土地区画整理法の施行者|7類型と手続の差
土地区画整理法の施行者7類型を条文で整理。個人・組合・区画整理会社・公的施行の同意要件、縦覧、土地区画整理審議会、仮換地指定の事前手続の違いを解説します。
目次
本記事の役割 — この記事は土地区画整理事業を「誰が施行するか」に絞って扱います。
換地・仮換地・保留地・建築行為等の制限といった事業の中身は土地区画整理事業の全体像にまとめています。
土地区画整理法で施行者の種別が問われるのは、名前を覚えさせたいからではありません。施行者が決まると、その事業でどんな手続が必要になるかが決まるからです。
民間施行と公的施行では、事業を正当化する根拠が違います。個人施行者や土地区画整理組合、区画整理会社は、施行地区内の権利者の同意を基礎にして動きます。誰かの土地を動かす権限は、その人たちが「やろう」と決めたことから出てきます。これに対して都道府県や市町村、国土交通大臣などの公的施行者は、権利者一人ひとりの同意を取りません。公共の利益を理由に事業を進める代わりに、事業計画を公衆の縦覧に供し、利害関係者に意見書を提出する機会を与え、土地区画整理審議会という権利者の代表機関を置きます。
同意を取るか、それとも縦覧と審議会で代替するか。この一本の軸から、認可権者の違い、縦覧の要否、審議会の要否、仮換地指定の事前手続の違い、換地計画の認可の要否、建築行為等の制限の許可権者の違いが、すべて導かれます。本記事では、7つの施行者を条文で確認したうえで、この分岐を一つずつ追いかけます。
なお法令の基準日についても確認しました。土地区画整理法は令和8年法律第23号により2026年5月27日施行の版がありますが、基準日版(2025年6月1日施行)と条単位で比較したところ、本則219条すべてに新設・削除・本文変更がありません。令和8年度の出題範囲を書くうえで支障はありません。
施行者を覚える意味は、手続の分岐がここで決まること
民間施行と公的施行では正当化の筋道が違う
土地区画整理事業は、施行地区内のすべての宅地の位置と形を組み替える事業です。所有権を奪うわけではありませんが、どこに住むかが強制的に変わります。これを正当化する筋道が二つあります。
ひとつは、権利者自身が決めたのだから従え、という筋道です。個人施行、組合施行、区画整理会社による施行がこれに当たります。同意を集めることが手続の中心になります。
もうひとつは、公共の利益のために必要だから従え、という筋道です。都道府県や市町村、国土交通大臣、独立行政法人都市再生機構、地方住宅供給公社による施行がこれです。同意は取りませんが、その代わりに情報を公開し、意見を述べる機会を保障し、権利者の代表を意思決定過程に組み込みます。
分岐する五つの手続
この違いが、具体的には次の五つの手続の差になって現れます。本記事の後半は、この五つを順に確認する構成になっています。
第一に、事業を始めるときの認可の相手方と、基本規則の名前です。個人施行者は規準または規約、組合は定款、区画整理会社は規準、公的施行者は施行規程を定めます。
第二に、事業計画を2週間公衆の縦覧に供する手続の要否です。
第三に、土地区画整理審議会を置くかどうかです。
第四に、仮換地を指定するときの事前手続です。同意を得るのか、審議会の意見を聴くのかが分かれます。
第五に、換地計画について都道府県知事の認可を受けるかどうか、換地処分の公告を誰が行うかです。
施行者は7つある
施行者は法3条、3条の2、3条の3が定めます。数え方によって6つとも8つとも言えますが、条文の並びに沿って7つで整理するのが分かりやすい形です。
個人施行者(3条1項)
3条1項は「宅地について所有権若しくは借地権を有する者又は宅地について所有権若しくは借地権を有する者の同意を得た者は、一人で、又は数人共同して……土地区画整理事業を施行することができる」と定めます。
ここで見落とされやすいのが、施行できるのが権利者本人だけではないという点です。「所有権若しくは借地権を有する者の同意を得た者」も施行できます。ただしただし書があり、この場合は独立行政法人都市再生機構、地方住宅供給公社その他必要な資力・信用・技術的能力を有する者で政令で定めるものに限られます。誰でも同意さえ取れば施行者になれるわけではありません。
なお、3条1項の規定による施行者を、法は9条5項で「個人施行者」と定義しています。
土地区画整理組合(3条2項)
3条2項は「宅地について所有権又は借地権を有する者が設立する土地区画整理組合は、当該権利の目的である宅地を含む一定の区域の土地について土地区画整理事業を施行することができる」と定めます。設立の手続は14条以下に置かれており、本記事でも節を改めて詳しく確認します。
区画整理会社(3条3項)
3条3項は、宅地について所有権または借地権を有する者を株主とする株式会社で、四つの要件すべてに該当するものが施行できると定めます。要件は後の節で確認します。
都道府県または市町村(3条4項)
3条4項は「都道府県又は市町村は、施行区域の土地について土地区画整理事業を施行することができる」と定めます。「施行区域」という語が使われている点に注意してください。後述するとおり、これは都市計画に定められた区域を指す専門用語です。
国土交通大臣(3条5項)
3条5項は、国の利害に重大な関係がある土地区画整理事業で、災害の発生その他特別の事情により急施を要すると認められるもののうち、国土交通大臣が施行する公共施設に関する工事と併せて施行することが必要と認められるもの、または都道府県もしくは市町村が施行することが著しく困難もしくは不適当と認められるものについて、国土交通大臣が自ら施行できると定めます。それ以外については、都道府県または市町村に施行すべきことを指示できます。
「国の利害に重大な関係がある」だけでは足りず、災害等による急施の必要や、都道府県・市町村では困難であることまで求められる、という限定つきの規定です。
独立行政法人都市再生機構(3条の2)
3条の2は、国土交通大臣が一体的かつ総合的な住宅市街地その他の市街地の整備改善を促進すべき相当規模の地区の計画的な整備改善を図るため必要と認める場合などに、機構が施行区域の土地について施行できると定めます。
地方住宅供給公社(3条の3)
3条の3は、公社の行う住宅の用に供する宅地の造成と一体的に土地区画整理事業を施行しなければ居住環境の良好な集団住宅の用に供する宅地として造成することが著しく困難であると認められる場合に、公社が施行区域の土地について施行できると定めます。認めるのは国土交通大臣で、市のみが設立した公社については都道府県知事です。
なお法は、機構と公社をまとめて「機構等」と呼びます(71条の2第1項)。条文が「機構等」と書いていたらこの二つのことです。
施行区域と施行地区は別の言葉
条文を読むときに必ず区別しなければならないのが、施行区域と施行地区です。
2条4項は「施行地区」を、土地区画整理事業を施行する土地の区域と定義します。実際に事業が行われる範囲のことです。
2条8項は「施行区域」を、都市計画法12条2項の規定により土地区画整理事業について都市計画に定められた施行区域と定義します。つまり都市計画決定された区域です。
3条4項以下の公的施行者が「施行区域の土地について」施行できるとされているのは、公的施行が都市計画事業として行われることの反映です。実際、3条の4第1項は「施行区域の土地についての土地区画整理事業は、都市計画事業として施行する」と定めています。都市計画法上の市街地開発事業としての位置づけは都市計画法の全体像、都市計画で定める内容は都市計画の種類で扱っています。
民間施行者は施行区域外でも施行できます。個人施行者と組合と区画整理会社は「一定の区域の土地について」施行できるという書き方になっており、都市計画決定を前提としていません。ここは条文の主語と目的語を丁寧に読むところです。
この節の要点
- 3条1項の個人施行者には、権利者の同意を得た機構等も含まれる。
- 公的施行者は「施行区域の土地について」施行し、都市計画事業として行われる。
- 施行地区は実際の事業範囲、施行区域は都市計画決定された区域。
基本規則の名前が施行者ごとに違う
事業のルールを定める基本規則は、施行者ごとに呼び名が変わります。単なる用語の違いではなく、誰がどうやって定めるかが違うので、条文の位置も別々です。
個人施行者のうち1人で施行する者は規準を、数人共同して施行する者は規約を定めます(4条1項)。記載事項は5条にあり、規準の場合は費用の分担、業務を代表して行う者、会議に関する事項の三つが除かれます。1人で施行するのに会議の定めは不要だからです。
組合は定款を定めます(14条1項)。記載事項は15条で、参加組合員に関する事項、役員の定数・任期・職務の分担・選挙および選任の方法、総会に関する事項、総代会を設ける場合の総代および総代会に関する事項など、団体としての運営に関する項目が並びます。
区画整理会社は規準を定めます(51条の2第1項)。記載事項は51条の3で、個人施行者の規準と似た構成です。
公的施行者は施行規程を定めます(52条1項、66条1項、71条の2第1項)。都道府県または市町村の施行規程は、当該都道府県または市町村の条例で定めます(53条1項)。国土交通大臣の施行規程は国土交通省令で定めます(67条1項)。施行規程の記載事項には、保留地を定めようとする場合の保留地の処分方法と、土地区画整理審議会ならびにその委員および予備委員に関する事項が含まれます(53条2項6号・7号)。民間施行の基本規則にはない項目です。
条文が「規準、規約、定款又は施行規程」と四つを並べて書いているのを見かけたら、それは施行者の種類を問わず適用される規定だという合図です。たとえば103条2項ただし書は「規準、規約、定款又は施行規程に別段の定めがある場合においては」と書いており、どの施行者でも同じ扱いになることが読み取れます。
個人施行は全員の同意で動く
認可は都道府県知事から受ける
4条1項は、個人施行しようとする者は規準または規約と事業計画を定め、その土地区画整理事業の施行について都道府県知事の認可を受けなければならないと定めます。申請は施行地区となるべき区域を管轄する市町村長を経由して行います。
市町村長を経由するというのは組合や区画整理会社でも共通のルールです(14条1項後段、51条の2第1項後段)。認可するのは知事だが、窓口は市町村長だという二段構造を押さえておいてください。
関係権利者全員の同意が要る
8条1項は「第四条第一項に規定する認可を申請しようとする者は、その者以外に施行地区となるべき区域内の宅地について権利を有する者がある場合においては、事業計画についてこれらの者の同意を得なければならない」と定めます。ただし書で、その権利をもって申請者に対抗することができない者は除かれます。
ここで求められているのは「宅地について権利を有する者」の同意です。所有権者と借地権者に限られず、抵当権者なども含まれる広い範囲です。しかも3分の2ではなく全員です。個人施行が小規模な事業でしか使われないのは、この要件のためです。
なお8条2項は、所有権者または借地権者以外の者について同意を得られないとき、またはその者を確知できないときは、その理由を記載した書面を添えて認可を申請できると定めます。抵当権者などについては例外的に同意なしで進める道が用意されています。
縦覧の手続がない
後で見るように、組合・区画整理会社・公的施行者にはいずれも事業計画を2週間公衆の縦覧に供する手続があります。ところが個人施行にはこれがありません。
理由は明快で、関係権利者全員の同意を取っているからです。全員が納得している以上、意見書を提出する機会をあらためて設ける必要がありません。縦覧がないのは個人施行だけという整理は、そのまま出題ポイントになります。
認可の基準と公告
9条1項は、都道府県知事は申請手続が法令に違反していること、規準・規約・事業計画の決定手続または内容が法令に違反していること、市街地とするのに適当でない地域等が施行地区に編入されていること、経済的基礎等が十分でないことのいずれかに該当する事実があると認めるとき以外は認可をしなければならないと定めます。裁量で拒める仕組みではなく、要件に該当しなければ認可する羈束的な建て付けです。
9条2項は、市街化調整区域が施行地区に編入されている場合について、当該区域内で行われる開発行為が都市計画法34条各号のいずれかに該当すると認めるときでなければ認可してはならないと定めます。市街化調整区域の規制との接続点です。市街化調整区域の性格は市街化区域と市街化調整区域、開発許可の基準は開発許可の要否と手続で扱っています。
9条5項は「個人施行者は、第三項の公告があるまでは、施行者として、又は規準若しくは規約若しくは事業計画をもつて第三者に対抗することができない」と定めます。認可を受けただけでは第三者に対抗できず、公告が必要だという構造は、組合(21条7項)や区画整理会社(51条の9第5項)にも共通します。
組合施行は3分の2の同意で不同意者も巻き込む
7人以上が定款と事業計画を定めて知事の認可を受ける
14条1項は「組合を設立しようとする者は、七人以上共同して、定款及び事業計画を定め、その組合の設立について都道府県知事の認可を受けなければならない」と定めます。
7人という数字はここに出てきます。設立しようとする者、つまり発起人にあたる人数です。組合員の人数ではありません。
14条2項は、事業計画の決定に先立って組合を設立する必要があると認める場合に、定款と事業基本方針を定めて認可を受ける道を用意しています。この場合は3項により、設立後に改めて知事の認可を受けて事業計画を定めます。事業計画を後回しにして先に組合を作れる仕組みです。
3分の2以上の同意には地積の要件もある
18条は、認可を申請しようとする者は、定款および事業計画または事業基本方針について、施行地区となるべき区域内の宅地について所有権を有するすべての者およびその区域内の宅地について借地権を有するすべての者のそれぞれの3分の2以上の同意を得なければならないと定めます。
ここまでは多くの教材が書いているとおりです。しかし18条には後段があります。「この場合においては、同意した者が所有するその区域内の宅地の地積と同意した者が有する借地権の目的となつているその区域内の宅地の地積との合計が、その区域内の宅地の総地積と借地権の目的となつている宅地の総地積との合計の三分の二以上でなければならない」。
つまり、人数の3分の2に加えて、地積の3分の2という要件が重なっています。小さい土地を持つ人を大勢集めて数だけ揃えても足りませんし、大地主だけの同意で数を無視することもできません。二重の3分の2だと理解してください。
なお、所有権者と借地権者は「それぞれ」で数えます。所有権者の3分の2と借地権者の3分の2を別々に満たす必要があり、合算して3分の2では足りません。宅地が共有されている場合の地積の計算方法についても3条3項4号後段に持分割合を乗じる旨の規定があり、共有持分の考え方は共有で扱っています。
未登記の借地権は1か月以内に申告しなければ存在しないものとみなされる
18条の同意を計算するには、誰が借地権者かを確定させなければなりません。ところが借地権は登記されていないことが多くあります。そこで19条が申告の手続を定めています。
19条1項は、同意を得ようとする者は、あらかじめ施行地区となるべき区域の公告を市町村長に申請しなければならないと定めます。2項により市町村長が公告し、3項により、公告された区域内の宅地について未登記の借地権を有する者は、公告があった日から1か月以内に、宅地の所有者と連署するか借地権を証する書面を添えて、書面で借地権の種類と内容を申告しなければなりません。
そして4項が「未登記の借地権で前項の規定による申告のないものは、前項の申告の期間を経過した後は、前条の規定の適用については、存しないものとみなす」と定めます。申告しなければ、同意の計算上いないものとして扱われるということです。1か月という期間と、みなしの効果をセットで覚えてください。借地権の対抗要件と登記の関係は借地借家法の全体像、登記記録の見方は登記簿の読み方にまとめています。
事業計画は2週間公衆の縦覧に供される
20条1項は、都道府県知事は認可の申請があった場合、市町村長に当該事業計画を2週間公衆の縦覧に供させなければならないと定めます。
20条2項は、利害関係者は縦覧に供された事業計画について意見がある場合、縦覧期間満了の日の翌日から起算して2週間を経過する日までに、都道府県知事に意見書を提出できると定めます。ただし都市計画において定められた事項については提出できません。
縦覧が2週間、意見書の提出期間がその後さらに2週間という二段の期間です。どちらも2週間なので混ざりやすいのですが、起算点が違います。意見書の起算点は「縦覧期間満了の日の翌日」です。
20条3項は、意見書が提出された場合、知事はその内容を審査し、採択すべきと認めるときは申請者に事業計画の修正を命じ、採択すべきでないと認めるときはその旨を意見書提出者に通知しなければならないと定めます。
組合施行にも縦覧があるという点は、公的施行にだけ縦覧があると覚えていると落とす部分です。組合は不同意者を強制的に組合員にする以上、外部から意見を述べる機会が必要だと考えれば、縦覧がある理由も納得できます。
認可により組合が成立し、法人となる
21条5項は「組合は、第十四条第一項又は第二項に規定する認可により成立する」と定めます。登記によって成立するのではなく、認可によって成立します。
22条は「組合は、法人とする」と定めます。一文だけの条文ですが、組合が権利義務の主体になることを示す重要な規定です。
21条7項は、組合は公告があるまでは組合の成立や定款・事業計画をもって組合員その他の第三者に対抗できないと定めます。成立の時期と対抗できる時期がずれる点に注意してください。
施行地区内の所有者と借地権者は全員が組合員になる
25条1項は「組合が施行する土地区画整理事業に係る施行地区内の宅地について所有権又は借地権を有する者は、すべてその組合の組合員とする」と定めます。
18条の同意は3分の2以上で足りるのですから、残りの3分の1未満の人は同意していません。それでも25条1項により、同意しなかった人も全員が組合員になります。加入するかしないかを選べない強制加入です。この点は繰り返し出題されます。
なお25条1項の対象は所有権者と借地権者だけです。抵当権者や地役権者は組合員になりません。18条の同意の対象が所有権者と借地権者に限られているのと対応しています。個人施行の8条が「権利を有する者」と広く書いているのとは範囲が違うので、混ぜないでください。
25条2項は、未登記の借地権で19条3項等の申告のないものは、組合員の判定においても存在しないものとみなすと定めます。申告を怠ると同意の計算から外れるだけでなく、組合員にもなれないということです。
組合員の権利義務は承継人に移転する
26条1項は「施行地区内の宅地について組合員の有する所有権又は借地権の全部又は一部を承継した者がある場合においては、その組合員がその所有権又は借地権の全部又は一部について組合に対して有する権利義務は、その承継した者に移転する」と定めます。
組合員である地位は宅地の権利に付いて回ります。組合員が土地を売却すれば、買主が組合員になり、賦課金の支払義務なども引き継ぎます。「組合員が宅地を譲渡しても、組合員としての義務は譲渡人に残る」という選択肢は誤りです。
26条2項は、借地権が消滅した場合について、地上権なら宅地の所有者に、賃借権なら宅地の賃貸人に権利義務が移転すると定めます。
組合の機関と議決
役員は理事と監事(27条)
27条1項は、組合に役員として理事および監事を置くと定めます。2項により、理事の定数は5人以上、監事の定数は2人以上とし、それぞれ定款で定めます。
3項により、理事および監事は定款で定めるところにより組合員のうちから総会で選挙します。ただし特別の事情がある場合は、定款で定めるところにより組合員以外の者のうちから総会で選任できます。原則は組合員から、例外的に外部からという構造です。
5項により、任期は5年をこえない範囲内において定款で定めます。
7項から9項までは解任の請求です。組合員は、組合員の3分の1以上の連署をもって、その代表者から理由を記載した書面を組合に提出して、理事または監事の解任を請求できます。請求があると理事は直ちに請求の要旨を公表し、組合員の投票に付さなければならず、投票において過半数の同意があった場合に理事または監事はその地位を失います。3分の1以上の連署と過半数の同意という二段の数字です。
総会の議決事項(31条)
30条は「組合の総会は、総組合員で組織する」と定めます。そして31条が総会の議決を経なければならない事項を12号にわたって列挙しています。
主なものは、定款の変更、事業計画の決定、事業計画または事業基本方針の変更、借入金の借入れとその方法・利率・償還方法、経費の収支予算、賦課金の額および賦課徴収方法、換地計画、仮換地の指定、保留地の処分方法、事業の引継についての同意です。
換地計画と仮換地の指定が総会の議決事項に入っている点は重要です。組合施行では、換地計画も仮換地の指定も理事が勝手に決められません。後述する98条3項の仮換地指定における「総会等の同意」も、ここに根拠があります。
普通議決と特別議決(34条)
34条1項は、総会の会議は定款に特別の定めがある場合を除き、組合員の半数以上が出席しなければ開くことができず、その議事は出席組合員の過半数で決すると定めます。可否同数の場合は議長が決します。
34条2項は特別議決を定めます。対象は、定款の変更のうち政令で定める重要な事項、事業計画または事業基本方針の変更のうち政令で定める重要な事項、事業の引継についての同意、そして組合の解散および合併の決定です。これらについては、組合員の3分の2以上が出席し、施行地区内の宅地について所有権を有する出席組合員およびその地区内の宅地について借地権を有する出席組合員のそれぞれの3分の2以上で決します。しかも18条後段が準用されるので、ここでも地積の3分の2という要件が重なります。
定足数が半数以上から3分の2以上に上がり、議決要件が出席者の過半数から所有権者・借地権者それぞれの3分の2以上に上がる、という二重の加重です。「定款の変更は組合員の3分の2以上の同意で足りる」という書き方は、定足数と、所有権者・借地権者を分けて数えることと、地積要件を落としているので不正確です。
総代会は組合員100人超で設けられる(36条)
36条1項は「組合員の数が百人をこえる組合は、総会に代つてその権限を行わせるために総代会を設けることができる」と定めます。100人ちょうどでは設けられず、超える必要があります。
2項により、総代の定数は組合員の総数の10分の1を下らない範囲内において定款で定めます。ただし組合員の総数が500人を超える組合にあっては、50人以上であることをもって足ります。
3項が重要です。総代会が総会に代わって行う権限からは、理事および監事の選挙・選任と、34条2項の規定に従って議決しなければならない事項が除かれます。つまり特別議決事項と役員の選挙は、総代会では決められません。総会でなければならない事項が残るという構造です。
議決権(38条)
38条1項は「組合員及び総代は、各一箇の議決権及び選挙権を有する」と定めます。持っている土地の広さにかかわらず一人一票です。
ただし2項により、施行地区内の宅地についての所有権と借地権をともに有する組合員は、34条2項の議決については、所有権を有する組合員として、および借地権を有する組合員として、それぞれ1個の議決権を有します。特別議決では所有権者と借地権者を別々に数えるからです。
3項により、組合員は書面または代理人をもって議決権および選挙権を行使できます。4項により、定款で定めれば電磁的方法によることもできます。5項により、書面や電磁的方法で行使した者は定足数の計算上「出席者とみなす」とされています。
6項は「代理人は、同時に十人以上の組合員を代理することができない」と定めます。10人以上は不可、つまり9人までです。境目に注意してください。
定款・事業計画の変更と解散(39条・45条)
39条1項は、組合が定款または事業計画もしくは事業基本方針を変更しようとする場合は、その変更について都道府県知事の認可を受けなければならないと定めます。2項により、事業計画の変更については20条の縦覧の規定が準用されますが、政令で定める軽微な変更は除かれます。
45条1項は組合の解散事由を6つ挙げます。設立についての認可の取消、総会の議決、定款で定めた解散事由の発生、事業の完成またはその完成の不能、合併、事業の引継です。
45条2項により、このうち総会の議決、定款で定めた解散事由の発生、事業の完成またはその完成の不能による解散については、都道府県知事の認可が必要です。認可の取消による解散と合併には認可が要りません。認可の取消は知事自身が行うものですから当然です。
45条4項は、これらの事由により解散しようとする場合において組合に借入金があるときは、その解散について債権者の同意を得なければならないと定めます。債権者を置き去りにして解散できないということです。
区画整理会社は株式会社が施行する
3条3項の四つの要件
区画整理会社になれるのは、宅地について所有権または借地権を有する者を株主とする株式会社で、次の四つの要件すべてに該当するものです。
第1号は、土地区画整理事業の施行を主たる目的とするものであることです。
第2号は、公開会社でないことです。会社法2条5号の公開会社、つまり株式の譲渡制限がない会社は除かれます。株主が自由に入れ替わる会社に事業を任せられないという趣旨です。
第3号は、施行地区となるべき区域内の宅地について所有権または借地権を有する者が、総株主の議決権の過半数を保有していることです。
第4号は、第3号の議決権の過半数を保有している者および当該株式会社が所有する施行地区となるべき区域内の宅地の地積と、それらの者が有する借地権の目的となっている区域内の宅地の地積との合計が、その区域内の宅地の総地積と借地権の目的となっている宅地の総地積との合計の3分の2以上であることです。
議決権は過半数、地積は3分の2以上。二つの数字が別の対象について定められているので、取り違えないでください。
施行には別途3分の2以上の同意が要る
3条3項の要件を満たしても、それだけでは事業を始められません。51条の2第1項により、規準および事業計画を定めて都道府県知事の認可を受ける必要があります。
そして51条の6が、認可を申請しようとする者は規準および事業計画について、施行地区となるべき区域内の宅地について所有権を有するすべての者およびその区域内の宅地について借地権を有するすべての者のそれぞれの3分の2以上の同意を得なければならないと定めます。18条と同じく、地積についても3分の2以上という後段が付いています。
3条3項4号の3分の2は株主構成の要件、51条の6の3分の2は同意の要件です。どちらも3分の2ですが、要求される場面が違います。
51条の8は、区画整理会社についても規準および事業計画を2週間公衆の縦覧に供し、利害関係者が縦覧期間満了の日の翌日から起算して2週間以内に意見書を提出できることを定めます。組合の20条と同じ構造です。
組合との違い
区画整理会社と組合は、どちらも民間の団体が3分の2以上の同意を得て施行する点で似ています。しかし決定的な違いがあります。
組合には強制加入があります。施行地区内の所有者と借地権者は全員が組合員になり(25条1項)、総会で議決権を行使できます。
区画整理会社にはこれがありません。同意しなかった権利者が株主になることはありませんし、株主総会で発言する権利もありません。施行地区内の権利者であっても、会社の外側にいる存在のままです。
その分、区画整理会社には仮換地の指定について独自の手続が用意されています。後述する98条4項です。
公的施行は同意を取らない代わりに縦覧と審議会がある
都道府県または市町村の場合(52条・55条)
52条1項は、都道府県または市町村が3条4項により施行しようとする場合は施行規程および事業計画を定めなければならず、事業計画において定める設計の概要について、都道府県にあっては国土交通大臣の、市町村にあっては都道府県知事の認可を受けなければならないと定めます。
認可の相手方が施行者によって違う点に注意してください。都道府県が施行するなら国土交通大臣、市町村が施行するなら都道府県知事です。自分より上の行政庁から認可を受ける構造になっています。
そして55条1項が、事業計画を定めようとする場合には、都道府県知事または市町村長は事業計画を2週間公衆の縦覧に供しなければならないと定めます。2項により、利害関係者は縦覧期間満了の日の翌日から起算して2週間を経過する日までに都道府県知事に意見書を提出できます。
ここから先が民間施行と違います。55条3項は「都道府県知事は、前項の規定により意見書の提出があつた場合においては、これを都道府県都市計画審議会に付議しなければならない」と定めます。組合の20条3項では知事自身が意見書の内容を審査していましたが、公的施行では都道府県都市計画審議会が審査します。行政が自分の事業について自分で判断することを避ける仕組みです。
55条9項により、事業計画を定めた場合には施行者の名称、事業施行期間、施行地区その他を公告しなければならず、11項により公告があるまでは事業計画をもって第三者に対抗できません。
国土交通大臣の場合(66条・69条)
66条1項は、国土交通大臣が3条5項により施行しようとする場合は施行規程および事業計画を定めなければならないと定めます。認可を受ける規定はありません。国土交通大臣より上の行政庁がないからです。
69条1項は、施行規程および事業計画を2週間公衆の縦覧に供しなければならないと定めます。2項により利害関係者は国土交通大臣に意見書を提出でき、3項により国土交通大臣が内容を審査します。ただし3項後段で、審査しようとするときは施行地区となるべき区域の属する都道府県に置かれる都道府県都市計画審議会の意見を聴かなければならないとされています。
縦覧の対象が「施行規程及び事業計画」である点にも注意してください。都道府県・市町村の55条1項は事業計画だけを縦覧に供します。施行規程が条例で定められ、議会の議決を経るからです。
機構等の場合(71条の2・71条の3)
71条の2第1項は、機構等が施行しようとする場合は施行規程および事業計画を定め、国土交通大臣(市のみが設立した地方公社にあっては都道府県知事)の認可を受けなければならないと定めます。
71条の3第3項は、機構等は事業計画を定めようとする場合、あらかじめ施行地区となるべき区域をその区域に含む地方公共団体の長の意見を聴かなければならないと定めます。地元の自治体を飛び越えて事業を進めさせない仕組みです。
71条の3第4項により施行規程および事業計画が2週間公衆の縦覧に供され、5項により利害関係者は都道府県知事に意見書を提出できます。6項により都道府県知事は都道府県都市計画審議会の意見を聴き、その意見を付して国土交通大臣に送付します。
縦覧がないのは個人施行だけ
ここまでを整理すると、事業計画を2週間公衆の縦覧に供する手続は、組合(20条)、区画整理会社(51条の8)、都道府県・市町村(55条)、国土交通大臣(69条)、機構等(71条の3)のすべてに置かれています。
置かれていないのは個人施行だけです。8条で関係権利者全員の同意を得ているからです。「縦覧は公的施行にだけある」という覚え方は誤りで、正しくは「個人施行にだけない」です。
そして意見書の提出期間は、いずれの条文も「縦覧期間満了の日の翌日から起算して2週間を経過する日まで」で統一されています。施行者によって変わりません。
土地区画整理審議会は公的施行にだけ置かれる
設置の根拠は三つの条文に分かれている
56条1項は「都道府県又は市町村が第三条第四項の規定により施行する土地区画整理事業ごとに、都道府県又は市町村に、土地区画整理審議会を置く」と定めます。
70条1項は、国土交通大臣が施行する土地区画整理事業ごとに、国土交通省に土地区画整理審議会を置くと定めます。3項で56条3項・4項および57条から64条までを準用しています。
71条の4第1項は、機構等が施行する土地区画整理事業ごとに、機構等に土地区画整理審議会を置くと定めます。こちらも3項で同様の準用をしています。
三つの条文に分かれていますが、結論は同じです。公的施行者が施行する場合には必ず審議会が置かれ、個人施行者・組合・区画整理会社には置かれません。組合には総会があり、区画整理会社には株主総会がありますが、公的施行者には権利者が参加する機関がないため、審議会を置いて権利者の意見を反映させるという設計です。
審議会の権限は三つ
56条3項は「審議会は、換地計画、仮換地の指定及び減価補償金の交付に関する事項についてこの法律に定める権限を行う」と定めます。
換地計画、仮換地の指定、減価補償金の交付の三つです。権利者の利害に直接関わる場面に限られており、事業計画の決定や工事の進め方には権限が及びません。
56条4項は「審議会は、その任務を終了した場合においては、廃止されるものとする」と定めます。事業のために置かれる臨時の機関だということです。
組織と委員(57条・58条)
57条は「審議会は、十人から五十人までの範囲内において、政令で定める基準に従つて施行規程で定める数の委員をもつて組織する」と定めます。10人以上50人以下です。
58条1項は、委員は施行地区内の宅地の所有者および施行地区内の宅地について借地権を有する者が、それぞれのうちから各別に選挙すると定めます。それぞれ選挙される委員の数は、所有者の総数と借地権者の総数との割合におおむね比例しなければなりません。所有者と借地権者の利害が対立しうるので、別枠で代表を出す仕組みです。
58条3項は、都道府県知事または市町村長は、事業の施行のため必要があると認める場合には、施行規程で定めるところにより、委員の定数の5分の1をこえない範囲内において、学識経験を有する者のうちから委員を選任できると定めます。選挙ではなく選任です。
58条4項は「施行地区内の宅地の所有者のうちから選挙された委員と施行地区内の宅地について借地権を有する者のうちから選挙された委員とは、相兼ねてはならない」と定めます。所有権と借地権の両方を持っていても、両枠の委員を兼ねることはできません。
58条6項により、委員の任期は5年をこえない範囲内において施行規程で定めます。組合の役員(27条5項)と同じ枠です。
58条7項から9項までは改選の請求です。所有者または借地権者は、それぞれの総数の3分の1以上の者の連署をもって、代表者から理由を記載した書面を都道府県知事または市町村長に提出して、それぞれの選挙に係る委員の改選を請求できます。請求があると請求の要旨が公表され、投票に付され、過半数の同意があった場合に委員はその地位を失います。組合の役員解任(27条7項から9項)と同じ構造です。
評価員も公的施行に置かれる(65条)
65条1項は、都道府県知事または市町村長は、都道府県または市町村が施行する土地区画整理事業ごとに、土地または建築物の評価について経験を有する者3人以上を、審議会の同意を得て、評価員に選任しなければならないと定めます。2項により評価員は非常勤です。
3項は、換地計画において清算金もしくは保留地を定めようとする場合、または減価補償金を交付しようとする場合には、土地および土地について存する権利の価額等を評価しなければならず、その評価については評価員の意見を聴かなければならないと定めます。
71条により国土交通大臣施行に、71条の5により機構等の施行に、それぞれ65条が準用されます。評価員も審議会と同じく公的施行にだけ置かれる仕組みです。
仮換地の指定で事前手続が四つに分かれる
98条3項と4項は、施行者の種別による手続の差が最もはっきり現れる条文です。仮換地の効果そのものは土地区画整理事業の全体像に譲り、ここでは事前手続だけを確認します。
98条3項は、仮換地を指定しようとする場合には、あらかじめその指定について次のようにしなければならないと定めます。
個人施行者は、従前の宅地の所有者およびその宅地について使用収益権をもって施行者に対抗することができる者、ならびに仮換地となるべき宅地の所有者およびその宅地について使用収益権をもって対抗することができる者の同意を得なければなりません。従前の宅地の側と仮換地の側の両方について同意が要る点に注意してください。
組合は、総会もしくはその部会または総代会の同意を得なければなりません。個々の権利者の同意ではなく、組合の意思決定機関の同意です。31条9号が仮換地の指定を総会の議決事項としていることと対応しています。なお35条1項により、施行地区が工区に分かれている場合には総会の部会に仮換地の指定の権限を行わせることができます。
3条4項もしくは5項、3条の2または3条の3の規定による施行者、つまり公的施行者は、土地区画整理審議会の意見を聴かなければなりません。同意ではなく意見です。審議会が反対しても、施行者は指定できます。
そして98条4項が区画整理会社について独立の規定を置いています。区画整理会社は、あらかじめその指定について、施行地区内の宅地について所有権を有するすべての者およびその区域内の宅地について借地権を有するすべての者のそれぞれの3分の2以上の同意を得なければなりません。ここでも地積の3分の2という後段が付いています。
同意(個人)、機関の同意(組合)、3分の2以上の同意(会社)、意見の聴取(公的施行)という四段構えです。公的施行だけが「同意」ではなく「意見」で足りるという点が、この記事の冒頭に置いた軸そのものです。
換地計画の認可と換地処分の公告も分かれる
換地計画の認可が要らない施行者がいる(86条)
86条1項は、施行者は換地計画を定めなければならないとしたうえで、「施行者が個人施行者、組合、区画整理会社、市町村又は機構等であるときは……その換地計画について都道府県知事の認可を受けなければならない」と定めます。
列挙されているのは個人施行者、組合、区画整理会社、市町村、機構等の五つです。都道府県と国土交通大臣が入っていません。都道府県が施行する場合、認可を与えるのは都道府県知事ですから、自分で自分に認可することになってしまいます。国土交通大臣も同様です。だから認可の対象から外れています。
86条2項により、個人施行者、組合、区画整理会社が認可を申請しようとするときは、市町村長を経由します。市町村と機構等は経由の必要がありません。
換地処分の届出と公告(103条)
103条1項は「換地処分は、関係権利者に換地計画において定められた関係事項を通知してするものとする」と定めます。通知の相手方は関係権利者で、これは施行者を問いません。
103条3項は「個人施行者、組合、区画整理会社、市町村又は機構等は、換地処分をした場合においては、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければならない」と定めます。86条1項と同じ五つの施行者です。
103条4項は「国土交通大臣は、換地処分をした場合においては、その旨を公告しなければならない。都道府県知事は、都道府県が換地処分をした場合又は前項の届出があつた場合においては、換地処分があつた旨を公告しなければならない」と定めます。
公告するのは国土交通大臣または都道府県知事であって、施行者ではありません。組合が換地処分をしても、公告するのは組合ではなく都道府県知事です。この主語の入れ替えは出題されやすい部分です。換地処分の効果が公告があった日の翌日から生じることは104条が定めており、効果の中身は土地区画整理事業の全体像、換地処分後の登記の扱いは不動産登記のしくみで扱っています。
建築行為等の制限の許可権者
76条1項は、施行地区内において事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更や建築物その他の工作物の新築・改築・増築、政令で定める移動の容易でない物件の設置・堆積を行おうとする者は、許可を受けなければならないと定めます。制限の中身は土地区画整理事業の全体像に譲り、ここでは施行者による分岐だけを見ます。
許可権者は三段構え
条文はこう書いています。「国土交通大臣が施行する土地区画整理事業にあつては国土交通大臣の、その他の者が施行する土地区画整理事業にあつては都道府県知事(市の区域内において個人施行者、組合若しくは区画整理会社が施行し、又は市が第三条第四項の規定により施行する土地区画整理事業にあつては、当該市の長。以下この条において「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない」。
原則は都道府県知事です。国土交通大臣が施行する場合だけ国土交通大臣になります。そして括弧書きで、市の区域内において個人施行者・組合・区画整理会社が施行する場合と、市が3条4項により施行する場合には、当該市の長が許可権者になります。
町村の区域内であれば、個人施行者や組合が施行していても都道府県知事のままです。市であることが条件になっている点に注意してください。
いずれにせよ、許可権者は施行者ではありません。組合が施行する事業について、組合の許可を受ければよいという選択肢は誤りです。76条2項は「都道府県知事等は、前項に規定する許可の申請があつた場合において、その許可をしようとするときは、施行者の意見を聴かなければならない」と定めており、施行者は意見を述べる立場にとどまります。
制限が始まる公告も施行者ごとに違う
76条1項各号は、制限が始まる起算点となる公告を施行者ごとに書き分けています。
個人施行者は、施行についての認可の公告または施行地区の変更を含む事業計画の変更についての認可の公告(1号)。
組合は、21条3項の公告または事業計画の変更についての認可の公告(2号)。
区画整理会社は、施行についての認可の公告または事業計画の変更についての認可の公告(3号)。
市町村、都道府県または国土交通大臣が3条4項または5項により施行する場合は、事業計画の決定の公告または事業計画の変更の公告(4号)。
機構等が3条の2または3条の3により施行する場合は、施行規程および事業計画の認可の公告または事業計画の変更の認可の公告(5号)。
民間施行は「認可の公告」、公的施行のうち都道府県・市町村・大臣は「決定の公告」、機構等は「認可の公告」という違いです。公的施行者のうち都道府県・市町村・大臣だけが「決定」になっているのは、これらが認可を要しない、または自ら決定する立場にあるためです。
そして終期はいずれも共通で、103条4項の公告、つまり換地処分の公告がある日までです。
試験での出題ポイント
パターン1 7人と3分の2を入れ替える
「土地区画整理組合を設立しようとする者は、3人以上共同して定款および事業計画を定めなければならない」は誤りです。14条1項は7人以上です。「施行地区内の宅地の所有者および借地権者のそれぞれの過半数の同意が必要である」も誤りで、18条は3分の2以上です。
パターン2 地積の要件を落とす
18条・51条の6・98条4項の3分の2は、人数だけでなく地積についても要求されています。「同意した者の人数がそれぞれ3分の2以上であれば足りる」という記述は、後段の地積要件を落としているので不正確です。
パターン3 不同意者を組合員から外す
「組合の設立に同意しなかった宅地の所有者は、組合員とならない」は誤りです。25条1項により、施行地区内の宅地について所有権または借地権を有する者はすべて組合員になります。一方で「施行地区内の宅地に抵当権を有する者も組合員となる」は誤りで、25条1項の対象は所有権者と借地権者です。
パターン4 縦覧を公的施行だけにする
「事業計画の縦覧は、公的施行の場合にのみ行われる」は誤りです。組合(20条)、区画整理会社(51条の8)にも縦覧があります。縦覧がないのは個人施行だけです。
パターン5 審議会をどこにでも置く
「土地区画整理組合が施行する場合、土地区画整理審議会が置かれる」は誤りです。審議会は56条・70条・71条の4により公的施行にだけ置かれます。組合には総会があるからです。
パターン6 仮換地の事前手続をすり替える
「都道府県が施行する土地区画整理事業において仮換地を指定する場合、土地区画整理審議会の同意を得なければならない」は誤りです。98条3項は公的施行者について「意見を聴かなければならない」と定めています。同意ではありません。逆に「組合が仮換地を指定する場合、審議会の意見を聴かなければならない」も誤りで、組合は総会もしくはその部会または総代会の同意です。
パターン7 換地計画の認可を全施行者に課す
「換地計画については、施行者を問わず都道府県知事の認可を受けなければならない」は誤りです。86条1項が列挙するのは個人施行者、組合、区画整理会社、市町村、機構等の五つで、都道府県と国土交通大臣は含まれません。
パターン8 換地処分の公告の主体を施行者にする
「組合が換地処分をした場合、組合は遅滞なくその旨を公告しなければならない」は誤りです。103条3項により組合は都道府県知事に届け出るのであって、公告するのは4項により都道府県知事です。
パターン9 建築行為等の許可権者を施行者にする
「施行地区内で建築物を新築しようとする者は、施行者の許可を受けなければならない」は誤りです。76条1項の許可権者は国土交通大臣または都道府県知事等であり、市の区域内で民間施行者が施行する場合等は市の長です。施行者は2項で意見を聴かれる立場です。
パターン10 総代会の権限を広げる
「総代会は、総会に代わって理事および監事を選挙することができる」は誤りです。36条3項が、理事および監事の選挙・選任と34条2項の特別議決事項を総代会の権限から除いています。法令上の制限の科目全体での得点戦略は法令上の制限の頻出論点、横断的な数字の整理は法令上の制限の横断整理を参考にしてください。
覚え方・整理の仕方
「同意か、縦覧と審議会か」の一本で並べる
7つの施行者を丸暗記するのではなく、権利者の関与のさせ方で三つのグループに分けてください。
第一グループは個人施行です。関係権利者全員の同意を取ります。全員の合意があるので、縦覧も審議会も要りません。
第二グループは組合と区画整理会社です。3分の2以上の同意を取ります。全員ではないので、縦覧と意見書で外部からのチェックが入ります。ただし審議会はありません。組合には総会、会社には株主総会があるからです。
第三グループは公的施行、つまり都道府県・市町村・国土交通大臣・機構等です。同意を取りません。その代わり、縦覧と意見書に加えて審議会を置き、意見書の審査には都道府県都市計画審議会が関与します。
このグループ分けさえできていれば、仮換地の事前手続も、審議会の要否も、そのまま導けます。
数字は要求される対象で束ねる
土地区画整理法の数字は多く見えますが、対象ごとに束ねると整理できます。
同意に関する数字は3分の2です。組合の設立(18条)、区画整理会社の施行(51条の6)、区画整理会社の仮換地指定(98条4項)、組合の特別議決(34条2項)のいずれも3分の2で、しかも人数と地積の両方について要求されます。
人数に関する数字は、組合設立の発起人が7人以上(14条1項)、理事が5人以上・監事が2人以上(27条2項)、総代会の設置が組合員100人超(36条1項)、審議会の委員が10人以上50人以下(57条)、評価員が3人以上(65条1項)です。
期間に関する数字は、縦覧が2週間、意見書の提出が縦覧期間満了の日の翌日から2週間、未登記借地権の申告が公告の日から1か月(19条3項)、役員と審議会委員の任期が5年を超えない範囲(27条5項、58条6項)です。
割合に関する数字は、役員の解任請求と審議会委員の改選請求が3分の1以上の連署(27条7項、58条7項)、学識経験者の委員が定数の5分の1以下(58条3項)、総代の定数が組合員総数の10分の1以上(36条2項)です。
「認可」の相手方は自分より上を見る
認可の相手方を覚えるコツは、施行者より上位の行政庁を探すことです。
個人施行者、組合、区画整理会社は都道府県知事から認可を受けます。市町村は都道府県知事から、都道府県は国土交通大臣から。機構等は国土交通大臣から(市のみが設立した公社は都道府県知事から)。国土交通大臣は誰からも認可を受けません。
換地計画の認可(86条1項)で都道府県と国土交通大臣が抜けているのも、同じ理由から説明できます。自分より上がいないか、自分自身が認可権者だからです。
基本規則の名前は「人・組・社・公」で
規準または規約が個人、定款が組合、規準が会社、施行規程が公的施行です。会社が定款ではなく規準である点だけ引っかかりやすいので、そこを意識して覚えてください。会社法上の定款は当然に存在しますが、土地区画整理法が求めるのは規準です。
用語の対を作る
似た言葉が多いので、対にして覚えると混ざりません。
施行区域は都市計画で定められた区域、施行地区は実際に事業を行う区域。同意は相手の意思が必要、意見の聴取は聴けば足りる。認可は上位庁が与えるもの、公告は効力を第三者に及ぼすためのもの。届出は事後に知らせるだけ。法令上の制限で使われる用語の全体像は法令上の制限の暗記法にもまとめています。
理解度チェッククイズ
Q1. 土地区画整理組合を設立しようとする者は、7人以上共同して定款および事業計画を定め、都道府県知事の認可を受けなければならない。(○か×か)
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○:土地区画整理法14条1項のとおりです。なお、事業計画の決定に先立って組合を設立する必要があると認める場合には、同条2項により定款および事業基本方針を定めて認可を受けることもできます。Q2. 土地区画整理組合の設立に同意しなかった施行地区内の宅地の借地権者は、組合員とならない。(○か×か)
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×:土地区画整理法25条1項は、組合が施行する土地区画整理事業に係る施行地区内の宅地について所有権または借地権を有する者はすべてその組合の組合員とすると定めています。同意の有無を問わず強制的に組合員になります。Q3. 土地区画整理組合が仮換地を指定しようとする場合、あらかじめ土地区画整理審議会の意見を聴かなければならない。(○か×か)
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×:土地区画整理法98条3項は、組合については総会もしくはその部会または総代会の同意を得なければならないと定めています。審議会の意見を聴くのは、3条4項もしくは5項、3条の2または3条の3の規定による施行者、すなわち公的施行者です。そもそも組合には審議会が置かれません。Q4. 個人施行者が施行する土地区画整理事業では、事業計画を2週間公衆の縦覧に供し、利害関係者が意見書を提出することができる。(○か×か)
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×:縦覧と意見書の手続は、組合(20条)、区画整理会社(51条の8)、都道府県・市町村(55条)、国土交通大臣(69条)、機構等(71条の3)に置かれていますが、個人施行にはありません。個人施行では8条により施行地区となるべき区域内の宅地について権利を有する者全員の同意を得るためです。Q5. 都道府県が施行する土地区画整理事業においては、換地計画について都道府県知事の認可を受けなければならない。(○か×か)
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×:土地区画整理法86条1項が認可を要するとしているのは、施行者が個人施行者、組合、区画整理会社、市町村または機構等であるときです。都道府県と国土交通大臣は含まれていません。Q6. 市の区域内において土地区画整理組合が施行する土地区画整理事業の施行地区内で建築物を新築しようとする者は、当該市の長の許可を受けなければならない。(○か×か)
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○:土地区画整理法76条1項の括弧書きは、市の区域内において個人施行者、組合もしくは区画整理会社が施行し、または市が3条4項により施行する土地区画整理事業にあっては当該市の長を許可権者としています。町村の区域内であれば都道府県知事のままです。Q7. 組合員の数が100人を超える組合は総代会を設けることができ、総代会は総会に代わって理事および監事を選挙することができる。(○か×か)
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×:前段は土地区画整理法36条1項のとおり正しいのですが、後段が誤りです。同条3項は、理事および監事の選挙・選任と、34条2項の規定に従って議決しなければならない事項を、総代会の権限から除いています。まとめ
土地区画整理法の施行者は、次の四点に集約できます。
- 施行者は7つで、根拠条文は3条・3条の2・3条の3。 個人施行者、土地区画整理組合、区画整理会社、都道府県または市町村、国土交通大臣、独立行政法人都市再生機構、地方住宅供給公社です。公的施行者は施行区域の土地について施行し、都市計画事業として行われます(3条の4)。
- 同意の重さが手続の差を生む。 個人施行は関係権利者全員の同意(8条)、組合と区画整理会社は所有者・借地権者それぞれ3分の2以上かつ地積3分の2以上の同意(18条・51条の6)、公的施行は同意なしで縦覧と審議会という組み合わせです。縦覧がないのは個人施行だけです。
- 土地区画整理審議会は公的施行にだけ置かれる(56条・70条・71条の4)。 権限は換地計画、仮換地の指定、減価補償金の交付に関する事項に限られます。仮換地の指定では、公的施行者は審議会の「意見を聴く」だけで足り、同意までは要りません(98条3項)。
- 認可と公告の主体は施行者より上位の行政庁。 換地計画の認可を要しないのは都道府県と国土交通大臣(86条1項)、換地処分の公告をするのは施行者ではなく都道府県知事または国土交通大臣(103条4項)、建築行為等の許可権者も施行者ではありません(76条1項)。
換地・仮換地・保留地・清算金といった事業の中身は土地区画整理事業の全体像、都市計画法上の規制との関係は都市計画法による制限、造成工事の規制との棲み分けは宅地造成等の規制で扱っています。
宅建試験AIブートラボでは、土地区画整理法の肢別トレーニングを収録しています。施行者を入れ替えた肢で失点しやすい分野なので、条文の主語を確認しながら繰り返し解いてください。
都市計画法・建築基準法・農地法は数字の暗記が中心です。繰り返しの肢別トレーニングが一番効きます。