復代理と自己契約・双方代理|任せる側と任せない側
復代理人は本人の代理人です(106条1項)。任意代理と法定代理で選任要件が逆転する理由、108条が「無効」ではなく「無権代理とみなす」と書く意味を条文で整理します。
目次
この記事は、代理の応用論点である復代理と自己契約・双方代理・利益相反を扱います。代理の全体像、顕名、無権代理、表見代理の三類型は代理制度に、代理権の消滅事由と代理行為の瑕疵は代理権の消滅事由にあります。ここでは104条から106条までと108条に絞ります。
先に、二つの論点がなぜ同じ記事に入っているかを述べます。どちらも、代理人が一人で完結できない場面を扱っているからです。ただし、行き詰まる理由が正反対です。
復代理は、代理人が自分では手が回らないときの話です。だから他人に任せてよいか、任せたらどうなるかが問題になります。自己契約・双方代理は、代理人が任されすぎているときの話です。一人で両側に立ってしまうと本人の利益が守られないので、任せてはいけない場面を切り出します。任せる側と、任せない側。この対比で読んでください。
そのうえで、この分野の急所を三つ挙げます。
第一に、復代理人は本人の代理人です。106条1項は「復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する」と定めています。代理人の代理人ではありません。
第二に、選任の要件が任意代理と法定代理で逆転しています。104条により任意代理人は原則として選任できず、105条により法定代理人は自己の責任で選任できます。通常イメージする向きと逆なので、理由まで持っておく必要があります。
第三に、108条は「無効とする」と書いていません。「代理権を有しない者がした行為とみなす」です。無権代理とみなされるだけなので、本人が追認すれば有効になります。
以下、順に条文で確認します。分野全体の設計は権利関係の全体像で扱っています。
なお本記事は2026年4月1日時点で施行されている条文に基づきます。宅建試験は当該年度の4月1日現在施行の法令から出題されるためです。民法は令和8年法律第45号により2026年6月24日にも改正が施行されていますが、本則の条文に変更はなく、ここで扱う条文の文言はすべて同一です。
復代理人は本人の代理人である
まず、復代理人がどういう立場に立つかを確定させます。ここを取り違えると、以降の論点がすべてずれます。
復代理とは何か
復代理とは、代理人が、自分の代理権の範囲内で、さらに別の者を選任して本人を代理させることをいいます。選任された者を復代理人と呼びます。
たとえば、AがBに土地の売却について代理権を与え、BがCを復代理人に選任した場合、Cが買主と契約を結びます。
106条1項 本人を代表する
106条1項はこう定めています。「復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。」
「本人を代表する」と書いてあります。「代理人を代表する」ではありません。
したがって、先の例でCがした契約の効果は、Bを経由せずAに直接帰属します。CはAの代理人であって、Bの代理人ではありません。
「復代理人は代理人の代理人である」という肢は誤りです。この分野で最も多い出題です。
名前から誤解が生まれる
なぜこれが繰り返し問われるのか。「復代理」という言葉が、代理の上にもう一段代理が積み重なる印象を与えるからです。
実際の構造は違います。Bが持っている代理権を土台にして、Cにも本人を代理する権限が与えられるという形です。二段に積み上がるのではなく、本人に向かう線が二本になると考えてください。
106条2項 権利義務も代理人と同一
2項はこう定めています。「復代理人は、本人及び第三者に対して、その権限の範囲内において、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。」
復代理人は、その権限の範囲内では代理人と同じ立場に立ちます。本人に対して受け取ったものを引き渡す義務を負い、本人に対して費用の償還などを求める権利も持ちます。本人との間に直接の権利義務関係が生じるという点でも、復代理人が本人の代理人であることが表れています。
権限は代理人の代理権の範囲内に限られる
もっとも、復代理人が持てる権限には上限があります。代理人が持っている代理権の範囲を超えることはできません。
106条1項も2項も「その権限内の行為について」「その権限の範囲内において」と、権限による限定を明示しています。自分が持っていない権限を他人に与えることはできないのですから、当然の帰結です。
代理人が売却の代理権しか持っていないのに、復代理人が賃貸借契約を結んでも、それは無権代理です。無権代理の処理は代理制度で扱っています。
代理人の代理権は消滅しない
復代理人を選任しても、代理人自身の代理権は消滅しません。代理人と復代理人の代理権が併存します。
「代理人が復代理人を選任すると、代理人の代理権は消滅する」という肢は誤りです。選任は、権限を譲り渡す行為ではなく、権限を増やす行為だと理解してください。だから代理人は、復代理人を選任した後も自分で代理行為ができます。
逆方向は成り立ちます。代理人の代理権が消滅すれば、それを土台としていた復代理権も消滅します。代理権の消滅事由は代理権の消滅事由で扱っています。
任意代理人は原則として選任できない(104条)
次に、誰がどういう場合に復代理人を選任できるかです。
104条の文言
104条はこう定めています。「委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。」
「委任による代理人」は任意代理人のことです。条文は否定形で書かれています。「〜でなければ、選任することができない」。原則は選任できないという建て付けです。
選任できるのは二つの場合だけ
例外は二つです。
本人の許諾を得たとき。本人が同意しているのだから、問題はありません。許諾は個別の復代理人について得る必要はなく、あらかじめ包括的に得ておくこともできます。
やむを得ない事由があるとき。代理人が急病になった、災害で現地に行けなくなったといった、本人の許諾を得る余裕もなく、かつ代理人が自分では処理できない事情です。単に忙しいというだけでは足りません。
なぜ原則として選任できないのか
理由は、任意代理が本人と代理人の信頼関係の上に成り立っているからです。
任意代理では、本人が「この人なら任せられる」と考えて代理権を与えています。選んだのは本人であり、選ばれたのは特定の個人です。その代理人が勝手に別の人物に本人の財産の処分を任せてよいとすれば、本人の選択が意味を失います。
だから原則として認められず、本人が改めて同意した場合か、本人に確認する余裕がないほど切迫した事情がある場合に限られます。
委任契約の性質から見ても同じ
任意代理の基礎にある委任契約は、643条が「委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる」と定めるとおり、当事者間の信頼を前提とする契約です。
644条は「受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う」として、受任者自身が事務を処理することを前提にした義務を定めています。受任者が自分でやることが原則なのですから、復代理人の選任が制限されるのは筋が通っています。委任契約の規律は委任と請負で扱っています。
法定代理人は自己の責任で選任できる(105条)
任意代理とは逆になります。
105条の文言
105条はこう定めています。「法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。」
前段が選任の要件、後段が責任の範囲です。
選任は自由にできる
前段は「自己の責任で復代理人を選任することができる」です。本人の許諾もやむを得ない事由も要求されていません。
104条が「〜でなければ、選任することができない」と否定形で書かれているのに対し、105条は「選任することができる」と肯定形です。同じ制度について、条文の書きぶりが正反対になっています。
「法定代理人が復代理人を選任するには、本人の許諾が必要である」という肢は誤りです。
「自己の責任で」は責任の重さを意味する
前段の「自己の責任で」は、選任の自由と引き換えに、復代理人の行為について全面的に責任を負うという意味です。
自由に選べる代わりに、選んだ結果は自分で引き受ける。選任の自由と責任の重さがセットになっています。
後段による軽減
ただし後段があります。「この場合において、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。」
やむを得ない事由があって復代理人を選任した場合には、責任が選任と監督についてのものに限定されます。復代理人の行為そのものについてまでは責任を負いません。
やむを得ない事由の位置に注意してください。任意代理では「やむを得ない事由」が選任できるかどうかの要件でしたが、法定代理では責任が軽くなるかどうかの要件です。同じ言葉が、条文によって働く場所が違います。ここは入れ替えて出題されます。
二つが逆転している理由
なぜ法定代理のほうが自由なのか。直感に反するので、理由を持っておく必要があります。
第一に、法定代理人は自分で辞められません。任意代理人は651条1項により「いつでも」委任を解除でき、そうすれば代理権が消滅します。これに対し後見人は、844条により「正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て」でなければ辞任できません。親権者も同様に、簡単に親権を手放すことはできません。逃げ道がない以上、他人に任せる道を塞ぐわけにはいきません。
第二に、法定代理人の職務は広範で長期にわたります。未成年者の財産管理は成年に達するまで続き、成年後見も本人の判断能力が回復するまで続きます。824条は親権者について「子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する」、859条1項は後見人について同様に定めており、扱う範囲は包括的です。すべてを一人で処理し続けることは現実的ではありません。
第三に、本人が代理人を選んでいません。任意代理で選任が制限される根拠は「本人が特定の人を選んだ」ことにありました。法定代理では、代理人を決めるのは法律や家庭裁判所であって本人ではありません。保護すべき本人の選択が、そもそも存在しないのです。
選任の自由がある代わりに責任が重い(法定代理)。選任の自由がない代わりに責任は一般原則どおり(任意代理)。この釣り合いで理解してください。制限行為能力者と保護者の関係は制限行為能力者制度で扱っています。
改正で条文番号が繰り上がり、責任の規定が消えた
この分野は、改正で条文番号が動いた数少ない領域です。古い教材を使っていると番号がずれ、しかも責任の処理まで変わります。
旧105条は削除された
改正前の105条は、復代理人を選任した代理人の責任を定める条文でした。
「代理人は、前条の規定により復代理人を選任したときは、その選任及び監督について、本人に対してその責任を負う。」(旧105条1項)
「代理人は、本人の指名に従って復代理人を選任したときは、前項の責任を負わない。ただし、その代理人が、復代理人が不適任又は不誠実であることを知りながら、その旨を本人に通知し又は復代理人を解任することを怠ったときは、この限りでない。」(旧105条2項)
この条文はまるごと削除されました。
番号が一つずつ繰り上がった
旧105条が削除された結果、後続の条文が繰り上がっています。
旧106条(法定代理人による復代理人の選任)が現行105条になりました。文言も変わっており、旧106条後段は「前条第一項の責任のみを負う」と旧105条1項を引用していましたが、引用先が消えたので、現行105条後段は「本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う」と書き下されています。
旧107条(復代理人の権限等)が現行106条になりました。あわせて2項に「その権限の範囲内において」という文言が加えられています。旧107条2項は「復代理人は、本人及び第三者に対して、代理人と同一の権利を有し、義務を負う」で、権限による限定が明示されていませんでした。
104条だけは番号も文言も変わっていません。
古い番号で覚えていないか確認する
したがって、「法定代理人による復代理人の選任は106条」「復代理人の権限は107条」と覚えていたら、それは改正前の番号です。現行法では105条と106条です。
さらに紛らわしいことに、現行107条は代理権の濫用という別の条文になっています。旧107条が復代理人の権限だったところに、改正で新設された代理権の濫用の規定が入りました。番号だけで思い出そうとすると取り違えます。改正点の全体像は民法改正のポイントにあります。
削除の結果、任意代理人の責任は一般原則による
旧105条1項は、任意代理人の責任を「選任及び監督について」に限定していました。復代理人が本人に損害を与えても、代理人は選任と監督に落ち度がなければ責任を負わなかったのです。
現行法にはこの限定がありません。削除された以上、任意代理人の責任は、委任契約上の債務不履行として一般原則で処理されます。644条の善管注意義務に違反したかどうかを、事案に即して判断することになります。
したがって「任意代理人は復代理人の選任・監督についてのみ責任を負う」という記述は、現行法の条文には対応していません。古い教材にそのまま残っている典型例です。
旧105条2項の免責もなくなった
旧105条2項は、本人が指名した復代理人を選任した場合に、代理人を原則として免責していました。本人が指名したのだから代理人の責任を問うのは酷だ、という趣旨です。
この規定も削除されています。もっとも、本人が指名した人物を選任したという事情は、善管注意義務違反があったかどうかの判断のなかで考慮されうる要素として残ります。条文上の免責規定がなくなったという点を押さえてください。
法定代理人の責任は105条に残っている
一方、法定代理人については、責任の規定が現行105条後段として残っています。原則は「自己の責任で」全面的に、やむを得ない事由があるときは選任及び監督についてのみ。
任意代理人については条文がなくなり、法定代理人については条文が残った。この非対称も、改正の結果として生じたものです。
自己契約と双方代理(108条1項)
ここから後半に入ります。代理人が一人で両側に立つ場面の規律です。
二つの類型
自己契約とは、代理人が本人を代理しつつ、自分自身が契約の相手方になることです。AがBの代理人として、B所有の土地をA自身が買い受ける、という形です。
双方代理とは、同一人が契約の当事者双方の代理人になることです。Cが売主Dの代理人であると同時に買主Eの代理人にもなり、DE間の売買契約を締結する、という形です。
108条1項の文言
108条1項はこう定めています。
「同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。」
前段が自己契約、中段が双方代理です。「同一の法律行為について」という限定が両方にかかっています。
なぜ禁止されるのか
理由は利益の対立にあります。
代理人は本人の利益のために行動すべき立場にあります。ところが自己契約では、代理人自身が取引の相手方です。安く買いたい自分と、高く売りたい本人の利益が、一人の中で衝突します。代理人が本人の利益を犠牲にして自分の利益を図るおそれが構造的にあります。
双方代理も同じで、売主の利益と買主の利益を一人が同時に代表することはできません。どちらかを立てれば他方が倒れます。
現実に本人が損をしたかどうかは問いません。そういう立場に立つこと自体が禁じられています。個別に損害の有無を審査するのでは、制度として機能しないからです。
「同一の法律行為について」
条文の限定を確認してください。禁じられているのは「同一の法律行為について」双方の代理人となることです。
別々の取引でそれぞれ別の当事者の代理人になることは、何ら問題ありません。同じ一つの契約の両側に立つことが禁じられています。
108条1項ただし書の二つの例外
ただし書は二つの場合を除外しています。「債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。」
債務の履行
すでに発生している債務を履行するだけの行為は、除外されます。
理由は、新たな利害の対立が生じないからです。債務の内容はすでに確定しており、代理人が裁量を働かせて一方を有利にする余地がありません。履行すべきものを履行するだけであれば、両側に立っても本人が害されることはない、という判断です。
典型例として挙げられるのが登記の申請です。売買契約が成立すれば、売主には所有権移転登記に協力する義務が、買主には登記を受ける権利が生じます。この登記申請を司法書士が売主・買主の双方から受任することは、すでに発生した債務の履行にあたると解されています。契約の中身を交渉する場面ではなく、決まったことを形にする場面だからです。登記手続の全体像は不動産登記で扱っています。
本人があらかじめ許諾した行為
本人が事前に同意していれば、除外されます。
108条が守ろうとしているのは本人の利益です。その本人が納得しているなら、保護する必要がありません。
注意すべきは「あらかじめ」という文言です。行為の前に許諾を得ていることが要件であり、事後の承諾はここでいう許諾に当たりません。
もっとも、事後に何もできないわけではありません。許諾がないままされた行為は無権代理とみなされるので、本人が追認すれば有効になります。「あらかじめ許諾していないと救済されない」という結論にはなりません。この点は次章で扱います。
双方代理では「双方の本人」の許諾が要る
許諾による除外を双方代理で使う場合、両方の本人から許諾を得る必要があります。
条文は「本人があらかじめ許諾した行為」としており、双方代理では本人が二人います。一方だけが許諾しても、許諾していない側の本人との関係では無権代理のままです。「一方の本人が許諾していれば双方代理が許される」という肢は誤りです。
108条2項の利益相反(改正で新設)
1項は形式的な二類型を並べたものです。それに当てはまらなくても実質的に利益が対立する場面を拾うのが2項です。
2項の文言
「前項本文に規定するもののほか、代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない。」
1項と2項の関係
1項が形式基準、2項が実質基準です。
1項は「相手方の代理人として」「当事者双方の代理人として」という外形で切っています。当てはまるかどうかは形式的に判定できます。
2項は「代理人と本人との利益が相反する行為」という実質で切っています。1項の形には当てはまらないが、代理人と本人の利益が対立している場面を受け皿として捉えます。
「前項本文に規定するもののほか」で始まっているとおり、2項は1項の外側を埋める規定です。
2項のただし書には「債務の履行」がない
ここが最も精密に読むべき箇所です。
1項ただし書は「債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為」と、二つを除外しています。
2項ただし書は「本人があらかじめ許諾した行為」だけです。債務の履行が入っていません。
同じ条文の中で、1項と2項でただし書の中身が書き分けられています。「利益相反行為であっても、債務の履行であれば108条2項の適用がない」という肢は、条文にない除外を持ち込んだもので誤りです。
なぜ書き分けられているかも理解できます。1項の債務の履行は、外形上は双方代理だが実質的な対立がない、という場面を救うためのものです。2項はそもそも「利益が相反する行為」を要件としているので、実質的な対立がないなら2項の要件を満たさず、除外規定を置く必要がありません。
2項は改正で新設された
改正前の108条には2項がありませんでした。条文は一項だけで、表題も「自己契約及び双方代理」でした。現行法の表題は「自己契約及び双方代理等」です。
改正前は、自己契約・双方代理に当たらない利益相反行為をどう扱うかが条文になく、解釈に委ねられていました。現行法は2項として明文化しています。「利益相反行為の規律は判例による」という説明は、現行法では不正確です。
「みなす」の意味——無効ではない
108条の効果を正確に読みます。ここを外すと、追認の可否で必ず間違えます。
条文は「無効とする」と書いていない
1項も2項も、効果を「代理権を有しない者がした行為とみなす」としています。
「無効とする」でも「取り消すことができる」でもありません。無権代理として扱う、というのが条文の定めた効果です。
「双方代理でされた契約は無効である」という肢は誤りです。
みなされた結果、無権代理の規定が適用される
無権代理とみなされる以上、113条以下がそのまま働きます。
113条1項は「代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない」と定めています。裏を返せば、本人が追認すれば効力を生じます。
116条は「追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。」と定めています。追認には遡及効があります。
したがって、双方代理でされた契約であっても、本人が追認すれば契約の時にさかのぼって有効になります。「無効だから追認しても有効にならない」という筋にはなりません。
相手方に与えられる権利も同じ
無権代理とみなされる以上、相手方の側の規定も働きます。114条の催告権、115条の取消権、117条の無権代理人の責任です。これらの詳細は代理制度で扱っています。
改正前は「してはならない」だった
ここも改正点です。改正前の108条は「同一の法律行為については、相手方の代理人となり、又は当事者双方の代理人となることはできない」という禁止の形で書かれており、違反した場合の効果は書かれていませんでした。
効果が解釈に委ねられていたため、無効なのか無権代理なのかが議論になりえました。現行法は効果まで条文に書き込んでいるので、条文どおりに処理すれば足ります。
107条も同じ「みなす」を使っている
代理権の濫用を定める107条も、「その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす」という同じ効果を採用しています。
代理権の範囲内の行為なのに無権代理として扱うという点で、107条と108条は同じ構造を持っています。107条は代理人の目的(主観)で切り、108条は代理人の立場(形式・実質)で切る、という違いです。107条の詳細は代理制度にあります。
無効と取消しと無権代理は、いずれも「効力が完全には生じない」状態ですが、条文上の扱いは別です。無効と取消しの区別は無効と取消しの違いで扱っています。
親権者・後見人の利益相反には別の条文がある
法定代理については、108条とは別に、家族法の側に専用の規定が置かれています。手当ての仕方が違うので、あわせて押さえてください。
826条 親権者の利益相反
826条1項はこう定めています。「親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。」
2項は子どもが複数いる場合の規定です。「親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。」
108条が「無権代理とみなす」という効果で処理するのに対し、826条は「特別代理人を選任せよ」という手続で処理します。代わりに行為する人を立てるという解決です。
2項の「その一方のために」も落とさないでください。子ども二人の利益が対立する場合、両方に特別代理人を立てるのではなく、一方のために立てれば足ります。
860条 後見人への準用
860条は「第八百二十六条の規定は、後見人について準用する。ただし、後見監督人がある場合は、この限りでない。」と定めています。
後見人と被後見人の利益が相反する場合も、原則として特別代理人の選任を請求します。ただし後見監督人がいれば、その必要はありません。
理由は851条にあります。851条は後見監督人の職務を四つ挙げており、その4号が「後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること」です。後見監督人が特別代理人の役割を果たすので、別に選任する必要がないという仕組みです。
条文の使い分け
任意代理の利益相反は108条、親権者は826条、後見人は860条(後見監督人がいれば851条4号)。代理の類型によって、置かれている条文が違います。
宅建試験で正面から問われるのは108条ですが、「利益相反ならすべて108条で処理する」と思い込まないでください。法定代理には専用の手続規定があります。
宅建業の実務では媒介と代理を分ける
不動産取引では、宅地建物取引業者が売主・買主の双方に関与する場面が日常的にあります。双方代理の禁止に触れないのかという疑問が生じますが、答えは条文の区別にあります。
媒介は代理ではない
643条は「委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる」と定めています。委任は法律行為の委託です。
これに対し656条は「この節の規定は、法律行為でない事務の委託について準用する」として、準委任を定めています。
媒介は、契約の成立に向けて尽力する事務であって、業者自身が契約を締結するものではありません。契約を結ぶのは売主と買主自身です。業者は代理権を持たないので、108条の適用対象になりません。
したがって、一つの取引で売主と買主の双方から媒介を受託すること(双方媒介)は、双方代理には当たりません。
代理を受託する場合は108条が働く
一方、宅地建物取引業者が代理を受託する場合は話が違います。業者が本人に代わって契約を締結するのですから、108条の適用があります。
宅地建物取引業法もこの二つを区別しています。34条の2が媒介契約について書面の交付や有効期間などを定め、34条の3が「前条の規定は、宅地建物取引業者に宅地又は建物の売買又は交換の代理を依頼する契約について準用する」として、代理契約に準用しています。別の契約類型として立てたうえで、規制を準用するという構造です。媒介契約の類型は媒介契約の3類型で扱っています。
報酬の上限も媒介と代理で違う
区別は報酬にも表れます。46条1項は「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる」とし、3項でこれを告示することを定めています。
その告示によれば、売買・交換の代理について依頼者から受けられる報酬は、媒介の計算方法により算出した金額の2倍以内です。ただし、業者が相手方からも報酬を受ける場合には、その合計額が媒介の2倍を超えてはならないとされています。
代理だから青天井に受け取れるわけではなく、双方から受けても合計に上限がかかる。報酬規制の詳細は報酬額の制限で扱っています。
試験での出題ポイント
復代理人を「代理人の代理人」とする
この分野で最も多い型です。106条1項は「復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する」と定めています。効果も本人に直接帰属します。「復代理人の行為の効果は代理人に帰属し、代理人を通じて本人に及ぶ」という書き方も誤りです。
選任要件を逆にする
「任意代理人は自由に復代理人を選任できるが、法定代理人は本人の許諾が必要である」という肢は、104条と105条を入れ替えたものです。任意代理人は原則として選任できず(104条)、法定代理人は自己の責任で選任できます(105条)。
「やむを得ない事由」の働く場所をずらす
任意代理では選任できるかどうかの要件(104条)、法定代理では責任が軽くなるかどうかの要件(105条後段)です。「法定代理人は、やむを得ない事由があるときでなければ復代理人を選任できない」という肢は、104条の構造を105条に持ち込んだもので誤りです。
代理人の代理権が消滅するとする
「代理人が復代理人を選任すると、代理人自身の代理権は消滅する」という肢は誤りです。併存します。逆に、代理人の代理権が消滅すれば復代理権も消滅する、という方向は正しい記述です。
旧105条の責任限定を現行法として出す
「任意代理人は、復代理人の選任及び監督についてのみ責任を負う」という肢。これは削除された旧105条1項の内容です。現行法にこの限定はなく、債務不履行の一般原則で処理されます。同様に、「本人の指名に従って復代理人を選任した場合、代理人は責任を負わない」という旧105条2項の内容も、現行法にはありません。
108条違反を「無効」とする
「双方代理によってされた契約は無効であり、本人が追認しても有効にならない」という肢は誤りです。108条の効果は「代理権を有しない者がした行為とみなす」であり、113条1項により本人の追認で効力を生じ、116条により契約の時にさかのぼって有効になります。
108条2項のただし書に「債務の履行」を足す
「利益相反行為であっても、債務の履行にあたる場合は無権代理とみなされない」という肢は誤りです。2項ただし書は「本人があらかじめ許諾した行為」だけで、債務の履行は入っていません。1項ただし書と混ぜてくる形で出ます。
「あらかじめ」を落とす
「本人が許諾すれば自己契約も有効である」という書き方は、事後の承諾でよいと読めてしまいます。ただし書の文言は「あらかじめ許諾した行為」です。もっとも、事後であれば追認によって有効にできるので、結論として救済されるかどうかとは分けて考えてください。
双方代理で一方の許諾だけで足りるとする
双方代理では本人が二人います。両方から許諾を得る必要があります。一方だけの許諾では、他方との関係で無権代理のままです。権利関係の頻出論点は権利関係の頻出論点にまとめています。
覚え方・整理の仕方
「本人を代表する」を条文の言葉で持つ
復代理人の地位は、理屈より条文の言葉で持つほうが確実です。106条1項「復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。」
「代表する」という語が使われていること自体が手がかりになります。代理人を代表するのではなく、本人を代表する。この一文を暗唱できれば、この論点は落としません。
選任要件は「選んだのは誰か」で決まる
104条と105条が逆転している理由を、一文で持ちます。「本人が選んだ代理人なら勝手に替えられない。本人が選んでいない代理人なら替えてよい。」
任意代理は本人が選んだので原則不可(104条)。法定代理は法律や家庭裁判所が決めたので自由(105条)。逆転しているのではなく、本人の選択を尊重するという一つの理屈から両方が出ています。
自由と責任はセット
もう一つ、責任の側から見た覚え方も添えておきます。「自由に選べる法定代理人は責任が重く、自由に選べない任意代理人は責任が一般原則どおり。」
選任の自由と責任の重さが釣り合っていると理解すれば、105条前段の「自己の責任で」が単なる修飾ではなく、責任の重さを宣言した文言だと分かります。
番号は「104・105・106」で連続させる
改正で番号が動いた分野なので、現行の三つを連番で持ってください。
104条が任意代理人の選任、105条が法定代理人の選任と責任、106条が復代理人の権限。そして107条は代理権の濫用で、復代理とは無関係です。
「105条は代理人の責任」「106条は法定代理人の選任」「107条は復代理人の権限」と覚えていたら、それは改正前の番号です。
108条は「1項は形、2項は中身」
108条の二項構成は、切り口の違いで覚えます。1項が形式(自己契約・双方代理という外形)、2項が実質(利益が相反するかどうか)。
そしてただし書の中身が違うことを足します。1項は「債務の履行」と「あらかじめの許諾」の二つ、2項は「あらかじめの許諾」だけ。「1項は二つ、2項は一つ」と数で持てば取り違えません。
効果は三つとも「みなす」
107条(代理権の濫用)、108条1項、108条2項。この三つはすべて「代理権を有しない者がした行為とみなす」で終わります。
みなされた先は無権代理なので、追認できる(113条1項)、遡及する(116条)。「無効」と書いてある条文ではないことを、効果の書きぶりごと覚えてください。苦手分野の潰し方は権利関係の苦手克服で扱っています。
理解度チェッククイズ
問1 復代理人は代理人によって選任された者であるから、代理人の代理人であり、復代理人がした行為の効果は、まず代理人に帰属する。
答え:×。106条1項は「復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する」と定めています。復代理人は本人の代理人であって、代理人の代理人ではありません。したがって復代理人がした行為の効果は、代理人を経由せず直接本人に帰属します。同条2項も「復代理人は、本人及び第三者に対して、その権限の範囲内において、代理人と同一の権利を有し、義務を負う」として、本人との間に直接の権利義務関係が生じることを示しています。「復代理」という名称から代理が二段に積み重なる印象を受けますが、実際には本人に向かう線が二本になる構造です。なお、復代理人の権限は代理人の代理権の範囲内に限られ、また復代理人を選任しても代理人の代理権は消滅せず、両者は併存します。
問2 法定代理人が復代理人を選任するには、本人の許諾を得るか、やむを得ない事由があることが必要である。
答え:×。104条と105条を入れ替えた肢です。本人の許諾またはやむを得ない事由を要求しているのは104条で、対象は「委任による代理人」すなわち任意代理人です。法定代理人については105条前段が「法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる」と定めており、要件は課されていません。条文の書きぶりも、104条が「〜でなければ、選任することができない」という否定形、105条が「選任することができる」という肯定形で、正反対です。逆転の理由は三つあります。法定代理人は844条のとおり正当な事由と家庭裁判所の許可がなければ辞任できず逃げ道がないこと、職務が広範で長期にわたること、そして本人が代理人を選んでいないため保護すべき本人の選択が存在しないことです。なお105条後段により、やむを得ない事由があるときは責任が選任及び監督についてのものに限定されます。「やむを得ない事由」は、任意代理では選任の要件、法定代理では責任軽減の要件として働きます。
問3 代理人が本人の許諾を得ずに双方代理をした場合、その契約は無効であり、本人が後から追認しても有効にはならない。
答え:×。108条1項は「同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす」と定めています。「無効とする」ではありません。無権代理とみなされる以上、113条1項により「本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない」という状態にとどまり、本人が追認すれば効力を生じます。しかも116条により「追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる」ので、遡及的に有効になります。改正前の108条は「〜となることはできない」という禁止の形で書かれ効果が明示されていませんでしたが、現行法は効果まで条文に書き込んでいます。なお、代理権の濫用を定める107条も同じ「代理権を有しない者がした行為とみなす」という効果を採用しています。
問4 代理人と本人との利益が相反する行為であっても、それが債務の履行にあたる場合には、代理権を有しない者がした行為とみなされることはない。
答え:×。108条1項ただし書と2項ただし書の書き分けを問う肢です。1項ただし書は「債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない」と二つを除外していますが、2項ただし書は「本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない」だけで、債務の履行は入っていません。同じ条文の中で意識的に書き分けられているので、2項に1項の除外を持ち込むことはできません。理屈のうえでも説明がつきます。1項の「債務の履行」は、外形上は双方代理だが実質的な利益の対立がない場面を救うための除外です。これに対し2項はそもそも「利益が相反する行為」であることを要件としているため、実質的な対立がなければ2項の要件自体を満たさず、除外規定を置く必要がありません。なお2項は改正で新設された規定で、改正前の108条は一項だけでした。
問5 宅地建物取引業者が、一つの売買取引について売主と買主の双方から媒介の依頼を受けることは、双方代理として禁止される。
答え:×。媒介は代理ではありません。643条は委任を「法律行為をすることを相手方に委託し」と定め、656条は「法律行為でない事務の委託」について同節の規定を準用するとしています。媒介は契約の成立に向けて尽力する事務であり、業者自身が契約を締結するわけではなく、契約を結ぶのは売主と買主自身です。業者は代理権を持たないため、108条の適用対象になりません。したがって双方媒介は双方代理に当たりません。宅地建物取引業法も両者を区別しており、34条の2が媒介契約について定め、34条の3が「前条の規定は、宅地建物取引業者に宅地又は建物の売買又は交換の代理を依頼する契約について準用する」として、代理契約を別に立てたうえで規制を準用しています。これに対し業者が代理を受託する場合には、108条の適用があります。報酬についても区別があり、46条1項の委任を受けた告示により、売買・交換の代理の報酬は媒介の計算方法により算出した金額の2倍以内、相手方からも受ける場合はその合計が2倍を超えてはならないとされています。
まとめ
復代理人は本人の代理人である。106条1項は「復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する」と定めており、効果は代理人を経由せず直接本人に帰属します。2項により、本人および第三者との関係で代理人と同一の権利義務を持ちます。権限は代理人の代理権の範囲内に限られ、復代理人を選任しても代理人の代理権は消滅しません。
選任要件は任意代理と法定代理で逆転している。104条により任意代理人は「本人の許諾」または「やむを得ない事由」がなければ選任できず、105条により法定代理人は「自己の責任で」自由に選任できます。理由は「本人が代理人を選んだかどうか」の一点で、法定代理人は辞任も自由でなく(844条)、職務も広範だという事情が重なります。
「やむを得ない事由」は条文によって働く場所が違う。任意代理では選任できるかどうかの要件(104条)、法定代理では責任が軽くなるかどうかの要件(105条後段)です。
条文番号は改正で繰り上がった。旧105条(代理人の責任)が削除され、旧106条が現行105条、旧107条が現行106条になりました。現行107条は代理権の濫用という別の規定です。あわせて、任意代理人の責任を選任・監督に限定していた旧105条1項と、本人の指名による免責を定めた旧105条2項は現行法にありません。
108条1項は自己契約と双方代理を無権代理とみなす。ただし書で「債務の履行」と「本人があらかじめ許諾した行為」が除外されます。双方代理で許諾による除外を使うには、双方の本人から許諾を得る必要があります。
108条2項は利益相反行為を拾う受け皿である。1項が形式基準、2項が実質基準です。2項ただし書には「債務の履行」がなく、「本人があらかじめ許諾した行為」だけが除外されます。2項は改正で新設されました。
効果は「みなす」であって「無効」ではない。107条・108条1項・108条2項はいずれも「代理権を有しない者がした行為とみなす」で終わります。したがって113条1項により本人の追認で効力を生じ、116条により契約の時にさかのぼって有効になります。
法定代理の利益相反には専用の条文がある。親権者は826条で特別代理人の選任を家庭裁判所に請求し、後見人は860条で準用されますが、後見監督人がいる場合は851条4号により後見監督人が被後見人を代表するため、選任の請求は不要です。
よくある質問
Q. 復代理人がさらに復代理人を選任することはできますか。
A. 復代理人も、その権限の範囲内で本人を代理する立場にあります。104条が「委任による代理人は」と定めていることからすれば、復代理人が任意代理人にあたる場合には、本人の許諾またはやむを得ない事由がなければ、さらに復代理人を選任することはできないという扱いになります。もっとも、宅建試験でこの応用が正面から問われることはまずありません。まずは104条から106条までの三か条を正確に押さえてください。
Q. 本人の許諾を得て復代理人を選任した場合、代理人はもう責任を負わないのですか。
A. そうはなりません。許諾は「選任してよい」という同意であって、「その後の結果について責任を問わない」という免責ではありません。任意代理人については、旧105条が削除された現在、委任契約上の善管注意義務(644条)に違反したかどうかを一般原則で判断します。本人が復代理人を指名していた場合に代理人を免責する旧105条2項の規定も削除されているので、条文上の免責はありません。選任できることと、責任を負わないことは別です。
Q. 自己契約が禁止されるなら、代理人が本人から物を買うことは一切できないのですか。
A. できないわけではありません。108条1項ただし書により、本人があらかじめ許諾していれば自己契約は無権代理とみなされません。また、許諾を得ていなくても無権代理とみなされるにとどまるので、本人が追認すれば契約の時にさかのぼって有効になります(113条1項・116条)。禁じられているのは、本人の意思を確認しないまま代理人が一人で両側に立つことであって、本人が納得して取引することまでは妨げられていません。
Q. 108条2項の「利益が相反する行為」は、どうやって判断するのですか。
A. 条文は判断の方法を定めていません。「代理人と本人との利益が相反する行為」という要件だけが置かれています。宅建試験で問われるのは、2項という受け皿が存在すること、効果が無権代理とみなすことであること、そしてただし書が「あらかじめの許諾」だけであることの三点が中心です。細かい当てはめが単独で問われることはまれなので、まず条文の構造を固めてください。なお、親権者と子の利益相反については826条、後見人と被後見人については860条という専用の規定があり、そちらは特別代理人の選任という手続で処理されます。
Q. 双方代理と双方媒介は、報酬の面でどう違いますか。
A. 46条1項を受けた告示により、売買・交換の媒介では依頼者の一方から受けられる報酬に上限があり、代理では媒介の計算方法により算出した金額の2倍以内とされています。ただし代理の場合、業者が相手方からも報酬を受けるときは、その合計額が媒介の2倍を超えてはなりません。双方媒介で双方から受け取る場合も、それぞれの依頼者について上限が働きます。代理だから制限なく受け取れるということはありません。報酬計算の詳細は報酬額の制限で扱っています。
Q. 復代理人が本人に損害を与えた場合、本人は誰に請求できますか。
A. 複数の相手が考えられます。まず復代理人自身に対しては、106条2項により本人との間に直接の権利義務関係があるため、その義務違反を理由に請求できます。次に代理人に対しては、任意代理であれば委任契約上の債務不履行として、法定代理であれば105条の責任として請求できます。法定代理人の責任は原則として「自己の責任で」全面的なものですが、やむを得ない事由により選任した場合は選任及び監督についてのものに限られます。債務不履行による責任の一般論は債務不履行で扱っています。
宅建試験AIブートラボのアプリでは、この記事で扱った106条1項の復代理人の地位、104条と105条の選任要件の逆転、108条の「みなす」の効果、1項と2項のただし書の違いといった論点を、肢別トレーニングと年度別過去問演習で確認できます。
民法・借地借家法・区分所有法など、条文だけでは判断しづらい論点は、過去問の肢で覚えるのが最短です。