防火地域と準防火地域|構造規制と建蔽率の緩和
防火地域・準防火地域の規制を条文から整理します。性能規定化された61条と施行令136条の2の五区分、建蔽率の緩和、地域にまたがる場合の処理、仮設建築物や重要事項説明との接続まで。
目次
この記事は、建築基準法61条以下が定める防火地域・準防火地域の規制を、条文と施行令にもとづいて整理するものです。建蔽率そのものの考え方は建ぺい率と容積率とは|制度の意味と物件の見方に、計算の手順は建ぺい率と容積率の計算問題攻略|角地緩和・前面道路制限にあります。集団規定全体での位置づけは建築基準法の全体像|単体規定と集団規定を参照してください。
先に結論を述べます。この分野で問われるのは四つです。
第一に、地域と建築物の規模に応じてどういう構造が求められるか。第二に、建蔽率がどう緩和されるか。第三に、建築物や敷地が地域の内外にわたる場合にどう処理するか。第四に、この規制が建築確認・既存不適格・重要事項説明といった別の制度とどこで接続するか。
そして注意が必要な点があります。61条は2019年6月25日に施行された改正(平成30年法律第67号)で性能規定化され、「耐火建築物としなければならない」という書き方が条文から消えました。具体的な規模の区分は建築基準法施行令136条の2に移っています。古い教材はこの構造を反映していないことがあるので、条文の位置から確認していきます。
なお、令和8年度(2026年10月18日実施)の出題範囲は2026年4月1日現在施行の法令です。建築基準法については同年5月27日施行の改正(令和8年法律第23号)がありますが、本則291条に差分はなく、この記事が扱う61条から67条までを含めて条文は一字も動いていません。基準日と改正の関係は令和8年度に影響する法改正まとめで扱っています。
防火地域・準防火地域という地域地区
都市計画で定め、建築基準法で規制する
防火地域と準防火地域は、都市計画法が定める地域地区のひとつです。同法8条1項5号が「防火地域又は準防火地域」を地域地区の種類として掲げ、同法9条21項が「防火地域又は準防火地域は、市街地における火災の危険を防除するため定める地域とする」と定めています。
地域地区の全体像は都市計画法の全体像|区域区分・用途地域・開発許可で扱っています。ここで押さえるべきなのは、決めるのは都市計画法、規制の中身を定めるのは建築基準法という分業です。用途地域や高度地区と同じ構造で、都市計画法の側には「どこを防火地域にするか」しか書かれておらず、「防火地域だと何がどうなるか」は建築基準法にしか書かれていません。だから防火地域の問題は、都市計画法の分野で出ることも建築基準法の分野で出ることもあります。
9条21項の文言も見ておく価値があります。「市街地における火災の危険を防除するため」であって、個々の建物の安全のためとは書かれていません。守る対象が街であることが、条文の目的規定の段階で示されています。この一文が、後で出てくる「またがる場合は厳しいほうに合わせる」という処理の根拠になります。
決定権者は市町村
都市計画法15条1項は、都道府県が定める都市計画を限定列挙しています。地域地区について都道府県決定とされるのは、同項4号が挙げる8条1項4号の2、9号から13号まで、および16号に掲げるものです。防火地域・準防火地域は8条1項5号ですから、この列挙に入っていません。したがって、防火地域・準防火地域に関する都市計画は市町村が定めます。
同じことは特定防災街区整備地区(8条1項5号の2)にも当てはまります。こちらも15条1項4号の列挙に入っていないので市町村決定です。決定権者の全体像は都市計画の種類と決定権者|誰がどれを定めるかで整理しています。
出題としては、「防火地域は都道府県が定める」という肢が作られます。15条1項4号の列挙を丸暗記する必要はなく、広域調整が必要なもの(都市再生特別地区、臨港地区、歴史的風土特別保存地区、緑地保全地域のうち広域のものなど)だけが都道府県に上がる、という感覚で足ります。防火地域は市街地の火災リスクという極めてローカルな判断なので、市町村に残るのが自然です。
準都市計画区域には定められない
見落とされやすいのが適用区域の限定です。都市計画法8条2項は、準都市計画区域について定めることができる地域地区を限定列挙しています。列挙されているのは1項1号から2号の2まで(用途地域、特別用途地区、特定用途制限地域)、3号のうち高度地区に係る部分、6号(景観地区)、7号(風致地区)、12号のうち緑地保全地域に係る部分、15号(伝統的建造物群保存地区)です。
5号すなわち防火地域・準防火地域は、この列挙に入っていません。つまり、準都市計画区域に防火地域や準防火地域を定めることはできません。
これは建築基準法41条の2の「この章(第八節を除く。)の規定は、都市計画区域及び準都市計画区域内に限り、適用する」という規定と組み合わせると意味がはっきりします。集団規定の適用範囲は都市計画区域と準都市計画区域ですが、そのうち防火地域の規制が実際に作動しうるのは都市計画区域だけです。準都市計画区域には高度地区は定められても防火地域は定められない、という非対称は、非線引き区域と準都市計画区域|例外側の二区域で扱う準都市計画区域の性格(積極的な市街地整備を予定しない区域である)から導けます。街を作らない区域で、街の防火を語る必要がないからです。
用途地域とは独立に指定される
もうひとつ、条文の書き方から読める点があります。都市計画法9条18項の高度地区、19項の高度利用地区は、いずれも「用途地域内において」と限定されています。これに対し21項の防火地域・準防火地域には、この限定がありません。
したがって、用途地域の指定のない区域(いわゆる白地地域)にも防火地域を定めることができます。建築基準法53条1項6号が用途地域の指定のない区域の建蔽率の限度を定めていることとあわせると、白地地域の防火地域で建蔽率の緩和を論じる、という組み合わせも条文上は成り立ちます。用途地域そのものは用途地域13種類と建築制限を参照してください。
実際の指定は、駅前や幹線道路沿いの商業地に防火地域、その周辺の住宅地に準防火地域、という形になることが多くあります。ただしこれは運用の傾向であって、法律が地域を限定しているわけではありません。手元の土地がどうなっているかを調べる手順は用途地域の調べ方と暮らしへの影響にまとめています。
なぜ「構造」を規制するのか
火災の被害を考えるとき、建物が一棟だけ建っている場所と、密集している市街地とでは意味が違います。市街地では、一棟の火災が隣家に燃え移り、次々と広がっていきます。
そこで、個々の建物の外側、つまり延焼にさらされる部分の性能を高めておくことで、火が伝わる連鎖を断ち切ろうとするのがこの規制です。守っているのは、その建物の中の人だけではなく、街全体です。
だからこの規制は集団規定に置かれています。同じ火災に関する規定でも、避難階段や内装制限のように建物の中の人を守るものは単体規定であり、都市計画区域の内外を問わず全国に適用されます。この対比は建築基準法の全体像|単体規定と集団規定で扱っています。
規制の対象も、この目的から決まっています。61条1項が挙げているのは、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に設ける防火設備と、壁、柱、床その他の建築物の部分およびその防火設備です。つまり、火が入ってくる経路と、火に耐える骨格。延焼を防ぐという目的に直結する部分だけが対象で、建物の中の間取りや内装は含まれません。
用語の定義を条文で押さえる
規制の中身に入る前に、2条が定義する用語を確認しておきます。ここが曖昧だと、条文も選択肢も読めません。似た語が並ぶので、対象と時間で区別するのが確実です。
延焼のおそれのある部分(2条6号)
2条6号は、延焼のおそれのある部分を、隣地境界線、道路中心線、または同一敷地内の二以上の建築物相互の外壁間の中心線から、1階にあっては3メートル以下、2階以上にあっては5メートル以下の距離にある建築物の部分と定義しています。同一敷地内の建築物については、延べ面積の合計が500平方メートル以内のものは一の建築物とみなされます。
1階が3メートル、2階以上が5メートル。上階のほうが範囲が広いのは、火は上に向かって広がるため、高い位置ほど遠くまで延焼の危険が及ぶからです。この二つの数字は、後で出てくる施行令109条2項でも同じ形で使われます。
ただし書の除外は二つあります。イは、防火上有効な公園、広場、川その他の空地または水面、耐火構造の壁その他これらに類するものに面する部分です。向かいに燃えるものがなければ延焼しようがない、という理屈です。ロは、建築物の外壁面と隣地境界線等との角度に応じて、周囲において発生する通常の火災時における火熱により燃焼するおそれのないものとして国土交通大臣が定める部分です。距離が近くても、外壁が境界線に対して深い角度で立っていれば受ける輻射熱は小さい、という考え方が入っています。
61条1項が防火設備を求めているのは、まさにこの「延焼のおそれのある部分」にある外壁の開口部です。定義を知らないと、どこに何を設けるのかが読めません。
なお、施行令109条2項は、隣地境界線等のあらゆる部分で開口部から1階3メートル以下、2階以上5メートル以下の距離にあるものと当該開口部とを遮る外壁、袖壁、塀その他これらに類するものを、防火設備とみなすと定めています。開口部そのものを防火戸にしなくても、間に袖壁を立てて火線を遮ればよい、という逃げ道が政令に用意されているわけです。
耐火構造・準耐火構造・防火構造(2条7号から8号)
耐火構造は、壁、柱、床その他の建築物の部分の構造で、耐火性能に関して政令で定める技術的基準に適合するものです。耐火性能とは、通常の火災が終了するまでの間、その火災による建築物の倒壊および延焼を防止するために必要とされる性能をいいます。火災が終わるまで持ちこたえることが求められます。
施行令107条がその基準を数字にしています。最上階および最上階から数えた階数が2以上4以内の階では、耐力壁である間仕切壁・外壁、柱、床、はりについて1時間。最上階から数えて5以上9以内で1.5時間、10以上14以内で2時間。柱とはりだけはさらに伸び、15以上19以内で2.5時間、20以上で3時間です。屋根と階段は階を問わず30分間。備考で、この表の階数の算定については地階の部分の階数をすべて算入するとされています。上の階ほど短いのは、火災は下から上へ広がるため、下層の柱が早く落ちれば建物全体が倒れるからです。
準耐火構造は、同じく建築物の部分の構造で、準耐火性能、つまり通常の火災による延焼を抑制するために必要とされる性能に関する基準に適合するものです。施行令107条の2は、耐力壁である間仕切壁・外壁、柱、床、はりについて45分間、屋根(軒裏を除く)と階段について30分間としています。倒壊まで防ぐ耐火構造に対し、延焼を抑制する水準にとどまります。
防火構造は、対象が違います。建築物の外壁または軒裏の構造であって、周囲において発生する通常の火災による延焼を抑制するために必要とされる性能に関する基準に適合するものです。建物の骨格ではなく外皮の話で、しかも外から来る火に対するものです。施行令108条は30分間としています。
耐火と準耐火は建物の部分全般、防火構造は外壁と軒裏だけ。時間で言えば、耐火が1時間から3時間、準耐火が45分、防火構造が30分。この二つの軸で切り分けてください。数字の整理は建築基準法の数字|意味から覚える整理法にも集めています。
防火設備と遮炎性能(2条9号の2ロ、施行令109条・109条の2)
施行令109条1項は、法2条9号の2ロ、53条3項1号イ、61条1項などの政令で定める防火設備を、防火戸、ドレンチャーその他火炎を遮る設備としています。ドレンチャーは水幕を張る設備で、扉に限られていないことがわかります。
遮炎性能の基準は施行令109条の2で、防火設備に通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後20分間、加熱面以外の面に火炎を出さないこととされています。20分という数字は、耐火の1時間、準耐火の45分、防火構造の30分と並べて覚えるとよい位置にあります。
耐火建築物・準耐火建築物(2条9号の2・9号の3)
2条9号の2は、耐火建築物を次の基準に適合する建築物と定義しています。イとして、主要構造部のうち防火上および避難上支障がないものとして政令で定める部分以外の部分(これを「特定主要構造部」といいます)が、耐火構造であること、または屋内で予測される火災の火熱にその火災が終了するまで耐えるなどの性能に関する技術的基準に適合すること。ロとして、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、遮炎性能に関する基準に適合する防火戸その他の政令で定める防火設備を有すること。
骨格と開口部の両方が要件です。どちらかだけでは耐火建築物になりません。
2条9号の3は、準耐火建築物を、耐火建築物以外の建築物で、イまたはロのいずれかに該当し、外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に前号ロの防火設備を有するものと定義しています。イは主要構造部を準耐火構造としたもの、ロはイと同等の準耐火性能を有するものとして政令で定める技術的基準に適合するものです。施行令109条の3がその技術的基準を二つ挙げており、1号は外壁が耐火構造であり屋根が22条1項の構造であるもの、2号は主要構造部である柱およびはりが不燃材料で、その他の主要構造部が準不燃材料で造られ、外壁の延焼のおそれのある部分を防火構造とするなどのものです。実務で外壁耐火型、不燃構造型と呼ばれるのはこの2種です。
ここで条文の非対称に注意してください。耐火建築物の定義(9号の2イ)は「特定主要構造部」を基準にしますが、準耐火建築物の定義(9号の3イ)は「主要構造部」のままです。後で見る施行令136条の2でも、1号イは特定主要構造部、2号イは主要構造部と書き分けられています。用語が違うのは書き間違いではなく、耐火建築物についてだけ、防火上・避難上支障のない部分を除外できる仕組みが入っているためです。
「等」が付く語の意味(53条3項1号イ・ロ)
53条などが使う「耐火建築物等」「準耐火建築物等」は、法2条の定義ではなく53条3項1号のイとロで定義されています。イは、耐火建築物またはこれと同等以上の延焼防止性能を有するものとして政令で定める建築物。ロは、準耐火建築物またはこれと同等以上の延焼防止性能を有するものとして政令で定める建築物(耐火建築物等を除く)です。
この二つは、条文が定義の射程を別々に書いている点に注意が必要です。イの括弧書は「以下この条及び第六十七条第一項において「耐火建築物等」という」ですが、ロの括弧書は「第八項及び第六十七条第一項において「準耐火建築物等」という」です。耐火建築物等は53条全体で使えるのに対し、準耐火建築物等が使えるのは53条8項と67条1項だけ、という非対称になっています。
この非対称は、後で見る53条7項の要件が耐火建築物等に限られていることと表裏です。7項は準耐火建築物等という語を使える範囲の外にあるので、条文上そもそも準耐火建築物等を要件にできません。覚え方ではなく、条文の書き方そのものが7項と8項の水準差を固定しているということです。
いずれにせよ、この二語は53条と67条1項の外では使えません。密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律2条8号・9号が、わざわざ「建築基準法第五十三条第三項第一号イに規定する耐火建築物等をいう」「同号ロに規定する準耐火建築物等をいう」と引用のかたちで定義を借りているのも、この限定があるからです。
「等」が付くかどうかで指す範囲が違います。等が付けば、耐火建築物という決まった形でなくても、同等以上の延焼防止性能を政令の基準で示せば足ります。試験ではこの一字で正誤が分かれます。
木造建築物等(23条括弧書)
施行令136条の2の3号・4号・5号、および61条1項ただし書に出てくる「木造建築物等」の定義は、意外な場所にあります。法23条の括弧書です。
23条は、22条1項の指定区域内にある建築物のうち「その主要構造部の第二十一条第一項の政令で定める部分が木材、プラスチックその他の可燃材料で造られたもの(第二十五条及び第六十一条第一項において「木造建築物等」という。)」について外壁の規制を定めており、この括弧書が定義になっています。つまり木造建築物等は、木造に限らずプラスチックなど可燃材料で骨格が造られたものを広く含みます。定義の場所が61条から遠いので、条文を引くときに迷いやすいところです。
61条は性能規定として書かれている
改正で条文の書き方が変わった
現行の61条1項は次のように定めています。防火地域または準防火地域内にある建築物は、その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火戸その他の政令で定める防火設備を設け、かつ、壁、柱、床その他の建築物の部分および当該防火設備を、通常の火災による周囲への延焼を防止するためにこれらに必要とされる性能に関して、防火地域および準防火地域の別ならびに建築物の規模に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものまたは国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。
長い条文ですが、構造を取り出すと三段です。第一に、延焼のおそれのある開口部に防火設備を設けること。第二に、その防火設備と建築物の部分を、政令で定める技術的基準に適合させること。第三に、その適合の証明は、大臣が定めた構造方法(仕様に従う)か、大臣の認定(個別に性能を証明する)のいずれかによること。そして技術的基準は「防火地域か準防火地域か」と「建築物の規模」に応じて定められる、と書いてあります。
かつての条文は、防火地域について61条が、準防火地域について62条が、それぞれ「耐火建築物としなければならない」「準耐火建築物としなければならない」という形で直接に構造を指定していました。2019年6月25日に施行された改正でこれが性能規定に改められ、具体的な区分は施行令に移りました。現在の62条は屋根に関する規定です。
この改正の意味は、同等以上の延焼防止性能を持つ建物であれば、耐火建築物という決まった形でなくてもよい、という点にあります。だから条文や関連規定では「耐火建築物」ではなく「耐火建築物等」という語が使われます。改正前の教材をそのまま使うと、条番号も用語もずれます。
ただし書が外す二つの門・塀
61条1項にはただし書があり、門または塀で、高さ2メートル以下のもの、または準防火地域内にある建築物(木造建築物等を除く)に附属するものについては、この規制が及びません。
門と塀が出てくるのは、2条1号が建築物に「これに附属する門若しくは塀」を含めているからです。定義上は門も塀も建築物なので、外さないと防火地域内のブロック塀にまで61条がかかってしまいます。
外れる範囲を裏返すと、規制が残るのは、高さ2メートルを超える門・塀のうち、防火地域内にある建築物に附属するものと、準防火地域内にある木造建築物等に附属するものです。これが施行令136条の2第5号の区分と一致します。準防火地域では、附属する本体が木造建築物等でなければ門・塀は規制されません。
61条2項は「別の建築物とみなす」規定
61条2項は、条文としては短いのに見落とされやすい規定です。前項に規定する基準の適用上、一の建築物であっても別の建築物とみなすことができる部分として政令で定める部分が二以上ある建築物については、その部分をそれぞれ別の建築物とみなす、というものです。
その政令が施行令109条の8で、「火熱遮断壁等」で区画されている場合における、その火熱遮断壁等により分離された部分と定めています。火熱遮断壁等とは、壁、柱、床その他の建築物の部分または施行令109条の防火設備のうち、五つの技術的基準に適合するものです。基準の中身は、火災継続予測時間のあいだ壁等が構造耐力上支障のある変形等を生じないこと、加熱面以外の面の温度が可燃物燃焼温度以上に上昇しないこと、屋外に火炎を出す原因となる亀裂を生じないこと、壁等以外の部分が倒壊しても自立する構造が保持されること、屋外に出た火炎による他の部分への延焼を有効に防止できること、の五つです。
この規定が効くのは規模の区分の場面です。61条1項の基準は延べ面積と階数で分かれますから、大きな一棟を火熱遮断壁等で二つに分ければ、それぞれの延べ面積で区分を判定できます。同じ発想の規定が21条3項と27条4項にもあり、施行令109条の8はその三つに共通の政令です。
施行令136条の2の五つの区分
具体的な区分は施行令136条の2が定めています。五つの号に分かれ、1号から4号までは、それぞれイとロの二つのルートが用意されています。イが仕様を満たすルート、ロが延焼防止時間で同等性を示すルートです。
1号(もっとも厳しい区分)
対象は、防火地域内にある建築物で階数が3以上のものもしくは延べ面積が100平方メートルを超えるもの、または準防火地域内にある建築物で地階を除く階数が4以上のものもしくは延べ面積が1,500平方メートルを超えるものです。
イは、特定主要構造部が施行令107条各号(耐火性能の基準)または108条の4第1項1号イおよびロに掲げる基準に適合し、かつ外壁開口部設備が109条の2に規定する基準(遮炎性能20分)に適合すること。ロは、その建築物の特定主要構造部、防火設備および消火設備の構造に応じて算出した延焼防止時間が、イの基準に適合すると仮定した場合の延焼防止時間以上であること。
イが従来の耐火建築物に相当し、ロが「耐火建築物等」の「等」にあたる部分です。ロのルートがあるおかげで、スプリンクラーなどの消火設備を評価に取り込んで、骨格の仕様を落とすことができます。性能規定化の実質はここにあります。
2号(準耐火に相当する区分)
対象は、防火地域内にある建築物のうち階数が2以下で延べ面積が100平方メートル以下のもの、または準防火地域内にある建築物のうち地階を除く階数が3で延べ面積が1,500平方メートル以下のもの、もしくは地階を除く階数が2以下で延べ面積が500平方メートルを超え1,500平方メートル以下のものです。
イは、主要構造部が施行令107条の2各号(準耐火性能45分)または109条の3第1号もしくは第2号(外壁耐火型・不燃構造型)に掲げる基準に適合し、かつ外壁開口部設備が1号イの基準のうち外壁開口部設備に係る部分に適合すること。ロは1号と同じ延焼防止時間による同等ルートです。
ここで主語が「特定主要構造部」から「主要構造部」に変わっている点は、先に見た2条の定義の非対称に対応しています。
準防火地域についての読み方に注意が必要です。地階を除く階数が3であれば、延べ面積が1,500平方メートル以下である限りこの2号に入ります。延べ面積400平方メートルの3階建てもここです。階数が2以下のときだけ、延べ面積500平方メートルという線が意味を持ちます。
3号(準防火地域の木造小規模)
対象は、準防火地域内にある建築物のうち地階を除く階数が2以下で延べ面積が500平方メートル以下のもので、木造建築物等に限られるものです。
イは、外壁および軒裏で延焼のおそれのある部分が施行令108条各号(防火性能30分)に掲げる基準に適合し、かつ外壁開口部設備が、周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に加熱開始後20分間、加熱面以外の面(屋内に面するものに限る)に火炎を出さないものであること。ロは延焼防止時間による同等ルートです。
骨格全体ではなく、外壁と軒裏の延焼のおそれのある部分だけを防火構造にすればよい、というのがこの区分の水準です。木造2階建ての一般的な住宅がここに入ります。
4号(準防火地域の非木造小規模)
対象は、同じく準防火地域内で地階を除く階数が2以下、延べ面積500平方メートル以下のもののうち、木造建築物等を除くものです。
イは、外壁開口部設備が3号イの基準のうち外壁開口部設備に係る部分に適合すること。ロは延焼防止時間による同等ルートです。骨格には何も求められず、開口部の防火設備だけが要件になります。骨格が可燃材料でない以上、外壁や軒裏を追加で防火構造にする意味が薄いからです。
3号と4号が木造かどうかで分かれるのは、この規制が全体として「燃えるものを減らす」ではなく「延焼の経路を断つ」ことを目的にしているからだと読めます。
5号(門・塀)
高さが2メートルを超える門または塀で、防火地域内にある建築物に附属するもの、または準防火地域内にある木造建築物等に附属するものについて、延焼防止上支障のない構造であることが求められます。61条1項ただし書の裏返しであることは先に見たとおりです。
階数の数え方が地域で違う
区分を読むときにもっとも見落とされやすいのが、階数の数え方です。
防火地域については「階数が三以上」「階数が二以下」と書かれています。地階を含む階数です。
準防火地域については「地階を除く階数が四以上」「地階を除く階数が三」「地階を除く階数が二以下」と書かれています。地階を除いた階数です。
したがって、地下1階地上2階の建物は、防火地域では階数3として1号に入り、準防火地域では地階を除く階数2として扱われます。同じ建物でも地域によって区分が変わるということです。ここは条文の文言の差なので、正確に読む必要があります。
なお、先に見た施行令107条の備考も「この表における階数の算定については、第二条第一項第八号の規定にかかわらず、地階の部分の階数は、全て算入する」として、地階を数えるかどうかをわざわざ断っています。建築基準法は場所ごとに階数の数え方を書き分ける法律だ、という前提を持っておくと読み違えが減ります。
判定の手順を固定する
区分の判定は、次の順で機械的に処理すると崩れません。
第一に、地域を確認する。防火地域か準防火地域か。第二に、その地域に対応した数え方で階数を出す。防火地域なら地階込み、準防火地域なら地階抜き。第三に、延べ面積を出す。第四に、階数と延べ面積の両方を1号の要件に当ててみて、どちらか一方でも該当すれば1号。第五に、該当しなければ2号以下へ下りる。
1号が「もしくは」でつながれている点は重要です。防火地域なら「階数が3以上のもの」か「延べ面積が100平方メートルを超えるもの」のどちらかに当たれば1号です。平屋でも延べ面積が150平方メートルあれば1号に入ります。準防火地域も同様で、地階を除く階数が2でも延べ面積が1,600平方メートルあれば1号です。両方を満たす必要はありません。
数字の整理
規模の数字を並べておきます。防火地域は階数3、延べ面積100平方メートル。準防火地域は地階を除く階数4と3と2、延べ面積1,500平方メートルと500平方メートル。
防火地域のほうが小さな建物から厳しい基準がかかります。市街地の中心部に指定されることを想定した規制なので、当然の設計です。法令上の制限で出てくる数字を横断でつかむには建築基準法の数字|意味から覚える整理法と法令上の制限の暗記法|語呂合わせと横断整理テクニックが使えます。
屋根・外壁・看板の規定
61条だけが防火地域の規制ではありません。62条から64条までに、対象を絞った規定が三つ置かれています。
屋根(62条)
62条は、防火地域または準防火地域内の建築物の屋根の構造について、市街地における火災を想定した火の粉による建築物の火災の発生を防止するために屋根に必要とされる性能に関して、建築物の構造および用途の区分に応じて政令で定める技術的基準に適合するものとしなければならないと定めています。
「建築物の構造及び用途の区分に応じて」という一句が入っている点に注意してください。61条が「防火地域及び準防火地域の別並びに建築物の規模に応じて」であるのに対し、62条は地域の別でも規模でもなく、構造と用途で分かれます。
施行令136条の2の2が基準を具体化しており、屋根が市街地における通常の火災による火の粉により防火上有害な発炎をしないこと、火の粉により屋内に達する防火上有害な溶融、亀裂その他の損傷を生じないことの二つを求めています。ただし、不燃性の物品を保管する倉庫など国土交通大臣が定める用途に供する建築物等については、第1号(発炎しないこと)だけでよいとされています。
延焼は隣家から横に伝わるだけではありません。火災の際には火の粉が舞い上がり、風に乗って離れた建物の屋根に落ちます。屋根を規制するのは、この経路を断つためです。61条の規制が横方向の延焼を、62条が上からの飛び火を防いでいる、と整理できます。
62条には規模による除外がありません。防火地域・準防火地域内であれば、どんなに小さな建築物でも屋根の規定は働きます。
22条区域との対比
62条と対になるのが22条です。22条1項は、特定行政庁が防火地域および準防火地域以外の市街地について指定する区域内にある建築物の屋根について、通常の火災を想定した火の粉による建築物の火災の発生を防止するために屋根に必要とされる性能に関する基準に適合させなければならないと定めています。いわゆる22条区域、屋根不燃区域です。
三点で62条と違います。第一に、指定するのは特定行政庁であって都市計画ではありません。同条2項は、指定に際して都市計画区域内の区域については都道府県都市計画審議会の意見を聴き、その他の区域については関係市町村の同意を得なければならないとしています。第二に、対象区域は「防火地域及び準防火地域以外の市街地」ですから、防火地域・準防火地域とは絶対に重なりません。第三に、22条1項にはただし書があり、茶室、あずまやその他これらに類する建築物、または延べ面積が10平方メートル以内の物置、納屋その他これらに類する建築物の屋根については、延焼のおそれのある部分以外の部分が除かれます。62条にはこの除外がありません。
22条区域には、屋根のほかに23条(木造建築物等の外壁で延焼のおそれのある部分を準防火性能のある構造にする)と25条(延べ面積1,000平方メートルを超える木造建築物等の外壁・軒裏の延焼のおそれのある部分を防火構造にし、屋根を22条1項の構造にする)が付いてきます。25条は22条区域に限らず適用される点にも注意してください。
そして24条です。「建築物が第二十二条第一項の市街地の区域の内外にわたる場合においては、その全部について同項の市街地の区域内の建築物に関する規定を適用する。」これだけで、ただし書がありません。65条には防火壁による例外があるのに、24条にはない。同じ「厳しいほうに合わせる」規定でも、例外の有無が違います。
隣地境界線に接する外壁(63条)
63条は「防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる」と定めています。
これは規制ではなく緩和です。民法234条1項は、建物を築造するには境界線から50センチメートル以上の距離を保たなければならないと定めていますが、外壁が耐火構造であれば、この距離を置かずに境界線に接して建てられます。
理由は明快です。50センチメートルの距離は延焼を防ぐために置かれているところ、外壁が耐火構造であれば距離がなくても延焼のおそれが小さいからです。防火地域では敷地を目一杯使いたい場面が多いので、実務上も意味の大きい規定です。
両者の関係については最高裁の判断があります。最判平成元年9月19日(民集43巻8号955頁)は、当時の建築基準法65条(現行63条)について、同条所定の建築物に限り、その建築については民法234条1項の規定の適用が排除される旨を定めたものと解するのが相当である、と判示しました。裁判要旨は「建築基準法六五条所定の建築物の建築には、民法二三四条一項は適用されない」です。
この判決の意味は二段構えです。第一に、建築基準法63条は民法234条1項の特則であり、両者が併存して民法が別に働くわけではない。第二に、特則が及ぶのは同条所定の建築物、すなわち防火地域または準防火地域内にある外壁が耐火構造の建築物に限られる。したがって、防火地域内であっても外壁が耐火構造でなければ、民法234条1項の50センチメートルは生きています。準耐火構造では足りない点も、条文が「耐火構造のもの」としていることから読めます。
民法234条2項は、違反して建築をしようとする者があるときは隣地の所有者が建築を中止させまたは変更させることができるとし、ただし建築に着手した時から1年を経過し、または建物が完成した後は損害賠償の請求のみをすることができるとしています。63条が適用される場面では、この差止請求そのものが立たなくなります。
看板等の防火措置(64条)
64条は、防火地域内にある看板、広告塔、装飾塔その他これらに類する工作物で、建築物の屋上に設けるものまたは高さが3メートルを超えるものについて、その主要な部分を不燃材料で造り、または覆わなければならないと定めています。
三つの要素を押さえてください。第一に、適用されるのは防火地域内だけで、準防火地域には適用がありません。この節の他の規定が「防火地域又は準防火地域内」と書いているなかで、64条だけが「防火地域内」です。第二に、対象は建築物の屋上に設けるもの、または高さが3メートルを超えるもののいずれかです。屋上に設けるものであれば高さは問いません。第三に、求められるのは不燃材料で造るか覆うことで、建築物本体のような耐火性能までは要求されません。
不燃材料は2条9号の定義で、不燃性能に関して政令で定める技術的基準に適合するものとして大臣が定めまたは認定したものです。「不燃材料で造り、又は覆わなければならない」という選択肢が条文に書かれているので、既存の看板に不燃材料を張って対応することもできます。
仮設建築物の扱い(85条)
61条以下の規制がどこまで貫徹するかを示すのが85条です。
85条1項は、非常災害があった場合において、非常災害区域等の内では、災害により破損した建築物の応急の修繕、または一定の応急仮設建築物の建築でその災害が発生した日から1月以内に工事に着手するものについて、建築基準法令の規定を適用しないとしています。対象は、国・地方公共団体・日本赤十字社が災害救助のために建築するものと、被災者が自ら使用するために建築する延べ面積30平方メートル以内のものです。ところが、ただし書が「防火地域内に建築する場合については、この限りでない」としています。災害時の応急仮設建築物ですら、防火地域では建築基準法令の適用を免れません。
85条2項は、災害があった場合に建築する停車場・官公署等の応急仮設建築物、または工事施工のために現場に設ける事務所、下小屋、材料置場その他の仮設建築物について、6条から7条の6まで、21条から23条まで、26条、35条などの規定と第3章(集団規定)の規定を適用しないとしています。防火地域の規制は第3章にありますから、原則として外れます。ところが、ここにもただし書があります。「防火地域又は準防火地域内にある延べ面積が五十平方メートルを超えるものについては、第六十二条の規定の適用があるものとする。」
外れないのは62条、つまり屋根だけです。61条の構造規制は外れたままで、屋根の飛び火対策だけが残る。工事現場の仮設事務所であっても、防火地域または準防火地域内で延べ面積50平方メートルを超えるなら屋根の基準を満たさなければならない、ということです。61条が残ると読むと誤りになります。
38条の準用(66条)
66条は、予想しない特殊の構造方法または建築材料を用いる建築物について、38条の規定をこの節の規定およびこれに基づく命令の規定の適用について準用するとしています。38条は、そうした建築物について国土交通大臣がその構造方法等が安全上・防火上・衛生上支障がないと認める場合に規定を適用しない、という大臣認定の仕組みです。性能規定化された61条にさらに逃げ道が用意されている形で、条文の階層としては最上位の例外にあたります。
建蔽率の緩和(53条)
53条3項の二つの加算
防火地域の規制は建蔽率とセットで問われます。耐火性能の高い建物を建てるなら、敷地を広く使ってよい、という緩和があるからです。
53条3項1号は、防火地域内にあるイに該当する建築物、または準防火地域内にあるイもしくはロのいずれかに該当する建築物について、建蔽率の限度に10分の1を加えると定めています。イが耐火建築物等、ロが準耐火建築物等です。
ここで条文の括弧書きに注意してください。防火地域については「第一項第二号から第四号までの規定により建蔽率の限度が十分の八とされている地域を除く」とあります。1項2号は第一種住居地域・第二種住居地域・準住居地域・準工業地域(10分の5、6、8のうち都市計画で定めたもの)、3号は近隣商業地域(10分の6または8)、4号は商業地域(10分の8で固定)です。これらの地域で限度が10分の8とされている場合は、この加算の対象から外れています。理由は後で述べます。
準防火地域については括弧書きがなく、耐火建築物等だけでなく準耐火建築物等でも加算されます。防火地域では耐火建築物等に限られるのに対し、準防火地域では準耐火建築物等でもよい。この違いが問われます。厳しい地域のほうが緩和の条件も厳しい、という向きです。
53条3項2号は、街区の角にある敷地またはこれに準ずる敷地で特定行政庁が指定するものの内にある建築物について、10分の1を加えると定めています。いわゆる角地緩和です。条文が「特定行政庁が指定するもの」としているので、角地であれば当然に緩和されるわけではありません。
そして3項の柱書が、1号または2号のいずれかに該当する建築物には10分の1を、1号および2号の両方に該当する建築物には10分の2を加えるとしています。重複適用が明文で認められています。
なお3項の柱書は「前二項の規定の適用については」と書いています。前二項とは1項(各地域の限度)と2項(敷地が二以上の地域にわたる場合の加重平均)です。したがって加算は、加重平均を計算する前の各地域の限度に対して行われます。計算の順序が問われる場面での根拠になります。加重平均そのものの手順は建ぺい率と容積率の計算問題攻略|角地緩和・前面道路制限で扱っています。
53条6項の適用除外
加算とは別に、制限そのものが適用されない場合があります。
53条6項1号は、防火地域のうち建蔽率の限度が10分の8とされている地域内にある耐火建築物等について、前各項の規定を適用しないと定めています。10分の1を加算して10分の9にするのではなく、建蔽率の制限がかからなくなります。
3項1号が10分の8の地域を除いていたのは、その地域が6項1号で処理されるからです。二重に適用されないように条文が書き分けられています。加算と適用除外は、結論の数値が近くても条文の作りが違うので、選択肢の言い回しで問われます。
6項1号の要件は三つです。防火地域であること、建蔽率の限度が10分の8とされている地域であること、耐火建築物等であること。準防火地域では働きません。準耐火建築物等でも働きません。10分の8でない防火地域でも働きません。ひとつでも欠ければ3項1号の加算に戻ります。
同項2号は、巡査派出所、公衆便所、公共用歩廊その他これらに類するものについて適用しないとしています。3号は、公園、広場、道路、川その他これらに類するものの内にある建築物で特定行政庁が安全上、防火上および衛生上支障がないと認めて許可したものです。2号は許可が要らず、3号は許可が要る点が違います。
敷地が地域の内外にわたるとき(53条7項・8項)
計算問題で頻出なのがここです。
53条7項は、建築物の敷地が防火地域の内外にわたる場合において、その敷地内の建築物の全部が耐火建築物等であるときは、その敷地は全て防火地域内にあるものとみなして、3項1号または6項1号を適用すると定めています。
53条8項は、建築物の敷地が準防火地域と、防火地域および準防火地域以外の区域とにわたる場合において、その敷地内の建築物の全部が耐火建築物等または準耐火建築物等であるときは、その敷地は全て準防火地域内にあるものとみなして、3項1号を適用すると定めています。
三つの点に注意してください。
第一に、7項の「防火地域の内外」の「外」には、準防火地域も、どちらの指定もない区域も含まれます。敷地が防火地域と準防火地域にまたがっている場合は、7項の適用場面です。8項は準防火地域と無指定区域にまたがる場合の規定なので、防火地域が絡むときは使いません。
第二に、要求される建築物の水準が違います。7項は耐火建築物等でなければならず、準耐火建築物等では足りません。8項は耐火建築物等または準耐火建築物等で足ります。みなされる先の地域で要求される水準が、そのまま条件になっています。
第三に、条件は「敷地内の建築物の全部が」であることです。一棟でも満たさない建物があれば、このみなしは働きません。同一敷地内に複数棟がある場合の判定材料になります。
みなしが働いた後は、敷地全体が防火地域内(または準防火地域内)にあるものとして3項1号や6項1号を適用します。つまり、敷地の一部しか防火地域にかかっていなくても、建物が要求される性能を満たしていれば敷地全体で緩和を受けられる、という規定です。
建築物が地域の内外にわたる場合
65条は「建築物」を基準にする
65条2項は「建築物が防火地域及び準防火地域にわたる場合においては、その全部について防火地域内の建築物に関する規定を適用する」と定めています。ただし書として、建築物が防火地域外において防火壁で区画されている場合には、その防火壁外の部分については準防火地域内の規定を適用するとしています。
65条1項は、建築物が防火地域または準防火地域と、これらの地域として指定されていない区域とにわたる場合について、その全部についてそれぞれ防火地域または準防火地域内の規定を適用するとし、同じくその地域外において防火壁で区画されている場合の例外を置いています。
厳しいほうに合わせる、というのが原則です。そして防火壁で区画すれば、その外側は別扱いにできます。防火壁が延焼の連鎖を物理的に断ち切るので、区画された向こう側まで厳しい規制をかける必要がない、という理屈です。
1項と2項でただし書の効果が違う点も見ておいてください。1項のただし書は「この限りでない」で終わり、防火壁外の部分には防火地域・準防火地域の規定が適用されません(無指定区域として扱われます)。2項のただし書は「準防火地域内の建築物に関する規定を適用する」と書いており、防火壁外の部分は準防火地域の規制を受けます。もともとその部分が準防火地域にかかっている以上、無規制にはならないからです。
なお、防火壁は26条が定めるもので、延べ面積が1,000平方メートルを超える建築物を防火上有効な構造の防火壁または防火床によって区画し、各区画の床面積の合計をそれぞれ1,000平方メートル以内とする、という規定に出てきます。61条2項の「火熱遮断壁等」とは別の概念です。65条が使うのは防火壁、61条2項が使うのは火熱遮断壁等。混ぜないでください。
主語が「敷地」ではない
ここが最も見落とされやすい点です。65条は「建築物が……わたる場合」と書いています。敷地ではありません。
同じ防火の分野でも、53条7項・8項は「建築物の敷地が……わたる場合」と書いており、主語が敷地です。建蔽率の緩和は敷地単位の話、構造規制は建築物単位の話、という違いがあります。
敷地が防火地域と準防火地域にまたがっていても、建物自体が準防火地域の側にしか建っていなければ、65条2項は働きません。その建物は準防火地域の建築物として61条の適用を受けます。逆に建物が両方にかかっていれば、敷地の大部分が準防火地域であっても、建築物の全部に防火地域の規定が適用されます。
そして同じ事案で、53条7項の判定は別に行われます。敷地が防火地域の内外にわたり、敷地内の建築物の全部が耐火建築物等であれば、建蔽率については敷地全体を防火地域内とみなして緩和が働きます。構造規制の話と建蔽率の話を、一つの事案の中で別々に処理する必要がある、ということです。
三つの処理を並べて覚える
敷地や建築物が二以上の地域にまたがる場合の処理は、制限の種類によって三通りに分かれます。
用途制限は過半主義です。敷地の過半が属する用途地域の規定を、敷地全体に適用します(91条)。
建蔽率と容積率は加重平均です。それぞれの地域の限度に、その地域に属する敷地部分の面積の割合を乗じて合計します(53条2項、52条7項)。
防火地域と準防火地域は、厳しいほうを建築物の全部に適用します(65条)。
なぜ扱いが違うのか。用途制限は「その場所にどういう建物がふさわしいか」という判断なので、多数を占める地域の性格に従わせるのが自然です。建蔽率と容積率は量の制限なので、按分すれば公平に配分できます。これに対し防火は安全に関わり、按分も多数決も意味を持ちません。建物の一部だけ燃えにくくしても延焼は止まらないからです。だから厳しいほうに合わせます。
この理屈を押さえておけば、三つを丸暗記しなくても導けます。斜線制限のまたがる場合の処理(56条5項の部分ごとの適用)とあわせて整理すると、さらに見通しがよくなります。高さ制限と斜線制限|どの地域に何がかかるかを参照してください。用途地域をまたぐ場合の過半主義は用途地域13種類と建築制限と用途地域13種の覚え方|境界線で押さえる暗記法で扱っています。
特定防災街区整備地区(67条)
どこに定められるか
防火地域・準防火地域と並ぶ制度として、特定防災街区整備地区があります。都市計画法8条1項5号の2が地域地区の種類として掲げ、密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律31条1項がその要件を定めています。
31条1項は、密集市街地内の土地の区域について、当該区域およびその周辺の密集市街地における特定防災機能の確保ならびに当該区域における土地の合理的かつ健全な利用を図るため、都市計画に特定防災街区整備地区を定めることができるとしています。密集市街地とは、老朽化した木造の建築物が密集しており、かつ十分な公共施設が整備されていないことその他の土地利用の状況から、特定防災機能が確保されていない市街地です(同法2条1号)。特定防災機能とは、火事または地震が発生した場合において延焼防止上および避難上確保されるべき機能をいいます(同条3号)。
重要なのは31条2項です。特定防災街区整備地区は「防火地域又は準防火地域が定められている土地の区域のうち」に定めるものとされています。つまり、防火地域か準防火地域が先にあって、その上に重ねて指定される地区です。防火地域でも準防火地域でもない場所に特定防災街区整備地区は定められません。地域地区が層状に重なる仕組みについては地区計画|街区の単位まで縮尺を落とすでも扱っています。
規制の書き方が違う
建築基準法67条1項は「特定防災街区整備地区内にある建築物は、耐火建築物等又は準耐火建築物等としなければならない」と定めています。61条のように規模による区分がなく、原則としてすべての建築物が対象です。
ただし書に四つの例外があります。第一に、延べ面積が50平方メートル以内の平家建ての附属建築物で、外壁および軒裏が防火構造のもの。第二に、卸売市場の上家、機械製作工場その他これらと同等以上に火災の発生のおそれが少ない用途に供する建築物で、主要構造部が不燃材料で造られたものその他これに類する構造のもの。第三に、高さ2メートルを超える門または塀で、不燃材料で造られ、または覆われたもの。第四に、高さ2メートル以下の門または塀です。
同条2項は、建築物が特定防災街区整備地区とそれ以外の区域にわたる場合について、その全部に1項を適用するとし、地区外において防火壁で区画されている場合の例外を置いています。65条と同じ構造です。
さらに67条は、防火地域にはない規律を重ねます。3項は、建築物の敷地面積が都市計画で定められた最低限度以上でなければならないとし、公衆便所・巡査派出所その他これらに類する公益上必要な建築物と、特定行政庁が用途上または構造上やむを得ないと認めて許可したものを除いています。5項は壁面の位置の制限で、都市計画で壁面の位置の制限が定められたときは、地盤面下の部分を除き、その制限に反して建築してはならないとしています。6項は、敷地が防災都市計画施設に接する建築物について、間口率の最低限度と高さの最低限度を都市計画で定めることができるとし、7項は、最低限度より低い高さの部分について空隙のない壁が設けられる等防火上有効な構造としなければならないとしています。
防火地域が構造だけを規制するのに対し、こちらは敷地の大きさ、建物の位置、道路に面する部分の長さ、建物の高さの下限まで規律します。延焼を止めるだけでなく、防災都市計画施設に沿って壁のような建物列を作り、市街地全体の防災機能を確保する発想だからです。「高さの最低限度」という、宅建の他の分野ではまず出てこない規制が入っているのはそのためです。
密集市街地の防災に関わる制度としては、盛土や造成の側から規律する盛土規制法|規制区域と許可・届出の全体像と造成宅地防災区域と特定盛土等規制区域|工事規制区域との違いもあります。どの法律がどのリスクを見ているかを分けて持つと混ざりません。
建築確認・既存不適格・重要事項説明との接続
建築確認の10平方メートル特例が効かない
防火地域・準防火地域は、建築確認の要否にも影響します。
6条2項は、防火地域および準防火地域外において建築物を増築し、改築し、または移転しようとする場合で、その増築、改築または移転に係る部分の床面積の合計が10平方メートル以内であるときについて、1項を適用しないとしています。
裏返せば、防火地域または準防火地域の内であれば、増築等の部分が10平方メートル以内であっても建築確認が必要です。「10平方メートル以内の増築に確認は不要」と覚えていると、防火地域の事例で誤ります。
条文が「防火地域及び準防火地域外において」という書き方をしているので、地域の内側では例外が働かない、という読み方になります。また、この特例が対象にしているのは増築・改築・移転の三つだけで、新築は含まれません。地域の外であっても、10平方メートルの新築に確認が不要になるわけではない(6条1項各号に該当すれば確認が要る)点も押さえてください。建築確認の対象と手続の流れは建築確認|対象となる規模と検査の流れに、開発許可との関係は開発許可と建築確認|二つの制度は独立しているにまとめてあります。
既存不適格の枠組み(3条2項・3項2号)
3条2項は、規定の施行または適用の際に現に存する建築物がその規定に適合しない場合、その建築物には当該規定を適用しないとしています。いわゆる既存不適格です。
3条3項2号は、この既存不適格の扱いが働く場面を具体的に列挙しており、その中に「防火地域若しくは準防火地域に関する都市計画の決定若しくは変更」により「第六十一条に規定する建築物……に関する制限」に変更があった場合が明示されています。
つまり、後から防火地域に指定された区域の中に、指定前から建っている建物がある場合、その建物は61条の基準に適合していなくても直ちに違反建築物にはなりません。ただし、増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替を行うときは3条3項3号により既存不適格の保護が外れます。既存不適格建築物の扱い全般は建ぺい率と容積率とは|制度の意味と物件の見方で扱っています。
「防火地域の指定があった時点で既存の建物はすべて耐火建築物等にしなければならない」という肢は、この3条2項を見落としたものです。都市計画の決定・変更で既存の建物が一斉に違法になる法制度は、建築基準法には用意されていません。
重要事項説明での扱い
宅建業法35条1項2号は、都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で政令で定めるものに関する事項の概要を、説明事項としています。その政令が宅地建物取引業法施行令3条です。
同条1項2号は建築基準法の規定を列挙しており、そこに「第六十一条」が入っています。53条1項から8項まで、67条1項および3項から7項までも同じ列挙の中にあります。したがって、売買・交換の重要事項説明では、防火地域の指定、それに伴う61条の構造規制、53条の建蔽率とその緩和、特定防災街区整備地区の規制が説明の対象になります。
貸借の場合は範囲が変わります。同条2項は、宅地の貸借について、1項の制限のうち都市計画法52条の3第2項・4項などいくつかを除いたものが対象になるとしており、建築基準法61条はこの除外リストに入っていません。したがって宅地の貸借でも説明対象です。これに対し同条3項は、建物の貸借について、新住宅市街地開発法32条1項、新都市基盤整備法51条1項、流通業務市街地の整備に関する法律38条1項の三つだけを対象としています。建築基準法61条は入っていません。
まとめると、防火地域の制限は、売買・交換と宅地の貸借では説明が必要、建物の貸借では不要です。借りて住むだけの人に、その建物をどういう構造で建てなければならなかったかを説明しても意味がないからです。35条書面の記載事項の全体像は35条書面の記載事項一覧|重要事項説明書に何を書くかに、貸借に固有の扱いは賃貸の重要事項説明|貸借に固有の項目と売買との違いにあります。調査の順序としては物件調査|35条の説明事項から逆算して決めると重要事項説明書の読み方|受け取る側が確認すべきことが参考になります。
物件を見るときに効いてくること
この規制は、実際の物件でも意味を持ちます。
第一に、建築費が変わります。同じ規模の建物でも、防火地域では求められる性能が高くなるぶん、工事費が上がります。土地の価格だけを比べて判断すると、総額で見誤ることがあります。建物の構造と材料の基礎は土地・建物の知識|地形と構造を成り立ちから読むで扱っています。
第二に、建てられる大きさが変わります。53条3項1号の加算があるので、耐火建築物等にすれば建蔽率が10分の1広がります。角地であればさらに10分の1。狭い敷地では、この差が計画を左右します。建蔽率の限度が10分の8とされている商業地域で防火地域であれば、耐火建築物等にすることで建蔽率の制限そのものがなくなります。
第三に、増築や改築のハードルが変わります。地域の外なら10平方メートル以内の増築に建築確認は要りませんが、防火地域・準防火地域の内では必要です。小規模な増築でも手続が発生します。
第四に、隣地との距離の扱いが変わります。63条により外壁が耐火構造であれば隣地境界線に接して設けられるので、民法234条1項の50センチメートルを確保する必要がありません。狭小地では設計の自由度に直結します。
道路との関係を含めた確認の手順は接道義務|2メートル要件と例外・条例による付加とセットバックとは?道路幅員4mルールをわかりやすく解説を参照してください。広告に載せる制限事項の書き方は不動産広告の表示基準|徒歩1分80mと新築の定義で扱っています。
試験での出題ポイント
法令上の制限は8問しか出ないので、どの論点にどれだけ時間をかけるかの見積りが要ります。全体の配点は法令上の制限は何問出る?8問の内訳、頻出度は法令上の制限の頻出論点|3層に分けて攻めるにまとめています。以下は、防火地域について実際に作られる誤りの型です。
「耐火建築物」と「耐火建築物等」を混ぜる
2019年の改正以降、53条3項1号などが使う語は「耐火建築物等」です。耐火建築物またはこれと同等以上の延焼防止性能を有するものとして政令で定める建築物を指します。「耐火建築物でなければ緩和を受けられない」という肢は、現行法の枠組みと合いません。同様に「準耐火建築物等」も、準耐火建築物とこれと同等以上の性能を持つものを含みます。
一字の有無で正誤が動くタイプの引っかけです。この形の作問は他の分野にも共通するので、宅建の引っかけ表現パターン|2,000肢で検証とあわせて読んでおくと反応が速くなります。
準防火地域の区分を粗くする
準防火地域について「500平方メートル以下なら一律に軽い基準でよい」とする肢は誤りです。施行令136条の2の2号は、地階を除く階数が3で延べ面積1,500平方メートル以下のものを含んでいます。つまり3階建てであれば、延べ面積が500平方メートル以下でも2号の区分に入ります。階数と延べ面積の両方を見る必要があります。
逆に、階数が2以下でも延べ面積が500平方メートルを超えれば2号です。500平方メートルという線が意味を持つのは「地階を除く階数が2以下」のときだけ、という条件を落とさないでください。
階数の数え方を入れ替える
防火地域は「階数」、準防火地域は「地階を除く階数」です。地下1階地上2階の建物について、防火地域では階数3、準防火地域では地階を除く階数2として扱われます。この差を使った肢が作られます。
建蔽率の緩和で準防火地域を落とす
53条3項1号は、準防火地域内については耐火建築物等だけでなく準耐火建築物等も対象にしています。「準防火地域で加算を受けられるのは耐火建築物等に限る」は誤りです。逆に防火地域については耐火建築物等に限られるので、こちらで準耐火建築物等を含める肢も誤りになります。
加算と適用除外を取り違える
建蔽率の限度が10分の8とされている地域の防火地域内にある耐火建築物等は、53条6項1号により制限そのものが適用されません。「10分の1を加算して10分の9になる」という肢は誤りです。また、6項1号は防火地域についてのものなので、「準防火地域でも建蔽率の限度が10分の8であれば制限がなくなる」という肢も誤りです。
みなし規定の要件をずらす
53条7項は「敷地内の建築物の全部が耐火建築物等であるとき」に働きます。「準耐火建築物等であるとき」に7項が働くとする肢、「敷地内の建築物の過半が」とする肢は、いずれも要件のすり替えです。8項は耐火建築物等または準耐火建築物等でよい代わりに、対象が準防火地域と無指定区域にまたがる場合に限られます。
またがる場合の主語をすり替える
65条は建築物が基準、53条7項・8項は敷地が基準です。「建築物の敷地が防火地域と準防火地域にわたる場合、その敷地内のすべての建築物に防火地域の規定が適用される」という肢は、65条2項の主語をすり替えているので誤りになります。また、「過半が属する地域の規定が適用される」という肢は用途制限の処理を持ち込んだもので誤りです。
防火壁の例外を落とす、または広げすぎる
65条1項・2項にはいずれも防火壁による例外があります。「地域にわたる場合は例外なく全部に厳しいほうが適用される」という言い切りは、このただし書を落としています。
逆に、24条には防火壁の例外がありません。「建築物が22条区域の内外にわたる場合も、防火壁で区画すればその外側には適用されない」という肢は、65条のただし書を24条に持ち込んだ誤りです。
看板の規定を準防火地域に広げる
64条は防火地域内についての規定です。「準防火地域内の高さ3メートルを超える看板も不燃材料で造らなければならない」は誤りになります。逆に「防火地域内でも高さ3メートル以下であれば規制されない」という肢も、屋上に設けるものは高さを問わず対象であることを落としているので誤りです。
10平方メートルの例外を地域内でも認める
6条2項の例外は「防火地域及び準防火地域外において」の増築等についてのものです。防火地域または準防火地域の内では、10平方メートル以内でも確認が必要です。
仮設建築物で外れる条文を取り違える
85条2項ただし書が残しているのは62条(屋根)だけです。「防火地域内の仮設事務所は延べ面積50平方メートルを超えると耐火建築物等としなければならない」という肢は、61条まで残ると読んだ誤りです。
準都市計画区域に防火地域を定める
都市計画法8条2項の列挙に5号は入っていません。「準都市計画区域内に準防火地域を定めることができる」は誤りです。高度地区は定められる、という点との対比で問われます。
覚え方・整理の仕方
「防火は小さく、準防火は大きく」
規模の数字は、防火地域が階数3・延べ面積100平方メートル、準防火地域が地階を除く階数4と3と2・延べ面積1,500平方メートルと500平方メートル。防火地域のほうが小さい建物から厳しい基準に入る、という方向で覚えれば、数字の大小を取り違えません。
階数は「防火は地階込み、準防火は地階抜き」
条文の文言そのものを短く持ちます。防火地域が「階数」、準防火地域が「地階を除く階数」。地下がある建物の事例が出たら、この一点を確認します。
時間は「3・2・1・45・30・20」で並べる
耐火性能は柱・はりが最大3時間、壁・床が最大2時間、下層階では1時間。準耐火性能が45分。防火構造が30分。遮炎性能が20分。大きい順に並べると、耐火が最上位で、遮炎(開口部)が最下位という序列がそのまま出ます。開口部の20分がいちばん短いのは、扉は火に耐えるものではなく火炎を遮るものだからです。
緩和は「防火は耐火だけ、準防火は準耐火まで」
53条3項1号の対象を一言で持ちます。厳しい地域のほうが緩和の条件も厳しい、という向きで覚えると自然です。そして「10分の8の防火地域は加算ではなく制限なし」を例外として添えます。
加算は「1号か2号で1割、両方で2割」
53条3項の柱書がそのまま覚え方になります。防火・準防火の要件が1号、角地が2号。どちらかで10分の1、両方で10分の2。
みなしは「行き先の水準がそのまま条件」
53条7項は防火地域にみなすので耐火建築物等が条件、8項は準防火地域にみなすので準耐火建築物等まででよい。みなされる先で求められる水準が、そのまま「全部が」の中身になる、と一本にすると混ざりません。
またがる場合は「用途は過半、大きさは按分、防火は厳しい方」
三つの処理を一息で唱えます。そして理由を添えます。用途はその場所の性格の話だから多数決、大きさは量の話だから按分、防火は安全の話だから按分も多数決も効かない。理由まで持てば、どれがどれか迷いません。
主語は「防火は建物、建蔽率は敷地」
65条と53条7項・8項の主語の違いを二語で覚えます。構造の規制は建物にかかるもの、建蔽率の緩和は敷地にかかるもの。条文がどちらの語を使っているかを確認する癖をつけてください。
63条は「耐火なら境界に寄せられる」
民法234条1項の50センチメートルの例外です。規制の節の中に一つだけ緩和が混ざっているので、見落とさないように独立して覚えます。最判平成元年9月19日が「特則であり民法234条1項は適用されない」と言い切った、という結論までセットにしてください。
64条は「防火地域だけ、屋上か3メートル超」
この節でただ一つ、準防火地域に及ばない規定です。「防火地域だけ」を先に置き、対象が「屋上に設けるもの」または「高さ3メートル超」の二択であることを続けます。
確認は「防火・準防火の中なら10平方メートルでも要る」
6条2項の例外が働くのは地域の外だけ。この一文で足ります。許可・届出・確認といった手続の要否を横断で並べたいときは法令上の制限の横断整理|許可と届出の分かれ目を使ってください。
仮設は「屋根だけ残る」
85条2項ただし書が残すのは62条。仮設建築物で防火地域が絡んだら、まず「屋根だけ」と思い出す。61条の構造規制は外れています。
理解度チェッククイズ
次の記述の正誤を判定してください。
Q1. 準防火地域内において、地階を除く階数が3で延べ面積が400平方メートルの建築物を建築する場合、外壁の開口部に一定の防火設備を設ければ足り、主要構造部について準耐火建築物と同等の基準は求められない。
答えは誤りです。建築基準法施行令136条の2の2号は、準防火地域内にある建築物のうち「地階を除く階数が三で延べ面積が千五百平方メートル以下のもの」を挙げており、延べ面積400平方メートルの3階建てはこの区分に入ります。同号イは、主要構造部が施行令107条の2各号または109条の3第1号もしくは第2号に掲げる基準に適合することを求めており、従来の準耐火建築物に相当する水準です。延べ面積500平方メートル以下だからといって軽い区分になるわけではなく、階数と延べ面積の両方を見る必要があります。3号・4号の軽い区分に入るのは、地階を除く階数が2以下かつ延べ面積500平方メートル以下のものです。
Q2. 防火地域内で、建蔽率の限度が10分の8と定められている地域において耐火建築物等を建築する場合、建蔽率の限度は10分の9となる。
答えは誤りです。53条6項1号は、防火地域のうち建蔽率の限度が10分の8とされている地域内にある耐火建築物等について「前各項の規定は、適用しない」と定めています。加算されるのではなく、建蔽率の制限そのものがかかりません。なお53条3項1号は防火地域について「第一項第二号から第四号までの規定により建蔽率の限度が十分の八とされている地域を除く」と括弧書きで除外しており、二重に適用されないように書き分けられています。加算と適用除外は条文の作りが違います。
Q3. 建築物が防火地域と準防火地域にわたる場合、その建築物の敷地の過半が属する地域の規定が、建築物の全部について適用される。
答えは誤りです。65条2項は「建築物が防火地域及び準防火地域にわたる場合においては、その全部について防火地域内の建築物に関する規定を適用する」と定めています。過半で決めるのではなく、厳しいほうである防火地域の規定が適用されます。過半主義は用途制限の処理です。また65条の主語は「建築物」であって敷地ではない点にも注意してください。なお同項ただし書により、建築物が防火地域外において防火壁で区画されている場合には、その防火壁外の部分について準防火地域内の規定が適用されます。
Q4. 防火地域内において建築物を増築する場合、増築に係る部分の床面積の合計が10平方メートル以内であれば、建築確認を受ける必要はない。
答えは誤りです。6条2項は「防火地域及び準防火地域外において建築物を増築し、改築し、又は移転しようとする場合で、その増築、改築又は移転に係る部分の床面積の合計が十平方メートル以内であるとき」について確認を要しないとしています。例外が働くのは地域の外側だけであり、防火地域または準防火地域の内では、面積の大小にかかわらず建築確認が必要です。なお、この例外の対象は増築・改築・移転の三つで、新築は初めから含まれていません。
Q5. 建築物の敷地が防火地域と準防火地域にわたる場合において、その敷地内の建築物の全部が準耐火建築物等であるときは、その敷地は全て防火地域内にあるものとみなして、建蔽率の緩和が適用される。
答えは誤りです。53条7項は「建築物の敷地が防火地域の内外にわたる場合において、その敷地内の建築物の全部が耐火建築物等であるとき」に、敷地全体を防火地域内とみなすとしています。敷地が防火地域と準防火地域にわたる場合は「防火地域の内外にわたる場合」に当たるので7項の場面ですが、要件は耐火建築物等であり、準耐火建築物等では足りません。準耐火建築物等でよいのは53条8項ですが、こちらは敷地が準防火地域と、防火地域および準防火地域以外の区域とにわたる場合の規定であって、防火地域が絡む場面では使えません。
まとめ
- 防火地域と準防火地域は都市計画法8条1項5号・9条21項が定める地域地区で、市町村が決定します。準都市計画区域には定められません(同法8条2項の列挙に5号がない)。規制の中身を定めるのは建築基準法61条以下で、41条の2により集団規定として都市計画区域内で作動します。
- 61条は2019年6月25日施行の改正で性能規定化され、具体的な規模区分は施行令136条の2に移りました。防火地域は階数3・延べ面積100平方メートル、準防火地域は地階を除く階数4と3と2・延べ面積1,500平方メートルと500平方メートルで区分され、階数の数え方が地域によって違います。各号にはイ(仕様)とロ(延焼防止時間)の二つのルートがあり、これが「耐火建築物等」の「等」の実体です。61条2項と施行令109条の8により、火熱遮断壁等で区画された部分は別の建築物として規模を判定します。
- 62条は屋根、63条は隣地境界線に接する外壁、64条は看板等。64条だけが防火地域限定です。63条について最判平成元年9月19日は、同条所定の建築物には民法234条1項が適用されないと判示しました。85条2項ただし書により、仮設建築物で残るのは62条だけです。
- 建蔽率は53条3項1号により、防火地域内の耐火建築物等または準防火地域内の耐火建築物等もしくは準耐火建築物等について10分の1が加算され、同項2号の角地と重複すれば10分の2になります。ただし建蔽率の限度が10分の8とされている防火地域内の耐火建築物等は、53条6項1号により制限そのものが適用されません。敷地が地域の内外にわたる場合のみなし規定は53条7項・8項にあり、7項は耐火建築物等、8項は耐火建築物等または準耐火建築物等が条件です。
- 建築物が地域にわたる場合は厳しいほうを全部に適用します(65条)。ただし防火壁で区画された部分は別扱いです。22条区域についての24条には、この防火壁の例外がありません。用途制限の過半主義、建蔽率・容積率の加重平均との違いは、防火が安全に関わり按分も多数決も意味を持たないことから導けます。
- 特定防災街区整備地区は、防火地域または準防火地域が定められている土地の区域のうちに定められ(密集市街地整備法31条2項)、67条1項が規模を問わず耐火建築物等または準耐火建築物等を要求します。敷地面積の最低限度、壁面の位置、間口率と高さの最低限度まで規律する点が防火地域と違います。
- 6条2項の10平方メートル特例は地域の外だけ、3条3項2号により後から指定された場合の既存不適格は保護されます。宅建業法施行令3条1項2号に61条が列挙されているので、売買・交換と宅地の貸借では重要事項説明の対象、建物の貸借では対象外です。
宅建試験AIブートラボのアプリでは、防火地域の規模区分と建蔽率の緩和を肢別トレーニングで繰り返し確認できます。