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定期借地権|三類型は「壁の越え方」で分かれる

権利関係 読了 約41分

定期借地権の三類型を、借地借家法9条・16条の片面的強行規定をどう越えるかという一点から整理します。22条・23条・24条の条文の書き分け、公正証書が要るのはどれか、外れない保護まで条文根拠つきで。

目次

    本記事の役割 — 定期借地権の三類型を、借地借家法が立てた壁をどう越えるかという一点から整理します。借地借家法全体の見取り図は借地借家法の全体像、数字だけの横断整理は借地借家法の数字、対抗要件は借地権の対抗要件、実務面は借地権とはにあります。名前の似た定期建物賃貸借は定期借家契約が担当します。
    ここでは、三類型が並列の三択ではなく、同じ壁に対する三通りの越え方であることを条文で確かめます。

    定期借地権は「更新がない借地権」と説明されます。それは正しいのですが、その一文からはなぜ三つに分かれているのかが出てきません。更新がないだけなら、一つの制度で足りるはずです。

    答えは条文の書き出しにあります。三つの条文は、いずれも「〜の規定にかかわらず」という同じ形で始まりますが、かかわらずと言っている相手が違います。

    借地借家法22条は「第九条及び第十六条の規定にかかわらず」。23条1項も「第九条及び第十六条の規定にかかわらず」。ところが24条1項は「第九条の規定にかかわらず」だけです。そして23条2項は、そもそも「かかわらず」という形をとらず、「第三条から第八条まで、第十三条及び第十八条の規定は、適用しない」と書いています。

    9条と16条は、借地権者に不利な特約を無効にする片面的強行規定、いわば壁です。定期借地権とは、この壁を法律自身が開けた穴のことです。穴の開け方が四通りあるから、条文が四つに分かれている。存続期間や方式の違いは、その越え方に応じて課された代償です。

    先に結論を三つ述べます。

    第一に、22条と23条1項は同じ越え方をします。壁を「かかわらず」で越え、特約で三つの効果(更新、築造による延長、13条の買取請求)を外す。違うのは、22条が期間50年以上と引き換えに用途を問わないのに対し、23条1項は用途を事業用に絞ることで期間を30年以上50年未満まで下げている点です。

    第二に、23条2項は越え方が違います。特約で外すのではなく、3条から8条まで、13条、18条という規定そのものを適用除外にします。だから特約は要りません。期間を10年以上30年未満まで下げるには、存続期間を30年とする3条と正面から衝突するので、3条ごと外すしかなかったからです。

    第三に、24条は16条を越えていません。建物を相当の対価で譲渡することで借地権を消滅させる仕組みなので、13条の建物買取請求権を外す必要がないのです。外す必要がないから、外していない。方式の定めがないのも、期間が30年以上と普通借地権の当初期間と同じなのも、この「越え方が小さい」ことから説明できます。

    以下、原則の側から順に降りていきます。

    なお本記事の条文は、令和8年度試験の基準である2026年4月1日時点で施行されていた版によっています。借地借家法は 403AC0000000090_20230614_505AC0000000053、宅地建物取引業法は 327AC1000000176_20260401_507AC0000000068、同法施行規則は 332M50004000012_20260401_507M60000802002 です。基準日の扱いは後半で改めて整理します。

    原則の側 普通借地権は保護の束でできている

    借地権であることが出発点

    2条1号は、借地権を「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」と定義しています。

    三つの要素があります。対象が土地であること。権利が地上権または賃借権であること。そして目的が建物の所有であること。三つ目を欠けば、そもそも借地借家法の土俵に上がりません。駐車場、資材置場、看板の設置場所として土地を借りる契約は借地権ではなく、民法の賃貸借の規定だけで処理されます。

    定期借地権も借地権である以上、この定義を満たす必要があります。建物を建てない目的で「事業用定期借地権を設定する」ということはできません。資材置場のための土地賃貸借に23条を持ち出す選択肢は、定義の段階で切れます。地上権と賃借権の違いは用益物権で扱っています。

    期間は三段で下がる

    3条は「借地権の存続期間は、三十年とする。ただし、契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間とする」としています。

    4条は「当事者が借地契約を更新する場合においては、その期間は、更新の日から十年(借地権の設定後の最初の更新にあっては、二十年)とする。ただし、当事者がこれより長い期間を定めたときは、その期間とする」としています。

    当初30年、最初の更新後20年、2回目以降10年。いずれも下限であり、長い定めはそのまま有効です。段階的に短くなるのは、時間の経過とともに投下資本の回収が進み、保障すべき期間が短くて足りるようになるからです。

    更新には二つの入口がある

    5条1項は、存続期間が満了する場合において借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、従前の契約と同一の条件で更新したものとみなすとしています。ただし借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りではありません。

    5条2項は、存続期間が満了した後、借地権者が土地の使用を継続するときも、建物がある場合に限り、同様とするとしています。

    5条3項は、転借地権が設定されている場合について、転借地権者がする土地の使用の継続を借地権者がする使用の継続とみなすと定めています。

    更新請求と使用継続という二つの入口があり、どちらも「建物がある場合に限り」という条件が付いている。この二つを覚えておくと、後で22条の括弧書きの意味が分かります。

    異議には正当の事由が要る

    6条は、5条の異議は、借地権設定者および借地権者が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経過および土地の利用状況、ならびに借地権設定者が土地の明渡しの条件としてまたは引換えに財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ述べることができない、としています。

    条文の並び順が判断の重みを表しています。中心にあるのは双方が土地の使用を必要とする事情で、いわゆる立退料の申出は最後に「考慮して」と置かれた補完要素です。立退料さえ払えば明渡しが認められる、という関係にはなっていません。

    建物買取請求権

    13条1項は、借地権の存続期間が満了した場合において契約の更新がないときは、借地権者は借地権設定者に対し、建物その他借地権者が権原により土地に附属させた物を時価で買い取るべきことを請求することができる、としています。

    これは形成権です。請求の意思表示をすれば時価による売買が成立したのと同じ効果が生じ、設定者の承諾は要りません。まだ使える建物を取り壊させるのは無駄であり、更地に戻す負担を借地権者に負わせないという趣旨です。

    13条2項は、建物が存続期間満了前に設定者の承諾を得ないで残存期間を超えて存続すべきものとして新築されたときは、裁判所が設定者の請求により代金の支払につき相当の期限を許与できるとしています。13条3項が転借地権者について準用しています。

    対抗要件と地代の増減

    10条1項は、借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる、としています。土地の登記ではなく、その上の建物の登記で足ります。詳細は借地権の対抗要件にあります。

    11条1項は、地代等が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇もしくは低下その他の経済事情の変動により、または近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる、としています。ただし書が「一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う」としています。

    この11条が後で効いてきます。定期借地権の三つの条文のどこにも、11条は出てきません。

    壁の正体 9条と16条

    二つの強行規定

    ここまで見た保護を、特約で外せるでしょうか。答えは、原則として外せません。

    9条は、こう書いています。「この節の規定に反する特約で借地権者に不利なものは、無効とする。

    「この節」とは第2章第1節、すなわち3条から9条までです。存続期間(3条)、更新後の期間(4条)、更新請求と使用継続(5条)、更新拒絶の要件(6条)、更新前の再築(7条)、更新後の再築(8条)が、まとめてここに入っています。

    16条は、こう書いています。「第十条、第十三条及び第十四条の規定に反する特約で借地権者又は転借地権者に不利なものは、無効とする。

    対抗要件(10条)、借地権者の建物買取請求権(13条)、第三者の建物買取請求権(14条)が、こちらで守られています。

    片面的であることの意味

    どちらも「借地権者に不利なもの」だけを無効にしています。有利な特約は有効なままです。

    だから「存続期間を20年とする」という特約は3条に反して借地権者に不利なので9条により無効となり、本文に戻って30年になります。逆に「存続期間を40年とする」は有利なので有効です。「短くしようとすると跳ね返される」という一方向の構造になっています。

    そして、「契約の更新をしない」という合意は5条・6条に反して借地権者に不利なので、そのままでは9条により無効です。「建物買取請求をしない」という合意は13条に反して不利なので、16条により無効です。

    普通借地権のもとでは、更新のない借地権を当事者の合意だけで作ることはできない。これが原則です。

    定期借地権は法律が開けた穴である

    そこで法律自身が例外を置きました。それが22条から24条です。

    三つの条文はいずれも、9条または16条を名指しして「〜の規定にかかわらず」と書いています。壁を撤去したのではなく、特定の場合について、特定の効果に限って穴を開けたという書き方です。

    したがって、条文が名指ししていない規定は残ります。名指しの範囲を正確に読むことが、この論点の中心になります。以下、四つの越え方を順に見ます。

    一般定期借地権(22条) 両方の壁を特約で越える

    条文を分解する

    22条1項は、こう定めています。

    存続期間を五十年以上として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新(更新の請求及び土地の使用の継続によるものを含む。次条第一項において同じ。)及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。この場合においては、その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない。」

    四つに分けて読みます。要件としての期間、越える壁、外せる効果、そして方式です。

    外せる効果は三つ

    外せるのは、次の三つです。

    第一が契約の更新です。括弧書きが「更新の請求及び土地の使用の継続によるものを含む」と明記しています。合意による更新だけでなく、5条1項の更新請求と5条2項の使用継続による法定更新まで封じるという意味です。ここを外さなければ、期間が満了しても借地権者が使い続ければ更新されてしまいます。

    第二が建物の築造による存続期間の延長です。7条1項は、更新前に建物が滅失して借地権者が残存期間を超えて存続する建物を築造し、設定者の承諾があるときは、借地権が20年間存続するとしています。この延長を封じます。期間の途中で建て直されて20年延びると、50年で確実に終わるという設計が崩れるからです。

    第三が13条の規定による買取りの請求です。期間満了時に建物を時価で買い取れという請求を封じます。借地権者は建物を収去して更地で返すことになります。

    三つそれぞれが、別の条文に対応しています。更新は5条・6条(9条が守る)、築造による延長は7条(9条が守る)、買取請求は13条(16条が守る)。だから9条と16条の両方を名指しする必要があったわけです。

    なぜ50年以上なのか

    三つをまとめて外すのは、借地権者から見れば相当に重い譲歩です。更新もなく、建て直しによる延長もなく、建物の代金も回収できない。

    そこで、それに見合う長さとして50年以上が要求されています。50年あれば、建物を建てて使い、投下資本を回収するには足りるという判断です。期間の長さが、保護を外すことの代償になっているという関係で理解してください。

    「存続期間を40年として一般定期借地権を設定する」という選択肢は、この代償を払っていないので誤りになります。50年ちょうどは「以上」に含まれるので設定できます。

    方式は「特約が」「書面」

    方式について、二点を正確に読んでください。

    第一に、書面を要求されているのはその特約です。条文は「その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない」と書いています。借地権設定契約そのものを書面にせよとは言っていません。後で見る23条3項が「契約は、公正証書によってしなければならない」と書いているのと、対象が違います。

    第二に、「公正証書による等書面」という言い回しです。公正証書は例示であって、必須ではありません。書面であれば足ります。この言い回しは、定期建物賃貸借を定める38条1項とまったく同じです。

    そして22条2項が、「前項前段の特約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その特約は、書面によってされたものとみなして、前項後段の規定を適用する」としています。電子的な記録でも要件を満たすということです。

    用途の制限はない

    22条には、建物の用途に関する要件がありません。住宅でも、店舗でも、工場でも設定できます。分譲マンションの敷地に一般定期借地権を用いる例が実務で知られていますが、条文上、用途は自由です。

    用途が絞られているのは次に見る23条だけです。用途の制限があるのは事業用定期借地権だけという一点を、先に固定しておいてください。

    事業用定期借地権等(23条) 目的を絞って期間を下げる

    1項と2項は構造が違う

    23条は二つの項に分かれており、期間が違うだけだと思われがちですが、条文の作りそのものが違います。

    23条1項は、こうです。「専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を三十年以上五十年未満として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。」

    22条とまったく同じ形です。壁の名指しも、外せる三つの効果も、「定めることができる」という書き方も一致しています。違うのは、用途が事業用に絞られていることと、それと引き換えに期間の下限が50年から30年に下がっていることだけです。

    23条2項は、まったく違う形です。「専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を十年以上三十年未満として借地権を設定する場合には、第三条から第八条まで、第十三条及び第十八条の規定は、適用しない。

    「かかわらず」も「定めることができる」も出てきません。規定そのものを適用除外にしています。

    なぜ2項だけ書き方が違うのか

    理由は、3条との関係にあります。

    3条は「借地権の存続期間は、三十年とする」と定めています。23条1項は期間を30年以上とするので、3条の30年と両立します。だから3条はそのまま残し、更新や買取請求という個別の効果だけを特約で外せば足ります。

    ところが23条2項は、期間を10年以上30年未満とします。3条が定める30年と正面から衝突します。特約で更新を外すだけでは足りず、存続期間を定める3条そのものを外さなければ、10年の借地権は作れません。

    だから2項は、3条から8条までを丸ごと適用除外にしたのです。存続期間(3条)、更新後の期間(4条)、更新請求と使用継続(5条)、更新拒絶の要件(6条)、更新前の再築による延長(7条)、更新後の再築(8条)。そして13条(建物買取請求権)と18条(更新後の再築の許可)も外れます。

    条文の書き方の違いは、期間の下げ幅の違いから来ている。この理由づけで持つと、1項と2項を取り違えません。

    「定めることができる」と「適用しない」の実際の差

    書き方の違いは、実際の結論にも表れます。

    23条1項の場合、特約を置いて初めて更新等がなくなります。特約を置き忘れれば、更新のある借地権になります。期間を35年と定め、用途を事業用としただけでは、まだ定期借地権になっていません。

    23条2項の場合、特約は要りません。期間を10年以上30年未満とし、用途を事業用とすれば、それだけで3条から8条まで、13条、18条が適用されなくなります。当然に更新も買取請求もないということです。

    「事業用定期借地権では、更新がない旨を特約しなければならない」という記述は、2項について誤りです。逆に「事業用定期借地権では、特約がなくても当然に更新がない」という記述は、1項について誤りになります。どちらの項の話かを確定させてから判断してください。

    用途は「専ら事業の用に供する建物」

    23条1項の括弧書きが、「居住の用に供するものを除く」と明記しています。そして「次項において同じ」とあるので、2項にも同じ限定がかかります。

    読むべき点が二つあります。

    第一に、「専ら」です。一部でも居住の用に供する部分があれば、この類型は使えません。一階を店舗、二階を住居とする建物は対象外です。

    第二に、判定の対象は建物の用途であって、借地権者の営む事業ではありません。ここが最も誤解される箇所です。賃貸マンションを建てて賃料収入を得るのは事業ですが、建物そのものは居住の用に供するものなので、事業用定期借地権は使えません。社宅、社員寮、学生寮、老人ホームも同じです。

    「不動産賃貸業という事業のための建物だから事業用に当たる」という理屈は通りません。条文が見ているのは建物の用途です。

    公正証書に限られる

    23条3項は、こうです。「前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。

    三点を押さえてください。

    第一に、公正証書に限られます。22条のような「公正証書による等書面」ではありません。私署証書では足りず、公証人が作成する公正証書が必要です。三類型のなかで方式がもっとも厳格です。

    第二に、対象が契約です。22条は「その特約は」と書いて特約だけを対象としていましたが、23条3項は借地権の設定を目的とする契約そのものを公正証書にせよと言っています。

    第三に、電磁的記録のみなし規定がありません。22条2項に相当する規定が23条には置かれていません。

    厳格さの理由は、外し方の大きさにあります。とくに2項は、期間を10年まで下げたうえで、特約もなしに3条から8条までを丸ごと外します。借地権者が失うものが大きいので、公証人という第三者を手続に噛ませることで、内容を理解したうえで契約していることを確保しているわけです。

    「公正証書に限る」のは23条だけという一点は、この分野で最も問われます。

    建物譲渡特約付借地権(24条) 越え方が小さい

    16条が出てこない

    24条1項は、こうです。

    「借地権を設定する場合(前条第二項に規定する借地権を設定する場合を除く。)においては、第九条の規定にかかわらず、借地権を消滅させるため、その設定後三十年以上を経過した日に借地権の目的である土地の上の建物を借地権設定者に相当の対価で譲渡する旨を定めることができる。」

    22条・23条1項と読み比べてください。「第九条及び第十六条の規定にかかわらず」ではなく、「第九条の規定にかかわらず」です。16条が入っていません。

    これは書き漏らしではありません。24条が外しているのは、更新に関する保護(5条・6条、9条が守る)だけだからです。13条の建物買取請求権を外す必要がありません。

    理由は仕組みそのものにあります。建物譲渡特約付借地権では、期間が来ると建物を相当の対価で設定者に譲渡します。借地権者は建物の代金を受け取ります。13条の買取請求権は、更地に戻す負担を避けて建物の価値を回収させるための制度ですから、すでに対価が支払われる仕組みのもとでは、行使する場面が生じません。

    外す必要がないから外していない。したがって16条は残っており、13条を排除する特約を別に置けば、それは16条により無効になります。

    終わり方が違う

    三類型のなかで、24条だけは終わり方が違います。

    22条と23条では、期間が満了すると借地権が消滅し、借地権者は建物を収去して更地で返還します。13条の買取請求が封じられている以上、建物の価値は回収できません。

    24条では、建物を譲渡することによって借地権を消滅させます。更地に戻す必要はなく、建物はそのまま設定者のものになります。条文が「借地権を消滅させるため」と目的を明示している点に注目してください。期間の満了によって終わるのではなく、譲渡という行為によって終わる構成です。

    30年以上という期間

    「その設定後三十年以上を経過した日」に譲渡する旨を定めます。

    30年という数字は、普通借地権の当初の存続期間(3条)と同じです。少なくとも普通借地権と同じだけの期間は確保したうえで、その後に建物の譲渡で関係を終わらせる、という設計になっています。越え方が小さいぶん、代償としての期間も普通借地権並みで足りる、と理解できます。

    「設定後20年を経過した日に譲渡する旨を定める」という選択肢は、この30年を下回るので誤りです。

    方式の定めがない

    24条には、書面を要求する規定も、公正証書を要求する規定もありません。三類型のなかで唯一、方式が自由です。理屈のうえでは口頭でも成立します。

    実務では当然に書面を作りますが、試験では「建物譲渡特約付借地権は公正証書によらなければならない」「書面によらなければならない」という形で問われ、いずれも誤りになります。

    方式が緩いのも、越え方の小ささから説明できます。外しているのは更新の保護だけで、建物の対価は支払われ、期間も30年以上確保される。借地権者が失うものが相対的に小さいので、厳格な方式まで要求されていないわけです。

    用途の制限もない

    24条にも用途の要件はありません。住宅でも事業用でも設定できます。用途が絞られるのは23条だけ、という原則がここでも維持されています。

    単独でも、併用でもよい

    24条1項の括弧書きが「(前条第二項に規定する借地権を設定する場合を除く。)」としています。

    除かれているのは23条2項の借地権、すなわち存続期間10年以上30年未満の事業用定期借地権だけです。設定後30年以上を経過した日に譲渡するという特約は、30年未満で終わる借地権とは論理的に両立しません。だから除外されています。

    逆に読むと、それ以外の借地権には建物譲渡特約を付けられます。普通借地権にも、22条の一般定期借地権にも、23条1項の事業用定期借地権(30年以上50年未満)にも付けられるということです。

    ここが建物譲渡特約付借地権の性格を示しています。これは他の二つと横並びの第三の類型であると同時に、他の類型に上乗せできる特約でもあるわけです。「三類型のうち一つを選ぶ」という理解だけでは、この構造を取りこぼします。

    建物に住んでいる人はどうなるか(24条2項・3項)

    借地権が消えても建物には人がいる

    建物譲渡特約付借地権には、他の二類型にない問題があります。建物が残るということです。

    期間が来て建物が設定者のものになったとき、その建物には人が住んでいるか、事業を営んでいます。借地権者自身のこともあれば、借地権者から建物を借りた賃借人のこともあります。借地権が消滅したからといって、その人たちが直ちに出ていかなければならないとすると、酷な結果になります。

    24条2項の法定賃貸借

    そこで24条2項が置かれています。

    「前項の特約により借地権が消滅した場合において、その借地権者又は建物の賃借人でその消滅後建物の使用を継続しているものが請求をしたときは、請求の時にその建物につきその借地権者又は建物の賃借人と借地権設定者との間で期間の定めのない賃貸借(借地権者が請求をした場合において、借地権の残存期間があるときは、その残存期間を存続期間とする賃貸借)がされたものとみなす。この場合において、建物の借賃は、当事者の請求により、裁判所が定める。

    四つを読み取ってください。

    第一に、請求できるのは借地権者と建物の賃借人の両方です。借地権者自身が建物に住んでいた場合も、この規定で保護されます。「建物の賃借人だけが保護される」という理解は不正確です。

    第二に、請求が必要です。借地権の消滅によって当然に賃貸借が生じるのではありません。使用を継続している者が請求をして、その請求の時に賃貸借がされたものとみなされます。

    第三に、原則は期間の定めのない賃貸借です。ただし括弧書きに例外があり、借地権者が請求をした場合において借地権の残存期間があるときは、その残存期間を存続期間とする賃貸借になります。設定後30年で建物を譲渡したが借地権の存続期間が40年だった、というような場合を想定した規定です。この例外は借地権者が請求した場合に限られ、建物の賃借人が請求した場合には及びません。

    第四に、借賃は当事者の請求により裁判所が定めます。当事者の合意で決まらない場合の受け皿が条文に置かれています。

    24条3項 定期借家への橋

    24条3項が、さらに一段の仕組みを用意しています。

    「第一項の特約がある場合において、借地権者又は建物の賃借人と借地権設定者との間でその建物につき第三十八条第一項の規定による賃貸借契約をしたときは、前項の規定にかかわらず、その定めに従う。

    38条1項の賃貸借契約とは、定期建物賃貸借です。つまり、建物譲渡特約付借地権の当事者があらかじめ建物について定期借家契約を結んでおけば、24条2項の期間の定めのない賃貸借は生じず、定期借家の定めがそのまま働きます。

    土地の定期借地権が、建物の定期借家に接続する。借地借家法のなかで、借地の章と借家の章を条文が明示的につないでいるのは、この24条3項だけです。

    もっとも、38条1項の定期借家である以上、その要件は当然に満たす必要があります。書面によって契約すること(38条1項)、そしてあらかじめ、更新がなく期間の満了により終了する旨を記載した書面を交付して説明すること(38条3項)です。この事前説明の書面は契約書とは別個独立のものでなければならないとされています。定期借家の要件は定期借家契約で詳しく扱っています。

    三つの軸で並べ直す

    条文の構造を確認したので、ここで試験用に軸ごとに整理します。

    軸1 存続期間

    一般定期借地権は50年以上です(22条1項)。上限はありません。100年でも設定できます。

    事業用定期借地権等は10年以上50年未満です。内訳は、23条1項が30年以上50年未満、23条2項が10年以上30年未満。二つ合わせて10年以上50年未満の帯になり、50年でちょうど一般定期借地権と接します。50年で線が引かれているので、50年なら一般定期借地権、50年未満なら事業用というように、境目で判断できます。

    建物譲渡特約付借地権は30年以上です(24条1項)。正確には「存続期間が30年以上」ではなく「設定後30年以上を経過した日に譲渡する」という書き方ですが、結果として借地権は最低30年続きます。

    数字だけを並べると50、30から50未満、10から30未満、30となり紛らわしいので、期間は「越え方の代償」だと理由づけて持つほうが確実です。三つ全部を外す22条が最も長く、用途を絞った23条1項がその次、さらに期間を下げた23条2項が最も短く、外し方の小さい24条が普通借地権並み。この順序で再現できます。

    軸2 用途

    制限があるのは23条だけです。「専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く)」であることが要ります。

    22条にも24条にも用途の要件はありません。住宅、店舗、工場、いずれでも設定できます。

    判定するのは建物の用途であって、借地権者の事業ではない、という点を繰り返し確認してください。賃貸マンション、社宅、社員寮、老人ホームはいずれも居住の用に供する建物なので、23条は使えません。

    軸3 方式

    22条は「その特約は、公正証書による等書面によってしなければならない」。書面であれば足り、公正証書に限られません。電磁的記録も書面とみなされます(22条2項)。対象は特約です。

    23条3項は「前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない」。公正証書に限られます。対象は契約全体です。電磁的記録のみなし規定はありません。

    24条には方式の定めがありません。書面も公正証書も要求されていません。

    厳しい順に、公正証書(23条)、書面(22条)、定めなし(24条)。両端を先に覚えると、真ん中が出てきます。もっとも厳しいのが事業用、もっとも緩いのが建物譲渡特約付。残った一般定期借地権が書面です。

    軸4 外れる保護の範囲

    22条と23条1項が外すのは、契約の更新、建物の築造による存続期間の延長、13条の買取請求の三つです。特約によって外します。

    23条2項は、3条から8条まで、13条、18条を適用除外にします。特約は要りません。3条が外れる結果、存続期間の下限そのものがなくなり、10年以上30年未満の定めがそのまま効きます。

    24条が外すのは9条の壁だけで、更新に関する保護に限られます。13条は残ります。

    軸5 終わり方

    22条と23条では、期間の満了により借地権が消滅し、借地権者は建物を収去して更地で返還します。買取請求は封じられているので、建物の価値は回収できません。

    24条では、建物を相当の対価で設定者に譲渡することにより借地権が消滅します。更地に戻す必要はなく、建物の対価は受け取れます。そして使用を継続する者は、請求により法定の賃貸借を得られます(24条2項)。あらかじめ定期借家契約を結んでおけば、その定めが優先します(24条3項)。

    定期借地権でも外れないもの

    「定期だから何でも特約で決められる」という理解は誤りです。条文が名指ししていない規定は、そのまま働きます。

    対抗要件は外れない

    10条は16条によって守られていますが、22条と23条1項が16条を越えるのは「13条の規定による買取りの請求をしないこととする」という点に限られます。10条の対抗要件は外れていません。23条2項の適用除外リストにも10条は入っていません。

    したがって、定期借地権でも借地上の建物の登記によって第三者に対抗できます。建物が滅失した場合の掲示による2年間の猶予(10条2項)も同じです。「定期借地権は対抗要件を備えられない」という記述は誤りになります。

    地代等増減請求権は外れない

    ここが最も見落とされます。22条、23条、24条のどこにも、11条は出てきません。

    したがって定期借地権であっても、地代等が租税等の増減、土地の価格の変動、近傍類似の土地との比較によって不相当となったときは、当事者は増減を請求できます(11条1項)。11条1項ただし書が認めているのは「一定の期間地代等を増額しない旨の特約」だけで、減額請求を封じる特約を認める文言はありません。

    ここで、借家との対比が効きます。定期建物賃貸借については、38条9項が「第三十二条の規定は、…借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない」と明文で定めています。借賃の増減請求権を、特約があるときは丸ごと外すという規定です。

    借地には、これに相当する規定がありません。定期借地権について11条の適用を排除する条文は置かれていない。定期借家と定期借地権を並べたときに、この非対称は覚えておく価値があります。「定期借地権では地代の増減額請求ができない」という記述は、条文の根拠を欠きます。

    譲渡・転貸の許可も外れない

    19条(借地権者からの申立てによる、賃借権の譲渡または転貸の承諾に代わる許可)と20条(競売等により建物を取得した第三者からの申立て)も、22条から24条のどこにも出てきません。23条2項の適用除外リストにも入っていません。

    同じく、17条(借地条件の変更および増改築の許可)も、14条(第三者の建物買取請求権)も列挙されていません。23条2項が適用除外としているのは、条文どおり3条から8条まで、13条、18条です。

    譲渡・転貸に関する民法612条との関係は賃借権の譲渡と転貸、借地権の実務上の扱いは借地権とはで扱っています。

    一時使用目的では定期借地権を設定できない(25条)

    25条は、こう定めています。

    「第三条から第八条まで、第十三条、第十七条、第十八条及び第二十二条から前条までの規定は、臨時設備の設置その他一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合には、適用しない。」

    列挙のなかに「第二十二条から前条まで」、つまり22条・23条・24条が入っています。一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合には、定期借地権の規定そのものが適用されないということです。

    これは制限ではなく、必要がないということです。一時使用が明らかなら、3条の30年も、5条・6条の更新も、13条の買取請求も最初から適用されません。外すべき保護が最初から働いていない以上、それを外すための定期借地権を使う必要がないわけです。

    「工事期間中の仮設事務所を建てるために事業用定期借地権を設定する」という発想は、二重に的を外しています。一時使用が明らかなら25条で処理され、そもそも公正証書も期間の下限も問題になりません。

    なお25条の列挙に、10条(対抗要件)、11条(地代等増減請求権)、14条、19条、20条は入っていません。ここでも、外れない規定が残るという構造は同じです。

    定期建物賃貸借と混ぜない

    名前が似ているため取り違えが起きます。違いを軸ごとに固定してください。

    対象が土地か建物か

    定期借地権は土地を対象とし、建物を所有する目的で土地を借りる権利です。定期建物賃貸借は建物を対象とし、建物そのものを借りる契約です。まったく別の場面の制度です。

    方式が紛れる

    38条1項は「公正証書による等書面によって契約をするときに限り」としています。22条とまったく同じ言い回しです。公正証書は例示であって、書面であれば足ります。

    したがって、「公正証書によらなければならない」のは借地借家法のなかで23条3項の事業用定期借地権だけです。定期借家に公正証書を要求する選択肢も、一般定期借地権に公正証書を要求する選択肢も、いずれも誤りになります。

    事前説明は借家にしかない

    38条3項は、定期建物賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人があらかじめ、賃借人に対し、その賃貸借は契約の更新がなく期間の満了により終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならないとしています。この書面は契約書とは別個独立のものである必要があるとされ、説明を怠れば更新がない旨の定めが無効になります(38条5項)。

    定期借地権には、これに相当する事前説明の要件がありません。22条は特約を書面ですればよく、23条は契約を公正証書にすればよく、24条は方式すら要求されていません。「一般定期借地権を設定するには、あらかじめ書面を交付して説明しなければならない」という記述は、借家の要件を借地に持ち込んだ誤りです。

    期間の扱いが逆を向く

    定期建物賃貸借では、29条1項(1年未満の期間の定めを期間の定めがないものとみなす規定)が適用されないため、1年未満の期間が有効です。短くできることが制度の価値の一つになっています。

    定期借地権では逆で、期間に下限があります。22条が50年以上、23条が10年以上、24条が30年以上。短くする自由はありません。

    賃料改定の扱いが違う

    前述のとおり、38条9項が32条の適用を排除する明文を置いているのに対し、借地には11条を排除する規定がありません。

    唯一の接点が24条3項

    二つの制度が条文で接するのは、24条3項だけです。建物譲渡特約付借地権の当事者が、建物について38条1項の定期建物賃貸借契約をしたときは、24条2項の法定賃貸借ではなくその定めに従う。この一箇所だけが橋になっています。

    取引の場面 重要事項説明

    施行規則16条の4の3第9号

    定期借地権は、宅建業法の側にも顔を出します。

    宅建業法35条1項14号イ・ロを受けた同法施行規則16条の4の3は、重要事項として説明すべき事項を列挙したうえで、柱書で契約の種類ごとに適用範囲を分けています。宅地の売買または交換の契約にあっては1号から3号の2まで、建物の売買または交換の契約にあっては1号から6号まで、宅地の貸借の契約にあっては1号から3号の2までおよび8号から13号まで建物の貸借の契約にあっては1号から5号までおよび7号から12号までです。

    そして9号が、こう定めています。「借地借家法第二条第一号に規定する借地権で同法第二十二条第一項の規定の適用を受けるものを設定しようとするとき、又は建物の賃貸借で同法第三十八条第一項若しくは高齢者の居住の安定確保に関する法律第五十二条第一項の規定の適用を受けるものをしようとするときは、その旨」。

    挙がっているのは22条1項だけ

    読み取るべき点が二つあります。

    第一に、借地権について挙げられているのは22条1項、すなわち一般定期借地権だけです。23条の事業用定期借地権も、24条の建物譲渡特約付借地権も、この号には挙がっていません。

    第二に、9号が適用されるのは宅地の貸借(8号から13号)と建物の貸借(7号から12号)であって、売買・交換には適用されません。借地権について問題になるのは宅地の貸借の場面です。

    したがって、宅建業者が一般定期借地権の設定に係る宅地の貸借を媒介するときは、その旨を重要事項として説明しなければならない。事業用定期借地権については、この号による説明義務がない。条文の列挙のとおりに覚えてください。重要事項説明の全体像は35条書面の完全整理、貸借の場面は貸借の重要事項説明で扱っています。

    なお、同じ9号が建物の賃貸借について38条1項(定期建物賃貸借)と高齢者の居住の安定確保に関する法律52条1項(終身建物賃貸借)を挙げています。一つの号のなかに、土地側の一般定期借地権と建物側の定期借家が並んでいるという構造です。

    法令の基準日について

    宅建試験は、その年度の4月1日現在施行されている法令から出題されます。令和8年度であれば2026年4月1日時点の条文が基準であり、今日の条文ではありません。

    借地借家法には、令和4年法律第48号による改正が2026年5月21日に施行されています。5月21日は4月1日より後なので、この改正は令和8年度試験の出題範囲に入りません。

    ただし、基準日版(403AC0000000090_20230614_505AC0000000053)と施行後版(403AC0000000090_20260521_504AC0000000048)を条単位で照合した結果、本則64条すべてで新設も削除もなく、本文が変わったのは61条のみでした。61条は民事訴訟法第1編第8章の準用に関する手続規定で、秘匿決定関連の条項を準用対象から除外する内容です。

    存続期間、更新、対抗要件、建物買取請求権、そして本記事で扱った22条・23条・24条・25条を含む実体規定は、一切変わっていません。したがって、どちらの版で読んでも内容は同じです。

    宅地建物取引業法についても、令和7年法律第68号による改正が2026年4月1日に施行されていますが、本則1条から86条までおよび別表に差分はなく、附則が付加されただけです。同法施行規則16条の4の3も基準日時点の内容によっています。

    施行日が基準日より後だからといって内容が変わっているとは限らず、逆に施行日を見ずに最新の条文を使えば基準を外します。条文の文言がそのまま答えになる論点ほど、版を確認する価値があります。

    試験での出題ポイント

    方式をずらす

    もっとも多い型です。「一般定期借地権は公正証書によらなければならない」「建物譲渡特約付借地権は書面によらなければならない」「事業用定期借地権は書面であれば足りる」。いずれも誤りです。

    公正証書に限られるのは23条だけ。この一点を反射で出せるようにしてください。22条は「公正証書による等書面」で、38条1項の定期借家とまったく同じ言い回しです。

    期間をずらす

    「存続期間を40年として一般定期借地権を設定する」「存続期間を60年として事業用定期借地権を設定する」「設定後20年を経過した日に建物を譲渡する旨を定める」。いずれも誤りです。

    境目の扱いにも注意が必要です。50年ちょうどは一般定期借地権(50年以上)に含まれ、事業用定期借地権(50年未満)には含まれません。30年ちょうどは23条1項(30年以上50年未満)に含まれ、23条2項(10年以上30年未満)には含まれません。

    用途を広げる

    「事業用定期借地権により賃貸マンションを建てる」「社宅の所有を目的として事業用定期借地権を設定する」。いずれも誤りです。判定の対象は建物の用途であって、借地権者の事業ではありません。

    逆方向に、「一般定期借地権は住宅の所有を目的とする場合に限り設定できる」という肢も作れます。22条に用途の要件はありません。

    23条1項と2項を混ぜる

    「事業用定期借地権では、特約がなくても当然に更新がない」は、23条1項については誤りです。1項は「定めることができる」であり、特約を置いて初めて効果が生じます。

    「事業用定期借地権では、更新がない旨の特約をしなければならない」は、23条2項については誤りです。2項は3条から8条まで、13条、18条を適用除外にしており、特約は要りません。

    どちらの項の話かを確定させてから答えるという手順を固定してください。

    建物譲渡特約付借地権の併用を否定する

    「建物譲渡特約は、普通借地権には付けることができない」は誤りです。24条1項が除いているのは23条2項の借地権(10年以上30年未満の事業用定期借地権)だけで、普通借地権にも、一般定期借地権にも、23条1項の事業用定期借地権にも付けられます。

    24条2項の請求権者を狭める

    「建物譲渡特約により借地権が消滅した場合、建物の賃借人は請求により建物の賃貸借を継続できるが、借地権者自身にはこの保護がない」は誤りです。24条2項は「その借地権者又は建物の賃借人」と明記しています。

    あわせて、「当然に賃貸借が生じる」とする肢も誤りです。請求が必要です。

    外れない規定を外させる

    「定期借地権には建物の登記による対抗力が認められない」「定期借地権では地代等の増減額請求ができない」。いずれも条文の根拠を欠きます。10条も11条も、22条から24条のどこにも名指しされていません。

    とくに11条については、定期借家の38条9項が32条を明文で排除しているのと対比させる肢が作りやすい箇所です。借地には32条9項に相当する規定がないと押さえてください。

    一時使用と定期借地権を接続させる

    「一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合であっても、事業用定期借地権として設定するには公正証書によらなければならない」は誤りです。25条により22条から24条までの規定が適用されないので、定期借地権の枠組みに乗りません。

    定期借家の要件を持ち込む

    「一般定期借地権を設定するには、あらかじめ契約書とは別個独立の書面を交付して説明しなければならない」は誤りです。事前説明の要件があるのは38条3項の定期建物賃貸借だけです。

    覚え方・整理の仕方

    「どの壁を、どう越えるか」で持つ

    三類型を並列に暗記すると、方式と期間が入れ替わります。条文の書き出しから入ってください。

    22条と23条1項が「9条及び16条の規定にかかわらず」。23条2項が「3条から8条まで、13条及び18条の規定は、適用しない」。24条1項が「9条の規定にかかわらず」。

    この四つの書き出しを言えるようにすれば、外れる範囲も、方式の厳しさも、期間の長さも、そこから順序立てて出てきます。大きく越えるほど代償が重いという一本の筋が通っているからです。

    両端から埋める

    方式は、もっとも厳しい23条(公正証書)と、もっとも緩い24条(定めなし)を先に固定します。残った22条が書面です。

    期間は、もっとも長い22条(50年以上)と、もっとも短い23条2項(10年以上30年未満)を先に固定します。間に23条1項(30年以上50年未満)と24条(30年以上)が入ります。

    用途は、制限があるのが23条だけ。これは覚える項目が一つしかありません。

    「専ら事業の用に供する建物」は建物を見る

    事業用定期借地権の判定は、借地権者が何をしているかではなく、建物が何に使われるかで決まります。「賃貸マンションを建てて賃貸業を営む」は、事業ですが建物は居住用なので不可。「自社の倉庫を建てる」は、建物が事業用なので可。

    判定に迷ったら、その建物に人が住むかどうかを問うてください。住むなら23条は使えません。

    24条は「更地に戻さない類型」で覚える

    22条と23条は、期間が来たら建物を壊して更地で返す類型です。13条の買取請求が封じられているので、建物の価値は回収できません。

    24条は、建物を相当の対価で譲渡する類型です。更地に戻さず、対価を受け取る。だから16条を越える必要がなく、方式も緩く、期間も普通借地権並みで足りる。「更地に戻さない」という一語から、24条の特徴が全部出てきます。

    借家と混ぜないための一語

    方式で紛れたら、「公正証書に限るのは事業用だけ」と唱えてください。22条も38条1項も「公正証書による等書面」で同じ言い回しです。

    要件で紛れたら、「別個独立の書面は借家だけ」と唱えてください。事前説明の要件は38条3項にしかありません。

    外れない三つを覚える

    定期借地権でも外れないものを三つだけ持っておきます。10条の対抗要件、11条の地代等増減請求権、19条・20条の譲渡等の許可。いずれも22条から24条のどこにも名指しされていません。

    「定期だから特約で何でもできる」という思い込みを、この三つで押さえておくと、外させる肢に気づけます。

    条番号を組で持つ

    原則側が2条1号(定義)、3条(30年)、4条(20年・10年)、5条(更新請求・使用継続)、6条(正当の事由)、7条(更新前の再築)、13条(建物買取請求権)、10条(対抗要件)、11条(地代等増減請求権)。

    壁が9条(3条から9条までの強行規定)と16条(10条・13条・14条の強行規定)。

    例外側が22条(一般定期借地権)、23条(事業用定期借地権等)、24条(建物譲渡特約付借地権)、25条(一時使用目的)。借家側との接点が24条3項と38条1項。業法側が宅建業法35条1項14号と同法施行規則16条の4の3第9号。

    権利関係全体での位置づけは権利関係の全体像、頻出論点の優先順位は権利関係の頻出論点にまとめてあります。

    理解度チェッククイズ

    次の記述の正誤を判定してください。

    問1. 存続期間を50年として借地権を設定する場合において、契約の更新および建物の築造による存続期間の延長がなく、建物買取請求をしないこととする旨を定めるには、その特約を公正証書によってしなければならない。

    答えを見る 答えは誤りです。22条1項後段は「その特約は、**公正証書による等書面**によってしなければならない」と定めています。公正証書は例示であって、書面であれば足ります。しかも22条2項により、特約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、書面によってされたものとみなされます。公正証書に限られるのは、23条3項の事業用定期借地権等だけです。同項は「前二項に規定する借地権の**設定を目的とする契約**は、公正証書によってしなければならない」としており、対象が特約ではなく契約全体である点でも22条と違います。なお、存続期間を50年とする点は「50年以上」に含まれるので正しい記述です。定期建物賃貸借を定める38条1項も「公正証書による等書面によって契約をするときに限り」という22条と同じ言い回しなので、あわせて確認してください。

    問2. 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、存続期間を20年として借地権を設定する場合には、契約の更新がない旨の特約を定めなければ、契約は更新される。

    答えを見る 答えは誤りです。存続期間20年は「10年以上30年未満」に当たるので23条2項の類型で、同項は「**第三条から第八条まで、第十三条及び第十八条の規定は、適用しない**」と定めています。特約を置かなくても、存続期間(3条)、更新後の期間(4条)、更新請求と使用継続(5条)、更新拒絶の要件(6条)、更新前後の再築(7条・8条)、建物買取請求権(13条)、更新後の再築の許可(18条)が当然に適用されません。特約は不要です。これに対し23条1項(30年以上50年未満)は「9条及び16条の規定にかかわらず…**定めることができる**」という書き方で、特約を置いて初めて効果が生じます。書き方が違う理由は3条との関係にあります。1項は期間30年以上なので3条の30年と両立しますが、2項は10年以上30年未満なので3条と正面から衝突し、3条ごと外すほかなかったからです。どちらの項の話かを先に確定させてください。

    問3. 事業用定期借地権は、賃貸マンションの所有を目的として設定することができる。

    答えを見る 答えは誤りです。23条1項は「**専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)**の所有を目的とし」と定めており、括弧書きの限定は2項にも及びます。判定の対象は**建物の用途**であって、借地権者が営む事業ではありません。賃貸マンションを建てて賃料収入を得ることは事業ですが、建物そのものは居住の用に供するものなので、この類型は使えません。社宅、社員寮、学生寮、老人ホームも同じです。また「専ら」と書かれているため、一階が店舗で二階が住居といった併用建物も対象外になります。なお、用途の制限があるのは23条だけで、22条の一般定期借地権にも24条の建物譲渡特約付借地権にも用途の要件はありません。住宅の所有を目的とする一般定期借地権は設定できます。

    問4. 建物譲渡特約付借地権は、専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし存続期間を20年として設定された借地権にも、付加することができる。

    答えを見る 答えは誤りです。24条1項は「借地権を設定する場合(**前条第二項に規定する借地権を設定する場合を除く。**)においては」としており、23条2項の借地権、すなわち専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし存続期間を10年以上30年未満とする借地権を明文で除いています。存続期間20年はこれに当たります。理由は明快で、24条1項は「その設定後**三十年以上**を経過した日」に建物を譲渡する旨を定めるものなので、30年未満で終わる借地権とは論理的に両立しないからです。逆に読むと、除かれているのは23条2項だけなので、**普通借地権にも、22条の一般定期借地権にも、23条1項の事業用定期借地権(30年以上50年未満)にも付加できます。**建物譲渡特約付借地権は、他の二類型と横並びの第三の類型であると同時に、他の類型に上乗せできる特約でもある、という二面性を持っています。

    問5. 建物譲渡特約により借地権が消滅した場合、その消滅後も建物の使用を継続している建物の賃借人は請求により期間の定めのない賃貸借の保護を受けられるが、借地権者自身にはこの保護がない。

    答えを見る 答えは誤りです。24条2項は「その**借地権者又は建物の賃借人**でその消滅後建物の使用を継続しているものが請求をしたときは、請求の時にその建物につき…**期間の定めのない賃貸借**…がされたものとみなす」と定めており、借地権者自身も請求できます。あわせて三点を押さえてください。第一に、**請求が必要**です。借地権の消滅によって当然に賃貸借が生じるのではありません。第二に、括弧書きに例外があり、**借地権者が請求をした場合において借地権の残存期間があるとき**は、その残存期間を存続期間とする賃貸借になります。この例外は建物の賃借人が請求した場合には及びません。第三に、建物の借賃は**当事者の請求により裁判所が定めます**。さらに24条3項により、借地権者または建物の賃借人と借地権設定者との間でその建物につき38条1項の定期建物賃貸借契約をしたときは、2項にかかわらずその定めに従います。借地の章と借家の章が条文で接続する唯一の箇所です。

    問6. 一般定期借地権を設定する場合、地代の増減額請求をしない旨の特約を定めれば、当事者は地代の増減額を請求することができない。

    答えを見る 答えは誤りです。地代等増減請求権を定める11条は、**22条にも23条にも24条にも名指しされていません。**22条が越えるのは9条と16条の壁であり、外せる効果は契約の更新、建物の築造による存続期間の延長、13条の買取請求の三つに限られます。11条はそこに含まれていないので、定期借地権であっても11条1項が働きます。11条1項ただし書が認めているのは「一定の期間地代等を**増額しない**旨の特約」だけで、減額請求を封じる特約を認める文言はありません。ここは借家との対比が効きます。定期建物賃貸借については**38条9項が「第三十二条の規定は、…借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない」と明文で定めています**が、**借地にはこれに相当する規定がありません**。同じ発想で、10条の対抗要件(借地上の建物の登記、滅失後の掲示による2年間)も、19条・20条の譲渡等の承諾に代わる許可も、定期借地権で外れません。「定期だから特約で何でもできる」という理解は条文の根拠を欠きます。

    まとめ

    • 三類型は並列の三択ではなく、同じ壁に対する四通りの越え方です。9条は3条から9条までの規定に反する借地権者に不利な特約を無効とし、16条は10条・13条・14条について同じことを定めています。この壁があるため、当事者の合意だけで更新のない借地権を作ることはできません。22条から24条は、法律自身が特定の場合について特定の効果に限って開けた穴です。条文が名指ししていない規定は残るという読み方が、この論点の中心になります。

    • 22条と23条1項は同じ越え方をします。どちらも「9条及び16条の規定にかかわらず」、契約の更新(更新の請求および土地の使用の継続によるものを含む)、建物の築造による存続期間の延長、13条の買取請求の三つを特約で外します。違いは、22条が期間50年以上と引き換えに用途を問わないのに対し、23条1項は用途を専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く)に絞ることで期間の下限を30年以上50年未満まで下げている点です。

    • 23条2項だけ書き方が違います。「3条から8条まで、13条及び18条の規定は、適用しない」という適用除外で、特約は不要です。期間を10年以上30年未満まで下げると存続期間を30年とする3条と正面から衝突するため、3条ごと外すほかなかったからです。そして23条3項が「前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない」としています。公正証書に限られるのは23条だけで、電磁的記録のみなし規定もありません。

    • 24条は16条を越えていません。「9条の規定にかかわらず」だけで、外しているのは更新に関する保護に限られます。建物を相当の対価で譲渡して借地権を消滅させる仕組みなので、13条の買取請求を外す必要がないからです。期間は設定後30年以上、用途の制限はなく、方式の定めもありません。1項括弧書きが除いているのは23条2項の借地権だけなので、普通借地権にも22条にも23条1項にも併用できます。そして24条2項が、借地権者または建物の賃借人の請求による法定の賃貸借(借地権者の請求で残存期間があればその期間、借賃は裁判所が定める)を、24条3項が38条1項の定期建物賃貸借への接続を用意しています。

    • 軸で並べると、期間は50年以上・30年以上50年未満・10年以上30年未満・30年以上。用途の制限は23条だけ。方式は公正証書(23条)、書面(22条)、定めなし(24条)。厳しい両端から埋めると真ん中が出てきます。終わり方は、22条・23条が更地で返還、24条が建物ごと譲渡です。

    • 定期借地権でも外れないものがあります。10条の対抗要件、11条の地代等増減請求権、17条・19条・20条の各許可、14条は、22条から24条のどこにも名指しされていません。とくに11条は、定期建物賃貸借について38条9項が32条の適用を明文で排除しているのと対照的に、借地にはこれに相当する規定がありません。また25条により、一時使用のために借地権を設定したことが明らかな場合には22条から24条まで自体が適用されません。

    • 取引の場面では、宅建業法施行規則16条の4の3第9号に一般定期借地権だけが挙がっています。同条の柱書により9号が適用されるのは宅地の貸借(8号から13号)と建物の貸借(7号から12号)で、売買・交換には適用されません。そして借地権について挙げられているのは22条1項の適用を受けるものだけで、23条も24条も挙がっていません。同じ号のなかに建物側の38条1項(定期建物賃貸借)と高齢者の居住の安定確保に関する法律52条1項(終身建物賃貸借)が並んでいます。

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    民法・借地借家法・区分所有法など、条文だけでは判断しづらい論点は、過去問の肢で覚えるのが最短です。

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