宅建業法で18問以上取る|論点別の精度の上げ方
宅建業法20問で18問以上を取るために、免許と登録、営業保証金と保証協会、35条と37条、8種制限、報酬計算の各論点でどこを間違えるのか、どう詰めれば落とさなくなるのかを条文根拠つきで整理します。
目次
本記事は、宅建業法20問のうち18問以上を安定して取るために、論点ごとに「どこで間違えるのか」「どう詰めれば落とさなくなるのか」を条文根拠つきで書いたものです。科目の骨組みを先に確認したい場合は宅建業法の全体像、直前期に14日で一巡させる日割りは宅建業法を2週間で仕上げる方法にまとめてあります。本記事は日程の話をしません。すでに一巡した人が、残りの取りこぼしをどう潰すかだけを扱います。
先に結論を書きます。宅建業法で18問に届かない原因のほとんどは、知らない論点ではなく、知っているつもりの論点の取り違えです。 免許と登録の期間を入れ替える、営業保証金と分担金の額を混ぜる、専任と専属専任の日数を逆にする、35条書面の話を37条書面に持ち込む、業者間取引なのに8種制限を適用する。この5系統だけで、宅建業法の失点の大半が説明できます。したがって精度を上げる作業は、新しい知識を足すことではなく、隣り合う制度の境界線を引き直すことになります。
18問という目標を配点構成から定義する
20問の中で、どこを取ってどこを捨てるか
宅建試験は50問四肢択一で、例年、権利関係14問、法令上の制限8問、税・その他3問、宅建業法20問、登録講習修了者が免除される5問という構成です。宅建業法は単独で全体の4割を占めます。合格判定基準は年ごとに動くため固定の数字は置けませんが、近年の推移は合格ライン予想、科目間の目標点の配り方は宅建の科目別攻略法にまとめてあります。
18問という目標は、20問中2問までは落としてよいという意味です。そして落としてよい2問は、あらかじめ決めておきます。具体的には、施行規則レベルまで踏み込んだ細目、住宅瑕疵担保履行法の手続の細部、監督処分の聴聞・公告の手続、業務に関する禁止事項の列挙のうち出題実績の薄いもの。この領域は、覚えても次に同じ形で問われる保証がありません。
逆に落としてはいけないのは、35条書面、37条書面、8種制限、報酬の計算、免許と登録、営業保証金と保証協会、媒介契約です。ここは条文の要件と数値で答えが確定し、問われ方の型も安定しています。論点ごとの出題比重は宅建業法の頻出論点ランキングで確認できます。
失点は「知らない」ではなく「隣と混ざる」で起きる
宅建業法の選択肢は、条文の一部だけを差し替えて作られます。差し替えられるのは、数値、主語、期限の起算点、適用場面、義務か任意かの4つか5つに限られます。まったく知らない制度が出てきて解けない、という失点は宅建業法では例外的です。
この構造がわかると、復習の方法が変わります。間違えた肢を「復習」の一語で処理せず、知らなかったのか、隣の制度と混ざったのか、問題文の限定を読み落としたのかに分類してください。混同型と読み落とし型は、テキストを読み直しても直りません。境界線を書き出す作業と、問題文に線を引く作業がそれぞれ必要です。分類を記録に残す方法は効果的なノートの取り方にあります。
やることは3つです。隣り合う制度を同じ軸で並べ直すこと、数値をその数値が誰を守るためにあるのかとセットで覚えること、問題文の限定表現を機械的にチェックすること。以下、論点ごとに具体化します。
免許と登録を混同しない詰め方
免許は業者に、登録は個人に与えられます。この2つは制度の設計思想が違うのに、期間と届出の形が似ているため、選択肢で入れ替えられます。免許制度の全体像は宅建業の免許制度、横断整理は免許制度の横断整理にあります。
有効期間は「5年・なし・5年」で固定する
宅建業の免許の有効期間は5年です(業法3条2項)。宅地建物取引士の登録には有効期間がなく、消除されない限り効力が続きます。宅建士証の有効期間は5年です(業法22条の2第3項)。
ここで最も多い誤りが、「登録に5年の有効期間がある」と読むパターンです。5年なのは免許と宅建士証であって、登録ではありません。登録と宅建士証は別物だという理解を先に固めてください。合格後の手続の流れは宅建士の登録と宅建士証で追えます。
免許の更新は、有効期間満了の日の90日前から30日前までの間に申請します(施行規則3条)。申請したが処分がなされないまま満了日が来た場合、従前の免許は処分がなされるまで有効で、更新後の有効期間は従前の満了日の翌日から起算されます(業法3条4項・5項)。「申請中は無免許状態になる」という肢は誤りです。
宅建士証の交付を受けるには、交付申請前6か月以内に行われる知事指定の講習を受けなければなりません(業法22条の2第2項)。ただし試験合格の日から1年以内に交付を受ける場合は不要です。この「1年以内なら講習不要」は繰り返し問われます。
登録の移転をしたときの宅建士証の有効期間は、従前の宅建士証の残存期間です(業法22条の2第5項)。移転で5年に戻るわけではありません。
届出の期限は「30日以内」と「遅滞なく」で分ける
業者側の変更の届出は30日以内です(業法9条)。対象は宅建業者名簿の登載事項のうち、商号または名称、法人の役員および政令で定める使用人の氏名、事務所の名称および所在地、事務所ごとに置かれる専任の宅地建物取引士の氏名などです。資本金の額や、事務所ごとの従業者数は届出事項ではありません。
廃業等の届出も30日以内ですが(業法11条1項)、死亡の場合だけ起算点が違います。相続人が「その死亡の事実を知った日から30日以内」です。死亡日からではありません。ここは起算点をずらす形で出題されます。
一方、宅建士側の変更の登録は「遅滞なく」です(業法20条)。対象は氏名、住所、本籍、勤務先の宅建業者の商号または名称および免許証番号です。勤務先の所在地は登録事項ではありません。死亡等の届出は30日以内で、死亡の場合は相続人が知った日から30日以内です(業法21条)。
整理すると、業者の変更は30日以内、宅建士の変更は遅滞なく、死亡等はどちらも30日以内で死亡時のみ知った日起算、となります。この3行を書けるようにしておけば、この系統は落としません。
欠格期間の起算点をそろえる
欠格事由は5年という数字が繰り返し出てきますが、5年をどこから数えるかが系統ごとに違います。ここを混ぜると、正誤が反転します。
刑罰による欠格は、「刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年」を経過しない者です(業法5条1項5号・6号)。処せられた日からでも、判決確定日からでもありません。
免許取消処分による欠格は、「免許を取り消され、その取消しの日から5年」を経過しない者です(業法5条1項2号)。こちらは処分の日が起算点で、執行という概念が入りません。
不正手段による免許取得などを理由とする取消処分の聴聞の期日および場所が公示された日から処分がなされるまでの間に、相当の理由なく廃業等の届出をした者は、その届出の日から5年です(業法5条1項3号)。ここも届出の日が起算点です。
さらに重要なのが執行猶予です。執行猶予期間が満了すれば刑の言渡しは効力を失うため、その時点で欠格事由に該当しなくなります。満了からさらに5年を待つ必要はありません。「執行猶予期間の満了後5年を経過しなければ免許を受けられない」という肢は誤りです。
罰金刑で欠格になるのは罪名が限定されています。宅建業法違反、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律違反、暴力行為等処罰に関する法律違反、および刑法の傷害、現場助勢、暴行、凶器準備集合、脅迫、背任です。過失傷害罪や道路交通法違反の罰金では欠格になりません。系統別の整理は免許の欠格事由にあります。
なお、2025年6月1日施行の改正刑法により懲役と禁錮は拘禁刑に一本化され、宅建業法の欠格事由や罰則の表記も「拘禁刑」に改められています。改正論点の扱いは宅建業法の改正ポイントを確認してください。
営業保証金と保証協会の数字を取り違えない詰め方
この2つは、取引の相手方に弁済の原資を用意させるという目的が同じで、金額と手続だけが違います。だからこそ数字が入れ替えられます。比較は営業保証金と弁済業務保証金の違い、協会側の仕組みは保証協会の仕組みにあります。
供託額と分担金は、桁で区別する
営業保証金は、主たる事務所につき1,000万円、その他の事務所につき事務所ごとに500万円です(業法25条2項、施行令2条の4)。弁済業務保証金分担金は、主たる事務所につき60万円、その他の事務所につき事務所ごとに30万円です(業法64条の9第1項、施行令7条)。
覚え方としては、営業保証金は千万円単位、分担金は十万円単位、と桁で分けます。混ざるのは桁ではなく「1,000万と500万」「60万と30万」の主従関係のほうなので、どちらも主たる事務所が2倍、と押さえます。
供託の方法にも違いがあります。営業保証金は金銭のほか有価証券でも供託でき、国債は額面の100%、地方債と政府保証債は90%、その他の債券は80%で評価されます。これに対し弁済業務保証金分担金は金銭に限られます。「分担金を有価証券で納付できる」という肢は誤りです。
還付の限度額は、分担金の額ではない
最も出題されるのがここです。保証協会の社員と取引した者が弁済を受けられる限度は、その社員が社員でないとしたならば供託すべきであった営業保証金の額に相当する額の範囲内です(業法64条の8第1項)。つまり主たる事務所のみの業者なら、納付した分担金は60万円でも、還付の限度は1,000万円になります。
「還付の限度額は納付した分担金の額である」という肢は誤りです。この一点だけで1肢が確定することが珍しくありません。
還付を受けられる相手にも限定があります。宅建業に関し取引をした者であって、宅建業者に該当しない者です(業法27条1項、64条の8第1項)。業者間取引の債権は還付の対象になりません。また、内装工事の請負代金や広告料など、宅建業の取引によって生じた債権でないものも対象外です。
期限は「誰が誰に、いつまでに」の形で覚える
営業保証金は、供託した旨を免許権者に届け出た後でなければ事業を開始できません(業法25条5項)。免許を受けた日から3か月以内に届出がないときは免許権者が催告しなければならず(同条6項)、催告が到達した日から1か月以内に届出がないときは免許を取り消すことができます(同条7項)。取り消さなければならない、ではありません。
還付があって営業保証金が不足したときは、免許権者から通知を受けた日から2週間以内に不足額を供託し(業法28条1項)、供託した日から2週間以内にその旨を届け出ます(同条2項)。2週間が2回続く形です。
保証協会側は形が違います。分担金は加入しようとする日までに納付し、加入後に新たに事務所を設置したときは設置した日から2週間以内に納付します(業法64条の9第2項)。協会は分担金の納付を受けた日から1週間以内に弁済業務保証金を供託します(業法64条の7)。還付があったときは、協会から還付充当金を納付すべき旨の通知を受けた社員が、通知を受けた日から2週間以内に納付します(業法64条の10第2項)。事務所設置時の納付と還付充当金の納付は、いずれも怠ると社員の地位を失います。
社員の地位を失った業者は、その日から1週間以内に営業保証金を供託しなければなりません(業法64条の15)。ここは1週間であって2週間ではありません。数値だけを並べた確認は宅建業法の数字まとめで行えます。
媒介契約の3類型で期間・登録・報告を落とさない詰め方
媒介契約の規制は業法34条の2にまとまっており、対象は宅地建物の売買または交換の媒介です。貸借の媒介には適用されません。この前提を落とすと、貸借の事案で「3か月を超える有効期間の定めは無効」といった肢に引っかかります。3類型の比較は媒介契約の3類型に整理してあります。
3類型を拘束の強さの順に並べる
一般媒介は複数業者への重ねての依頼が可能で、自己発見取引もできます。専任媒介は他業者への依頼ができず、自己発見取引はできます。専属専任媒介は他業者への依頼も自己発見取引もできません。拘束が強くなるほど、業者側に課される義務も重くなる、という対応関係が制度の骨格です。
この対応関係を先に押さえると、数値は方向性から復元できます。拘束が強い専属専任のほうが、指定流通機構への登録期限は短く、報告の頻度は高い。一般媒介には法律上の期間制限も登録義務も報告義務もない。この方向性さえ合っていれば、日数を逆に覚えることはなくなります。
期間・登録・報告の3軸を埋める
有効期間は、専任媒介と専属専任媒介がいずれも3か月以内です(業法34条の2第3項)。3か月を超える定めをしたときは、無効になるのではなく3か月に短縮されます。ここは「契約自体が無効」とする肢が作られます。更新は依頼者の申出があるときに限られ、自動更新の特約は無効です。一般媒介には期間の制限がありません。
指定流通機構への登録は、専任媒介が契約締結の日から7日以内、専属専任媒介が5日以内で、いずれも業者の休業日を除いて数えます(業法34条の2第5項、施行規則15条の10)。休業日を算入しない点は、日数計算の肢で問われます。一般媒介には登録義務がありません。
業務の処理状況の報告は、専任媒介が2週間に1回以上、専属専任媒介が1週間に1回以上です(業法34条の2)。報告の方法は書面に限られず、口頭でも電子メールでも足ります。「必ず書面で報告しなければならない」という肢は誤りです。一般媒介には報告義務がありません。
書面と通知で問われる細部
媒介契約を締結したときは、遅滞なく34条の2第1項の書面を作成し、記名押印して依頼者に交付します。ここで記名押印するのは宅地建物取引業者であって、宅地建物取引士ではありません。35条書面と37条書面が宅建士の記名を要するのと対照的で、主語のすり替えが起きやすい箇所です。依頼者の承諾を得れば電磁的方法による提供もできます。
物件価額または評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければなりません(業法34条の2第2項)。根拠の明示は口頭でも足り、書面に限られません。ただし根拠を示さずに意見を述べることは認められません。
登録した業者は、指定流通機構が発行する登録を証する書面を遅滞なく依頼者に引き渡します。また、登録に係る契約が成立したときは遅滞なくその旨を指定流通機構に通知しなければならず、通知事項は登録番号、取引価格、契約成立年月日です。当事者の氏名は通知事項ではありません。
35条と37条を役割から復元する詰め方
この2つは記載事項の一覧を丸暗記しようとすると必ず混ざります。役割の違いから復元するほうが速く、本番で迷いません。詳細は35条書面の覚え方と37条書面の記載事項、対比は35条書面と37条書面の違いにあります。
2つの書面は、目的が違う
35条書面は、契約するかどうかを判断するための材料を渡す書面です。だから契約が成立するまでの間に、これから権利を取得しようとする者や借りようとする者に対して交付します。判断材料なので、宅地建物取引士が内容を説明し、その際に宅建士証を提示しなければなりません(業法35条4項)。
37条書面は、成立した契約の内容を記録する書面です。だから契約が成立した後、遅滞なく、契約の両当事者に交付します。記録なので説明義務はありません。宅建士の記名は必要ですが、宅建士が説明する必要はなく、交付も宅建士でなくてかまいません。
この「判断材料か、合意の記録か」を先に置くと、記載事項の振り分けが導けます。たとえば法令上の制限や登記された権利の内容は、買うかどうかの判断材料なので35条書面に載り、37条書面には載りません。逆に、代金の額や支払時期、引渡しの時期は、契約で初めて決まる合意内容なので37条書面の必要的記載事項になります。
業者間取引での扱いが逆になる
35条書面は、相手方が宅建業者である場合、説明を省略できます(業法35条6項)。ただし書面の交付そのものは省略できません。説明義務だけが外れる、という理解が要ります。
37条書面は、業者間取引でも一切省略できません。契約内容の記録という性格上、当事者の属性で免除する理由がないからです。「業者間取引では37条書面の交付を省略できる」という肢は誤りです。
いずれも、押印は不要となり、相手方の承諾を得て電磁的方法により提供することが認められています。記名は引き続き必要で、押印だけがなくなった点を正確に押さえてください。
記載事項の振り分けで狙われる4点
第一に、移転登記の申請時期です。37条書面の必要的記載事項ですが、貸借では登記の移転がないため記載事項になりません。売買・交換に限られます。
第二に、代金以外に授受される金銭です。35条書面では「額および授受の目的」を記載し、37条書面では定めがあるときに「額、授受の時期、目的」を記載します。時期が入るかどうかが違います。
第三に、契約の解除、損害賠償額の予定または違約金です。35条書面ではこれらの定めの内容が記載事項ですが、37条書面では定めがあるときに記載する任意的記載事項です。「37条書面には必ず損害賠償額の予定を記載しなければならない」という肢は誤りです。
第四に、天災その他不可抗力による損害の負担、租税公課の負担、ローンが成立しないときの措置です。これらは37条書面の任意的記載事項であって、35条書面の記載事項ではありません。ただし金銭の貸借のあっせんの内容とあっせん不成立時の措置は35条書面の記載事項です。
8種制限は「適用場面の確認」から入る習慣をつける
8種制限は内容そのものより、適用場面を確認せずに解いてしまうことによる失点が多い領域です。制限の中身は8種制限を完全攻略、適用外の整理は8種制限が適用されないケースにあります。
78条2項を毎回のチェックリストにする
8種制限が適用されるのは、宅地建物取引業者が自ら売主となる売買契約で、かつ買主が宅建業者でない場合に限られます(業法78条2項)。したがって問題文を読んだら、まず次の2点を確認します。業者は売主か、それとも媒介や代理か。買主は業者か、業者以外か。
媒介の事案では8種制限は適用されません。「宅建業者Aが売主Bと買主Cの間の売買を媒介した」という設定で手付の額の制限を問う肢は、それだけで誤りになります。同様に、買主が宅建業者である事案でクーリング・オフの可否を問えば、適用されないため誤りです。
この確認を頭の中でやろうとすると、条文知識に気を取られて飛ばします。問題文の「自ら売主」と買主の属性に線を引く動作にしてください。
4つの割合を役割で区別する
損害賠償額の予定または違約金は、合算して代金の額の10分の2を超える定めができません(業法38条)。超える定めをしたときは、契約全体が無効になるのではなく、超える部分だけが無効になります。
手付の額は、代金の額の10分の2を超えて受領できません(業法39条1項)。受領した手付はいかなる名目であっても解約手付とされ、相手方が履行に着手するまでは、買主は手付を放棄して、売主は倍額を現実に提供して解除できます(同条2項)。「倍額を償還する旨を通知すれば足りる」という肢は誤りです。詳細は手付金の制限にあります。
手付金等の保全措置が不要となる閾値は、工事完了前の物件で代金の5%以下かつ1,000万円以下、工事完了後の物件で代金の10%以下かつ1,000万円以下です(業法41条1項、41条の2第1項)。買主が所有権の登記を備えたときも不要です。閾値を超えたときは全額について保全措置が必要で、超過部分だけではありません。保全の方法も未完成物件では保証委託契約と保証保険契約に限られます。計算問題の型は手付金等の保全措置で扱っています。
所有権留保が禁止されるのは、受領した額が代金の額の10分の3を超えたときまでに登記を移転しなければならないという形です(業法43条)。
クーリング・オフは場所と起算点で決まる
クーリング・オフができるのは、事務所等以外の場所で買受けの申込みをした場合です(業法37条の2)。申込みの場所が基準であって、契約締結の場所ではありません。事務所で申込みをして喫茶店で契約した場合は、できません。
買主が自ら申し出た自宅または勤務先は事務所等として扱われるため、そこでの申込みはクーリング・オフの対象外です(施行規則16条の5)。業者側から訪問を申し出た場合は含まれません。「自ら申し出た」かどうかが分岐点です。
期間は、申込みの撤回等を行うことができる旨およびその方法を書面で告げられた日から8日を経過するまでです。告げられていなければ、何か月経過していても撤回できます。また、宅地建物の引渡しを受け、かつ代金の全額を支払ったときは撤回できません。引渡しだけ、あるいは代金の一部の支払だけでは、まだ撤回できます。
撤回は書面で行い、効力は書面を発した時に生じます(業法37条の2第2項)。到達時ではありません。撤回があった場合、業者は損害賠償や違約金を請求できず、受領した手付その他の金銭を速やかに返還しなければなりません。事例はクーリング・オフ制度で確認できます。
報酬計算で消費税を抜き忘れない手順
報酬の計算問題は、知識ではなく手順の問題です。手順を固定していない人だけが、消費税の処理で落とします。制度の全体は報酬額の制限、計算の型と応用パターンは報酬額計算のパターン別攻略にあります。
5段階の手順を固定する
第一段階、取引価額を消費税抜きにします。第二段階、速算式で報酬の上限額を出します。第三段階、媒介か代理かで倍率を決めます。第四段階、業者の課税区分に応じて消費税相当額を上乗せします。第五段階、複数業者が関与していれば合計額の上限を確認します。この順番を崩さないことが要点で、特に第一段階を飛ばして税込価格のまま速算式にかけてしまう誤りが最も多く起きます。
建物だけを税抜きにする
土地の譲渡は消費税が非課税なので、土地の価格に消費税は含まれていません。建物の譲渡は課税対象なので、問題文が税込価格で与えられていれば1.1で割って税抜きにします。土地と建物の合計額しか与えられていない場合は、建物部分だけを税抜きに直してから合算します。
速算式は、取引価額が200万円以下なら価額の5%、200万円超400万円以下なら4%に2万円を加えた額、400万円超なら3%に6万円を加えた額です。この計算に用いるのは税抜きの取引価額です。
算出した上限額に対し、課税事業者は1.1倍、免税事業者は1.04倍を乗じます。免税事業者の1.04という数値は、仕入れに含まれる消費税相当額を考慮したもので、この数値自体が問われることがあります。
代理・複数業者・空家等の特例
媒介の場合、依頼者の一方から受け取れるのは上限額までです。代理の場合は、依頼者から上限額の2倍まで受け取れます。ただし複数の業者が関与する場合、それらの業者が受け取る報酬の合計額は、媒介の上限額の2倍を超えてはなりません。代理業者が2倍を受け取ったら、媒介業者は受け取れません。
賃貸借の媒介では、依頼者双方から受け取る報酬の合計が借賃の1か月分(に消費税相当額を加えた額)を超えられません。居住用建物の場合、依頼者の一方から受け取れるのは借賃の2分の1か月分が原則で、媒介の依頼を受けるにあたって依頼者の承諾を得ている場合はこの限りではありません。居住用建物以外で権利金の授受があるときは、権利金の額を売買代金とみなして速算式で計算し、有利なほうを採用できます。
低廉な空家等の売買・交換の媒介については特例があり、2024年7月1日施行の告示改正で対象が価額800万円以下に拡大され、報酬の上限は税込33万円まで、売主・買主の双方から受領できることになりました。改正内容の位置づけは宅建業法の改正ポイントを確認してください。なお、依頼者の依頼によって行った特別の広告の料金は報酬の上限とは別に受け取れますが、依頼のない広告費や通常の業務で生じた費用は請求できません。
監督処分と罰則を分けて詰める
監督処分は行政庁が行う処分、罰則は裁判所が科す刑罰です。この区別があいまいだと、「業務停止処分に違反した者は3年以下の拘禁刑に処せられる」といった正しい肢を誤りと判断してしまいます。処分の体系は監督処分、罰則の一覧は宅建業法の罰則一覧にあります。
誰が処分できるかを先に押さえる
宅建業者に対する指示処分と業務停止処分は、免許権者だけでなく、業務を行った区域を管轄する都道府県知事も行えます(業法65条1項・2項・3項・4項)。これに対し免許取消処分は、免許権者だけが行えます(業法66条、67条)。
宅建士に対しても同じ構造です。指示処分と事務禁止処分は、登録を受けた都道府県知事に加え、事務を行った区域を管轄する都道府県知事も行えます(業法68条1項・2項)。登録消除処分は、登録をした都道府県知事だけが行えます(業法68条の2)。
つまり、最も重い処分だけが「本籍地の行政庁」に留保されています。業務停止の期間は1年以内、事務禁止の期間も1年以内で、いずれも上限が1年です。
必要的取消と任意的取消を分ける
免許を「取り消さなければならない」場合には、欠格事由に該当したとき、免許換えの手続をとらないとき、免許を受けてから1年以内に事業を開始せずまたは引き続き1年以上事業を休止したとき、廃業等の届出がなくその事実が判明したとき、不正の手段により免許を受けたとき、業務停止処分事由に該当し情状が特に重いとき、業務停止処分に違反したときが含まれます(業法66条1項)。
これに対し「取り消すことができる」のは、営業保証金の供託の届出をせず催告後1か月を経過したとき(業法25条7項)、および免許権者が所在を確知できず公告して30日を経過したとき(業法67条1項)です。この2つだけが任意的取消だと覚えれば、他は必要的取消になります。
指示処分、業務停止処分、免許取消処分のいずれについても、行政庁は公開による聴聞を行わなければなりません(業法69条1項)。「指示処分には聴聞が不要」という肢は誤りです。
罰則は刑の重さより対象行為で覚える
罰則で問われやすいのは、どの行為が最も重く扱われるかです。無免許での営業、不正の手段による免許取得、名義貸しによる営業、業務停止処分に違反しての業務は、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはこれらの併科という最も重い区分に属します(業法79条)。法人については両罰規定により1億円以下の罰金が科されます(業法84条)。
誇大広告の禁止に違反した場合は6か月以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはこれらの併科です。広告規制の全体は広告に関する規制にあります。宅建士証の返納義務や提示義務に違反した場合は10万円以下の過料で、刑罰ではなく過料である点が問われます。
なお住宅瑕疵担保履行法の届出を怠った場合は、基準日の翌日から起算して50日を経過した日以後、新たに自ら売主となる売買契約を締結できなくなります。
条文の語尾と時間表現を読み分ける
宅建業法の選択肢は、条文の語尾を1語だけ変えて作られることがあります。内容は正しいのに語尾だけが違う肢は、知識で解こうとすると素通りします。
「しなければならない」と「することができる」
義務と任意の入れ替えは、次の箇所で頻出します。登録の移転は「することができる」であって義務ではありません(業法19条の2)。従事する事務所が他県に変わっても、移転しなければならないわけではありません。ただし事務の禁止の処分を受けている期間中は、移転の申請自体ができません。
宅建士証の提示は、重要事項の説明をするときは相手方から求められなくても提示しなければならず(業法35条4項)、取引の関係者から請求があったときも提示しなければなりません(業法22条の4)。「請求がなければ提示不要」という肢は、35条の場面では誤りになります。営業保証金の25条も、事業開始の禁止(義務)、3か月経過後の催告(義務)、1か月経過後の免許取消し(裁量)と、義務と裁量が交互に現れる典型例です。
「遅滞なく」「速やかに」「直ちに」
条文上、時間の切迫度に応じて3つの表現が使い分けられています。それぞれに具体的な日数が定義されているわけではありませんが、どの場面でどの語が使われているかは問われます。
「遅滞なく」が使われるのは、媒介契約書面の交付、37条書面の交付、宅建士の変更の登録、指定流通機構の登録を証する書面の引渡し、成約時の指定流通機構への通知などです。
「速やかに」が使われるのは、宅建士証がその効力を失ったときの返納、事務の禁止の処分を受けたときの宅建士証の提出、クーリング・オフがあった場合の手付その他の金銭の返還などです。
「直ちに」が使われるのは、保証協会が新たに社員が加入しまたは社員がその地位を失ったときに、その社員の免許権者へ報告する場面などです。
「〜を除く」「〜に限る」の限定を拾う
条文の限定表現は、そのまま出題の分岐点になります。私道に関する負担の事項は建物の貸借では説明不要、区分所有建物の35条書面で建物の貸借の場合に必要なのは専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約と管理の委託先に限られる、還付の請求ができるのは宅建業者に該当しない者に限られる、8種制限は買主が宅建業者でない場合に限られる。いずれも「除く」「限る」の形で条文に書かれています。問題文でこの限定が外されているとき、または逆に付け加えられているときが正誤の分岐点になるので、読むときに限定表現へ線を引いてください。
試験での出題ポイント
数値の入れ替え
同じ制度内の主従を逆にする(1,000万円と500万円、60万円と30万円、7日と5日、2週間と1週間)、別制度の数値を持ってくる(手付の20%を保全措置の閾値に、所有権留保の30%を手付の上限に)の2型があります。
主体のすり替えと適用場面の限定外し
宅建業者の義務を宅建士の義務にする、免許権者の権限を業務地の知事の権限にするのが前者で、媒介契約書の記名押印を宅建士がするとする肢、免許取消処分を業務地の知事ができるとする肢が典型です。後者は、8種制限を媒介の事案に適用する、業者間取引で37条書面を省略できるとする、貸借に34条の2の期間制限を適用するという形で、問題文冒頭の業者の立場と相手方の属性を最初に確認すれば防げます。
起算点のずらしと個数問題
起算点は、死亡等の届出を死亡の日から30日以内とする、欠格期間を判決確定の日から5年とする、クーリング・オフの8日を契約締結の日から数えるといった形でずらされます。「いつから数えるか」を条文の語で覚えているかが問われます。個数問題では4肢すべての正誤を確定させなければ答えが出ないため、日ごろの演習で「たぶん正しい」を残さないことが唯一の対策になります。
覚え方・整理の仕方
数値は「誰を守る規定か」から復元する
8種制限の数値は、すべて買主保護のためにあります。手付の20%は買主が失う額の上限、損害賠償額の予定の20%は買主が負う額の上限、保全措置の5%と10%は業者が倒産したときに買主が失う額の許容範囲、所有権留保の30%は買主が払った額に見合う登記を得るための線。この理由づけを持っていれば、数値を忘れても方向は間違えません。
営業保証金と分担金の額も同様です。営業保証金は自分だけで原資を用意するので高額、分担金は多数の業者で分担するので少額、しかし取引の相手方の保護水準は同じでなければならないので、還付の限度は営業保証金相当額になる。この筋で覚えれば、還付の限度に関する肢は考えるまでもなくなります。
対比は軸を先に決めてから書き出す
35条書面と37条書面のように混ざりやすい対比は、記載事項の一覧を並べるのではなく、軸を先に立ててください。目的、交付の時期、交付の相手方、宅建士の関与の形、業者間取引での扱い、という5軸で書き出せば、記載事項の振り分けはその下位に位置づけられます。同じ方法が、営業保証金と保証協会(額、供託の方法、還付の限度、期限)、媒介契約の3類型(期間、登録、報告、自己発見取引の可否)にも使えます。軸が先、内容は後です。
復習は思い出す形で行い、語呂は最後の手段にする
読み返して確認する形の復習は、知っている感覚だけを強めます。混同型の失点はこれでは直りません。何も見ずに、専任媒介と専属専任媒介の3軸を紙に書く、営業保証金の期限を順に言う、8種制限の4つの割合を役割つきで挙げる、という形で先に出力してから答え合わせをしてください。出力できなかった箇所だけが実際の弱点です。
語呂合わせは、理由づけでも方向性でも復元できない純粋に恣意的な列挙にだけ使ってください。35条書面の記載事項のように数が多く順序に意味がないものは語呂の出番ですが、期限や割合は理由から導けるので、語呂にすると逆に不安定になります。科目全体での配分は科目別攻略法を参照してください。
理解度チェッククイズ
Q1. 保証協会の社員である宅地建物取引業者と宅建業に関し取引をした者(宅建業者を除く)が弁済業務保証金から弁済を受けることができる額の上限は、その社員が納付した弁済業務保証金分担金の額である。
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**× 誤り。** 弁済を受けられる限度は、その社員が社員でないとしたならば供託すべきであった営業保証金の額に相当する額の範囲内です(業法64条の8第1項)。主たる事務所のみの業者であれば、納付した分担金が60万円でも還付の限度は1,000万円になります。分担金の額と還付の限度額は連動しません。Q2. 宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地の売買契約において、当事者の債務不履行を理由とする損害賠償額の予定と違約金の合計額を代金の額の10分の3と定めた場合、その契約は無効となる。
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**× 誤り。** 損害賠償額の予定と違約金の合計が代金の額の10分の2を超える定めをしたときは、超える部分について無効となります(業法38条)。契約全体が無効になるのではありません。この例では10分の2を超える部分だけが効力を失い、10分の2までは有効です。Q3. 宅地建物取引業者が専任媒介契約を締結した場合、契約の相手方に対する業務の処理状況の報告は、2週間に1回以上、書面で行わなければならない。
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**× 誤り。** 報告の頻度は専任媒介で2週間に1回以上、専属専任媒介で1週間に1回以上という点は正しいものの、報告の方法は書面に限定されていません(業法34条の2)。口頭でも電子メールでも足ります。書面が必要なのは媒介契約書のほうで、こちらは宅地建物取引業者が記名押印して交付します。Q4. 宅地建物取引業者間の売買契約においては、35条書面の説明を省略することができるが、35条書面の交付も37条書面の交付も省略することはできない。
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**○ 正しい。** 相手方が宅建業者である場合に省略できるのは35条書面の「説明」だけであり(業法35条6項)、書面の交付自体は省略できません。37条書面は成立した契約の内容を記録する書面なので、業者間取引でも交付を省略できません。説明の省略と書面の省略、35条と37条という2軸で混同されやすい箇所です。Q5. 免許を受けてから3か月以内に営業保証金を供託した旨の届出をしない宅地建物取引業者に対し、免許権者は催告をしなければならず、催告が到達した日から1か月以内に届出がないときは、その免許を取り消さなければならない。
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**× 誤り。** 催告が義務である点は正しいのですが(業法25条6項)、催告到達から1か月以内に届出がない場合の免許取消しは「取り消すことができる」という任意的取消です(同条7項)。必要的取消と任意的取消の区別は、免許取消しの論点で最も問われる分岐点です。まとめ
宅建業法で18問以上を取るために押さえるべき点は、次の3つに集約されます。
- 失点の原因を「知らない」ではなく「隣と混ざる」で捉え直す --- 免許と登録、営業保証金と保証協会、専任と専属専任、35条と37条、8種制限の適用場面。この5系統の境界線を軸ごとに書き出せるかどうかが、18問と14問を分けます。
- 数値は理由づけとセットで持ち、手順が要る論点は手順を固定する --- 8種制限の割合は買主保護の趣旨から、保証協会の期限は制度の流れから復元します。報酬計算は、税抜き化から始まる5段階の手順を毎回同じ順で回します。
- 問題文の限定表現と条文の語尾を機械的に確認する --- 「自ら売主」「業者でない買主」「建物の貸借」といった限定と、「しなければならない」「することができる」の別、「遅滞なく」「速やかに」「直ちに」の使い分けが、そのまま正誤の分岐点になります。
直前期の日割りで一巡させたい場合は宅建業法を2週間で仕上げる方法、数値だけを一気に確認したい場合は宅建業法の数字まとめへ進んでください。
宅建試験AIブートラボのアプリでは、本記事で挙げた論点を肢別に演習でき、各肢の正誤を条文根拠つきの解説で確認できます。
宅建業法は20問と配点が最も大きく、確実に得点したい科目です。免許制度・重要事項説明・8種制限を肢別で固めましょう。