宅建試験AIブートラボ 宅建試験AIブートラボ

債務不履行|損害賠償と解除の要件を条文で整理

権利関係 読了 約35分

宅建試験の債務不履行を条文の順に解説。履行遅滞と履行不能の起算点、415条の免責構成、416条の損害の範囲、419条の金銭債務の特則、受領遅滞、541条と542条の解除、改正で帰責事由が不要になった点を整理します。

目次

    この記事は、権利関係のうち債務不履行の総論と契約の解除を扱います。科目全体のどこに位置する論点かは権利関係の全体像を先に見てください。契約不適合責任・危険負担・同時履行の抗弁権といった各論は、それぞれ独立した記事に分けてあります。

    債務不履行は、2020年4月1日に施行された債権法改正の影響を最も強く受けた領域です。改正前の教材は「履行遅滞・履行不能・不完全履行の三分類」を出発点にし、損害賠償にも解除にも「債務者の帰責事由」を要件として立てていました。現行法はその両方を採っていません。損害賠償では帰責事由が要件ではなく免責事由として書かれ、解除では債務者の帰責事由が要件から外れました。この二点を条文の文言のまま押さえられるかどうかが、宅建の権利関係で債務不履行が絡む肢を落とすかどうかを分けます。以下、412条から548条までを条文の並びに沿って読み解いていきます。

    債務不履行を条文の順に捉え直す

    415条1項が定めている二つの場面

    債務不履行の出発点は415条1項です。

    債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

    本文が挙げているのは「債務の本旨に従った履行をしないとき」と「債務の履行が不能であるとき」の二つだけです。前者は、履行がされていない、あるいはされたが内容が契約に沿っていない、という広い受け皿です。後者は履行不能を独立に書き出したもので、412条の2と対応しています。

    条文が用意している区分はこの二つであって、「履行遅滞・履行不能・不完全履行」という三分類は条文に書かれていません。三分類は改正前に学説が整理のために立てた枠で、現在も説明の道具としては使われますが、要件を導く根拠にはなりません。試験で問われるのは、条文が定めた要件を事案にあてはめられるかです。

    三分類のうち「不完全履行」はどこへ行ったか

    三分類のうち履行遅滞と履行不能は、412条・412条の2という形で条文の中に位置を持っています。残る不完全履行だけは、対応する条文がありません。

    売買契約で引き渡された建物に雨漏りがあった、というような場面は、現行法では契約不適合責任の問題として562条以下で処理されます。買主は追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・解除という四つの手段を持ち、それぞれ要件が別に定められています。詳細は契約不適合責任にまとめてあります。

    つまり、「不完全履行」という言葉を覚える実益はほとんどありません。宅建の問題文でこの語が出てくるとすれば、それは改正前の枠組みで作られた古い肢か、契約不適合責任へ誘導するための言い換えのどちらかです。

    履行請求権と損害賠償請求権は別物である

    もう一つ、条文の構造として押さえておきたいのは、履行そのものを求める権利と、履行に代えて金銭を求める権利が別だという点です。412条の2第1項は「債権者は、その債務の履行を請求することができない」と書き、履行請求権が消える場面を定めています。415条は損害賠償請求権を定めています。同じ「不能」という事実から、一方の権利が消え、他方の権利が生まれる、という構造です。

    解除はこのどちらとも別の制度で、契約関係そのものを解消します。債権者が持ちうる手段は「履行を求める」「損害賠償を求める」「契約から抜ける」の三つで、これらは重なり合いながら併存します。事案を読むときは、債権者が三つのうちどれを求めているのかを最初に確認してください。

    履行遅滞 ― 遅滞に陥る時点をどう決めるか

    412条が定める三つの起算点

    履行が可能なのに履行期を過ぎても履行しない状態が履行遅滞です。いつから遅滞になるかは412条が期限の種類ごとに定めています。

    確定期限があるときは、その期限が到来した時から遅滞の責任を負います(1項)。「4月1日に土地を引き渡す」と定めたなら、4月1日を過ぎれば遅滞です。債権者からの請求は要りません。

    不確定期限があるときは、その期限の到来した後に履行の請求を受けた時と、その期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負います(2項)。ここは改正で書き換えられた箇所です。改正前は「期限の到来を知った時から」とだけ定められていましたが、現行法は請求を受けた時も並べ、早いほうを採ります。債務者が期限の到来を知らなくても、請求を受ければその時から遅滞になるということです。

    期限を定めなかったときは、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負います(3項)。期限がない以上、債権者が請求して初めて「遅れている」と評価できるからです。

    起算点のずれが何を生むか

    起算点は遅延損害金の計算開始時点であると同時に、催告解除に進めるかどうかの入口でもあります。まだ遅滞に陥っていない債務者に対して催告をしても、541条の要件は満たしません。「4月1日に引き渡す約定で、債権者が3月25日に催告し、相当期間として2週間を定めた」という事案では、催告の時点で債務者は遅滞に陥っていません。起算点を先にずらす肢は繰り返し作られます。

    遅滞にならない場面 ― 同時履行の抗弁と履行の提供

    期限が来ていても、履行しないことが違法と評価されない場合には遅滞になりません。その代表が同時履行の抗弁権です。533条により、双務契約の当事者は相手方が履行の提供をするまで自分の履行を拒めます。売買契約で買主が代金を提供していないなら、売主が引渡しをしなくても遅滞にはなりません。この抗弁を消すには、自分の債務の履行を提供する必要があります。仕組みは同時履行の抗弁権と留置権で詳しく扱っています。

    履行の提供については492条が「債務者は、弁済の提供の時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる」と定めています。提供の方法は493条で、原則は現実の提供ですが、債権者があらかじめ受領を拒んでいるとき、または債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知して受領を催告すれば足ります(口頭の提供)。弁済と提供の詳細は債権の消滅原因および弁済と供託を参照してください。

    宅建の事例問題では、この点が結論を左右します。売主が「引き渡さない」と言っているだけでは債務不履行にならず、買主が代金の提供をして初めて売主を遅滞に陥らせられる、という順序を踏まえていないと、解除の可否を誤ります。

    履行不能 ― 412条の2が明文化したもの

    「社会通念に照らして不能」という基準

    412条の2第1項は次のように定めます。

    債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは、債権者は、その債務の履行を請求することができない。

    改正前は履行不能の判断基準が条文になく、解釈に委ねられていました。現行法は、物理的に不可能かどうかだけでなく、契約の趣旨と取引上の社会通念に照らして不能と評価できるかで判断すると明文化しました。海に指輪を落とした場合のように、理論上は引き揚げられても社会通念上は不能と扱われる場面が含まれます。

    不動産取引でよく問題になるのは二重譲渡です。売主AがBに土地を売った後、同じ土地をCにも売り、Cが先に所有権移転登記を備えた場合、AのBに対する引渡義務・移転登記義務は社会通念上不能と評価されます。Bは履行を請求できず、415条による損害賠償と542条1項1号による無催告解除に進むことになります。対抗要件の仕組みは不動産の物権変動にまとめてあります。

    原始的不能でも契約は有効

    412条の2第2項は、改正で入った規定です。

    契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、第415条の規定によりその履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げない。

    契約成立の時点ですでに履行が不能だった場合(原始的不能)について、改正前は契約自体が無効になるという理解が広く採られていました。現行法はその立場を採らず、契約は有効に成立したうえで、415条の債務不履行として損害賠償の問題になると整理しています。

    たとえば、売買契約を締結した前日に対象建物が焼失していた、という事案です。改正前の枠組みなら契約は無効で、責任は契約締結上の過失として構成するほかありませんでした。現行法では契約は有効なので、売主に免責事由がなければ買主は415条で損害賠償を請求でき、542条1項1号で解除もできます。条文が「妨げない」という消極的な書き方をしているのは、原始的不能を理由に賠償請求を否定してはならないという趣旨だからです。「原始的不能の契約は無効である」という肢は誤りになります。

    履行遅滞中に不能になった場合(413条の2第1項)

    遅滞に陥っている間に、当事者双方の責めに帰することができない事由で履行が不能になったらどうなるか。413条の2第1項が答えを置いています。

    債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。

    「みなす」とある以上、反証は許されません。引渡期日を過ぎても建物を引き渡さずにいるうちに、落雷で建物が焼失した、という場合、地震や落雷そのものは誰の責任でもありませんが、遅滞に陥っていた債務者の責めに帰すべき事由による不能とみなされます。結果として、債務者は415条1項ただし書の免責を主張できず、債権者からの解除に対して543条の抗弁も立てられません。期日どおりに履行していれば起きなかった損失は、遅れた側が負うという考え方です。

    損害賠償請求の要件 ― 415条をどう読むか

    帰責事由は「要件」ではなく「免責事由」

    415条1項は、本文で損害賠償請求権の発生を認め、ただし書で免責を定める構造になっています。この書き分けが改正の中心です。

    改正前の415条は、後段で「債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったとき」と書き、帰責事由を要件の一つとして立てているように読めました。現行法は、本文では帰責事由に触れず、ただし書で「債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない」と定めます。債権者は債務不履行の事実を主張すれば足り、免責を求める債務者の側が、自分の責めに帰することができない事由であることを主張立証するという配分になります。

    試験では要件の順序としてよりも、記述の向きとして問われます。「債権者は債務者の帰責事由を立証しなければ損害賠償を請求できない」という肢は、現行法の構造とずれています。

    判断の基準は「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念」

    免責の基準として条文が挙げるのは、故意・過失ではなく「契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念」です。当該契約がどういう内容で、どこまでのリスクを誰が引き受ける約束だったのかを踏まえて判断します。

    改正前は過失責任の原則から説明されることが多く、「債務者に故意または過失がなければ免責される」という説明が一般的でした。現行法は、契約によって引き受けた債務の内容を出発点に置きます。同じ「豪雨で工事が遅れた」という事実でも、契約でその種のリスクを債務者が引き受けていたと読めるなら免責されず、そうでなければ免責される、という判断になります。

    1項ただし書と2項の関係

    415条2項は、履行に代わる損害賠償(塡補賠償)を請求できる場合を限定しています。

    前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において、債権者は、次に掲げるときは、債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる。
    一 債務の履行が不能であるとき。
    二 債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
    三 債務が契約によって生じたものである場合において、その契約が解除され、又は債務の不履行による契約の解除権が発生したとき。

    ここで見落としてはならないのが、冒頭の「前項の規定により損害賠償の請求をすることができる場合において」という一句です。2項は1項とは別のルートではなく、1項の枠内に置かれた規定です。したがって、1項ただし書の免責事由があるときは2項の塡補賠償も請求できません。二段構えになっている点を押さえてください。

    1項だけで請求できるのは、遅れたことによって生じた損害(遅延賠償)です。履行そのものに代わる金銭、たとえば「建物を引き渡さないなら建物の価額を払え」という請求は、2項の一号から三号のいずれかに当たらなければできません。三号が「解除権が発生したとき」まで含めているのは、実際に解除しなくても解除できる状態になっていれば足りるという趣旨で、解除の意思表示をしてから改めて賠償を請求するという二度手間を避けるためです。

    損害賠償の範囲 ― 416条の通常損害と特別損害

    通常損害は当然に賠償の対象になる

    416条1項は「債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする」と定めます。その種の債務不履行があれば通常発生すると考えられる損害を通常損害といい、これは予見の有無を問わず賠償の対象です。

    土地の売買で売主が引渡しをしないまま履行不能になった場合、目的物の価額相当額は通常損害です。引渡しが遅れて買主が仮住まいを続けざるを得なかった場合の、標準的な範囲での賃料相当額も通常損害として扱われます。

    特別損害は「予見すべきであった」かで決まる

    416条2項は「特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見すべきであったときは、債権者は、その賠償を請求することができる」と定めます。

    ここも改正で文言が変わりました。改正前は「当事者がその事情を予見し、又は予見することができたとき」でした。現行法の「予見すべきであった」は、実際に予見していたかという事実の問題ではなく、予見すべき立場にあったかという規範的な評価を求める表現です。何を予見すべきだったかは、契約の内容と当事者の属性から判断されます。

    条文の主語は「当事者」ですが、賠償責任を負うのは債務者ですから、予見すべきであったかは債務者を基準に判断するのが一般的な理解です。予見すべき時期については条文に定めがなく、契約締結時ではなく債務不履行の時と解するのが従来からの理解です。契約締結後に債務者が事情を知ったのであれば、その事情による損害も賠償の対象になり得るということになります。

    買主が転売先を確保していて、引渡しの遅れによって転売利益を失った、という損害が特別損害の典型です。売主が転売の予定を知らされていなかったのであれば、転売利益まで賠償させるのは酷なので、予見すべきであったかを問う、という発想です。

    予定額を定めておく方法(420条)

    範囲の立証は債権者にとって重い負担なので、あらかじめ賠償額を決めておく方法が用意されています。

    420条1項は「当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる」と定めます。予定額を定めておけば、債権者は実際の損害額を立証しなくても予定額を請求できます。2項は「賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない」とし、3項は「違約金は、賠償額の予定と推定する」と定めます。違約金と名づけられていても、原則として賠償額の予定として扱われるということです。

    改正で削られた部分があります。改正前の420条1項後段には「この場合において、裁判所は、その額を増減することができない」という一文がありましたが、これは削除されました。削除の趣旨は、公序良俗違反などによる予定額の減額が実際には認められてきた運用を条文と整合させることにあります。「裁判所は損害賠償の予定額を増減することができない」という肢は、現行法では誤りです。

    なお、宅建業者が自ら売主となる売買契約では、宅建業法38条が損害賠償額の予定と違約金の合算額を代金の10分の2に制限しています。民法には上限がなく、業法が特則として制限を設けている、という関係です。業法側の詳細は損害賠償額の予定の制限8種制限の全体像にまとめてあります。

    賠償の方法と調整 ― 417条と418条

    金銭賠償の原則

    417条は「損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める」と定めます。原状回復や代物による賠償ではなく、金額で評価するのが原則です。「別段の意思表示」があれば別の方法も可能ですが、合意が要ります。

    過失相殺は必ず考慮される

    418条は次のように定めます。

    債務の不履行又はこれによる損害の発生若しくは拡大に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。

    注目すべきは語尾です。「考慮して……定める」であって、「考慮することができる」ではありません。債権者に過失があれば、裁判所は必ず考慮しなければならず、しかも「損害賠償の責任及びその額」とあるとおり、額を減らすだけでなく責任そのものを否定することもできます。

    これに対して、不法行為の過失相殺を定める722条2項は「これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる」と書きます。考慮するかどうかが裁量にゆだねられ、対象は額に限られるという点で、債務不履行の過失相殺と二重に違います。この対比は肢の作りやすい箇所で、語尾を入れ替えた肢が頻繁に登場します。不法行為の側の整理は不法行為を参照してください。

    損害賠償請求権の消滅時効

    債務不履行に基づく損害賠償請求権は債権ですから、166条1項の消滅時効に服します。権利を行使することができることを知った時から5年、権利を行使することができる時から10年で、いずれか早いほうの経過により消滅します。ただし、人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権については167条が客観的起算点からの期間を20年に伸ばしています。時効の完成猶予・更新まで含めた全体像は時効にまとめてあります。

    金銭債務の特則 ― 419条

    三つの特則がまとめて置かれている

    代金や賃料のように金銭の支払を目的とする債務には、419条が特別の扱いを定めています。内容は三つです。

    第一に、賠償額が法定利率で決まります。1項は「金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める」とし、ただし書で「約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による」と定めます。基準となるのは遅滞に陥った最初の時点の法定利率で、その後に法定利率が変動しても遡って影響しません。法定利率は404条で定められ、2020年4月1日の施行時点で年3パーセント、以後3年を一期として見直される変動制です。

    第二に、損害の証明が要りません。2項は「前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない」と定めます。金銭は運用すれば利息を生むという前提があるので、遅れたこと自体から損害が推定される扱いです。

    第三に、不可抗力を抗弁にできません。3項は「第1項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない」と定めます。415条1項ただし書の免責は、金銭債務については働かないということです。

    「地震で払えなかった」は通らない

    三つのうち試験で狙われるのは圧倒的に三番目です。金銭債務は、世の中に金銭が存在する限り履行不能になりません。したがって履行不能を前提とする議論は成り立たず、遅滞だけが問題になります。そして遅滞について不可抗力免責が封じられているので、災害で銀行が動かず送金できなかったとしても、遅延損害金の発生は避けられません。

    一方で、証明が不要な代わりに、原則として法定利率を超える額は請求できません。金銭債務の不履行では、免責されない代わりに賠償額の天井も低い、という表裏の関係になっています。

    受領遅滞 ― 413条と413条の2

    受け取らない側にも不利益が及ぶ

    債務不履行は債務者側の問題ですが、債権者が受領しないために履行が完了しない場面もあります。これが受領遅滞で、413条が効果を定めています。

    1項は、債権者が履行を受けることを拒み、または受けることができない場合において、債務の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は履行の提供をした時からその引渡しをするまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもって物を保存すれば足りる、と定めます。特定物の引渡債務は本来400条により善良な管理者の注意をもって保存する義務を伴いますが、受領遅滞によって注意義務が軽減されるということです。

    2項は、債権者が受領しないことによって履行の費用が増加したときは、その増加額は債権者の負担とする、と定めます。保管を続けるための倉庫代のような費用です。

    413条の2第2項という三つ目の効果

    さらに413条の2第2項が置かれています。

    債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができない場合において、履行の提供があった時以後に当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行の不能は、債権者の責めに帰すべき事由によるものとみなす。

    413条の2第1項の裏返しです。1項は遅滞に陥った債務者に不能のリスクを負わせ、2項は受領を拒んだ債権者に負わせます。遅れている側がリスクを負うという一本の考え方が両項を貫いています。

    この2項が効いてくるのは、危険負担と解除の場面です。債権者の責めに帰すべき事由による不能とみなされるので、536条2項により債権者は反対給付の履行を拒めず、543条により解除もできません。売主が引渡しの準備を整えて通知したのに買主が受け取らず、その後に建物が地震で倒壊した、という事案では、買主は代金を支払わなければならず、契約から抜けることもできない、という結論になります。

    売買契約については567条2項が同じ趣旨を重ねて定めており、売主が契約に適合する目的物の引渡債務の履行を提供したにもかかわらず買主が受領しなかった場合、提供の時以後の滅失・損傷について買主は追完請求も代金減額請求も損害賠償請求も解除もできず、代金の支払も拒めません。危険の移転時期については危険負担で詳しく扱っています。

    解除の性格が変わった ― 制裁から解放へ

    543条だけが帰責事由を問題にする

    改正で最も理解を入れ替える必要があるのが解除です。改正前の541条以下は、債務者に帰責事由がある不履行に対して債権者が契約を解消できる制度として組み立てられており、解除は不履行をした債務者に対する一種の制裁と説明されていました。

    現行法の541条と542条を読むと、債務者の帰責事由はどこにも書かれていません。債務を履行しないという事実があれば足ります。代わりに543条が置かれています。

    債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前二条の規定による契約の解除をすることができない。

    問題にされるのは債権者側の帰責事由だけです。この転換の背景にあるのは、解除を「債務者を懲らしめる制度」ではなく「債権者を、もはや意味のなくなった契約の拘束から解放する制度」と捉える発想です。相手に落ち度がなくても、履行が得られない以上、債権者を契約に縛りつけておく理由はありません。逆に、履行が得られなくなった原因が債権者自身にあるのなら、解放してやる必要はありません。

    この理解の転換を条文の並びで確認しておくと、改正論点を問う肢に強くなります。「債務者に帰責事由がなければ解除できない」という記述は現行法では誤りで、「債権者に帰責事由があれば解除できない」が正解です。

    解除の意思表示とその不可逆性

    540条1項は、解除は相手方に対する意思表示によってすると定め、2項は「前項の意思表示は、撤回することができない」と定めます。解除の効果は意思表示が相手に到達した時点で確定し、後から「やはり契約を続けたい」と撤回することはできません。

    544条は解除権の不可分性を定めます。当事者の一方が数人ある場合、解除はその全員から、または全員に対してのみすることができ(1項)、解除権が一人について消滅したときは他の者についても消滅します(2項)。共有不動産の売買のように売主が複数いる事案で問われます。共有関係の一般的な規律は共有にまとめてあります。

    催告解除と無催告解除 ― 541条と542条

    541条の催告解除

    当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

    要件は、債務が履行されていないこと、相当の期間を定めた催告があること、その期間内に履行がないこと、そして期間経過時の不履行が軽微でないことの四つです。債務者の帰責事由は要件に含まれません。

    「相当の期間」は、債務者が履行の準備をして実行するのに通常必要な期間を指します。期間を定めずに催告した場合や、定めた期間が短すぎた場合でも、催告から客観的に相当な期間が経過すれば解除できると解されています。催告が無意味になるわけではありません。

    双務契約では、催告の前提としてもう一つ確認すべきことがあります。相手方に同時履行の抗弁権がある間は、履行しないことが違法と評価されないため、催告をしても541条の要件を満たしません。自分の債務の履行を提供してから催告するという順序が必要です。売買契約で買主が売主を遅滞に陥らせて解除したいなら、代金の提供が先に来ます。

    ただし書の「軽微」という歯止め

    改正で加わったのがただし書です。催告期間が経過した時点での不履行が、その契約と取引上の社会通念に照らして軽微であるときは解除できません。改正前から、付随的な義務の違反にすぎない場合には解除を認めないという解釈が積み重ねられており、それを条文の形にしたものです。

    判断の基準時は「その期間を経過した時」です。催告の時点でどうだったかではなく、催告期間が終わった時点で残っている不履行の程度を見ます。催告期間中に大部分が履行され、ごくわずかな部分だけが残ったという場合、解除は認められにくくなります。

    軽微かどうかは、不履行部分の量だけでなく、その契約にとって当該義務がどれだけ重要かによります。建物の売買で引渡しがまったくされていないのは軽微ではありません。付属設備の一部が未設置というだけなら軽微と評価される余地があります。

    542条1項の五つの場合 ― 催告が要らないとき

    542条1項は、催告をすることなく直ちに契約の全部を解除できる場合を五つ挙げています。

    一号は、債務の全部の履行が不能であるとき。履行できない相手に催告しても意味がないからです。ここでいう不能には、412条の2第1項の社会通念上の不能が含まれます。

    二号は、債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。「明確に」という限定があります。あいまいな態度や交渉の駆け引きでは足りません。

    三号は、債務の一部の履行が不能である場合、または債務者が一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。一部の問題であっても、残りだけでは意味がないなら全部を解除できます。

    四号は、契約の性質または当事者の意思表示により、特定の日時または一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。いわゆる定期行為です。期日を過ぎた時点で契約の目的が達せられないのですから、催告は無意味です。

    五号は、以上のほか、債権者が催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。受け皿の規定です。履行遅滞であっても、催告しても履行される見込みがないことが明らかなら、催告なしに解除できます。「履行遅滞なら必ず催告が要る」と単純化すると、この五号を突いた肢に対応できません。

    542条2項の一部解除

    2項は、債務の一部の履行が不能であるとき(一号)、または債務者が一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき(二号)に、催告なしで契約の一部を解除できると定めます。1項三号が「残りだけでは目的を達せない」場合に全部解除を認めるのに対し、2項は残りに意味があるときに不能な部分だけを切り離す規定です。全部解除と一部解除の振り分けは、残存部分で契約の目的を達成できるかどうかで決まります。

    二つのルートの使い分け

    大づかみには、履行が可能なら催告して待つ(541条)、履行が不能なら待っても無駄なので直ちに解除する(542条1項1号)、という対応です。ただしこの対応は原則にすぎません。履行が可能でも二号の履行拒絶や四号の定期行為、五号の見込みなしに当たれば無催告で解除できます。「可能か不能か」ではなく「催告に意味があるか」で切り分けると、条文の並びが自然に読めます。

    解除の効果と解除権の消滅 ― 545条から548条

    原状回復義務(545条1項本文)

    545条1項本文は「当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う」と定めます。契約がなかった状態に戻すということで、代金を受け取っていれば返し、目的物の引渡しを受けていれば返します。

    546条が533条を準用しているので、双方の原状回復義務は同時履行の関係に立ちます。買主が「先に代金を返せ」と言われて拒めるのはこの準用によります。

    利息と果実(545条2項・3項)

    2項は、金銭を返還するときはその受領の時から利息を付さなければならないと定めます。解除の時からではなく受領の時からです。

    3項は改正で新設されました。金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実も返還しなければなりません。賃貸中の建物が目的物なら、受領後に得た賃料が果実にあたります。金銭側だけに利息を付け、物の側には何も求めないのでは公平を欠くという発想で、2項と3項が対になっています。

    第三者の保護(545条1項ただし書)

    1項ただし書は「第三者の権利を害することはできない」と定めます。AがBに不動産を売り、BがCに転売した後にAB間の契約が解除された場合、Cの権利は解除によって覆されません。

    このただし書で保護されるのは、解除前に利害関係を持つに至った第三者です。そして、保護を受けるためには登記を備えていることが必要と解されています。ただし書は解除の遡及効から第三者を守る規定であって、権利保護の資格として登記を要求する、という理解です。

    これに対して、解除後に現れた第三者は、ただし書の問題ではありません。解除によって売主に戻る権利と、買主から譲り受けた第三者の権利とが対立する関係になり、177条の対抗問題として登記の先後で決まります。「解除の前か後か」で条文の根拠が変わるという点が、この論点の核心です。不動産の物権変動でも同じ構図を扱っています。

    損害賠償との併存(545条4項)

    4項は「解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない」と定めます。解除して契約から抜けたうえで、なお生じた損害の賠償を請求できます。415条による賠償請求と解除は択一ではありません。ここは、後述する手付解除との重要な違いです。

    解除権が消える二つの場合

    547条は、解除権の行使について期間の定めがないとき、相手方は解除権者に対して相当の期間を定めて解除するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができ、その期間内に解除の通知を受けないときは解除権が消滅すると定めます。解除されるかどうか分からない不安定な状態を、相手方の側から終わらせる仕組みです。

    548条は、解除権者が故意または過失によって契約の目的物を著しく損傷し、もしくは返還できなくしたとき、または加工・改造によって他の種類の物に変えたときは、解除権が消滅すると定めます。ただし書があり、解除権を有することを知らなかったときは消滅しません。解除できると知りながら目的物を壊した者に解除を認めないという趣旨なので、知らなかった者まで失権させる必要はない、という理屈です。このただし書は肢の材料になりやすい箇所です。

    危険負担・契約不適合責任・手付解除との切り分け

    危険負担(536条)は解除と併存する

    双方の責めに帰することができない事由で履行が不能になった場合、536条1項により債権者は反対給付の履行を拒めます。改正前の534条(特定物についての債権者主義)は削除され、効果も「反対債務が当然に消滅する」から「履行を拒める」という履行拒絶権構成に変わりました。反対債務は存続したまま、抗弁として拒めるにとどまります。

    そして、同じ場面で542条1項1号による解除もできます。改正前は解除に債務者の帰責事由が必要だったため、双方無責の不能では解除できず、危険負担で処理するほかありませんでした。現行法では解除の道が開いたので、契約関係を終わらせたければ解除すればよく、危険負担の実際上の役割は縮小しています。実務では、まず支払を拒みつつ解除して清算する、という流れになります。制度の詳細は危険負担を参照してください。

    536条2項は、債権者の責めに帰すべき事由による不能の場合、債権者は反対給付の履行を拒めないと定め、後段で、債務者が自己の債務を免れたことによって利益を得たときはこれを債権者に償還しなければならないと定めます。前述の413条の2第2項でみなされる場面が、この2項につながります。

    契約不適合責任(562条以下)は特則である

    引き渡された目的物が契約に適合しない場合の売主の責任は、562条から564条に規定があります。改正前の「瑕疵担保責任」は法定責任と説明されることがありましたが、現行法では債務不履行責任として整理されました。買主の四つの手段のうち、解除については564条が541条・542条によると定めており、総論の解除規定がそのまま働きます。したがって、契約不適合を理由とする解除にも売主の帰責事由は要りませんし、541条ただし書の軽微性の制限はかかります。

    もっとも、契約不適合には566条という固有の期間制限があります。買主が不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しなければならず、対象は種類または品質の不適合に限られます。総論の債務不履行にはこの通知の要求はありません。手段の内容と期間制限は契約不適合責任にまとめてあります。

    宅建業者が自ら売主となる場合には、宅建業法40条が特約を制限し、通知期間について「引渡しの日から2年以上」とする特約だけを例外的に許しています。民法・業法・品確法の三層構造は契約不適合責任の特約制限で扱っています。

    手付解除(557条)は債務不履行解除ではない

    混同しやすいのが手付解除です。557条1項は、買主が手付を交付したときは、買主は手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して契約を解除できると定め、ただし書で「その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない」と定めます。

    手付解除は債務不履行を理由とする解除ではなく、契約から離脱する権利をあらかじめ金銭で買っておく制度です。したがって、相手に落ち度がなくても行使できます。そして557条2項が「第545条第4項の規定は、前項の場合には、適用しない」と定めているため、手付解除をした者は、それとは別に損害賠償を請求することはできません。債務不履行解除では545条4項により賠償請求が併存するのと正反対です。

    宅建業者が自ら売主となる場合、手付の額は宅建業法39条により代金の10分の2が上限とされ、業者が受領した手付は解約手付とみなされます。手付金等の保全措置も含めた業法側の規律は手付金の制限手付金等の保全措置にまとめてあります。

    試験での出題ポイント

    権利関係14問のうち、債務不履行が単独で1問を占めることもありますが、それ以上に多いのは、売買契約や賃貸借契約の事例のなかで解除の可否や損害賠償の範囲として問われる形です。条文を丸ごと覚えるより、事案を読んで「誰のどの債務が、いつから、どういう理由で履行されていないのか」を特定する訓練のほうが得点に直結します。科目全体の頻出テーマは権利関係の頻出論点で確認してください。

    解除の帰責事由を要求する肢

    改正で正誤が反転した最大の論点です。「債務者に帰責事由がなければ契約を解除できない」「地震で建物が滅失した場合、売主に落ち度がないから買主は解除できない」といった形で出ます。いずれも誤りで、現行法では債務者の帰責事由は解除の要件ではありません。問われているのが543条(債権者の帰責事由)なのか、415条1項ただし書(債務者の免責)なのかを見分けてください。帰責事由という言葉が出てきたら、誰の帰責事由かを必ず確認するのが鉄則です。

    履行不能なのに催告を要求する肢

    「履行が不能になった場合でも、相当の期間を定めて催告しなければ解除できない」という肢は誤りです。542条1項1号により無催告で解除できます。逆に、履行遅滞の事案で「催告なしに直ちに解除できる」とだけ書かれていれば、542条1項四号・五号に当たる事情があるかを確認します。当たらないなら誤りです。

    軽微性を落とした肢、基準時をずらした肢

    「相当の期間を定めて催告し、期間内に履行がなかったのだから解除できる」という肢は、不履行が軽微であれば誤りになります。逆に、軽微性の判断時期を「催告の時」としている肢も誤りで、条文は「その期間を経過した時」です。

    起算点を入れ替える肢

    412条の三つの起算点は入れ替えの材料になります。特に不確定期限で、「期限の到来を知った時から」とだけ書いて、履行の請求を受けた時との早いほうという部分を落とす肢に注意してください。また、確定期限のある債務について「催告を受けた時から遅滞」とする肢も誤りです。

    特別損害を「予見していたとき」に限定する肢

    416条2項の文言は「予見すべきであったとき」です。「当事者が現に予見していた場合に限り賠償を請求できる」とする肢は誤りになります。予見の時期を契約締結時に固定する肢も、従来の理解とは異なります。

    金銭債務で不可抗力免責を認める肢

    「金銭債務の不履行についても、不可抗力によるものであれば債務者は責任を免れる」という肢は、419条3項により誤りです。あわせて、「金銭債務の不履行では債権者が損害額を立証しなければならない」という肢も、同条2項により誤りです。

    危険負担の効果を「消滅」とする肢

    536条1項の効果は履行拒絶権であって、反対債務の当然消滅ではありません。「当然に消滅する」と書かれていれば誤りです。あわせて「特定物の売買では債権者主義により買主が危険を負担する」という肢も、旧534条が削除されている以上、誤りになります。

    解除と第三者で登記を落とす肢

    545条1項ただし書で保護される第三者は、解除前に利害関係を持ち、かつ登記を備えていることが求められます。「解除前の第三者は登記がなくても保護される」とする肢は誤りです。解除後の第三者について「ただし書により保護される」とする肢も、根拠条文を取り違えているので誤りになります。

    業法との交錯

    売買契約の事例では、民法の解除の可否と宅建業法の規制が同じ問題文に同居することがあります。損害賠償額の予定と違約金の合算が代金の10分の2を超えていないか(38条)、手付が10分の2を超えていないか(39条)、契約不適合責任の通知期間の特約が引渡しの日から2年未満になっていないか(40条)。あわせて、契約の解除に関する事項と損害賠償額の予定または違約金に関する事項は、重要事項説明の対象であり、定めがあるときは37条書面の記載事項にもなります。

    覚え方・整理の仕方

    帰責事由は「誰の」で三つに割る

    債務不履行まわりで帰責事由が出てくる場面は三つしかありません。債務者の帰責事由が問題になるのは損害賠償だけ(415条1項ただし書、免責事由として)。債権者の帰責事由が問題になるのは解除と危険負担(543条、536条2項)。双方の帰責事由がないことが問題になるのは危険負担と413条の2(536条1項、413条の2第1項・2項)。この三分けを頭に置いておけば、肢を読んだ瞬間にどの条文の話かが決まります。

    解除は「催告に意味があるか」で振り分ける

    541条と542条の使い分けを「可能/不能」で覚えると五号を取りこぼします。待てば履行されそうなら催告する、待っても無駄なら催告しない。542条1項の五つは、不能(一号)、拒絶(二号)、一部不能・一部拒絶で目的不達(三号)、定期行為の徒過(四号)、見込みなし(五号)と並んでいますが、どれも「催告しても意味がない」という一点で共通しています。

    遅れている側がリスクを負う

    413条の2は、1項が債務者の遅滞、2項が債権者の受領遅滞を扱い、いずれも「遅れている側の責めに帰すべき事由による不能とみなす」と結論します。条文を二つ別々に覚えるのではなく、遅れた者が不能のリスクを引き受けるという一つの原則の表と裏として覚えてください。567条2項の危険移転も同じ発想の延長です。

    過失相殺は「必ず・責任まで」対「できる・額だけ」

    418条と722条2項の対比は、四語で覚えられます。債務不履行は「必ず考慮・責任及び額」、不法行為は「考慮できる・額のみ」。語尾と対象がそろって違う、と覚えておくと入れ替え肢に反応できます。

    545条は項ごとに役割が違う

    1項は原状回復と第三者保護、2項は金銭の利息、3項は物の果実、4項は損害賠償との併存。項番号と内容をセットで持っておくと、「解除しても損害賠償は請求できる」の根拠を4項と即答できます。そして手付解除では557条2項がその4項を外す、というところまでつなげてください。

    改正論点は「前はこうだった」まで覚える

    宅建の改正論点は、改正前の結論を正解肢に見せかける形で出題されます。解除の帰責事由、危険負担の債権者主義、原始的不能の無効、賠償予定額の増減禁止、瑕疵担保責任という用語。これらは「昔はそうだった」と分かっていて初めて、ひっかけとして認識できます。改正全体の見取り図は民法改正まとめにあります。

    理解度チェッククイズ

    問1 不確定期限のある債務について、債務者は、その期限が到来したことを知った時から遅滞の責任を負い、期限到来後に履行の請求を受けたにすぎない場合には、まだ遅滞の責任を負わない。

    答え:×。412条2項は「その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又はその期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負う」と定めています。請求を受ければ、期限の到来を知らなくてもその時から遅滞になります。改正前は「知った時」だけが起算点でしたので、改正前の記述をそのまま出した肢ということになります。なお確定期限があるときは期限の到来した時から(1項)、期限を定めなかったときは履行の請求を受けた時から(3項)です。

    問2 売買契約の締結前にすでに目的建物が焼失していた場合、その契約は原始的不能を目的とするものとして無効であり、買主は売主に対して損害賠償を請求することができない。

    答え:×。412条の2第2項は「契約に基づく債務の履行がその契約の成立の時に不能であったことは、第415条の規定によりその履行の不能によって生じた損害の賠償を請求することを妨げない」と定めています。現行法では原始的不能でも契約は有効に成立し、415条の債務不履行として損害賠償の問題になります。売主に免責事由がなければ買主は賠償を請求でき、542条1項1号により無催告で解除することもできます。「原始的不能の契約は無効」というのは改正前の理解です。

    問3 買主が代金を支払わないため、売主が相当の期間を定めて催告したが履行がなかった場合、売主は、買主に帰責事由がなくても契約を解除することができる。

    答え:○。541条は解除の要件として債務者の帰責事由を挙げていません。改正により、解除は債務者への制裁ではなく、債権者を契約の拘束から解放する制度として整理されました。帰責事由が問題になるのは543条の場面、すなわち不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるときで、この場合には解除できません。ただし本問でも、催告期間を経過した時における不履行が契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、541条ただし書により解除できません。

    問4 金銭の支払を目的とする債務の履行が大規模な災害によって遅延した場合、債務者は、不可抗力であることを証明すれば遅延損害金の支払を免れる。

    答え:×。419条3項は「第1項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない」と明記しています。金銭債務の不履行では不可抗力免責が封じられています。あわせて同条2項により債権者は損害の証明を要せず、1項により賠償額は債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率で決まります(約定利率が法定利率を超えるときは約定利率)。金銭債務は履行不能にならないため、問題になるのは遅滞だけである、という点も押さえてください。

    問5 売主Aが買主Bに建物を引き渡し、Bが所有権移転登記を備えた後、BがCに当該建物を売却して登記を移転した。その後、Bの代金不払を理由にAが売買契約を解除した場合、Aは、Cに対して建物の返還を請求することができない。

    答え:○。根拠条文は、CがBから権利を取得したのが解除より前かで変わります。本問はCの取得も登記も解除より前ですから、545条1項ただし書の「第三者」にあたり、Cは保護されてAは返還を請求できません。ただし書で保護されるためには登記を備えていることが必要と解されており、本問のCはこれを満たします。仮にCの取得が解除後であったとすれば、ただし書の場面ではなく、解除によってAに復帰する権利とCの権利との対抗問題となり、177条により登記を先に備えたほうが優先します。「解除の前か後か」で条文の根拠が入れ替わるという点が、この論点の急所です。

    問6 買主が正当な理由なく目的物の受領を拒んでいる間に、当事者双方の責めに帰することができない事由により目的物が滅失した場合、買主は代金の支払を拒むことができる。

    答え:×。413条の2第2項により、その履行の不能は債権者(買主)の責めに帰すべき事由によるものとみなされます。そのため536条2項が適用され、買主は反対給付である代金の支払を拒むことができません。543条により解除もできません。売買契約については567条2項が同趣旨を重ねて定めており、売主が契約に適合する目的物の引渡債務の履行を提供していれば、提供の時以後の滅失・損傷について買主は追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・解除のいずれもできず、代金の支払も拒めません。受領遅滞では、あわせて債務者の保存義務が自己の財産に対するのと同一の注意まで軽減され(413条1項)、増加費用は債権者の負担となります(同条2項)。

    まとめ

    • 現行法の債務不履行は、415条1項が「本旨に従った履行をしないとき」と「履行が不能であるとき」の二つを受け皿にし、帰責事由をただし書の免責事由として置く構造です。三分類は条文の分類ではなく、不完全履行にあたる場面は契約不適合責任(562条以下)で処理されます。遅滞の起算点は412条が確定期限・不確定期限・期限の定めなしで書き分け、不確定期限は請求を受けた時と到来を知った時のいずれか早い時です。履行不能は412条の2が社会通念上の不能を明文化し、2項で原始的不能でも契約は有効としました。
    • 損害賠償は、416条1項の通常損害と2項の特別損害(「予見すべきであったとき」)で範囲が決まり、417条で金銭賠償、418条で必要的な過失相殺、420条で賠償額の予定(裁判所の増減禁止規定は削除)。金銭債務には419条の特則があり、損害の証明が不要で、不可抗力を抗弁にできません。受領遅滞は413条で注意義務の軽減と増加費用の負担、413条の2第2項で不能を債権者の帰責によるものとみなします。
    • 解除は改正で性格が変わりました。541条・542条のどこにも債務者の帰責事由は要件として書かれておらず、543条が債権者の帰責事由だけを障害としています。催告解除には「軽微でないこと」というただし書がかかり、判断の基準時は催告期間を経過した時です。無催告解除は542条1項の五つの場合で、共通するのは「催告に意味がない」ことです。効果は545条で、原状回復(1項本文、546条により同時履行)、第三者の保護(1項ただし書、解除前の第三者は登記が必要)、受領時からの利息(2項)、果実の返還(3項)、損害賠償との併存(4項)。手付解除では557条2項によりこの4項が外れ、賠償請求はできません。

    債務不履行と解除は、条文の文言そのものが答えになる論点が多い領域です。宅建試験AIブートラボの肢別トレーニングでは、権利関係の過去問を条文ごとに絞り込んで演習できます。改正前の枠組みで書かれた解説と混ざりやすい分野なので、412条から548条までの条文に戻りながら進めてください。

    読んだ内容を、権利関係の肢で確かめる

    民法・借地借家法・区分所有法など、条文だけでは判断しづらい論点は、過去問の肢で覚えるのが最短です。

    関連記事

    Android版アプリの先行テスターを募集しています

    正式公開に先立ち、先行してご利用いただける方を募集しています。学習記録や有料プランはWeb版と同じアカウントで、そのまま引き継げます。3ステップで、通常その場で使い始められます。

    1
    テスターグループに参加する

    お使いのGoogleアカウントで参加ボタンを押すだけです。承認を待つ必要はありません。

    参加ページを開く
    2
    テスト版を受け取る

    手順1と同じGoogleアカウントでログインしたAndroid端末で受け取りページを開き、「テスターになる」を押してGoogle Playからインストールします。

    受け取りページを開く
    3
    いつものアカウントでログインする

    Web版と同じメールアドレス・パスワードでログインすれば、学習記録がそのまま表示されます。

    「まだご利用いただけません」と表示された場合は、反映待ちの可能性があります。時間をおいて再度お試しいただくか、info@takken-bootlab.com までお知らせください。