割賦販売の解除等の制限|42条の催告要件
宅建業法42条の割賦販売契約の解除等の制限を条文から整理。30日以上・書面という催告要件、賦払金の定義、民法541条との違い、43条との組み合わせまで解説します。
目次
本記事は、宅地建物取引業法42条が定める割賦販売契約の解除等の制限を扱います。8種制限の枠組み全体は8種制限とはに、適用範囲の判定は8種制限が適用されない場合に、8つの横断整理は8種制限の横断整理にありますので、ここでは42条という1か条に絞ります。
最初に位置づけを正直に書きます。割賦販売の制限は、8種制限8つのなかで最も出題頻度が低い論点です。クーリング・オフや手付金等の保全措置のように単独で1問を占めることはほとんどなく、宅建業法の総合問題の1肢として顔を出す程度です。出題頻度の全体像は宅建業法の頻出論点ランキングにまとめています。
それでもこの論点に紙幅を割く理由が2つあります。
第1に、覚えるべき事項が少ないわりに、条文の文言をそのまま問う形で出るからです。42条1項は一文しかありません。その一文に含まれる4つの要素を言えるようにしておけば、出題されたときにほぼ確実に取れます。深追いする論点ではありませんが、浅く確実に取る論点としての効率は8つのなかで最も高いと言えます。
第2に、8種制限の設計思想がここで見えるからです。他の制限は、業者が有利な立場を使って買主に不利益を与える場面を規制しています。手付を取りすぎる、責任を免れる特約を結ぶ、保全せずに金を受け取る。ところが42条が扱っているのはそれとは別種のリスクです。割賦販売では代金の支払が引渡し後も長期間続くため、途中で契約を解除されると、買主は既に払った代金と物件の両方を失いかねません。8種制限が守っているのが「契約の入口」だけではないことを、42条は教えてくれます。
なお本記事は2026年4月1日時点で施行されている条文に基づいています。宅地建物取引業法は令和7年法律第68号により2026年4月1日に改正法が施行されていますが、本則86条に実体的な差分はなく、42条・43条・35条の文言に変更はありません。
42条が扱う「割賦販売」とは何か
定義は35条2項の括弧書きにある
42条の適用範囲を決めるのは、「割賦販売」という言葉の意味です。そしてこの定義は42条には書かれていません。35条2項の括弧書きに置かれています。
宅地又は建物の割賦販売(代金の全部又は一部について、目的物の引渡し後一年以上の期間にわたり、かつ、二回以上に分割して受領することを条件として販売することをいう。以下同じ。)
――宅地建物取引業法35条2項
末尾に「以下同じ」とあるので、この定義は42条でも43条でも同じ意味で使われます。定義規定が重要事項説明の条文のなかに置かれているという点が、この論点をやや分かりにくくしています。42条だけを読んでも割賦販売が何かは分かりません。
3つの要素に分解する
定義を分解すると次の3つになります。
第1に、代金の全部または一部についてであること。代金の一部でも分割払いであれば足ります。全額を分割する必要はありません。
第2に、目的物の引渡し後1年以上の期間にわたりであること。起点は引渡しです。契約締結時ではありません。
第3に、2回以上に分割して受領することを条件として販売するものであること。「条件として」とあるので、契約の内容として分割払いが定められている必要があります。結果的に支払が遅れて2回に分かれた、というのは割賦販売ではありません。
3つは「かつ」で結ばれています。1つでも欠ければ割賦販売ではなく、42条も43条も適用されません。
「引渡し後」という起点の意味
もっとも見落とされやすいのが第2の要素です。1年以上の期間を計るのは引渡しの後です。
契約から引渡しまでの間に手付金と中間金を分割して支払い、引渡し時に残代金を一括で払う、という一般的な売買を考えてみてください。支払は3回に分かれていますし、契約から引渡しまで1年以上かかることもあります。しかし引渡し後の分割払いが存在しないので、割賦販売には当たりません。
同じ理由で、引渡し後の分割払いが10か月で終わる契約も割賦販売ではありません。回数がどれだけ多くても、期間が1年に届かなければ定義を満たさないからです。逆に、引渡し後2年にわたって2回だけ払う契約は、回数が少なくても割賦販売です。期間と回数の両方を確かめる必要があります。
住宅ローンは割賦販売ではない
実務でほぼすべての売買が該当しない理由がこれです。買主が住宅ローンを利用する場合、金融機関が売主に代金を一括で支払い、買主は金融機関に対して分割返済します。売主と買主の間では分割払いの関係が成立していません。
割賦販売の定義が問題にしているのは、売主が代金を分割して受領するかどうかです。買主が誰かに分割返済しているかどうかではありません。したがって住宅ローンを利用した売買は、返済期間が35年であろうと割賦販売には当たらず、42条も43条も適用されません。住宅ローンの仕組みは住宅ローンの基礎で扱っています。
ただし、後述するとおり43条3項・4項は、宅建業者が買主のローン債務を保証した場合について、割賦販売でなくても類似の規律を及ぼしています。「ローンだから宅建業法の規制は一切かからない」と単純化はできません。
なぜ1年と2回で線を引くのか
割賦販売に該当すると、42条の催告制限と43条の登記義務という2つの重い規制がかかります。そこで、規制をかけるに値する程度に履行が長期化する取引だけを拾うために、期間と回数で足切りをしているという構造です。
引渡し後の支払が短期間で終わるなら、途中で解除されるリスクにさらされる期間も短く、通常の売買と同じ扱いでよい。1年以上続くなら、その間に買主の資力が変動する可能性が高く、1回の遅滞で全部を失う事態を防ぐ必要がある。この趣旨を理解しておくと、数字を思い出しやすくなります。
「賦払金」の定義も条文にある
35条2項3号の括弧書き
42条1項の主語は「賦払金の支払の義務が履行されない場合」です。この賦払金にも定義があります。
賦払金(割賦販売の契約に基づく各回ごとの代金の支払分で目的物の引渡し後のものをいう。第四十二条第一項において同じ。)
――宅地建物取引業法35条2項3号
括弧書きの末尾に「第四十二条第一項において同じ」と明記されており、42条の賦払金がこの定義であることが条文上はっきりしています。
引渡し前に支払う金銭は賦払金ではない
定義の核心は「目的物の引渡し後のもの」という限定です。契約締結から引渡しまでの間に支払われる手付金や中間金は、代金の支払分ではあっても、引渡し後のものではありません。したがって賦払金には当たりません。
ここから重要な帰結が出ます。引渡し前の中間金の不払いを理由に契約を解除する場合、42条は適用されません。42条が禁じているのは「賦払金の支払の遅滞を理由として」解除することだからです。引渡し前の金銭は賦払金ではないので、その遅滞を理由とする解除は42条の射程外にあり、民法の一般原則によることになります。
実際、35条2項3号は「宅地又は建物の引渡しまでに支払う金銭の額」と「賦払金の額」を別々に並べています。条文自身が、引渡し前に払う金銭と賦払金とを書き分けています。
定義規定が2つとも35条2項にある
整理すると、42条を読むために必要な定義は2つあり、どちらも35条2項に置かれています。割賦販売の定義が2項の柱書の括弧書き、賦払金の定義が2項3号の括弧書き。42条の条文には定義がなく、35条を見に行かなければ意味が確定しません。
このねじれた構造は、35条2項が割賦販売の重要事項説明を定めるついでに定義を置いた結果です。試験で定義の出典を問われることはまずありませんが、42条を読むときは35条2項もセットで開くという習慣を持っておくと、要件の取りこぼしがなくなります。重要事項説明の全体像は重要事項説明の記載事項にまとめています。
42条1項を条文で読む
一文を4つの要素に分ける
42条1項は次のとおりです。
宅地建物取引業者は、みずから売主となる宅地又は建物の割賦販売の契約について賦払金の支払の義務が履行されない場合においては、三十日以上の相当の期間を定めてその支払を書面で催告し、その期間内にその義務が履行されないときでなければ、賦払金の支払の遅滞を理由として、契約を解除し、又は支払時期の到来していない賦払金の支払を請求することができない。
――宅地建物取引業法42条1項
一文ですが、要素は4つです。第1に30日以上であること。第2に相当の期間であること。第3に書面によること。第4にその期間内に履行がないこと。この4つがそろって初めて、解除または残賦払金の請求ができます。
「口頭で30日以上の期間を定めて催告した」も、「20日の期間を定めて書面で催告した」も、いずれも要件を満たしません。片方だけを落とす肢が作られるので、4つ全部を言えるようにしてください。
「30日以上」は下限であって、それだけでは足りない
条文は「三十日以上の相当の期間」と書いています。30日以上という数値の要件と、相当の期間という評価の要件が重ねて課されています。
したがって30日ちょうどの期間を定めれば常に適法、というわけではありません。条文が「相当の」という語をわざわざ残している以上、事案によっては30日で足りない可能性が条文上開かれています。もっとも、宅建試験でこの相当性が正面から問われることはなく、30日を下回っていないかどうかで判定すれば足ります。
逆方向として、30日を超える期間を定めることは何ら問題ありません。60日の期間を定めた催告は、30日以上という要件を満たしているので有効です。「30日でなければならない」ではなく「30日以上でなければならない」と読んでください。
「書面で」に電磁的方法の代替はない
条文は「その支払を書面で催告し」と書いています。口頭の催告では要件を満たしません。電話で伝えた、面談で告げたというだけでは、その後に解除しても42条違反です。
ここで確認しておきたいのが、電磁的方法による代替の可否です。宅地建物取引業法は近年の改正で書面の電子化を進めており、35条8項・9項は重要事項説明書について、37条4項・5項は37条書面について、それぞれ相手方の承諾を得て電磁的方法により提供できると定めています。
ところが42条には、これに対応する規定が置かれていません。宅建業法は書面義務の電子化を条文ごとに個別に手当てしており、42条はその対象になっていない、という構造です。条文の文言は「書面で」のままです。
試験対策としては、「書面」という要素を落とした肢を切れるようにしておけば足ります。電磁的方法の可否まで問われる可能性は高くありませんが、35条・37条に電子化の規定があることと対比しておくと、42条の書面要件が単なる書きぶりではないことが分かります。37条書面の詳細は37条書面の記載事項にあります。
「その期間内にその義務が履行されないとき」
第4の要素は、催告して待ったのに支払われなかったことです。当たり前のようですが、催告書を送った時点では、まだ解除も請求もできません。定めた期間が経過するのを待つ必要があります。
催告期間中に買主が支払えば、遅滞は解消され、解除の理由がなくなります。42条は、買主に「立て直す時間」を法定していると読むことができます。
42条が禁じている2つの行為
解除と、残賦払金の一括請求
42条1項が「することができない」としているのは2つです。契約を解除することと、支払時期の到来していない賦払金の支払を請求することです。
後者は、いわゆる期限の利益の喪失にあたります。割賦販売では各回の賦払金に支払期限が定められており、買主はまだ来ていない期限までは払わなくてよいという利益を持っています。1回の遅滞でこの利益を全部失い、残額を一括で請求されるのでは、買主は事実上契約を続けられません。42条はこれを催告の後に限定しています。
民法136条1項は「期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する」と定め、137条は債務者が破産手続開始の決定を受けたときなど3つの場合に期限の利益を主張できないとしています。42条は、割賦販売について、契約による期限の利益喪失に手続的な歯止めをかけた規定と位置づけられます。
2つがまとめて塞がれている
条文が「契約を解除し、又は支払時期の到来していない賦払金の支払を請求することができない」と並列で書いているとおり、催告を経ないかぎり両方ともできません。
「解除はできないが、一括請求ならできる」という処理はできません。逆に、催告を経れば両方できるようになります。そのうえで、解除を選ぶか一括請求を選ぶかは業者の判断です。契約を終わらせて物件を取り戻すか、契約を維持して残額を回収するか、という選択になります。
「賦払金の支払の遅滞を理由として」という限定
見落とされやすい限定がここにあります。42条が塞いでいるのは、賦払金の支払の遅滞を理由とする解除と請求だけです。
したがって、買主に別の債務不履行があり、それを理由として解除する場合には、42条の催告制限は働きません。たとえば買主が用法遵守義務に違反した、契約上の別の義務を履行しない、といった場面です。これらは賦払金の遅滞ではないので、条文の文言に当たりません。
また前述のとおり、引渡し前に支払う金銭の不払いも賦払金の遅滞ではありません。42条の射程は、条文の文言に沿ってかなり限定されています。
もっとも、試験でこの限定が正面から問われることは多くありません。押さえておきたいのは、42条が割賦販売という契約類型のうち、さらに賦払金の遅滞という特定の場面だけを規律しているという射程の狭さです。8種制限のなかでも群を抜いて適用場面が絞られています。債務不履行の一般論は債務不履行で扱っています。
42条2項の無効規定
条文は片面性を書いていない
42条2項は次の一文です。
前項の規定に反する特約は、無効とする。
――宅地建物取引業法42条2項
「買主に不利なもの」という限定が付いていません。この書き方は40条2項(担保責任についての特約の制限)と同じで、37条の2第4項(「申込者等に不利なもの」)や39条3項(「買主に不利なもの」)とは違います。8種制限の無効規定の書き分けは8種制限の横断整理で軸ごとに比較しています。
もっとも、結論として買主に有利な特約が無効になるわけではありません。理由は、条文の構造にあります。
買主に有利な特約は「反する特約」ではない
42条1項が定めているのは、催告を経なければ解除も一括請求もできないという下限規制です。したがって、業者にとってより厳しい定めは、1項の要求を満たしたうえでさらに上乗せしているにすぎず、「前項の規定に反する」ものではありません。
たとえば「催告期間を60日とする」という特約は、30日以上という要件を満たしているので1項に反しません。有効です。「催告に加えて内容証明郵便によることを要する」という特約も同じです。
これに対して、次のような特約は1項に反するので無効になります。「賦払金の支払が1回でも遅れた場合は、催告なく直ちに契約を解除できる」「催告期間は15日とする」「催告は口頭で足りる」「賦払金の支払が遅れたときは、催告なく残額を一括請求できる」。いずれも1項が課した要件を下回っています。
無効になるのは特約であって契約ではない
42条2項が無効とするのは特約です。売買契約そのものが無効になるわけではありません。
無効な特約が置かれていた場合、その特約が効力を失い、42条1項の規律がそのまま適用されます。したがって業者は、契約書に何と書いてあっても、30日以上の相当の期間を定めた書面による催告を経なければ解除できません。8種制限のうち、条文が明文で無効としているものと、そうでないものの区別は8種制限とはで整理しています。
民法の催告解除との違い
541条は期間も方法も定めていない
民法541条は次のとおりです。
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
――民法541条
541条が要求するのは「相当の期間」だけで、具体的な日数を定めていません。そして催告の方法にも制限がなく、口頭でも構いません。
42条1項は、この541条に対して日数の下限(30日以上)と方法(書面)を上乗せした特則です。「相当の期間」という要件は42条にも引き継がれており、そのうえで数値と方式が加わっている、という関係です。
541条ただし書は42条にない
もう1つの違いが軽微性の抗弁です。541条ただし書は、期間経過時の不履行が契約および取引上の社会通念に照らして軽微であるときは解除できないとしています。買主を保護する方向の規定です。
42条1項にはこれに対応する文言がありません。ただし、42条は541条を排除する規定ではなく、割賦販売について催告の要件を加重する規定です。42条の要件を満たしたうえで解除する場合、その解除の根拠は民法541条にあるので、541条ただし書の適用が排除されるわけではないと読むのが素直です。
試験でここまで問われることはありません。押さえるべきは、42条が民法より買主に厚い保護を与えているという方向性です。
542条の無催告解除との関係
民法542条1項は、履行不能や明確な履行拒絶など5つの場合に、催告することなく直ちに解除できると定めています。
割賦販売において買主が「もう払わない」と明確に表示した場合、542条1項2号により無催告解除ができそうにも見えます。しかし42条1項は「三十日以上の相当の期間を定めてその支払を書面で催告し、その期間内にその義務が履行されないときでなければ、賦払金の支払の遅滞を理由として、契約を解除し……することができない」と書いています。
条文が「〜でなければ……できない」という形で禁止しているので、催告を経ない解除の余地は、賦払金の遅滞を理由とするかぎり閉じられていると読むことになります。42条2項が「前項の規定に反する特約は、無効とする」としていることも、この読み方を裏付けます。契約で無催告解除を定めても無効なのですから、法律上当然に無催告解除ができるとすれば規定の意味がなくなるからです。
3つの違いを並べる
期間の下限について、民法541条は定めがなく、42条1項は30日以上。方法について、541条は制限がなく、42条1項は書面。適用場面について、541条は債務不履行一般、42条1項は割賦販売における賦払金の遅滞。
この3つの軸で並べておけば、「宅建業法は民法より厳しい」という抽象的な理解ではなく、どこがどう厳しいのかを条文の語で言えるようになります。
8種制限としての適用範囲
3要件に加えて割賦販売であること
42条は8種制限の1つなので、宅建業者が自ら売主となり、相手方が宅建業者でない、宅地建物の売買契約という3要件を満たす場合にのみ適用されます。78条2項が33条の2および37条の2から43条までを宅建業者相互間の取引について適用除外としているためです。判定の手順は8種制限が適用されない場合にまとめています。
そのうえで42条には、その売買が割賦販売であることという第4の要件が加わります。8種制限のうち42条と43条だけが、売買一般ではなく特定の販売形態を対象としています。
したがって、3要件をすべて満たす取引であっても、割賦販売でなければ42条は働きません。「8つは同時に適用され、同時に外れる」という原則の例外が、この2か条です。
業者間取引では民法に戻る
買主が宅建業者である場合、42条は適用されません。催告なしに解除する特約も、催告期間を15日とする特約も有効です。もっとも、8種制限が外れるとは民法に戻るということであって、何をしてもよいという意味ではありません。特約がなければ民法541条の相当の期間を定めた催告が必要になります。
違反したときの効果
42条1項に違反して催告を経ずに解除した場合、その解除は効力を生じません。42条1項が「契約を解除し……することができない」と定めているからです。
加えて、業法違反として監督処分の対象になります。免許権者は指示処分をすることができ、情状が重ければ業務停止処分をすることができます。処分の要件は監督処分の違いにまとめています。なお42条には罰則の定めがありません。宅建業法の罰則の段階構造は宅建業法の罰則一覧で確認できます。
43条とセットで見る
42条は「払われないとき」、43条は「引き渡すとき」
割賦販売を対象とする8種制限はもう1つあります。43条の所有権留保等の禁止です。42条が賦払金が払われない場面を、43条が物件を引き渡す場面を規律しています。時点で切り分けると混ざりません。
43条1項の構造は、条文を丁寧に読む必要があります。
宅地建物取引業者は、みずから売主として宅地又は建物の割賦販売を行なつた場合には、当該割賦販売に係る宅地又は建物を買主に引き渡すまで(当該宅地又は建物を引き渡すまでに代金の額の十分の三をこえる額の金銭の支払を受けていない場合にあつては、代金の額の十分の三をこえる額の金銭の支払を受けるまで)に、登記その他引渡し以外の売主の義務を履行しなければならない。
――宅地建物取引業法43条1項本文
原則は「引き渡すまでに」登記その他の義務を履行することです。そのうえで括弧書きが、引渡しまでに代金の10分の3を超える支払を受けていない場合には、10分の3を超える支払を受けるまでに履行すればよいという猶予を与えています。
つまり、10分の3という数字は義務を発生させる条件ではなく、義務の履行期限を後ろにずらすための数字です。「10分の3を超えたら登記義務が生じる」という説明を見かけますが、条文の構造はそうではありません。原則は引渡しまで、例外的に10分の3超の受領時まで猶予される、という順序です。
43条1項ただし書は担保の見込みの話である
43条1項にはただし書もあります。
ただし、買主が、当該宅地又は建物につき所有権の登記をした後の代金債務について、これを担保するための抵当権若しくは不動産売買の先取特権の登記を申請し、又はこれを保証する保証人を立てる見込みがないときは、この限りでない。
――宅地建物取引業法43条1項ただし書
ただし書が扱っているのは、10分の3ではなく担保の見込みです。買主が登記を得た後の残代金債務について、抵当権や不動産売買の先取特権の登記を申請する見込みも、保証人を立てる見込みもないときは、業者は登記等の義務を負いません。買主に所有権登記を移したうえで残代金の担保が何もない、という状態を業者に強いるのは酷だからです。
10分の3を括弧書きから取り出してただし書に置き換えた説明が流布していますが、条文の括弧書きとただし書は別の役割を担っています。
43条2項の譲渡担保の禁止
43条2項は、割賦販売を行った場合において、物件を買主に引き渡し、かつ代金の額の10分の3を超える額の金銭の支払を受けた後は、担保の目的で当該宅地建物を譲り受けてはならないと定めています。所有権を留保できないなら、いったん移した所有権を担保として取り戻せばよい、という抜け道を塞ぐ規定です。
「引き渡し、かつ10分の3を超える支払を受けた後」という2つの条件が「かつ」で結ばれている点が要点です。
43条3項・4項はローン保証の場合
43条には3項と4項もあります。こちらは割賦販売ではなく、宅建業者が自ら売主として売買を行い、買主の借入債務(引渡し後1年以上の期間にわたり2回以上に分割して返還する条件のもの)を保証した場合を対象としています。
保証をした業者は実質的に代金を分割で回収する立場に立つので、1項・2項と同じ規律が及ぼされています。3項が登記等の義務、4項が譲渡担保の禁止です。住宅ローンだから43条とは無関係、と単純化できないのはこのためです。
43条の各項の詳細は所有権留保等の禁止で扱っています。
割賦販売の重要事項説明
35条2項の3つの追加事項
割賦販売を行う場合、宅建業者は1項各号の事項に加えて、35条2項が挙げる3つの事項を説明しなければなりません。
第1に、現金販売価格。35条2項1号の括弧書きが「宅地又は建物の引渡しまでにその代金の全額を受領する場合の価格」と定義しています。一括で払ったらいくらか、という金額です。
第2に、割賦販売価格。同2号の括弧書きが「割賦販売の方法により販売する場合の価格」と定義しています。分割で払った場合の総額であり、通常は現金販売価格より高くなります。
第3に、宅地建物の引渡しまでに支払う金銭の額および賦払金の額並びにその支払の時期および方法。同3号です。引渡し前に払う分と、引渡し後の賦払金とを分けて示すことが求められています。
2つの価格を並べて示させることに意味があります。買主は、分割にすることでいくら余計に払うことになるのかを、契約前に比較できます。
1項ではなく2項に置かれている
この3つは35条1項各号ではなく2項に置かれた別立ての義務です。したがって、割賦販売でない売買では説明する必要がありません。また性質上、貸借には登場しません。35条書面の項目別の整理は重要事項説明の記載事項にあります。
なお、割賦販売であっても8種制限の適用がない業者間取引では、35条6項の読み替えにより宅建士による説明が不要になり、書面の交付と宅建士の記名が残ります。35条2項の追加事項も、書面には記載しなければなりません。
試験での出題ポイント
催告期間の数字を下げる
最頻出です。「20日の期間を定めて書面で催告した」「15日以内に支払うよう書面で催告した」という形で、30日を下回る数字が置かれます。42条1項は30日以上を要求しているので、いずれも要件を満たしません。
逆に「60日の期間を定めて書面で催告した」は要件を満たします。30日ちょうどでなければならないわけではないという点も確認しておいてください。
「書面」を落とす
「30日以上の相当の期間を定めて口頭で催告した」という形です。42条1項は「書面で催告し」と明記しています。数字が合っていても方法が違えば要件を満たしません。
数字だけを見て正誤を判断する癖がついていると、この型で落とします。4つの要素を毎回確認してください。
催告なしの効果を作り出す
「賦払金の支払が2回以上滞った場合は、催告を要せず契約を解除できる」という形です。42条1項は遅滞の回数を要件にしておらず、何回滞ろうと催告が必要です。
また「催告をしたが、期間の経過を待たずに解除した」という形もあります。条文は「その期間内にその義務が履行されないときでなければ」と書いており、期間の経過が要件です。
一括請求だけは自由にできるとする
「契約を解除するには催告が必要だが、支払時期の到来していない賦払金の支払を請求することは催告なしにできる」という形です。42条1項は2つを並列で禁じています。どちらも催告を経なければできません。
特約の効力を反転させる
「催告期間を60日とする特約は、42条1項の定める30日と異なるため無効である」は誤りです。60日は30日以上という要件を満たしており、1項に反しません。
「催告を要しない旨の特約は、買主が承諾していれば有効である」も誤りです。42条2項が「前項の規定に反する特約は、無効とする」と定めており、買主の承諾は無効を治癒しません。
割賦販売の定義をずらす
「引渡し後6か月にわたり12回に分割して受領する契約」は、回数は足りていても期間が1年に届かないので割賦販売ではありません。「引渡し後2年にわたり1回で受領する契約」は、期間は足りていても2回以上の分割がないので割賦販売ではありません。
「契約締結後1年以上にわたり2回以上に分割して受領する契約」も割賦販売ではありません。起点は契約締結ではなく引渡しです。
「買主が住宅ローンを利用して35年で返済する売買」も割賦販売ではありません。売主が分割で受領していないからです。
8種制限の適用範囲と混ぜる
「宅建業者間の割賦販売において、催告を経ずに契約を解除する特約は無効である」は誤りです。78条2項により42条は業者間取引に適用されず、特約は有効です。
「宅建業者が媒介した割賦販売において、売主は催告を経ずに解除できない」も、売主が宅建業者でなければ誤りです。42条の名宛人は自ら売主となる宅建業者です。
43条と混ぜる
「割賦販売において、宅建業者は代金の額の10分の3を超える額の支払を受けるまでは、賦払金の遅滞を理由に契約を解除することができない」は、42条と43条の数字を混ぜた誤りです。10分の3は43条の数字であり、42条とは無関係です。42条の数字は30日だけです。
覚え方・整理の仕方
42条の4要素を順に唱える
「30日以上・相当の期間・書面・期間内に履行なし」。この4語を順に言えるようにしておけば、42条の出題はほぼ処理できます。1つでも欠ければ解除も一括請求もできない、という結論とセットで持ってください。
条文が一文しかないので、全文を覚えることも現実的です。8種制限のなかで最も短い条文です。
数字は「30日」だけだと確定させる
42条に出てくる数字は30日ひとつです。10分の3は43条、10分の2は38条と39条、8日は37条の2、5パーセントと10パーセントと1,000万円は41条・41条の2、2年は40条。割賦販売の2か条のうち、42条が30日、43条が10分の3と対で覚えます。
なお、割賦販売の定義に出てくる「1年以上」と「2回以上」は、制限の数字ではなく制度に入るかどうかの入口の数字です。この区別を意識しておくと、「催告期間は1年以上」といった混線を防げます。宅建業法の数字は宅建業法の数字まとめで横断的に確認できます。
定義は「引渡し後・1年・2回」で持つ
割賦販売の定義は3語で言えます。引渡し後、1年以上、2回以上。起点を最初に置くのがコツで、「引渡し後」を先に唱えれば、契約締結時と取り違えません。
賦払金の定義も同じ語が効きます。引渡し後の各回の支払分。割賦販売の定義と賦払金の定義が、どちらも「引渡し後」を軸にしていることに気づけば、2つをまとめて覚えられます。
42条と43条は「時点」で切り分ける
42条が「払われないとき」、43条が「引き渡すとき」。同じ割賦販売という場面を、支払の局面と引渡しの局面で分担していると理解します。
さらに条文の性質も違います。42条は業者の行為を事後に制限する規定(催告を経なければ解除できない)で、43条は業者に一定の時点までに義務の履行を求める規定(引渡しまでに登記せよ)です。禁止と作為義務という違いです。
出題頻度が低いことを織り込む
冒頭で述べたとおり、この論点の出題頻度は8種制限のなかで最も低いところにあります。4要素と定義の3語、そして数字は30日という3点だけを確実にして、それ以上は深追いしないという配分が合理的です。
本記事の後半で扱った射程の限定(賦払金の遅滞に限ること、引渡し前の金銭が賦払金でないこと)や、43条3項・4項のローン保証は、条文の構造を理解するための材料であって、暗記の対象ではありません。学習の優先順位は8種制限の横断整理の数字の一覧を先に固めるほうが効率的です。
理解度チェッククイズ
Q1. 宅建業者Aが自ら売主となり、宅建業者でないBとの間で締結した割賦販売の契約について、Bが賦払金の支払を怠った場合、Aは20日の期間を定めて書面で支払を催告し、その期間内に支払がないときは契約を解除することができる。(○か×か)
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×:42条1項は「三十日以上の相当の期間を定めてその支払を書面で催告し」と定めています。**20日では30日以上という要件を満たしません。**したがって、その期間が経過しても賦払金の支払の遅滞を理由として契約を解除することはできず、支払時期の到来していない賦払金の支払を請求することもできません。なお、60日のように30日を超える期間を定めることは要件を満たすので問題ありません。「30日ちょうど」である必要はなく、「30日以上」である必要があります。Q2. 宅建業者が自ら売主となる割賦販売の契約において、賦払金の支払が遅滞した場合、宅建業者は30日以上の相当の期間を定めて口頭で支払を催告すれば、その期間の経過後に契約を解除することができる。(○か×か)
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×:42条1項は「その支払を**書面で**催告し」と明記しています。口頭の催告では要件を満たしません。この条文の要件は**30日以上・相当の期間・書面・期間内に履行がないこと**の4つで、数字が合っていても方法が違えば解除も一括請求もできません。なお宅建業法は35条8項・9項や37条4項・5項で書面の電磁的方法による提供を認めていますが、42条にはこれに対応する規定が置かれていません。Q3. 宅建業者が自ら売主となり、宅建業者でない買主との間で、目的物の引渡し後6か月の間に12回に分割して代金を受領する契約を締結した場合、宅建業者は30日以上の期間を定めて書面で催告しなければ、支払の遅滞を理由に契約を解除することができない。(○か×か)
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×:42条が適用されるのは「割賦販売」の契約です。宅建業法上の割賦販売は35条2項の括弧書きにより、「代金の全部又は一部について、**目的物の引渡し後一年以上の期間にわたり、かつ、二回以上に分割して**受領することを条件として販売すること」と定義されています。この事案は12回という分割回数の要件は満たしますが、**期間が6か月なので1年以上という要件を欠き、割賦販売に当たりません。**したがって42条は適用されず、解除の可否は民法541条などの一般原則によります。期間と回数の両方を確かめてください。Q4. 宅建業者が自ら売主となる割賦販売の契約において、催告期間を60日とする特約は、宅建業法42条1項が定める期間と異なるため無効である。(○か×か)
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×:42条1項が定めるのは「30日以上」という下限です。60日はこの下限を満たしており、**「前項の規定に反する特約」(42条2項)には当たりません。**買主にとってより有利な内容なので有効です。無効になるのは1項の要求を下回る特約、たとえば「催告期間を15日とする」「催告なく解除できる」「催告は口頭で足りる」「催告なく残額を一括請求できる」といったものです。42条2項には「買主に不利なもの」という限定が付いていませんが、下限規制の上乗せは「反する特約」ではない、という構造で理解してください。Q5. 宅建業者が自ら売主となる割賦販売の契約において、買主が賦払金の支払を怠った場合、宅建業者は催告を経ずに、支払時期の到来していない賦払金の支払を請求することができる。(○か×か)
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×:42条1項は「契約を解除し、**又は**支払時期の到来していない賦払金の支払を請求することができない」と、2つを並列で禁じています。**解除だけでなく、残賦払金の一括請求も催告を経なければできません。**この一括請求はいわゆる期限の利益の喪失にあたり、民法136条1項が「期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する」としている利益を買主から奪うものです。42条は、契約による期限の利益喪失に手続的な歯止めをかけています。Q6. 宅建業者Aが自ら売主となり、宅建業者Bとの間で割賦販売の契約を締結する場合において、賦払金の支払が遅滞したときは催告なく契約を解除できる旨の特約を定めても、その特約は無効である。(○か×か)
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×:42条は8種制限の1つであり、78条2項により「第三十三条の二及び第三十七条の二から第四十三条までの規定は、宅地建物取引業者相互間の取引については、適用しない」とされています。**買主Bが宅建業者なので42条は適用されず、催告なく解除できる旨の特約は有効です。**8種制限が外れるとは民法に戻るということなので、特約がなければ民法541条の相当の期間を定めた催告が必要になりますが、特約でこれを修正することは妨げられません。Q7. 宅建業者が自ら売主となる割賦販売において、代金の額の10分の3を超える額の金銭の支払を受けるまでは、賦払金の支払の遅滞を理由として契約を解除することができない。(○か×か)
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×:代金の額の10分の3という数字は**43条**のものであり、42条とは無関係です。43条1項は、割賦販売を行った場合には引き渡すまでに登記その他引渡し以外の売主の義務を履行しなければならないとしたうえで、引渡しまでに10分の3を超える支払を受けていない場合には10分の3を超える支払を受けるまでに履行すればよいという猶予を括弧書きで与えています。**義務を発生させる条件ではなく、履行期限を後ろにずらす数字**である点にも注意してください。42条に出てくる数字は30日だけです。まとめ
宅地建物取引業法42条1項は、宅建業者が自ら売主となる割賦販売の契約について、賦払金の支払義務が履行されない場合に、30日以上の相当の期間を定めて書面で催告し、その期間内に履行がないときでなければ、賦払金の支払の遅滞を理由として契約を解除し、または支払時期の到来していない賦払金の支払を請求することができない、と定めています。要素は30日以上・相当の期間・書面・期間内に履行なしの4つで、1つでも欠ければどちらもできません。これに反する特約は無効です(42条2項)。
前提となる「割賦販売」は、35条2項の括弧書きにより代金の全部または一部について、目的物の引渡し後1年以上の期間にわたり、かつ2回以上に分割して受領することを条件として販売することと定義されています。起点は引渡しであって契約締結ではなく、住宅ローンを利用した売買はこれに当たりません。「賦払金」も35条2項3号で引渡し後の各回の支払分と定義されており、引渡し前に支払う手付金や中間金は含まれません。
そして42条は8種制限の1つなので、3要件に加えて割賦販売であることという第4の要件を満たす場合にしか働きません。8つのうち42条と43条だけが、売買一般ではなく特定の販売形態を対象としています。
出題頻度は8種制限のなかで最も低い論点です。4つの要素、定義の3語、そして数字は30日だけ。この3点を確実にして、それ以上は深追いしないのが合理的な配分です。
関連する制限を続けて確認するなら、同じ割賦販売を扱う所有権留保等の禁止、8つの並びを確認する8種制限とは、適用範囲を判定する8種制限が適用されない場合の順が効率的です。
条文を確認したら、宅建試験AIブートラボのアプリで宅建業法の過去問演習に進み、42条の肢を実際に切ってみてください。
宅建業法は20問と配点が最も大きく、確実に得点したい科目です。免許制度・重要事項説明・8種制限を肢別で固めましょう。