です。

    都市計画法9条18項は「高度地区は、用途地域内において市街地の環境を維持し、又は土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度又は最低限度を定める地区とする」と定めています。同法8条1項3号の地域地区のひとつです。

    押さえるべき点が二つあります。第一に、高度地区は用途地域内にのみ定められること。第二に、最高限度だけでなく最低限度も定められることです。建築基準法の高さ制限がすべて上限の規制であるのに対し、高度地区では「これ以上の高さにしなさい」という下限を定めることもできます。駅前などで低層の建物が残らないようにする場面で使われます。

    なお、名称が似ている高度利用地区(同条19項)は容積率や建蔽率などを定める地区で、高さの制限ではありません。地域地区の全体像は都市計画法の全体像|区域区分・用途地域・開発許可で扱っています。

    高さ制限が適用されない場合(57条)

    57条1項は、高架の工作物内に設ける建築物で、特定行政庁が周囲の状況により交通上、安全上、防火上および衛生上支障がないと認めるものについて、前三条の規定を適用しないとしています。前三条とは55条、56条、56条の2、つまり絶対高さ制限、斜線制限、日影規制のすべてです。

    同条2項は、道路内にある建築物(高架の道路の路面下に設けるものを除く)について、56条1項1号および2項から4項までの規定を適用しないとしています。こちらは道路斜線制限に関する部分だけの適用除外です。道路内に建築物を建てられる場合そのものは44条が定めており、接道義務|2メートル要件と例外・条例による付加で扱っています。

    敷地が二つの地域にまたがるとき

    56条5項は、建築物が1項2号および3号の地域、地区または区域の二以上にわたる場合について、「建築物」を「建築物の部分」と読み替えると定めています。隣地斜線と北側斜線は、敷地単位ではなく建築物の部分ごとに、その部分が属する地域の規定を適用するということです。

    建蔽率と容積率が加重平均、用途制限が過半主義であるのと処理が違います。制限の性質が違うので処理も違う、という点は建ぺい率と容積率の計算問題攻略|角地緩和・前面道路制限とあわせて確認してください。

    試験での出題ポイント

    絶対高さ制限の地域を広げる

    「絶対高さ制限は中高層住居専用地域にも適用される」は誤りです。55条1項が挙げるのは第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域の三つだけです。数値を「10メートルまたは15メートル」などに変える肢も作られます。正しくは10メートルまたは12メートルです。

    隣地斜線の不適用を落とす

    「隣地斜線制限はすべての用途地域に適用される」は誤りです。低層住居専用地域2種と田園住居地域には適用されません。理由まで問われることは少ないものの、絶対高さ制限との関係で覚えておくと確実になります。

    北側斜線の範囲を住居地域まで広げる

    「北側斜線制限は第一種住居地域にも適用される」は誤りです。適用されるのは低層住居専用地域2種、田園住居地域、中高層住居専用地域2種の五つです。立ち上がりを入れ替える肢もあり、正しくは低層系が5メートル、中高層系が10メートルです。勾配はいずれも1.25です。

    日影規制の対象地域を入れ替える

    「商業地域でも日影規制が適用されることがある」は、区域指定という意味では誤りです。別表第四(い)欄に商業地域、工業地域、工業専用地域は含まれていません。ただし56条の2第4項により、対象区域外にある高さ10メートル超の建築物が対象区域内に日影を生じさせる場合には規制が及ぶので、「商業地域に建つ建物が日影規制の適用を受けることは絶対にない」という言い方も誤りになります。区域として指定されるかどうかと、規制が及ぶかどうかを分けてください。

    対象建築物の数値をずらす

    低層住居専用地域と田園住居地域では軒の高さ7メートル超または地階を除く階数3以上、それ以外の対象地域では高さ10メートル超です。「地階を除く」を落とす肢、7メートルと10メートルを入れ替える肢が定番です。

    日影規制の時間帯を変える

    冬至日の午前8時から午後4時まで、北海道については午前9時から午後3時までです。「夏至日」に変える肢、時間帯をずらす肢が作られます。冬至日である理由まで押さえておけば間違えません。

    道路斜線の起点と適用距離

    起点は前面道路の反対側の境界線です。「敷地側の道路境界線から測る」は誤りになります。また、道路斜線制限には別表第三(は)欄の適用距離があり、その距離を超えた部分には及びません。「道路斜線制限は敷地の奥まで一律に適用される」という肢は誤りです。

    天空率の対象を広げる

    天空率による適用除外は、56条7項が定める三つの斜線制限についての制度です。「天空率の基準を満たせば絶対高さ制限を超えられる」「日影規制が適用されなくなる」といった肢は誤りになります。

    覚え方・整理の仕方

    道路斜線だけが全地域、そこから引く

    まず「道路斜線制限はすべての用途地域と用途地域の指定のない区域に適用される」を土台に置きます。そこから、隣地斜線は低層3地域を引く、北側斜線は専用地域と田園住居の5地域だけ残す、日影規制は商業・工業・工業専用を引く。引き算で考えると、四つの対応関係を別々に覚えずに済みます。

    「絶対高さがあるから隣地斜線はいらない」

    低層住専と田園住居に隣地斜線が適用されない理由を、この一文で持ちます。絶対高さは最大12メートル、隣地斜線の立ち上がりは最低でも20メートル。触れようがないから規定を置かない、という関係です。理由で覚えれば、他の地域と混ざりません。

    隣地斜線は「1.25と20、2.5と31」

    数値と立ち上がりは連動しています。緩やかな勾配1.25には低い立ち上がり20メートル、急な勾配2.5には高い立ち上がり31メートル。二つの組として覚えると、どちらか片方を入れ替えた肢に気づけます。

    北側斜線は「専用と田園だけ、5と10」

    適用は「住居専用」と名の付く四つと田園住居。立ち上がりは低層が5メートル、中高層が10メートル。勾配は1.25の一つだけ。方角が決まっているのは北側斜線だけ、という点も添えておきます。

    日影規制は「低層は軒7と3階、あとは10」

    対象建築物の基準はこの二本立てです。そして測るのは冬至日の8時から16時、北海道は9時から15時。数字の整理は建築基準法の数字|意味から覚える整理法にも集めています。

    「専用」が付くかどうかで切る

    用途地域の名称で判断できる場面があります。北側斜線制限がかかるのは、第一種・第二種低層住居専用地域と第一種・第二種中高層住居専用地域、つまり「住居専用地域」と、これに田園住居地域を加えた五つです。第一種住居地域には「専用」が付きません。この一字で切れます。

    制限の目的を方角と結びつける

    道路斜線は道路の上空、隣地斜線は隣地との間、北側斜線と日影規制は北側の日照。どこを守る規定かを方角で持っておくと、なぜその地域にあるのかを毎回導けます。集団規定全体の並びは法令上の制限の頻出論点|3層に分けて攻めるで扱っています。

    理解度チェッククイズ

    次の記述の正誤を判定してください。

    Q1. 第一種低層住居専用地域内の建築物には、絶対高さ制限に加えて隣地斜線制限も適用される。

    答えは誤りです。56条1項2号はイからニまでで適用地域を列挙していますが、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域はそこに含まれていません。これらの地域には55条1項の絶対高さ制限があり、建築物の高さは10メートルまたは12メートルが上限です。隣地斜線制限の立ち上がりは低いほうでも20メートルなので、絶対高さ制限を満たしている限り隣地斜線に触れることがなく、規定を置く必要がないためです。

    Q2. 北側斜線制限は、第一種住居地域および第二種住居地域にも適用される。

    答えは誤りです。56条1項3号が適用地域として挙げるのは、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域の五つです。第一種住居地域と第二種住居地域には「専用」が付かず、適用対象に含まれません。なお立ち上がりは低層住専と田園住居が5メートル、中高層住専が10メートルで、勾配はいずれも真北方向の水平距離に1.25を乗じたものです。

    Q3. 日影規制の対象となるのは、低層住居専用地域および田園住居地域では軒の高さが7メートルを超える建築物または階数が3以上の建築物である。

    答えは誤りです。別表第四(ろ)欄の一の項は「軒の高さが七メートルを超える建築物又は地階を除く階数が三以上の建築物」と定めており、「地階を除く」という限定があります。地下1階地上2階の建築物は、階数としては3ですが地階を除くと2階なので、この基準には該当しません。なお、中高層住居専用地域や住居地域などでは高さが10メートルを超える建築物が対象です。

    Q4. 日影規制は、冬至日の午前8時から午後4時まで(北海道の区域内では午前9時から午後3時まで)の間の日影時間で規制される。

    答えは正しい記述です。56条の2第1項が「冬至日の真太陽時による午前八時から午後四時まで(道の区域内にあつては、午前九時から午後三時まで)」と定めています。冬至日を基準とするのは、一年のうちで太陽高度がもっとも低く、影がもっとも長くなる日だからです。規制の対象となるのは敷地境界線からの水平距離が5メートルを超える範囲で、別表第四が10メートル以内と10メートル超に分けて許される日影時間を定めています。

    Q5. 天空率の基準を満たす建築物については、道路斜線制限、隣地斜線制限、北側斜線制限のほか、絶対高さ制限も適用されない。

    答えは誤りです。56条7項が定める適用除外の対象は、同条1項1号の道路斜線制限、1項2号の隣地斜線制限、1項3号の北側斜線制限とこれらに関連する規定です。55条の絶対高さ制限と56条の2の日影規制は含まれていません。天空率は、斜線制限によって確保されるはずの採光・通風等が別の形で確保されていることを示す仕組みなので、対象は斜線制限に限られます。

    まとめ

    • 高さを制限する規定は四つあります。絶対高さ制限(55条)は低層住居専用地域2種と田園住居地域で10メートルまたは12メートル、道路斜線制限(56条1項1号)は全地域で勾配1.25または1.5と別表第三の適用距離、隣地斜線制限(56条1項2号)は勾配1.25なら立ち上がり20メートル・2.5なら31メートル、北側斜線制限(56条1項3号)は勾配1.25で立ち上がり5メートルまたは10メートルです。
    • 適用地域は引き算で押さえます。道路斜線だけが全地域に適用され、隣地斜線は低層住専2種と田園住居を除き、北側斜線は住居専用地域4種と田園住居のみ、日影規制(56条の2)は商業・工業・工業専用が対象外です。低層住専と田園住居に隣地斜線がないのは、絶対高さ制限があるためです。
    • 56条1項の柱書は「次に掲げるもの以下」と定めており、適用される制限のすべてを満たす必要があります。緩和としては、道路斜線の後退緩和(56条2項)、幅員12メートル以上の前面道路についての読み替え(同条3項)、天空率による適用除外(同条7項)があります。天空率の対象は三つの斜線制限に限られ、絶対高さ制限と日影規制には及びません。

    宅建試験AIブートラボのアプリでは、斜線制限の適用地域と数値を肢別トレーニングで繰り返し確認できます。

    読んだ内容を、法令上の制限の肢で確かめる

    都市計画法・建築基準法・農地法は数字の暗記が中心です。繰り返しの肢別トレーニングが一番効きます。

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