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宅建で独立開業する|免許と保証金の要件

キャリア・試験情報 読了 約27分

不動産会社の開業に必要な免許、事務所、専任の宅建士、営業保証金または保証協会加入を宅建業法の条文根拠つきで整理。開業後の届出と更新まで解説します。

目次

    この記事は、宅地建物取引業を自ら営むために法律上何が必要になるのかを、宅地建物取引業法の条文に沿って通しで整理する記事です。独立は宅建士のキャリアの一つの選択肢なので、他の進路との位置関係は宅建士のキャリアパスを、免許制度そのものの全体像は宅建業の免許制度を先に読むと理解が早くなります。

    独立開業の情報は、どうしても「いくら儲かるか」という話に寄りがちです。しかし開業できるかどうかを実際に決めているのは、宅建業法が定める要件を満たせるかどうかです。免許を受けられるか、事務所が要件を満たすか、専任の宅建士を置けるか、営業保証金または弁済業務保証金分担金を用意できるか。この4つのうち一つでも欠ければ、どれだけ営業力があっても事業は始まりません。

    そこでこの記事は、法定の要件と手続を骨格に据えます。収益性や成功率のような、出典を示せない数値は扱いません。

    独立開業に必要な4つの法的要件

    宅建業を営むための要件は、大きく4つに整理できます。この4つは順番に並んでいるのではなく、互いに絡み合っています。免許を申請する時点で、事務所と専任の宅建士が揃っていなければならず、免許を受けたあとに保証金の手続をしなければ営業を開始できない、という構造です。

    宅地建物取引業の免許

    宅建業法3条1項は、宅地建物取引業を営もうとする者は免許を受けなければならないと定めています。ここでいう宅地建物取引業とは、宅地建物の売買・交換を自ら行うこと、および売買・交換・貸借の代理または媒介を業として行うことを指します。自ら貸主となる賃貸経営は宅建業に当たらないため免許は不要ですが、他人の物件の賃貸を媒介するなら免許が要ります。この線引きは宅建業に当たる行為で詳しく扱っています。

    無免許で宅建業を営むこと、無免許者に名義を貸すことは、いずれも禁止されています(12条、13条)。免許は事業を始めるための最初の関門であると同時に、業務の適正を担保する制度の土台です。

    事務所の設置と専任の宅建士

    免許の申請には、宅建業法施行令1条の2の要件を満たす事務所が必要です。事務所がなければ免許は受けられず、事務所の確保は免許申請より前に済ませておく必要があります。あわせて31条の3第1項により、事務所その他国土交通省令で定める場所ごとに成年者である専任の宅建士を置かなければなりません。事務所については業務に従事する者5人に1人以上という割合が定められており、この要件を欠いていると、そもそも免許を受けられません(5条1項15号)。

    営業保証金の供託または保証協会への加入

    宅建業法25条は、営業保証金を供託し、その旨を免許権者に届け出た後でなければ事業を開始してはならないと定めています。この供託に代わる仕組みが、宅地建物取引業保証協会への加入です。金額の差が非常に大きいため、実務上は加入を選ぶ事業者が大半です。

    4つの関係を時系列で押さえる

    要件を満たす順序を誤ると、手続がやり直しになります。事業形態を決め、事務所を確保し、専任の宅建士を確定させたうえで免許を申請する。免許を受ける旨の通知が来たら、保証協会への加入手続または供託を行い、届出を経て営業を開始する。免許を受けてから事務所を探すという順序は取れません。

    宅建業の免許を取得する

    4つの要件のうち、手続として最も重いのが免許です。申請先、有効期間、そして欠格事由の3点を押さえます。

    申請先は事務所の所在地で決まる

    宅建業法3条1項は、2以上の都道府県の区域内に事務所を設置して宅建業を営もうとする場合は国土交通大臣の免許を、1の都道府県の区域内にのみ事務所を設置する場合はその都道府県知事の免許を受けなければならないと定めています。判断基準は事務所の所在地であって、取引の対象となる物件の所在地ではありません。

    ここを誤解している人は少なくありません。東京都内にのみ事務所を置く業者が、神奈川県や埼玉県の物件を扱うことは何ら制限されていません。知事免許であっても、業務を行える地域が当該都道府県内に限られるわけではないのです。逆に、営業所を隣県にもう一つ設ければ、その時点で大臣免許への免許換えが必要になります。免許換えを含む免許の横断的な整理は免許の横断整理にまとめています。

    一人で開業する場合、事務所は一つですから、通常は都道府県知事免許になります。申請は事務所の所在地を管轄する都道府県の担当窓口へ提出します。大臣免許の場合も、申請書は主たる事務所の所在地を管轄する都道府県知事を経由して提出する扱いです。

    有効期間は5年、更新には期限がある

    免許の有効期間は5年です(3条2項)。引き続き宅建業を営もうとする場合は更新を受ける必要があり、更新の申請は有効期間満了の日の90日前から30日前までの間に行うこととされています(施行規則3条)。この期間を過ぎてしまうと、免許が失効して無免許状態になりかねません。

    もっとも、期間内に更新の申請をしたにもかかわらず、有効期間の満了日までに処分がされないこともあります。この場合、従前の免許は有効期間の満了後もその処分がされるまでの間は有効とされます(3条4項)。そして更新されたときの新しい免許の有効期間は、従前の免許の有効期間満了の日の翌日から起算されます(3条5項)。処分が遅れた分だけ5年が後ろにずれるわけではない、という点が重要です。

    申請にかかる費用

    免許の申請には手数料または登録免許税がかかります。都道府県知事免許の場合、地方公共団体の手数料の標準に関する政令が定める標準額は、新規・更新のいずれも33,000円です。国土交通大臣免許の新規申請には登録免許税90,000円がかかり、更新の場合は手数料33,000円です。金額や納付方法は申請先によって案内が異なることがあるため、申請前に窓口の手引きで確認してください。

    なお、法人として開業する場合は、別に会社設立の法定費用がかかります。株式会社の設立登記の登録免許税は資本金の額の1000分の7で、15万円に満たないときは15万円。合同会社は同じく1000分の7で、6万円に満たないときは6万円となり、公証人による定款認証も不要です。法人形態の選択は、この初期費用と、取引先や金融機関からの信用の受け止め方を見比べて決めることになります。

    免許の欠格事由

    宅建業法5条1項は、免許を受けられない場合を列挙しています。これに一つでも該当すると免許は受けられません。主な内容は次のとおりです。

    破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者。不正の手段により免許を受けたこと、業務停止処分事由に該当し情状が特に重いこと、または業務停止処分に違反したことにより免許を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者。これらの理由で聴聞の期日および場所が公示された日から処分をする日までの間に廃業等の届出をした者で、届出の日から5年を経過しないもの。拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者(2025年6月1日施行の刑法改正で懲役と禁錮が拘禁刑に一本化され、条文の文言も改まりました。古い教材の「禁錮以上の刑」は現行法の表現ではありません)。宅建業法違反、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一定の規定に違反したこと、または傷害罪、暴行罪、脅迫罪、背任罪などにより罰金の刑に処せられ、5年を経過しない者。暴力団員等。免許の申請前5年以内に宅建業に関し不正または著しく不当な行為をした者。事務所に専任の宅建士を設置していない者。

    法人の場合は、その役員または政令で定める使用人がこれらに該当するときも免許を受けられません。個人の場合も、政令で定める使用人が該当すれば同様です。つまり、開業しようとする本人だけでなく、共同経営者や支店長として迎える人物についても確認が必要になります。欠格事由の体系的な整理は欠格事由の一覧を参照してください。

    罰金刑については、どの罪による罰金かで扱いが変わります。宅建業法違反や暴力に関する一定の犯罪、背任罪であれば欠格事由になりますが、たとえば過失運転致傷罪による罰金は該当しません。ここは試験でも実務でも間違えやすい部分です。

    事務所の要件と専任の宅建士

    免許の前提となる事務所と人の要件を見ていきます。開業を具体化する段階で、最も現実的な検討対象になる部分です。

    事務所とは何を指すか

    宅建業法施行令1条の2は、事務所を2種類に分けて定義しています。第一に、本店または支店。第二に、本店・支店以外で、継続的に業務を行うことができる施設を有する場所であって、宅建業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くもの。

    見落とされやすいのが、本店の扱いです。本店で宅建業を営んでいなくても、支店で宅建業を営んでいる場合、本店は宅建業法上の事務所として扱われます。本店には統括機能があると考えられるためです。逆に、支店で宅建業を営んでいなければ、その支店は事務所には当たりません。この非対称は、後に営業保証金の額を計算するときに効いてきます。

    事務所として認められるための実質

    「継続的に業務を行うことができる施設」という要件は、実務上、物理的な独立性として審査されます。テント張りの案内所や仮設の施設は、継続性がないため事務所には当たりません。他の法人と同じ空間を共有し、入口や区画が分かれていない場合も、独立性を欠くと判断されることがあります。事務所には後述する標識、報酬額の掲示、従業者名簿、帳簿を備える必要があり、来客に対して業務を行える状態でなければなりません。審査で見られる点は宅建業の事務所要件で整理しています。

    自宅の一室を事務所にする場合

    固定費を抑えるために自宅を事務所として申請したいという需要は根強くあります。制度上、これが一律に禁じられているわけではありません。ただし、生活空間と業務空間が明確に区分されていること、事務所部分に独立して出入りできること、来客を居住スペースを通らずに応対できることといった点が問われます。

    賃貸物件に居住している場合は、賃貸借契約上、事務所としての使用が認められているかという別の問題も生じます。マンションの管理規約で事務所利用が禁じられていることもあります。運用に幅があるため、物件を決める前に管轄の窓口へ相談するのが確実です。副業として小さく始めたい場合の考え方は宅建士の副業宅建の副業でも触れています。

    専任の宅建士を置く

    宅建業法31条の3第1項により、事務所ごとに、業務に従事する者5人に1人以上の割合で成年者である専任の宅建士を置かなければなりません。従業者が1人から5人までなら宅建士は1人、6人から10人までなら2人、というように、割り切れない場合は切り上げて考えます。

    一人で開業する場合、自分自身が専任の宅建士に就任するのが通常です。ここで注意したいのが、専任の宅建士になるには宅建士証の交付を受けていなければならない、という点です。試験に合格しただけでは足りず、資格登録を受け、宅建士証の交付まで済ませておく必要があります。登録には2年以上の実務経験または登録実務講習の修了が要件となるため(18条1項)、独立を考えるなら早い段階でここを片づけておくべきです。手続は宅建士の登録手続登録実務講習の内容で扱っています。

    専任性が否定される場合

    専任とは、その事務所に常勤し、専ら宅建業に従事する状態を指します。他社の従業者を兼ねている、他の事業に主として従事している、通勤が物理的に不可能な場所に居住している、といった事情があると、専任性は否定される方向に働きます。

    これは独立開業を考える人にとって現実的な制約です。会社に勤めながら自分の会社を立ち上げ、自分が専任の宅建士を兼ねるという形は原則として認められません。また31条の3第2項により、要件を欠くに至ったときは2週間以内に必要な措置を執らなければなりません。設置義務の詳細は専任の宅建士とはにまとめています。

    営業保証金と保証協会、そして営業開始まで

    開業資金の性格を最も大きく左右するのが、この論点です。制度の趣旨は、取引の相手方が宅建業者との取引で損害を被ったときに、確実に弁済を受けられるようにすることにあります。

    営業保証金の額

    宅建業法25条1項は、宅建業者に営業保証金の供託を義務づけています。額は25条2項を受けた施行令2条の4により、主たる事務所につき1,000万円、その他の事務所につき事務所ごとに500万円と定められています。主たる事務所のみで開業する場合でも1,000万円という水準です。

    供託先は主たる事務所のもよりの供託所で、従たる事務所の分もまとめてここに供託します。事務所ごとに近くの供託所へ分けるのではない、という点は試験でも問われます。

    なお営業保証金は、金銭のほか国債証券、地方債証券その他国土交通省令で定める有価証券をもって充てることができます(25条3項)。評価額は国債証券が額面金額、地方債証券および政府保証債券が額面金額の100分の90、その他の一定の有価証券が100分の80です。制度の全体像は営業保証金の仕組みで扱っています。

    保証協会に加入するという選択

    1,000万円という金額は、個人の開業では現実的でないことが多いでしょう。そこで用意されているのが、宅地建物取引業保証協会の社員となる道です。保証協会に加入した宅建業者は、営業保証金を供託する必要がありません。

    代わりに納付するのが、弁済業務保証金分担金です。宅建業法64条の9第1項および施行令7条により、主たる事務所につき60万円、その他の事務所につき事務所ごとに30万円と定められています。1,000万円と60万円という差が、開業のハードルを決定的に変えています。実務上、新規に開業する事業者の多くが保証協会への加入を選ぶのは、この差によるものです。

    分担金は金銭のみで納付する

    ここで見落としてはならないのが、納付の方法です。宅建業法64条の9第1項は、弁済業務保証金分担金を金銭で納付しなければならないと定めています。営業保証金は有価証券でも供託できますが、分担金は金銭に限られます。手元に有価証券があっても、これを充てることはできません。

    一方、保証協会が供託所に供託する弁済業務保証金のほうは、金銭または有価証券をもって充てることができます(64条の7第2項)。宅建業者から協会への納付は金銭のみ、協会から供託所への供託は有価証券も可、という二段構えです。混同しやすいので、納付する主体で区別して覚えてください。制度の仕組みは保証協会の役割弁済業務保証金の仕組みで扱っています。

    納付の期限

    分担金は、保証協会に加入しようとする日までに納付しなければなりません(64条の9第1項)。加入してから納めるのではなく、加入の前提として納めるという建て付けです。また、社員となった後に新たに事務所を設置したときは、その日から2週間以内に納付する必要があります(64条の9第2項)。この2週間を過ぎると社員の地位を失うため、支店を出すときは必ず期限を意識してください。

    加入時にかかるその他の費用

    分担金のほかに、入会金や年会費などが必要になります。これらの額は加入する協会や地域の団体によって異なり、法令で一律に定められているものではありません。保証協会は全国宅地建物取引業協会連合会と全日本不動産協会の2つがあり、それぞれ都道府県ごとの団体を通じて手続を行います。実際の費用は、検討する団体に直接確認するのが確実です。

    届出をするまで事業を開始できない

    宅建業法25条5項は、宅建業者は営業保証金を供託し、その旨を免許権者に届け出た後でなければ、その事業を開始してはならないと定めています。供託しただけでは足りず、届出まで済ませて初めて営業を開始できるという構造です。

    保証協会に加入する場合は、この供託と届出に相当する手続を協会が行います。保証協会は、新たに社員が加入したときは直ちにその旨を当該社員である宅建業者の免許権者に報告しなければならないとされています(64条の4第2項)。宅建業者本人が免許権者へ届け出るのではない点が、供託の場合との違いです。

    届出をしないまま放置した場合

    免許を受けたのに供託の届出をしないまま時間が経つと、免許権者が動きます。宅建業法25条6項は、免許をした日から3か月以内に届出をしない者に対して、届出をすべき旨の催告をしなければならないと定めています。そして25条7項により、催告が到達した日から1か月以内に届出がないときは、免許を取り消すことができます。3か月は催告までの期間、1か月は催告後に取消しができるようになるまでの期間という二段階で、試験でも頻出です。免許を受けたら速やかに保証金の手続に進むべき理由がここにあります。

    営業開始後に伴う説明義務

    関連して、営業を始めたあとの義務も押さえておきます。宅建業法35条の2は、契約が成立するまでの間に、営業保証金を供託した供託所とその所在地を相手方等に説明するようにしなければならないと定めています。保証協会の社員であれば、社員である旨、協会の名称・住所・事務所の所在地、弁済業務保証金が供託されている供託所とその所在地を説明します。これは重要事項の説明とは別の制度で、宅建士が行う必要も書面を交付する必要もありません。混同しやすいので供託所等の説明で確認しておいてください。

    事務所の備え付け義務と、開業後に続く手続

    免許を受け、営業を開始したら、事務所には法定の備え付け物が必要になります。これらは監督官庁の立入検査でも確認される事項です。

    標識の掲示

    宅建業法50条1項は、事務所等ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通省令で定める標識を掲げなければならないと定めています。いわゆる業者票で、免許証番号、免許の有効期間、商号または名称、代表者の氏名、その事務所に置かれている専任の宅建士の氏名などが記載されます。標識は事務所だけでなく、契約行為等を行う案内所や一団の宅地建物の分譲を行う現地などにも必要で、掲示を怠ると監督処分の対象となり得ます。

    報酬額の掲示

    宅建業法46条4項は、宅建業者に対し、その事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示しなければならないと定めています。事務所に限られる義務であり、案内所には掲示義務がありません。報酬の上限そのものについては報酬額の制限を参照してください。

    従業者名簿

    宅建業法48条3項は、事務所ごとに従業者名簿を備え、従業者の氏名、従業者証明書の番号その他国土交通省令で定める事項を記載しなければならないと定めています。記載事項には、生年月日、主たる職務内容、宅建士であるか否かの別、その事務所の従業者となった年月日、従業者でなくなったときはその年月日が含まれます。保存期間は、最終の記載をした日から10年間です。

    また、取引の関係者から請求があったときは、従業者名簿を閲覧させなければなりません(48条4項)。従業者には従業者証明書を携帯させる必要があり(48条1項)、取引の関係者から請求があったときは提示しなければなりません(48条2項)。記載事項の詳細は従業者名簿の記載事項で扱っています。

    帳簿

    宅建業法49条は、事務所ごとに業務に関する帳簿を備え、取引のあったつど、その年月日、取引に係る宅地建物の所在および面積その他国土交通省令で定める事項を記載しなければならないと定めています。取引態様の別、取引の相手方の氏名・住所、売買金額や賃借料、報酬の額なども記載事項です。

    保存期間は、各事業年度の末日をもって閉鎖し、閉鎖後5年間です。ただし、宅建業者が自ら売主となる新築住宅に係るものは10年間保存しなければなりません。従業者名簿の10年と帳簿の原則5年は混同しやすいので、数字と対象をセットで覚えてください。横断的な整理には宅建業法の数字まとめが使えます。

    5つをまとめて押さえる

    事務所に必要なものは、標識、報酬額の掲示、従業者名簿、帳簿、専任の宅建士の5つです。このうち案内所等にも必要なのは標識と専任の宅建士1人以上で、残る3つは事務所のみに求められます。案内所等で契約の締結や申込みの受付を行う場合は、業務を開始する10日前までに免許権者と所在地を管轄する知事に届け出る必要もあります(50条2項)。

    開業は終点ではなく、そこから継続的な義務が始まります。届出を怠ると監督処分につながるため、何がいつ必要かを把握しておく必要があります。

    変更の届出

    宅建業法9条は、宅建業者名簿の登載事項のうち一定のものに変更があったときは、30日以内に免許権者に届け出なければならないと定めています。対象となるのは、商号または名称、事務所の名称および所在地、法人の場合は役員および政令で定める使用人の氏名、個人の場合は本人および政令で定める使用人の氏名、そして事務所ごとに置かれる専任の宅建士の氏名です。

    一方で、宅建業者名簿には資産の状況や過去の取引実績なども登載されますが、これらは変更の届出の対象ではありません。何が対象で何が対象でないかを分けて覚える必要があります。手続の詳細は宅建業者名簿の変更の届出で扱っています。

    専任の宅建士が退職した場合、補充は2週間以内(31条の3第2項)、届出は30日以内(9条)と、期間が二重に走ります。2つの期限が別物であることに注意してください。

    廃業等の届出

    宅建業法11条は、宅建業者が死亡した場合や法人が合併により消滅した場合などについて、届出義務者と期間を定めています。死亡の場合は相続人が、その事実を知った日から30日以内。法人が合併により消滅した場合は消滅した法人を代表する役員であった者が30日以内。破産手続開始の決定があった場合は破産管財人が30日以内。解散した場合は清算人が30日以内。廃業した場合は個人なら本人、法人なら代表役員が30日以内です。

    免許が効力を失う時期も、事由によって異なります。死亡と合併消滅の場合は、その事実が発生した時点で免許は効力を失います。破産、解散、廃業の場合は、届出の時点で失効します。届出義務者と失効時期の組合せは出題頻度が高い論点です。廃業等の届出で整理しています。

    5年ごとの免許更新

    免許の有効期間は5年で、更新申請は満了の日の90日前から30日前までの間です。更新を忘れれば無免許状態となり、それまで積み上げた事業を続けられなくなります。宅建士証の有効期間も5年ですが、こちらは法定講習の受講が伴い、免許の更新とは別の手続です。事業者としての更新と、宅建士個人としての更新を、それぞれカレンダーに載せておく必要があります。

    監督処分と罰則のリスク

    宅建業者には業務に関する多くの規制が課されます。誇大広告等の禁止(32条)、取引態様の明示(34条)、重要な事実の不告知等の禁止(47条)、手付貸与等による契約締結の誘引の禁止(47条の2)といった規定に違反すれば、指示処分、業務停止処分、免許取消処分の対象となり得ます。独立するとは、勤務時代に会社が管理していたこれらを自分で運用するということです。広告のルールは広告規制、取引態様は取引態様の明示、禁止行為は47条の禁止行為、処分の体系は監督処分の種類を参照してください。

    開業してから最初に直面すること

    要件を満たして営業を開始したあと、実際に何が問題になるのか。ここは法律だけでは決まらない部分ですが、条件をつけて整理することはできます。

    物件情報をどう手に入れるか

    仲介業を始めてまず直面するのが、扱う物件がないという問題です。勤務時代は会社が抱えていた物件情報を、独立後は自分で確保しなければなりません。

    その基盤となるのが指定流通機構です。宅建業法34条の2第5項は、専任媒介契約を締結した宅建業者に対し、契約の日から7日以内(専属専任媒介契約の場合は5日以内)に当該物件を指定流通機構に登録することを義務づけています。この仕組みを通じて、他の業者が預かった物件情報を検索し、買主や借主に紹介できます。利用手続は保証協会への加入とあわせて行うことが一般的なので、開業準備の段階で必要な手続と費用を確認しておくとよいでしょう。指定流通機構の役割はレインズとは、媒介契約の種類ごとの義務は媒介契約の3類型で扱っています。

    売却依頼をどう獲得するか

    物件情報を検索できるようになっても、自分が売主から直接依頼を受けられなければ収益の構造は安定しません。ここに一般解はなく、地域を絞って情報発信を続ける、特定の物件種別に特化する、勤務時代に築いた関係を通じて紹介を受けるといった選択肢のどれが機能するかは、地域と扱う物件によって変わります。確実に言えるのは、集客の経路がないまま免許だけを取っても事業は動かない、ということです。

    資金繰りの構造を理解しておく

    仲介業の報酬は、契約が成立して初めて発生します。宅建業法46条により報酬には上限が定められており、上限を超えて受け取ることはできません。一方で、事務所の賃料、保証協会の年会費、通信費といった固定費は、売上の有無にかかわらず毎月発生します。

    つまり開業直後は、支出だけが先に立つ期間が生じます。この期間をどれだけ持ちこたえられるかは手元資金の量で決まりますが、必要額は事務所の規模や生活費によって変わるため一般的な金額は示せません。自分の固定費を月単位で洗い出し、何か月分を確保できるかという形で把握するのが実際的です。

    自ら売主となる場合の追加の規制

    買取再販のように、自ら売主となって宅建業者でない買主に売る取引を行う場合は、8種制限と呼ばれる規制が加わります。クーリング・オフ、手付の額の制限、手付金等の保全措置、契約不適合責任についての特約の制限などです。これらは仲介だけを行う場合には適用されない規制で、事業計画の前提を変えます。詳しくは8種制限とはを参照してください。

    専門家との役割分担

    登記は司法書士、税務は税理士、許認可の手続は行政書士というように、隣接する領域には別の資格者がいます。どこまでを自分で行い、どこから外部に委ねるかを決めることが実務上の設計です。組合せ方は宅建と組み合わせる資格一覧、経営の数字は宅建と組み合わせる資格、家計の相談まで広げるならFPと宅建で扱っています。

    試験での出題ポイント

    この記事で扱った内容は、宅建試験の宅建業法の中核でもあります。どう問われるかを整理します。

    免許の種類を物件所在地で判断させる引っかけ

    「東京都に本店のみを置く宅建業者が、埼玉県内の物件の売買の媒介を行う場合、国土交通大臣の免許が必要である」といった記述は誤りです。免許の種類は事務所の所在地で決まり、業務を行える区域に制限はありません。事務所を2以上の都道府県に置いて初めて大臣免許が必要になります。

    事務所の範囲を問う問い

    本店は宅建業を営んでいなくても事務所、宅建業を営んでいない支店は事務所ではない、という非対称が問われます。営業保証金の額の計算問題にもつながる論点です。

    営業保証金と弁済業務保証金分担金の対比

    金額そのもの(1,000万円と500万円、60万円と30万円)に加えて、納付方法の違いが狙われます。「弁済業務保証金分担金は有価証券をもって納付することができる」という記述は誤りで、分担金は金銭のみです。一方、保証協会が供託所に供託する弁済業務保証金は有価証券でも構いません。主体で区別してください。供託先も問われます。営業保証金は、従たる事務所の分も含めて主たる事務所のもよりの供託所にまとめて供託するのであって、事務所ごとに近くの供託所へ分けるのではありません。

    事業開始の時期を問う問い

    「営業保証金を供託すれば、直ちに事業を開始することができる」は誤りです。供託した旨を免許権者に届け出た後でなければ事業を開始できません(25条5項)。免許を受けた日から3か月以内に届出がないと催告があり(25条6項)、催告到達から1か月以内に届出がなければ免許を取り消すことができる(25条7項)という流れも、期間の数字を入れ替えて出題されます。

    備え付け義務の対象を問う問い

    標識、報酬額の掲示、従業者名簿、帳簿のうち、どれが事務所のみに必要でどれが案内所等にも必要かが問われます。案内所等に必要なのは標識と専任の宅建士1人以上で、報酬額の掲示・従業者名簿・帳簿は事務所のみです。保存期間についても、従業者名簿は最終記載から10年、帳簿は閉鎖後5年(自ら売主となる新築住宅は10年)という数字が問われます。

    届出の期間と義務者を問う問い

    変更の届出は30日以内、専任の宅建士の補充は2週間以内。廃業等の届出はいずれも30日以内ですが、死亡の場合の起算点は「知った日」であり、義務者は相続人です。免許が失効する時期が事由によって異なる点とあわせて、組合せで出題されます。

    覚え方・整理の仕方

    数字と手続が集中する領域なので、整理の方法を決めておくと定着します。

    開業を4つの箱で描く

    「免許」「事務所」「専任の宅建士」「保証金」という4つの箱を紙に描き、それぞれに条番号と要件を書き込んでください。免許の箱には3条と5条、事務所の箱には施行令1条の2、専任の箱には31条の3、保証金の箱には25条と64条の9。この4つが揃わなければ開業できない、という構造を図として持っておくと、細部を思い出す手がかりになります。

    金額は「1000・500」と「60・30」の対で覚える

    営業保証金は主たる事務所1,000万円・その他500万円、分担金は主たる事務所60万円・その他30万円。どちらも「主たる事務所のほうが多く、その他はその半分」という同じ構造です。数字を4つばらばらに覚えるのではなく、2組の対として、しかも同じ形をしていると理解すると、取り違えが減ります。

    期間は「起算点とセット」で口に出す

    30日は変更の届出と廃業等の届出、2週間は専任の宅建士の補充と事務所新設時の分担金納付、3か月は供託の届出がないときの催告まで、1か月は催告後に免許を取り消せるまで、90日前から30日前までは免許の更新申請、10日前までは案内所等の届出。数字だけを並べず、必ず「何から数えて何日か」を口に出して確認します。数字から対象を引く練習と、対象から数字を引く練習を、両方向で行ってください。

    保存期間は「人は10年、取引は5年」

    従業者名簿は最終記載から10年、帳簿は閉鎖後5年。人に関する記録のほうが長く、取引の記録のほうが短い、と対比で覚えます。そのうえで「ただし自ら売主となる新築住宅の帳簿は10年」という例外を一つだけ足す。例外を先に覚えると原則が曖昧になるので、原則を固めてから例外を乗せる順序を守ってください。

    供託と加入を「誰が動くか」で分ける

    営業保証金を供託する場合は、宅建業者本人が供託し、本人が免許権者に届け出ます。保証協会に加入する場合は、業者が協会に分担金を納付し、協会が供託所に供託し、協会が免許権者に報告します。誰が誰に対して何をするのかを矢印で描くと、どちらのルートの話をしているのかが混ざらなくなります。

    理解度チェッククイズ

    次の記述が正しいか誤りかを判断してください。

    第1問

    甲県内にのみ事務所を設置する宅地建物取引業者が、乙県内に所在する宅地の売買の媒介を行おうとする場合、あらためて国土交通大臣の免許を受けなければならない。

    答えは誤りです。宅建業法3条1項により、免許の種類は事務所を設置する区域で決まります。事務所が1つの都道府県内にのみあるなら都道府県知事免許であり、業務を行う区域が当該都道府県内に限定されるわけではありません。大臣免許が必要になるのは、2以上の都道府県の区域内に事務所を設置する場合です。

    第2問

    宅地建物取引業保証協会に加入しようとする宅地建物取引業者は、弁済業務保証金分担金を金銭または有価証券で納付することができる。

    答えは誤りです。宅建業法64条の9第1項は、弁済業務保証金分担金を金銭で納付しなければならないと定めています。有価証券で充てることはできません。有価証券が使えるのは、営業保証金の供託(25条3項)と、保証協会が供託所に対して行う弁済業務保証金の供託(64条の7第2項)です。納付する主体と場面で区別してください。

    第3問

    宅地建物取引業者は、営業保証金を供託所に供託したときは、その旨を免許権者に届け出る前であっても、事業を開始することができる。

    答えは誤りです。宅建業法25条5項は、供託した旨を免許権者に届け出た後でなければ事業を開始してはならないと定めています。供託と届出は別の行為であり、両方が済んで初めて営業を開始できます。なお、免許を受けた日から3か月以内に届出がないときは免許権者が催告をしなければならず(25条6項)、催告が到達した日から1か月以内に届出がないときは免許を取り消すことができます(25条7項)。

    第4問

    宅地建物取引業者は、その事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示しなければならないが、契約の申込みを受ける案内所にはこの掲示義務はない。

    答えは正しい記述です。宅建業法46条4項の報酬額の掲示義務は、事務所ごとに課されるものであり、案内所等には及びません。案内所等に必要とされるのは、標識の掲示(50条1項)と、成年者である専任の宅建士1人以上の設置です。従業者名簿と帳簿も事務所のみに備え付ければ足ります。どれが事務所限定でどれが案内所等にも必要かを分けて押さえてください。

    第5問

    宅地建物取引業者である法人が合併により消滅した場合、その法人を代表する役員であった者は、消滅の日から30日以内にその旨を免許権者に届け出なければならず、免許はその届出の時に効力を失う。

    答えは誤りです。届出義務者と30日以内という期間は正しいのですが、免許が効力を失う時期が違います。宅建業法11条の廃業等の届出のうち、死亡と合併による消滅の場合は、届出の時ではなくその事実が発生した時に免許が効力を失います。届出の時に失効するのは、破産手続開始の決定、解散、廃業の場合です。

    まとめ

    宅建業で独立開業するために法律が求めるのは、宅地建物取引業の免許、施行令1条の2の要件を満たす事務所、業務に従事する者5人に1人以上の専任の宅建士、そして営業保証金の供託または保証協会への加入という4つです。免許の種類は事務所の所在地で決まり、有効期間は5年。5条1項の欠格事由に該当すれば、そもそも免許を受けられません。

    資金面で決定的なのが、営業保証金と弁済業務保証金分担金の差です。主たる事務所だけでも1,000万円が必要な供託に対し、保証協会に加入すれば分担金は60万円で済みます。ただし分担金は金銭のみで納付する必要があり、加入日までに納めなければなりません。そして供託または加入の手続を経て届出が済むまで、事業は開始できません(25条5項)。

    営業を始めたあとも、標識、報酬額の掲示、従業者名簿、帳簿の備え付けが続き、変更があれば30日以内の届出、5年ごとの免許更新が必要です。独立とは、勤務時代に会社が引き受けていたこれらの義務を自分で負うことでもあります。そして要件を満たすことと事業を成り立たせることは別の問題であり、集客の経路と手元資金は法律の外側で自分が用意しなければなりません。

    よくある質問

    実務経験がなくても開業できますか

    宅建業法は、開業の要件として実務経験を求めていません。ただし、自分が専任の宅建士に就任するには宅建士証が必要で、その前提となる資格登録には2年以上の実務経験または登録実務講習の修了が要件となります(18条1項)。また、物件調査、重要事項説明書の作成、トラブル対応といった業務は、経験がなければ精度が上がりません。法律上可能であることと、事業として安全であることは別です。

    一人でも開業できますか

    できます。自分自身が専任の宅建士となれば、31条の3の設置義務を満たせます。ただし、専任性が求められるため、他社に勤めながら片手間で運営するという形は原則として認められません。従業員を採用して業務に従事する者が6人になれば、専任の宅建士は2人必要になります。

    自宅を事務所にできますか

    一律に禁じられてはいません。生活空間と業務空間が明確に区分され、独立した出入口があり、来客を居住スペースを通さずに応対できることなどが問われます。加えて、賃貸借契約や管理規約で事務所利用が禁じられていないかという別の確認も必要です。運用に幅があるため、物件を決める前に管轄の窓口へ相談してください。

    保証協会はどちらを選べばよいですか

    全国宅地建物取引業協会連合会と全日本不動産協会のいずれかを選びます。制度上の効果、すなわち営業保証金の供託が免除されることと分担金の額は、どちらも同じです。異なるのは入会金や年会費、地域団体が提供する研修や相談体制といった運営面で、これらは団体や地域によって差があります。加入を検討する団体に直接確認して比較してください。

    独立と勤務のどちらが有利ですか

    制度としてどちらが有利ということはなく、負うリスクと得られる裁量が違うだけです。勤務なら会社が免許、保証金、備え付け義務を負担しますが、独立すればすべて自分の責任になり、その代わり扱う案件も報酬の配分も自分で決められます。他の進路との比較は宅建士の転職先も参照してください。

    免許、営業保証金、保証協会、事務所の備え付け義務といった論点は、アプリの宅建業法の分野別演習で繰り返し確認できます。

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