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債権の消滅原因|条文の配置で5つに数える

権利関係 読了 約31分

民法が債権の消滅の節に置いたのは弁済・相殺・更改・免除・混同の5つ。消滅時効が別の場所にある理由、担保がどうなるか、どこまで深追いすべきかを条文の配置から整理します。

目次

    この記事は、債権が消える原因を横断して並べ、それぞれがどう違うのかを条文の配置から整理するためのものです。弁済の細部は弁済と供託に、相殺の細部は債権譲渡と相殺に、消滅時効は時効の完成猶予と更新にあります。ここでは、どれがどう違うのかという地図の側を扱います。

    結論を先に述べます。民法は「債権の消滅」という節に、弁済、相殺、更改、免除、混同の5つだけを置いています。消滅時効はこの節に入っていません。そして5つのうち、宅建試験で本気で詰めるべきものは限られています。この記事の役割は、5つを同じ重さで暗記させることではなく、条文がどう配置されているかを示したうえで、どこに時間を使いどこを流すかを決められるようにすることです。

    民法が「債権の消滅」に置いたのは5つだけ

    節と款の構成を見る

    民法第3編「債権」第1章「総則」の第6節が「債権の消滅」です。その中は5つの款に分かれています。

    第1款が弁済、第2款が相殺、第3款が更改、第4款が免除、第5款が混同。これで終わりです。第7節はもう「有価証券」に移ります。

    さらに第1款の弁済は、3つの目に細分されています。第1目が総則、第2目が弁済の目的物の供託、第3目が弁済による代位です。

    つまり民法の設計では、供託は独立した消滅原因ではなく弁済の一形態として置かれ、弁済による代位も弁済の款の中にあります。「弁済・供託・相殺・更改・免除・混同の6つ」と数える整理を見かけますが、条文の配置に従えば5つです。供託は弁済の中にあります。

    消滅時効がこの節にない意味

    消滅時効は債権を消滅させます。それでも第6節には入っていません。消滅時効は第1編「総則」第7章「時効」に置かれ、166条が期間を、145条が援用を定めています。

    配置が違うのは、性質が違うからです。第6節の5つは、いずれも債権の内容や当事者の行為に着目した消滅原因です。弁済は約束どおりの給付があった、相殺は互いに債務を負っている、更改は当事者が別の債務に置き換えた、免除は債権者が要らないと言った、混同は債権者と債務者が同じ人になった。どれも、その債権をめぐって何かが起きています。

    これに対して消滅時効は、時間の経過という外側の事情によって消滅させます。しかも145条により、当事者が援用しなければ裁判所はこれによって裁判ができません。時効が完成しただけでは債権は当然には消えません。他の5つには、こうした援用という手続がありません。

    「債権の消滅原因を挙げよ」と問われたときに時効を挙げるのは実質として正しいのですが、条文の配置としては別枠だと知っておくと、時効だけ性質が違うことを取り違えません。

    弁済による代位は「消えない」ための規定である

    もう一つ、配置の妙があります。弁済による代位は、弁済の款の第3目に置かれています。ところがその内容は、債権が消えないという話です。

    499条は「債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する」と定め、501条1項は、代位した者が「債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる」としています。弁済があったのに、債権とその担保が代位者に移って存続します。

    債権の消滅の節の中に、債権が消えない場面の規定が置かれている。この違和感は、代位が誰との関係での話かを考えると解けます。債務者と本来の債権者の関係では、弁済によって債権は満足されています。しかし弁済したのが第三者であれば、その第三者は債務者に対して求償権を持ちます。その求償を確実にするために、消えたはずの債権を担保つきで第三者に移す、というのが代位です。

    この論点にどこまで時間をかけるか

    5つの重みは同じではない

    宅建試験の権利関係は、満点を狙う科目ではありません。取れるところを確実に取り、深追いしない範囲をあらかじめ決めることが前提になります。この立場は権利関係の全体像で述べたとおりです。債権の消滅原因も、同じ考え方で配分します。

    弁済と相殺は、要件が細かく、しかも2020年4月1日施行の改正で内容が変わった箇所が複数あります。ここは詰める価値があります。

    更改、免除、混同は、条文が短く、効果を知っていればほぼ足ります。更改は513条から518条まで6か条しかなく、うち2か条は削除されています。免除は519条の1か条、混同は520条の1か条です。この3つに弁済と同じ時間をかけるのは配分として誤りです。

    到達目標を決める

    現実的な到達目標は次のとおりです。

    弁済については、第三者弁済の474条の4項構造と、478条の受領権者としての外観を有する者に対する弁済を、条文どおりに言えること。相殺については、505条の相殺適状と506条2項の遡及効、509条の禁止範囲を言えること。この2つは弁済と供託債権譲渡と相殺で詰めてください。

    更改・免除・混同については、それぞれ「消える」という効果と、担保や保証がどうなるかを言えれば足ります。この記事では、そこを中心に書きます。

    代物弁済と弁済による代位は、改正で条文の作りが変わったので、変わった点だけを押さえます。

    弁済 ― 473条は改正で新設された

    効果を定める条文が置かれた

    473条は、次のように定めています。債務者が債権者に対して債務の弁済をしたときは、その債権は、消滅する。

    当たり前のことを書いた条文に見えますが、この条文は2020年4月1日施行の改正で新設されたものです。改正前の473条は「無記名債権の譲渡における債務者の抗弁の制限」という、まったく別の内容の条文でした。改正前の民法には、弁済によって債権が消滅するという当然の効果を定めた条文が置かれていなかったのです。

    置かれていなかったからといって、弁済で債権が消えないという解釈があったわけではありません。あまりに当然なので明文がなかっただけです。改正は、こうした自明の前提を条文の形にする作業を各所で行っています。改正全体の見取り図は民法改正の要点にあります。

    弁済がもたらすのは消滅だけではない

    弁済をした者は、486条1項により、弁済と引換えに受取証書の交付を請求できます。2項は、その受取証書の交付に代えて内容を記録した電磁的記録の提供を請求できるとしており、こちらは改正で加わった規定です。ただし、弁済を受領する者に不相当な負担を課すものであるときは請求できません。

    487条は、債権に関する証書がある場合において、全部の弁済をしたときは、その証書の返還を請求できると定めています。受取証書は一部弁済でも請求できるのに対し、債権証書の返還は全部の弁済をしたときに限られる、という差があります。

    弁済の場所は484条が定める

    484条1項は、別段の意思表示がないときは、特定物の引渡しは債権発生の時にその物が存在した場所において、その他の弁済は債権者の現在の住所においてしなければならないと定めています。金銭債務は「その他の弁済」にあたるので、債権者の現在の住所が原則です。持参債務が原則だと言われるのはこの条文によります。

    2項は、法令または慣習により取引時間の定めがあるときは、その取引時間内に限り弁済をし、または弁済の請求をすることができるとしています。この2項も改正で加わりました。

    第三者弁済は4項構造になった

    474条は、改正でもっとも構造が変わった条文の一つです。

    改正前は2項しかありませんでした。1項が「債務の弁済は、第三者もすることができる。ただし、その債務の性質がこれを許さないとき、又は当事者が反対の意思を表示したときは、この限りでない」、2項が「利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない」です。

    現在は4項構造です。1項は「債務の弁済は、第三者もすることができる」とだけ定めます。2項は「弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りでない」。3項は「前項に規定する第三者は、債権者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときは、この限りでない」。4項が、性質上第三者弁済を許さない場合と、当事者が禁止・制限の意思表示をした場合の適用除外です。

    変わった点は3つあります。第一に、「利害関係を有しない」が「弁済をするについて正当な利益を有する者でない」という表現に改められました。第二に、2項にただし書が加わり、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは弁済が有効になります。第三に、3項が新設され、債権者の意思に反する弁済も原則としてできないことになりました。

    改正前は債権者側の主観や意思が条文に出てこなかったので、この2つの新設は覚え直しが必要な箇所です。要件の詳細と当てはめは弁済と供託で扱います。

    478条は名前が変わった

    478条は、改正前は「債権の準占有者に対する弁済」という見出しでした。現在は「受領権者としての外観を有する者に対する弁済」です。

    条文は、受領権者以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有するものに対してした弁済は、その弁済をした者が善意であり、かつ、過失がなかったときに限り、その効力を有する、と定めています。括弧書きで受領権者を「債権者及び法令の規定又は当事者の意思表示によって弁済を受領する権限を付与された第三者」と定義しています。

    要件としての善意無過失は改正前後で変わっていません。変わったのは「債権の準占有者」という分かりにくい言葉が、外観への信頼という実質を表す言葉に置き換えられた点です。古い教材の用語で覚えていると、条文の文言を問う肢に対応できません。

    弁済による代位 ― 消えるのではなく移る

    499条と500条の役割が入れ替わった

    弁済による代位は、改正で条文の組み方が変わりました。

    改正前は、499条が「任意代位」で、債務者のために弁済をした者は、その弁済と同時に債権者の承諾を得て債権者に代位することができる、としていました。500条が「法定代位」で、弁済をするについて正当な利益を有する者は、弁済によって当然に債権者に代位する、としていました。承諾が要るかどうかで、2つの条文に分かれていたわけです。

    現在の499条は「債務者のために弁済をした者は、債権者に代位する」だけです。承諾は要件から外れました。正当な利益があろうとなかろうと、弁済すれば代位します。

    その代わり500条は「第四百六十七条の規定は、前条の場合(弁済をするについて正当な利益を有する者が債権者に代位する場合を除く。)について準用する」となりました。467条は債権譲渡の対抗要件の規定です。つまり、正当な利益を有する者でない者が代位する場合には、債務者への通知または債務者の承諾がなければ債務者その他の第三者に対抗できず、確定日付のある証書によらなければ債務者以外の第三者に対抗できません。

    整理すると、代位そのものには承諾が要らなくなり、対抗要件の問題として処理されるようになった、ということです。正当な利益を有する者は、対抗要件も不要です。

    代位の効果は担保が付いてくること

    501条1項は、代位した者が「債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使することができる」と定めています。抵当権が設定されていれば、その抵当権も代位者に移ります。抵当権の仕組みは抵当権の基本にあります。

    ただし501条2項が、権利行使の範囲を、代位者が自己の権利に基づいて債務者に対して求償できる範囲内に限定しています。代位は求償を確保するための道具なので、求償できる以上のものは取れません。

    3項は、第三取得者、物上保証人、保証人が複数いる場合の代位の割合を細かく定めています。ここは宅建試験の範囲を超えるので、深追いしないでください。

    代物弁済 ― 契約と給付の二段構え

    482条は諾成契約に改められた

    482条は、次のとおりです。弁済をすることができる者が、債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、その弁済者が当該他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。

    改正前の482条はこうでした。債務者が、債権者の承諾を得て、その負担した給付に代えて他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。

    違いは明確です。改正前は「承諾を得て他の給付をしたとき」と一体で書かれており、現実に給付をしなければ何も生じない要物契約と理解されていました。現在は「契約をした場合において」と「その給付をしたとき」が分けて書かれています。代物弁済の合意は契約として先に成立し、その後に給付がされたときに弁済と同一の効力が生じる、という二段構えです。

    したがって、代物弁済の合意だけでも契約としては有効に成立します。当事者は互いに義務を負います。ただし債務が消滅するのは、実際に他の給付がされた時点です。「代物弁済は要物契約である」という説明は改正前の理解なので、そのまま覚えていると条文の文言を問う肢を落とします。

    給付をしたとき、とは何を指すか

    不動産を代物弁済の目的物とする場合、「その給付をしたとき」が何を意味するかが問題になります。条文は給付の内容を定義していません。

    当事者間で所有権を移す合意をすれば物権変動としては足りるとしても、第三者との関係では177条の対抗要件が別に必要です。物権変動と対抗要件の関係は物権変動と対抗要件で扱っています。条文だけから一義的に決まる問題ではないので、宅建試験でここを細かく問われることは想定しにくく、深追いは不要です。

    更改との違い

    代物弁済と更改は、どちらも本来の給付とは違うものになる点で似ています。違いは、債務が一度消えて別の債務が立つかどうかです。

    代物弁済では、もとの債務がそのまま存続したうえで、別の給付によって満足されます。482条が「弁済と同一の効力を有する」と書いているとおり、弁済として扱われます。更改では、もとの債務が消滅して、新しい債務が発生します。513条が「従前の債務は、更改によって消滅する」と書いているとおりです。

    この違いは担保の帰趨に効いてきます。代物弁済は弁済なので、担保は目的を果たして消滅します。更改では、518条という特別の規定がなければ担保を新債務に持っていけません。

    供託 ― 弁済の一形態として置かれている

    供託した時に債権が消滅する

    494条1項は、弁済者は、弁済の提供をした場合において債権者がその受領を拒んだとき、または債権者が弁済を受領することができないときは、債権者のために弁済の目的物を供託することができるとし、「この場合においては、弁済者が供託をした時に、その債権は、消滅する」と定めています。2項は、弁済者が債権者を確知することができないときも同様とし、ただし弁済者に過失があるときは供託できないとしています。

    供託が弁済の款に置かれているのは、供託が債権を消滅させる点で弁済と同じ働きをするからです。495条1項は、供託を債務の履行地の供託所にしなければならないと定めています。

    弁済の提供だけでは消滅しない

    供託と混同されやすいのが弁済の提供です。492条は「債務者は、弁済の提供の時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる」と定めています。免れるのは責任であって、債権が消えるとは書かれていません。

    493条は提供の方法を定め、本文で「債務の本旨に従って現実にしなければならない」とし、ただし書で、債権者があらかじめその受領を拒み、または債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りるとしています。

    弁済の提供は債務不履行責任を免れさせるだけ、供託は債権を消滅させる。この違いが出題されます。同時履行の抗弁との関係は同時履行の抗弁権で扱っています。

    取戻しと担保の関係

    496条1項は、債権者が供託を受諾せず、または供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、弁済者は供託物を取り戻すことができるとし、この場合には供託をしなかったものとみなすと定めています。いったん消えた債権が復活するということです。

    ただし2項が「前項の規定は、供託によって質権又は抵当権が消滅した場合には、適用しない」としています。供託によって担保が消えてしまった後で供託を取り戻せるとすると、担保だけが失われた状態が生じるからです。供託の詳細は弁済と供託にあります。

    相殺 ― ただひとつ遡及効を持つ

    505条の相殺適状

    505条1項は、二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者はその対当額について相殺によってその債務を免れることができる、と定めています。ただし書で、債務の性質がこれを許さないときは相殺できないとしています。

    条文は「双方の債務が弁済期にあるとき」と書いていますが、自分が相殺をしかける側から見ると、受働債権すなわち自分が負っている債務については、期限の利益を放棄して弁済期を到来させることができます。したがって実際に必要なのは、自働債権が弁済期にあることです。相手方が持っている期限の利益を一方的に奪うことはできないので、自働債権の弁済期が来ていなければ相殺できません。

    2項は相殺禁止特約の規定で、改正で書きぶりが反転しました。改正前は「前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない」でした。現在は「当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる」です。第三者の保護が善意から善意無重過失に変わっています。

    506条2項の遡及効

    506条1項は、相殺は当事者の一方から相手方に対する意思表示によってすると定め、その意思表示には条件または期限を付することができないとしています。

    2項が重要です。前項の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。

    第6節の5つの消滅原因のうち、条文が明文で遡及効を定めているのは相殺だけです。弁済も更改も免除も混同も、効力が生じるのはその時点であって、過去には遡りません。

    遡及効があると何が変わるか。相殺適状が生じた時点で両方の債務が消えたことになるので、それ以降の利息や遅延損害金は発生しなかったことになります。相殺の意思表示が遅れても、遅れた期間の遅延損害金を払わされることはありません。

    508条も遡及効の考え方の延長にあります。時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は相殺をすることができる、という規定です。相殺適状にあった時点で当事者は決済されたと考えるのが自然なので、後から時効で消えても相殺を認めます。

    509条は禁止範囲が狭くなった

    509条は、改正で範囲が大きく変わりました。

    改正前は「債務が不法行為によって生じたときは、その債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない」でした。不法行為による損害賠償債務を受働債権とする相殺は、全面的に禁止されていました。

    現在は2つの号に限定されています。1号が「悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務」、2号が「人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)」です。さらにただし書で、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは禁止が及ばないとしています。

    したがって、過失による不法行為で物のみが損害を受けた場合の損害賠償債務は、受働債権として相殺できます。改正前の全面禁止を前提に作られた肢は誤りになります。

    511条も改正されており、1項が差押え前に取得した債権による相殺は対抗できることを明文化し、2項が差押え後に取得した債権でも差押え前の原因に基づいて生じたものであれば対抗できるとしています。相殺の詳細と債権譲渡との交差は債権譲渡と相殺にあります。

    更改 ― 6か条のうち2か条は削除されている

    513条の3類型

    513条は、当事者が従前の債務に代えて、新たな債務であって次に掲げるものを発生させる契約をしたときは、従前の債務は更改によって消滅すると定め、3つを列挙しています。1号が従前の給付の内容について重要な変更をするもの、2号が従前の債務者が第三者と交替するもの、3号が従前の債権者が第三者と交替するものです。

    改正前の513条は「当事者が債務の要素を変更する契約をしたときは、その債務は、更改によって消滅する」という書き方で、2項が条件付債務を無条件債務にした場合などを債務の要素の変更とみなす、と定めていました。「債務の要素」という抽象的な概念を使っていたわけです。

    現在は3類型を列挙する形になり、1号は「重要な変更」という基準に置き換えられました。改正前の「債務の要素の変更」という言葉で覚えていると、条文の文言と合いません。旧2項のみなし規定は削除されています。

    516条と517条は削除されている

    更改の款は513条から518条までですが、条文を引くと「第五百十六条及び第五百十七条削除」と書かれています。改正前にあった、更改前の債務に条件が付されていた場合などの規定が削除されました。

    条数だけ見ると6か条ありますが、実質は4か条です。分量としてはこの程度のものだと把握しておけば、更改に過剰な時間を使わずに済みます。

    514条 債務者の交替

    514条1項は、債務者の交替による更改は、債権者と更改後に債務者となる者との契約によってすることができるとし、更改は債権者が更改前の債務者に対してその契約をした旨を通知した時にその効力を生ずる、と定めています。

    もとの債務者は契約の当事者になりません。債権者と新債務者だけで成立し、もとの債務者には通知が届いた時点で効力が及びます。

    2項は、更改後の債務者は更改前の債務者に対して求償権を取得しないと定めています。新債務者が自分の意思で債務を引き受けた以上、もとの債務者に払えとは言えない、という趣旨です。

    515条 債権者の交替

    515条1項は、債権者の交替による更改は、更改前の債権者、更改後に債権者となる者および債務者の契約によってすることができると定めています。三者全員が当事者になる点が、514条と対照的です。

    2項は、債権者の交替による更改は確定日付のある証書によってしなければ第三者に対抗することができないとしています。467条2項が債権譲渡について定める第三者対抗要件と同じ発想です。

    518条 担保を移せるが、移せるのは質権と抵当権だけ

    更改は従前の債務を消滅させるので、その債務のために設定されていた担保も、原則として目的を失って消滅します。これを回避する規定が518条です。

    518条1項は、債権者(債権者の交替による更改にあっては、更改前の債権者)は、更改前の債務の目的の限度において、その債務の担保として設定された質権または抵当権を更改後の債務に移すことができると定め、ただし書で、第三者がこれを設定した場合にはその承諾を得なければならないとしています。

    2項は、この移転は、あらかじめまたは同時に更改の相手方(債権者の交替による更改にあっては、債務者)に対してする意思表示によってしなければならないとしています。この2項は改正で新設されました。改正前は主体が「更改の当事者」とされ、時期や方法の定めもありませんでした。

    ここで注意すべきなのは、518条が移せるとしているのが「質権又は抵当権」だけだという点です。保証は挙がっていません。

    免責的債務引受と比べると差がはっきりする

    対比すると分かりやすくなります。免責的債務引受について、472条の4第1項は、債権者は債務者が免れる債務の担保として設定された担保権を引受人が負担する債務に移すことができるとし、2項は、あらかじめまたは同時に引受人に対してする意思表示によってしなければならないとしています。ここまでは518条とほぼ同じ作りです。

    違いは3項です。前2項の規定は、債務者が免れる債務の保証をした者があるときについて準用する、とされています。つまり免責的債務引受では、保証も引受人の債務に移せます。しかも4項が、この場合の承諾は書面でしなければ効力を生じないと定め、5項が電磁的記録による承諾を書面によるものとみなしています。

    更改の518条には、これに対応する準用規定がありません。更改では保証を新債務に移せない、という結論になります。「更改すると担保も保証も消える。ただし質権と抵当権は518条で移せる」という形で覚えると、範囲を取り違えません。

    更改と似た制度との切り分け

    更改は、債務の同一性が失われる点で他の制度と区別されます。

    債権譲渡では、債権者が変わっても債権は同一のまま移転します。担保も付いていきます。免責的債務引受では、債務者が変わっても債務の同一性は保たれ、472条の4によって担保を移せます。単なる債務内容の変更、たとえば弁済期を延ばす合意では、同一の債務が存続するので担保も保証もそのままです。

    これらに対して更改だけが、従前の債務を消滅させて新たな債務を立てます。だからこそ担保を移すための特別な規定が必要になります。

    免除 ― 519条の1か条

    単独行為である

    519条は、債権者が債務者に対して債務を免除する意思を表示したときは、その債権は消滅する、と定めています。この条文は改正前後で変わっていません。

    条文が求めているのは債権者の意思表示だけです。債務者の承諾は要件になっていません。したがって免除は単独行為であり、債務者が拒んでも債権は消滅します。方式の定めもないので、口頭でも成立します。

    意思表示そのもののルールは意思表示の瑕疵で扱っています。

    保証と連帯債務への波及

    主たる債務が免除されれば、保証債務は付従性によって消滅します。保証は主たる債務がなければ存在できないからです。付従性の詳細は連帯債務と保証にあります。

    これに対して連帯債務者の一人に対する免除は、他の連帯債務者に影響しません。441条が相対的効力の原則を定め、438条(更改)、439条1項(相殺)、440条(混同)に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は他の連帯債務者に対して効力を生じないとしています。免除はこの3つの例外に含まれていないので、相対的効力にとどまります。

    改正前は免除に絶対的効力が認められていたので、ここは覚え直しが必要な箇所です。

    さらに445条が、連帯債務者の一人に対して債務の免除がされた場合においても、他の連帯債務者はその一人の連帯債務者に対し442条1項の求償権を行使することができると定めています。免除を受けた者も、他の連帯債務者からの求償までは免れません。債権者との関係で免れただけです。

    免除と放棄は同じではない

    免除は債権を消滅させる意思表示です。これに対して、たとえば期限の利益の放棄は、自分に有利な法的地位を手放すだけで、債権そのものは消えません。時効の利益の放棄も、時効による消滅の効果を主張しないという話であって、免除とは別の制度です。「放棄」という言葉が出てきたときに、何を放棄しているのかを確認する習慣をつけてください。

    混同 ― 520条と179条を並べる

    520条の本文とただし書

    520条は、債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は消滅する、と定め、ただし書で、その債権が第三者の権利の目的であるときはこの限りでないとしています。この条文も改正前後で変わっていません。

    典型的に問題になるのは相続です。債権者が債務者を相続した場合、または債務者が債権者を相続した場合には、債権と債務が同一人に帰属します。法人の合併でも同じことが起きます。相続の効果は相続の基本にあります。

    ただし書が働くのは、たとえばその債権に質権が設定されている場合です。混同で消滅させると質権者が害されるので、債権は消滅しません。

    179条との対比が理解を締める

    混同の規定は、物権にもあります。179条1項は、同一物について所有権及び他の物権が同一人に帰属したときは、当該他の物権は消滅すると定め、ただし書で、その物または当該他の物権が第三者の権利の目的であるときはこの限りでないとしています。2項は、所有権以外の物権及びこれを目的とする他の権利が同一人に帰属した場合について同じ処理をします。3項は、占有権については適用しないとしています。

    520条と179条1項は、本文もただし書もよく似た構造です。同一人に帰属したら消える、ただし第三者の権利の目的なら消えない。違いは、520条が消すのが債権であり、179条が消すのが所有権以外の物権である点です。

    179条3項が占有権を除外しているのは、占有権が事実状態に基づく権利で、所有権に吸収されるという発想になじまないからです。520条には、これに対応する除外がありません。

    賃借人が建物を買ったらどうなるか

    具体例で考えます。建物の賃借人がその建物を買い取った場合、賃借権はどうなるか。

    賃借権は債権です。買い取ったことで、賃借人は賃貸人たる地位も取得します。自分に対して建物を使わせろと請求する関係になるので、債権と債務が同一人に帰属し、520条本文により賃借権は消滅します。賃借権が物権であれば179条1項の問題になりますが、賃借権は債権なので520条の側で処理します。

    ただし、その賃借権が第三者の権利の目的になっているときは、ただし書によって消滅しません。適法な転貸がされていて転借人がいる場合が、その典型です。賃借権が消えると転借権の基礎が失われるので、転借人を害さないために消滅させない、という筋になります。賃貸借の基本構造は賃貸借契約の基本、借地借家法が絡む場面は借地借家法の全体像を参照してください。

    連帯債務者の一人との混同

    440条は、連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は弁済をしたものとみなすと定めています。

    「債権が消滅する」ではなく「弁済をしたものとみなす」と書かれている点が特徴です。弁済したものとみなされる結果、その連帯債務者は他の連帯債務者に対して負担部分に応じた求償ができます。混同を弁済に読み替えることで、求償の処理までまとめて片づけている条文です。

    458条により、この440条は連帯保証人について生じた事由にも準用されます。

    横断して比べる

    担保はどうなるか

    消滅原因ごとに、担保の運命が違います。ここが横断整理のいちばんの勘所です。

    弁済では、債権が満足されるので担保は目的を果たして消滅します。ただし第三者が弁済した場合には、499条・501条により債権と担保が代位者に移ります。消えるのではなく移る、という例外です。

    代物弁済は弁済と同一の効力なので、担保は消滅します。

    供託では、供託した時に債権が消滅するので担保も消滅します。496条2項が、供託によって質権または抵当権が消滅した場合には取戻しができないとしているのは、担保が消えたことを前提にした規定です。

    相殺では、対当額で債権が消滅するので、その範囲で担保も消滅します。

    更改では、従前の債務が消滅するので担保も消滅するのが原則です。518条により質権と抵当権だけは新債務に移せますが、保証は移せません。第三者が設定した担保を移すには承諾が要り、移転はあらかじめまたは同時にする意思表示によらなければなりません。

    免除では、債権が消滅するので担保も消滅します。主たる債務の免除は保証債務を消滅させます。

    混同では、債権が消滅するので担保も消滅します。ただし520条ただし書により、第三者の権利の目的である債権は消滅しません。

    消滅時効では、債権が消滅するので担保も消滅します。145条が援用権者に保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含めているのは、担保を提供している者に自分で援用させるためです。

    遡及効があるのは相殺だけ

    条文が明文で遡及効を定めているのは506条2項だけです。弁済、代物弁済、供託、更改、免除、混同は、いずれも効力が生じた時点から先の話です。

    「相殺適状の時に遡る」という結論を、相殺以外に持ち出す肢は誤りだと判断できます。

    意思表示が要るか、要るとして誰の意思表示か

    免除と相殺は単独行為です。一方の意思表示だけで効果が生じます。ただし相殺の意思表示には条件も期限も付けられません(506条1項後段)。

    更改と代物弁済は契約です。当事者の合意が必要です。更改のうち債務者の交替は債権者と新債務者の契約(514条1項)、債権者の交替は三者の契約(515条1項)と、当事者の組み合わせが違います。

    混同は法律上当然に生じます。誰の意思表示も要りません。

    消滅時効は、期間の経過だけでは足りず、145条の援用が必要です。

    弁済は、意思表示ではなく給付という事実行為によって効果が生じます。

    第三者の権利の目的であるときの扱い

    520条ただし書と179条1項ただし書は、いずれも「第三者の権利の目的であるとき」に消滅を否定します。混同という、当事者の意思と無関係に生じる消滅原因については、第三者を害さないための歯止めが条文に置かれている、という共通の発想です。

    他の消滅原因には、これに対応する一般的なただし書がありません。弁済や免除は当事者の行為によるものなので、第三者との関係は別の制度で処理されます。

    試験での出題ポイント

    改正前の条文で作られた肢

    もっとも狙われるのは、改正前の規律をそのまま書いた肢です。

    「不法行為に基づく損害賠償債務を受働債権とする相殺は、常に禁止される」は改正前の509条です。現在は悪意による不法行為と人の生命・身体の侵害に限定されています。

    「代物弁済は、現実に他の給付がされなければ契約として成立しない」は改正前の482条の理解です。現在は契約と給付が分けて書かれています。

    「弁済をするについて正当な利益を有しない第三者が債権者に代位するには、債権者の承諾を得なければならない」は改正前の499条です。現在は承諾ではなく対抗要件の問題です。

    「連帯債務者の一人に対する免除は、他の連帯債務者に対しても効力を生ずる」も改正前の規律です。現在は441条により相対的効力です。

    遡及効を他の制度に持ち込む

    「更改の効力は、更改の合意が可能になった時に遡って生ずる」「免除は債権発生時に遡って効力を生ずる」といった肢が作られます。遡及効の明文があるのは506条2項の相殺だけです。

    弁済の提供と供託を入れ替える

    「債権者が受領を拒んだ場合、債務者が弁済の提供をすれば債権は消滅する」は誤りです。492条が定めるのは債務不履行責任を免れることだけで、債権を消滅させるのは494条の供託です。

    更改の担保移転の範囲を広げる

    「更改をした場合、債権者は更改前の債務の担保として設定された質権、抵当権および保証を更改後の債務に移すことができる」という肢が考えられます。518条1項が挙げているのは質権と抵当権だけです。保証まで移せるのは、472条の4第3項がある免責的債務引受のほうです。

    混同のただし書を落とす

    「債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は必ず消滅する」は誤りです。520条ただし書により、その債権が第三者の権利の目的であるときは消滅しません。

    免除に承諾を要求する

    「免除には債務者の承諾が必要である」は誤りです。519条は債権者の意思表示だけを要件としています。

    消滅時効を他の消滅原因と同じ扱いにする

    「消滅時効の期間が経過すれば、援用がなくても債権は消滅する」は誤りです。145条により援用が必要です。時効の細部は時効の完成猶予と更新にあります。

    数字の入れ替え

    166条1項の5年と10年、2項の20年を入れ替える肢が出ます。1号が「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間」、2号が「権利を行使することができる時から十年間」です。主観的起算点が5年、客観的起算点が10年、という対応で覚えます。

    覚え方・整理の仕方

    まず「節に何が置かれているか」を言えるようにする

    弁済、相殺、更改、免除、混同。この5つを順に言えるようにしてください。順番は民法の款の順です。そのうえで、弁済の中に供託と代位が入っていること、時効は別の場所にあることを付け足します。

    条文の配置を覚えると、制度の数を取り違えません。「債権の消滅原因を7つ挙げよ」のような問いに対して、何を数えているのかを自分で判断できます。

    担保がどうなるかを一本の軸にする

    消滅原因を横断する軸を1つだけ選ぶなら、担保の帰趨です。

    原則はすべて「債権が消えれば担保も消える」です。例外は2つだけ。第三者が弁済したときは代位で移る(499条・501条)。更改のときは518条で質権と抵当権だけ移せる。この2つの例外を覚えれば、担保の問題は処理できます。

    遡及効は相殺の専用装置だと決める

    506条2項は相殺だけの規定です。「遡る」という言葉を見たら相殺を疑い、それ以外の制度で遡及が語られていたら誤りを疑う。この一対一対応で持っておくと速く判断できます。

    更改は「消して立てる」、引受と譲渡は「そのまま動かす」

    更改、免責的債務引受、債権譲渡は混ざりやすい3つです。更改だけが債務を消して新しい債務を立てます。免責的債務引受は債務者だけを差し替え、債権譲渡は債権者だけを差し替えますが、どちらも債務の同一性は保たれます。

    同一性が保たれるかどうかが、担保の扱いの差を生みます。同一性が保たれるなら担保はそのまま、消して立てるなら特別の規定がなければ担保は消える。この因果で覚えてください。

    混同は520条と179条をセットで唱える

    債権の混同が520条、物権の混同が179条。どちらも「同一人に帰属したら消える、ただし第三者の権利の目的なら消えない」という同じ骨格です。179条3項が占有権を外していることだけを付け足せば足ります。

    時間配分を先に決める

    更改・免除・混同は、この記事を1回読んで条文の効果を確認すれば終わりにしてください。繰り返し演習する対象は弁済と相殺です。権利関係で何を捨てるかの判断は権利関係の頻出論点も参考にしてください。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 代物弁済の合意をしただけでは契約は成立せず、現実に他の給付がされて初めて契約が成立する。○か×か。

    答えを見る ×。482条は「債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、その弁済者が当該他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する」と定めており、契約の成立と給付とを分けて書いています。合意の時点で契約は成立し、給付があった時点で弁済と同一の効力が生じます。改正前の482条は「債務者が、債権者の承諾を得て、その負担した給付に代えて他の給付をしたとき」と一体で書かれており要物契約と理解されていましたが、現在の条文は諾成契約の形になっています。

    Q2. 更改をした場合、債権者は、更改前の債務の担保として設定された質権、抵当権および保証を、更改後の債務に移すことができる。○か×か。

    答えを見る ×。518条1項が移せるとしているのは「質権又は抵当権」だけで、保証は挙がっていません。保証まで移せるのは免責的債務引受のほうで、472条の4第3項が同条1項・2項を保証人について準用し、4項がその承諾は書面でしなければ効力を生じないと定めています。更改の518条にはこれに対応する準用規定がありません。なお518条2項は、質権・抵当権の移転をあらかじめまたは同時に相手方への意思表示によってしなければならないと定めており、この2項は改正で新設されたものです。

    Q3. 過失による自動車事故で相手方の車両を損傷させた者は、その損害賠償債務を受働債権として、相手方に対して有する貸金債権と相殺することができる。○か×か。

    答えを見る ○。509条が相殺を禁止しているのは、1号の「悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務」と、2号の「人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務」の2つだけです。過失による物損はどちらにも当たらないので、受働債権として相殺できます。改正前の509条は「債務が不法行為によって生じたときは」と定めて不法行為債務を全面的に禁止していたので、改正前の知識で解くと誤ります。なお、被害者側から自分の損害賠償債権を自働債権として相殺することは、改正前から禁止されていません。

    Q4. 債権者が受領を拒んだため債務者が弁済の提供をした場合、その時点で債権は消滅する。○か×か。

    答えを見る ×。492条は「債務者は、弁済の提供の時から、債務を履行しないことによって生ずべき責任を免れる」と定めているだけで、債権の消滅までは定めていません。債権を消滅させるには供託が必要で、494条1項が「弁済者が供託をした時に、その債権は、消滅する」と定めています。なお496条1項により、債権者が供託を受諾せず、または供託を有効と宣告した判決が確定しない間は、弁済者は供託物を取り戻すことができ、この場合は供託をしなかったものとみなされます。ただし2項により、供託によって質権または抵当権が消滅した場合には取戻しができません。

    Q5. 連帯債務者の一人に対して債権者が債務を免除した場合、他の連帯債務者の債務も、その一人の負担部分の限度で消滅する。○か×か。

    答えを見る ×。441条は、438条(更改)、439条1項(相殺)、440条(混同)に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は他の連帯債務者に対して効力を生じないと定めています。免除はこの3つに含まれていないので相対的効力にとどまり、他の連帯債務者の債務は減りません。改正前は免除に絶対的効力が認められていたため、古い知識のままだと誤ります。さらに445条により、免除を受けた連帯債務者も、他の連帯債務者からの442条1項の求償までは免れません。

    まとめ

    民法が「債権の消滅」の節に置いているのは、弁済、相殺、更改、免除、混同の5つです。供託と弁済による代位は弁済の款の中にあり、消滅時効は総則の時効の章にあります。制度の数を数えるときは、条文の配置に戻ってください。

    5つを横断する軸として、まず担保の帰趨を持ってください。原則は「債権が消えれば担保も消える」で、例外は2つだけです。第三者が弁済したときは499条・501条により代位で移り、更改のときは518条により質権と抵当権だけを新債務に移せます。保証は518条に挙がっていないので移せません。免責的債務引受では472条の4第3項によって保証も移せるので、対比しておくと差がはっきりします。

    遡及効を明文で定めているのは506条2項の相殺だけです。他の消滅原因に遡及効を持ち出す肢は誤りです。

    改正で変わった箇所は、弁済と相殺に集中しています。474条が2項構造から4項構造になり、478条の名称が変わり、482条が諾成契約に改められ、499条・500条の役割が入れ替わり、509条の禁止範囲が狭まり、511条に2項が加わりました。更改は513条が3類型の列挙になり、518条に2項が新設されました。免除の519条と混同の520条だけは、条文が変わっていません。

    学習の配分としては、弁済と相殺に時間を使い、更改・免除・混同は条文の効果を確認する程度で構いません。更改は6か条のうち2か条が削除済みで実質4か条、免除と混同はそれぞれ1か条です。分量に見合った時間を割り当ててください。

    宅建試験AIブートラボのアプリでは、消滅原因ごとの効果と改正点を肢別に演習できます。改正前の規律で作られた肢を見抜けるかどうかが、この分野の分かれ目になります。

    読んだ内容を、権利関係の肢で確かめる

    民法・借地借家法・区分所有法など、条文だけでは判断しづらい論点は、過去問の肢で覚えるのが最短です。

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