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8種制限とは|自ら売主制限の全体像と8項目

宅建業法 読了 約46分

宅建業法の8種制限を総論として整理。78条2項が画す適用範囲、民法をどう修正しているかの立法技術、違反の効果を私法・監督処分・罰則の三層で解説します。

目次

    この記事は、8種制限(自ら売主制限)の総論です。8項目それぞれには独立した解説記事があるので、ここでは個別の細部ではなく、8つを貫く構造、すなわち「なぜこの8つなのか」「民法の何をどう曲げているのか」「どの順番で並べると記憶に残るのか」「違反すると何が起きるのか」を扱います。数字だけを横に並べて比較したい場合は8種制限の横断整理を、適用されない場面を集中的に確認したい場合は8種制限が適用されないケースをご覧ください。

    結論を先に述べます。8種制限は、宅地建物取引業法78条2項が定める適用除外の裏返しとして輪郭が決まっており、覚えるべきことは「誰と誰の、どの契約に適用されるのか」という前提条件と、「契約の進行段階のどこを守っているのか」という配置の二つです。8項目をばらばらの暗記事項として並べると数字が混線しますが、申込みから決済までの時間軸に並べ直すと、それぞれの制限が何を防いでいるのかが見え、数字も定着します。さらにもう一段掘ると、8つは民法を修正する立法技術の型が三つに分かれており、その型の違いが、そのまま「違反したときにどうなるか」の違いになっています。

    8種制限とは何か

    8種制限とは、宅地建物取引業者が自ら売主となり、宅地建物取引業者でない者が買主となる売買契約について、宅地建物取引業法が課している8つの制限の総称です。法律の条文に「8種制限」という言葉があるわけではなく、実務と受験の世界で使われてきた呼び名です。

    78条2項が範囲を画している

    この8つがどれを指すのかは、適用除外を定めた78条2項から逆算できます。同項は次のように規定しています。

    第三十三条の二及び第三十七条の二から第四十三条までの規定は、宅地建物取引業者相互間の取引については、適用しない。
    ――宅地建物取引業法78条2項

    つまり、業者どうしの取引では適用されないと名指しされている条文が、そのまま8種制限の中身です。33条の2、そして37条の2から43条までを並べると、次の8項目になります。

    1. 自己の所有に属しない宅地建物の売買契約締結の制限(33条の2)
    2. クーリング・オフ、すなわち事務所等以外の場所においてした買受けの申込みの撤回等(37条の2)
    3. 損害賠償額の予定等の制限(38条)
    4. 手付の額の制限等(39条)
    5. 担保責任についての特約の制限(40条)
    6. 手付金等の保全措置(41条、41条の2)
    7. 割賦販売契約の解除等の制限(42条)
    8. 所有権留保等の禁止(43条)

    なお5番目の40条は、条文の見出しが「担保責任についての特約の制限」です。受験の世界では「契約不適合責任の特約の制限」と呼ばれることが多く、条文本文も「種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任」という書き方をしていますが、見出しの語は「担保責任」のままです。条文検索をするときに引っかからず戸惑うことがあるので、名前が二通りあることを知っておいてください。

    「8種」と数えるときの条文の本数

    条文の本数としては41条と41条の2があるため9本になりますが、この二つは工事完了前の物件と工事完了後の物件という同じ制度の裏表なので、まとめて1項目と数えます。「8種」という呼び名の由来はここにあります。

    条文の並び順そのものも記憶の手がかりになります。33条の2だけが離れていて、あとは37条の2から43条まで連続している、という形です。33条の2が離れているのは、この条文が置かれている位置が「業務」の章のうち契約締結の前段階を扱う部分、すなわち広告の規制(32条・33条)の直後だからです。物件を売る前提が整っていない段階での行為を規律する、という点で広告規制と発想が近いところに置かれています。広告規制そのものは広告に関する規制で扱っています。

    貫いている考え方

    8つに共通するのは、売主である業者と買主である一般の消費者との間に、情報量と交渉力の大きな差があるという前提です。売主業者は、物件の状態も、市場の相場も、契約書の条項が実際にどう働くかも知っています。買主はそのいずれも知らないまま、人生で数回しかない高額の契約を結びます。この差を放置すると、契約自由の原則のもとで、買主が一方的に不利な条件を飲まされる余地が生まれます。

    そこで宅地建物取引業法は、民法が当事者の自由に委ねている部分に上限や下限を設定し、あるいは買主に一方的な撤回権を与えることで、契約の各段階に安全弁を設けました。逆にいえば、この安全弁は「買主が素人であること」を理由に置かれているので、買主も業者であれば不要になります。78条2項が業者間取引を適用除外としているのは、そういう理屈です。宅地建物取引業法全体の中でのこの分野の位置づけは宅建業法の全体像で確認できます。

    民法をどう修正しているか — 三つの立法技術

    8種制限を「宅地建物取引業法が定めた8つのルール」として平板に覚えると、条文ごとの効果の違いが説明できません。8つは、民法という土台に対してそれぞれ違う手の加え方をしています。その手の加え方は三つの型に分類でき、型が分かると、無効になるのかならないのか、監督処分の対象になるのかならないのか、という違いが理屈で導けるようになります。

    型1 民法が有効とする契約を、業者には禁じる

    該当するのは33条の2です。民法561条は「他人の権利を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う」と定めています。つまり民法は、他人の物を売る契約それ自体を有効なものとして扱い、売主に取得移転義務を負わせることで処理しています。契約は成立していて、売主が権利を取得できなければ債務不履行になる、という構成です。

    宅地建物取引業法33条の2は、この民法が認めている契約を、業者が自ら売主となる場面に限って「締結してはならない」と正面から禁じました。民法の効力ルールを変えたのではなく、契約に至る行為そのものを禁止したのです。ここが重要で、行為を禁じただけなので、禁を破って締結された契約の私法上の効力については何も書かれていません。後述するとおり、違反しても契約は無効になりません。

    型2 民法の任意規定に上限・下限を差し込む

    該当するのは38条、39条、40条、42条です。いずれも、民法に対応する規定があり、その規定が当事者の合意で自由に修正できる任意規定であるところに、宅地建物取引業法が「ここまでは修正してよいが、これ以上は駄目だ」という線を引いています。

    損害賠償額の予定について、民法420条1項は「当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる」とだけ述べ、金額に上限を置いていません。同条3項は違約金を賠償額の予定と推定します。宅地建物取引業法38条1項は、この予定額と違約金を合算した額が代金の額の10分の2を超える定めをしてはならない、という上限を差し込みました。

    手付について、民法557条1項は、買主は手付を放棄し、売主は倍額を現実に提供して契約を解除できると定めます。これは任意規定なので、当事者が「本件手付は解約手付ではない」と合意すれば解除権は生じません。宅地建物取引業法39条2項は、受領した手付が「いかなる性質のものであつても」解約手付として扱うと定め、この合意の余地を塞ぎました。加えて39条1項は、民法にはない額の上限(代金の10分の2)を新たに設けています。

    担保責任の期間について、民法566条は、買主が不適合を知った時から1年以内に通知しなければ責任追及ができないと定めます。これも任意規定で、合意で短縮も伸長もできます。宅地建物取引業法40条1項は、民法566条に規定するものより買主に不利となる特約を禁じ、例外として引渡しの日から2年以上となる特約だけを認めました。

    催告解除について、民法541条は「相当の期間を定めてその履行の催告をし」と述べるだけで、期間の長さも催告の方式も定めていません。宅地建物取引業法42条1項は、割賦販売の賦払金の遅滞を理由とする解除等について、期間を30日以上と数値化し、方式を書面に限定しました。

    この型に共通するのは、修正されているのが「契約の中身」だという点です。したがって違反の効果も、契約の中身に対して働きます。すなわち、その定めが無効になります。

    型3 民法に対応物のない権利・義務を新設する

    該当するのは37条の2、41条・41条の2、43条です。民法に対応する規定がなく、宅地建物取引業法が新しく作り出したものです。

    クーリング・オフ(37条の2)は、有効に成立した契約を、債務不履行も詐欺も錯誤もないのに一方的に解消できる権利です。民法の解除は債務不履行や合意を要件としますし、取消しは意思表示の瑕疵を要件とします。何の落ち度も要件も要らずに8日間だけ与えられる離脱権は、民法の体系にはありません。

    手付金等の保全措置(41条・41条の2)は、売主が倒産した場合に備えて、金銭を受領する前に第三者の保証や保険を用意させるものです。民法には、売主に対して支払いの前に担保を用意せよと命じる規定はありません。

    所有権留保等の禁止(43条)は、代金完済まで所有権を留保しておくという民法上まったく適法な取引形態を、割賦販売の場面で禁じ、代わりに「代金の10分の3を超える支払いを受けるまでに登記その他の義務を履行せよ」という作為義務を売主に課します。これも民法にはない義務の創設です。

    型の違いが、そのまま効果の違いになる

    三つの型を並べると、条文の書きぶりの違いが説明できます。型2の4条文には、いずれも「反する特約は無効とする」という趣旨の項が置かれています(38条2項、39条3項、40条2項、42条2項)。中身を規律しているのだから、線を越えた中身を無効にすればよいわけです。

    これに対し型1と型3のうち、業者に対する禁止や作為義務の形をとる33条の2、41条1項、41条の2第1項、43条には、無効規定が置かれていません。禁じられているのは業者の行為であって、契約の中身ではないからです。行為を禁じただけで契約を無効にしないのは、無効にすると買主が物件を取得できなくなり、かえって保護の趣旨に反するためです。

    型3のうちクーリング・オフだけは、37条の2第4項に「前三項の規定に反する特約で申込者等に不利なものは、無効とする」が置かれています。買主に権利を与える規定なので、その権利を特約で削ろうとする動きを封じる必要があったからです。

    この整理を頭に入れておくと、「40条に違反した特約はどうなるか」「41条に違反して受領した手付金はどうなるか」という問いに、暗記ではなく理屈で答えられるようになります。

    適用の前提となる3つの条件

    8種制限の問題で最初にやるべきことは、計算でも数字の照合でもなく、そもそも8種制限が適用される場面なのかを確かめることです。ここを飛ばして数字だけを見に行くと、「8日を経過していないからクーリング・オフできる」と判断したものの、実は買主が宅地建物取引業者だった、という失点が起きます。確認すべきは次の3点です。

    条件1 売主が宅地建物取引業者であること

    売主が宅地建物取引業者でなければ、そもそも宅地建物取引業法の売主規制は働きません。一般の個人が売主で、業者が買主側についているだけの取引には適用されません。宅地建物取引業に当たるかどうかの判定基準そのものは宅建業の「業」に当たるケースで扱っています。

    「宅地建物取引業者」の範囲は免許の有無だけで決まらない

    条件1と条件3はどちらも「宅地建物取引業者かどうか」を問うので、その範囲がどこまでかが結論を左右します。免許を持っている者だけが宅地建物取引業者だと考えていると、みなし規定で足をすくわれます。77条2項により宅地建物取引業を営む信託会社は国土交通大臣の免許を受けた宅地建物取引業者とみなされ、76条により免許が失効・取消しになった者も取引を結了する目的の範囲内では宅地建物取引業者とみなされます。どちらも免許の有無と業者性がずれる場面です。誰が業者に当たるかの判定を条文ごとに詰めたい場合は8種制限が適用されないケースを、免許制度と廃業後の処理は宅建業の免許制度宅建業の廃業届・免許取消を参照してください。

    条件2 業者が「自ら売主」であること

    これが最も取り違えの多い条件です。宅地建物取引業者が取引に関与していても、その立場が媒介や代理であれば、8種制限は適用されません。8種制限が制約しているのは、業者が売主として買主と向き合う場面における契約条件だからです。媒介業者は契約の当事者ではないので、手付の額を制限したり、担保責任の特約を縛ったりする対象になりません。

    条文の書きぶりを見ると、この限定が繰り返し明示されていることが分かります。33条の2は「自ら売主となる売買契約」、37条の2第1項は「宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約について」、38条1項は「みずから売主となる宅地又は建物の売買契約において」、41条1項は「自ら売主となるものに関しては」というように、どの条文にも自ら売主であることが要件として書き込まれています。38条・42条・43条が「みずから」と平仮名で書かれているのは、制定時期の表記の違いにすぎず、意味は同じです。

    問題文では「Aは自ら売主として」「Aは売主Bの依頼を受けて媒介として」というように立場が必ず書かれています。取引態様がどう示されているかを最初に確認する習慣は、報酬計算でも共通して効きます。取引態様の明示義務そのものについては取引態様の明示義務を参照してください。

    条件3 買主が宅地建物取引業者でないこと

    78条2項がまさにこれを定めています。買主が業者であれば、8種制限は一切適用されません。手付を代金の10分の5で設定しても、担保責任を一切負わない特約を結んでも、宅地建物取引業法上は違反になりません。ただし後述するとおり、業者間取引でも適用され続ける規定は別にあります。

    なお、ここで問われているのは「宅地建物取引業者かどうか」であって、「事業者かどうか」でも「法人かどうか」でもありません。買主が上場企業であっても、宅地建物取引業の免許を持っていなければ8種制限は適用されます。逆に買主が個人であっても、個人で免許を受けた宅地建物取引業者であれば適用されません。この点は、後述する消費者契約法の適用範囲との違いを理解するうえでも重要です。

    対象は売買契約に限られる

    3条件に加えて、対象となる契約の種類も押さえておく必要があります。8種制限の各条文は、いずれも「自ら売主となる宅地又は建物の売買契約」を対象としています。したがって貸借には適用されません。宅地建物取引業者が自ら貸主となって一般の借主と賃貸借契約を結ぶ場合、クーリング・オフも手付の額の制限も働きません。そもそも自ら貸主となる行為は宅地建物取引業に当たらない、という点とあわせて理解しておくとよいでしょう。

    交換についても同様です。8種制限の条文は「売買」と書いており、交換を含めていません。宅地建物取引業法は、35条・37条のように売買と交換を並べて書く条文と、8種制限のように売買だけを書く条文とを、意識的に書き分けています。適用されない場面の網羅的な整理は8種制限が適用されないケースにまとめてあります。

    78条1項と2項は別の規定である

    78条は1項と2項で別のことを定めています。1項は「この法律の規定は、国及び地方公共団体には、適用しない」として宅地建物取引業法全体を国・地方公共団体に適用しないとするもので、8種制限だけを業者間取引から外す2項とは、除外される規定の範囲も理由も違います。1項があるからといって、国や地方公共団体が買主になったときに売主業者の側の義務が外れるわけではありません。この二つの項の射程の違いは8種制限が適用されないケースで条文に即して詰めています。

    8つを契約の段階順に並べ直す

    条文の順番に8項目を覚えようとすると、33条の2が先頭から離れていること、41条と41条の2が続いていることなどが引っかかり、数字も制限も混ざります。そこで、買主から見た契約の進行に沿って並べ直します。

    第一に、契約の入口です。そもそも売れる状態にない物件を売らせないという制限が置かれます。これが33条の2の他人物売買の制限です。

    第二に、申込みの直後です。訪問販売のような場面で勢いに任せて申込みをしてしまった買主に、頭を冷やす期間を与えます。これが37条の2のクーリング・オフです。

    第三に、契約書の中身です。買主が読まないまま押印しがちな条項について、内容そのものに上限や下限を設けます。損害賠償額の予定等の制限(38条)、手付の額の制限等(39条)、担保責任についての特約の制限(40条)の3つがここに入ります。

    第四に、代金の支払いです。物件の引渡しを受ける前に支払った金銭が、売主の倒産などで失われないよう手当てします。これが41条・41条の2の手付金等の保全措置です。

    第五に、履行が長期にわたる場合です。割賦販売では代金の支払いが何年も続くため、その途中で買主が一方的に不利な扱いを受けないよう、解除の手続と所有権の移転時期を規律します。42条の割賦販売契約の解除等の制限と、43条の所有権留保等の禁止です。

    この5段階に配置し直すと、8つの制限が「買主が不利になりうる場面を、時間軸に沿って順に塞いでいる」構造だと分かります。以下、段階ごとに要点を確認します。

    入口の制限 — 他人物売買の禁止(33条の2)

    宅地建物取引業法33条の2は、宅地建物取引業者が自己の所有に属しない宅地または建物について、自ら売主となる売買契約を締結してはならないと定めています。括弧書きにより予約も同様に禁止されます。前述のとおり民法上は他人物売買も有効ですが、業者が売主となる場合には入口で禁じたわけです。買主が代金を払ったのに所有権を得られないという事態を、契約の成立段階で防ぐ趣旨です。

    例外は2号構成

    例外は2つの号に分かれています。1号は、業者がその物件を取得する契約を締結しているときです。ここで重要なのは、条文の括弧書きが「予約を含み、その効力の発生が条件に係るものを除く」となっている点です。予約であれば例外に当たるが、停止条件付きの取得契約では例外に当たらない、という書き分けです。条件が成就しなければ取得できず、買主が確実に所有権を得られる保証がないためです。この点は繰り返し出題されます。

    1号にはさらに「その他宅地建物取引業者が当該宅地又は建物を取得できることが明らかな場合で国土交通省令・内閣府令で定めるとき」という受け皿があり、施行規則15条の6が4つの場合を列挙しています。いずれも取得の確実性が制度上担保されている場面で、1号本文と発想は同じです。4つの中身と、それぞれがなぜ確実といえるのかは自己の所有に属しない物件の売買制限で条文に即して扱っているので、総論としては「1号は契約で確実性を作る型、その延長線上に省令の受け皿がある」という構造だけ押さえてください。

    2号は、その売買が41条1項に規定する売買、すなわち工事完了前の物件の売買に該当し、41条1項1号または2号の措置、つまり保証委託契約または保証保険契約による保全措置が講じられている場合です。未完成物件は性質上まだ存在していませんが、保全措置によって買主が支払った金銭は保護されるため、契約締結が認められます。ここで注目したいのは、33条の2の例外が41条を参照している点です。8種制限の8項目は独立に並んでいるのではなく、入口の制限が代金保全の制限を条文上引き込むという形で連結しています。他人物売買が危険なのは「代金を払ったのに物件が来ない」からであり、その危険が保全措置で消えるなら入口を閉じる必要はない、という一貫した論理です。

    なお、買主が業者以外であっても、業者が売主として売る物件が業者自身の所有であれば、そもそも33条の2の問題は生じません。

    申込みを撤回する権利 — クーリング・オフ(37条の2)

    37条の2は、宅地建物取引業者の事務所その他国土交通省令・内閣府令で定める場所(事務所等)以外の場所で買受けの申込みをした者、または売買契約を締結した買主に対し、書面により申込みの撤回または契約の解除を認めています。8つの中で、条文の要件が場所・期間・方式・効果と四方向に分かれており、その分だけ選択肢の作りどころが多い項目です。

    場所で決まる

    クーリング・オフができるかどうかは、まず場所で決まります。ここで総論として押さえたいのは、37条の2が「事務所その他国土交通省令・内閣府令で定める場所」と書いて中身を省令に委ね、その施行規則16条の5がさらに「法第三十一条の三第一項の規定により……宅地建物取引士を置くべきもの」と書いて専任の宅地建物取引士の設置義務の規定を引いている、という三段構えの委任です。8種制限の中で、判定の基準が他の制度の要件に丸ごと乗っている条文はここだけで、だからこの制限だけは専任の宅建士の設置義務を理解していないと解けません。個々の場所がどちらに転ぶかの判定、テント張りの案内所や買主の自宅の扱いはクーリング・オフ制度で事例ごとに整理しています。

    判断の基準時は申込みの場所

    申込みをした場所と契約を締結した場所が異なる場合、判断の基準になるのは申込みの場所です。これは解釈で導かれるのではなく、37条の2第1項の括弧書きに「事務所等において買受けの申込みをし、事務所等以外の場所において売買契約を締結した買主を除く」と明記されています。事務所で申し込んで喫茶店で契約した買主は除外される、という書き方によって、判定が申込みの場所で行われることが条文上確定しているわけです。

    したがって喫茶店で申込みをして、後日、業者の事務所で契約書に署名した場合は、申込みが事務所等以外の場所で行われている以上、クーリング・オフができます。「最終的に事務所で契約したのだからできない」という選択肢は誤りです。

    期間と方式

    クーリング・オフができる旨およびその方法について書面で告げられた日から起算して8日を経過したときは、できなくなります。起算日は告知を受けた日そのものを1日目として数えます。業者から書面による告知がなければ8日の期間は進行しないため、告知がない限りいつまでも撤回できることになります。

    告知の中身は施行規則16条の6が6項目を定めており、口頭では効力を持ちません。この書面を交付して初めて8日の期間が動き出します。記載6項目の内訳はクーリング・オフ制度で扱っています。

    方式は書面です。そして撤回等は、申込者等が書面を発した時にその効力を生じます(37条の2第2項)。到達ではなく発信の時点で効力が生じるので、8日目に投函し、業者に届いたのが10日目であっても有効です。8種制限の中で発信主義が採られているのはこの条文だけで、他の7項目に期間の起算や意思表示の到達に関する特則はありません。

    できなくなるもう一つの場合

    期間の経過とは別に、買主が宅地建物の引渡しを受け、かつ、代金の全部を支払ったときも、クーリング・オフはできなくなります。引渡しだけ、あるいは代金の全額支払いだけでは足りず、両方が揃って初めて権利が失われます。「代金全額を支払ったがまだ引渡しを受けていない」という設定は、クーリング・オフができる側の事例です。

    効果と特約

    撤回等がされた場合、業者は損害賠償や違約金の支払いを請求できません。これは1項後段に書かれています。また3項により、受領した手付金その他の金銭を速やかに返還しなければなりません。そして4項により、これらの規定に反する特約で申込者等に不利なものは無効とされます。「クーリング・オフの期間を5日とする特約」は買主に不利なので無効、「10日とする特約」は買主に有利なので有効、という判断になります。事例に即した詳細はクーリング・オフ制度で扱っています。

    契約条項そのものへの制限(38条・39条・40条)

    契約書の条項に直接介入するのがこの3つです。いずれも、民法であれば当事者の合意で自由に決められる事項について、上限や下限を設定しています。

    損害賠償額の予定等の制限(38条)

    債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、または違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の10分の2を超えることとなる定めをしてはなりません。ポイントは「合算した額」で判定するという点です。損害賠償額の予定が代金の15パーセント、違約金が10パーセントであれば、それぞれは10分の2以内でも、合算25パーセントとなり制限に触れます。

    違反した場合の効果も特徴的です。契約全体が無効になるのではなく、代金の額の10分の2を超える部分についてのみ無効となります。代金3,000万円の物件で合算700万円と定めた場合、上限600万円までは有効で、超過分の100万円について無効となります。詳細は損害賠償の予定額の制限にまとめています。

    手付の額の制限等(39条)

    業者は、代金の額の10分の2を超える額の手付を受領することができません。これが額の制限です。あわせて39条2項は、受領した手付について、その手付がいかなる性質のものであっても、買主はその手付を放棄して、業者はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができると定めています。契約書に「本件手付金は違約手付とし、解除権を留保するものではない」と書いても、解約手付としての効力が認められるということです。

    ただし、相手方が契約の履行に着手した後は解除できません。そして、これらに反する特約で買主に不利なものは無効です。「買主は手付を放棄しても解除できない」という特約は無効、「売主の履行着手後も買主は手付放棄により解除できる」という特約は買主に有利なので有効、という判断になります。額の制限と解約手付とみなす規定は別の話なので、混ぜないでください。詳しくは手付金の制限を参照してください。

    担保責任についての特約の制限(40条)

    目的物が種類または品質に関して契約の内容に適合しない場合の担保責任について、民法566条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない、というのが40条1項です。民法566条は、買主が不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければ責任追及ができないと定めているので、これが比較の基準線になります。なお民法566条ただし書は、売主が引渡しの時に不適合を知り、または重大な過失によって知らなかったときは期間制限が働かないとしています。

    例外は一つだけです。民法566条に規定する期間について、目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合は許されます。起算点を「知った時」から「引渡しの日」に前倒しすることは買主に不利になりうるのですが、2年以上の期間が確保されるなら実質的な保護に欠けないという判断です。したがって「引渡しの日から2年」は有効、「引渡しの日から1年」は無効になります。無効となった特約は、なかったものとして扱われ、民法の原則に戻ります。40条を単独で深く扱った記事として契約不適合責任の特約制限があります。

    支払った金銭を守る — 手付金等の保全措置(41条・41条の2)

    買主が引渡しを受ける前に支払った金銭は、売主が倒産すれば戻ってきません。これを防ぐのが手付金等の保全措置です。41条が工事完了前の物件、41条の2が工事完了後の物件を扱います。条文の書き方としては、41条が「宅地の造成又は建築に関する工事の完了前において行う当該工事に係る宅地又は建物の売買」を対象とし、41条の2が「前条第一項に規定する売買を除く」と書いて残り全部を拾う、という関係になっています。

    「手付金等」とは何か

    保全の対象となる手付金等は、41条1項の括弧書きが定義しています。代金の全部または一部として授受される金銭、および手付金その他の名義をもって授受される金銭で代金に充当されるものであって、契約の締結の日以後、物件の引渡し前に支払われるものです。名称が手付金であるかどうかは関係なく、中間金や内金も含まれます。逆に、引渡し後に支払われる金銭は含まれません。

    保全措置が不要になる場合

    ただし書は三つの場合を並べています。買主への所有権移転の登記がされたとき、買主が所有権の登記をしたとき、そして受領しようとする手付金等の額が一定額以下であるときです。前二者は、登記を得ていれば売主の倒産があっても買主の権利は守られるからです。

    三つ目の一定額は、工事完了前の物件では「代金の額の百分の五以下であり、かつ、政令で定める額以下」、工事完了後の物件では「代金の額の十分の一以下であり、かつ、政令で定める額以下」です。この政令で定める額は、宅地建物取引業法施行令3条の5により、いずれも1,000万円とされています。パーセントの部分だけが条文本体にあり、金額の部分は政令に委ねられている、という二段構えになっている点は、条文を自分で引いたときに気づいておきたいところです。

    判定にあたっては、条文の括弧書きが「既に受領した手付金等があるときは、その額を加えた額」と明記しているとおり、既に受領した額を含めて合算します。工事完了前の物件で代金の4パーセントを手付金として受領済みの業者が、さらに3パーセントの中間金を受領しようとすれば、合計7パーセントとなって基準を超えるため、その中間金の受領前に保全措置が必要になります。また、パーセントと1,000万円の両方を満たす場合にのみ不要になる点も注意してください。代金5億円の完成物件で1,500万円を受領する場合、10分の1以下ではあっても1,000万円を超えているため、保全措置が必要です。

    買主側の防御手段が条文にある

    保全の方法は、銀行等による保証委託契約(41条1項1号)、保険事業者による保証保険契約(同項2号)、指定保管機関による手付金等寄託契約と質権設定契約(41条の2第1項各号)です。工事完了前と完了後で使える方法が変わる理由と、要否の判定・計算の練習は手付金等の保全措置で扱っています。

    総論として見逃せないのは、41条4項と41条の2第5項が、業者が保全措置を講じないときは買主が手付金等を支払わないことができると定めている点です。33条の2や43条のように業者への禁止・作為義務だけを書いた条文には、こうした買主側の受け皿がありません。41条・41条の2は、業者に義務を課す型でありながら、その義務が果たされないときに買主が自分の行動で身を守れる道を同じ条文の中に用意している、という点で8種制限のなかでも作りが厚い規定です。金銭が現実に動く場面を規律しているため、義務違反の効果を行政処分だけに委ねられなかったのだと理解しておくとよいでしょう。

    割賦販売という長い履行過程を守る(42条・43条)

    宅地建物取引業法上の割賦販売とは、代金の全部または一部について、目的物の引渡し後1年以上の期間にわたり、かつ、2回以上に分割して受領することを条件として販売するものをいいます。この定義は35条2項の括弧書きに置かれており、「以下同じ」と書かれているので、42条・43条もこの定義に従います。賦払金の定義も同じく35条2項3号の括弧書きにあり、「割賦販売の契約に基づく各回ごとの代金の支払分で目的物の引渡し後のもの」とされ、こちらは「第四十二条第一項において同じ」と明示されています。定義が重要事項説明の条文の中に置かれているという構造は、条文を自分で引くまで気づきにくいところです。

    割賦販売契約の解除等の制限(42条)

    賦払金の支払義務が履行されない場合、業者は、30日以上の相当の期間を定めてその支払を書面で催告し、その期間内に義務が履行されないときでなければ、賦払金の支払の遅滞を理由として、契約を解除すること、および支払時期の到来していない賦払金の支払を請求することができません。この規定に反する特約は無効です(42条2項)。

    条文が「賦払金の支払の遅滞を理由として」と限定している点は見落とされがちです。買主に別の債務不履行があった場合、たとえば引渡し後の物件の使用方法に関する約定違反があった場合の解除まで、この手続に服するわけではありません。

    民法541条の催告解除には「相当の期間」という要件しかありませんが、宅地建物取引業法はこれを30日以上と数値化し、さらに書面を要求しています。買主が一時的な資金不足で1回の支払いを落としただけで、期限の利益を失い残代金の一括請求を受ける、という事態を防ぐ趣旨です。「口頭で催告した」「20日の期間を定めた」といった設定は、いずれも要件を満たしません。詳細は割賦販売の解除等の制限を参照してください。

    所有権留保等の禁止(43条)

    所有権留保とは、代金が完済されるまで所有権を売主に留めておくことです。43条1項は、業者が自ら売主として割賦販売を行った場合、物件を買主に引き渡すまでに、登記その他引渡し以外の売主の義務を履行しなければならないとし、引渡しまでに代金の額の10分の3を超える額の金銭の支払を受けていない場合には、10分の3を超える額の支払を受けるまでに履行すればよい、という形で猶予を与えています。裏返すと、代金の10分の3を超える支払いを受けた時点で、所有権移転登記をしなければならないということです。

    ただし書があり、買主が所有権の登記をした後の代金債務について、これを担保するための抵当権もしくは不動産売買の先取特権の登記を申請し、またはこれを保証する保証人を立てる見込みがないときは、この限りでないとされています。売主が無担保のまま残代金の回収リスクを負う場合まで移転を強制するのは酷だからです。

    43条2項は譲渡担保の禁止を定めており、引渡し後に代金の10分の3を超える額の支払いを受けた後は、担保の目的で当該宅地建物を譲り受けてはならないとしています。所有権留保を正面から禁じても、譲渡担保という形で実質的に同じ結果を作れてしまうため、抜け道を塞いだものです。3項と4項は、業者が買主の借入れに係る債務を保証した場合について、10分の3の判定の仕方を変える特則です。判定式と適用場面は所有権留保等の禁止にまとめています。

    条文の書きぶりという点で、43条1項は8種制限の中で唯一の積極的な作為義務です。他の7項目は「締結してはならない」「受領することができない」「定めをしてはならない」というように禁止の形をとりますが、43条1項だけが「登記その他引渡し以外の売主の義務を履行しなければならない」と、業者に何かをさせる形で書かれています。禁止か作為義務かという区別は、後述する監督処分の列挙を読むときに効いてきます。43条が守っている利益そのものの分析は所有権留保等の禁止にあります。

    違反したときどうなるか — 三層で確認する

    8種制限に違反した場合の効果は、私法上の効力、監督処分、罰則という三つの層に分けて確認する必要があります。ここを一律に「無効になる」と覚えていると、選択肢の正誤を誤ります。

    第一層 私法上の効力

    無効の効果が条文に書かれているのは、前述の型2に属する規定と、クーリング・オフです。37条の2第4項は同条1項から3項までの規定に反する特約で申込者等に不利なものを無効とし、38条2項は代金の額の10分の2を超える部分について無効とし、39条3項は同条2項に反する特約で買主に不利なものを無効とし、40条2項は同条1項に反する特約を無効とし、42条2項は同条1項に反する特約を無効とします。

    無効の範囲が「超える部分だけ」なのか「特約全体」なのかは、条文ごとに違います。38条だけが超過部分に限定した無効を定めており、他は特約そのものが無効になります。この違いは頻繁に問われます。

    書きぶりにも差があります。37条の2第4項と39条3項は「不利なもの」という限定を付けていますが、38条2項・40条2項・42条2項は付けていません。付けていないほうが厳しいのかというと、そうではありません。これらの条文は1項の側で既に一方向の線を引いているからです。38条1項は「10分の2を超えることとなる定めをしてはならない」と書いているので、10分の1と定める合意はそもそも1項に「反する特約」ではありません。40条1項は「買主に不利となる特約をしてはならない」と1項に書き込んでいるので、2項で繰り返す必要がありません。42条1項は30日以上の催告を義務づけているので、60日の催告を要するという特約は1項に反しません。結果として、5つの条文はすべて「買主に有利な方向の合意は妨げない」という同じ働きをします。この片面的な効き方を軸に横断整理したい場合は8種制限の横断整理を参照してください。

    無効になった後、その穴を埋めるもの

    特約が無効になったとき、契約からその条項だけが抜け落ちます。抜けた穴は、宅地建物取引業法ではなく民法の任意規定が埋めます。

    たとえば「担保責任は引渡しから1年」という特約が40条により無効になると、契約に期間の定めがない状態になるので、民法566条の原則、すなわち買主が不適合を知った時から1年以内の通知という規律が適用されます。宅地建物取引業法が「引渡しから2年」に読み替えてくれるわけではありません。無効の効果は買主に有利な方向にしか働かないので、業者にとっては特約を置かなかった場合より不利な結果になることさえあります。

    「クーリング・オフの期間を5日とする」という特約が37条の2第4項により無効になれば、条文どおりの8日に戻ります。「手付放棄による解除はできない」という特約が39条3項により無効になれば、39条2項どおりの解約手付の効力が復活します。無効になった後に何が適用されるのかまで問う選択肢が出るので、「無効」で思考を止めないでください。

    第二層 監督処分 — 業務停止の直接列挙は4つだけ

    条文が無効としていない違反、すなわち33条の2に違反して他人物売買契約を締結した場合、39条1項に違反して代金の10分の2を超える手付を受領した場合、41条・41条の2に違反して保全措置を講じないまま手付金等を受領した場合、43条に違反して所有権を留保した場合について、契約そのものを無効とする規定は置かれていません。これらの制限は買主を保護するために設けられているので、契約を当然に無効としてしまうと、かえって買主が物件を取得できなくなり、保護の趣旨に反するからです。

    では違反が放置されるのかというとそうではなく、業者は監督処分の対象となります。ここで条文を確認すると、興味深い事実が出てきます。65条2項2号は、業務停止処分の対象となる違反条文を列挙していますが、8種制限のうちこの列挙に名前があるのは、33条の2、41条1項、41条の2第1項、そして43条(「第四十三条から第四十五条まで」の一部として)の4つだけです。37条の2、38条、39条、40条、42条は列挙されていません。

    この差は偶然ではありません。列挙されている4つは、いずれも業者に対する行為の禁止か作為義務の形をとっており、私法上の無効という手当てがない規定です。無効で処理できないぶん、行政処分で実効性を確保する必要があります。逆に列挙されていない5つは、私法上の無効という手当てが条文自体に用意されています。

    ただし、列挙されていないから監督処分が一切ないという意味ではありません。65条1項1号は「業務に関し取引の関係者に損害を与えたとき又は損害を与えるおそれが大であるとき」、同項2号は「業務に関し取引の公正を害する行為をしたとき又は取引の公正を害するおそれが大であるとき」を指示処分の事由としており、これは受け皿として広く働きます。さらに65条2項3号は指示に従わないときを、同項5号は「宅地建物取引業に関し不正又は著しく不当な行為をしたとき」を業務停止の事由としています。したがって、38条や40条に反する特約を常態的に用いている業者に対しても、この経路で処分は可能です。

    免許取消しについては、66条1項9号が「前条第二項各号のいずれかに該当し情状が特に重いとき又は同条第二項若しくは第四項の規定による業務の停止の処分に違反したとき」を必要的取消事由としています。65条2項各号に該当することが前提なので、2項2号に直接列挙されている4つの制限だけでなく、2項5号を経由した場合も含まれます。監督処分の体系全体は監督処分の種類と手続で整理しています。

    第三層 罰則は用意されていない

    三層目が罰則ですが、ここが8種制限の際立った特徴です。宅地建物取引業法の罰則は79条から83条の2までの刑罰規定、84条の両罰規定、85条・86条の過料からなりますが、そのどこを探しても8種制限の違反を処罰する規定はありません。33条の2に違反しても、10分の2を超える手付を受領しても、保全措置を講じずに手付金等を受領しても、刑事罰は科されません。

    82条3号に「第四十一条第一項第一号又は第四十一条の二第一項第一号の指定を受けた者」という文言が出てきますが、これは不正の手段によって指定保管機関等の指定を受けた者を処罰する規定であって、保全措置を怠った売主業者を処罰するものではありません。条文検索で41条がヒットするため誤読しやすいところです。

    これに対し、たとえば誇大広告の禁止(32条)には81条1号による6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が用意されており、47条1号の重要事項の不告知等には79条の2による2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が用意されています。8種制限が刑事罰を持たないのは、その規律の中心が当事者間の契約内容の適正化にあり、無効という私法上の手当てと行政処分で足りると判断されたためです。罰則の金額と対象の全体像は宅建業法の罰則一覧で確認できます。

    業者間取引と、それでも残る義務

    78条2項により、宅地建物取引業者相互間の取引には8種制限が一切適用されません。しかしここで、「業者間なら宅地建物取引業法の規制はすべて外れる」と拡大して覚えてしまうと失点します。78条2項が名指しで除外しているのは33条の2と37条の2から43条までだけであり、それ以外の規定は業者間取引でも生きています。

    35条書面は説明が外れ、交付と記名は残る

    重要事項の説明については、35条6項が読み替え規定を置いています。相手方等が宅地建物取引業者である場合、1項の「宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項……交付して説明をさせなければ」という文言が「少なくとも次に掲げる事項……交付しなければ」に読み替えられ、あわせて4項(宅地建物取引士証の提示)と5項(宅地建物取引士の記名)は適用しないとされます。この読み替えは35条2項の割賦販売の場合についても同様に用意されています。

    ここで6項だけを読んで「記名も要らない」と結論すると誤ります。直後の35条7項が「宅地建物取引業者は、前項の規定により読み替えて適用する第一項又は第二項の規定により交付すべき書面を作成したときは、宅地建物取引士をして、当該書面に記名させなければならない」と定めているからです。5項は宅地建物取引士自身を名宛人とする義務ですが、7項は宅地建物取引業者を名宛人として、宅地建物取引士に記名させることを義務づけています。6項でいったん外した記名を、名宛人を変えて7項が課し直している、という構造です。

    したがって業者間取引で実際に外れるのは、説明という行為と、宅地建物取引士証の提示の二つだけです。書面の交付義務も、宅地建物取引士の記名も残ります。「業者間だから重要事項説明書を交付しなくてよい」も「業者間だから宅地建物取引士の記名は不要」も、いずれも誤りの選択肢です。記載事項の全体像は35条書面の記載事項一覧重要事項説明の覚え方で確認してください。

    37条書面には緩和がない

    37条書面については、35条6項のような読み替えがそもそも用意されていません。もっとも37条にはもともと説明義務も宅地建物取引士証の提示義務もないので、緩和すべき対象がないというだけのことです。結果として、業者間取引で書面まわりに残る義務は、35条書面も37条書面も「交付」と「宅地建物取引士の記名」で同じになります。違いが出るのは、35条には省略される説明があり37条にはない、という点だけです。両者の違いは35条書面と37条書面の違いで軸ごとに整理しています。記載事項の詳細は37条書面の記載事項を参照してください。

    品確法の10年責任は業者間でも外れない

    新築住宅については、住宅の品質確保の促進等に関する法律95条1項が、売主は買主に引き渡した時から10年間、構造耐力上主要な部分等の瑕疵について担保の責任を負うと定め、同条2項がこれに反する買主に不利な特約を無効としています。

    総論として重要なのは、責任の中身ではなく名宛人です。95条1項が義務を負わせているのは「新築住宅の売買契約における売主」であって、宅地建物取引業者に限られていません。買主の側にも限定がありません。したがって買主が宅地建物取引業者であっても、この10年責任は外れません。宅地建物取引業法40条は78条2項により業者間で外れるのに、同じ担保責任を扱う品確法95条は外れない。適用範囲を決めているのが宅地建物取引業法の内側か外側かという、それだけの違いでこうなります。宅地建物取引業法40条との上下関係や、10年責任の対象部位の限定は契約不適合責任の特約制限で扱っています。

    資力確保義務は8種制限と同じ射程を持つ

    もう一つ、条文は宅地建物取引業法の外にあるが、8種制限とまったく同じ射程を持つ規制があります。特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律、いわゆる住宅瑕疵担保履行法の資力確保義務です。

    同法11条1項は、宅地建物取引業者は毎年、基準日から3週間を経過する日までの間において、当該基準日前10年間に自ら売主となる売買契約に基づき買主に引き渡した新築住宅について、住宅販売瑕疵担保保証金の供託をしていなければならないと定めます。そして同法2条7項2号ロが「当該新築住宅の買主(宅地建物取引業者であるものを除く。)」と書いており、保険による代替も含めて、買主が宅地建物取引業者である場合は資力確保の対象から外れます。

    自ら売主であること、買主が宅地建物取引業者でないこと、という二つの要件は8種制限と共通です。8種制限に数えられないのは、条文が宅地建物取引業法の外にあり、78条2項の列挙に入っていないからにすぎません。

    ただし、同じ射程を持ちながら扱いが違うところが一つあります。宅地建物取引業法65条1項の柱書は、指示処分の事由として同法の規定違反と並べて履行確保法11条1項などの違反を挙げており、65条2項2号も業務停止の対象に履行確保法11条1項・13条を書き込んでいます。監督処分の面では、資力確保義務は8種制限と同じ土俵に乗っているわけです。ところが罰則の面では扱いが逆転します。後述するとおり8種制限の違反には刑事罰がありませんが、履行確保法13条に違反して供託も届出もしないまま新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結すると、同法40条2号により1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象になります。実質的な9つ目の自ら売主制限でありながら、こちらには刑事罰がある。供託額の算定など制度の詳細は住宅瑕疵担保履行法で扱っています。

    そのほかに残るもの

    報酬額の制限(46条)、業務に関する禁止事項(47条、47条の2)、不当な履行遅延の禁止(44条)、秘密を守る義務(45条)、従業者証明書や帳簿に関する義務、監督処分と罰則の規定なども業者間取引に適用されます。8種制限が外れることと、宅地建物取引業者としての義務全般が外れることは、まったく別の話だと切り分けてください。

    8種制限の外側にある消費者保護法との関係

    8種制限は、宅地建物取引業者から不動産を買う人を守る仕組みですが、消費者を守る法律は他にもあります。それらとどう棲み分けているかを知っておくと、条文の射程が立体的に見えます。

    特定商取引法は適用が除外されている

    訪問販売や電話勧誘販売にはクーリング・オフの制度がありますが、これは特定商取引に関する法律が定めるものです。同法26条1項は「前三節の規定は、次の販売又は役務の提供で訪問販売、通信販売又は電話勧誘販売に該当するものについては、適用しない」として適用除外を並べ、その8号ロに、宅地建物取引業法2条3号に規定する宅地建物取引業者が行う宅地建物取引業に係る販売または役務の提供を挙げています。

    つまり、業者の訪問販売で不動産を買った場合に働くのは、特定商取引法のクーリング・オフではなく、宅地建物取引業法37条の2のクーリング・オフです。他の法律で購入者の利益が保護されているから重ねて適用する必要がない、という発想で除外されています。8日間という期間や書面主義が特定商取引法と似ているのは、同じ発想の制度だからですが、適用される条文は宅地建物取引業法のほうです。

    なお同法26条1項1号は、申込者や購入者が営業のためにまたは営業として締結する契約を除外しています。事業者どうしの取引を外すという発想は、宅地建物取引業法78条2項と共通しています。

    消費者契約法は重ねて適用される

    これに対し、消費者契約法には宅地建物取引業に関する適用除外がありません。したがって、宅地建物取引業者が売主で、個人の買主が事業としてでなく買う場合、その契約は消費者契約法2条3項にいう消費者契約であり、同法8条から10条までの規定が宅地建物取引業法と重ねて適用されます。とくに9条1号は、解除に伴う損害賠償の額の予定と違約金の合算額のうち、平均的な損害の額を超える部分を無効とするもので、宅地建物取引業法38条と同じ条項を対象にします。両条の基準の立て方の違いと計算への影響は損害賠償の予定額の制限で扱っています。

    総論として押さえるべきは、二つの法律が買主を切り出す基準がずれているという点です。8種制限は「宅地建物取引業者でない買主」を守ります。免許を持っていなければ上場企業でも保護されます。消費者契約法が守るのは「消費者」、すなわち事業として又は事業のために契約の当事者となる場合を除く個人です(同法2条1項)。この二つの円は完全には重なりません。宅地建物取引業者でない事業会社が買主のときは、38条は働くが消費者契約法9条は働かない。逆に、個人が居住用に宅地建物取引業者でない売主から買うときは、消費者契約法は働くが8種制限は働きません。

    なぜずれるのかは、それぞれの法律が何を保護理由にしているかを見ると分かります。宅地建物取引業法は「宅地建物取引業の専門性に対して素人であること」を理由に線を引くので、判定は免許の有無という形式的な基準になります。消費者契約法は「事業者と消費者の情報・交渉力の格差」を理由に線を引くので、判定は個人性と事業目的の有無になります。理由が違えば線の引き方も違う、というだけのことです。8種制限の問題文で「買主は宅地建物取引業者ではない法人である」と書かれていたら8種制限は適用される、と即断できるのは、この形式的な線引きのおかげです。

    試験での出題ポイント

    8種制限は、条文の数だけでなく数字と効果の組合せが多いため、選択肢の作り方に定型があります。狙われ方は概ね次のように整理できます。

    適用の前提をずらしてくる

    最も基本的な引っかけが、買主を宅地建物取引業者にしておく、あるいは業者の立場を媒介にしておく、という設定です。数字は正しく書いてあるのに、そもそも8種制限が適用されない場面である、という構造になっています。選択肢を読むときに「自ら売主か」「買主は業者でないか」の2点へ先に目を走らせる訓練をしてください。個別論点の記事に入る前に、この前提確認だけを反復するのが効率的です。

    派生形として、買主を信託会社にする、買主を地方公共団体にする、という設定があります。前者は77条2項により業者とみなされるので8種制限が外れ、後者は業者ではないので8種制限が働きます。結論が逆になるので、条文の根拠まで押さえておいてください。

    数字を隣の制限から借りてくる

    代金の10分の2(損害賠償額の予定等、手付の額)、10分の3(所有権留保)、100分の5と10分の1(手付金等の保全)、1,000万円、8日、2年、30日という数字を、別の制限に付け替えた選択肢が並びます。「手付金は代金の10分の3まで」「所有権留保は代金の10分の2を超えたら禁止」といった形です。数字と制限の対応は宅建業法の数字まとめで横断的に確認しておくとよいでしょう。

    「かつ」を「または」に変える

    クーリング・オフができなくなる場合の「引渡しを受け、かつ、代金の全部を支払つたとき」を「または」にすり替える、手付金等の保全措置が不要となる「100分の5以下であり、かつ、政令で定める額以下」を「または」にする、といった改変です。要件の接続詞は必ず読んでください。8種制限で選択的な接続が正しいのは、33条の2の例外(取得契約等があるとき、または保全措置が講じられているとき)のような場面に限られます。こうした接続詞のすり替えを含む出題の癖は引っかけ表現のパターンにまとめてあります。

    効果を取り違えさせる

    超過部分のみ無効なのか、特約全体が無効なのか、契約自体が無効なのかを混ぜてきます。38条は10分の2を超える部分について無効、40条は特約が無効となって民法の原則に戻る、39条2項に反する買主に不利な特約は無効、というように効果の書き分けを覚えておく必要があります。「契約が無効になる」と書かれた選択肢は、多くの場合誤りです。

    さらに一歩進んだ形として、「無効になった後どうなるか」を問う選択肢があります。担保責任の特約が無効になったとき、引渡しから2年になるのではなく民法566条に戻る、という点は正誤を分けます。

    罰則と監督処分を混ぜてくる

    「保全措置を講じなかった業者は罰金に処せられる」といった選択肢が出ます。8種制限の違反に罰則はありません。他方で監督処分は可能なので、「監督処分の対象となる」は正しく、「罰則の適用がある」は誤りです。両者を並べて出題されたときに切り分けられるようにしておいてください。

    業者間取引で何が残るかを問う

    前述のとおり、35条書面も37条書面も、業者間取引では交付も宅地建物取引士の記名も必要で、外れるのは35条の説明と宅地建物取引士証の提示だけです。8種制限の問題の中に、この対比を混ぜてくる出題があります。「業者間だから記名は不要」という肢は、35条7項を見落とさせる作りになっています。宅地建物取引業法の頻出テーマ全体の中での位置づけは宅建業法の頻出論点で確認できます。なお令和8年度に向けて範囲内で実体改正があった項目は令和8年度の法改正まとめで確認しておくと、古い教材の記述との食い違いに気づけます。

    覚え方・整理の仕方

    暗記の負荷を下げる整理を4つ挙げます。

    段階で並べ、数字は段階に紐づける

    前述の5段階、すなわち入口(33条の2)、申込み直後(37条の2)、契約条項(38条・39条・40条)、代金の支払い(41条・41条の2)、長期の履行(42条・43条)という並びで覚えます。そのうえで数字を段階に紐づけると、混線が減ります。申込み直後の段階の数字は8日だけ。契約条項の段階の数字は10分の2と2年。代金支払いの段階の数字は100分の5、10分の1、1,000万円。長期履行の段階の数字は30日と10分の3。こうして段階ごとに数字を束ねると、「10分の3はどれだったか」と迷ったときに、割賦販売の話だと思い出せます。

    型で分けて、効果を導く

    数字とは別に、前述の三つの型で分けておくと、効果を暗記せずに導けます。契約の中身を規律している38条・39条・40条・42条とクーリング・オフには無効規定がある。業者の行為を禁止・命令している33条の2・41条・41条の2・43条には無効規定がなく、その代わり65条2項2号に業務停止の対象として名前が載っている。この対応関係を一度自分で条文にあたって確認しておくと、記憶ではなく理解として残ります。

    10分の2が2つあることを先に認めておく

    代金の10分の2という数字は、損害賠償額の予定等(38条)と手付の額(39条1項)の2箇所に登場します。混同を避けるには、判定の対象が違うことを言葉で区別するのが有効です。38条は「損害賠償額の予定と違約金を合算した額」が10分の2以内、39条は「受領する手付の額」が10分の2以内です。前者は足し算をしてから比べる、後者は単体で比べる、という違いです。

    さらに、38条は「定めをしてはならない」=契約書に書くことの制限、39条1項は「受領することができない」=金銭を受け取ることの制限、という点も違います。契約書に10分の3の手付を書いただけでは39条1項違反にならず、実際に受領した時点で違反になります。

    2年と1年と30日を取り違えない

    期間の数字は、担保責任の特約における「引渡しの日から2年以上」、民法566条の「知った時から1年以内」、割賦販売の解除における「30日以上の催告期間」、そして割賦販売の定義にある「引渡し後1年以上の期間」の4つです。このうち1年が2箇所に出てきますが、一方は民法の通知期間、他方は割賦販売の定義なので、文脈がまったく異なります。定義の1年は「制限の数字」ではなく「その制度に入るかどうかの入口の数字」だと位置づけておくと、選択肢で混ざりません。

    なお8種制限は数字が多いため語呂合わせが好まれますが、語呂は数字を呼び出せても、その数字がどの制限のどの場面のものかまでは教えてくれません。段階ごとの配置を先に作り、そのうえで思い出しにくい数字だけ語呂で補う、という順序をおすすめします。過去問での確認の仕方は宅建の過去問活用術を参考にしてください。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 宅地建物取引業者Aが、宅地建物取引業者Bの媒介により、宅地建物取引業者でないCに自ら売主として宅地を売却する場合、8種制限は適用されない。(○か×か)

    答えを見る×:8種制限の適用を左右するのは、売主が宅地建物取引業者であること、その業者が自ら売主であること、買主が宅地建物取引業者でないことの3点です。設問では売主Aが自ら売主であり、買主Cは業者ではないため、8種制限が適用されます。媒介業者Bが宅地建物取引業者であることは、78条2項の「宅地建物取引業者相互間の取引」には当たりません。除外されるのは売主と買主がともに業者である場合です。

    Q2. 宅地建物取引業者が自ら売主となる売買契約において、損害賠償額の予定を代金の額の15パーセント、違約金を代金の額の10パーセントと定めた場合、この定めは全体として有効である。(○か×か)

    答えを見る×:38条1項は、損害賠償の額の予定と違約金を「合算した額」が代金の額の10分の2を超えることとなる定めをしてはならないとしています。設問では合算25パーセントとなり制限に触れます。ただし効果は全体無効ではなく、38条2項により代金の額の10分の2を超える部分について無効となり、20パーセントの限度では有効です。「全体として有効」も「全体として無効」も誤りです。

    Q3. 買主が宅地の引渡しを受けたが代金の全部をまだ支払っていない場合、クーリング・オフができる旨の書面による告知を受けた日から8日を経過していなければ、買主はクーリング・オフをすることができる。(○か×か)

    答えを見る○:37条の2第1項により、クーリング・オフができなくなるのは、書面で告げられた日から起算して8日を経過したとき(1号)、または宅地建物の引渡しを受け、かつ、代金の全部を支払つたとき(2号)です。2号は「引渡し」と「代金全額の支払い」の両方が揃って初めて成立します。設問は代金の支払いが完了していないため、8日以内であればクーリング・オフができます。

    Q4. 宅地建物取引業者が自ら売主となる工事完了前の建物の売買契約において、代金5,000万円のうち手付金として200万円を受領する場合、保全措置を講じる必要はない。(○か×か)

    答えを見る○:工事完了前の物件では、受領しようとする手付金等の額が代金の額の100分の5以下であり、かつ、政令で定める額(宅地建物取引業法施行令3条の5により1,000万円)以下であるときは保全措置が不要です(41条1項ただし書)。設問の200万円は代金5,000万円の4パーセントで、1,000万円以下でもあるため、両方の基準を満たし保全措置は不要です。ただし、その後さらに中間金を受領する場合は、条文の括弧書きにより既に受領した200万円と合算して判定するため、合計が250万円を超えた時点で保全措置が必要になります。

    Q5. 宅地建物取引業者Aが自ら売主として、宅地建物取引業者Bに建物を売却する場合、Aは重要事項説明書(35条書面)を交付する必要がなく、また宅地建物取引士による記名も不要である。(○か×か)

    答えを見る×:二つの要素がどちらも誤りです。まず78条2項が業者間取引について適用を除外しているのは33条の2および37条の2から43条まで、すなわち8種制限だけで、35条は除外されていません。35条6項の読み替えにより「説明」は不要となり、同条4項の宅地建物取引士証の提示と5項の記名も適用されませんが、書面の「交付」義務は残ります。さらに35条7項が、6項により読み替えて適用する1項・2項の書面を作成したときは宅地建物取引士に記名させなければならないと定めているため、記名も必要です。6項だけを見て「記名不要」と答えさせる作りの選択肢が出るので、7項までセットで押さえてください。

    Q6. 宅地建物取引業者が自ら売主となる売買契約において、保全措置を講じないまま手付金等を受領した場合、その業者は監督処分を受けることがあるほか、罰金に処せられることもある。(○か×か)

    答えを見る×:前段は正しく、後段が誤りです。41条1項・41条の2第1項は65条2項2号に業務停止処分の対象として列挙されており、情状が特に重ければ66条1項9号により免許が取り消されます。しかし宅地建物取引業法79条から83条の2までの刑罰規定にも、85条・86条の過料の規定にも、保全措置を講じなかったことを罰する定めはありません。82条3号は不正の手段によって指定保管機関等の指定を受けた者を対象とする規定であって、売主業者を処罰するものではありません。8種制限の違反に刑事罰はない、と押さえてください。

    まとめ

    8種制限は、宅地建物取引業者が自ら売主となり、宅地建物取引業者でない者が買主となる売買契約について、78条2項が業者間取引から除外している条文の裏返しとして輪郭が決まります。33条の2と、37条の2から43条までの8項目です。

    覚えるうえで最も効くのは、条文順ではなく契約の進行順に並べ直すことです。売れる状態にない物件を売らせない入口の制限(33条の2)、勢いでした申込みを撤回できるようにする段階(37条の2)、契約条項の中身に上限と下限を課す段階(38条・39条・40条)、引渡し前に支払った金銭を守る段階(41条・41条の2)、長期の割賦販売を規律する段階(42条・43条)という5つの配置です。数字も、この段階ごとに束ねて記憶すれば混線しません。

    そのうえで、8つが民法をどう修正しているかの型を意識してください。民法が有効とする契約を禁じる型、民法の任意規定に上限・下限を差し込む型、民法にない権利・義務を新設する型の三つで、型の違いがそのまま「特約が無効になるのか」「監督処分の対象として列挙されているのか」の違いに対応しています。効果を暗記するのではなく、条文の書きぶりから導けるようになれば、初見の選択肢にも対応できます。

    そして、問題を解くときは必ず前提の確認から入ってください。売主が宅地建物取引業者で、自ら売主として関与しており、買主が宅地建物取引業者でなく、契約が売買であること。この4点が揃わなければ、どれだけ数字が正しく書かれていても8種制限は適用されません。個別項目を深掘りする際は、8種制限の横断整理で数字を並べて確認したうえで、各項目の記事に進むのが効率的です。売買契約の全体の流れの中でどの制限がどこに効くのかを確認したい場合は不動産売買の流れもあわせて読んでください。

    宅建試験AIブートラボのアプリでは、8種制限の過去問を項目別に演習でき、適用の前提や数字の対応を条文根拠つきの解説で確認できます。

    読んだ内容を、宅建業法の肢で確かめる

    宅建業法は20問と配点が最も大きく、確実に得点したい科目です。免許制度・重要事項説明・8種制限を肢別で固めましょう。

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