根抵当権|付従性を外した担保という設計
根抵当権を普通抵当権との差分で整理します。付従性と随伴性を外した代償に何が要求されるのか、375条の2年分制限が働かない理由、変更ごとに違う承諾の要否、全部譲渡と分割譲渡、元本確定後の減額請求と消滅請求までを条文根拠つきで解説。
目次
本記事の役割 — 根抵当権を、普通抵当権との差分に絞って整理します。抵当権そのものの設定・効力・第三取得者は抵当権の基本、実行と配当の計算は抵当権の実行と配当にあります。
ここでは、根抵当権にしかない条文(民法398条の2から398条の22まで)を扱います。条文番号はすべて民法のものです。
根抵当権の条文は21本あり、枝番号が続くため取り違えやすい領域です。しかしすべての規定が一つの発想から出ています。
先に結論を三つ述べます。
第一に、根抵当権は普通抵当権から付従性を外した制度です。普通抵当権は特定の債権を担保するので、その債権が消えれば抵当権も消えます。継続的な取引では債権が発生と消滅を繰り返すため、これでは使えません。そこで個々の債権から切り離した「枠」を作ったのが根抵当権です。
第二に、付従性を外した代償として、枠の輪郭を先に確定させることが要求されます。担保される債権の範囲を限定して定めなければならず(398条の2第2項)、金額の上限として極度額を定めなければなりません(同条1項)。何を担保するか分からない担保物権は認められない、という要請への応答です。
第三に、元本が確定すると、根抵当権は普通抵当権に近づきます。確定前と確定後で適用される条文が入れ替わるため、事案を読むときはまず確定の前か後かを決めることが出発点になります。
宅建試験での位置づけを先に言っておきます
はじめに、学習の重みづけについて正直に書きます。根抵当権は毎年出る論点ではありません。それどころか、当サイトが保有する2016年度から2025年度までの本試験データで確認すると、この10年間の権利関係560肢のうち、根抵当権を扱った肢は一つもありません。抵当権に触れる肢はこの間に相当数ありますが、その中身は設定・効力の及ぶ範囲・法定地上権・第三取得者・配当といった普通抵当権の論点です。
なお、同じ「極度額」という語が出てくる肢は2020年度と2025年度にありますが、いずれも個人根保証契約の極度額(465条の2)の話で、根抵当権ではありません。根保証も根抵当権も「一定範囲の不特定債権を極度額で担保する」という同じ発想の制度なので、極度額という言葉を見た瞬間に根抵当権だと決めつけないでください。保証の側の規律は連帯債務と保証にまとめてあります。
したがって、根抵当権に普通抵当権と同じだけの時間をかけるのは配分として誤りです。優先すべきは抵当権の基本と抵当権の実行と配当で、根抵当権はそのあとに置く論点です。権利関係全体のなかでの位置づけは権利関係の全体像と権利関係の頻出論点を参照してください。
それでも本記事を用意しているのは、出題されないことと出題されうることが違うからです。根抵当権は民法に21か条が置かれた正規の制度で、宅建試験の出題範囲から外れているわけではありません。10年出ていないということは、次に出たときに多くの受験生が落とすということでもあります。差がつくのはそういう論点です。
そのうえで、出るときの出方は決まっています。根抵当権が単独で深く問われることはほとんどなく、「普通抵当権ならこうだが、根抵当権ではどうか」という対比の形で問われます。付従性はどうか、随伴性はどうか、利息は2年分に制限されるか、変更に承諾が要るか——出題はこの型の繰り返しです。
そこで本記事も、その型に合わせて組みます。普通抵当権ではこう、根抵当権ではこう、そう分かれるのはなぜか。この三点セットで各論点を書き、最後に対比を一覧できる形で整理します。条文を21本すべて暗記する必要はありませんが、どの条文が確定前の話でどれが確定後の話かという切り分けだけは押さえてください。それが分かっていれば、多くの肢はその場で判断できます。
なお、民法は令和8年法律第45号により2026年6月24日に改正・施行されていますが、本則に差分がないことが確認されています。本記事は2026年4月1日時点で施行されている版(129AC0000000089_20260401_506AC0000000033)によっており、どちらの版で読んでも内容は変わりません。
付従性を外すために何が必要だったか
普通抵当権では回らない場面がある
普通抵当権には付従性があります。特定の債権を担保するものなので、その債権が弁済によって消滅すれば抵当権も消滅します。住宅ローン1本に抵当権1個、という関係です。住宅ローンの仕組みそのものは住宅ローンの基礎知識にまとめてあります。
付従性は根抵当権を理解する出発点なので、意味を確認しておきます。担保物権に共通する性質は四つあり、被担保債権が成立しなければ担保物権も成立せず、被担保債権が消滅すれば担保物権も消滅するという付従性、被担保債権が移転すれば担保物権も一緒に移転するという随伴性、被担保債権の全部の弁済を受けるまで目的物の全部について権利を行使できるという不可分性、目的物の売却代金や賃料などに効力が及ぶという物上代位性です。四つの詳細と担保物権全体の見取り図は担保物権の全体像にあります。
根抵当権が外すのは、このうち付従性と随伴性の二つです。しかもそれは元本確定前に限った話で、確定後は二つとも復活します。外れているのは一時的という理解が、あとの条文を読むときに効いてきます。
ところが、事業者と銀行のあいだの継続的な融資では、借りては返し、また借りるという動きが繰り返されます。債権が消えるたびに抵当権が消滅し、新たな融資のたびに設定し直すのでは、登記の費用も手間も現実的ではありません。しかも設定し直すたびに順位が後ろに下がってしまいます。
具体的に考えると分かりやすくなります。ある会社が銀行から運転資金を借り、翌月に返済し、また借りるという取引を続けているとします。普通抵当権で処理するなら、借入れのたびに抵当権設定契約を結び、登記を申請し、返済のたびに抹消登記を申請することになります。年に12回借りるなら年24件の登記です。登録免許税も司法書士報酬もそのつどかかります。そして最悪なのは順位です。抵当権をいったん抹消すると、その間に別の債権者が抵当権を設定していれば、次に設定する抵当権はその後ろに回ります。担保の実質は変わっていないのに、順位だけが落ちていくという不合理が生じます。登記と順位の関係は不動産登記法を参照してください。
398条の2第1項が作った枠
398条の2第1項は「抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる」と定めています。
「不特定の債権」を担保できるという点が核心です。担保の対象が特定の債権ではないので、個々の債権が消えても担保は残ります。担保が個々の債権に従属していない、すなわち付従性が働かないということです。
外した代償に、枠を先に決めさせる
しかし、何を担保するのか分からない担保物権を認めると、後順位の抵当権者や第三取得者は、その不動産にどれだけの負担が乗っているのかを判断できなくなります。担保物権は登記によって公示され、第三者の行動の前提になるものだからです。
そこで条文は、付従性を外す代わりに二つの枠を要求します。金額の枠が極度額で、債権の種類の枠が被担保債権の範囲です。この二つは登記事項になり、公示されます。
付従性を外した代償として枠を先に確定させる。この構造を理解しておくと、以下の条文が何を守ろうとしているのかが見えます。
枠という発想が条文全体を説明する
この「枠」という見方を持っておくと、21本の条文がばらばらの規則ではなくなります。
被担保債権の範囲を限定させる398条の2第2項は、枠の横幅を決めさせる規定です。極度額を要求する398条の2第1項と398条の3第1項は、枠の高さを決めさせる規定です。変更に関する398条の4と398条の5が承諾の要否で分かれるのは、枠の外形が動くかどうかの違いです。元本確定の規定群は、枠を閉じて中身を数える手続です。確定後の減額請求と消滅請求は、中身が入りきった後で枠が大きすぎるときの調整です。
つまり条文は、枠を作る、枠を保つ、枠を閉じる、閉じた後の後始末、という順に並んでいます。398条の2から398条の6までが枠を作り保つ規定、398条の7から398条の18までが枠が開いている間の規律、398条の19と398条の20が閉じ方、398条の21と398条の22が後始末です。条文番号の順序がそのまま時間の順序になっているので、迷ったら「これは枠が開いている話か、閉じた後の話か」を先に決めてください。
被担保債権の範囲は限定しなければならない
包括根抵当は認められない
398条の2第2項は「前項の規定による抵当権(以下「根抵当権」という。)の担保すべき不特定の債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない」と定めています。
「限定して、定めなければならない」という書き方です。したがって、「債務者に対する一切の債権」というような包括的な定め方は認められません。これを包括根抵当といい、明文で否定されています。
具体的には、「銀行取引」「売買取引」といった取引の種類を示すか、特定の継続的取引契約を指定する形で定めます。同じ債務者に対する債権であっても、定めた範囲に属さないものは担保されません。
ここは実際の効果を押さえておくと肢を切りやすくなります。被担保債権の範囲を「銀行取引」と定めた根抵当権があり、その銀行が同じ債務者に対して銀行取引とは無関係の債権、たとえば銀行が債務者に社用車を売却した代金債権を持ったとします。この売買代金債権は担保されません。当事者が同じでも、定めた種類の取引から生じた債権でなければ枠の外です。担保させたいなら398条の4によって範囲を変更する必要があります。
なぜ包括根抵当が禁じられるのかも、枠の発想から説明できます。「債務者に対する一切の債権」を担保するという定めを許すと、後順位抵当権者や第三取得者は、その債務者と根抵当権者のあいだに今後どんな債権が生じうるかを一切予測できません。極度額という高さの枠はあっても、横幅が無限では、いつ枠が満杯になるか読めないということです。公示によって第三者が行動できる状態を作るという担保物権の前提が崩れるため、条文は「限定して、定めなければならない」と書きました。1項の「一定の範囲に属する」という文言と2項はセットです。
取引によらない債権にも例外がある
398条の2第3項が、2項の例外を置いています。特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権、手形上もしくは小切手上の請求権、または電子記録債権は、2項の規定にかかわらず根抵当権の担保すべき債権とすることができます。
手形や小切手の請求権は、債務者との取引によらずに第三者から取得することがあります。2項の「取引によって生ずるもの」という枠に収まらないため、3項で別枠を用意しているという関係です。
取引によらず取得した手形等には制限がある
もっとも、この別枠には歯止めがあります。398条の3第2項は、債務者との取引によらないで取得する手形上もしくは小切手上の請求権または電子記録債権を担保すべき債権とした場合において、次の事由があったときは、その前に取得したものについてのみ根抵当権を行使できるとしています。
事由は三つで、債務者の支払の停止、債務者についての破産手続開始・再生手続開始・更生手続開始または特別清算開始の申立て、抵当不動産に対する競売の申立てまたは滞納処分による差押えです。
ただし書により、その後に取得したものであっても、その事由を知らないで取得したものについては行使を妨げないとされています。債務者の危機を知った後に手形を買い集めて担保を膨らませることを防ぐ規定です。
この節の要点
- 被担保債権の範囲は限定して定めなければならず、包括根抵当は認められない(398条の2第2項)。
- 手形・小切手上の請求権と電子記録債権は例外的に担保できる(同条3項)。
- ただし債務者の危機時期以後に取得したものは、善意でない限り行使できない(398条の3第2項)。
極度額と、375条の2年分制限が働かない理由
398条の3第1項が定める範囲
398条の3第1項は「根抵当権者は、確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として、その根抵当権を行使することができる」と定めています。
「全部について」という文言に注目してください。元本も、利息も、遅延損害金も、区別なく担保されます。上限は極度額だけです。
普通抵当権との決定的な違い
普通抵当権では、375条1項が「抵当権者は、利息その他の定期金を請求する権利を有するときは、その満期となった最後の二年分についてのみ、その抵当権を行使することができる」と定めています。2項により、遅延損害金についても最後の2年分で、しかも利息その他の定期金と通算して2年分を超えられません。
根抵当権にはこの2年分の制限が働きません。極度額の枠内であれば、利息が何年分たまっていても優先弁済を受けられます。
理由は制度の設計から説明できます。375条の2年分制限は、登記から見込める担保価値を信頼した後順位抵当権者その他の第三者を保護するための規定です。普通抵当権では登記されるのが債権額なので、利息が無制限に積み上がると後順位者の予測が崩れます。
これに対し根抵当権では、極度額という上限そのものが登記で公示されています。後順位者は「この不動産にはこの極度額までの負担が乗っている」と分かるので、2年分という別の歯止めを置く必要がありません。
普通抵当権は「元本は全額、利息は2年分」、根抵当権は「極度額まで全部」。この対比は繰り返し問われます。配当計算での扱いは抵当権の実行と配当で詳しく扱っています。
極度額は枠であって債権額ではない
極度額は担保の上限であって、現に存在する債権の額ではありません。極度額3,000万円の根抵当権が設定されていても、現在の債務が500万円なら、実際に優先弁済を受けられるのは500万円です。逆に債務が4,000万円に膨らんでも、優先弁済を受けられるのは3,000万円までです。
枠の大きさと中身の量は別という理解が、後述する極度額の減額請求や消滅請求を読むときの前提になります。
登記簿上も、普通抵当権の登記には「債権額」が記録されるのに対し、根抵当権の登記には「極度額」が記録されます。債権額の欄がないのが根抵当権の登記の特徴です。加えて「債権の範囲」「債務者」が記録され、確定期日を定めた場合には「確定期日」も記録されます。登記記録の読み方そのものは登記簿の読み方にまとめてあります。
極度額を超えた分はどうなるか
極度額3,000万円の根抵当権で、確定した元本が2,800万円、利息と遅延損害金が合わせて400万円あったとします。合計3,200万円ですが、根抵当権によって優先弁済を受けられるのは3,000万円までです。
では残りの200万円が消えるかというと、そうではありません。債権そのものは消えず、無担保の一般債権として残ります。根抵当権によって優先弁済を受けられないだけで、債務者に対する請求はできますし、他の一般債権者と平等の立場で配当に参加することもできます。「極度額を超える部分の債権は消滅する」という肢は誤りです。
逆向きの誤りにも注意してください。「極度額を超える部分については、根抵当権者は債務者に請求できない」という言い方も誤りです。極度額は優先弁済の上限であって、債権の上限ではありません。この区別は、後で扱う398条の22の消滅請求が「現に存する債務の額が極度額を超えるとき」を要件としていることの前提でもあります。
元本確定前は付従性も随伴性も働かない
398条の7が四つの場面を並べている
398条の7は、元本確定前に個々の債権が動いても根抵当権は動かないことを、四つの場面について定めています。
1項前段は「元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない」としています。債権が譲渡されても根抵当権は付いていかない、すなわち随伴性が働かないということです。
1項後段は「元本の確定前に債務者のために又は債務者に代わって弁済をした者も、同様とする」としています。第三者弁済や保証人の弁済によって代位が生じても、根抵当権を行使することはできません。
2項は「元本の確定前に債務の引受けがあったときは、根抵当権者は、引受人の債務について、その根抵当権を行使することができない」としています。
3項は、元本確定前に免責的債務引受があった場合の債権者は、472条の4第1項の規定にかかわらず、根抵当権を引受人が負担する債務に移すことができないとしています。
4項は、元本確定前に債権者の交替による更改があった場合の更改前の債権者は、518条1項の規定にかかわらず根抵当権を更改後の債務に移すことができず、債務者の交替による更改の場合の債権者も同様であるとしています。
四つに共通する発想
一見ばらばらの四項ですが、共通しているのは個々の債権が誰かの手に渡っても、枠は動かないという一点です。
普通抵当権であれば、被担保債権が譲渡されれば随伴性によって抵当権も譲受人に移り、保証人が弁済すれば弁済による代位(499条・501条)によって抵当権を行使できるようになります。債権譲渡の一般ルールは債権譲渡と相殺、第三者弁済と弁済による代位は弁済と供託、債権が消滅する原因の全体は債権の消滅原因を参照してください。
根抵当権の元本確定前は、これがすべて遮断されます。理由は枠の性質から出ます。根抵当権は個々の債権に付いている担保ではなく、一定範囲の債権群を受け止める容器です。容器の中身が一つ外に出たからといって、容器そのものが分割されて付いていくわけにはいきません。もし付いていくとすれば、債権が一つ譲渡されるたびに根抵当権が細分化され、極度額の枠をどう分け合うのかが決まらなくなります。
だから398条の7は、譲渡(1項前段)、弁済による代位(1項後段)、債務引受(2項・3項)、更改(4項)と、債権が移動しうる経路を四つとも塞いだわけです。条文を丸暗記するより、「確定前に債権が動いても根抵当権は動かない、その経路を条文が数え上げているだけ」と理解するほうが確実です。
確定前の債権譲渡がどうなるかを具体化する
事案の形で確認します。銀行Aが債務者Bに対して極度額5,000万円の根抵当権を持ち、被担保債権の範囲を「銀行取引」と定めています。現在の債権残高は2,000万円です。ここでAがそのうち1,000万円の債権をCに譲渡しました。元本は確定していません。
このとき、Cは根抵当権を行使できません(398条の7第1項前段)。Cが取得したのは1,000万円の無担保の債権です。一方Aの側はどうかというと、Aの根抵当権はそのまま極度額5,000万円の枠として残ります。譲渡した1,000万円は枠から抜けますが、枠自体は縮みません。譲渡によって減るのは中身であって枠ではないという結論です。
この事案で「Cは1,000万円の限度で根抵当権を行使できる」「根抵当権は極度額4,000万円に縮減する」といった肢が作られます。いずれも誤りです。
もう一つ、元本確定後なら結論が反転します。確定後にAがCに債権を譲渡すれば、随伴性が働いてCは根抵当権を取得します。同じ「債権譲渡」でも、確定の前か後かだけで答えが逆になるので、問題文の時系列を必ず確認してください。
付従性が働かないことは条文にどう表れているか
随伴性については398条の7が明文で定めていますが、付従性については「個々の債権が消滅しても根抵当権は消滅しない」と直接書いた条文はありません。
これは398条の2第1項の「不特定の債権を担保する」という構造から導かれます。特定の債権に従属していないのだから、その債権が消えても担保は残る、という理屈です。したがって元本確定前に被担保債権がすべて弁済されても、根抵当権は消滅しません。新たな取引で債権が生じれば、それが担保されます。
確定後は普通抵当権に近づく
元本が確定すると、担保される債権が具体的に確定します。以後は新たな債権が担保されることはなく、確定した債権に従属する関係になります。付従性と随伴性が働くようになるということです。
したがって、確定後に被担保債権が譲渡されれば根抵当権も移転し、確定した債権がすべて消滅すれば根抵当権も消滅します。398条の7が「元本の確定前に」という限定を繰り返し置いているのは、この切り替わりを示すためです。
変更は三つに分かれ、承諾の要否が違う
根抵当権の変更は、何を変えるかによって条文も要件も違います。しかも隣り合う条文で結論が逆になるので、対比として整理しておく価値が最も高い箇所です。
被担保債権の範囲と債務者の変更(398条の4)
398条の4第1項は「元本の確定前においては、根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができる。債務者の変更についても、同様とする」と定めています。
そして2項が「前項の変更をするには、後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しない」としています。
承諾が不要である理由は、極度額が動かないからです。担保される債権の中身が入れ替わっても、後順位者から見た負担の総額は極度額のままで変わりません。予測が崩れないので、承諾を求める必要がないという整理になります。
3項が期限を切っています。「第一項の変更について元本の確定前に登記をしなかったときは、その変更をしなかったものとみなす」。変更の効力を維持するには確定前に登記まで済ませる必要があり、間に合わなければ変更はなかったことになります。
極度額の変更(398条の5)
398条の5は「根抵当権の極度額の変更は、利害関係を有する者の承諾を得なければ、することができない」とだけ定めています。
こちらは承諾が必要です。極度額が動けば後順位者から見た負担の総額が変わり、予測が直接崩れるからです。398条の4と結論が逆になるのは、極度額が動くかどうかという一点の違いによります。
もう一つ、条文の書き方に注目してください。398条の5には「元本の確定前においては」という限定がありません。398条の4が明示的に確定前に限っているのと対照的です。ここから、極度額の変更は元本確定の前後を問わずできると解されています。条文に書いていないことが根拠になる、という珍しい形です。
元本確定期日の定めと変更(398条の6)
398条の6第1項は「根抵当権の担保すべき元本については、その確定すべき期日を定め又は変更することができる」としています。確定期日は定めても定めなくてもよい、任意の事項です。
2項が398条の4第2項を準用しているので、確定期日の定めや変更にも後順位抵当権者その他の第三者の承諾は要りません。
3項が期間の上限を定めています。「第一項の期日は、これを定め又は変更した日から五年以内でなければならない」。設定の時から5年ではなく、定めた日または変更した日から5年である点に注意してください。変更すればそこから改めて5年を取れます。
4項が登記についての規定です。「第一項の期日の変更についてその変更前の期日より前に登記をしなかったときは、担保すべき元本は、その変更前の期日に確定する」。398条の4第3項が「変更しなかったものとみなす」であるのに対し、こちらは「変更前の期日に確定する」という効果です。効果の書き分けが違うので、分けて覚えてください。
三つを並べる
被担保債権の範囲・債務者は、確定前に限り変更でき、承諾は不要、確定前に登記しなければ変更しなかったものとみなされる。
極度額は、確定の前後を問わず変更でき、利害関係を有する者の承諾が必要。
確定期日は、確定前に限り定め・変更でき、承諾は不要、定めた日または変更した日から5年以内、変更前の期日より前に登記しなければ変更前の期日に確定する。
承諾が必要なのは極度額だけという一点を軸に覚えるのが確実です。
変更に共通する注意点
三つに共通することを二つ挙げておきます。
第一に、変更はいずれも当事者の合意によるものです。根抵当権者と根抵当権設定者が合意して変更します。極度額の変更で必要とされる「利害関係を有する者の承諾」は、この合意とは別に、後順位抵当権者や転抵当権者など極度額の増減で不利益を受ける第三者から得るものです。当事者の合意と第三者の承諾を混ぜないでください。
第二に、三つとも登記が絡みますが、登記の意味が違います。398条の4第3項と398条の6第4項は、確定前あるいは変更前の期日より前という期限つきで登記を要求し、間に合わなければ変更の効果を失わせる規定です。これに対し極度額の変更の登記は、そうした期限つきの失効規定を持ちません。ただし極度額は登記事項なので、変更の効力を第三者に対抗するには登記が必要です。失効するのか、対抗できないだけなのかという違いがあります。
変更できない事項もある
条文が変更を認めているのは、被担保債権の範囲、債務者、極度額、確定期日の四つです。ここで見落としやすいのが、債務者の変更と根抵当権設定者の変更は別物だという点です。
398条の4が認めているのは債務者の変更であって、設定者の変更ではありません。設定者は根抵当権の目的である不動産の所有者ですから、設定者が変わるということは不動産の所有権が移転するということで、それは変更登記ではなく所有権移転の問題です。所有権が移転しても根抵当権は不動産に付いたまま残ります。
なお、債務者の変更は元本確定前に限られます。確定後は担保される債務が具体的に確定しているので、債務者を入れ替えるという操作の余地がありません。確定後にできる変更は極度額の変更だけ、と押さえておいてください。
元本確定前の処分には固有のルールがある
普通抵当権には376条1項の処分(転抵当、抵当権の譲渡・放棄、抵当権の順位の譲渡・放棄)があります。詳細は抵当権の実行と配当で扱いました。根抵当権では、元本確定前についてこれが大きく制限され、代わりに根抵当権固有の処分が用意されています。
376条1項の処分は原則としてできない(398条の11第1項)
398条の11第1項本文は「元本の確定前においては、根抵当権者は、第三百七十六条第一項の規定による根抵当権の処分をすることができない」と定めています。
理由は付従性を外したこととつながっています。376条1項の処分は、抵当権をその被担保債権から切り離したり、他の債権者との優先関係を組み替えたりするものです。ところが元本確定前の根抵当権は、被担保債権が特定していません。中身が確定していないものを、中身を前提とする処分に乗せることができない、というのが制限の理由です。
具体的には、元本確定前の根抵当権について、抵当権の譲渡・放棄(債権者でない者に抵当権だけを与える処分)と、抵当権の順位の譲渡・放棄(他の抵当権者との間で優先順位の利益を融通する処分)はできません。
転抵当だけは例外(398条の11第1項ただし書)
同項ただし書が「ただし、その根抵当権を他の債権の担保とすることを妨げない」としています。これが転抵当です。転抵当だけは元本確定前でもできる、と覚えてください。
転抵当は、根抵当権者が自分の根抵当権を、自分が負っている別の債務の担保に差し出す処分です。根抵当権の枠がそのまま担保に供されるだけで、被担保債権が特定している必要がありません。だから確定前でも支障がないという整理です。
さらに2項が続きます。「第三百七十七条第二項の規定は、前項ただし書の場合において元本の確定前にした弁済については、適用しない」。
377条2項は、抵当権の処分について主たる債務者が通知を受けまたは承諾したときは、処分を受けた者の承諾を得ないでした弁済をその者に対抗できないという規定です。これをそのまま根抵当権に当てはめると、転抵当が付いた瞬間から、債務者は転抵当権者の承諾なしに弁済できないことになってしまいます。
それでは継続的取引が止まります。枠が回り続けることこそが根抵当権の存在理由なので、2項が377条2項の適用を外し、元本確定前の弁済は転抵当権者に対抗できることにしました。転抵当が付いても、確定前の日常的な弁済は今までどおりできるということです。
全部譲渡(398条の12第1項)
398条の12第1項は「元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権を譲り渡すことができる」と定めています。
これが全部譲渡です。根抵当権という枠そのものを、丸ごと別の人に移す処分です。譲渡されると、譲受人は自分がその債務者に対して持つ債権を、その枠で担保させることになります。枠だけが移り、それまでの被担保債権は付いていきません。譲渡人が持っていた債権は無担保になります。
ここで要求されるのは根抵当権設定者の承諾です。後順位抵当権者の承諾ではありません。理由は、譲渡によって担保される債権の相手方が変わるため、設定者にとっては誰に対する債務を担保させられるのかが変わるからです。他方、後順位抵当権者から見れば極度額は動かないので、不利益がありません。398条の4と同じ発想で、極度額が動かないから第三者の承諾は不要です。
分割譲渡(398条の12第2項・3項)
2項は「根抵当権者は、その根抵当権を二個の根抵当権に分割して、その一方を前項の規定により譲り渡すことができる。この場合において、その根抵当権を目的とする権利は、譲り渡した根抵当権について消滅する」としています。
極度額5,000万円の根抵当権を、極度額3,000万円と2,000万円の二個に分け、一方を譲渡するという処分です。譲渡後は二個の独立した根抵当権になり、以後はそれぞれについて別々に被担保債権の範囲や債務者を定めることができます。二個は同順位で並びます。
注意すべきは2項後段です。その根抵当権を目的とする権利、たとえば転抵当権は、譲り渡した側の根抵当権について消滅します。分割によって転抵当権者の担保が薄くなるのを、譲渡された側から切り離すという処理です。
だから3項が「前項の規定による譲渡をするには、その根抵当権を目的とする権利を有する者の承諾を得なければならない」と定めます。転抵当権者は自分の担保が消える側に回るかもしれないので、承諾が要るということです。
分割譲渡だけ承諾が二段構えになります。設定者の承諾(1項の準用)に加えて、根抵当権を目的とする権利を有する者の承諾(3項)が必要です。ここは全部譲渡・一部譲渡との差なので、狙われれば差がつきます。
一部譲渡(398条の13)
398条の13は「元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権の一部譲渡(譲渡人が譲受人と根抵当権を共有するため、これを分割しないで譲り渡すことをいう)をすることができる」と定めています。
条文の括弧書きが定義そのものです。分割しないで譲り渡し、譲渡人と譲受人が共有するのが一部譲渡です。極度額5,000万円の根抵当権が、極度額5,000万円のまま二人の共有になります。分割譲渡のように二個に割れるのではありません。
分割譲渡は枠が二つに割れる、一部譲渡は枠は一つのまま共有者が増える。この違いが問われます。
共有根抵当権の内部関係(398条の14)
一部譲渡の結果として共有が生じるので、398条の14が共有者間の規律を置いています。
1項本文は「根抵当権の共有者は、それぞれその債権額の割合に応じて弁済を受ける」としています。共有持分の割合ではなく、現に持っている債権額の割合で分けるのが原則です。
ただし書が「元本の確定前に、これと異なる割合を定め、又はある者が他の者に先立って弁済を受けるべきことを定めたときは、その定めに従う」としています。異なる割合の合意も、優先弁済の順序をつける合意も可能で、いずれも元本確定前に定めることが要件です。
2項は「根抵当権の共有者は、他の共有者の同意を得て、第三百九十八条の十二第一項の規定によりその権利を譲り渡すことができる」としています。共有者が自分の権利を譲渡するには、設定者の承諾(398条の12第1項)に加えて他の共有者の同意も要るということです。
順位の譲渡・放棄を受けていた場合(398条の15)
398条の15は「抵当権の順位の譲渡又は放棄を受けた根抵当権者が、その根抵当権の譲渡又は一部譲渡をしたときは、譲受人は、その順位の譲渡又は放棄の利益を受ける」と定めています。
398条の11が禁じているのは、根抵当権者が順位の譲渡・放棄をすることです。受けることは禁じられていません。すでに受けている利益は、その後に根抵当権が譲渡されれば譲受人に引き継がれる、というのがこの条文です。する側は不可、受ける側は可という向きの区別を押さえてください。
三つの譲渡を並べる
全部譲渡は、枠を丸ごと移す処分で、設定者の承諾が必要。譲渡人の被担保債権は枠から離れる。
分割譲渡は、枠を二個に分けて一方を移す処分で、設定者の承諾に加えて、その根抵当権を目的とする権利を有する者の承諾が必要。譲り渡した側の転抵当権等は消滅する。
一部譲渡は、枠を分けずに共有にする処分で、設定者の承諾が必要。共有者は債権額の割合で弁済を受ける。
三つとも元本確定前に限りでき、三つとも後順位抵当権者の承諾は不要です。承諾が問われたら、まず「設定者か、後順位者か」を読み分けてください。設定者の承諾は要る、後順位者の承諾は要らないが基本形で、分割譲渡だけ第三の承諾が加わります。
数個の不動産に設定するとき
普通抵当権では、同一の債権の担保として数個の不動産に抵当権を設定すると、当然に共同抵当(392条・393条)になります。根抵当権では扱いが違います。
累積根抵当が原則(398条の18)
398条の18は「数個の不動産につき根抵当権を有する者は、第三百九十八条の十六の場合を除き、各不動産の代価について、各極度額に至るまで優先権を行使することができる」と定めています。
これが累積根抵当です。甲土地に極度額3,000万円、乙土地に極度額3,000万円の根抵当権を設定すれば、合計6,000万円まで優先弁済を受けられます。それぞれが独立した根抵当権として扱われ、極度額が積み上がるということです。
普通抵当権の共同抵当では、被担保債権が一つなので、どの不動産から回収しても合計は債権額止まりです。根抵当権では原則が逆で、極度額が積算されるのが基本形になります。「共同根抵当が原則」とする肢は誤りです。
共同根抵当は登記が要件(398条の16)
398条の16は「第三百九十二条及び第三百九十三条の規定は、根抵当権については、その設定と同時に同一の債権の担保として数個の不動産につき根抵当権が設定された旨の登記をした場合に限り、適用する」と定めています。
共同抵当のルール(同時配当の按分と異時配当の代位)を根抵当権に適用するには、二つの条件が要ります。設定と同時であることと、その旨の登記をすることです。
「設定と同時に」という要件が厳しい部分です。すでに甲土地に根抵当権を設定していて、あとから乙土地を追加して共同根抵当にする、ということはできません。追加設定は可能ですが、それは累積根抵当になります。後から共同根抵当に変えることはできないという結論を覚えてください。
そして登記が効力要件である点も要注意です。共同根抵当である旨を登記しなければ、当事者が共同根抵当のつもりで設定しても累積根抵当として扱われます。対抗要件ではなく効力要件だという書き分けは、狙われやすいところです。
共同根抵当の変更・譲渡はすべての不動産に登記(398条の17第1項)
398条の17第1項は「前条の登記がされている根抵当権の担保すべき債権の範囲、債務者若しくは極度額の変更又はその譲渡若しくは一部譲渡は、その根抵当権が設定されているすべての不動産について登記をしなければ、その効力を生じない」としています。
共同根抵当は数個の不動産にまたがって一体として扱われるので、内容が不動産ごとにずれることを許しません。だから全部の不動産に登記して初めて効力が生じます。ここでも効力要件です。
一個の不動産で確定事由が生じれば全部確定(398条の17第2項)
2項は「前条の登記がされている根抵当権の担保すべき元本は、一個の不動産についてのみ確定すべき事由が生じた場合においても、確定する」としています。
甲土地と乙土地に共同根抵当が設定されていて、甲土地について競売手続が開始されたとします。このとき乙土地の根抵当権についても元本が確定します。一個で確定すれば全部確定が共同根抵当の原則です。
累積根抵当ならこうはなりません。それぞれ独立した根抵当権なので、甲土地の根抵当権だけが確定し、乙土地の根抵当権は確定しないままです。共同なら連動する、累積なら連動しない。この対比が出題の形になります。
元本の確定
元本の確定とは、枠を閉じて、担保される債権をそこで締め切ることです。確定した瞬間から、新たに生じた債権は担保されなくなり、そのときに存在した債権だけが担保対象として固定されます。同時に、外していた付従性と随伴性が戻ってきます。
確定に至る経路は大きく三つです。確定期日の到来、確定請求、そして法定の確定事由。これに加えて、当事者に相続・合併・会社分割という承継が生じた場合の特則があります。
経路1 確定期日の到来
398条の6により確定期日を定めていた場合、その期日の到来によって元本が確定します。定めた日または変更した日から5年以内という制限がかかることは前述のとおりです。
経路2 確定請求(398条の19)
398条の19第1項は「根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から三年を経過したときは、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時から二週間を経過することによって確定する」と定めています。
2項は「根抵当権者は、いつでも、担保すべき元本の確定を請求することができる。この場合において、担保すべき元本は、その請求の時に確定する」としています。
設定者と根抵当権者で扱いが違う理由は、立場の違いにあります。根抵当権者が自ら確定を求めるのは自分の枠を閉じる行為なので、制限を設ける必要がありません。これに対し設定者からの請求は根抵当権者の期待を害する面があるため、3年の据置きと2週間の猶予が置かれています。
3項が重要です。「前二項の規定は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがあるときは、適用しない」。つまり確定期日を定めている場合には、設定者からも根抵当権者からも確定請求はできません。期日を定めた以上はそれに従う、という整理です。この3項を落とすと、期日の定めがある事案で誤ります。
経路3 法定の確定事由(398条の20)
398条の20第1項が四つの事由を挙げています。
1号は、根抵当権者が抵当不動産について競売もしくは担保不動産収益執行、または372条において準用する304条の規定による差押えを申し立てたときです。ただし書により、競売手続もしくは担保不動産収益執行手続の開始または差押えがあったときに限るとされています。申立てをしただけでは足りず、手続が開始される必要があります。
2号は、根抵当権者が抵当不動産に対して滞納処分による差押えをしたときです。
3号は、根抵当権者が抵当不動産に対する競売手続の開始または滞納処分による差押えがあったことを知った時から二週間を経過したときです。1号・2号が根抵当権者自身の行動であるのに対し、3号は他人が始めた手続を知った場合です。起算点が「知った時」である点も要点になります。
4号は、債務者または根抵当権設定者が破産手続開始の決定を受けたときです。債務者だけでなく設定者も含まれます。
そして2項が巻き戻しを定めています。3号の競売手続の開始もしくは差押え、または4号の破産手続開始の決定の効力が消滅したときは、担保すべき元本は確定しなかったものとみなされます。ただし、元本が確定したものとしてその根抵当権またはこれを目的とする権利を取得した者があるときは、この限りではありません。いったん確定した扱いが遡って覆るが、確定を前提に取引に入った第三者は保護されるという構造です。なお、巻き戻しがあるのは3号と4号だけで、1号・2号のように根抵当権者自身が動いた場合は含まれません。
相続が開始した場合(398条の8)
398条の8は相続の場合を別に定めています。
1項は、元本確定前に根抵当権者について相続が開始したときは、根抵当権は相続開始の時に存する債権のほか、相続人と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続開始後に取得する債権を担保するとしています。
2項は、元本確定前に債務者について相続が開始したときについて、根抵当権は相続開始の時に存する債務のほか、根抵当権者と根抵当権設定者との合意により定めた相続人が相続開始後に負担する債務を担保するとしています。合意の当事者が1項と2項で違う点に注意してください。
3項により、この合意には398条の4第2項が準用され、後順位抵当権者その他の第三者の承諾は不要です。
4項が確定に関わります。「第一項及び第二項の合意について相続の開始後六箇月以内に登記をしないときは、担保すべき元本は、相続開始の時に確定したものとみなす」。
確定の時点が「6か月を経過した時」ではなく「相続開始の時」である点が要点です。遡って確定したものとして扱われます。相続そのものの規律は相続の基本ルールを参照してください。
相続の場合の構造をまとめると、放っておけば確定、合意して6か月以内に登記すれば継続です。取引を続けたいなら能動的に動かなければならない、という設計になっています。
合併が起きた場合(398条の9)
398条の9は合併を扱います。相続と似ていますが、結論が逆向きなので注意してください。
1項は、元本確定前に根抵当権者について合併があったときは、根抵当権は合併の時に存する債権のほか、合併後存続する法人または合併によって設立された法人が合併後に取得する債権を担保するとしています。2項は債務者について合併があった場合の同様の規律です。
相続では合意と登記がなければ確定してしまいましたが、合併では当然に承継されて根抵当権が続きます。合意も登記も要りません。法人が丸ごと包括承継されるので、当事者の同一性が実質的に保たれているという理解です。
その代わり、3項が設定者に離脱の道を用意しています。「前二項の場合には、根抵当権設定者は、担保すべき元本の確定を請求することができる」。合併相手が誰になるか分からないまま取引を続けさせられるのは酷なので、設定者に確定請求権を与えたということです。
3項ただし書に例外があります。「ただし、前項の場合において、その債務者が根抵当権設定者であるときは、この限りでない」。債務者について合併があり、かつその債務者自身が設定者であるときは確定請求ができません。自分が合併しておいて自分で確定を請求するのは筋が通らないからです。債務者と設定者が同一人かどうかで結論が変わるので、事案では必ず確認してください。
4項は効果です。「前項の規定による請求があったときは、担保すべき元本は、合併の時に確定したものとみなす」。請求の時ではなく合併の時に遡って確定します。398条の19第1項の確定請求が「請求の時から2週間」であるのと違います。
5項が期間制限です。「第三項の規定による請求は、根抵当権設定者が合併のあったことを知った日から二週間を経過したときは、することができない。合併の日から一箇月を経過したときも、同様とする」。知った日から2週間と合併の日から1か月の二本立てで、どちらか早いほうで締め切られます。
会社分割が起きた場合(398条の10)
398条の10は会社分割を扱います。1項が根抵当権者を分割会社とする分割、2項が債務者を分割会社とする分割で、いずれも分割後に分割会社および承継会社が取得・負担する債権債務を担保するとしています。
そして3項が「前条第三項から第五項までの規定は、前二項の場合について準用する」としています。つまり合併と同じ扱いです。当然に承継され、設定者は確定請求ができ、請求があれば分割の時に遡って確定し、知った日から2週間・分割の日から1か月で請求できなくなります。
会社分割で注意すべきは、承継先が複数になりうる点です。分割会社も分割によって設立された会社も、いずれの取得する債権も担保されます。担保の相手方が増えるので、設定者に確定請求権を与える必要性は合併より高いともいえます。
相続・合併・会社分割を並べる
相続は、合意して相続開始後6か月以内に登記しなければ、相続開始の時に確定したものとみなされる。何もしなければ確定する。
合併・会社分割は、当然に承継されて根抵当権が続く。設定者が確定請求をした場合に限り、合併・分割の時に遡って確定する。何もしなければ確定しない。
何もしなかったときの結論が逆という一点が、この三つの対比の核心です。相続は放置で確定、合併と会社分割は放置で継続。ここを入れ替えた肢がよく作られます。
元本が確定すると何が変わるか
確定の効果を、条文の適用がどう入れ替わるかという形で整理します。
第一に、新たな債権が担保されなくなります。確定後に生じた債権は、被担保債権の範囲に属する取引から生じたものであっても担保されません。担保させたいなら別の担保を設定するほかありません。
第二に、付従性が戻ります。確定した債権が全部弁済されれば、根抵当権は消滅します。確定前なら残っていた枠が、確定後は消えるということです。
第三に、随伴性が戻ります。398条の7が「元本の確定前に」と限定しているので、確定後の債権譲渡には随伴性が働き、譲受人が根抵当権を取得します。
第四に、処分の制限が外れます。398条の11が禁じていたのは確定前の処分です。確定後は376条1項の処分、すなわち転抵当だけでなく抵当権の譲渡・放棄、順位の譲渡・放棄もできるようになります。逆に、根抵当権固有の全部譲渡・分割譲渡・一部譲渡は確定前に限られるので、確定後はできません。普通抵当権の処分と根抵当権の処分が、確定を境に入れ替わるという関係です。
第五に、変更の余地が狭まります。被担保債権の範囲・債務者・確定期日の変更はいずれも確定前に限られるので、確定後にできる変更は極度額の変更だけです。
第六に、確定後にしかできない二つの請求が生じます。極度額の減額請求(398条の21)と消滅請求(398条の22)です。次の節で扱います。
確定を境に、できることとできないことがほぼ総入れ替えになる。この総入れ替えを把握しておけば、「元本確定後に〜できる」という肢はその場で判断できます。
元本確定後にだけできる二つの請求
確定後には、設定者や第三取得者の側から根抵当権の負担を軽くする手段が二つ用意されます。どちらも確定後にしかできないという点がまず出題されます。
極度額の減額請求(398条の21)
398条の21第1項は「元本の確定後においては、根抵当権設定者は、その根抵当権の極度額を、現に存する債務の額と以後二年間に生ずべき利息その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができる」と定めています。
制度の趣旨は枠の後始末です。確定して中身が固まった以上、実際の債務額よりはるかに大きな極度額が登記されたままだと、設定者はその不動産を使った次の資金調達ができません。極度額3,000万円の枠に対し確定した債務が500万円しかないのに、後順位で融資を受けようとする者は3,000万円の負担が乗っていると見るからです。そこで枠を中身に合わせて縮める道を開いたのがこの規定です。
減額後の額の計算式が要点です。現に存する債務の額 + 以後2年間に生ずべき利息その他の定期金 + 以後2年間に生ずべき損害賠償の額。確定した債務が500万円で、以後2年間の利息と遅延損害金が合わせて60万円と見込まれるなら、60万円を加えた560万円まで減額できます。
ここで2年という数字が出てくるのが面白いところです。確定前の根抵当権には375条の2年分制限が働かないと説明しましたが、確定後の減額請求の計算式には2年が現れます。普通抵当権に近づくという確定後の性格が、数字の形で表れているといえます。「根抵当権に2年という数字は一切出てこない」と覚えてしまうと、この規定で誤ります。
もう一つ、これは請求であって合意ではありません。398条の5の極度額の変更が利害関係を有する者の承諾を要する合意であるのに対し、398条の21の減額請求は設定者が一方的に行使できます。極度額を上げるにも下げるにも合意なら承諾が要るが、確定後の減額請求なら設定者の一方的な意思表示でできる、という二本立てです。
2項は共同根抵当の場合の特則で、398条の16の登記がされている根抵当権の極度額の減額については、そのうちの一個の不動産についてすれば足りるとしています。共同根抵当は一体として扱われるので、全部の不動産に請求する必要がありません。
消滅請求(398条の22)
398条の22第1項は「元本の確定後において現に存する債務の額が根抵当権の極度額を超えるときは、他人の債務を担保するためその根抵当権を設定した者又は抵当不動産について所有権、地上権、永小作権若しくは第三者に対抗することができる賃借権を取得した第三者は、その極度額に相当する金額を払い渡し又は供託して、その根抵当権の消滅請求をすることができる。この場合において、その払渡し又は供託は、弁済の効力を有する」と定めています。
要件と効果を分解します。
要件は、元本が確定していること、そして現に存する債務の額が極度額を超えていることです。債務が極度額に満たないときは使えません。債務が極度額以下なら、その額を弁済すれば根抵当権は付従性によって消えるので、この制度を用意する必要がないからです。
請求できる者は二種類です。一つは物上保証人(他人の債務を担保するためその根抵当権を設定した者)、もう一つは第三取得者(所有権、地上権、永小作権、対抗できる賃借権を取得した第三者)です。
ここが普通抵当権との違いになります。普通抵当権の抵当権消滅請求(379条)ができるのは抵当不動産の第三取得者だけで、物上保証人はできません。根抵当権の消滅請求には物上保証人が含まれるという差を押さえてください。
方法は、極度額に相当する金額を払い渡すか供託することです。普通抵当権の消滅請求が、第三取得者の申出額を抵当権者が承諾するか否かという手続を経るのに対し、根抵当権の消滅請求は極度額という決まった額を払えばよいという単純な構造です。額の交渉がありません。
効果は、根抵当権が消滅し、かつその払渡しまたは供託が弁済の効力を有することです。払った額の分だけ債務が減るということです。極度額を超える部分の債務は残りますが、それは無担保の債権になります。
3項が「第三百八十条及び第三百八十一条の規定は、第一項の消滅請求について準用する」としています。380条は主たる債務者・保証人およびこれらの承継人は消滅請求ができないとする規定、381条は停止条件付第三取得者はその条件の成否が未定である間は消滅請求ができないとする規定です。債務者本人や保証人が消滅請求で債務を極度額まで切り縮めることはできないということです。
2項は共同根抵当の特則で、398条の16の登記がされている根抵当権は、一個の不動産について消滅請求があったときは消滅するとしています。減額請求と同じく、一体として扱う結果です。
二つの請求を並べる
減額請求は、極度額を実際の債務額プラス2年分の利息等まで縮める請求です。請求できるのは根抵当権設定者で、債務額が極度額を超えていることは要件ではありません。根抵当権は消えず、枠が小さくなります。
消滅請求は、極度額相当額を払って根抵当権そのものを消す請求です。請求できるのは物上保証人と第三取得者で、債務額が極度額を超えていることが要件です。根抵当権は消滅します。
両方とも元本確定後にしかできません。そして両方とも、共同根抵当なら一個の不動産についてすれば足ります。混同しやすいのは請求権者で、減額請求は設定者、消滅請求は物上保証人と第三取得者です。設定者が債務者本人である場合、減額請求はできますが消滅請求はできません(380条の準用)。
試験での出題ポイント
根抵当権が出るときの問われ方は、いくつかの型に収まります。
確定の前後を入れ替える
最も基本的な型です。「元本の確定前に被担保債権を譲り受けた者は、根抵当権を行使することができる」「元本の確定後に根抵当権の一部譲渡をすることができる」といった形で、確定の前後を入れ替えて誤りを作ります。
対処法は単純で、肢を読んだらまず「確定前」「確定後」に印を付けることです。そのうえで、随伴性・付従性・固有の処分・変更は確定前の話、減額請求・消滅請求は確定後の話、と当てはめます。
承諾の相手方をすり替える
「被担保債権の範囲の変更には後順位抵当権者の承諾が必要である」「極度額の変更には後順位抵当権者の承諾は不要である」という形で、承諾の要否そのものを反転させる肢が作られます。
さらに巧妙なのは、承諾する相手をすり替える型です。全部譲渡に必要なのは設定者の承諾ですが、これを「後順位抵当権者の承諾」に書き換える、あるいは極度額の変更に必要な「利害関係を有する者の承諾」を「設定者の承諾」に書き換える、といったものです。要否だけでなく、誰の承諾かまで読む必要があります。
375条の2年分を持ち込む
「根抵当権者は、利息については最後の2年分についてのみ優先弁済を受けることができる」という肢が典型です。根抵当権に375条は働かないので誤りです。
逆方向の引っかけもあります。398条の21の減額請求の計算式に2年が出てくることを利用して、「元本確定後の減額請求は、現に存する債務の額まで減額することを請求するものである」という肢が作られます。以後2年間の利息等を加えた額なので誤りです。2年が出るのは減額請求の計算式だけと押さえてください。
確定請求の主体と時期をずらす
「根抵当権設定者は、いつでも元本の確定を請求することができる」(設定から3年を経過することが必要なので誤り)、「根抵当権者は、設定の時から3年を経過しなければ確定を請求することができない」(いつでもできるので誤り)、「根抵当権者の確定請求により、請求の時から2週間を経過して元本が確定する」(請求の時に確定するので誤り)といった形です。
設定者は3年経過後・2週間後に確定、根抵当権者はいつでも・即時に確定。この四つの要素の組み合わせを崩してきます。加えて398条の19第3項の「確定期日の定めがあるときは適用しない」を落とさせる肢もあります。
何もしなかったときの結論を逆にする
相続と合併の対比を使う型です。「元本確定前に根抵当権者について相続が開始した場合、根抵当権は当然に相続人が相続開始後に取得する債権を担保する」(合意と登記が必要なので誤り)、「元本確定前に根抵当権者について合併があった場合、合意して6か月以内に登記しなければ元本は確定する」(合併では当然に承継されるので誤り)といった形です。
累積と共同を入れ替える
「数個の不動産に根抵当権を設定した場合、当然に共同根抵当となる」(累積が原則なので誤り)、「既に設定されている根抵当権に後から不動産を追加して共同根抵当とすることができる」(設定と同時でなければならないので誤り)という肢です。
極度額と債権額を混同させる
「極度額を超える部分の債権は消滅する」「極度額の範囲でしか債務者に請求できない」といった肢です。極度額は優先弁済の上限であって債権の上限ではありません。
包括根抵当を認めさせる
「債務者に対する一切の債権を担保する根抵当権を設定することができる」という肢です。398条の2第2項が「限定して、定めなければならない」としているので誤りです。この肢は根抵当権の問題の中では易しい部類なので、確実に取ってください。
覚え方・整理の仕方
まず「確定前か確定後か」の一本の線を引く
根抵当権の学習で最初にやるべきことは、条文を覚えることではなく、確定を境にした一本の線を引くことです。
確定前だけできることは、被担保債権の範囲・債務者・確定期日の変更、全部譲渡・分割譲渡・一部譲渡、共有者間の割合や優先の定め。
確定後だけできることは、極度額の減額請求、消滅請求、376条1項の処分。
確定前だけ起きないことは、付従性と随伴性による移転・消滅。
確定の前後を問わずできることは、極度額の変更と転抵当。
この四つの箱に振り分けるだけで、大半の肢は処理できます。特に極度額の変更と転抵当が前後を問わないという二つの例外は、覚える価値があります。
承諾は「極度額が動くか」で決まる
承諾の要否は、条文を個別に覚えるより一つの基準から導いたほうが確実です。基準は極度額が動くかどうかです。
極度額が動かない変更(被担保債権の範囲、債務者、確定期日)は、後順位抵当権者から見て負担の総額が変わらないので、承諾は不要です。極度額が動く変更は、負担の総額が変わるので、利害関係を有する者の承諾が必要です。
一方、譲渡系(全部譲渡・分割譲渡・一部譲渡)で必要になるのは設定者の承諾です。担保させる相手が変わるのは設定者にとっての問題であって、後順位抵当権者にとっては極度額が動かない以上どうでもよいからです。分割譲渡だけは、転抵当権者の担保が消える側に回るので、その者の承諾が上乗せされます。
極度額が動くなら利害関係人、相手が変わるなら設定者、担保が消えるなら消える相手。承諾を求められる人は、不利益を受ける人です。
数字は四つだけ覚える
根抵当権の数字は多くありません。5年・3年と2週間・6か月・2年の四つです。
5年は確定期日の上限(398条の6第3項)。定めた日または変更した日から5年以内です。
3年と2週間は設定者の確定請求(398条の19第1項)。設定から3年経過で請求でき、請求から2週間で確定します。
6か月は相続の合意の登記期限(398条の8第4項)。相続開始後6か月以内です。
2年は確定後の極度額の減額請求(398条の21第1項)。現に存する債務の額に、以後2年間の利息等を加えた額まで減額できます。375条の2年分制限とは別物なので、混ぜないでください。
これに合併・会社分割の2週間と1か月(398条の9第5項)を足せば全部です。合併の2週間は「知った日から」、1か月は「合併の日から」という起算点の違いに注意してください。同じ2週間でも、398条の19第1項の2週間は確定までの猶予期間、398条の20第1項3号の2週間は確定事由そのもの、398条の9第5項の2週間は請求権の行使期限と、意味が三つとも違います。民法全体の数字の覚え方は民法の語呂合わせにまとめてあります。
「相続は放置で確定、合併は放置で継続」
承継の三つは、この一文で覚えるのが早いです。
相続は人が死ぬ場面なので、根抵当権者や債務者の同一性が崩れます。だから放っておけば締め切る。合併と会社分割は法人が包括承継する場面なので、事業が続いている。だから放っておけば続く。同一性が崩れるか、実質的に続くかという違いが、結論の違いを説明します。
「累積が原則、共同は同時と登記」
数個の不動産に設定するときは、累積が原則とだけ覚えておき、共同根抵当は例外だと位置づけます。例外に乗るための条件が設定と同時とその旨の登記の二つです。共同に乗ると、変更も譲渡も全部の不動産に登記しなければ効力を生ぜず、一個で確定すれば全部確定します。一体として扱われるから、全部そろえるし、全部連動するという理解でつながります。
二つの請求は「縮めるか、消すか」
確定後の二つは、目的で分けます。減額請求は枠を縮める、消滅請求は根抵当権を消す。
縮めるだけなので減額請求に金銭の支払は要りませんが、消すのだから消滅請求には極度額相当額の支払が要ります。縮めるのは枠の持ち主に対する話なので設定者が請求し、消すのは不動産の負担を外す話なので物上保証人と第三取得者が請求します。目的が違えば、要件も請求権者も違うと考えれば、覚え分けの必要がありません。
深追いしない線を引いておく
根抵当権は宅建試験では出題頻度が高くない論点です。本記事で扱った範囲を超えて、共同根抵当の細目や共有根抵当権の複雑な処分まで踏み込む必要はありません。
優先度をつけるなら、次の順です。第一に付従性・随伴性が確定前に働かないこと、第二に375条の2年分制限が働かないこと、第三に変更の承諾の要否、第四に確定請求の主体と期間、第五に確定後の二つの請求。ここまでで、出題される肢のほとんどを処理できます。学習全体の時間配分は権利関係の頻出論点を参考にしてください。
理解度チェッククイズ
第1問
元本の確定前に根抵当権者から被担保債権を譲り受けた者は、その債権について根抵当権を行使することができる。○か×か。
答えは×です。398条の7第1項前段が「元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は、その債権について根抵当権を行使することができない」と定めています。元本確定前は随伴性が働かないので、債権だけが移り、根抵当権は移りません。譲受人が取得するのは無担保の債権です。なお、元本確定後に譲渡された場合は随伴性が働き、譲受人が根抵当権を取得します。確定の前後を入れ替えた肢に注意してください。
第2問
根抵当権者は、確定した元本のほか、利息については満期となった最後の2年分についてのみ、極度額の限度で優先弁済を受けることができる。○か×か。
答えは×です。398条の3第1項は「確定した元本並びに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について、極度額を限度として」行使できるとしています。375条の2年分制限は普通抵当権の規定で、根抵当権には働きません。極度額という上限が登記で公示されているので、後順位者を保護するための別の歯止めが不要だからです。極度額の枠内であれば何年分の利息でも担保されます。
第3問
根抵当権の被担保債権の範囲を変更するには後順位抵当権者の承諾が必要であり、極度額を変更するには後順位抵当権者の承諾は不要である。○か×か。
答えは×です。結論が両方とも逆になっています。被担保債権の範囲の変更は398条の4第2項により後順位の抵当権者その他の第三者の承諾を得ることを要しません。極度額の変更は398条の5により利害関係を有する者の承諾を得なければすることができません。極度額が動くかどうかで承諾の要否が決まる、という基準から導いてください。なお、被担保債権の範囲の変更は元本確定前に限られ、確定前に登記しなければ変更しなかったものとみなされます(398条の4第1項・3項)。
第4問
根抵当権設定者は、根抵当権の設定の時から3年を経過したときは担保すべき元本の確定を請求することができ、根抵当権者はいつでも確定を請求することができる。ただし、確定すべき期日の定めがあるときは、いずれも請求することができない。○か×か。
答えは○です。398条の19第1項が設定者の確定請求(設定から3年経過が要件、請求の時から2週間の経過で確定)、2項が根抵当権者の確定請求(いつでも可能、請求の時に確定)を定め、3項が「前二項の規定は、担保すべき元本の確定すべき期日の定めがあるときは、適用しない」としています。期日を定めた以上はそれに従うということで、双方から確定請求ができなくなります。この3項を落とすと、期日の定めがある事案で誤ります。
第5問
元本の確定後において現に存する債務の額が根抵当権の極度額を超えるとき、他人の債務を担保するため根抵当権を設定した者は、極度額に相当する金額を払い渡して根抵当権の消滅請求をすることができる。○か×か。
答えは○です。398条の22第1項がそのとおり定めています。請求できるのは物上保証人(他人の債務を担保するためその根抵当権を設定した者)と、所有権・地上権・永小作権・対抗できる賃借権を取得した第三者です。普通抵当権の抵当権消滅請求(379条)は第三取得者しかできず、物上保証人はできません。ここが根抵当権との違いです。なお、380条の準用により主たる債務者・保証人およびこれらの承継人は消滅請求ができません。払渡しまたは供託は弁済の効力を有します。
まとめ
根抵当権は、普通抵当権から付従性を外した制度です。継続的な取引では債権が発生と消滅を繰り返すため、個々の債権に従属する担保では回らないというのが出発点でした。
外した代償として、枠を先に確定させることが要求されます。被担保債権の範囲は限定して定めなければならず(398条の2第2項)、包括根抵当は認められません。金額の上限として極度額を定め、確定した元本・利息・損害賠償の全部が極度額の限度で担保されます(398条の3第1項)。375条の2年分制限は働きません。
元本確定前は付従性も随伴性も働かず、債権が譲渡されても弁済があっても根抵当権は動きません(398条の7)。変更は、被担保債権の範囲・債務者・確定期日が承諾不要、極度額だけが利害関係を有する者の承諾を要します。処分は376条1項のものが原則としてできず、転抵当だけが例外で、代わりに全部譲渡・分割譲渡・一部譲渡という固有の処分があります。
元本が確定すると、付従性と随伴性が戻り、確定後にしかできない極度額の減額請求(398条の21)と消滅請求(398条の22)が生じます。確定を境に、できることとできないことが総入れ替えになるというのが、この制度の全体像です。
宅建試験では毎年出る論点ではありませんが、出るときは普通抵当権との対比で問われます。まず抵当権の基本と抵当権の実行と配当を固め、そのうえで本記事の差分を重ねてください。担保物権全体の見取り図は担保物権の全体像にあります。
アプリの権利関係の演習には抵当権の過去問を収録しています。まず普通抵当権の肢で判断の型を作り、そのうえで本記事の対比を重ねてください。
民法・借地借家法・区分所有法など、条文だけでは判断しづらい論点は、過去問の肢で覚えるのが最短です。