不動産登記の仮登記と本登記の違い
宅建試験で出題される仮登記と本登記の違いを解説。仮登記の種類、対抗力の有無、仮登記に基づく本登記の順位保全効果を整理しました。
不動産登記において「仮登記」は宅建試験でしばしば出題されるテーマです。仮登記には対抗力がないこと、順位保全の効力があること、仮登記の種類(1号仮登記・2号仮登記)の違いなど、本登記との違いを正確に理解する必要があります。本記事では、仮登記の制度を基礎から解説し、試験で問われるポイントを整理します。
不動産登記の基本
不動産登記とは
不動産登記とは、不動産の物理的状況(表示に関する登記)と権利関係(権利に関する登記)を法務局の登記簿に記録し、公示する制度です。
不動産登記は大きく以下の2つに分かれます。
| 区分 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 表示に関する登記 | 不動産の物理的状況を公示 | 所在、地番、地目、地積、床面積等 |
| 権利に関する登記 | 不動産の権利関係を公示 | 所有権、抵当権、地上権、賃借権等 |
本登記(終局登記)とは
本登記とは、登記によって対抗力を生じさせる通常の登記のことです。所有権保存登記、所有権移転登記、抵当権設定登記などがこれにあたります。
本登記の効果は以下のとおりです。
- 対抗力 → 第三者に権利を主張できる
- 順位確定力 → 登記の前後で権利の順位が決まる
- 推定力 → 登記された権利関係が正しいと推定される
仮登記の基本
仮登記とは
仮登記とは、本登記をするための手続上の要件が整わない場合に、あらかじめ登記の順位を保全しておくための登記です。
仮登記は、次に掲げる場合にすることができる。
一 第三条各号に掲げる権利について保存等があった場合において、当該保存等に係る登記の申請をするために登記所に対し提供しなければならない情報であって、第二十五条第九号の申請情報と併せて提供しなければならないものとされているもののうち政令で定めるものを提供することができないとき。
二 第三条各号に掲げる権利の設定、移転、変更又は消滅に関して請求権を保全しようとするとき。
(不動産登記法第105条)
仮登記の種類
仮登記には2つの種類があります。
| 種類 | 通称 | 該当場面 | 具体例 |
|---|---|---|---|
| 1号仮登記 | 手続上の仮登記 | 物権変動は発生しているが、登記申請に必要な書類が揃わないとき | 権利証(登記識別情報)を紛失した場合 |
| 2号仮登記 | 請求権保全の仮登記 | 物権変動はまだ発生していないが、将来の請求権を保全したいとき | 売買予約に基づく所有権移転請求権の保全 |
1号仮登記の例:
AがBに土地を売却し、所有権はBに移転しているが、Aの登記識別情報(権利証)が見つからないため本登記ができない場合。
2号仮登記の例:
AがBと土地の売買予約をしたが、まだ予約完結権を行使していないため所有権は移転していない場合に、Bが将来の所有権移転請求権を保全するため仮登記する場合。
仮登記の効力
対抗力がない
仮登記の最も重要な特徴は、対抗力がないことです。仮登記をしただけでは、第三者に対して権利を主張することはできません。
本登記と仮登記の効力の違いは以下のとおりです。
| 効力 | 本登記 | 仮登記 |
|---|---|---|
| 対抗力 | あり | なし |
| 順位保全効 | ― | あり |
| 推定力 | あり | なし |
順位保全効
仮登記には順位保全効があります。仮登記に基づいて本登記をした場合、その本登記の順位は仮登記の順位によるものとされます。
仮登記に基づいて本登記をした場合は、当該本登記の順位は、当該仮登記の順位による。(不動産登記法第106条)
例えば、以下のような場面を考えます。
1番:A名義の所有権保存登記
2番:Bの仮登記(売買予約に基づく所有権移転請求権)
3番:Cへの所有権移転登記(AがCに売却)
この場合、BがCより後に本登記をしたとしても、Bの本登記の順位は2番(仮登記の順位)となるため、3番のCの登記に優先します。
仮登記と利害関係人
仮登記に基づいて本登記をする場合、仮登記後に登記された第三者(利害関係人)の承諾が必要です。
ただし、承諾が得られない場合は、仮登記の権利者は利害関係人に対して承諾を求める訴えを提起できます。承諾を得て(又は確定判決を得て)本登記がなされると、仮登記後の第三者の登記は職権で抹消されます。
仮登記の手続き
仮登記の申請方法
仮登記の申請方法には以下のものがあります。
| 申請方法 | 内容 |
|---|---|
| 共同申請 | 登記権利者と登記義務者が共同で申請(原則) |
| 仮登記権利者の単独申請 | 登記義務者の承諾がある場合、又は仮登記を命ずる処分がある場合 |
| 仮登記義務者の単独申請 | 不可 |
仮登記は、本登記と異なり、登記義務者の承諾があれば仮登記権利者が単独で申請できる点が特徴です。
仮登記の抹消
仮登記の抹消は、以下の方法で行えます。
- 仮登記権利者が単独で申請できる
- 仮登記義務者は、仮登記権利者の承諾がある場合に単独で申請できる
- 利害関係人(仮登記後に登記を受けた者等)も、仮登記権利者の承諾がある場合に単独で申請できる
仮登記担保
仮登記担保とは
仮登記担保とは、金銭債務を担保するために、債務不履行の場合に不動産の所有権を債権者に移転する旨の代物弁済予約や停止条件付代物弁済契約をし、これに基づいて仮登記を行う担保方法です。
仮登記担保法により、以下のルールが定められています。
- 債権者は清算金の見積額を通知しなければならない
- 通知が到達してから2か月(清算期間)を経過しないと所有権は移転しない
- 清算金がある場合は清算金の支払いと引換えに引渡しを請求できる
- 後順位の担保権者がいる場合は、後順位担保権者にも通知が必要
仮登記担保と抵当権の違い
| 項目 | 仮登記担保 | 抵当権 |
|---|---|---|
| 担保の方法 | 所有権の移転予約 | 抵当権の設定 |
| 対抗力 | 仮登記段階ではなし | 設定登記で対抗力あり |
| 実行方法 | 清算手続き | 競売又は任意売却 |
| 清算義務 | あり | 競売代金から配当 |
試験での出題ポイント
宅建試験では、以下のポイントが特に狙われます。
- 仮登記には対抗力がない → 仮登記だけでは第三者に権利を主張できない
- 順位保全効 → 仮登記に基づく本登記は仮登記の順位になる
- 1号仮登記と2号仮登記の違い → 物権変動が発生済みか未発生かで区別
- 仮登記権利者の単独申請 → 登記義務者の承諾又は仮登記を命ずる処分があれば単独可
- 仮登記の抹消 → 仮登記権利者が単独で可能
- 仮登記担保の清算期間 → 通知到達から2か月
理解度チェッククイズ
以下のクイズで理解度を確認しましょう。
Q1. 仮登記をすれば、第三者に対して権利を対抗できる。
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**× 誤り。** 仮登記には**対抗力がありません**。対抗力を得るためには本登記が必要です。仮登記の効力は順位の保全にとどまります。Q2. 仮登記に基づいて本登記をした場合、その本登記の順位は仮登記の順位による。
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**○ 正しい。** これが仮登記の**順位保全効**です(不動産登記法第106条)。仮登記後に第三者が本登記をしていても、仮登記に基づく本登記が優先します。Q3. 仮登記は、登記義務者の承諾がなくても、仮登記権利者が単独で申請できる。
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**× 誤り。** 仮登記権利者が単独で申請するためには、**登記義務者の承諾**又は**仮登記を命ずる処分**が必要です(不動産登記法第107条)。承諾等がなければ共同申請が原則です。Q4. 売買予約に基づく所有権移転請求権の保全のための仮登記は、2号仮登記である。
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**○ 正しい。** 物権変動がまだ発生していない段階で、将来の請求権を保全するために行う仮登記は**2号仮登記**です(不動産登記法第105条第2号)。まとめ
- 仮登記の基本的効力 → 仮登記には対抗力がなく、順位保全効のみがある。仮登記に基づく本登記は仮登記の順位となるため、後に登記した第三者に優先できる。
- 仮登記の種類 → 1号仮登記は物権変動が発生済みだが書類が揃わない場合、2号仮登記は物権変動が未発生で将来の請求権を保全する場合。
- 仮登記の手続き → 仮登記権利者は登記義務者の承諾があれば単独で申請可能。仮登記の抹消は仮登記権利者が単独で可能。
よくある質問(FAQ)
Q. 仮登記があると土地の売買に支障がありますか?
A. 仮登記自体には対抗力がありませんが、仮登記に基づく本登記がなされると後順位の登記が抹消される可能性があるため、実務上は仮登記のある不動産の取引は慎重に行う必要があります。
Q. 仮登記に基づく本登記をする際、仮登記後の第三者の承諾は必ず必要ですか?
A. 必要ですが、承諾が得られない場合は承諾を求める訴えを提起し、確定判決を得ることで本登記が可能です。本登記後、仮登記後の第三者の登記は職権で抹消されます。
Q. 仮登記は登記簿のどの部分に記録されますか?
A. 仮登記は、本登記と同様に権利部(甲区又は乙区)に記録されます。ただし、仮登記である旨が付記されます。
Q. 仮登記担保の「清算期間2か月」を短縮する特約は有効ですか?
A. いいえ。清算期間2か月は強行規定であり、これを短縮する特約は無効です(仮登記担保法第2条)。債務者保護のための規定です。
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