重要事項説明書の読み方|受け取る側が確認すべきこと
重要事項説明書を受け取る側の視点で解説。35条各号が何を書かせているか、「記録があるときはその内容」という書き方の含意、書面に書かれないことまで条文根拠つきで整理します。
目次
この記事は、重要事項説明書を受け取る側が何をどう読むかに絞って解説します。35条の説明事項そのものの一覧と覚え方は35条書面の記載事項一覧、業者側がどう調査して書面を作るかは物件調査、35条書面と37条書面の役割の違いは35条書面と37条書面の違いにあります。重要事項説明を受けた経験そのものを条文の入口として使う読み方は生活の場面から入る宅建にまとめてあり、部屋を借りたときのあの時間が35条だったと結びつけるところから始められます。
結論を先に述べます。重要事項説明書を読むときに最も大切なのは、この書面が「契約するかどうかを判断するための書面」であって、「契約内容を確定する書面」ではないことを理解しておくことです。宅建業法35条1項は「その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に」交付して説明させなければならないと定めています。契約の前に渡されるのは偶然ではなく、判断材料を提供するための制度だからです。契約内容そのものは、契約後に交付される37条書面が担います。
そしてもう一つ、書面の書き方の癖を知っておく必要があります。35条とその省令は、「〜が記録されているときは、その内容」「〜の定めがあるときは、その内容」という条件付きの書き方を多用しています。これは「調べて書け」ではなく「あるものを書け」という意味です。したがって書面に「なし」と書かれていても、それが「問題がない」を意味するとは限りません。「記録がない」だけかもしれない。この違いを読み分けられるかどうかが、受け手側の読解力の中心になります。
35条書面は判断のための書面である
契約が成立するまでの間に交付される
宅地建物取引業法35条1項(抜粋)
「宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(中略)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(中略)を交付して説明をさせなければならない。」
「契約が成立するまでの間に」。この一句が書面の性格を決めています。
契約を結んでしまってから「実はこういう制限があります」と言われても手遅れです。だから契約の前に、判断に必要な情報を渡させる。受け取る側からすれば、この書面は「契約してよいかを決めるための材料」です。読んで納得できなければ契約しない、という選択のためにある書面だと理解してください。
説明を受けた事実と、契約に同意した事実は別です。書面を受け取って説明を聞いたからといって、契約する義務は生じません。
37条書面との役割の違い
37条書面は、契約が成立した後に交付されます。37条1項は「その媒介により契約が成立したときは当該契約の各当事者に、遅滞なく」書面を交付しなければならないとしています。
35条書面は契約前、37条書面は契約後。この時系列が、書面の役割の違いをそのまま表しています。
35条書面が答えるのは「この物件はどういうものか、どういう条件で取引されるのか」です。判断材料の提供です。
37条書面が答えるのは「何を合意したか」です。当事者の氏名住所、物件の特定、代金の額と支払時期、引渡しの時期、移転登記の申請の時期といった、合意の中身が並びます。
そして重要なのは、37条書面には説明義務がないことです。37条3項は宅建士が記名することだけを求めており、説明せよとは書いていません。合意した内容を書面にして渡すだけです。説明があるのは35条だけ。この非対称は、判断のために説明が要る場面と、記録のために書面が要る場面の違いから来ています。両書面の比較は35条書面と37条書面の違いで詳しく扱っています。
説明されるのは取得者・借主だけ
35条1項をもう一度読んでください。「その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し」と限定されています。
説明を受けるのは、物件を取得しようとする者と借りようとする者です。売主や貸主に説明する義務はありません。売主は自分の物件のことを知っているはずなので、説明を受ける必要がないという整理です。
これに対し37条書面は、媒介の場合には契約の各当事者に交付されます。売主にも渡ります。35条は片側、37条は両側。受け取る側の立場からすると、自分が買主・借主であれば説明を受けられ、売主・貸主であれば受けられない、ということになります。
説明を受ける前に確認する三つのこと
宅建士証は請求しなくても提示される
宅地建物取引業法35条4項
「宅地建物取引士は、前三項の説明をするときは、説明の相手方に対し、宅地建物取引士証を提示しなければならない。」
説明の際は、請求がなくても宅建士証が提示されます。これは義務です。
対比すべきなのが22条の4です。
宅地建物取引業法22条の4(宅地建物取引士証の提示)
「宅地建物取引士は、取引の関係者から請求があつたときは、宅地建物取引士証を提示しなければならない。」
22条の4は「請求があつたとき」。35条4項には請求という条件がありません。重要事項説明という場面では、相手方が求めるまでもなく提示しなければならない。説明する者が本当に宅建士なのかを、相手方が確認できるようにするためです。
受け取る側としては、提示がなければその場で求めてよいということになります。提示は義務なので、遠慮する理由はありません。
記名は宅建士がする。押印は要らない
宅地建物取引業法35条5項
「第一項から第三項までの書面の交付に当たつては、宅地建物取引士は、当該書面に記名しなければならない。」
条文が求めているのは記名だけです。押印は求められていません。かつては「記名押印」でしたが、押印は削除されました。
書面に宅建士の押印がないことを不備だと考える必要はありません。条文上、記名があれば足ります。
なお、受け取る側が書面に署名や押印をすることは、宅建業法上の要件ではありません。35条はあくまで業者側に交付と説明を義務づける規定で、受領者に署名を求める条文はありません。実務では受領の事実を記録するために署名を求められることが一般的ですが、それは法律上の義務ではなく当事者間の慣行です。署名したことが「内容に同意した」ことを意味するわけでもありません。署名は受領と説明を受けた事実の記録であって、契約の意思表示ではないからです。
電磁的方法で受け取る場合は承諾が要る
35条8項は、書面の交付に代えて、政令で定めるところにより相手方の承諾を得て、記載すべき事項を電磁的方法により提供させることができるとしています。この場合、書面を交付させたものとみなされ、5項の記名の規定は適用されません。
承諾がなければ電子データでの提供はできません。紙で受け取りたければそう言えばよい、ということです。
説明事項は二つに分かれる
35条1項が並べる号は、大きく二つに分かれます。
第一の群は、物件そのものに関する事項です。1号(登記された権利)、2号(法令に基づく制限)、3号(私道負担)、4号(飲用水・電気・ガス・排水)、5号(未完成物件の完了時の形状構造)、6号(区分所有建物の追加事項)、6号の2(既存建物の調査と書類)。その物件がどういうものかを教える部分です。
第二の群は、取引条件に関する事項です。7号(代金等以外の金銭)、8号(契約の解除)、9号(損害賠償額の予定・違約金)、10号(手付金等の保全措置)、11号(支払金・預り金の保全)、12号(金銭の貸借のあっせん)、13号(契約不適合責任の履行に関する措置)。どういう条件で取引するかを教える部分です。
そして14号が、その他の事項を省令に委ねる受け皿になっています。災害リスクや建物の来歴に関する事項は、この14号を受けた施行規則16条の4の3に置かれています。
物件を見るか、取引を見るか。この二分法で読むと、数十ページの書面が二つの塊に整理できます。以下、順に見ていきます。
物件そのものに関する事項
1号 登記された権利 — 誰の物か、何が付いているか
宅地建物取引業法35条1項1号
「当該宅地又は建物の上に存する登記された権利の種類及び内容並びに登記名義人又は登記簿の表題部に記録された所有者の氏名(法人にあつては、その名称)」
書かせているのは二つです。登記された権利の種類と内容、そして登記名義人(表題部しかない場合は表題部の所有者)の氏名です。
受け取る側が最初に見るべきなのは、登記名義人と売主が一致しているかです。一致していなければ、代理による売却なのか、相続が未登記なのか、別の事情があるのかを確認する必要があります。
次に、登記された権利に何があるかです。抵当権、根抵当権、地上権、賃借権、差押え、仮登記。抵当権が付いている場合、引渡しまでに抹消される段取りになっているかを確認します。登記記録そのものの読み方は不動産登記簿の読み方で扱っています。
この号は「登記されている」ものに限られます。登記されていない権利、たとえば未登記の賃借権や使用貸借は、この号では出てきません。
2号 法令に基づく制限 — 書かれるのは「概要」
宅地建物取引業法35条1項2号(抜粋)
「都市計画法、建築基準法その他の法令に基づく制限で契約内容の別(中略)に応じて政令で定めるものに関する事項の概要」
注目すべきは「の概要」という語です。制限の全部が書かれるわけではありません。概要です。
そして対象となる法令は「政令で定めるもの」で、宅地建物取引業法施行令3条が列挙しています。都市計画法、建築基準法をはじめとする多数の法律の、特定の条項に基づく制限です。列挙されていない制限は、この号の対象ではありません。
条文が「契約内容の別に応じて」としている点も重要です。宅地か建物か、売買・交換か貸借かによって、説明すべき制限の範囲が変わります。貸借の場合は、売買より狭い範囲になります。
受け取る側としては、概要しか書かれていないことを前提に読む必要があります。用途地域、建蔽率、容積率といった基本的な数値は書かれますが、将来の建て替えで具体的に何が建てられるかまでは書面から読み取れません。そこは自分で確認するか、質問することになります。
3号 私道負担 — 建物の貸借では説明されない
宅地建物取引業法35条1項3号
「当該契約が建物の貸借の契約以外のものであるときは、私道に関する負担に関する事項」
条文が「建物の貸借の契約以外のもの」と限定しています。建物を借りる場合には、この号の説明はありません。
理由は明快です。建物を借りる人は敷地の権利関係を引き受けるわけではないので、私道の負担が誰にあるかは関係がないからです。宅地を借りる場合には説明があります。宅地を借りて建物を建てるなら、私道の負担は借主に影響するからです。
受け取る側としては、建物の賃貸で私道の話が出てこないのは不備ではないと理解しておけばよいことになります。
4号 飲用水・電気・ガス・排水 — 未整備なら見通しと負担
宅地建物取引業法35条1項4号
「飲用水、電気及びガスの供給並びに排水のための施設の整備の状況(これらの施設が整備されていない場合においては、その整備の見通し及びその整備についての特別の負担に関する事項)」
整備されている場合は「整備の状況」だけです。どういう方式か、どこから引かれているかが書かれます。
整備されていない場合には、括弧書きが二つの追加を求めます。「整備の見通し」と「整備についての特別の負担に関する事項」です。
この括弧書きが、受け取る側にとって最も重要な部分です。未整備であること自体より、いつ整備されるのか、自分がいくら負担するのかが問題だからです。条文はその二点を書かせています。書面に未整備と書かれていて見通しと負担の記載がなければ、そこは質問すべき箇所になります。
5号 未完成物件 — 完了時の形状と構造
宅地建物取引業法35条1項5号
「当該宅地又は建物が宅地の造成又は建築に関する工事の完了前のものであるときは、その完了時における形状、構造その他国土交通省令・内閣府令で定める事項」
工事が完了していない物件では、現物を見て判断できません。そこで完成したらどうなるかを書かせます。
35条1項の柱書は「第五号において図面を必要とするときは、図面」を交付するとしています。言葉で足りない場合は図面が付くということです。受け取る側としては、図面があるかどうかを確認する価値があります。
6号 区分所有建物 — 省令が10項目を定めている
区分所有建物の場合、6号により追加の説明事項が生じます。中身は施行規則16条の2が定めており、10項目あります。
1号は、一棟の建物の敷地に関する権利の種類と内容。土地の権利が所有権なのか借地権なのかです。
2号は、共用部分に関する規約の定めがあるときはその内容。規約共用部分の有無です。
3号は、専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定めがあるときはその内容。ペット、事務所利用、楽器などの制限です。
4号は、一棟の建物またはその敷地の一部を特定の者にのみ使用を許す旨の規約の定めがあるときはその内容。専用庭や専用駐車場です。
5号は、維持修繕の費用や管理費用を特定の者にのみ減免する旨の規約の定めがあるときはその内容。分譲会社が一部住戸の負担を免除しているような場合です。
6号は、計画的な維持修繕のための費用の積立てを行う旨の規約の定めがあるときは、その内容および既に積み立てられている額。修繕積立金の規約上の定めと、現在いくら貯まっているかの両方です。
7号は、当該建物の所有者が負担しなければならない通常の管理費用の額。月々の管理費です。
8号は、一棟の建物およびその敷地の管理が委託されているときは、その委託を受けている者の氏名と住所。管理会社です。
9号は、管理者等が管理組合から委託を受けて管理事務を行うマンション管理業者である場合には、その旨。いわゆる第三者管理方式かどうかです。管理組合の理事長を区分所有者が務めるのではなく、管理業者自身が管理者になっている形態を指します。この号は2026年4月1日施行の改正で新設されました。利益相反が生じうる構造なので、購入前に知らせる必要があるという判断です。
10号は、一棟の建物の維持修繕の実施状況が記録されているときは、その内容。過去にどういう修繕をしたかです。9号の新設に伴い、従来の9号がこの10号に繰り下がりました。
そして柱書が配分を定めています。建物の貸借の契約では、第3号と第8号だけです。借りるだけの人に敷地の権利や修繕積立金の話をしても意味がないので、利用制限と管理会社だけに絞られます。区分所有建物の説明事項の詳細は区分所有建物の重要事項説明で扱っています。
受け取る側として特に見るべきなのは、6号の「既に積み立てられている額」と7号の管理費の額です。積立額が少なければ、将来の大規模修繕で一時金を求められるか、積立金が値上げされる可能性があります。
なお、前の所有者が管理費や修繕積立金を滞納していた場合、その債務は買主に及びます。根拠は区分所有法8条です。同法7条1項が規約または集会の決議に基づく債権について先取特権を認めており、8条が「前条第一項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる」としています。買主は特定承継人にあたるので、滞納分を請求されます。滞納の有無は必ず確認すべき項目です。
6号の2 既存建物 — 調査の有無と書類の保存状況
宅地建物取引業法35条1項6号の2
「当該建物が既存の建物であるときは、次に掲げる事項 イ 建物状況調査(実施後国土交通省令で定める期間を経過していないものに限る。)を実施しているかどうか、及びこれを実施している場合におけるその結果の概要 ロ 設計図書、点検記録その他の建物の建築及び維持保全の状況に関する書類で国土交通省令で定めるものの保存の状況」
イが求めているのは、建物状況調査を実施しているかどうかと、実施している場合の結果の概要です。
ここで読み方に注意が要ります。イは「実施しているかどうか」を書かせているのであって、「実施せよ」と命じているのではありません。業者に調査義務はありません。実施していなければ「実施していない」と書かれるだけです。
ロは書類の保存の状況です。設計図書や点検記録が残っているかどうかであって、その中身の評価ではありません。「保存されている」と書かれていても、内容に問題がないという意味ではありません。
取引条件に関する事項
7号 代金等以外に授受される金銭
代金・交換差金・借賃以外に授受される金銭について、その額と授受の目的が書かれます。手付金、敷金、礼金、権利金などです。
受け取る側としては、代金以外に総額でいくら動くのかを確認する箇所になります。
8号 契約の解除に関する事項
どういう場合に契約を解除できるかが書かれます。手付解除、契約不適合による解除、ローンが成立しない場合の解除など、その契約に置かれる解除の定めです。
手付解除については39条2項が、宅建業者が自ら売主となる場合について、買主は手付を放棄して、業者は倍額を現実に提供して解除できるとしています。ただし相手方が契約の履行に着手した後はできません。そして39条3項が、これに反する買主に不利な特約を無効としています。手付の規制は手付の額の制限で扱っています。
9号 損害賠償額の予定・違約金
宅地建物取引業法38条1項(損害賠償額の予定等の制限)
「宅地建物取引業者がみずから売主となる宅地又は建物の売買契約において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の十分の二をこえることとなる定めをしてはならない。」
条文の要点は二つです。
第一に、「これらを合算した額」です。損害賠償額の予定と違約金は別々に上限があるのではなく、合算して代金の10分の2までです。片方が10分の2、もう片方が10分の2で合計10分の4、という定めはできません。
第二に、38条2項が「代金の額の十分の二をこえる部分について、無効とする」としています。契約全体が無効になるのでも、その条項全体が無効になるのでもありません。超えた部分だけが無効です。
そしてこの制限は、業者が自ら売主となる場合にのみ働きます。売主が個人で業者が媒介しているだけなら、38条は適用されません。書面を読むときは、まず売主が誰かを確認する必要があるということです。損害賠償額の予定の制限は損害賠償額の予定等の制限で扱っています。
10号 手付金等の保全措置の概要
宅地建物取引業法35条1項10号
「第四十一条第一項に規定する手付金等を受領しようとする場合における同条又は第四十一条の二の規定による措置の概要」
保全措置を講じるかどうかではなく、その「概要」が書かれます。
保全措置が必要になる基準は41条1項ただし書と41条の2第1項ただし書にあり、いずれも「〜以下であり、かつ、政令で定める額以下であるとき」は不要という書き方です。政令の額は施行令3条の5により1,000万円です。
工事完了前(未完成物件)は代金の5パーセント以下かつ1,000万円以下なら不要(41条1項ただし書)。工事完了後(完成物件)は代金の10分の1以下かつ1,000万円以下なら不要(41条の2第1項ただし書)。裏返せば、これを超えれば保全措置が要ります。
措置の中身も条文が定めています。未完成物件では、41条1項1号の銀行等による保証か、2号の保険事業者による保証保険の二つです。完成物件ではこれらに加えて、41条の2第1項の指定保管機関による手付金等寄託契約と質権設定契約が使えます。
指定保管機関による保管を「供託所への供託」と説明しているものを見かけますが、条文上は供託ではありません。国土交通大臣が指定する者との間で手付金等寄託契約を締結し、あわせて買主との間で質権設定契約を締結する仕組みです。保全措置の要否の判定と計算手順は手付金等の保全措置で扱っています。
そして41条・41条の2は、業者が自ら売主となる場合の規定です。売主が個人であれば適用されません。この場合、支払った手付金が戻らないリスクを別の方法で考える必要があります。
11号 支払金・預り金の保全
保全措置が講じられている手付金等を除いた、業者が受領する金銭について、保全措置を講ずるかどうか、講ずる場合はその概要が書かれます。
10号との違いに注意してください。10号は「講ずる場合の概要」だけですが、11号は「講ずるかどうか」から書かせています。11号は保全が義務づけられている場面ではないので、講じるか否かの判断そのものが情報になるからです。
12号 金銭の貸借のあっせん
宅地建物取引業法35条1項12号
「代金又は交換差金に関する金銭の貸借のあつせんの内容及び当該あつせんに係る金銭の貸借が成立しないときの措置」
住宅ローンのあっせんについて、その内容と、ローンが成立しなかった場合にどうなるかが書かれます。
実務でいうローン特約の実質は、この「成立しないときの措置」です。融資が下りなかったときに契約が解除できるのか、手付金は返ってくるのか。書面のこの箇所を読むことになります。
受け取る側として確認すべきは、どの金融機関のどの融資が対象なのか、いつまでに結果が出る前提なのか、成立しなかったときに何が起きるのかの三点です。条文が書かせているのは措置の内容なので、期限や対象の細部は契約書の条項で確認することになります。
13号 契約不適合責任の履行に関する措置
宅地建物取引業法35条1項13号(抜粋)
「当該宅地又は建物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任の履行に関し保証保険契約の締結その他の措置(中略)を講ずるかどうか、及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要」
この号が書かせているのは、責任の内容そのものではありません。「履行に関し」保証保険等の措置を講じるかどうかです。責任を果たせる裏付けがあるかという話です。
責任の内容そのものは契約の中身なので、37条書面と契約書で確認します。
ここで、40条との関係を正確に押さえておく必要があります。
宅地建物取引業法40条1項(担保責任についての特約の制限)
「宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法第五百六十六条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない。」
条文の構造を正確に読んでください。40条は「2年以上の責任期間を設けなければならない」と定めているのではありません。
原則は民法566条です。同条は、種類・品質の不適合について、買主が不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければ、担保責任を追及できないとしています。業者が自ら売主となる場合、この566条より買主に不利な特約は無効です(40条2項)。
そのうえで、「引渡しの日から2年以上」となる特約だけは例外的に許される。これが「〜する場合を除き」の意味です。特約を何も置かなければ民法566条がそのまま適用されるのであって、2年の期間が自動的に生じるわけではありません。
そして40条も、業者が自ら売主となる場合の規定です。売主が個人であれば適用されず、担保責任を負わない旨の特約も原則として有効になります。契約不適合責任の特約の制限は契約不適合責任の特約制限、責任の内容そのものは契約不適合責任で扱っています。
受け取る側の要点は一つです。売主が業者か個人かで、適用される規制がまるごと変わります。書面の売主欄を先に見てください。
14号と施行規則16条の4の3 — 災害リスクと建物の来歴
14号は省令への受け皿
35条1項14号は、「その他宅地建物取引業者の相手方等の利益の保護の必要性及び契約内容の別を勘案して」省令で定める事項、としています。この受け皿に置かれているのが施行規則16条の4の3で、13の号があります。
柱書が契約類型ごとの配分を定めており、宅地の売買・交換では1号から3号の2まで、建物の売買・交換では1号から6号まで、宅地の貸借では1号から3号の2までと8号から13号まで、建物の貸借では1号から5号までと7号から12号までとなっています。
1号から3号 三つの区域
1号は造成宅地防災区域(宅地造成及び特定盛土等規制法45条1項により指定されたもの)、2号は土砂災害警戒区域(土砂災害防止法7条1項)、3号は津波災害警戒区域(津波防災地域づくりに関する法律53条1項)です。
いずれも「区域内にあるときは、その旨」という書き方です。区域内にあるかどうかだけを書かせています。区域内にある場合にどういう規制がかかるか、どの程度の危険があるかまでは、この号では書かれません。
3号の2 水害ハザードマップにおける所在地
施行規則16条の4の3第3号の2
「水防法施行規則第十一条第一号の規定により当該宅地又は建物が所在する市町村の長が提供する図面に当該宅地又は建物の位置が表示されているときは、当該図面における当該宅地又は建物の所在地」
書かせているのは、その図面のどこに物件があるかです。ハザードマップを示して、この位置ですと説明する。
「浸水想定区域内にあるかどうか」を書かせているのではない点に注意してください。条文は所在地を示させているだけで、浸水の深さや危険度の評価までは求めていません。受け取る側は、示された位置を自分でマップと突き合わせて読む必要があります。
そして「図面に位置が表示されているときは」という条件付きです。市町村がハザードマップを作成・提供していない場合には、この説明自体がありません。説明がないことは「安全だ」という意味ではなく、「図面が提供されていない」という意味かもしれません。
4号 石綿使用調査 — 記録があるときだけ
施行規則16条の4の3第4号
「当該建物について、石綿の使用の有無の調査の結果が記録されているときは、その内容」
「記録されているときは」。調査せよとは書いていません。既に調査の記録があるなら、その内容を説明せよという規定です。
業者に調査義務はありません。したがって書面に何も書かれていなくても、それは「石綿がない」という意味ではなく、「調査の記録がない」という意味です。この違いは決定的です。
5号 耐震診断 — 昭和56年6月1日という線
施行規則16条の4の3第5号(抜粋)
「当該建物(昭和五十六年六月一日以降に新築の工事に着手したものを除く。)が建築物の耐震改修の促進に関する法律第四条第一項に規定する基本方針のうち(中略)技術上の指針となるべき事項に基づいて次に掲げる者が行う耐震診断を受けたものであるときは、その内容」
二つの限定があります。
第一に、昭和56年6月1日以降に新築工事に着手した建物は除かれます。新耐震基準が適用されている建物なので、改めて診断の説明を求める必要がないという整理です。逆にいえば、この号の対象は昭和56年6月1日より前に新築工事に着手した建物です。
第二に、「耐震診断を受けたものであるときは」という条件付きです。4号と同じく、業者に診断を実施する義務はありません。
診断を行う者も限定されており、指定確認検査機関、建築士、登録住宅性能評価機関、地方公共団体のいずれかです。これ以外の者が行った診断は、この号の対象になりません。
6号 住宅性能評価を受けた新築住宅
住宅の品質確保の促進等に関する法律5条1項の住宅性能評価を受けた新築住宅であるときは、その旨が書かれます。
建物の売買・交換のときだけの項目です。柱書の配分により、建物の貸借では6号は外れます。借りる人にとって新築時の性能評価の有無は関心事から遠い、という判断です。
「記録があるときは」という書き方をどう読むか
三つの類型がある
ここまで見てきたとおり、35条とその省令には条件付きの書き方が繰り返し現れます。整理すると三つの類型があります。
第一に、「〜が記録されているときは、その内容」。石綿使用調査(16条の4の3第4号)、維持修繕の実施状況(16条の2第10号)がこれです。
第二に、「〜を受けたものであるときは、その内容」。耐震診断(16条の4の3第5号)です。
第三に、「〜の定めがあるときは、その内容」。区分所有建物の規約に関する各号(16条の2第2号から6号)がこれです。
三つとも共通しているのは、業者に「作り出す義務」を課していないことです。あるものを説明する義務であって、ないものを調べたり作ったりする義務ではありません。
例外は6号の2
比べてみると、35条1項6号の2の書き方が違うことに気づきます。イは「建物状況調査を実施しているかどうか、及びこれを実施している場合におけるその結果の概要」です。
「実施しているかどうか」を書かせている。つまり、実施していない場合には「実施していない」と積極的に書かれます。記録がなければ何も書かれない他の号とは、情報の出方が違います。
もっとも、実施義務があるわけではない点は同じです。「実施していない」と書くことが義務なのであって、「実施すること」が義務なのではありません。
受け手側の読み方
以上を踏まえると、受け取る側の読み方が定まります。
書面の空欄や「なし」を、「問題がない」と読んではいけません。多くの号は「あるものを書く」という構造なので、空欄は「調べていない」「記録がない」を意味しうるからです。
したがって、確認すべきことは二つに分かれます。第一に、書いてある内容が自分にとって受け入れられるか。第二に、書いていない部分が「ないから書いていない」のか「調べていないから書いていない」のか。後者は書面からは分かりません。質問して確かめるほかありません。
業者側がどこまで調査するか、調査義務のある事項とない事項がどう分かれているかは物件調査で詳しく扱っています。業者側の義務の輪郭を知っておくと、書面の空欄が何を意味するかを判断しやすくなります。
書面に書かれないこと
「概要」で足りるとされている項目
2号の法令上の制限は「概要」、10号の保全措置は「措置の概要」、13号は「その措置の概要」、6号の2イは「その結果の概要」。条文自体が概要で足りるとしている項目が複数あります。
概要とは、細部が省かれているということです。書面を読んで分かるのは輪郭までで、具体的にどこまで建てられるか、保証の条件はどうなっているかといった詳細は、別途確認する必要があります。
説明事項に入っていないもの
35条1項が列挙していない事項は、この書面には現れません。周辺環境、日当たり、騒音、近隣とのトラブル、過去の事件事故といった事柄は、35条1項の各号にも施行規則16条の4の3にも挙げられていません。
これらが重要でないという意味ではありません。35条の説明義務の対象ではない、というだけです。別の規律の問題として扱われます。
契約内容そのもの
繰り返しになりますが、35条書面は契約内容を確定する書面ではありません。代金の額、引渡しの時期、移転登記の申請の時期といった合意の中身は、37条書面と契約書で確認します。
35条書面と契約書の記載が食い違っていないかを照合するのは、受け取る側にとって意味のある作業です。判断材料として示されたものと、実際に合意する内容が一致しているか。ここがずれていれば、その場で指摘すべき箇所になります。売買全体の流れは不動産売買の流れで扱っています。
供託所等の説明は35条ではない
なお、業者が営業保証金を供託した供託所や、加入している保証協会に関する説明は、35条ではなく35条の2が定めるものです。条文が別なので、35条の説明事項として数えないでください。この説明の位置づけは供託所等に関する説明で扱っています。
借りる側として受け取る場合
説明事項の配分が変わる
賃貸で重要事項説明を受ける場合、説明事項の範囲が売買とは違います。条文の各所に「契約内容の別に応じて」という配分の仕組みが埋め込まれているためです。
3号の私道負担は、建物の貸借では説明されません。条文が「建物の貸借の契約以外のものであるときは」と限定しています。
区分所有建物の追加事項は、建物の貸借では施行規則16条の2の第3号と第8号だけです。専有部分の利用制限と、管理会社の氏名住所に絞られます。
施行規則16条の4の3では、貸借に固有の号が加わります。8号の契約期間と更新に関する事項、9号の定期借地権・定期建物賃貸借等である旨、10号の用途その他の利用に係る制限、11号の敷金等の精算に関する事項、12号の管理の委託先、13号の契約終了時の建物取壊しに関する事項です。これらは売買では説明されません。
とりわけ9号と11号は、借りる側にとって重要です。9号は定期借家かどうかを教えるもので、更新の有無に直結します。11号は敷金がどう精算されるかで、退去時の負担に直結します。賃貸に固有の項目は賃貸の重要事項説明で詳しく扱っています。
試験での出題ポイント
説明の時期と相手方
「契約が成立するまでの間に」(35条1項)。契約後の交付では義務を果たしたことになりません。
説明の相手方は取得しようとする者・借りようとする者です。売主・貸主への説明義務はありません。37条書面が各当事者に交付されるのと対比されます。
宅建士証の提示
35条4項は請求を要件としていません。22条の4が「請求があつたとき」としているのとの対比が問われます。
記名と押印
35条5項が求めるのは記名だけです。押印は要件ではありません。
相手方が業者の場合
35条6項により、相手方が宅建業者である場合は説明が不要で、書面の交付だけで足ります。そして4項・5項が適用されません。ただし7項により、書面への記名は必要です。「業者間なら書面の交付も不要」は誤りです。
「概要」かどうか
2号は「制限に関する事項の概要」、10号は「措置の概要」。制限や措置の全部ではありません。
「記録されているとき」
石綿使用調査(16条の4の3第4号)と耐震診断(同5号)は、記録・実施があるときにその内容を説明するもので、調査・診断の義務はありません。「宅建業者は石綿使用の有無を調査しなければならない」は誤りです。
耐震診断の対象建物
昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手した建物は除かれます。「すべての建物について耐震診断の内容を説明しなければならない」は誤りです。
区分所有建物の号数
施行規則16条の2は10項目で、9号が第三者管理方式、10号が維持修繕の実施状況の記録です。建物の貸借では3号と8号だけになります。
数字が絡む条文
38条は損害賠償額の予定と違約金を合算して代金の10分の2まで。超える部分だけが無効です。39条1項の手付は代金の10分の2まで。保全措置の基準は未完成が5パーセント、完成が10分の1、いずれも1,000万円(施行令3条の5)。
40条の読み方
「引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き」という構造です。2年以上の期間を設ける義務があるのではありません。
覚え方・整理の仕方
「契約前か、契約後か」で書面を分ける
35条は契約前、37条は契約後。この一点から、他の違いがすべて導けます。
契約前だから判断材料であり、判断する側だけに渡せば足りる(取得者・借主のみ)。契約前だから説明が要る。契約後だから合意内容の記録であり、両当事者に渡す必要がある。契約後だから説明は要らず、記名だけでよい。
時系列を押さえれば、役割・相手方・説明の要否がすべて説明できます。
「物件を見るか、取引を見るか」で号を分ける
1号から6号の2までが物件、7号から13号までが取引条件。前半は物の話、後半は条件の話。この境目を覚えておけば、号の並びが意味を持ちます。
そして14号は省令への受け皿で、災害リスクと建物の来歴がそこに入っています。
「あるものを書く」か「あるかどうかを書く」か
条文の語尾に注目してください。
「〜が記録されているときは、その内容」「〜の定めがあるときは、その内容」は、あるものを書く型です。なければ何も書かれません。
「〜を実施しているかどうか」(6号の2イ)「〜を講ずるかどうか」(11号・13号)は、あるかどうかを書く型です。なければ「ない」と書かれます。
受け取る側にとっては、この違いが空欄の意味を決めます。前者の空欄は情報の不在、後者の空欄は本来ありえない、ということになります。
売主が業者かどうかを最初に見る
38条、39条、40条、41条、41条の2。書面に現れる規制の多くは、業者が自ら売主となる場合にしか働きません。
売主が個人で業者は媒介しているだけ、という取引では、これらの規制はすべて外れます。書面を読む前に売主欄を見る。この順序を習慣にしてください。
貸借は「引かれる」と「足される」の両方がある
賃貸の場合、私道負担が引かれ、区分所有の項目が3号と8号に絞られる一方で、施行規則16条の4の3の8号から13号が足されます。単に減るのではなく、入れ替わる。この感覚を持っておくと、売買との違いを正確に押さえられます。35条書面の売買・賃貸の違いの整理は35条書面の覚え方にあります。
理解度チェッククイズ
Q1. 宅地建物取引士は、重要事項の説明をするときは、相手方から請求があった場合に宅地建物取引士証を提示しなければならない。(○か×か)
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×:35条4項は「宅地建物取引士は、前三項の説明をするときは、説明の相手方に対し、宅地建物取引士証を提示しなければならない」と定めており、請求を要件としていません。重要事項説明の場面では、相手方が求めるまでもなく提示する義務があります。請求を要件としているのは22条の4で、こちらは「取引の関係者から請求があつたときは、宅地建物取引士証を提示しなければならない」という一般的な提示義務です。二つの条文の書き分けを取り違えさせる出題が繰り返されています。なお、35条5項が求めているのは書面への記名だけで、押印は要件ではありません。Q2. 宅地建物取引業者は、既存の建物の売買の媒介を行う場合、建物状況調査を実施したうえで、その結果の概要を重要事項として説明しなければならない。(○か×か)
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×:35条1項6号の2イが求めているのは「建物状況調査を実施しているかどうか、及びこれを実施している場合におけるその結果の概要」の説明であって、調査の実施そのものを義務づけてはいません。実施していなければ、実施していない旨を説明することになります。同様の構造は施行規則16条の4の3にもあり、4号の石綿使用調査は「調査の結果が記録されているときは、その内容」、5号の耐震診断は「耐震診断を受けたものであるときは、その内容」と、いずれも既にあるものを説明させる書き方です。書面に記載がないことは、対象となる事実が存在しないことを意味するのではなく、記録や調査がないことを意味しうる、という点が受け取る側にとって重要になります。Q3. 建物の貸借の媒介において、当該建物が区分所有建物である場合、宅地建物取引業者は、当該一棟の建物の計画的な維持修繕のための費用の積立てを行う旨の規約の定めの内容および既に積み立てられている額を説明しなければならない。(○か×か)
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×:施行規則16条の2の柱書は、建物の貸借の契約にあっては第3号および第8号に掲げるものとしています。積立てに関する事項は第6号なので、建物の貸借では説明事項に含まれません。建物の貸借で説明されるのは、第3号の専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定めと、第8号の管理が委託されているときの受託者の氏名・住所の二つだけです。借りるだけの人にとって、敷地の権利や修繕積立金の残高は関心事から遠いという整理です。なお同規則は2026年4月1日施行の改正により10号構成となり、第9号に管理者等がマンション管理業者である場合の説明が新設され、従来の維持修繕の実施状況の記録は第10号に繰り下がりました。柱書の貸借の配分は第3号と第8号のままで変わっていません。Q4. 宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地の売買契約において、債務不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額を代金の10分の1と予定し、あわせて違約金を代金の10分の2と定めた場合、この定めは全体として無効となる。(○か×か)
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×:38条1項は、損害賠償の額の予定と違約金を定めるときは「これらを合算した額が代金の額の十分の二をこえることとなる定めをしてはならない」としています。合算すると10分の3となり上限を超えますが、38条2項は「前項の規定に反する特約は、代金の額の十分の二をこえる部分について、無効とする」と定めています。無効になるのは10分の2を超える部分だけで、定め全体が無効になるのではありません。超過部分だけを切り落として、10分の2までは有効に残ります。なおこの制限は宅地建物取引業者が自ら売主となる場合にのみ適用され、売主が個人で業者が媒介しているにすぎない取引では働きません。Q5. 宅地建物取引業者が自ら売主となる建物の売買契約においては、契約不適合を担保すべき責任について、引渡しの日から2年以上の責任期間を定めなければならない。(○か×か)
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×:40条1項は「民法第五百六十六条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から二年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない」と定めています。2年以上の期間を設ける義務を課しているのではなく、民法566条より買主に不利な特約を原則として禁じたうえで、引渡しの日から2年以上とする特約だけを例外的に許容する構造です。特約を何も置かなければ民法566条がそのまま適用され、買主は不適合を知った時から1年以内に通知すれば足ります。40条2項により、これに反する特約は無効です。なおこの規制も業者が自ら売主となる場合の規定なので、売主が個人であれば担保責任を負わない旨の特約も原則として有効になります。まとめ
重要事項説明書を受け取る側として押さえるべきことを整理します。
この書面は判断のためのものです。35条1項が「契約が成立するまでの間に」交付・説明させているのは、契約するかどうかを決める材料を渡すためです。契約内容そのものは37条書面が担います。
説明を受けるのは取得者・借主だけです。売主・貸主には説明義務がありません。
宅建士証は請求がなくても提示されます(35条4項)。書面には宅建士の記名があります(35条5項)。押印は要件ではありません。
説明事項は物件そのもの(1号から6号の2)と取引条件(7号から13号)に分かれ、14号が省令への受け皿になっています。災害リスクと建物の来歴は施行規則16条の4の3にあります。
多くの号が「あるものを書く」型です。石綿使用調査も耐震診断も、記録や実施があるときにその内容を説明するもので、業者に調査義務はありません。空欄は「問題がない」ではなく「記録がない」を意味しうるという点が、受け取る側にとって最も重要な読み方になります。
売主が業者かどうかで、適用される規制がまるごと変わります。38条の10分の2、39条の手付の制限、40条の担保責任の特約制限、41条・41条の2の保全措置は、いずれも業者が自ら売主となる場合の規定です。
書面に書かれるのは「概要」であることも多いという前提で読み、足りない部分は質問して補ってください。説明を受けたうえで契約しないという選択は、この制度が最初から想定しているものです。
宅建業法上の各制度の位置づけは35条書面の記載事項一覧で、取引で実際に起きるトラブルの類型は不動産トラブル事例集で確認できます。
宅建試験AIブートラボのアプリでは、35条の各号と省令の配分を軸にした肢別トレーニングを収録しています。条文の語尾に注目しながら肢を回して、「あるものを書く」型と「あるかどうかを書く」型を見分けられるまで固めてください。
税と価格の評定は毎年ほぼ同じ形で出ます。出題パターンを肢別で押さえれば取りこぼしません。