遺言の方式|自筆証書遺言・公正証書遺言の違い
宅建試験で頻出の遺言の方式を解説。自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の要件を比較し、改正による自筆証書遺言の緩和もまとめました。
遺言は宅建試験の権利関係で頻出のテーマです。特に自筆証書遺言と公正証書遺言の違い、民法改正による自筆証書遺言の方式緩和、遺言の撤回と効力の問題がよく出題されます。本記事では、3種類の普通方式の遺言の要件を比較しながら、試験で確実に得点できるよう整理します。
遺言の基本
遺言とは
遺言とは、人が自己の死後の法律関係を定めるためになす単独行為です。遺言は遺言者の死亡の時からその効力を生じます。
遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生ずる。(民法第985条第1項)
遺言能力
遺言をするためには遺言能力が必要です。遺言能力に関するルールは以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 遺言能力の年齢 | 15歳に達した者は遺言をすることができる |
| 成年被後見人の遺言 | 事理弁識能力を一時回復した時に、医師2人以上の立会いのもとで可能 |
| 被保佐人・被補助人 | 制限なし(保佐人・補助人の同意不要) |
十五歳に達した者は、遺言をすることができる。(民法第961条)
行為能力の制限に関する規定は遺言には適用されないため、未成年者(15歳以上)も法定代理人の同意なく遺言できます。
遺言の方式
遺言は厳格な方式が要求される要式行為です。法定の方式に従わない遺言は無効となります。
遺言の方式は大きく普通方式と特別方式に分かれます。宅建試験で出題されるのは主に普通方式の3つです。
| 分類 | 種類 |
|---|---|
| 普通方式 | 自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言 |
| 特別方式 | 危急時遺言(一般危急時、難船危急時)、隔絶地遺言 |
自筆証書遺言
自筆証書遺言の要件
自筆証書遺言は、遺言者が自分で書く遺言です。
自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。(民法第968条第1項)
必要な要件は以下のとおりです。
| 要件 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 全文の自書 | 遺言の本文を自分で手書き | パソコンやワープロは不可 |
| 日付の自書 | 作成日を自分で手書き | 「吉日」は無効 |
| 氏名の自書 | 自分の名前を手書き | 通称でも可 |
| 押印 | 印を押す | 認印や拇印でも可 |
「吉日」のような日付の記載では特定ができないため、遺言は無効となります。
財産目録の自書の緩和(民法改正)
2019年の民法改正により、自筆証書遺言に添付する財産目録については、自書を要しないこととされました。
前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産の全部又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。(民法第968条第2項)
つまり、財産目録はパソコンで作成したり、不動産登記事項証明書や通帳のコピーを添付したりすることも可能です。ただし、目録の各ページに署名・押印が必要です。
自筆証書遺言保管制度
2020年7月から、法務局で自筆証書遺言を保管する制度が始まりました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 保管場所 | 法務局(遺言書保管所) |
| 検認の要否 | 不要(法務局保管の場合) |
| 申請方法 | 遺言者本人が出頭して申請 |
自宅等で保管していた自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が必要ですが、法務局に保管された自筆証書遺言は検認不要です。
公正証書遺言
公正証書遺言の要件
公正証書遺言は、公証人が関与して作成する遺言です。最も確実な方式とされています。
公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。
(民法第969条)
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 証人 | 2人以上の立会い |
| 口授 | 遺言者が公証人に口頭で内容を述べる |
| 筆記・読聞かせ | 公証人が筆記し読み聞かせ又は閲覧 |
| 署名・押印 | 遺言者・証人・公証人が署名押印 |
| 検認 | 不要 |
証人になれない者
以下の者は遺言の証人になることができません。
- 未成年者
- 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
- 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
秘密証書遺言
秘密証書遺言の要件
秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしたまま、その存在のみを証明する遺言です。実務ではあまり利用されていませんが、試験では出題されることがあります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 作成方式 | 自書でなくてもよい(パソコン可、代筆可) |
| 署名・押印 | 遺言者が署名・押印 |
| 封印 | 遺言者が封じ、遺言書に用いた印章で封印 |
| 公証人への申述 | 証人2人以上の前で公証人に自己の遺言書である旨等を申述 |
| 検認 | 必要 |
3つの遺言の比較表
| 項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 |
|---|---|---|---|
| 作成者 | 遺言者本人 | 公証人 | 誰でも可 |
| 自書の要否 | 必要(目録は不要) | 不要 | 不要 |
| 証人 | 不要 | 2人以上 | 2人以上 |
| 公証人の関与 | 不要 | 必要 | 必要 |
| 署名・押印 | 遺言者 | 遺言者・証人・公証人 | 遺言者 |
| 検認 | 必要(法務局保管は不要) | 不要 | 必要 |
| 費用 | 無料 | 有料 | 有料 |
| 紛失・偽造のリスク | あり(自宅保管の場合) | なし | あり |
遺言の撤回と効力
遺言の撤回
遺言者は、いつでも遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができます。
遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。(民法第1022条)
また、以下の場合には遺言を撤回したものとみなされます。
- 前の遺言と後の遺言が抵触する場合 → 抵触部分は後の遺言で撤回したとみなす
- 遺言と生前処分が抵触する場合 → 抵触部分は撤回したとみなす
- 遺言者が故意に遺言書を破棄した場合 → 破棄部分は撤回したとみなす
- 遺言者が故意に目的物を破棄した場合 → 破棄部分は撤回したとみなす
遺言撤回の自由の保障
遺言撤回の自由は強く保護されており、「この遺言は撤回しない」という撤回を制限する特約は無効です。
遺言者は、その遺言を撤回する権利を放棄することができない。(民法第1026条)
試験での出題ポイント
宅建試験では、以下のポイントが特に狙われます。
- 自筆証書遺言の要件 → 全文・日付・氏名の自書+押印。「吉日」は無効
- 財産目録の緩和 → パソコン可だが各ページに署名・押印が必要
- 公正証書遺言の証人 → 2人以上。推定相続人は証人になれない
- 検認の要否 → 自筆証書(自宅保管)と秘密証書は必要。公正証書と法務局保管の自筆証書は不要
- 遺言能力 → 15歳以上。成年被後見人は医師2人以上の立会い
- 遺言の撤回 → いつでも可能。撤回権の放棄はできない
理解度チェッククイズ
以下のクイズで理解度を確認しましょう。
Q1. 自筆証書遺言の日付として「令和7年3月吉日」と記載した場合、遺言は有効である。
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**× 誤り。** 「吉日」では日付が特定できないため、自筆証書遺言は**無効**となります。日付は年月日を特定して自書する必要があります。Q2. 公正証書遺言には、証人2人以上の立会いが必要である。
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**○ 正しい。** 公正証書遺言の作成には**証人2人以上の立会い**が必要です(民法第969条第1号)。Q3. 自筆証書遺言に添付する財産目録は、パソコンで作成しても有効である。
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**○ 正しい。** 民法改正により、財産目録については自書を要しないこととされました。ただし、**目録の各ページに署名・押印**が必要です(民法第968条第2項)。Q4. 遺言者は、「この遺言は撤回しない」旨の特約を付すことで、遺言の撤回を制限できる。
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**× 誤り。** 遺言者は遺言を**撤回する権利を放棄することができません**(民法第1026条)。撤回を制限する特約は無効です。Q5. 14歳の者は遺言をすることができない。
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**○ 正しい。** 遺言能力は**15歳**に達した者に認められます(民法第961条)。14歳では遺言をすることができません。まとめ
- 自筆証書遺言 → 全文・日付・氏名の自書と押印が必要。財産目録のみパソコン可(各ページに署名押印)。法務局保管の場合は検認不要。
- 公正証書遺言 → 証人2人以上の立会いのもと公証人が作成。検認不要で最も確実。推定相続人は証人になれない。
- 遺言の撤回 → いつでも遺言の方式で撤回可能。撤回権の放棄は不可。後の遺言や生前処分と抵触する部分は撤回したとみなされる。
よくある質問(FAQ)
Q. 自筆証書遺言の押印は実印でなければなりませんか?
A. いいえ。認印でも拇印でも有効です。判例では拇印による押印も認められています。ただし、実務上は後のトラブルを避けるため実印を用いることが推奨されます。
Q. 遺言の検認をしないとどうなりますか?
A. 検認をしなくても遺言自体が無効になるわけではありませんが、検認を怠った場合は5万円以下の過料に処せられる可能性があります。また、検認なしでは相続登記等の手続きを進められません。
Q. 公正証書遺言の原本はどこに保管されますか?
A. 公正証書遺言の原本は公証役場に保管されます。遺言者には正本と謄本が交付されます。原本が公証役場に保管されるため、紛失や偽造のリスクがほとんどありません。
Q. 前の遺言が公正証書遺言で、後の遺言が自筆証書遺言の場合、どちらが優先しますか?
A. 遺言の方式による優劣はなく、後の遺言が優先します。自筆証書遺言でも公正証書遺言を撤回することができます。
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