都市計画制限|都市計画施設の区域内の建築制限
都市計画法52条の2・53条・65条の建築制限を、計画の熟度が上がるほど強まる三段階として整理。段階が重ならない仕組み、55条による羈束の解除、56条の買取りと三つの先買いまで条文で解説します。
目次
この記事は、都市計画が決まってから事業が実施されるまでの間、その土地の利用がどう制限されるかを扱います。都市計画法そのものの全体像は都市計画法の全体像、都市計画の種類は都市計画の種類、数字だけの横断整理は都市計画法の数字にあります。ここでは、計画が決まった後の制限だけを条文で追います。
結論を先に述べます。都市計画法の建築制限は、計画の熟度が上がるにつれて三段階で強まります。予定区域の段階(52条の2)、都市計画施設の区域・市街地開発事業の施行区域の段階(53条)、そして事業の認可告示後の事業地の段階(65条)です。
そして重要なのは、この三段階が重ならないことです。条文が明文でそう書いています。52条の2第3項は、本体の都市計画の告示があった後は52条の2を適用しないとし、53条3項は、65条1項の告示があった後は53条を適用しないとしています。制限は積み重なるのではなく、リレーのように次の段階へ引き継がれる。この構造を押さえると、どの条文がどの場面で働くかが一意に決まります。
もう一つ、見落とされやすい対称性があります。三つの段階のそれぞれに、制限だけでなく補償の仕組みがセットで置かれています。土地を自由に使えなくするのですから、代わりに買い取る道を用意しておくのが筋です。52条の3、56条と57条、67条と68条がそれです。制限の条文だけを覚えると、この対称性を見落とします。
都市計画制限の骨格 — 熟度が上がるほど強まる
なぜ計画段階から制限するのか
都市計画が決定されても、実際に道路や公園が作られるまでには長い時間がかかります。用地の買収、予算の確保、工事の実施と、いずれも一朝一夕には進みません。
その間、計画区域内で自由に建築が行われるとどうなるか。いざ事業を始めるときに、立ち退いてもらうべき建物が増え、補償費が膨らみ、事業そのものが立ち行かなくなります。堅固な建物が建ってしまえば、移転や除却の負担も重くなります。
そこで、計画が決まった段階から一定の制限をかけておく。将来の事業実施を妨げないための、いわば予防的な制限です。これが都市計画制限の基本的な発想で、三つの段階すべてに共通します。
三つの段階
制限の強さは、計画がどこまで具体化しているかに応じて変わります。
第一段階は、市街地開発事業等予定区域です。将来この区域で市街地開発事業や都市施設の整備を行うと決めた、いわば予告の段階です。52条の2が制限を定めています。
第二段階は、都市計画施設の区域と市街地開発事業の施行区域です。都市計画としてどこに何を作るかが決まった段階です。53条が制限を定め、54条が許可の基準を、55条が特例を置いています。
第三段階は、都市計画事業の認可等の告示があった後の事業地です。事業として実際に動き出す段階です。65条が制限を定めています。
後の段階ほど、制限される行為の範囲が広がります。53条が「建築物の建築」だけを対象とするのに対し、52条の2と65条は土地の形質の変更や工作物の建設まで含みます。計画が具体化するほど守るべき利益が大きくなるので、規制の網を広げるという理屈です。
段階は重ならない
ここが最も重要な構造です。三つの制限は同時に働くのではなく、次の段階に進むと前の段階の制限が外れます。
都市計画法52条の2第3項
「第一項の規定は、市街地開発事業等予定区域に係る市街地開発事業又は都市施設に関する都市計画についての第二十条第一項の規定による告示があつた後は、当該告示に係る土地の区域内においては、適用しない。」
予定区域の段階で本体の都市計画が決まれば、52条の2は役目を終えます。以後は53条の世界です。
都市計画法53条3項
「第一項の規定は、第六十五条第一項に規定する告示があつた後は、当該告示に係る土地の区域内においては、適用しない。」
事業の認可等の告示があれば、53条は適用されなくなります。以後は65条の世界です。
したがって、同じ土地について53条と65条の両方の許可を取る、という事態は生じません。事業認可の告示があった時点で、規制の根拠条文が53条から65条に切り替わります。「事業認可後は53条と65条の両方の許可が必要である」という選択肢は誤りです。条文が明文で適用を排除しています。
この排他の仕組みを知らないと、二つの制限を並列に覚えることになり、どちらが適用されるのか判断できなくなります。熟度が上がったら、規制の担当条文が交代する。このイメージを持ってください。
制限には補償が対応している
もう一つの骨格が、制限と補償の対応です。
建築を許さないということは、その土地を有効に使えなくするということです。財産権に対する制約ですから、代わりの手当てが要ります。都市計画法は各段階に、行政側が土地を買い取る仕組みを置きました。
第一段階には52条の3の先買い。第二段階には56条の買取りと57条の先買い。第三段階には67条の先買いと68条の買取請求。
先買いは、所有者が第三者に売ろうとしたときに行政が優先的に買い取る仕組みです。買取りは、所有者の側から買い取ってほしいと言える仕組みです。方向が逆であることに注意してください。両方が揃って、制限と補償のバランスが取られています。
第一段階 — 市街地開発事業等予定区域内の制限(52条の2)
対象となる行為は三つ
都市計画法52条の2第1項
「市街地開発事業等予定区域に関する都市計画において定められた区域内において、土地の形質の変更を行い、又は建築物の建築その他工作物の建設を行おうとする者は、都道府県知事等の許可を受けなければならない。」
制限される行為は、土地の形質の変更、建築物の建築、その他工作物の建設の三つです。建築だけでなく、造成や工作物まで含んでいる点が、次に見る53条との違いになります。
市街地開発事業等予定区域は、将来この場所で事業を行うと予告しておく制度で、施行予定者が定められます。まだ都市計画としての中身は詰まっていませんが、その場所を押さえておく必要はある。だから予告の段階から、土地の形状を変えることまで含めて止めておくという設計です。予定区域の位置づけは都市計画の種類で扱っています。
許可が不要な三つの行為
ただし書が三つを除外しています。
第一に、通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの。日常的な手入れまで許可制にするのは過剰だからです。
第二に、非常災害のため必要な応急措置として行う行為。緊急時に許可を待たせるわけにはいきません。
第三に、都市計画事業の施行として行う行為またはこれに準ずる行為として政令で定める行為。都市計画事業そのものを止める理由がないのは当然です。
この三つの除外は、52条の2にも53条にも共通して現れます。制限の条文を読むときは、まずただし書に何が並んでいるかを確認する習慣をつけてください。
羈束の規定が置かれていない
52条の2には、次に見る54条のような「要件を満たせば許可しなければならない」という規定がありません。
つまり、簡易な建築物であれば必ず許可される、という保証がない。知事等が判断することになります。予定区域はこれから事業の中身を詰める段階なので、どの程度の建築なら支障がないかを一律に定めることが難しい、という事情があります。
53条には54条という基準の条文が付いているが、52条の2には付いていない。この非対称は出題価値があります。
国が行う行為は協議で足りる
都市計画法52条の2第2項
「国が行う行為については、当該国の機関と都道府県知事等との協議が成立することをもつて、前項の規定による許可があつたものとみなす。」
国が行う行為については、許可ではなく協議によります。協議が成立すれば許可があったものとみなされます。
この規定は、53条2項と65条3項によって準用されています。三つの段階すべてで、国が行う行為は協議に置き換わるということです。国の機関に対して知事等が許可を与えるという上下関係を作るのは適切でないため、対等な協議の形にしたものです。
本体の都市計画が決まれば役目を終える
前述のとおり、52条の2第3項により、予定区域に係る市街地開発事業または都市施設に関する都市計画の告示があった後は、52条の2は適用されません。
予定区域は、本体の都市計画が決まるまでのつなぎです。中身が決まれば、以後は53条が引き継ぎます。
第二段階 — 都市計画施設の区域等における建築の許可(53条)
条文と対象行為
都市計画法53条1項
「都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域内において建築物の建築をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事等の許可を受けなければならない。」
制限されるのは「建築物の建築」だけです。土地の形質の変更も、工作物の建設も、物件の堆積も入っていません。
これは52条の2や65条と比べると、明確に狭い規制です。この段階では、まだ事業として動き出していません。計画が決まっただけの土地について、造成まで含めて止めてしまうのは行き過ぎだ、という均衡が取られています。土地の上に堅固な建物が建つことだけを防げば、将来の事業実施は確保できるという判断です。
「都市計画施設の区域内では土地の形質の変更にも許可が必要である」という選択肢は誤りです。形質の変更まで規制されるのは、前後の段階(52条の2と65条)です。
都市計画施設とは何か
対象となる「都市計画施設」は、11条が定める都市施設のうち、都市計画に定められたものを指します。11条1項が列挙しているのは、道路、都市高速鉄道、駐車場、自動車ターミナルその他の交通施設、公園、緑地、広場、墓園その他の公共空地、水道、電気供給施設、ガス供給施設、下水道、汚物処理場、ごみ焼却場その他の供給施設または処理施設、河川、運河その他の水路、学校、図書館、研究施設その他の教育文化施設、病院、保育所その他の医療施設または社会福祉施設、市場、と畜場、火葬場、一団地の住宅施設などです。
要するに、都市の骨格をなす公共的な施設です。これらを整備する場所として都市計画に定められた区域が、都市計画施設の区域になります。
「市街地開発事業の施行区域」のほうは、12条1項が挙げる七つの事業、すなわち土地区画整理事業、新住宅市街地開発事業、工業団地造成事業、市街地再開発事業、新都市基盤整備事業、住宅街区整備事業、防災街区整備事業の施行区域です。土地区画整理事業の仕組みは土地区画整理法で扱っています。なお市街地開発事業は13条1項13号により市街化区域または非線引き都市計画区域内にしか定められないので、市街化調整区域にこの区域が現れることはありません。この限定の理由は市街化調整区域で扱っています。
また、53条の許可は建築物の建築についてのものであり、開発行為について29条の開発許可を受けたかどうかとは別の話です。開発許可を受けていても、都市計画施設の区域内で建築物を建てるなら53条の許可が別途必要になります。開発許可の制度そのものは開発許可で扱っています。
許可権者は「都道府県知事等」
条文の「都道府県知事等」という表現には定義があります。
都市計画法26条1項(抜粋)
「都道府県知事(市の区域内にあつては、当該市の長。以下「都道府県知事等」という。)」
市の区域内では市長、それ以外では都道府県知事という意味です。町村の区域であれば都道府県知事が許可権者になります。
ここは正確に理解しておいてください。「都道府県知事等」は都道府県知事だけを指すのではありません。市の区域内では市長が許可権者です。他方で、町村長が許可権者になることはありません。したがって「市町村長の許可を受けなければならない」という選択肢は誤りになりますが、その理由は「市長ではないから」ではなく、「町村の区域では知事が許可権者だから」です。理由まで正確に押さえておくと、応用の効く知識になります。
なお、次に見る田園住居地域内の農地の制限(52条)では、許可権者が明確に「市町村長」とされています。条文によって許可権者が違うので、条文ごとに確認してください。
許可が不要な五つの行為
53条1項ただし書は五つを挙げています。
第一に、政令で定める軽易な行為。第二に、非常災害のため必要な応急措置として行う行為。第三に、都市計画事業の施行として行う行為またはこれに準ずる行為として政令で定める行為。ここまでは52条の2と同じ発想です。
第四に、11条3項後段の規定により離隔距離の最小限度および載荷重の最大限度が定められている都市計画施設の区域内において行う行為であって、その最小限度および最大限度に適合するもの。地下に設ける施設などについて、立体的な範囲と併せて離隔距離や載荷重の限度が定められている場合に、その範囲を守る行為なら許可を要しないという趣旨です。
第五に、12条の11に規定する道路(都市計画施設であるものに限る)の区域のうち建築物等の敷地として併せて利用すべき区域内において行う行為であって、当該道路を整備する上で著しい支障を及ぼすおそれがないものとして政令で定めるもの。道路の上空や地下を建築物の敷地として利用する場合の規定です。
第四号と第五号は、都市計画施設を立体的に定める仕組みと結びついています。道路や鉄道を地下や上空に作る場合、地表面の利用まで一律に止める必要はありません。支障のない範囲の利用は最初から規制の外に置くという考え方です。
65条の告示があれば53条は退く
前述のとおり、53条3項により、65条1項の告示があった後は53条が適用されなくなります。事業として動き出した以上、より強い65条の制限に一本化するのが合理的だからです。
54条の許可基準は三つある
「いずれかに該当するとき」
都市計画法54条(許可の基準)
「都道府県知事等は、前条第一項の規定による許可の申請があつた場合において、当該申請が次の各号のいずれかに該当するときは、その許可をしなければならない。」
まず接続を確認してください。「いずれかに該当するとき」です。三つの号のうち一つでも該当すれば、知事等は許可をしなければなりません。三つすべてを満たす必要はありません。
そして「その許可をしなければならない」という語尾です。裁量ではなく、要件を満たせば必ず許可する。開発許可の33条1項と同じ書き方で、いずれも羈束的な建付けです。この語尾を「許可することができる」に書き換える選択肢が定番なので、条文の文言で覚えてください。
1号 都市計画に適合する建築
第1号は、当該建築が、都市計画施設または市街地開発事業に関する都市計画のうち建築物について定めるものに適合するものであること、というものです。
都市計画がその区域の建築物について何かを定めている場合に、それに適合する建築なら許可するという趣旨です。計画に沿った建築を止める理由はありません。当たり前のことを条文にしたものですが、1号として最初に置かれているのは、これが最も本質的な許可事由だからです。
2号 立体的な範囲の外での建築
第2号は、11条3項により都市計画施設の区域について都市施設を整備する立体的な範囲が定められている場合において、その立体的な範囲外で行われ、かつ当該都市計画施設を整備する上で著しい支障を及ぼすおそれがないと認められること、というものです。
ただし書があり、その立体的な範囲が道路である都市施設を整備するものとして空間について定められているときは、安全上、防火上および衛生上支障がないものとして政令で定める場合に限られます。
地下に地下鉄を通す計画がある土地で、地上に建物を建てる場合が典型です。施設を整備する範囲が立体的に区切られているなら、その外側での建築は計画の妨げになりません。平面ではなく立体で考えれば、両立できる場面があるという発想です。
3号 簡易な建築物
第3号は、当該建築物が次の要件に該当し、かつ容易に移転し、または除却することができるものであると認められること、として、イに「階数が二以下で、かつ、地階を有しないこと」、ロに「主要構造部が木造、鉄骨造、コンクリートブロツク造その他これらに類する構造であること」を挙げています。
イとロの両方に該当し、かつ容易に移転または除却できると認められることが必要です。イだけでも、ロだけでも足りません。そして「容易に移転し、又は除却することができる」という要件が別に重ねられています。
将来の事業実施の際に、簡単にどかせる建物なら建ててよいというのがこの号の趣旨です。計画は決まったがまだ事業に着手していない段階で、土地を一切使わせないのは酷なので、可逆的な利用は認めるという均衡です。
この号の数字と要件の詳細、および要否の階層と基準の階層を混同する出題パターンについては都市計画法の数字で詳しく扱っています。押さえておくべきは、階数2以下・地階なしという要件が「許可が不要になる要件」ではなく「許可の基準」だという点です。要件を満たしていても、許可の手続そのものは必要です。
55条 — 事業予定地では羈束が外れる
54条の例外を作る条文
54条だけを読むと、要件を満たせば必ず許可されるように見えます。しかし条文はもう一段用意しています。
都市計画法55条1項(許可の基準の特例等)
「都道府県知事等は、都市計画施設の区域内の土地でその指定したものの区域又は市街地開発事業(土地区画整理事業及び新都市基盤整備事業を除く。)の施行区域(次条及び第五十七条において『事業予定地』という。)内において行われる建築物の建築については、前条の規定にかかわらず、第五十三条第一項の許可をしないことができる。ただし、次条第二項の規定により買い取らない旨の通知があつた土地における建築物の建築については、この限りでない。」
「前条の規定にかかわらず、第五十三条第一項の許可をしないことができる」。54条の羈束が外れます。
「53条の許可は羈束許可である」という理解は、55条を見落としています。原則は羈束ですが、事業予定地に指定された区域では、54条の要件を満たしていても許可しないことができる。羈束が解除される場面があるというのが正確な理解です。
事業予定地とは
条文が定義しています。都市計画施設の区域内の土地で知事等が指定したものの区域、または市街地開発事業の施行区域です。
ただし括弧書きで、土地区画整理事業と新都市基盤整備事業が除かれています。この二つは既存の土地を交換分合して整備する手法で、建物をすべて除却する前提の事業ではないため、他の事業と同列に扱う必要がないという整理です。
なぜ羈束を外すのか
事業が近づいている土地では、簡易な建築物であっても建てられると支障が出ます。事業に着手する直前に建てられた建物は、たとえ木造二階建てでも、移転補償の対象になり、交渉の手間も生じます。
そこで、事業の実施が具体的に見込まれる土地を知事等が指定し、その区域では許可を出さないことを可能にした。54条は「事業がまだ先の話である」という前提で置かれた基準なので、事業が目前に迫った土地では前提が崩れるということです。
買い取らない旨の通知があれば元に戻る
ただし書が重要です。56条2項により買い取らない旨の通知があった土地については、55条1項が適用されません。
つまり54条の羈束が復活します。この仕組みは次節の56条とセットで理解する必要があります。行政が「買わない」と言った以上、建築も許さないというのでは、所有者の土地が完全に塩漬けになります。買わないなら建てさせる、という筋を通した規定です。
指定は公告される
55条4項は、知事等が土地の指定をするとき、または56条1項の買取りの申出および57条2項本文の届出の相手方を定めるときは、その旨を公告しなければならないとしています。
制限が強まる区域を、外から分かるようにしておく必要があるからです。そしてこの公告は、後で見る57条の先買いの起算点にもなります。
56条 — 許可されない代わりに買い取ってもらえる
買取りの申出
都市計画法56条1項(土地の買取り)
「都道府県知事等(前条第四項の規定により、土地の買取りの申出の相手方として公告された者があるときは、その者)は、事業予定地内の土地の所有者から、同条第一項本文の規定により建築物の建築が許可されないときはその土地の利用に著しい支障を来すこととなることを理由として、当該土地を買い取るべき旨の申出があつた場合においては、特別の事情がない限り、当該土地を時価で買い取るものとする。」
申出をするのは土地の所有者です。行政が一方的に買い上げる制度ではありません。所有者の側から「建築が許可されないなら土地が使えないので買い取ってほしい」と言える仕組みです。
55条で建築を止められることの裏返しとして置かれた規定です。制限と補償が明確に対応しています。
「特別の事情がない限り」「時価で買い取るものとする」
条文の言い回しを押さえてください。「特別の事情がない限り」という留保が付いたうえで、「時価で買い取るものとする」とされています。
原則として買い取る義務を負うという建付けです。「買い取ることができる」という裁量の書き方ではありません。ここも語尾が論点になります。
そして価格は時価です。行政が定めた価格ではなく、市場価格を基準とします。
買い取るか買い取らないかの通知
56条2項は、申出を受けた者は遅滞なく、買い取る旨または買い取らない旨を所有者に通知しなければならないとしています。
そして買い取らない旨を通知した場合には、前述のとおり55条1項ただし書により、その土地については建築の許可を拒めなくなります。買うか、建てさせるか、どちらかを選ばなければならない。行政が態度を決めない限り所有者が動けない、という状態を作らせない仕組みです。
56条3項は、55条4項により買取りの申出の相手方として公告された者が買い取らない旨の通知をしたときは、直ちにその旨を知事等に通知しなければならないとしています。知事等が状況を把握できるようにするためです。
56条4項は、買い取った者は当該土地に係る都市計画に適合するようにこれを管理しなければならないとしています。買い取った目的が都市計画の実現である以上、当然の義務です。
57条 — 事業予定地内の土地の先買い
10日と30日
56条が所有者から行政への申出であるのに対し、57条は逆方向の仕組みです。所有者が第三者に売ろうとしたときに、行政が割り込んで買い取る制度です。
57条1項は、市街地開発事業に関する都市計画についての告示、または市街地開発事業もしくは市街化区域・非線引き都市計画区域内の都市計画施設に係る55条4項の公告があったときは、知事等は速やかに必要な事項を公告し、有償譲渡について制限があることを関係権利者に周知させる措置を講じなければならないとしています。
条文が都市計画施設について「市街化区域若しくは区域区分が定められていない都市計画区域内の」と限定している点に注意してください。市街化調整区域内の都市計画施設は、この先買いの対象から外れています。市街化を抑制すべき区域では、先買いをしてまで用地を確保する必要性が低いという判断です。非線引き区域が市街化区域と同じ側に並べられる場面は都市計画法の随所にあり、その理由は非線引き区域と準都市計画区域で扱っています。
都市計画法57条2項(抜粋)
「前項の規定による公告の日の翌日から起算して十日を経過した後に事業予定地内の土地を有償で譲り渡そうとする者(土地及びこれに定着する建築物その他の工作物を有償で譲り渡そうとする者を除く。)は、当該土地、その予定対価の額(中略)及び当該土地を譲り渡そうとする相手方その他国土交通省令で定める事項を書面で都道府県知事等に届け出なければならない。」
起算点は公告の日の翌日、経過期間は10日です。10日を経過した後の有償譲渡が届出の対象になります。
都市計画法57条3項
「前項の規定による届出があつた後三十日以内に都道府県知事等が届出をした者に対し届出に係る土地を買い取るべき旨の通知をしたときは、当該土地について、都道府県知事等と届出をした者との間に届出書に記載された予定対価の額に相当する代金で、売買が成立したものとみなす。」
届出後30日以内に買取りの通知があれば、売買が成立したものとみなされます。注目すべきは価格で、届出書に記載された予定対価の額です。所有者が第三者に売ろうとしていた価格でそのまま行政が買い取る形になるので、所有者に不利益は生じません。
57条4項は、届出をした者は、その30日の期間内(期間内に買い取らない旨の通知があったときはその時までの期間内)は当該土地を譲り渡してはならないとしています。届出さえすれば自由に売れるわけではなく、待機期間があります。
対象が「土地」に限られている
57条2項の括弧書きに注意してください。「土地及びこれに定着する建築物その他の工作物を有償で譲り渡そうとする者を除く」。
つまり57条の届出義務が生じるのは、土地だけを売る場合です。土地と建物をセットで売る場合は届出が要りません。
理由を考えてください。事業予定地は、まだ事業に着手していない段階の土地です。建物が建っている土地をわざわざ先買いしても、行政は建物の処分に困ります。先買いで押さえておきたいのは更地であって、建物付きの土地ではない、という実務的な判断です。
この括弧書きは、後で見る67条との決定的な違いになります。67条は「土地建物等」を対象としており、建物付きでも届出が必要です。段階が違えば必要なものも違う、ということです。
第三段階 — 事業地内における建築等の制限(65条)
事業認可の告示が起点
都市計画法65条1項(建築等の制限)
「第六十二条第一項の規定による告示又は新たな事業地の編入に係る第六十三条第二項において準用する第六十二条第一項の規定による告示があつた後においては、当該事業地内において、都市計画事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更若しくは建築物の建築その他工作物の建設を行い、又は政令で定める移動の容易でない物件の設置若しくは堆積を行おうとする者は、都道府県知事等の許可を受けなければならない。」
起点は62条1項の告示です。62条1項は、国土交通大臣または都道府県知事が都市計画事業の認可または承認をしたときに、施行者の名称、都市計画事業の種類、事業施行期間および事業地を告示しなければならないと定めています。
認可そのものではなく、告示があった後から制限がかかります。事業地の範囲が外部に示されて初めて、そこにいる人が制限を認識できるからです。
対象行為は四つに広がる
65条が制限するのは次の四つです。
第一に、土地の形質の変更。第二に、建築物の建築。第三に、その他工作物の建設。第四に、政令で定める移動の容易でない物件の設置または堆積。
53条が建築物の建築だけを対象としていたのに対し、形質変更・工作物・物件の設置堆積まで広がっています。事業が動き出す以上、事業の妨げになるものは何であれ止める必要があるからです。
四つ目の「移動の容易でない物件の設置若しくは堆積」は、53条にも52条の2にもない類型です。建物ではないが、どかすのに手間がかかるものを想定しています。
「施行の障害となるおそれがある」という限定
条文をもう一度読んでください。「都市計画事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更若しくは建築物の建築その他工作物の建設を行い、又は……」。
「施行の障害となるおそれがある」という限定が付いています。事業地内のあらゆる行為が許可の対象になるわけではありません。事業の実施を妨げるおそれのある行為に限られます。
もっとも、事業地内で建物を建てれば通常は障害になりますから、実際上この限定が働く場面は限られます。しかし条文の文言としては押さえておいてください。
施行者の意見を聴かなければならない
都市計画法65条2項
「都道府県知事等は、前項の許可の申請があつた場合において、その許可を与えようとするときは、あらかじめ、施行者の意見を聴かなければならない。」
許可を与えようとするときは、あらかじめ施行者の意見を聴く必要があります。53条にはない手続です。
理由は明快です。事業を実際に進めるのは施行者であって、知事等ではありません。何が事業の障害になるかを最もよく知っているのは施行者です。その判断を聴かずに許可を出せば、事業の妨げになる建築を認めてしまうおそれがあります。
条文が「許可を与えようとするとき」と限定している点にも注意してください。許可しない場合には意見聴取は不要です。事業の障害にならないと判断して許可を出す場面でこそ、施行者の確認が要るという構造です。
羈束の規定がない
65条にも、54条のような「要件を満たせば許可しなければならない」という基準の条文はありません。
事業が動き出している以上、簡易な建築物だからといって当然に認めるわけにはいかないという判断です。52条の2と同様、この点で53条・54条の組み合わせだけが特殊だということになります。
羈束の基準が置かれているのは53条の許可だけ。三段階を通した整理として、この一点を覚えておいてください。
国が行う行為は協議
65条3項が52条の2第2項を準用しているので、国が行う行為については協議の成立をもって許可があったものとみなされます。三段階すべてで共通する扱いです。
66条・67条・68条 — 事業地内の周知と買取り
66条 周知のための措置
65条1項の告示があったときは、施行者は速やかに必要な事項を公告し、事業地内の土地建物等の有償譲渡について67条の制限があることを関係権利者に周知させる措置を講じなければなりません(66条)。
さらに条文は、自己が施行する都市計画事業の概要について、事業地およびその附近地の住民に説明し、これらの者から意見を聴取する等の措置を講ずることにより、事業の施行についてこれらの者の協力が得られるように努めなければならないとしています。
努力義務です。「講じなければならない」という義務は前段の公告と周知措置についてであり、住民説明と意見聴取は「努めなければならない」という書き方になっています。語尾の違いを読み分けてください。
67条 土地建物等の先買い
都市計画法67条1項(抜粋)
「前条の公告の日の翌日から起算して十日を経過した後に事業地内の土地建物等を有償で譲り渡そうとする者は、当該土地建物等、その予定対価の額(中略)及び当該土地建物等を譲り渡そうとする相手方その他国土交通省令で定める事項を書面で施行者に届け出なければならない。」
構造は57条と同じです。公告の日の翌日から起算して10日を経過した後の有償譲渡について届出を求め、届出後30日以内に買取りの通知があれば予定対価の額で売買が成立したものとみなされ(67条2項)、その期間内は譲渡できない(67条3項)。
違いは二つです。
第一に、届出先が施行者です。57条では都道府県知事等(または公告された者)でしたが、67条では施行者に届け出ます。事業が動き出していて施行者が確定しているからです。
第二に、対象が「土地建物等」です。57条にあった「土地及びこれに定着する建築物その他の工作物を有償で譲り渡そうとする者を除く」という括弧書きがありません。建物付きの土地を売る場合も届出が必要です。事業地は収用の対象になる土地ですから、建物ごと取得することが前提になっているためです。
68条 収用手続が保留されている土地の買取請求
都市計画法68条1項(抜粋)
「事業地内の土地で、次条の規定により適用される土地収用法第三十一条の規定により収用の手続が保留されているものの所有者は、施行者に対し、国土交通省令で定めるところにより、当該土地を時価で買い取るべきことを請求することができる。」
事業地内の土地のうち、収用の手続が保留されているものについて、所有者は施行者に対し時価で買い取るべきことを請求できます。
収用手続が保留されているということは、いずれ収用されることは決まっているが、まだ手続が進んでいないという状態です。その宙ぶらりんの期間、所有者は土地を自由に使えないまま待たされます。そこで、待つのではなく今買い取ってほしいと言える権利を与えました。
ただし条文にただし書があり、当該土地が他人の権利の目的となっているとき、および当該土地に建築物その他の工作物または立木に関する法律1条1項に規定する立木があるときは、請求できません。権利関係が複雑な土地や、地上に物がある土地は、単純に買い取れないからです。
68条2項は、買い取るべき土地の価額は施行者と所有者が協議して定めるとしています。56条が「時価で買い取るものとする」としていたのに対し、こちらは協議によるという違いがあります。
三つの先買いを並べて比べる
数字は三つとも同じ
52条の3、57条、67条。三つの先買い制度は、数字がすべて共通しています。
公告の日の翌日から起算して10日を経過した後の有償譲渡が届出の対象。届出後30日以内に買取りの通知があれば予定対価の額で売買成立とみなされる。その期間内は譲渡できない。
10日と30日。この二つを覚えれば三つとも対応できます。数字が違うのではないかと疑う必要はありません。
届出先が三つとも違う
数字が同じである分、届出先が論点になります。
52条の3は施行予定者に届け出ます。予定区域の段階では、施行予定者が定められているからです。
57条は都道府県知事等に届け出ます。ただし55条4項により届出の相手方として公告された者があるときは、その者に届け出ます。この段階ではまだ事業の施行者が確定していないので、知事等が受け皿になります。
67条は施行者に届け出ます。事業の認可を受けた施行者が存在するからです。
予定者、知事等、施行者。段階が進むにつれて、事業を担う主体が具体化していく順序と対応しています。
対象は57条だけが狭い
52条の3と67条は「土地建物等」を対象とします。土地、または土地とこれに定着する建築物その他の工作物です。
57条だけが「土地」に限られ、しかも土地と定着物をセットで譲渡する場合を明文で除いています。
三つの中で57条だけが例外的な作りになっている、と押さえてください。理由は、事業予定地の段階では建物付きの土地まで先買いする必要がないからです。
田園住居地域内の農地における制限(52条)
許可権者は市町村長
都市計画法52条1項
「田園住居地域内の農地の区域内において、土地の形質の変更、建築物の建築その他工作物の建設又は土石その他の政令で定める物件の堆積を行おうとする者は、市町村長の許可を受けなければならない。」
許可権者が市町村長である点が、53条・65条と大きく違います。53条と65条の「都道府県知事等」は市の区域内では市長を指しますが、町村では知事でした。52条は町村であっても町村長が許可権者です。
制限される行為は、土地の形質の変更、建築物の建築、工作物の建設、政令で定める物件の堆積の四つです。65条と同じ広さの規制がかかっています。
ただし書は三つで、通常の管理行為・軽易な行為その他政令で定めるもの、非常災害のための応急措置、都市計画事業の施行として行う行為等です。他の条文と共通の構造です。
2項に羈束の規定がある
52条2項は、一定の場合には「その許可をしなければならない」としています。政令で定める規模未満の土地の形質の変更、許可を受けて形質変更が行われた土地の区域内での建築等、敷地の規模が政令で定める規模未満の建築物等の建築、政令で定める規模未満の土地における物件の堆積です。
54条と同じく羈束の規定が置かれているということです。小規模なものまで一律に止めるのは過剰なので、規模で線を引いています。
国・地方公共団体は協議
52条3項は、国または地方公共団体が行う行為については許可を要しないとしたうえで、あらかじめ市町村長に協議しなければならないとしています。
52条の2第2項の「協議の成立をもって許可があったものとみなす」とは書き方が違います。52条3項は許可を不要としたうえで協議義務を課す形、52条の2第2項は協議の成立を許可とみなす形です。結果は似ていますが、条文の構成が異なります。
用途地域としての田園住居地域そのものについては用途地域13種の一覧と覚え方で扱っています。
風致地区内の規制(58条)
規制の根拠は条例
都市計画法58条1項(建築等の規制)
「風致地区内における建築物の建築、宅地の造成、木竹の伐採その他の行為については、政令で定める基準に従い、地方公共団体の条例で、都市の風致を維持するため必要な規制をすることができる。」
都市計画法が直接に行為を制限しているのではありません。政令で定める基準に従って、地方公共団体が条例で規制することができる、という枠組みだけを定めています。
したがって、具体的にどの行為に許可が必要かは条例によります。風致は地域ごとの自然的・歴史的な条件に左右されるので、全国一律の基準になじまないという判断です。
「風致地区内における建築物の建築は都市計画法により都道府県知事の許可が必要である」という選択肢は誤りです。規制の根拠は条例であって、法律が直接に許可制を敷いているわけではありません。
この「条例に委ねる」という形は、都市計画法の中では例外的です。53条も65条も法律が直接に許可制を定めていることと対比してください。
試験での出題ポイント
対象行為の広さを入れ替える
53条は建築物の建築のみ。52条の2と65条は形質変更・工作物まで含み、65条はさらに物件の設置堆積まで含む。
「都市計画施設の区域内では土地の形質の変更にも許可が必要である」は誤りです。逆に「事業地内では建築物の建築のみが制限される」も誤りです。どの段階の話かを確認してから、対象行為の範囲を判断してください。
段階が重ならないこと
「事業認可の告示後は、53条と65条の両方の許可が必要である」は誤りです。53条3項が明文で適用を排除しています。
同様に、「市街地開発事業等予定区域について本体の都市計画の告示があった後も、52条の2の許可が必要である」も誤りです(52条の2第3項)。
許可権者
53条・65条は都道府県知事等で、市の区域内では市長、それ以外では都道府県知事です。52条(田園住居地域内の農地)は市町村長です。
「都市計画施設の区域内の建築には市町村長の許可が必要」は誤りですが、理由は町村の区域では知事が許可権者だからです。市の区域内では市長が許可権者である点を落とさないでください。
羈束かどうか
羈束の基準が置かれているのは54条(53条の許可)と52条2項(田園住居地域内の農地)だけです。52条の2と65条には基準の条文がありません。
そして55条により、事業予定地では54条の羈束が外れます。「53条の許可は常に羈束である」は正確ではありません。
55条と56条の連動
買い取らない旨の通知があった土地では、55条1項ただし書により建築の許可を拒めなくなります。「買い取らない旨の通知があった後も、知事等は許可をしないことができる」は誤りです。
先買いの数字と届出先
10日と30日は三つとも共通。届出先は52条の3が施行予定者、57条が都道府県知事等、67条が施行者。
「事業地内の土地建物等を有償で譲渡しようとする者は、都道府県知事に届け出なければならない」は誤りです。67条の届出先は施行者です。
57条の対象
「事業予定地内の土地及び建物を有償で譲り渡そうとする者は、57条の届出をしなければならない」は誤りです。57条2項の括弧書きが、土地と定着物をセットで譲渡する場合を除いています。
65条2項の意見聴取
「知事等は許可の申請があったときは、あらかじめ施行者の意見を聴かなければならない」は不正確です。条文は「その許可を与えようとするときは」と限定しています。許可しない場合には意見聴取は不要です。
風致地区
規制の根拠は条例です。都市計画法が直接に許可制を定めているわけではありません。
覚え方・整理の仕方
熟度で並べる
三つの制限を条番号順に覚えようとすると、52条の2・53条・65条と離れているため混ざります。計画の熟度で並べ直してください。
予告の段階が52条の2。計画が決まった段階が53条。事業が動き出した段階が65条。
そして進むほど規制が広がり、前の段階の制限は外れる。この一本の流れで三つが並びます。
「制限があれば補償がある」で対を作る
制限の条文を覚えたら、必ずその隣の補償の条文をセットにしてください。
52条の2の隣に52条の3の先買い。53条・55条の隣に56条の買取りと57条の先買い。65条の隣に67条の先買いと68条の買取請求。
行政が土地を使わせないなら、行政が買う。この対称性を意識すると、条文の並びが意味を持って見えてきます。そして買取り(所有者から行政へ申し出る)と先買い(所有者が第三者に売ろうとしたときに行政が割り込む)は方向が逆だ、という点も押さえてください。
羈束が置かれているのは53条だけ
要件を満たせば必ず許可される、という保証があるのは53条の許可(54条)だけです。52条の2にも65条にもありません。
理由も一本です。53条の段階だけが「計画は決まったが事業はまだ先」という宙ぶらりんの状態だから、可逆的な利用は認めるという均衡が必要になった。予定区域はこれから中身を詰める段階なので基準を定めようがなく、事業地は動き出しているので緩める余地がない。
そしてその53条ですら、事業が目前に迫れば55条で羈束が外れる。熟度が上がるほど自由が減る、という一貫した流れです。
先買いは「10日・30日」と「誰に」
数字は三つとも同じなので覚える負担はありません。問われるのは届出先です。
予定区域なら施行予定者、事業予定地なら知事等、事業地なら施行者。その段階で事業を担っている主体が誰かを考えれば導けます。予定区域では施行予定者、事業地では施行者が定まっており、その中間の事業予定地では担い手が確定していないので知事等が受け皿になる、という順序です。
許可権者は条文ごとに確認する
53条・65条は都道府県知事等(市の区域内では市長)。52条は市町村長。
そして58条の2の地区計画の届出先も市町村長です。「都市計画法だから知事」と単純化しないでください。地区計画の届出については地区計画で詳しく扱っています。
理解度チェッククイズ
Q1. 都市計画施設の区域内において土地の形質の変更を行おうとする者は、都道府県知事等の許可を受けなければならない。(○か×か)
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×:53条1項が許可の対象としているのは「建築物の建築」だけで、土地の形質の変更は含まれていません。この段階は都市計画が決まったにすぎず、まだ事業に着手していないため、造成まで止めるのは行き過ぎだという均衡が取られています。土地の形質の変更まで規制されるのは、前後の段階です。市街地開発事業等予定区域では52条の2第1項が土地の形質の変更・建築物の建築・工作物の建設を対象とし、都市計画事業の認可等の告示後の事業地では65条1項がこれらに加えて政令で定める移動の容易でない物件の設置または堆積までを対象としています。段階が進むほど規制の網が広がる、という順序で押さえてください。Q2. 都市計画事業の認可の告示があった後は、事業地内における建築物の建築について、都市計画法53条1項の許可と65条1項の許可の両方を受けなければならない。(○か×か)
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×:53条3項が「第一項の規定は、第六十五条第一項に規定する告示があつた後は、当該告示に係る土地の区域内においては、適用しない」と明文で定めています。事業の認可等の告示があった時点で53条は適用されなくなり、以後は65条だけが働きます。三つの段階の制限は積み重なるのではなく、次の段階に進むと前の段階が退くという構造です。同じ仕組みが予定区域にもあり、52条の2第3項は、予定区域に係る市街地開発事業または都市施設に関する都市計画の告示があった後は52条の2を適用しないとしています。熟度が上がると規制の担当条文が交代する、と理解してください。Q3. 都市計画施設の区域のうち都道府県知事等が指定した区域内において、階数が2で地階を有しない木造の建築物を建築しようとする場合、容易に移転し、または除却することができると認められるときは、知事等は必ず許可をしなければならない。(○か×か)
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×:54条3号の要件を満たしているので原則としては許可しなければなりませんが、知事等が指定した区域は55条1項にいう事業予定地に当たります。同項は「前条の規定にかかわらず、第五十三条第一項の許可をしないことができる」と定めており、54条の羈束が外れます。事業の実施が具体的に見込まれる土地では、簡易な建築物であっても移転補償や交渉の負担が生じるため、許可しない余地を残したものです。ただし55条1項ただし書により、56条2項の規定によって買い取らない旨の通知があった土地については、この特例が適用されず、54条の羈束が復活します。行政が買わないと決めた以上は建てさせる、という筋が通されています。Q4. 都市計画事業の認可の告示後、施行者が66条の公告をした日の翌日から起算して10日を経過した後に、事業地内の土地及びその土地に定着する建物を有償で譲り渡そうとする者は、都道府県知事に届け出なければならない。(○か×か)
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×:届出先が誤りです。67条1項は「書面で施行者に届け出なければならない」と定めており、都道府県知事ではありません。事業の認可を受けた施行者が存在する段階だからです。公告の日の翌日から起算して10日という期間、および土地建物等が対象となる点は正しい記述です。なお、届出先は段階によって異なり、市街地開発事業等予定区域では施行予定者(52条の3第2項)、事業予定地では都道府県知事等(57条2項)、事業地では施行者(67条1項)となります。その段階で事業を担っている主体が誰かを考えると導けます。また事業予定地の57条だけは対象が土地に限られ、土地と定着物をセットで譲渡する場合が括弧書きで除かれている点も、67条との違いとして押さえてください。Q5. 都市計画事業の事業地内において建築物の建築の許可の申請があった場合、都道府県知事等は、その許可を与えようとするときは、あらかじめ施行者の意見を聴かなければならない。(○か×か)
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○:65条2項がそのとおり定めています。事業を実際に進めるのは施行者であり、何が事業の障害になるかを最もよく知っているのも施行者ですから、その判断を聴かずに許可を出せば事業の妨げになる建築を認めてしまうおそれがあります。条文が「その許可を与えようとするときは」と限定している点にも注意してください。許可しない場合には意見聴取は不要で、事業の障害にならないと判断して許可を出す場面でこそ施行者の確認が要るという構造です。なお53条の許可にはこのような意見聴取の手続はなく、また65条には54条のような「要件を満たせば許可しなければならない」という基準の条文も置かれていません。まとめ
都市計画制限は、条文が52条から68条まで散らばっているため、個別に覚えると混ざります。骨格を整理します。
制限は計画の熟度に応じて三段階です。予定区域が52条の2、都市計画施設の区域・市街地開発事業の施行区域が53条、事業の認可等の告示後の事業地が65条。進むほど対象行為が広がります。
三つの段階は重なりません。52条の2第3項と53条3項が、次の段階に進んだときの適用除外を明文で定めています。
羈束の基準が置かれているのは53条の許可(54条)だけです。そしてその羈束も、55条により事業予定地では外れます。買い取らない旨の通知があれば復活します。
各段階に補償の仕組みが対応しています。52条の3、56条・57条、67条・68条。所有者から申し出る買取りと、行政が割り込む先買いの二方向があります。
三つの先買いは数字が共通で、届出先だけが違います。公告の日の翌日から10日、届出後30日。届出先は施行予定者・都道府県知事等・施行者の順です。
許可権者は条文で確認してください。53条・65条は都道府県知事等で、市の区域内では市長です。52条の田園住居地域内の農地は市町村長です。
風致地区の規制は条例によります。法律が直接に許可制を敷いているわけではありません。
法令上の制限全体の中での位置づけは法令上の制限の頻出論点、開発許可との関係は開発許可と建築確認の違いで確認できます。
宅建試験AIブートラボのアプリでは、三段階の制限と先買いの届出先を軸にした肢別トレーニングを収録しています。条文を読んだあとに肢を回して、どの段階の話かを一読で見分けられるまで固めてください。
都市計画法・建築基準法・農地法は数字の暗記が中心です。繰り返しの肢別トレーニングが一番効きます。