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連帯債務と保証|条文構造から違いを導く

権利関係 読了 約37分

連帯債務と保証債務を、対比表ではなく条文構造から解説。2020年施行の債権法改正で相対的効力に変わった請求・免除・時効、求償の範囲、個人根保証の極度額を現行条文で整理します。

目次

    この記事は、権利関係のうち多数当事者の債権債務関係、すなわち連帯債務と保証債務を扱います。科目全体のどこに位置する論点かは「権利関係の全体像」を先に見てください。債務不履行そのものの要件効果は「債務不履行と解除」に、抵当権などの物的担保は「抵当権の基本」に分けてあります。

    この分野は、2020年4月1日に施行された債権法改正の影響を最も強く受けた領域のひとつです。改正前の教材は、連帯債務者の一人に対する履行の請求・免除・時効の完成に絶対的効力を認めていました。現行法はいずれも相対的効力に変えています。正誤がそのまま反転する論点であり、古い解説と混ざったまま覚えていると失点します。加えて、条番号そのものが改正で付け替わった箇所があるため、番号だけを暗記していると現行条文と対応しなくなります。

    そしてもうひとつ、この記事が取らない方法があります。連帯債務と保証を対比表で並べて覚える方法です。抗弁があるかないか、絶対的効力かどうかを行と列で暗記すると、選択肢が少し角度を変えただけで対応できなくなります。この記事は、「複数の人が同じ債務を負う」という一つの状況に、なぜ法が二つの別々の制度を用意したのかから出発します。構造の違いさえつかめば、抗弁の有無も、効力の及び方も、求償の仕組みも、その場で導けます。

    出発点は分割債務 ― 427条が原則である

    数人いれば全額請求できる、わけではない

    多数当事者の債権債務を考えるとき、最初に置くべき条文は連帯債務でも保証でもなく、427条です。

    「数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。」

    債務者が3人いれば、原則として各自が3分の1ずつを負うだけです。債権者は誰か1人に全額を請求することはできません。これが分割債務の原則であり、多数当事者関係のデフォルトです。

    この原則は、債権者にとって不都合です。3人のうち1人が無資力になれば、その3分の1は回収できません。債権者は残る2人に「あの人の分も払え」とは言えない。だからこそ、原則を破って全額を請求できる仕組みが必要になります。連帯債務も保証も、427条の分割原則を破るために存在する制度であるという位置づけを、まず持ってください。

    原則を破るには法令か意思表示が要る

    436条が、その第一の破り方を定めます。

    「債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。」

    読み取るべき点が三つあります。第一に、連帯債務は当然には発生しません。「法令の規定又は当事者の意思表示」が必要です。数人が一緒に借りたというだけでは、意思表示がなければ分割債務です。第二に、対象は性質上可分な債務に限られます。第三に、債権者は誰に対しても、同時にでも順次にでも、全部でも一部でも請求できます。1人に全額を請求してから別の1人にも全額を請求することが妨げられません(もちろん二重に受け取ることはできません)。

    不可分債務という第三の類型

    性質上不可分な債務については430条が受け皿になります。「第四款(連帯債務)の規定(第四百四十条の規定を除く。)は、債務の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債務者があるときについて準用する。」

    不可分債務には連帯債務の規定がほぼそのまま準用され、混同の440条だけが除かれます。混同で弁済したものとみなしてしまうと、不可分な給付が現実に行われないまま債務が消えることになるからです。宅建では、共有物の引渡義務や、共同賃借人の賃料以外の義務などの文脈で顔を出します。共有関係そのものは「共有」で扱っています。

    法が二つの制度を用意した理由

    横並びの連帯債務、縦につながる保証

    427条を破る方法は二つあります。債務者を横に並べて全員に全額を負わせる方法と、主たる債務者の後ろに別の人を縦に立たせる方法です。前者が連帯債務、後者が保証です。

    連帯債務では、A・B・Cの3人が対等に全額の債務を負います。誰が主で誰が従ということはありません。3人とも自分自身の債務を負っており、たまたま給付の内容が同じで、誰かが払えば全員が免れるという関係にあるだけです。

    保証では、主たる債務者Aの債務がまず存在し、その履行を担保するために保証人Bが立ちます。446条1項が「保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う」と定めるとおり、Bの債務はAの債務があって初めて成立します。BはAの債務を肩代わりする立場であって、自分自身の利益のために債務を負っているわけではありません。

    付従性があるかないかが、すべての違いを生む

    この構造の違いから出てくる最大の帰結が、付従性の有無です。

    保証債務は主たる債務に従います。主たる債務が成立しなければ保証債務も成立せず、主たる債務が消滅すれば保証債務も消滅し、主たる債務より重い保証は認められません。保証人はいわば主たる債務の影であり、影は本体より大きくなれない。

    連帯債務には付従性がありません。各自の債務は独立しています。だから437条が「連帯債務者の一人について法律行為の無効又は取消しの原因があっても、他の連帯債務者の債務は、その効力を妨げられない」と定めます。A・B・Cのうち、Aが制限行為能力者で契約を取り消したとしても、B・Cの債務はそのまま残ります。これは保証では起こりません。主たる債務が取り消されれば、付従性により保証債務も消滅するからです。行為能力の制限については「制限行為能力者」、意思表示の瑕疵は「意思表示」で扱っています。

    以下で扱う論点は、ほぼすべてこの一点から導けます。抗弁があるのはなぜか。効力がどこまで及ぶのか。求償の相手は誰か。「これは横並びの話か、縦の話か」を毎回自問するのが、この分野の最も確実な解き方です。

    実務でどう使い分けられているか

    連帯債務は、共同で物を買った買主が代金債務を負う場面や、共同で借り入れた場合などに現れます。宅建の文脈では、複数人が共同で不動産を購入したときの売買代金債務が典型です。

    保証、とりわけ連帯保証は、金銭の貸付けと賃貸借に集中します。金融機関の融資では連帯保証が標準であり、不動産の賃貸借契約でも連帯保証人を求める慣行が根強く残っています。賃貸借契約の連帯保証は、後述する個人根保証の極度額規制が正面から効く場面です。賃貸借契約全体の注意点は「賃貸借契約の注意点」で扱っています。

    連帯債務 ― 一人に生じた事由はどこまで及ぶか

    441条が原則、438条・439条・440条が例外

    連帯債務で最も出題される論点が、連帯債務者の一人について生じた事由が他の連帯債務者に影響するかどうかです。ここは条文の建て付けを正確につかむ必要があります。

    441条本文は次のとおりです。「第四百三十八条、第四百三十九条第一項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の一人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。」

    原則は相対的効力です。そして絶対的効力が認められるのは、条文が名指しした438条(更改)、439条1項(相殺)、440条(混同)だけです。441条は「これ以外は及ばない」という書き方をしているので、列挙されていない事由はすべて相対的効力になります。ここを押さえれば、個別の事由を一つずつ暗記する必要はありません。

    弁済 ― 列挙にないのに絶対的効力である理由

    ここで一つ引っかかる点があります。弁済は441条の列挙に入っていません。では弁済は相対的効力なのか。もちろん違います。

    弁済によって債権者は満足を受け、債権そのものが消滅します。債権が消えれば、その債権を担保していた他の連帯債務者の債務も存在しえません。これは「一人について生じた事由が他に及ぶかどうか」という問題ですらなく、債権が消滅したという端的な事実の問題です。442条1項が「連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たとき」という前提で求償を定めていることが、弁済に共同の免責効があることを条文上示しています。代物弁済や供託も同じ理屈です。弁済そのものの仕組みは「弁済と供託」で扱っています。

    絶対的効力を「債権者が実際に満足を受けたか、または受けたのと同視できるか」で判断すると、438条・439条・440条がなぜ例外なのかも見通せます。

    更改(438条)

    「連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する。」

    更改は旧債務を消滅させて新債務を成立させる契約です。旧債権が消滅する以上、その旧債権に基づく他の連帯債務者の債務も消滅します。債権者は新債務を得ているので満足を受けたのと同視できる、という構造です。

    相殺(439条)

    439条1項は「連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は、全ての連帯債務者の利益のために消滅する」と定めます。相殺は実質的に弁済と同じ効果を持つので、絶対的効力があります。

    重要なのは2項です。「前項の債権を有する連帯債務者が相殺を援用しない間は、その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる。」

    Aが債権者に対して反対債権を持っているのに相殺しない場合、B・CはAの負担部分の限度で履行を拒めるのであって、Aに代わって相殺できるわけではありません。「拒絶」であって「相殺」ではないという点が繰り返し問われます。改正前は他の連帯債務者が負担部分の限度で相殺を援用できるとされていましたが、現行法は履行拒絶権に改めました。相殺の一般的な要件は「債権譲渡と相殺」で扱っています。

    混同(440条)

    「連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は、弁済をしたものとみなす。」

    Aが債権者を相続したような場合、AがAに請求するという無意味な関係になるため、Aが弁済したものとみなします。弁済とみなされる以上、B・Cの債務も消滅し、AはB・Cに求償できます。

    履行の請求・免除・時効の完成は相対的効力に変わった

    改正前は、これら三つにも絶対的効力が認められていました。現行441条の列挙に入っていない以上、いずれも相対的効力です。この三つが改正の核心であり、古い教材との差が最も出る箇所です。

    履行の請求。債権者がAに請求しても、B・Cには効力が及びません。したがって、Aへの請求によってB・Cの消滅時効の完成猶予・更新は生じません。債権者がB・Cについても時効を止めたいなら、B・Cそれぞれに請求する必要があります。時効の完成猶予・更新の仕組みは「消滅時効」で扱っています。

    免除。債権者がAの債務を免除しても、B・Cの債務は減りません。改正前はAの負担部分の限度でB・Cも債務を免れましたが、現行法では免れません。債権者はB・Cに全額を請求できます。

    時効の完成。Aについて消滅時効が完成しても、B・Cの債務は残ります。B・Cは全額の支払義務を負い続けます。

    445条 ― 免除・時効完成でも求償は残る

    ここで見落とされやすいのが445条です。

    「連帯債務者の一人に対して債務の免除がされ、又は連帯債務者の一人のために時効が完成した場合においても、他の連帯債務者は、その一人の連帯債務者に対し、第四百四十二条第一項の求償権を行使することができる。」

    Aが免除を受け、あるいはAについて時効が完成したとします。Aは債権者との関係では債務を免れます。しかしBが全額を弁済したとき、BはAに対して求償できます。Aは対外的には解放されても、内部関係では負担部分を負い続けるということです。

    免除・時効完成を相対的効力にしたことと、この445条はセットで理解する必要があります。相対的効力にした結果、他の連帯債務者が全額を負担することになる。その負担を内部で調整する道を445条が残している。債権者との関係(対外関係)と、連帯債務者どうしの関係(内部関係)を分けて考えるのが、この分野の基本姿勢です。

    441条ただし書 ― 合意で絶対的効力にできる

    441条にはただし書があります。「ただし、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。」

    つまり、請求・免除・時効の完成に絶対的効力を持たせる合意は有効です。ただし、その合意は債権者と「他の連帯債務者」との間でされる必要があります。効力を受ける側が合意の当事者になっていなければならない、という読み方です。「特約があっても絶対的効力にはできない」とする肢は誤りになります。

    連帯債務者間の求償(442条〜443条)

    負担部分を超えなくても求償できる

    442条1項は、改正で明確化された重要な規定です。

    「連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額(その財産の額が共同の免責を得た額を超える場合にあっては、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。」

    負担部分を超えて弁済しなければ求償できない、というルールではありません。A・B・Cが900万円の連帯債務を負い負担部分が各300万円のとき、Aが90万円だけ弁済しても、AはBとCにそれぞれ30万円ずつ求償できます。免責を得た額に各自の負担割合を掛けるだけです。ここは「自己の負担部分を超えたときに限り求償できる」という肢が繰り返し出るので、条文の文言をそのまま覚えてください。

    括弧書きにも意味があります。代物弁済などで、支出した財産の額が消滅した債務額を上回った場合、求償の基礎になるのは消滅した債務額のほうです。自分が高く見積もった財産を渡したからといって、その分まで他人に請求はできません。

    求償の範囲

    442条2項は「前項の規定による求償は、弁済その他免責があった日以後の法定利息及び避けることができなかった費用その他の損害の賠償を包含する」と定めます。元本部分に加えて、免責の日以後の法定利息と、避けられなかった費用・損害が含まれます。

    なお、負担部分は当事者の合意で決まり、合意がなければ平等と解されます。427条が分割債務について等しい割合を定めていることと平仄が合いますが、負担部分はあくまで内部関係の取り決めであり、対外的には各自が全額の責任を負う点を混同しないでください。

    事前の通知を怠った場合(443条1項)

    弁済しようとする連帯債務者には、通知の負担が課されています。

    443条1項は、他の連帯債務者があることを知りながら、共同の免責を得ることを通知しないで弁済等をした場合、他の連帯債務者が債権者に対抗できる事由を持っていたときは、その負担部分について、その事由をもって求償者に対抗できると定めます。さらに、相殺をもって対抗したときは、求償を受けた側は債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求できます。

    Bが債権者に対する反対債権を持っていたのに、Aが黙って全額弁済して求償してきた。BはAに対し「自分は相殺できたのだから、その負担部分については払わない」と言える。そしてBは、消えたはずの自分の反対債権について、債権者に履行を請求できる。通知を怠った不利益をAに負わせ、Bの反対債権の価値を債権者に転嫁する構造です。

    事後の通知を怠った場合(443条2項)

    443条2項は、弁済等で共同の免責を得た連帯債務者が、他の連帯債務者があることを知りながらその旨の通知を怠ったため、他の連帯債務者が善意で弁済等をしたときは、後から弁済した者は自分の弁済を有効であったものとみなすことができると定めます。

    Aが弁済したのに黙っていたため、Bが知らずに二重に弁済した。Bは自分の弁済を有効とみなせるので、Aに求償できる立場に立てます。ここでも注意点は二つ。第一に、Bが善意であることが要件です。第二に、「みなすことができる」という形成権であって、当然にBの弁済が有効になるわけではありません。

    事前の通知と事後の通知は、どちらを怠るとどうなるかを取り違えやすい論点です。事前の通知を怠ると相手の抗弁を押しつけられ、事後の通知を怠ると相手の二重弁済が有効にされると整理します。

    保証債務 ― 付従性から導かれる性質

    契約の当事者は債権者と保証人である

    446条1項は「保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う」と定めます。

    見落とされやすいのが契約の当事者です。保証契約は債権者と保証人の間で締結されます。主たる債務者は当事者ではありません。したがって、主たる債務者の意思に反する保証も、主たる債務者に無断の保証も、契約としては有効に成立します。主たる債務者の関与が意味を持つのは、後述する求償の場面(委託の有無)です。

    書面性(446条2項・3項)

    446条2項は「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない」と定め、3項が電磁的記録によるものを書面とみなします。口頭の保証契約は無効です。

    これは意思表示の瑕疵の問題ではなく、要式行為としての定めです。保証は自分に利益がないまま他人の債務を負う契約であり、軽率に引き受けることを防ぐために形式が要求されています。「口頭でも保証の意思が明確なら有効」という肢は誤りです。

    保証債務の範囲(447条)

    447条1項は「保証債務は、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たるすべてのものを包含する」と定めます。特約がなくても、元本だけでなく利息や遅延損害金にも保証の効力が及びます。

    2項は「保証人は、その保証債務についてのみ、違約金又は損害賠償の額を約定することができる」と定めます。保証債務それ自体の不履行についての違約金を定めることは可能だ、という意味です。

    内容における付従性(448条)

    448条1項は「保証人の負担が債務の目的又は態様において主たる債務より重いときは、これを主たる債務の限度に減縮する」と定めます。契約が無効になるのではなく、主たる債務の限度まで縮減されるという処理です。

    2項は「主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない」と定めます。保証契約の後で債権者と主たる債務者が勝手に債務を重くしても、保証人には及びません。逆に、主たる債務が軽くなれば、付従性により保証債務も軽くなります。付従性は一方通行ではなく、上限として働くと理解してください。

    主たる債務者について生じた事由(457条)

    457条は付従性を具体化した条文で、三つの項がそれぞれ違う役割を持ちます。

    1項は「主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる」。債権者が主たる債務者に請求すれば、保証人についても時効が止まります。方向は主債務者から保証人への一方向です。

    2項は「保証人は、主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができる」。主たる債務者が同時履行の抗弁権や消滅時効を主張できるなら、保証人もそれを援用できます。同時履行の抗弁は「同時履行の抗弁権」で扱っています。

    3項は「主たる債務者が債権者に対して相殺権、取消権又は解除権を有するときは、これらの権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において、保証人は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる」。ここでも保証人ができるのは履行を拒むことであって、主たる債務者の取消権や解除権を代わりに行使することではありません。439条2項と同じ発想です。

    随伴性

    保証債務は主たる債権に随伴します。債権者が主たる債権を第三者に譲渡すれば、保証債務も譲受人に移転します。保証人の承諾は不要で、対抗要件は主たる債権の譲渡についての対抗要件(467条)に従います。債権譲渡の対抗要件は「債権譲渡と相殺」を参照してください。

    なお、根抵当権では元本確定前に随伴性がないという例外がありますが、これは物的担保に固有の話です。「根抵当権のしくみ」で扱っています。

    補充性 ― 二つの抗弁と分別の利益

    催告の抗弁(452条)

    452条は「債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない」と定めます。

    ただし書の二つの例外が問われます。主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、行方不明のとき。いずれも催告しても意味がないからです。

    検索の抗弁(453条)

    453条は「債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない」と定めます。

    要件は二つで、いずれも保証人の側が証明する責任を負います。第一に主たる債務者に弁済の資力があること。第二にその財産への執行が容易であること。資力があるだけでは足りず、執行の容易性まで示さなければなりません。遠隔地の不動産のように換価に手間がかかる財産では、この要件を満たしません。

    抗弁の効果は「拒める」だけである

    二つの抗弁について、効果を誤解しないでください。催告の抗弁も検索の抗弁も、保証債務を消滅させるものではありません。債権者に対して「まず主たる債務者へ」と主張して履行を拒めるだけです。債権者が催告や執行を済ませれば、保証人は結局支払わなければなりません。

    この「拒絶権にすぎない」という性質は、439条2項の履行拒絶権、457条3項の履行拒絶権と共通します。民法の抗弁は、消滅させるものと拒めるだけのものを区別するという視点を持つと、選択肢の言い回しの違いに気づけます。

    分別の利益(456条)

    保証人が複数いる場合を共同保証といいます。456条は「数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を負担したときであっても、第四百二十七条の規定を適用する」と定めます。

    427条が適用される、つまり分割されます。1,000万円の債務に保証人A・Bの2人がいれば、各自が500万円ずつの保証債務を負うにとどまります。これが分別の利益です。別々の機会に保証したとしても分割される、という点を456条は念のため明記しています。

    ここでも427条が顔を出しました。分割が原則で、それを破るには根拠が要るという構図は、多数当事者関係の全体を通じて一貫しています。

    連帯保証 ― 補充性を外した保証

    454条が消すもの

    454条は一文です。「保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない。」

    「前二条」とは452条と453条、すなわち催告の抗弁と検索の抗弁です。連帯保証人はこの二つを持ちません。債権者は主たる債務者に一切請求しないまま、いきなり連帯保証人に全額を請求できます。主たる債務者に十分な資力があっても関係ありません。

    分別の利益もない理由

    連帯保証人には分別の利益もありません。ただしこれは454条が定めていることではありません。456条が分別の利益を認めるのは、各保証人が分割された保証債務を負うことを前提としているからです。連帯保証人は主たる債務者と連帯して全額の債務を負担している以上、分割の前提を欠きます。したがって連帯保証人が複数いても、各自が全額の責任を負います。

    条文の位置づけを整理すると、催告・検索の抗弁は454条が明文で消し、分別の利益は連帯保証の性質上そもそも成り立たないという二段構えです。「454条が三つとも消している」と覚えていると、条文を問う肢で足をすくわれます。

    付従性は残っている

    ここが最も誤解されやすい点です。連帯保証も保証である以上、付従性は失われません。

    連帯保証で外れるのは補充性だけです。主たる債務が成立しなければ連帯保証債務も成立せず、主たる債務が消滅すれば連帯保証債務も消滅し、448条の縮減も働き、457条2項・3項の抗弁も使えます。主たる債務が時効消滅すれば、連帯保証人はそれを援用して責任を免れます。

    「連帯保証は連帯債務に近いから付従性がない」という理解は誤りです。連帯保証は保証の一種であり、連帯債務とは別の制度です。

    458条 ― 連帯保証人に生じた事由

    458条は「第四百三十八条、第四百三十九条第一項、第四百四十条及び第四百四十一条の規定は、主たる債務者と連帯して債務を負担する保証人について生じた事由について準用する」と定めます。

    連帯債務の規定が準用されるので、連帯保証人について生じた更改・相殺・混同は主たる債務者にも効力を生じ、それ以外は相対的効力になります。とりわけ、債権者が連帯保証人に請求しても、主たる債務者には効力が及びません。

    457条と458条の向きを取り違えない

    ここで457条と458条の関係を整理します。この二つは向きが逆です。

    457条1項は、主たる債務者について生じた時効の完成猶予・更新が保証人に及ぶと定めます。これは付従性の帰結で、通常の保証にも連帯保証にも当てはまります。債権者が主たる債務者に請求すれば、連帯保証人についても時効は止まります。

    458条は、連帯保証人について生じた事由が主たる債務者に及ぶかを定めます。原則は及ばない(441条準用)。債権者が連帯保証人に請求しても、主たる債務者の時効は止まりません。

    つまり主債務者から保証人への方向は通り、保証人から主債務者への方向は原則として通らない。この非対称は、主たる債務があって初めて保証債務があるという縦の構造から素直に出てきます。表で覚えると必ず取り違えますが、構造で考えれば間違えません。

    なお、改正前は連帯保証人への請求が主たる債務者にも効力を生じるとされていました。この点も改正で相対的効力に変わった箇所です。民法改正全体の一覧は「権利関係の民法改正まとめ」で扱っています。

    保証人の求償権 ― 「委託」が分岐点になる

    保証人が弁済すれば、主たる債務者に求償できます。ただしその範囲は一律ではありません。主たる債務者の委託を受けたか、受けていないか、さらに意思に反していたかで三段階に分かれます。

    委託を受けた保証人(459条)

    459条1項は、委託を受けた保証人が主たる債務者に代わって弁済等(条文はこれを「債務の消滅行為」と呼びます)をしたときは、そのために支出した財産の額の求償権を有すると定めます。支出額が消滅した主たる債務の額を超える場合は、消滅した額が上限です。2項が442条2項を準用するので、弁済日以後の法定利息と、避けられなかった費用その他の損害も求償の範囲に含まれます。

    連帯債務者間の求償と同じ扱いです。委託を受けた保証人は、主たる債務者から頼まれて保証したのだから、手厚く保護されます。

    弁済期前に弁済した場合(459条の2)

    委託を受けていても、弁済期より前に弁済した場合は扱いが変わります。459条の2第1項は、この場合の求償権を「主たる債務者がその当時利益を受けた限度」に絞ります。

    さらに2項は、求償の範囲に含まれる法定利息と費用損害を主たる債務の弁済期以後のものに限定し、3項は「第一項の求償権は、主たる債務の弁済期以後でなければ、これを行使することができない」と定めます。期限前に勝手に払われても、主たる債務者は期限の利益を失わない、という趣旨です。

    事前求償権(460条)

    460条は、委託を受けた保証人に限って、弁済する前に求償できる場合を三つ定めます。①主たる債務者が破産手続開始の決定を受け、かつ債権者がその破産財団の配当に加入しないとき。②債務が弁済期にあるとき(ただし、保証契約の後に債権者が主たる債務者に許与した期限は保証人に対抗できません)。③保証人が過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受けたとき。

    事前求償権は委託を受けた保証人だけの権利です。委託を受けていない保証人には認められません。

    委託を受けない保証人(462条1項)

    462条1項は「第四百五十九条の二第一項の規定は、主たる債務者の委託を受けないで保証をした者が債務の消滅行為をした場合について準用する」と定めます。

    準用先は459条の2第1項、すなわち「主たる債務者がその当時利益を受けた限度」です。基準時は債務の消滅行為をした時点になります。法定利息や費用損害は求償できません。

    主たる債務者の意思に反する保証人(462条2項)

    さらに絞られるのが、主たる債務者の意思に反して保証した者です。462条2項は「主たる債務者の意思に反して保証をした者は、主たる債務者が現に利益を受けている限度においてのみ求償権を有する」と定めます。

    1項との違いは基準時です。1項は弁済等をした「当時」、2項は「現に」、つまり求償の時点で利益が残っているかを見ます。弁済後に主たる債務者が反対債権を取得したような場合、2項ではその分が差し引かれます。同項後段は、主たる債務者が求償の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人が債権者に対してその相殺で消滅すべきであった債務の履行を請求できると定めています。

    「当時」と「現に」の一字違いが、委託なしと意思に反する場合を分けます。旧来の解説ではこの二つを「現に利益を受けた限度」とまとめてしまっている例が見られますが、条文は明確に書き分けています。

    通知を怠った場合(463条)

    463条は、連帯債務における443条に対応する規定で、三つの項があります。

    1項は、委託を受けた保証人があらかじめ通知しないで弁済等をしたとき、主たる債務者は債権者に対抗できた事由をもって保証人に対抗できると定めます。相殺で対抗した場合、保証人は債権者に対し、相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求できます。

    2項は、主たる債務者の側が債務の消滅行為をしたことを保証人に通知せず、そのため保証人が善意で二重に弁済したときは、保証人が自分の弁済を有効であったものとみなせると定めます。

    3項は、保証人が弁済した後に主たる債務者が弁済した場合について、保証人が主たる債務者の意思に反して保証をしたとき、または保証人が事後の通知を怠ったため主たる債務者が善意で弁済したときは、主たる債務者が自分の弁済を有効とみなせると定めます。意思に反する保証人は、通知を怠っていなくても不利に扱われるという点が特徴です。

    共同保証人間の求償(465条)

    465条1項は、数人の保証人があり、そのうちの一人が、主たる債務が不可分であるため、または各保証人が全額を弁済すべき旨の特約があるため、全額または自己の負担部分を超える額を弁済したときについて、442条から444条までを準用します。連帯債務者間の求償と同じ扱いです。

    2項は、それ以外の場合で互いに連帯しない保証人の一人が全額または自己の負担部分を超える額を弁済したときについて、462条を準用します。分別の利益がある共同保証人が、自分の負担部分を超えて払ってしまった場合の処理です。委託を受けない保証人と同じ扱いになるため、求償の範囲が狭くなります。

    個人根保証 ― 極度額がなければ契約が無効になる

    根保証とは何か

    465条の2第1項は次のとおりです。

    「一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。」

    通常の保証が特定の債務を対象とするのに対し、根保証は将来発生する不特定の債務をまとめて保証します。賃貸借契約の保証人が、これから発生するかもしれない未払賃料・原状回復費用・損害賠償をひとまとめに保証するのが典型です。

    極度額を定めなければ効力を生じない

    465条の2第2項が本命です。「個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。」

    3項は446条2項・3項を極度額の定めについて準用しており、極度額は書面または電磁的記録で定める必要があります。

    無効になるのは極度額の定めだけではありません。個人根保証契約そのものが効力を生じません。極度額を書かなかった保証契約は、まるごと使えなくなります。

    賃貸借の保証に及ぶことの意味

    改正前は、極度額の定めが要求されるのは貸金等根保証契約、つまり主たる債務に金銭の貸渡しや手形割引による債務が含まれるものに限られていました。改正後は個人根保証契約一般に拡大されています。

    宅建にとって決定的なのはここです。賃貸借契約の連帯保証は個人根保証契約に当たります。保証人が個人である以上、極度額を定めていない保証条項は無効です。「賃料の24か月分」のように、金額として確定できる形で定める必要があります。実務でこの点が漏れていると、いざというときに保証が使えません。敷金との関係は「敷金・礼金の扱い」、賃貸借の基本構造は「賃貸借」で扱っています。

    なお、保証人が法人であれば極度額の定めは不要です。家賃保証会社が保証する場合が典型で、465条の2は「保証人が法人でないもの」を対象としているためです。

    元本確定事由(465条の4)

    465条の4第1項は、個人根保証契約における元本の確定事由として次の三つを挙げます。①債権者が保証人の財産について金銭債権についての強制執行または担保権の実行を申し立てたとき(手続の開始があったときに限る)。②保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。③主たる債務者または保証人が死亡したとき。

    2項は、個人貸金等根保証契約についてさらに二つを加えます。①債権者が主たる債務者の財産について強制執行等を申し立てたとき(手続の開始があったときに限る)。②主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。

    主たる債務者の破産や主たる債務者への強制執行は、貸金等でない個人根保証では確定事由になりません。賃貸借の保証で借主が破産しても、それだけでは元本は確定しないということです。1項と2項のどちらに属するかを入れ替えた肢が出ます。

    1項3号の死亡は特に重要です。保証人が死亡すれば元本が確定するので、相続人はそれ以後に発生する債務まで保証する義務を負いません。確定時までに発生していた債務の保証債務は相続の対象になります。相続の一般的な扱いは「相続の基本」で確認してください。

    個人貸金等根保証契約の元本確定期日(465条の3)

    貸金等が含まれる個人根保証には、期間の上限があります。465条の3第1項は、元本確定期日の定めが契約締結の日から5年を経過する日より後に定められているときは、その定めは効力を生じないとします。2項は、元本確定期日の定めがない場合(1項で効力を生じない場合を含む)は、締結の日から3年を経過する日が元本確定期日になると定めます。

    3項は変更について、変更後の期日が変更日から5年を超えるときは効力を生じないとし、ただし元本確定期日の前2か月以内に変更する場合で、変更後の期日が変更前の期日から5年以内であればこの限りでないとします。

    5年と3年の二つの数字は、貸金等が含まれる場合に限った規律です。賃貸借の保証にはこの期日規制がありません。

    事業に係る債務の保証

    事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約、または主たる債務の範囲にそうした債務が含まれる根保証契約について、個人が保証人になるときは、465条の6第1項により、契約締結の日前1か月以内に作成された公正証書で保証意思を表示していなければ効力を生じません。同条3項により、保証人になろうとする者が法人である場合には適用されません。465条の9は、法人の理事・取締役・執行役等や議決権の過半数を有する者、個人事業主の共同事業者や事業に現に従事している配偶者を適用除外としています。

    また465条の10第1項は、主たる債務者が事業のために負担する債務の保証を個人に委託するときに、財産及び収支の状況、主たる債務以外の債務の有無・額・履行状況、他に提供する担保の内容を情報提供する義務を課します。2項により、これを怠りまたは事実と異なる情報を提供したために保証人が誤認し、債権者がそのことを知りまたは知ることができたときは、保証人は保証契約を取り消せます。

    これらは事業性融資に固有の規律で、宅地建物取引の場面で問われる頻度は高くありません。銀行実務との関係は「銀行員が宅建を取る意味」で扱っています。

    債権者から保証人への情報提供義務(458条の2・458条の3)

    改正では、債権者の側にも情報提供の義務が課されました。

    458条の2は、委託を受けて保証をした保証人から請求があったときは、債権者は遅滞なく、主たる債務の元本および利息・違約金・損害賠償その他従たるものについての不履行の有無、これらの残額、そのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならないと定めます。委託を受けない保証人には請求権がありません。また、この規定に法人保証人を除外する定めはありません。

    458条の3第1項は、主たる債務者が期限の利益を喪失したとき、債権者は保証人に対し、その喪失を知った時から2か月以内にその旨を通知しなければならないと定めます。2項は、通知を怠った場合、債権者は期限の利益を喪失した時から通知を現にするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く)の履行を請求できないとします。3項により、保証人が法人である場合には適用されません。

    二つの条文の違いを整理します。458条の2は委託の有無で線を引き、法人保証人も対象に含みます。458条の3は法人かどうかで線を引き、委託の有無は問いません。起算点も違い、通知義務の起算点は「喪失を知った時」ですが、請求できなくなる遅延損害金の起算点は「喪失した時」です。細かいようですが、ここを入れ替えた肢が作れます。

    試験での出題ポイント

    改正前の枠組みで作られた肢

    最も多いのが、履行の請求・免除・時効の完成に絶対的効力を認める肢です。「連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても時効の完成猶予の効力を生ずる」「連帯債務者の一人に対する免除は、その者の負担部分について他の連帯債務者の利益にもなる」。いずれも現行法では誤りです。441条の列挙に立ち返って判断します。

    同様に、連帯保証人への請求が主たる債務者に効力を及ぼすとする肢も誤りです。458条が441条を準用しているためです。

    445条を落とした肢

    免除・時効完成が相対的効力になったことだけを覚えていると、「免除を受けた連帯債務者に対しては、他の連帯債務者は求償することができない」という肢に引っかかります。445条があるので、求償はできます。対外関係と内部関係を分けて考える習慣がここで効きます。

    「拒める」を「消滅する」にすり替える肢

    439条2項、457条3項、452条、453条は、いずれも履行を拒めるだけの規定です。これを「債務は消滅する」「相殺することができる」「取り消すことができる」と書き換えた肢が定番です。条文の語尾が「拒むことができる」であることを覚えてください。

    連帯保証の付従性を否定する肢

    「連帯保証人は主たる債務者と連帯して債務を負うから、主たる債務が時効消滅しても保証債務は消滅しない」。誤りです。連帯保証で外れるのは補充性だけで、付従性は残ります。

    逆方向に、「連帯債務者の一人について取消原因があれば、他の連帯債務者の債務も効力を失う」という肢も誤りです。437条により影響しません。付従性があるのは保証、ないのが連帯債務という切り分けを毎回確認します。

    求償の範囲をずらす肢

    「連帯債務者は、自己の負担部分を超えて弁済しなければ求償できない」は442条1項に反します。「委託を受けない保証人は、常に求償できない」も誤りで、462条1項により当時の利益の限度で求償できます。「委託を受けない保証人も法定利息を求償できる」は誤りです。

    個人根保証の肢

    「極度額の定めを欠く個人根保証契約は、極度額の定めのみが無効となる」は誤りで、契約全体が効力を生じません。「賃貸借契約の保証には極度額の定めは不要」も誤りです。「法人が根保証人となる場合にも極度額が必要」も誤りです。

    元本確定事由では、主たる債務者の破産・主たる債務者への強制執行が貸金等根保証にしか適用されない点を入れ替えた肢に注意します。

    分別の利益の根拠を問う肢

    「454条により、連帯保証人は催告の抗弁・検索の抗弁・分別の利益を有しない」という肢は、結論としては正しくても、条文の指し方としては不正確です。454条が消しているのは452条・453条の二つだけです。条文番号を絡めて問われたときに備えて、分別の利益が456条の問題であることを押さえておいてください。

    権利関係全体の頻出論点は「権利関係の頻出論点」で扱っています。

    覚え方・整理の仕方

    最初の分岐は「付従性があるか」

    問題文を読んだら、まず登場人物の関係が横並びか縦かを判定します。「AとBが連帯して」なら横並びの連帯債務。「Aの債務をBが保証」なら縦の保証。ここを間違えると以降がすべて狂います。

    横並びなら付従性がなく、437条により他人の取消しは影響しません。縦なら付従性があり、主たる債務の運命に従います。連帯保証は「縦だが補充性だけ外れている」と位置づけます。連帯という言葉が同じでも、連帯債務と連帯保証はまったく別の制度です。

    絶対的効力は「債権者が満足したか」で判断する

    438条・439条1項・440条を語呂で覚えることもできますが、より確実なのは債権者が実際に満足を受けたかどうかで考える方法です。

    弁済・代物弁済・供託は満足。更改は旧債権が消えて新債権を得るので満足と同視。相殺は実質的な弁済なので満足。混同は弁済したものとみなされるので満足。満足していれば他の債務者も解放される。

    一方、請求・免除・時効の完成は、債権者が一円も受け取っていません。だから他の債務者は解放されない。この考え方なら、条文を丸暗記しなくても判断できます。

    求償は「委託」「意思に反するか」「弁済期前か」の三つの目盛り

    保証人の求償は、次の順で目盛りが下がると整理します。

    委託を受けた保証人が弁済期後に弁済すれば、459条により支出額+法定利息+費用損害。委託を受けた保証人が弁済期前に弁済すれば、459条の2により当時利益を受けた限度、しかも弁済期まで行使できない。委託を受けない保証人は、462条1項により当時利益を受けた限度。主たる債務者の意思に反する保証人は、462条2項により求償時に現に利益を受けている限度。

    「当時」と「現に」の一字が、委託なしと意思に反する場合を分ける目印です。

    通知は「事前か事後か」で結果が決まる

    443条(連帯債務)と463条(保証)は同じ発想でできています。

    事前の通知を怠ると、相手が持っていた抗弁を押しつけられます。相殺できたはずの人に「その分は払わない」と言われる。事後の通知を怠ると、相手の二重弁済が有効とみなされます。

    条文の並びも、1項が事前、2項が事後です。463条だけ3項があり、そこでは意思に反する保証人が通知の有無を問わず不利に扱われます。

    数字は「誰を守る規定か」で仕分ける

    458条の3の2か月は保証人を守る通知期限で、破れば債権者が遅延損害金を失います。465条の6の1か月以内の公正証書は保証人の意思を確認するための期間制限です。465条の3の5年・3年は個人貸金等根保証の保証人が無期限に拘束されないための上限です。

    いずれも保証人保護のための期間である点が共通します。改正が保証人保護に大きく傾いた分野だと理解すれば、数字の向きを取り違えにくくなります。

    改正論点は「前はこうだった」まで覚える

    この分野では、改正前の結論まで覚えておくと有利です。過去問や市販の解説には改正前の枠組みで書かれたものが残っており、それが誤りだと自分で判定できる必要があるからです。

    請求・免除・時効の完成が絶対的効力だったこと。連帯保証人への請求が主たる債務者に及んだこと。相殺について他の連帯債務者が援用できたこと(現在は履行拒絶権)。極度額の規制が貸金等根保証に限られていたこと。「前はこうだったが、今はこう」という形で対にして覚えると、古い記述に出会っても揺らぎません。

    理解度チェッククイズ

    Q1. A・B・Cが債権者Dに対して900万円の連帯債務を負い、負担部分は各300万円である。DがAに対して債務の全額を免除した場合、B・Cが負う債務はそれぞれ600万円に減額される。


    答えを見る
    ×。免除は441条の列挙(438条・439条1項・440条)に含まれないため、相対的効力しかありません。Aへの免除はB・Cに影響せず、B・Cは引き続き900万円の債務を負います。改正前は免除に絶対的効力が認められ、Aの負担部分の限度でB・Cも債務を免れましたが、現行法では免れません。なお、Bが900万円を弁済した場合、445条により、免除を受けたAに対しても442条1項の求償権を行使できます。債権者との対外関係で解放されても、内部の負担部分は残るという構造です。

    Q2. 連帯債務者の一人が債権者に対して反対債権を有するにもかかわらず相殺を援用しない場合、他の連帯債務者は、その連帯債務者の負担部分の限度で相殺を援用することができる。


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    ×。439条2項は「その連帯債務者の負担部分の限度において、他の連帯債務者は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる」と定めており、認められるのは履行拒絶権であって相殺の援用権ではありません。改正前は他の連帯債務者が相殺を援用できるとされていましたが、現行法は履行を拒めるだけに改めています。457条3項も同じく「履行を拒むことができる」という書き方で、保証人が主たる債務者の相殺権・取消権・解除権を代わりに行使することは認めていません。

    Q3. 連帯保証人には催告の抗弁権と検索の抗弁権がないため、主たる債務が時効により消滅した場合であっても、連帯保証人は債権者に対して弁済しなければならない。


    答えを見る
    ×。454条が連帯保証人から奪うのは452条・453条の二つの抗弁、すなわち補充性だけです。連帯保証も保証である以上、付従性は失われません。主たる債務が時効により消滅すれば、付従性によって連帯保証債務も消滅します。457条2項も、保証人は主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗できると定めています。連帯保証を連帯債務と同一視すると誤る典型例です。

    Q4. 主たる債務者Aの委託を受けずに、かつAの意思に反してBがAの債務を保証し、Bが債権者に弁済した場合、Bは弁済した全額に加えて弁済日以後の法定利息をAに求償することができる。


    答えを見る
    ×。462条2項により、主たる債務者の意思に反して保証をした者は、「主たる債務者が現に利益を受けている限度」においてのみ求償権を有します。基準時は求償の時点であり、弁済額の全額ではありません。法定利息や費用損害の求償も認められません。なお、委託は受けていないが意思に反してはいない保証人については、462条1項が459条の2第1項を準用し、「その当時利益を受けた限度」となります。「その当時」(債務の消滅行為の時)と「現に」(求償の時)の書き分けが、この二つを分ける目印です。委託を受けた保証人であれば、459条により支出額に加えて法定利息と費用損害まで求償できます。

    Q5. 建物の賃貸借契約において、賃借人の債務を個人が連帯保証する場合、極度額を定めていなくても、賃料相当額の範囲であれば保証契約は有効に成立する。


    答えを見る
    ×。賃貸借契約の保証は、将来発生する不特定の債務をまとめて保証するものなので根保証契約に当たり、保証人が個人であれば個人根保証契約です。465条の2第2項は「個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない」と定めており、無効になるのは極度額の定めだけではなく契約そのものです。同条3項が446条2項・3項を準用するため、極度額は書面または電磁的記録で定める必要があります。改正前は貸金等根保証契約にのみ求められていた規律が、改正により個人根保証一般へ拡大された結果です。なお、保証人が法人(家賃保証会社など)であれば、465条の2は適用されず極度額の定めは不要です。

    まとめ

    • 出発点は427条の分割債務です。数人の債務者がいても、原則は等しい割合の分割債務にすぎません。連帯債務も保証も、この原則を破って債権者に全額回収の道を開くための制度です。連帯債務は436条により法令の規定または当事者の意思表示があって初めて発生します。
    • 二つの制度を分けるのは付従性の有無です。連帯債務は横並びで付従性がなく、437条により一人の無効・取消原因は他に影響しません。保証は縦の関係で付従性があり、成立・消滅・内容(448条)のすべてで主たる債務に従います。連帯保証で外れるのは補充性だけで、付従性は残ります。
    • 連帯債務者の一人に生じた事由は、441条により相対的効力が原則です。絶対的効力は438条(更改)・439条1項(相殺)・440条(混同)に限られ、弁済は債権が満足を受けて消滅する以上、当然に共同の免責を生じます。履行の請求・免除・時効の完成はいずれも相対的効力に変わりました。ただし441条ただし書により、別段の合意で絶対的効力とすることは可能です。免除・時効完成があっても、445条により内部の求償は残ります。
    • 求償は、連帯債務では442条1項により負担部分を超えるかどうかにかかわらず負担割合に応じて可能です。保証では、459条(委託あり)、459条の2(委託ありで弁済期前)、462条1項(委託なし・その当時の利益)、462条2項(意思に反する・現に受けている利益)の順に範囲が狭くなります。事前求償権(460条)は委託を受けた保証人だけの権利です。通知の懈怠は443条・463条が処理し、事前を怠れば相手の抗弁を押しつけられ、事後を怠れば相手の二重弁済が有効とみなされます。
    • 保証の補充性は452条(催告の抗弁、破産・行方不明が例外)と453条(検索の抗弁、資力と執行容易性を保証人が証明)で構成され、共同保証には456条が427条を適用して分別の利益を与えます。454条が消すのは452条・453条だけで、分別の利益は連帯保証の性質上そもそも成立しません。
    • 方向を取り違えないこと。457条1項は主たる債務者から保証人への一方向(時効の完成猶予・更新が及ぶ)、458条は連帯保証人から主たる債務者への方向(441条準用で原則として及ばない)です。
    • 個人根保証は465条の2第2項により、極度額を定めなければ契約が効力を生じません。改正で貸金等根保証から個人根保証一般に拡大された結果、賃貸借契約の個人連帯保証にも及びます。保証人が法人なら適用外です。元本確定事由は465条の4第1項の三つ(保証人への強制執行、保証人の破産、主たる債務者または保証人の死亡)が全個人根保証に、2項の二つ(主たる債務者への強制執行、主たる債務者の破産)が貸金等に限って加わります。465条の3の5年・3年も貸金等限定です。
    • 情報提供義務は、458条の2が委託の有無で線を引き(法人保証人も対象)、458条の3が法人かどうかで線を引きます(2か月以内の通知)。465条の10は主たる債務者が負う義務で、違反時に債権者が悪意・有過失なら保証人は契約を取り消せます。

    連帯債務と保証は、条文の文言そのものが答えになる論点が多い領域です。改正前の枠組みで書かれた解説と混ざりやすいので、427条から465条の10までの条文に戻りながら進めてください。宅建試験AIブートラボの肢別トレーニングでは、権利関係の過去問を条文ごとに絞り込んで演習できます。

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