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仮登記と本登記の違いとは?順位保全効と1号・2号仮登記

権利関係 読了 約27分

本登記とは対抗力を備えた完成形の登記、仮登記とは順位だけを確保する仮の登記です。1号仮登記と2号仮登記の区別、順位保全効、本登記への移行と利害関係人の承諾までを条文に沿って整理します。

目次

    この記事は、登記制度の全体像を扱う不動産登記の基本の下位にあたり、そのなかから「仮登記」だけを取り出して詳しく解説するものです。登記簿の構造そのものがあいまいなうちは仮登記の話は入ってきにくいので、登記簿の見方を先に読んでおくと理解が速くなります。

    先に結論を述べます。本登記とは、対抗力を備えた完成形の登記です。仮登記とは、対抗力を持たないまま、登記の順位だけを先に確保しておく仮の登記です。仮登記をしても第三者に「この不動産は自分のものだ」と主張することはできません。それでも仮登記をする意味があるのは、後に本登記へ進んだとき、その本登記の順位が仮登記をした時点まで遡るからです(不動産登記法106条)。この「対抗力はない、しかし順位は守られる」という組み合わせが、仮登記という制度のすべてだと言ってよいほどの核心です。

    宅建試験では、この核心に加えて、仮登記を打てる場面が105条1号と2号の二つに分かれること、仮登記から本登記へ移るときに利害関係人の承諾が要る場合があること、申請と抹消が単独でできる場面があることが繰り返し問われます。以下、条文を追いながら順に整理します。

    本登記とは何か

    本登記は「効力が完成した登記」

    本登記は、正式には終局登記と呼ばれます。所有権保存登記、所有権移転登記、抵当権設定登記、抵当権抹消登記など、ふだん「登記をした」と言うときに指しているものはすべて本登記です。登記簿の権利部(甲区・乙区)に、順位番号を与えられて記録されます。

    本登記が本登記たるゆえんは、それが登記に予定された効力を完全に発生させる点にあります。逆に言えば、後で見る仮登記は、この効力のうち一部だけを先取りしている状態にすぎません。両者を比べるには、まず本登記の効力を三つに分けて押さえておく必要があります。

    対抗力

    対抗力とは、自分の権利取得を登記なくして第三者に主張できない、という民法177条の裏返しの効力です。不動産に関する物権の得喪および変更は、登記をしなければ第三者に対抗することができません。二重譲渡の場面で先に登記を備えたほうが勝つ、というルールがここから出てきます。物権変動と登記の関係そのものは物権変動と対抗要件で詳しく扱っていますが、仮登記を理解するうえでは「対抗力は本登記にしかない」という一点を握っておけば足ります。

    この対抗力は、単に「自分が権利者だと言える」だけの話ではありません。同じ不動産をめぐって複数の権利者が現れたとき、誰が優先するかを決める基準そのものになります。だからこそ、対抗力を持たない仮登記は、その段階では権利争いの土俵に上がれません。

    順位確定力

    同一の不動産について複数の登記がされたとき、その優劣は登記の前後で決まります。権利部の甲区どうし、乙区どうしであれば順位番号の順、甲区と乙区の間であれば受付番号の順です。抵当権が一番抵当・二番抵当と並ぶのは、この順位確定力が働いているからです。抵当権の優劣がどのように決まるかは抵当権の基本で扱っています。

    順位が先か後かは、競売の配当や、権利の存続そのものを左右します。仮登記の順位保全効は、この順位確定力を仮登記の時点で先取りする仕掛けだと理解すると、制度の狙いが見えてきます。

    推定力

    登記された権利関係は、いちおう正しいものと推定されます。登記名義人が所有者でないと主張する側が、そうでないことを立証しなければなりません。ただしこれは事実上の推定にとどまり、登記に公信力があるわけではない点に注意が必要です。登記を信じて取引した者が常に保護されるわけではないため、実務では登記簿だけでなく現地や占有状況まで確認します。取引前の調査の考え方は物件調査の進め方にまとめています。

    本登記の効力は、以上の三つです。対抗力、順位確定力、推定力。仮登記との比較は、この三つのうちどれが備わってどれが欠けるか、という形で整理していきます。

    先に結論だけ言えば、仮登記にはこの三つのどれも備わっていません。対抗力はなく、推定力もありません。順位確定力についても、仮登記そのものが順位を確定させるのではなく、後にする本登記の順位を仮登記の時点まで遡らせるという別の形で働きます。これが順位保全効です。つまり仮登記の効力は「対抗力なし、推定力なし、順位保全効あり」の一組に尽き、この一組が仮登記をめぐる論点のほぼすべての土台になります。

    仮登記とは何か

    条文が定める二つの場面

    仮登記は、不動産登記法105条が定める次の二つの場面でのみすることができます。

    仮登記は、次に掲げる場合にすることができる。
    一 第三条各号に掲げる権利について保存等があった場合において、当該保存等に係る登記の申請をするために登記所に対し提供しなければならない情報であって、第二十五条第九号の申請情報と併せて提供しなければならないものとされているもののうち政令で定めるものを提供することができないとき。
    二 第三条各号に掲げる権利の設定、移転、変更又は消滅に関して請求権(始期付き又は停止条件付きのものその他将来確定することが見込まれるものを含む。)を保全しようとするとき。
    (不動産登記法105条)

    条文の言い回しは硬いのですが、言っていることは単純です。1号は「権利変動はもう起きているのに、書類が足りなくて本登記ができない」場合。2号は「権利変動はまだ起きていないが、将来それを請求できる権利を守っておきたい」場合。前者は手続の問題、後者は実体の問題です。この分け方が、仮登記の学習で最初に固めるべき骨格になります。

    なお、105条が対象とする権利は「第三条各号に掲げる権利」、すなわち所有権、地上権、永小作権、地役権、先取特権、質権、抵当権、賃借権、配偶者居住権、採石権です。表示に関する登記について仮登記をすることはできません。表示に関する登記と権利に関する登記の区別は不動産登記の基本で整理しています。

    仮登記は登記簿にどう現れるか

    仮登記も、本登記と同じく権利部に記録されます。所有権に関するものであれば甲区、抵当権や賃借権に関するものであれば乙区です。ただし登記の目的欄に「所有権移転仮登記」「条件付所有権移転仮登記」「所有権移転請求権仮登記」などと記載され、その下に本登記のための余白が設けられます。後日この余白に本登記が記入されるため、仮登記と、それに基づく本登記とは、同じ順位番号のもとに並ぶことになります。

    登記簿を見たときに仮登記の存在に気づけるかどうかは、実務でも試験でも効いてきます。甲区に仮登記が入っている不動産は、いま登記名義人になっている者の所有権が、将来ひっくり返る可能性を抱えているからです。売買の媒介に入る宅建業者は、この点を重要事項として説明する必要があります(重要事項説明の全体像)。

    仮登記でできないこと

    仮登記の権利者は、その仮登記を根拠として第三者に権利を主張することはできません。仮登記のままでは、明渡しを求めることも、賃料を請求することも、抵当権であれば配当を受けることもできないのが原則です。仮登記は、あくまで「順位という席を取っておく」だけの登記だからです。

    このため、仮登記権利者にとっては、本登記に移すことが最終目標になります。学習上も、仮登記そのものより「仮登記からどうやって本登記に進むか」「進んだときに何が起きるか」のほうが出題の中心です。

    仮登記と本登記はどこが違うのか

    比較の軸を立てて、順に見ていきます。どれも試験で問われた形をそのまま言い換えれば答えられる程度に、はっきりした違いです。

    対抗力の有無

    本登記には対抗力があり、仮登記にはありません。ここが最大の違いです。所有権移転仮登記を備えているだけの者は、その後に所有権移転の本登記を受けた第三者に対して、自分が所有者だと主張することができません。仮登記は民法177条にいう「登記」にあたらないと扱われるからです。

    試験では「仮登記をすれば第三者に対抗できる」という形の誤りの肢が繰り返し作られます。対抗力という言葉が出てきたら、仮登記の側には常に「なし」を入れる、と機械的に反応できるようにしておくと事故が減ります。

    順位の扱い

    本登記は、その登記がされた時点の順位を取ります。仮登記は、その仮登記がされた時点の順位を確保し、後にされる本登記にその順位を引き継がせます(106条)。つまり順位という一点においてのみ、仮登記は本登記と同じ働きをします。

    対抗力がないのに順位だけは守られる、という組み合わせは直感に反しますが、そこに制度の存在意義があります。もし順位も守られないなら、仮登記をする意味は何もありません。

    手続要件の厳しさ

    本登記は、登記権利者と登記義務者の共同申請が原則で(60条)、登記義務者からは原則として登記識別情報の提供が求められます(22条)。これに対し仮登記は、共同申請の場合には登記識別情報の提供が不要とされ(107条2項が22条本文の適用を除外)、さらに登記義務者の承諾があるとき、または仮登記を命ずる処分があるときは、仮登記権利者が単独で申請できます(107条1項)。

    要件が緩められているのは、仮登記が対抗力を持たない仮の登記だからです。効力が弱いぶん、入口のハードルも低い。この対応関係を押さえると、細かい手続のルールを丸暗記しなくても筋が通ります。

    登記簿上の見え方

    本登記は順位番号を与えられて確定的に記録されるのに対し、仮登記は目的欄に仮登記である旨が示され、本登記のための余白がその下に残されます。この余白の存在は、後で本登記がされたときに順位が遡ることを、登記簿の上でも表現しています。順位保全効は観念的な話ではなく、登記簿の構造として実装されているわけです。

    抹消のしやすさ

    本登記の抹消は、原則として共同申請であり、登記上の利害関係を有する第三者がいるときはその承諾を証する情報が必要です(68条)。これに対し仮登記の抹消は、仮登記の登記名義人が単独で申請できます(110条前段)。さらに、仮登記の登記上の利害関係人も、仮登記名義人の承諾があれば単独で抹消を申請できます(110条後段)。

    ここも「仮の登記だから、消すのも簡単」という筋で理解できます。

    この節の要点

    • 対抗力は本登記のみ。仮登記にはない。
    • 順位保全効は仮登記のみに問題となる効力で、106条が根拠。
    • 仮登記は共同申請でも登記識別情報が不要、承諾等があれば単独申請も可。
    • 仮登記の抹消は仮登記名義人が単独でできる。

    1号仮登記と2号仮登記の区別

    1号仮登記(105条1号)

    1号仮登記は、実体としての権利変動はすでに生じているのに、本登記の申請に必要な情報のうち政令で定めるものを提供できないためにされる仮登記です。手続上の障害があるだけの状態なので、実務では手続上の仮登記と呼ばれます。

    「政令で定めるもの」の代表例は、登記識別情報(かつての権利証)と、第三者の許可・同意・承諾を証する情報です。たとえば、AがBに土地を売り、代金決済も済んで所有権はBに移転しているのに、Aの登記識別情報が見当たらないという場面。権利変動そのものは完了しているので、実体は動いています。しかし本登記の申請に必要な情報が揃わないので、とりあえず1号仮登記を打っておく、という使い方になります。

    1号仮登記の登記の目的は「所有権移転仮登記」と記載されます。すでに移転が起きていることが、目的の書きぶりにも表れています。

    2号仮登記(105条2号)

    2号仮登記は、権利変動がまだ生じておらず、将来それを請求できる権利(請求権)を保全するためにされる仮登記です。請求権保全の仮登記と呼ばれます。条文の括弧書きが示すとおり、始期付きの請求権、停止条件付きの請求権、その他将来確定することが見込まれる請求権も含まれます。

    典型例は売買予約です。AとBが土地の売買予約をし、Bが予約完結権を持っているものの、まだ行使していない段階では、所有権はAのままです。この段階でBが打つのが所有権移転請求権仮登記であり、2号仮登記にあたります。

    もう一つの典型が停止条件付の権利です。農地の売買では、農地法の許可がなければ所有権移転の効力そのものが生じません。許可がまだ下りていない段階では実体としての物権変動がないので、条件付所有権移転仮登記、すなわち2号仮登記を用いることになります。条件と期限が権利の発生・消滅にどう作用するかは条件と期限で整理しています。

    2号仮登記の登記の目的は「所有権移転請求権仮登記」または「条件付所有権移転仮登記」と記載されます。「請求権」「条件付」という語が入るのが、1号との見た目の違いです。

    区別すべき点は四つに絞れる

    ここまでを整理すると、1号と2号で違うのは次の四点だけです。

    • 実体としての権利変動が、1号ではすでに生じており、2号ではまだ生じていない。
    • 仮登記をする理由が、1号では申請に必要な情報を提供できないこと、2号では将来の請求権を保全することにある。
    • 登記の目的の書き方が、1号では「所有権移転仮登記」、2号では「所有権移転請求権仮登記」または「条件付所有権移転仮登記」となる。
    • 本登記へ進むときの登記原因が、1号ではもとの物権変動そのもの、2号では予約完結権の行使や条件の成就という新たな事実になる。

    逆に、順位保全効があることと対抗力がないことは1号でも2号でも同じです。効力の面では差がありません。したがって、両者を区別する実益は、どの場面でどちらを使うかという入口の判断にあります。

    見分け方は「実体が動いたか」だけ

    1号か2号かで迷ったら、判断基準は一つに絞れます。その時点で権利変動が生じているか。生じているなら1号、まだなら2号です。書類が足りないという事情は1号の側にしか出てきませんし、予約・条件・期限という言葉は2号の側にしか出てきません。

    紛らわしいのは、同じ農地の売買でも状況によって答えが変わる点です。農地法の許可がまだ下りていないなら、実体が生じていないので2号。許可は下りたが許可書を登記所に提供できないだけなら、実体は生じているので1号。問題文が「許可を得たが」と書いているか「許可を条件として」と書いているかで、答えが入れ替わります。ここは丁寧に読む必要があります。

    順位保全効はどう働くか

    条文と仕組み

    仮登記に基づいて本登記をした場合は、当該本登記の順位は、当該仮登記の順位による。(不動産登記法106条)

    一文だけの条文ですが、仮登記制度はこの一文のために存在すると言っても過言ではありません。仮登記の時点で確保した順位が、本登記になったときに生き返る。だから、仮登記の後に別の登記がされていても、仮登記に基づく本登記のほうが先順位になります。

    具体的な並びで考える

    甲区の記録が次のように並んでいる場面を考えます。

    順位1番 所有権保存          A
    順位2番 所有権移転請求権仮登記    B
    順位3番 所有権移転          C
    

    順位が遡る流れを追う

    この動きを、起きた順に追ってみます。

    まずAが所有権保存登記を受け、甲区1番に記録されます。この段階では争いはありません。次にAB間で売買予約がされ、Bが所有権移転請求権仮登記を受けて甲区2番に入ります。ただし所有権はまだAのままであり、Bは対抗力を持ちません。続いてAがCに売却し、Cが所有権移転登記を受けて甲区3番に入ります。この時点では、対抗力を備えているのはCだけなので、Cが勝っています。

    その後、Bが予約完結権を行使します。これで実体としての権利変動が生じますが、登記の記録はまだ動きません。そこでBは、2番の仮登記に基づく本登記を申請します。このとき、後述するとおりCの承諾またはこれに代わる確定判決が必要で(109条1項)、それがなければ申請自体が受理されません。

    承諾等を得てBの本登記が実行されると、106条により、その本登記の順位は2番になります。3番のCより先順位です。ここで結論が逆転します。最後に、登記官が職権でCの3番の登記を抹消し(109条2項)、Cは所有権を失います。C自身が抹消を申請する必要はありません。

    押さえるべき転換点は二つです。Cが本登記を受けた時点ではCが勝っており、Bが本登記に進んだ時点で逆転する。「仮登記があるからBが最初から勝っている」わけではありません。逆転が起きるのはBが本登記をした瞬間であり、そこで初めて106条が働きます。

    問題文が「仮登記のまま」で止まっているのか、「仮登記に基づく本登記をした」ところまで進んでいるのかで、正解が入れ替わります。ここが仮登記の理解でもっとも事故が起きやすい箇所です。

    対抗力がないのに勝てるのはなぜか

    一見すると矛盾しているように見えます。仮登記には対抗力がないのに、なぜ後から本登記をしただけでCに勝てるのか。

    答えは、勝っているのが仮登記ではなく本登記だからです。Bが第三者に対抗できるようになるのは、あくまで本登記をした時点です。ただしその本登記の順位が106条によって2番に遡るため、3番のCに優先する、という順序で考えます。「仮登記が勝つ」のではなく「順位を遡らせた本登記が勝つ」。この言い換えを持っておくと、対抗力がないという原則と矛盾せずに理解できます。

    抵当権の仮登記でも順位は守られる

    順位保全効は所有権に限った話ではありません。抵当権について仮登記がされている場合も、106条は同じように働きます。乙区1番にBの抵当権仮登記、2番にCの抵当権本登記が並んでいるとき、Bが本登記に進めば、その抵当権は1番の順位を取ります。Cは二番抵当のままです。

    このとき、Cの登記が抹消されるわけではない点が所有権の場合との違いです。所有権は一つしか成り立ちませんが、抵当権は順位をつけて複数並べられます。だから抵当権の場合は、順位が入れ替わるだけで、Cは後順位の抵当権者として残ります。後順位になれば競売の配当で回収できる額は減りますが、権利そのものを失うわけではありません。この違いが、次に見る承諾の要否につながっていきます。

    順位を確保することの実務的意味

    順位保全効があるからこそ、仮登記のある不動産は取引上リスクを抱えた物件として扱われます。買主として本登記を受けても、先行する仮登記が本登記に移行すれば所有権を失いかねないからです。抵当権についても同じで、仮登記された抵当権が本登記になれば、その間に設定された抵当権より先順位の抵当権が現れることになります。根抵当権を含む担保の順位の意味は根抵当権も合わせて確認してください。

    仮登記に基づく本登記と利害関係人の承諾

    所有権に関する仮登記の場合

    所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。(不動産登記法109条1項)

    先ほどの例でBが本登記をすると、Cは所有権を失います。失う側の言い分も聞かずに手続を進めるのは酷なので、法は「登記上の利害関係を有する第三者の承諾」を本登記の要件としました。ここでいう第三者とは、仮登記後に登記を受けた者、先の例でいえばCです。

    注意すべきは、承諾が本登記の申請要件とされている点です。承諾がないまま申請しても、登記官はその申請を受理しません。承諾を証する情報、またはその第三者に対抗できる裁判があったことを証する情報の提供が必要になります。

    承諾が得られないとき

    第三者が任意に承諾しないことは当然あります。その場合、仮登記権利者は、その第三者を被告として承諾を求める訴えを提起し、勝訴の確定判決を得ることで、承諾に代えることができます。第三者に承諾義務があるかどうかは実体法上の問題であり、仮登記権利者の権利が本当に優先するのであれば、承諾を拒む理由はないという整理です。

    つまり、承諾は「相手の同意がなければ永久に本登記できない」という意味の拒否権ではありません。手続の順序として承諾または判決を要求しているにすぎません。

    職権抹消

    登記官は、前項の規定による申請に基づいて登記をするときは、職権で、当該仮登記後に登記された権利に関する登記を抹消しなければならない。(不動産登記法109条2項)

    承諾または判決を得て本登記がされると、登記官は職権で、仮登記後にされた権利に関する登記を抹消します。Cの3番の所有権移転登記は、Cが自ら抹消を申請しなくても、登記官の職権で消えます。これも試験でよく問われる箇所で、「利害関係人が自分で抹消登記を申請しなければならない」という形の誤りの肢が作られます。

    所有権以外の権利に関する仮登記の場合

    109条1項は「所有権に関する仮登記」に限った規定です。したがって、抵当権や賃借権など所有権以外の権利についての仮登記に基づいて本登記をするときは、利害関係を有する第三者の承諾は要りません。

    理由は結果の違いにあります。所有権の場合、Bが所有者になればCは所有者でいられません。両立しない関係なので、Cの登記を消す必要があります。これに対し抵当権の場合、Bの抵当権が一番になっても、Cの抵当権が二番として残ることは可能です。両立できるのだから、Cの登記を消す必要も、承諾を求める必要もありません。

    承諾が要るかどうかを順に確かめる

    本登記に進むときに第三者の承諾が要るかどうかは、次の順に確認すれば判断できます。

    まず、仮登記後に登記を受けた第三者がいるかどうかを見ます。いなければ承諾の問題は生じず、そのまま本登記ができます。次に、その仮登記が所有権に関するものかどうかを見ます。抵当権や賃借権など所有権以外の権利であれば、109条1項の対象外なので承諾は不要です。所有権に関する仮登記であれば、第三者の承諾が必要になり、これがなければ申請は受理されません。第三者が承諾しない場合は、承諾を求める訴えを提起し、勝訴の確定判決を得ることで承諾に代えられます。そして承諾または判決を得て本登記が実行されると、仮登記後の権利に関する登記は登記官が職権で抹消します。

    「所有権に関する仮登記かどうか」で承諾の要否が変わる、というのは差がつきやすいポイントです。問題文が抵当権の仮登記を題材にしていて、承諾が必要だと述べていれば誤り、と判断できます。権利関係全体でどの論点が繰り返し出るかは権利関係の頻出論点にまとめています。

    仮登記の申請と抹消の手続

    申請の原則は共同申請

    仮登記も登記である以上、登記権利者と登記義務者が共同で申請するのが原則です(60条)。仮登記だから常に単独でできる、というわけではありません。ここを取り違えると、単独申請の例外を覚えていても肢を切れません。

    ただし共同申請の場合でも、登記識別情報の提供は不要です。107条2項が22条本文の適用を除外しているためです。登記識別情報を提供できないことがそもそも1号仮登記の典型的な理由なのですから、仮登記の申請でそれを求めるのは筋が通りません。

    仮登記権利者による単独申請

    仮登記は、仮登記の登記義務者の承諾があるとき及び第百八条の仮登記を命ずる処分があるときは、当該仮登記の登記権利者が単独で申請することができる。(不動産登記法107条1項)

    単独申請ができるのは、次の二つの場合に限られます。

    • 仮登記の登記義務者の承諾があるとき
    • 仮登記を命ずる処分があるとき(108条)

    108条の仮登記を命ずる処分は、不動産の所在地を管轄する地方裁判所が、仮登記権利者の申立てにより、仮登記の原因があることの疎明を受けて発するものです。登記義務者が協力しない場合の受け皿として用意されています。

    逆に、仮登記の登記義務者の側が単独で仮登記を申請することはできません。単独申請が認められているのは権利者の側だけです。この非対称も出題されます。

    仮登記の抹消

    仮登記の抹消は、第六十条の規定にかかわらず、仮登記の登記名義人が単独で申請することができる。(不動産登記法110条前段)

    仮登記名義人、つまり仮登記によって利益を受けている本人は、いつでも単独でその仮登記を消せます。自分に有利な登記を自分の意思で手放すだけなので、相手方の関与を求める理由がないからです。

    さらに110条後段により、仮登記の登記上の利害関係人(仮登記名義人を除く)も、仮登記名義人の承諾があれば単独で抹消を申請できます。仮登記義務者や、仮登記後に登記を受けた第三者がこれにあたります。承諾があるという条件付きである点を落とさないようにしてください。

    「する」ときと「消す」ときで扱いが違う

    仮登記は、するときと消すときでルールが異なります。混ぜないように切り分けておきます。

    するときは共同申請が原則で、単独申請できるのは仮登記権利者だけです。しかもそれは、登記義務者の承諾があるか、仮登記を命ずる処分があるときに限られます。これに対し消すときは、仮登記の登記名義人が条件なしに単独で申請できます。利害関係人も単独で申請できますが、こちらは仮登記名義人の承諾があるときに限られます。「する」側では権利者に条件が付き、「消す」側では名義人に条件が付かない、という逆の形です。

    登記識別情報の扱いも対比しておきます。本登記を共同申請するときは登記義務者から原則として提供が必要ですが(22条本文)、仮登記の場合は不要です(107条2項)。

    この節の要点

    • 仮登記の申請は共同申請が原則。
    • 例外として、登記義務者の承諾または仮登記を命ずる処分があれば、仮登記権利者が単独で申請できる。
    • 仮登記義務者からの単独申請はできない。
    • 仮登記の抹消は仮登記名義人が単独でできる。利害関係人は仮登記名義人の承諾があれば単独でできる。

    仮登記担保という応用形

    仮登記の仕組みを担保として使うのが仮登記担保です。金銭債務を担保する目的で、債務不履行があったら不動産の所有権を債権者に移す旨の代物弁済予約や停止条件付代物弁済契約を結び、その請求権を保全するために2号仮登記を打ちます。債務者が弁済すれば仮登記を抹消し、弁済しなければ本登記に移して所有権を取得する、という設計です。

    そのままでは、少額の債務のために高額な不動産を丸取りできてしまいます。これを防ぐために仮登記担保契約に関する法律(仮登記担保法)が置かれ、次のような制約が課されています。

    • 債権者は、清算金の見積額(清算金がないと考えるときはその旨)を債務者等に通知しなければならない(仮登記担保法2条)。
    • 通知が債務者等に到達した日から2か月(清算期間)を経過しなければ、所有権移転の効力は生じない(同2条)。
    • 清算金の支払債務と、所有権移転登記および引渡しの債務は同時履行の関係に立つ(同3条)。
    • 債務者等は、清算金の支払を受けるまでは、債権額に相当する金銭を提供して不動産を受け戻すことができる(同11条)。ただし清算期間の経過から5年が経過したとき、または第三者が所有権を取得したときは受け戻せない。
    • 後順位の担保権者がいる場合には、その者にも通知が求められる。

    清算期間2か月は債務者保護のための強行規定であり、これを短縮する特約は無効です。

    なお、仮登記担保は宅建試験の出題頻度としては高くありません。所有権留保や割賦販売との関係で担保的な発想を確認したいときは所有権留保を、担保物権の全体像を押さえたいときは抵当権の基本を優先してください。仮登記担保については、清算期間2か月と清算義務があるという二点を知っていれば十分です。

    試験での出題ポイント

    どこがずらされるか

    仮登記の肢は、正しい記述をどこか一箇所だけずらして誤りにする作り方がほとんどです。ずらされる箇所は限られているので、以下で頻度の高いものから順に見ていきます。

    共通する手がかりを先に挙げておくと、「常に」「必ず」という語が入った記述はまず疑ってください。仮登記の分野は原則と例外が細かく分かれているため、無条件に言い切る書き方はほとんど誤りになります。「仮登記は常に仮登記権利者が単独で申請できる」も、「仮登記の申請には常に登記識別情報の提供が必要である」も、いずれも誤りです。過去問の使い方そのものは宅建試験の過去問活用術にまとめています。

    対抗力の有無をすり替える肢

    もっとも多いのが、仮登記に対抗力があるかのように書く肢です。「仮登記をすれば第三者に対抗できる」「仮登記により所有権を主張できる」といった書き方をされます。仮登記に対抗力はありません。対抗力という語を見たら、仮登記の側は必ず「なし」と判断します。

    ただし注意点があります。「仮登記に基づいて本登記をすれば、仮登記後に登記を受けた第三者に優先する」という肢は正しい記述です。対抗力の話をしているのか、本登記後の順位の話をしているのかを読み分ける必要があります。

    1号と2号の入れ替え

    売買予約による所有権移転請求権の保全を1号だと書く、あるいは登記識別情報を提供できない場合を2号だと書く、という形の入れ替えです。判断は「実体としての権利変動が生じているか」の一点で足ります。生じていれば1号、生じていなければ2号。

    農地法の許可がからむ問題は、許可がまだなのか、許可はあるが書面を出せないだけなのかを読み分けます。

    利害関係人の承諾の要否

    109条1項が「所有権に関する仮登記」に限られていることを使った出題です。抵当権の仮登記に基づく本登記について承諾が必要だとする肢は誤りになります。また、承諾を得て本登記がされた後、仮登記後の登記が「職権で」抹消されるという点も狙われます。利害関係人が自ら抹消申請をする必要はありません。

    単独申請の範囲

    仮登記の申請は原則として共同申請であること、単独申請ができるのは登記義務者の承諾があるときと仮登記を命ずる処分があるときに限られること、仮登記義務者からの単独申請はできないこと。この三つが組み合わせて問われます。一方、仮登記の抹消については仮登記名義人が無条件に単独でできます。申請と抹消でルールが違うので、混ぜないようにしてください。

    登記全般の知識との組み合わせ

    仮登記単独ではなく、登記の申請一般や登記記録の構成と組み合わせて出題されることもあります。登記名義人の住所変更登記が義務化された点など、周辺の改正事項は住所変更登記の義務化で確認しておくと、登記分野の失点を減らせます。権利関係全体の学習順序は権利関係の全体像を参照してください。

    覚え方・整理の仕方

    「対抗力なし・順位あり」を一組で覚える

    仮登記の性質は、二語で言い切れます。対抗力なし、順位あり。この二語をセットで暗唱できるようにしておけば、効力に関する肢の大半は処理できます。推定力については、仮登記の段階では権利の存在が確定していないため、本登記のような推定は働かないと考えます。

    1号と2号は「モノが動いたか、約束だけか」

    1号は、すでにモノ(権利)が動いた後の話。動いたのに登記できないのは、書類が足りないから。2号は、まだ動いていない、約束や条件があるだけの話。だから請求権を守る。

    言葉の手がかりで拾うなら、1号には「登記識別情報」「権利証」「承諾書が出せない」、2号には「予約」「条件付」「請求権」が現れます。問題文にこれらの語を見つけたら、そこで番号が決まります。

    承諾が要るかどうかは「両立できるか」で判断

    所有権の仮登記に基づく本登記では、後の第三者の権利と両立しないから、承諾を取って職権で消す。所有権以外なら両立できるから、承諾は不要。「消す必要があるから承諾を取る」という因果で覚えると、条文の限定を丸暗記せずに済みます。

    手続は「弱い登記だから緩い」で通す

    仮登記は対抗力のない弱い登記です。だから、共同申請でも登記識別情報が要らない、承諾があれば単独でできる、抹消は名義人ひとりでできる。緩い方向に例外が振れている、という一本の筋で理解すると、細部を思い出しやすくなります。逆に、緩くならない例外が一つだけあります。仮登記義務者からの単独申請はできない、という点です。ここだけ別に覚えます。

    順位保全効は図で覚える

    甲区に1番A、2番B仮登記、3番Cと並べた図を一度自分で書いておくと、記憶が固まります。Bが本登記に進むと2番の位置に入り、3番のCが職権で消える。この動きを絵として覚えておけば、文章題を読んだときに頭のなかで再現できます。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 仮登記をすれば、第三者に対して権利を対抗することができる。

    答えを見る **× 誤り。** 仮登記に対抗力はありません。対抗力を得るには本登記が必要です。仮登記の効力は順位の保全にとどまります。なお、仮登記に基づいて本登記をした場合には、その本登記の順位が仮登記の順位によることになるため(106条)、仮登記後に登記を受けた第三者に優先します。「仮登記のままで対抗できる」のと「本登記に進めば優先する」のとを区別してください。

    Q2. 仮登記に基づいて本登記をした場合、その本登記の順位は仮登記の順位による。

    答えを見る **○ 正しい。** 不動産登記法106条がそのとおり定めています。これが順位保全効です。仮登記の後に第三者が本登記を受けていても、仮登記に基づく本登記のほうが先順位になります。

    Q3. 売買契約は成立し所有権も移転しているが、登記義務者の登記識別情報を提供できないために行う仮登記は、不動産登記法105条2号の仮登記である。

    答えを見る **× 誤り。** 権利変動がすでに生じていて、申請に必要な情報を提供できないだけの場合は105条1号の仮登記です。2号は、権利変動がまだ生じておらず、将来の請求権を保全する場合です。売買予約に基づく所有権移転請求権の保全や、農地法の許可を条件とする条件付所有権移転が2号にあたります。

    Q4. 抵当権に関する仮登記に基づいて本登記をする場合、登記上の利害関係を有する第三者の承諾が必要である。

    答えを見る **× 誤り。** 109条1項が承諾を求めているのは「所有権に関する仮登記」に基づく本登記の場合です。抵当権など所有権以外の権利については、後順位者の権利と両立しうるため、第三者の承諾は不要です。

    Q5. 仮登記の抹消は、仮登記の登記名義人が単独で申請することができる。

    答えを見る **○ 正しい。** 110条前段が、60条の共同申請の原則にかかわらず仮登記名義人の単独申請を認めています。また同条後段により、仮登記の登記上の利害関係人も、仮登記名義人の承諾があれば単独で抹消を申請できます。なお、仮登記を「する」ときは共同申請が原則で、単独申請には登記義務者の承諾または仮登記を命ずる処分が必要です(107条1項)。申請と抹消でルールが異なる点に注意してください。

    まとめ

    1. 本登記と仮登記の違い — 本登記は対抗力・順位確定力・推定力を備えた完成形の登記。仮登記は対抗力を持たず、順位を保全するだけの仮の登記です。
    2. 1号と2号の区別 — 権利変動が生じているのに必要な情報を提供できないときが1号(105条1号)、権利変動が未発生で将来の請求権を保全するときが2号(105条2号)。判断基準は「実体が動いたか」の一点です。
    3. 順位保全効 — 仮登記に基づく本登記の順位は仮登記の順位による(106条)。仮登記後に登記を受けた第三者に優先します。
    4. 本登記への移行 — 所有権に関する仮登記に基づく本登記には、登記上の利害関係を有する第三者の承諾が必要(109条1項)。承諾を得て本登記がされると、仮登記後の登記は職権で抹消されます(同2項)。所有権以外の権利についてはこの承諾は不要です。
    5. 手続 — 申請は共同が原則、承諾または仮登記を命ずる処分があれば権利者が単独で申請可(107条1項・108条)。抹消は仮登記名義人が単独で可(110条)。

    よくある質問

    Q. 仮登記がついている不動産は買っても大丈夫ですか。

    A. 仮登記自体に対抗力はありませんが、それが本登記に移行すれば、買主が受けた所有権移転登記は職権で抹消されます。取引に入るのであれば、仮登記の原因、仮登記権利者が誰か、権利が消滅していないかを確認し、原則として決済までに仮登記を抹消してもらう扱いになります。調査の手順は物件調査の進め方を参照してください。

    Q. 仮登記があることは重要事項として説明する必要がありますか。

    A. 登記記録に記録された事項は重要事項説明の対象であり、仮登記も登記記録に現れる以上、その内容を説明することになります。説明事項の範囲は重要事項説明の全体像で確認できます。

    Q. 仮登記に期限はありますか。放っておくとどうなりますか。

    A. 仮登記そのものに存続期間の定めはなく、抹消されない限り登記簿に残り続けます。ただし、保全されている請求権が消滅時効にかかったり、条件が成就しないことが確定したりすれば、実体を欠く仮登記となり、抹消の対象になります。時効の考え方は時効で扱っています。

    Q. 仮登記のままで、その権利を他人に譲ることはできますか。

    A. できます。仮登記された請求権や権利を譲渡した場合、仮登記の移転は付記登記によってされ、もとの仮登記の順位がそのまま引き継がれます。

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    仮登記は、条文の数はわずかですが、対抗力・順位・承諾の三点が絡むと肢の正誤が入れ替わりやすい分野です。宅建試験AIブートラボの肢別トレーニングで、不動産登記法の肢をまとめて演習して確認してください。

    読んだ内容を、権利関係の肢で確かめる

    民法・借地借家法・区分所有法など、条文だけでは判断しづらい論点は、過去問の肢で覚えるのが最短です。

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