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相続した不動産の基礎|共有・登記・税を条文で読む

不動産の基礎知識 読了 約30分

相続財産が不動産である場合に固有の論点を条文で整理。遺産共有と持分、899条の2の対抗問題、相続登記の申請義務、配偶者居住権の登記、相続に関する税と宅建業法の扱いを解説します。

目次

    相続の一般ルール、つまり誰が相続人になり、どういう割合で承継し、遺留分がどこまで保障されるのかは相続の総論で扱っています。この記事が担うのは、その先です。相続財産が不動産であるときにだけ生じる問題を、民法・不動産登記法・地方税法・宅建業法の条文に沿って整理します。

    不動産が相続で特別扱いされる理由は単純です。預貯金は分けられますが、土地と建物は分けられません。登記という公示制度が用意されている一方で、登記をしなければ第三者に対抗できない場面があります。そして固定資産税のように、所有しているだけで毎年発生する負担があります。この三つ――分割できないこと、登記が要ること、保有コストがあること――が、相続法の中に不動産専用の規定を作らせてきました。配偶者居住権も、相続登記の申請義務化も、遺産共有に関する2023年施行の一連の改正も、すべてここから出ています。

    宅建試験の観点でいえば、相続は権利関係の頻出テーマであるだけでなく、不動産登記法、税その他、そして宅建業法にまたがって問われます。以下、その横断的な姿を条文で追います。

    相続が開始した瞬間、その不動産は共有になる

    896条の包括承継と898条の遺産共有

    民法896条は、相続人は相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継すると定めています(被相続人の一身に専属したものを除く)。承継のために手続きは要りません。死亡(882条)という事実だけで、所有権は相続人に移ります。

    相続人が一人ならそれで話は終わります。問題は複数いる場合です。898条1項は「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する」と定めています。つまり相続開始と同時に、その不動産は相続人全員の共有物になります。誰も手続きをしていないのに、放置していても共有になります。

    2021年の改正で新設された898条2項は、この共有について「相続財産について共有に関する規定を適用するときは、第900条から第902条までの規定により算定した相続分をもって各相続人の共有持分とする」と定めました。遺産共有における持分の大きさは法定相続分(または指定相続分)である、という当たり前に見える内容を条文で明示したものです。実務では特別受益や寄与分を反映した具体的相続分が観念されますが、共有の規定を適用する場面では法定相続分で処理する、という整理がされました。

    誰が相続人になるかで持分の分母が変わる

    不動産の持分を計算する前提として、相続人の範囲を確定させなければなりません。890条により配偶者は常に相続人となり、血族相続人は887条の子、889条1項1号の直系尊属、同項2号の兄弟姉妹という順位で決まります。法定相続分は900条で、配偶者と子なら各2分の1、配偶者と直系尊属なら配偶者3分の2・直系尊属3分の1、配偶者と兄弟姉妹なら配偶者4分の3・兄弟姉妹4分の1です。

    不動産に固有の注意点は、代襲相続の非対称です。887条2項は子が相続開始以前に死亡等した場合の代襲を定め、同条3項がこれを準用して孫が死亡していれば曾孫へと再代襲します。ところが889条2項は887条2項だけを準用し、3項を準用していません。したがって兄弟姉妹の代襲は甥・姪の一代限りで止まります

    この差が不動産で効いてくるのは、相続人が兄弟姉妹しかいないケースです。子の系統なら何代でも下に降りていくため相続人が見つかりますが、兄弟姉妹の系統は甥・姪で打ち止めになります。そこで相続人が誰もいなければ相続人不存在となり、951条以下の清算手続に進みます。所有者不明土地の一因はここにあります。相続人の範囲と代襲の詳細は相続の総論で扱っています。

    相続放棄は代襲原因ではない

    939条は「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」と定めています。放棄した者は最初から相続人でなかった扱いになるため、その子が代襲することもありません。代襲原因は相続開始以前の死亡、相続欠格、廃除の三つであり、放棄は含まれません。

    不動産の場面では、これが持分の再計算を意味します。子2人のうち1人が放棄すれば、残る1人が子の相続分をすべて取得します。子が全員放棄すれば第2順位の直系尊属へ、直系尊属もいなければ第3順位の兄弟姉妹へ移り、共有者の顔ぶれが入れ替わります。要件と手続は相続放棄と限定承認を参照してください。

    遺産共有を放置すると、後から解けなくなる

    共有物の管理には持分の過半数が要る

    遺産共有も共有である以上、民法の共有の規定が適用されます。252条5項により保存行為は各共有者が単独でできます。252条1項により、管理に関する事項は各共有者の持分の価格に従いその過半数で決します。251条1項により、共有物に変更(その形状または効用の著しい変更を伴わないものを除く)を加えるには共有者全員の同意が必要です。

    賃貸に出す行為は管理に当たりますが、252条4項は期間の上限を定めており、樹木の栽植伐採を目的とする山林の賃借権等は10年、それ以外の土地は5年、建物は3年、動産は6か月を超える賃借権等の設定は管理では足りません。売却は処分に当たり、共有者全員の同意が必要です。

    つまり相続した実家を売ろうとすれば、相続人全員の同意が要ります。一人でも反対すれば売れません。共有の一般ルールは共有で扱っています。

    数次相続で共有者が増えていく

    遺産分割をしないまま共有者の一人が死亡すると、その持分についてさらに相続が開始します。持分がその者の相続人に承継され、共有者が増えます。これが数次相続です。

    回を重ねるほど共有者は増え、互いに面識のない者が同じ不動産の共有者になります。全員の同意が必要な処分行為は事実上不可能になり、そもそも全員が誰なのかを戸籍から追う作業自体が困難になります。相続登記の申請義務化が導入された背景は、この連鎖を初期段階で断つことにあります。

    遺産共有は共有物分割訴訟では解けない

    共有関係を裁判で解消する手段として、258条の共有物分割の訴えがあります。しかし2023年4月1日施行の258条の2第1項は、共有物の全部またはその持分が相続財産に属する場合において、共同相続人間で遺産分割をすべきときは、258条による分割をすることができないと定めています。遺産共有は遺産分割手続で解消するもので、共有物分割訴訟の対象にならないということです。

    ただし同条2項は、相続開始の時から10年を経過したときはこの限りでないとし、共有物分割訴訟による解消を認めています。同条3項により、相続人が異議の申出をしたときは除かれます。

    この10年という区切りは、904条の3が定める「相続開始の時から10年を経過した後にする遺産分割は原則として法定相続分または指定相続分による」というルールと対応しています。10年を過ぎると特別受益や寄与分の主張ができなくなり、持分が法定相続分で固定されるため、共有物分割訴訟でも処理できるようになる、という設計です。

    所在等不明共有者がいる場合

    2023年4月1日施行の262条の2は、共有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないときに、裁判所の決定により他の共有者がその持分を取得できる制度を新設しました。262条の3は同様に持分の譲渡権限を付与する制度です。

    ただし262条の2第3項は、相続財産に属する共有物について、相続開始の時から10年を経過していないときはこの裁判をすることができないと定めています。ここでも10年が基準になっています。相続開始から10年というラインが、遺産分割の内容、共有物分割訴訟の可否、所在等不明共有者への対応という三つの場面で同時に働いていることを押さえてください。

    遺産分割で不動産を単独所有にする

    906条の分割基準は不動産のために書かれている

    906条は「遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮してこれをする」と定めています。

    「遺産に属する物又は権利の種類及び性質」という文言は、預貯金を念頭に置いたものではありません。不動産のように分けられない財産、事業用資産のように分けると価値が落ちる財産があるからこそ、機械的な持分割りではなく事情を考慮した分割を求めているわけです。

    907条1項は、共同相続人はいつでもその協議で遺産の全部または一部の分割をすることができると定め、2項は協議が調わないときの家庭裁判所への請求を定めています。908条1項により、被相続人は遺言で相続開始の時から5年を超えない期間を定めて分割を禁止できます。

    現物分割

    不動産をそのまま特定の相続人に取得させる方法です。土地であれば分筆して物理的に分けることもできます。ただし分筆すると各筆の面積が小さくなり、建築基準法43条の接道義務を満たさなくなったり、都市計画法や条例上の最低敷地面積を下回ったりする可能性があります。土地を物理的に分けられるかどうかは、法令上の制限を確認しなければ判断できません。

    代償分割

    一人が不動産を取得し、他の相続人に金銭を支払う方法です。不動産を残したまま公平を確保できますが、取得者に支払能力が必要です。また、代償金の額を決めるには不動産の評価額を確定させなければならず、相続税評価額で見るのか時価で見るのかで争いになります。

    換価分割

    不動産を売却して代金を分ける方法です。金銭になるので公平な分割は容易ですが、売却には譲渡所得税が関係します。所得税法60条1項1号により、相続(限定承認に係るものを除く)で取得した資産は取得者が引き続き所有していたものとみなされるため、取得費と取得時期を被相続人から引き継ぎます。被相続人が長く所有していた土地なら長期譲渡所得として扱われますが、取得費が古い価額のままなので譲渡益が大きく出ることがあります。譲渡所得の仕組みは譲渡所得税を参照してください。

    共有分割

    共有のままにする方法です。手続としては最も簡単ですが、前節で見たとおり、その後の管理と処分に持分の過半数または全員の同意が必要になり、数次相続で共有者が増えます。分割方法として選べるというだけで、問題を先送りしているに過ぎません。

    909条の遡及効とただし書

    909条は「遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない」と定めています。遺産分割で不動産を単独取得した相続人は、相続開始の時からその不動産を所有していたことになります。

    しかしただし書があるため、分割前に他の相続人の持分について権利を取得した第三者には、遡及効を主張できません。そして、その第三者との優劣は次節の899条の2で決まります。遺産分割協議の要件と手続は遺産分割協議と相続登記義務化で詳しく扱っています。

    相続と登記の対抗問題——899条の2

    法定相続分までは登記なしに対抗できる

    899条の2第1項は「相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない」と定めています。

    条文を裏から読むと、法定相続分までの部分は登記がなくても第三者に対抗できるということです。相続は包括承継であり、被相続人の地位をそのまま引き継ぐため、相続人と第三者は当事者に準じた関係に立ちます。だから対抗要件を要求しない。ここは177条の一般原則とは異なる処理です。

    超える部分は登記が要る

    一方、遺産分割や遺言によって法定相続分を超える権利を取得した場合、その超える部分については登記が必要です。

    具体例で考えます。相続人が子A・Bの2人で、遺産分割によりAが土地を単独取得したとします。Aの法定相続分は2分の1なので、超える2分の1について登記がなければ第三者に対抗できません。分割後にBが自己の法定相続分2分の1を第三者Cに売却し、Cが先に登記を備えれば、AはCに対して2分の1の部分を主張できなくなります。

    重要なのは、この規律が「遺産の分割によるものかどうかにかかわらず」適用される点です。改正前の判例は、遺言で特定の不動産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言(特定財産承継遺言)については登記なしに対抗できるとしていましたが、899条の2はこれを改め、遺言による承継でも法定相続分を超える部分には登記を要求しました。遺言があっても登記を急がなければならない、という実務上の帰結を生んだ条文です。遺言の方式は遺言の方式で扱っています。実務で不動産の承継に使われることが多い公正証書遺言については、969条が2025年10月1日に改正されて作成手続が公証人法へ移されているため、公正証書遺言のオンライン化に分けてあります。

    債権を承継したときは通知

    899条の2第2項は、承継した権利が債権である場合について、法定相続分を超えて承継した相続人が遺言または遺産分割の内容を明らかにして債務者に通知したときは、共同相続人全員が通知をしたものとみなすと定めています。本来、債権譲渡の対抗要件(467条)は譲渡人からの通知を要しますが、相続では他の相続人の協力が得られないことがあるため、単独で通知できるようにした規定です。

    賃貸不動産を相続した場合、建物の所有権については登記、賃料債権については通知、と対抗要件が分かれる点に注意してください。登記制度の全体像は不動産登記法の基本にまとめています。

    相続登記の申請義務(不動産登記法76条の2)

    3年の起算点は「二重に知った日」

    2024年4月1日に施行された不動産登記法76条の2第1項は、所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならないと定めています。相続人に対する遺贈により所有権を取得した者も同様です。

    起算点が二つの認識の両方を要求している点が重要です。被相続人が死亡したことを知っただけでは足りず、その不動産の所有権を自分が取得したことを知る必要があります。遠方の相続人が、被相続人が土地を所有していた事実を後から知った場合、起算点は後の時点になります。「死亡から3年以内」ではありません。

    遺産分割が成立したら、もう一度3年

    76条の2第2項は、1項前段の登記がされた後に遺産分割があったときは、その遺産分割によって法定相続分を超えて所有権を取得した者は、遺産分割の日から3年以内に所有権の移転の登記を申請しなければならないと定めています。

    つまり義務は二段構えです。まず相続を知ってから3年以内に、法定相続分による相続登記か相続人申告登記で第一段階を満たす。その後に遺産分割が成立したら、そこから3年以内に分割の内容に沿った登記をする。第一段階を済ませたから終わり、ではありません。

    相続人申告登記に対抗力はない

    76条の3第1項は、登記名義人について相続が開始した旨と自らがその相続人である旨を登記官に申し出る制度を定め、2項により、3年の期間内に申出をした者は76条の2第1項の申請義務を履行したものとみなされます。

    この相続人申告登記は、遺産分割がまとまらないときの受け皿です。申出は相続人が単独ででき、自分が相続人であることを証明する戸籍があれば足ります。しかしこれは報告的な登記であり、権利の変動を公示するものではないため対抗要件としての効力を持ちません。899条の2の対抗問題は、相続人申告登記では一切解決しないということです。申請義務を履行したかどうかと、第三者に対抗できるかどうかは、まったく別の話です。ここは試験で必ず狙われます。

    過料と経過措置

    164条1項は、正当な理由がないのに申請を怠ったときは10万円以下の過料に処すると定めています。刑罰ではなく秩序罰です。

    そして経過措置により、この義務は施行日より前に発生していた相続にも適用されます。施行日前に相続が開始していた場合は、施行日である2024年4月1日から3年、すなわち2027年3月31日までに申請しなければなりません。義務化以前に発生し、放置されてきた相続こそが所有者不明土地の主因であるため、遡って対象としたわけです。

    住所等の変更登記も義務になった

    76条の5は、所有権の登記名義人の氏名もしくは名称または住所について変更があったときは、その変更があった日から2年以内に変更の登記を申請しなければならないと定めています。この規定は2026年4月1日に施行されました。164条2項により、正当な理由なく怠った場合は5万円以下の過料です。

    相続登記の義務化とセットで理解しておくべき制度です。所有者不明土地は、相続が登記されないことだけでなく、登記名義人が引っ越して連絡が取れなくなることでも発生するからです。登記簿の見方は登記簿の読み方を参照してください。

    配偶者居住権は登記しなければ対抗できない

    1028条の要件

    2020年4月1日に施行された配偶者居住権は、相続財産が不動産であることから直接生まれた制度です。1028条1項は、被相続人の配偶者が、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、遺産分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき、または配偶者居住権が遺贈の目的とされたときに、その建物の全部について無償で使用および収益をする権利を取得すると定めています。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合は成立しません(同項ただし書)。

    制度の趣旨は、配偶者が住み慣れた家に住み続けながら、預貯金など他の財産も取得できるようにすることです。所有権を取得すると評価額が高いため他の財産を取れなくなりますが、所有権より低く評価される配偶者居住権を取得すれば、住居と生活資金の両方を確保できます。1030条により存続期間は原則として配偶者の終身の間ですが、遺産分割の協議・遺言・審判で別段の定めをすることもできます。

    1031条の登記義務——引渡しでは対抗できない

    1031条1項は、居住建物の所有者は配偶者に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負うと定めています。2項は、賃貸借の対抗力に関する605条と、605条の4(不動産の賃借人による妨害の停止の請求等)を準用しています。

    ここが試験の急所です。建物の賃借権は、借地借家法31条により建物の引渡しがあれば対抗できます。しかし配偶者居住権には借地借家法31条の準用がなく、605条だけが準用されているため、登記を備えなければ第三者に対抗できません。実際に住み続けているだけでは足りないということです。だからこそ1031条1項が、所有者に登記を備えさせる義務を課しています。

    配偶者居住権は不動産登記法上の登記事項とされており、建物の権利部乙区に登記されます。土地には登記できません。配偶者居住権は建物についての権利だからです。

    譲渡できず、承諾なしに使用収益させられない

    1032条2項は「配偶者居住権は、譲渡することができない」と定めています。3項は、配偶者は居住建物の所有者の承諾を得なければ、居住建物の改築もしくは増築をし、または第三者に居住建物の使用もしくは収益をさせることができないと定めています。

    配偶者本人の居住を守るための権利なので、換金手段にはできない、という設計です。権利の内容は配偶者居住権でさらに詳しく扱っています。

    配偶者短期居住権とは別物

    1037条の配偶者短期居住権は、相続開始の時に無償で居住していた配偶者に、一定期間の使用を認める権利です。遺産分割で居住建物の帰属が確定した日か、相続開始の時から6か月を経過する日のいずれか遅い日まで存続します。

    配偶者居住権との違いは三点です。第一に、短期居住権は使用だけで収益ができません。第二に、遺産分割や遺贈を待たずに相続開始で当然に発生します。第三に、登記することができず、第三者への対抗力がありません。名前が似ているため入れ替えた選択肢が作られます。

    遺留分が金銭債権になったことの不動産上の意味

    1042条の割合と、兄弟姉妹の除外

    1042条1項は「兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として……次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける」とし、直系尊属のみが相続人である場合は3分の1、それ以外の場合は2分の1と定めています。条文の主語が「兄弟姉妹以外の相続人」である以上、兄弟姉妹に遺留分はありません。同条2項により、相続人が数人あるときは、この総枠に各自の法定相続分を乗じます。

    物権的効果から金銭債権へ

    2019年7月1日施行の改正で新設された1046条1項は、遺留分権利者およびその承継人は、受遺者または受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができると定めました。

    改正前の遺留分減殺請求は物権的効果を持ち、行使すると目的物そのものに権利が戻りました。不動産が対象であれば、遺留分権利者と受遺者の共有になってしまいます。事業用不動産を後継者に集中させる遺言をしても、遺留分減殺請求ひとつで共有に戻り、事業承継が破綻する。この不都合を解消するために、効果を金銭債権に一本化したのが1046条です。

    不動産に即していえば、遺留分侵害額請求では不動産の共有関係が発生しないということです。受遺者は不動産を保持したまま、金銭で解決します。1047条5項は、受遺者等が金銭を直ちに準備できない場合に、裁判所が相当の期限を許与できると定めており、支払能力への配慮も置かれています。

    期間の制限

    1048条は、遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が相続の開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは時効によって消滅し、相続開始の時から10年を経過したときも同様であると定めています。1年と10年の二本立てです。

    相続放棄・限定承認と、不動産の後始末

    3か月の熟慮期間

    915条1項は、相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、単純承認・限定承認・相続放棄のいずれかを選択しなければならないと定めています。938条により相続放棄は家庭裁判所への申述で行い、922条の限定承認は923条により共同相続人全員が共同してのみ行えます。

    不動産が絡むと、この3か月は短く感じられます。被相続人がどこにどれだけの不動産を持っていたかを調べ、評価し、抵当権などの負担を確認し、債務と比較して判断する必要があるからです。921条1号により相続財産の全部または一部を処分すると法定単純承認となるため、調査中に不用意に不動産を売却すれば放棄の道が閉ざされます。ただし保存行為は除かれます。

    限定承認とみなし譲渡

    限定承認には税の落とし穴があります。所得税法60条1項1号は、相続で取得した資産について取得費と取得時期を引き継ぐと定めていますが、その括弧書きで限定承認に係るものを除くとしています。限定承認の場合は所得税法59条1項1号によりみなし譲渡として扱われ、被相続人に譲渡所得が生じたものとして準確定申告が必要になります。含み益の大きい不動産があると、限定承認したこと自体で所得税が発生する構造です。

    940条の保存義務は不動産で重い

    940条1項は、相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人または相続財産の清算人に当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもってその財産を保存しなければならないと定めています。

    放棄すれば一切の責任から解放されるわけではありません。老朽化した建物に住んでいた相続人が放棄した場合、引き渡すまでは保存義務を負います。ただし義務の対象は「現に占有している」財産に限られており、遠方にあって占有していない不動産までは対象になりません。相続放棄の全体像は相続放棄と限定承認を参照してください。

    相続人不存在と相続土地国庫帰属制度

    相続人が誰もいない場合、951条以下により相続財産法人が成立し、清算手続を経て、958条の2の特別縁故者への分与がなければ959条により国庫に帰属します。

    これとは別に、2023年4月27日に施行された相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律は、相続または相続人に対する遺贈により土地を取得した者が、法務大臣の承認を受けて土地を国庫に帰属させる制度を設けました。ただし要件は厳格で、建物がある土地、担保権等が設定されている土地、通路など他人による使用が予定される土地、土壌汚染がある土地、境界が明らかでない土地などは承認されません。承認を受けた場合は10年分の土地管理費相当額の負担金を納付します。

    「要らない土地を無条件で国に押し付けられる制度」ではない点を押さえてください。更地にして境界を確定させる費用を負担し、そのうえで負担金を払う仕組みです。

    相続した不動産にかかる税と、四つの価格

    宅建試験の「税その他」では、相続税そのものはほとんど問われません。問われるのは、相続によって不動産を取得したときに宅建の出題範囲にある税がどう動くかです。

    不動産取得税は課されない

    地方税法73条の7第1号は、相続(包括遺贈および被相続人から相続人に対してなされた遺贈を含む)による不動産の取得に対しては不動産取得税を課することができないと定めています。形式的な所有権の移転にすぎないという理由による非課税です。

    対比すべきは贈与です。贈与による取得には不動産取得税が課されます。相続と贈与で扱いが分かれる点が繰り返し問われます。

    登録免許税は1000分の4

    相続による所有権の移転の登記には登録免許税がかかります。登録免許税法別表第一により、相続または法人の合併による所有権の移転の税率は1000分の4です。課税標準は不動産の価額であり、当分の間、固定資産課税台帳に登録された価格によるものとされています。

    売買による所有権移転より低い税率が設定されています。相続は当事者の選択によらない権利移転だからです。登録免許税の全体像は登録免許税と印紙税にまとめています。

    固定資産税は1月1日の所有者に課される

    地方税法359条は、固定資産税の賦課期日を当該年度の初日の属する年の1月1日と定めています。343条1項の納税義務者は固定資産の所有者であり、原則として登記簿に所有者として登記されている者です。

    ただし343条2項は、所有者として登記されている個人が賦課期日前に死亡しているときは、同日において当該土地または家屋を現に所有している者を所有者とすると定めています。相続登記が済んでいなくても、相続人が納税義務を負うということです。地方税法9条により、被相続人に課されるべき地方団体の徴収金の納付義務も相続人が承継します。

    「相続登記をしていないから固定資産税は払わなくてよい」は成り立ちません。登記の有無と納税義務は連動していません。固定資産税の仕組みは固定資産税で扱っています。

    土地の四つの価格を混同しない

    相続で不動産を扱うと、複数の「価格」が出てきます。宅建試験では四つの公的価格の区別が問われます。

    公示価格は地価公示法に基づき、国土交通省土地鑑定委員会が標準地について毎年1月1日時点の正常な価格を判定し、3月頃に公表します。基準地標準価格は国土利用計画法施行令に基づく都道府県地価調査で、都道府県知事が基準地について毎年7月1日時点の価格を判定し、9月頃に公表します。

    相続税評価額(路線価)は、国税庁が相続税・贈与税の課税のために毎年1月1日時点で評価するもので、公示価格の80%程度の水準に設定されています。固定資産税評価額は市町村長が固定資産評価基準に基づき評価し、基準年度ごとに3年に一度評価替えを行うもので、宅地については公示価格の70%程度を目途とする均衡化・適正化が図られてきました。

    価格時点、評価主体、公表時期、公示価格に対する水準の四つの軸で整理すると混乱しません。詳細は土地の4つの価格を参照してください。相続税・贈与税そのものの概要は贈与税・相続税の基礎で扱っています。

    相続した不動産と宅建業法・借地借家法

    相続による取得は「取引」に当たらない

    宅建業法2条2号は、宅地建物取引業を「宅地若しくは建物の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うもの」と定義しています。

    この定義に相続は含まれていません。売買でも交換でもなく、代理でも媒介でもないからです。したがって不動産を相続しても宅建業の免許は不要です。同じ理屈で、相続したアパートを自ら貸す行為も、「自ら貸借」が2条2号の列挙に含まれていないため免許は不要です。

    一方、相続した広い宅地を区画割りして、不特定多数の者に反復継続して分譲すれば、これは自ら売買を業として行うことになり免許が必要です。相続で取得したかどうかは関係ありません。判断枠組みは「業として行う」の判断で扱っています。免許制度そのものは宅建業の免許制度を参照してください。

    宅建業者が死亡したとき

    宅建業者本人が死亡した場合の扱いも問われます。宅建業法11条1項1号により、宅建業者が死亡した場合はその相続人が届出義務者となり、同項ただし書によりその事実を知った日から30日以内に届け出なければなりません。他の廃業等事由が「その日から30日以内」であるのに対し、死亡だけが「知った日から」である点が狙われます。相続人が死亡の事実を知らないうちに期間が進行するのは不合理だからです。

    そして76条により、宅建業者であった者またはその一般承継人は、当該宅建業者が締結した契約に基づく取引を結了する目的の範囲内においては、なお宅建業者とみなされます。相続人自身が宅建士でなくても、被相続人が締結した契約の後始末はできる、ということです。

    賃貸不動産を相続したとき

    賃貸中の建物を相続すると、賃貸人としての地位も承継されます。賃借人に対して改めて承諾を得る必要はありません。

    賃料債権の扱いには判例があります。最高裁平成17年9月8日判決は、相続開始から遺産分割までの間に共同相続にかかる不動産から生じた賃料債権は、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、その帰属は後にされた遺産分割の影響を受けないとしました。遺産分割で建物を単独取得した相続人が、分割前の賃料まで遡って自分のものだと主張することはできません。

    逆に賃借人が死亡した場合、借家権は一身専属権ではないため相続の対象になります。相続人が借家権を承継し、賃貸人は相続人に明渡しを求めることはできません。

    相続人がいない場合の受け皿として、借地借家法36条1項は、居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、婚姻または縁組の届出をしていないが事実上夫婦または養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者が賃借人の権利義務を承継すると定めています。ただし、相続人なしに死亡したことを知った後1か月以内に賃貸人に反対の意思を表示したときは承継しません。借地借家法の全体像は借地借家法で扱っています。

    試験での出題ポイント

    899条の2は「超える部分」を落とさせにくる

    最頻出は、法定相続分までの部分と、それを超える部分の切り分けです。「相続人は、相続により取得した不動産について、登記をしなければ第三者に対抗することができない」という選択肢は誤りです。法定相続分までは登記なしに対抗できます。

    逆に「遺言により不動産を取得した相続人は、登記がなくても第三者に対抗できる」も誤りです。改正前の判例を前提にした引っかけで、899条の2は遺産分割によるものかどうかを問わず、超える部分に登記を要求しています。

    相続登記義務化は「起算点」と「対抗力」で崩される

    起算点を「相続開始の日から3年」と書き換える選択肢が典型です。正しくは、相続開始を知り、かつ所有権取得を知った日から3年です。

    相続人申告登記については、「相続人申告登記をすれば第三者に対抗できる」という選択肢が誤りの定番です。申請義務の履行とみなされるだけで、対抗力はありません。また、遺産分割成立後の第二段階の義務(分割の日から3年)を落とす選択肢もあります。

    配偶者居住権は対抗要件と短期居住権で狙われる

    「配偶者は、居住建物の引渡しを受けていれば、配偶者居住権を第三者に対抗することができる」は誤りです。引渡しで対抗できるのは借地借家法31条が適用される建物賃借権であり、配偶者居住権は登記が必要です。

    「配偶者短期居住権は登記することができる」も誤りです。また、短期居住権に収益権限を認める選択肢、配偶者居住権を譲渡できるとする選択肢も作られます。1032条2項が譲渡を禁じている点を押さえてください。

    代襲の範囲を入れ替える

    「兄弟姉妹の子が死亡している場合、その子(甥・姪の子)が再代襲する」は誤りです。889条2項が887条3項を準用していないためです。相続人の確定を誤ると持分の計算がすべて狂うため、ここは配点上も重い論点です。

    税は相続と贈与の対比で問われる

    不動産取得税は相続による取得が非課税、贈与による取得は課税されます。この対比が最も多い形です。登録免許税は相続でも課税され、税率は1000分の4です。「相続による所有権移転登記には登録免許税がかからない」は誤りです。

    固定資産税については、賦課期日が1月1日であること、相続登記が未了でも現に所有している者が納税義務を負うことが問われます。

    宅建業法との接点

    「宅地を相続により取得した者は、宅地建物取引業の免許を受けなければならない」は誤りです。相続は2条2号の「取引」に当たりません。一方で、相続した宅地を区画割りして反復継続して分譲する場合は免許が必要です。行為の態様で判断する、という原則を崩さないでください。

    覚え方・整理の仕方

    「相続開始から10年」に三つの効果を束ねる

    2023年4月1日施行の改正で、相続開始から10年という区切りが三つの場面に導入されました。ばらばらに覚えると混乱するので、一本にまとめます。

    10年を経過すると、まず904条の3により遺産分割は原則として法定相続分または指定相続分によることになり、特別受益と寄与分を主張できなくなります。次に258条の2第2項により、遺産共有を共有物分割訴訟で解消できるようになります。そして262条の2第3項の裏返しとして、所在等不明共有者の持分取得の裁判が可能になります。

    三つに共通する発想は「10年経ったら持分を法定相続分で固定し、通常の共有として処理する」です。この一文を覚えておけば、個別の条文を思い出せます。

    対抗要件は「法定相続分の線」で切る

    相続と登記の関係は、法定相続分という一本の線で切ると整理できます。

    線の内側、つまり法定相続分までの部分は、登記なしに対抗できます。相続人は被相続人の地位を包括的に引き継ぐ当事者的な立場だからです。線の外側、つまり法定相続分を超える部分は、登記がなければ対抗できません。超える部分は他の相続人から譲り受けたのに等しく、第三者との関係では取引と同視されるからです。

    この線引きは、遺産分割によるものでも遺言によるものでも変わりません。「どういう原因で超えたか」ではなく「超えたかどうか」だけを見ます。

    対抗要件を「登記が要る/要らない/できない」の三段で並べる

    不動産をめぐる権利で、対抗要件の扱いが分かれるものを三段に並べます。

    登記が必要なもの。法定相続分を超える部分の相続(899条の2)、配偶者居住権(1031条)です。

    登記以外でも対抗できるもの。建物賃借権は引渡しで対抗できます(借地借家法31条)。借地権は借地上の建物の登記で対抗できます(借地借家法10条1項)。

    そもそも対抗力がないもの。相続人申告登記(不登法76条の3)、配偶者短期居住権(1037条)です。

    配偶者居住権が「登記が必要」の側にあり、建物賃借権が「引渡しでよい」側にあることを、この並びで区別してください。

    期間は「3か月・3年・1年10年・2年」で分類する

    相続と不動産に関する期間規定を、対象ごとに分けます。

    相続するかどうかを決める期間が3か月(915条1項)。登記を申請する期間が3年(不登法76条の2)。遺留分侵害額を請求する期間が1年と10年(1048条)。住所等変更登記が2年(不登法76条の5)。遺産分割を禁止できる期間が5年(908条)。

    「決める・登記する・請求する」という行為の種類で分類すると、数字が混ざりません。

    税は「入口・登記・保有・出口」の順に並べる

    不動産にかかる税を、時間軸で並べ替えます。

    取得の入口では不動産取得税。相続は非課税(地方税法73条の7第1号)、贈与は課税です。登記の場面では登録免許税。相続は1000分の4です。保有している間は固定資産税。賦課期日は1月1日です。売却の出口では譲渡所得税。相続で取得した資産は取得費と取得時期を引き継ぎます(所得税法60条1項1号)。

    この四段構えに当てはめれば、どの税の話をしているのかを見失いません。不動産の税全体は不動産にかかる税金にまとめています。

    理解度チェッククイズ

    第1問

    共同相続人の一人が遺産分割によって不動産を単独で取得した場合、その相続人は、登記をしなければ、当該不動産の全部について第三者に対抗することができない。○か×か。

    答えは×です。民法899条の2第1項は、対抗要件を要求するのは「相続分を超える部分」についてであると定めています。法定相続分までの部分は登記がなくても第三者に対抗できます。したがって「全部について」対抗できないとする点が誤りです。相続人が2人で法定相続分が各2分の1であれば、登記なしに対抗できるのは2分の1、登記が必要なのは残る2分の1です。

    第2問

    相続により不動産の所有権を取得した者は、被相続人が死亡した日から3年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。○か×か。

    答えは×です。不動産登記法76条の2第1項の起算点は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ当該所有権を取得したことを知った日です。死亡の日ではありません。二つの認識がそろった日から3年であり、相続人が被相続人の不動産の存在を後から知った場合は、その時点から起算します。なお、正当な理由なく申請を怠った場合の過料は10万円以下です(164条1項)。

    第3問

    配偶者居住権を取得した配偶者は、居住建物の引渡しを受けていれば、その後に居住建物を譲り受けた第三者に対して配偶者居住権を対抗することができる。○か×か。

    答えは×です。民法1031条2項は605条を準用しており、配偶者居住権の対抗要件は登記です。借地借家法31条のように建物の引渡しを対抗要件とする規定は準用されていません。そのため1031条1項は、居住建物の所有者に対して配偶者に登記を備えさせる義務を課しています。実際に住み続けているだけでは第三者に対抗できません。

    第4問

    相続により宅地を取得した者は、その宅地について不動産取得税を課されず、所有権の移転の登記についても登録免許税を課されない。○か×か。

    答えは×です。前半は正しく、地方税法73条の7第1号により相続による不動産の取得には不動産取得税が課されません。しかし後半が誤りで、相続による所有権の移転の登記には登録免許税が課され、税率は登録免許税法別表第一により1000分の4です。非課税なのは不動産取得税だけであり、登録免許税は課されます。二つの税を一括りにさせる形の出題です。

    第5問

    宅地建物取引業者でない者が宅地を相続により取得し、これを複数の区画に分割して不特定多数の者に反復継続して分譲する場合であっても、相続により取得した宅地であるから、宅地建物取引業の免許を受ける必要はない。○か×か。

    答えは×です。免許の要否は、宅建業法2条2号の定義に当てはまる行為を業として行うかどうかで決まり、その宅地をどのように取得したかは関係ありません。相続による取得自体は「取引」に当たらないため免許は不要ですが、取得後に区画割りして不特定多数に反復継続して分譲すれば、自ら売買を業として行うことになり免許が必要です。なお、相続したアパートを自ら貸す行為は「自ら貸借」であり、2条2号に含まれないため免許は不要です。

    まとめ

    相続財産が不動産であるときに何が起きるかを、条文の順に整理します。

    相続開始と同時に、不動産は898条により相続人全員の遺産共有となり、持分は898条2項により法定相続分で決まります。この共有は放置すると数次相続で共有者が増え、258条の2により相続開始から10年を経過するまでは共有物分割訴訟でも解消できません。906条以下の遺産分割で単独所有にするのが原則的な出口で、909条の遡及効はただし書により第三者を害することができません。

    第三者との優劣を決めるのは899条の2です。法定相続分までは登記なしに対抗でき、それを超える部分は遺産分割でも遺言でも登記が必要です。これとは別に、不動産登記法76条の2が相続を知り所有権取得を知った日から3年以内の申請義務を課し、76条の3の相続人申告登記が受け皿として用意されていますが、こちらに対抗力はありません。義務違反の過料は10万円以下です。

    配偶者居住権は、不動産が分割できないことから生まれた制度です。1031条により対抗要件は登記であり、建物賃借権のように引渡しでは足りません。遺留分は1046条により金銭債権となったため、行使されても不動産が共有になることはなくなりました。

    税では、相続による取得は不動産取得税が非課税、登録免許税は1000分の4、固定資産税は1月1日の現に所有している者に課され、売却時の譲渡所得は取得費と取得時期を被相続人から引き継ぎます。宅建業法では、相続による取得は2条2号の「取引」に当たらないため免許は不要ですが、取得後の分譲が業に当たれば免許が必要です。

    相続の一般ルールは相続の総論、放棄の手続は相続放棄と限定承認、分割協議の要件は遺産分割協議と相続登記義務化で扱っています。この記事は、それらを不動産という財産の性質から読み直したものです。

    宅建試験AIブートラボのアプリでは、相続と不動産登記法の論点を肢別トレーニングで条文別に演習できます。

    読んだ内容を、税・その他の肢で確かめる

    税と価格の評定は毎年ほぼ同じ形で出ます。出題パターンを肢別で押さえれば取りこぼしません。

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