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連帯債務と保証債務|求償権・催告の抗弁を整理

宅建試験で出題される連帯債務と保証債務を比較解説。連帯債務の絶対的効力事由、保証人の催告・検索の抗弁、連帯保証との違いを表で整理。

多数当事者の債権債務関係

通常の債権債務関係は、債権者1人と債務者1人の間で成り立ちます。しかし、実際の取引では複数の債務者が1つの債務を負うケースが少なくありません。

宅建試験では、こうした多数当事者の債権債務関係のうち、連帯債務保証債務(連帯保証を含む)が繰り返し出題されています。特に、2020年(令和2年)の民法改正で連帯債務の絶対的効力事由が縮小されたこと、個人根保証に極度額の定めが必須になったことは要注意です。


連帯債務

連帯債務とは

連帯債務とは、数人の債務者が、同一の内容の債務について、それぞれ独立して全部の給付をする義務を負う債務関係をいいます。

民法436条
債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。

連帯債務の具体例

  • A・B・Cが連帯して、Dに対して900万円の債務を負う
  • Dは、A・B・Cの誰に対しても900万円全額を請求できる
  • Dは、Aに500万円、Bに300万円、Cに100万円というように分割して請求することもできる

負担部分

各連帯債務者は、内部的に負担部分を有しています。特約がなければ、各自の負担部分は平等(均等割り)と推定されます。

上の例で各自の負担部分が均等であれば、A・B・Cそれぞれの負担部分は300万円ずつです。

負担部分は、連帯債務者間の内部関係を規律するものであり、対外的には(債権者との関係では)各自が全額について責任を負います。

連帯債務者の一人に生じた事由の効力

連帯債務において最も重要な論点が、一人に生じた事由が他の連帯債務者に影響するかどうかです。これには絶対的効力事由相対的効力事由があります。

2020年改正による変更

2020年改正で、絶対的効力事由は大幅に縮小されました。

事由 改正前 改正後 効力
更改 絶対的効力 絶対的効力 他の連帯債務者も債務を免れる
相殺 絶対的効力 絶対的効力 他の連帯債務者も債務を免れる
混同 絶対的効力 絶対的効力 弁済したものとみなす
請求 絶対的効力 相対的効力に変更 他の連帯債務者に影響しない
免除 絶対的効力 相対的効力に変更 他の連帯債務者に影響しない
時効の完成 絶対的効力 相対的効力に変更 他の連帯債務者に影響しない

試験超重要ポイント: 改正後の絶対的効力事由は「更改・相殺・混同」の3つだけです。「こうそうこん(更・相・混)」と語呂合わせで覚えましょう。

各事由の詳細

更改: 連帯債務者の一人と債権者との間に更改があったときは、債権は全ての連帯債務者の利益のために消滅します(民法438条)。

相殺: 連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者が相殺を援用したときは、債権は全ての連帯債務者の利益のために消滅します(民法439条1項)。

さらに、相殺を援用しない連帯債務者も、相殺の援用権者の負担部分の限度で、履行を拒むことができます(民法439条2項)。

混同: 連帯債務者の一人と債権者との間に混同があったときは、その連帯債務者は弁済をしたものとみなされます(民法440条)。

請求(相対的効力): 改正前は、連帯債務者の一人に対する請求は他の連帯債務者にも効力が及びました。しかし、改正後は相対的効力になり、一人に対する請求は他の連帯債務者に影響しません。つまり、Aに請求しても、B・Cの消滅時効は中断(完成猶予・更新)されません。

試験対策ポイント: ただし、当事者間の特約により、請求に絶対的効力を認めることは可能です(民法441条ただし書)。

求償権

連帯債務者の一人が自己の負担部分を超えて弁済した場合、他の連帯債務者に対して求償することができます。

民法442条1項
連帯債務者の一人が弁済をし、その他自己の財産をもって共同の免責を得たときは、その連帯債務者は、その免責を得た額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対し、その免責を得るために支出した財産の額のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有する。

求償の具体例

A・B・Cが連帯して900万円の債務を負い、負担部分は各300万円とします。

  • Aが900万円全額を弁済した場合
    • Aは、Bに対して300万円、Cに対して300万円を求償できる
  • Aが600万円を弁済した場合
    • Aは、B・Cに対してそれぞれ200万円ずつ求償できる(免責額600万円×各自の負担割合1/3)

求償の際に請求できる範囲

求償権者は、弁済額のほか、弁済の日以後の法定利息、避けることができなかった費用その他の損害の賠償も請求できます(民法442条2項)。

事前の通知と事後の通知

連帯債務者が弁済する際には、事前の通知事後の通知が重要です。

通知の種類 怠った場合の効果
事前の通知(弁済前に他の連帯債務者に通知) 他の連帯債務者が債権者に対する抗弁(相殺など)を有していた場合、その抗弁をもって求償者に対抗できる
事後の通知(弁済後に他の連帯債務者に通知) 他の連帯債務者が善意で二重に弁済した場合、その二重弁済を有効とみなすことができる

保証債務

保証債務とは

保証債務とは、主たる債務者が債務を履行しない場合に、保証人がその債務を代わりに履行する義務を負うことをいいます。

民法446条1項
保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。

保証契約は、債権者と保証人との間で締結します。主たる債務者は保証契約の当事者ではありません。

保証契約の要式性

保証契約は、書面(または電磁的記録)でしなければ効力を生じません(民法446条2項・3項)。口頭の合意だけでは保証契約は成立しません。

この要式性は、保証人が安易に保証を引き受けることによる不利益を防止するための規定です。

保証債務の性質

保証債務には、以下の3つの重要な性質があります。

性質 内容 具体的な意味
付従性 主たる債務に従う性質 主たる債務が消滅すれば保証債務も消滅する。主たる債務より重い保証は認められない
随伴性 主たる債権に随伴する性質 主たる債権が移転すれば保証債務も移転する
補充性 主たる債務者が履行しないとき初めて責任を負う性質 催告の抗弁権・検索の抗弁権を持つ

付従性の具体的な効果

  • 主たる債務が成立しなければ、保証債務も成立しない(成立における付従性)
  • 主たる債務が消滅すれば、保証債務も消滅する(消滅における付従性)
  • 保証債務は、主たる債務より重くすることはできない。主たる債務より重い保証をした場合は、主たる債務の限度に縮減される(内容における付従性)
  • 主たる債務者に対する時効の完成猶予・更新の効果は、保証人に対しても及ぶ

催告の抗弁権

催告の抗弁権とは、債権者が保証人に債務の履行を請求してきた場合に、「まず主たる債務者に催告せよ」と主張できる権利です(民法452条)。

民法452条
債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。

検索の抗弁権

検索の抗弁権とは、保証人が、主たる債務者に弁済の資力があり、かつ執行が容易であることを証明して、まず主たる債務者の財産について執行するよう求めることができる権利です(民法453条)。

民法453条
債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。

検索の抗弁権の要件

保証人が検索の抗弁権を行使するには、以下の2つを保証人側が証明する必要があります。

  1. 主たる債務者に弁済の資力があること
  2. その財産への執行が容易であること

保証人の求償権

保証人が主たる債務者に代わって弁済した場合、主たる債務者に対して求償権を取得します。

保証の種類 求償の範囲
委託を受けた保証人 弁済額、弁済日以後の法定利息、避けられなかった費用その他の損害
委託を受けない保証人 主たる債務者の現に利益を受けた限度(求償時点)

委託を受けた保証人は保護が手厚く、弁済額に加えて利息や損害も求償できます。一方、委託を受けない保証人は、主たる債務者が利益を受けている限度でしか求償できません。


連帯保証

連帯保証とは

連帯保証とは、保証人が主たる債務者と連帯して債務を負担する保証のことをいいます。実務では、金融機関からの借入れの保証はほとんどが連帯保証です。

連帯保証の特徴

連帯保証では、通常の保証が持つ補充性がありません。具体的には、以下の抗弁権がありません。

抗弁権 通常の保証 連帯保証
催告の抗弁権 あり なし
検索の抗弁権 あり なし
分別の利益 あり なし

分別の利益とは

分別の利益とは、保証人が複数いる場合(共同保証)に、各保証人が保証人の頭数で割った額だけを負担すればよいという利益です。

例えば、1,000万円の債務にA・Bの2人が保証人となった場合:
- 通常の保証: A・Bはそれぞれ500万円ずつの保証債務を負う(分別の利益あり)
- 連帯保証: A・Bはそれぞれ1,000万円全額の保証債務を負う(分別の利益なし)

試験対策ポイント: 連帯保証人は「催告なし・検索なし・分別なし」の3つがないと覚えましょう。


保証・連帯保証・連帯債務の比較

3つの制度の違いを表で整理します。これは宅建試験で非常によく出題される比較です。

比較項目 保証債務 連帯保証 連帯債務
催告の抗弁権 あり なし なし
検索の抗弁権 あり なし なし
分別の利益 あり(共同保証の場合) なし なし(そもそも全額負担)
付従性 あり あり なし
主従関係 主債務に従う 主債務に従う 対等
請求の効力 主たる債務者への請求は保証人にも及ぶ 相対的効力 相対的効力(改正後)
時効の効力 主たる債務者の時効中断は保証人にも及ぶ 相対的効力 相対的効力(改正後)

重要な違い: 保証債務(連帯保証を含む)には付従性があるため、主たる債務が時効消滅すれば保証債務も消滅します。一方、連帯債務は各自が独立した債務を負うので、一人の時効完成は他に影響しません(改正後)。


個人根保証(2020年改正の重要ポイント)

根保証とは

根保証とは、一定の範囲に属する不特定の債務を保証することをいいます。例えば、賃貸借契約の保証人が、将来発生するかもしれない未払い賃料や原状回復費用などをまとめて保証するケースです。

個人根保証の極度額

2020年改正により、個人が根保証人となる場合には、極度額(保証の上限額)を定めなければならないとされました。

民法465条の2第2項
個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。

項目 内容
対象 個人が保証人となる根保証契約すべて
極度額 書面(または電磁的記録)で具体的な金額を定める必要がある
極度額を定めない場合 根保証契約は無効

改正前は、個人根保証のうち貸金等根保証契約(主たる債務に貸金債務が含まれるもの)にのみ極度額の定めが求められていました。改正後は、賃貸借契約の保証などすべての個人根保証契約に拡大されています。

元本の確定事由

個人根保証契約において、以下の事由が生じたときは、その後に発生する主たる債務は保証の対象外となります(元本が確定します)。

確定事由 全ての個人根保証 貸金等根保証のみ
債権者が保証人の財産に強制執行等を申し立てたとき 適用 適用
保証人が破産手続開始の決定を受けたとき 適用 適用
主たる債務者又は保証人が死亡したとき 適用 適用
債権者が主たる債務者の財産に強制執行等を申し立てたとき 適用なし 適用
主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき 適用なし 適用

試験対策ポイント: 保証人の「死亡」で元本が確定する点は重要です。つまり、個人根保証において保証人が死亡した場合、その相続人が以後発生する債務を保証する義務を負うことはありません


事業用融資の保証の特則

2020年改正では、事業のための資金借入れに個人が保証人となる場合に、新たな規制が設けられました。

公正証書による保証意思の確認

事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約において、個人が保証人となる場合は、契約締結に先立ち、その保証人になろうとする者が公正証書で保証債務を履行する意思を表示していなければ、保証契約は効力を生じません(民法465条の6)。

要件 内容
対象 事業のための貸金等債務の保証で個人が保証人になる場合
方法 契約締結日前1か月以内に作成された公正証書で保証意思を表示
効果 公正証書がなければ保証契約は無効

適用除外

以下の者が保証人となる場合は、公正証書による保証意思の確認は不要です。

適用除外の対象者 理由
法人 事業リスクの判断能力がある
主たる債務者が法人の場合の理事・取締役・執行役 経営に関与しており、リスクを理解している
主たる債務者が法人の場合の議決権の過半数を有する株主等 経営に関与している
主たる債務者(個人事業主)の配偶者で共同して事業を行う者 事業内容を把握している
主たる債務者(個人事業主)が行う事業に現に従事している配偶者 事業内容を把握している

情報提供義務

事業のために負担する債務について、他の者に保証を委託する場合、主たる債務者は保証人になろうとする者に対して、以下の情報を提供しなければなりません(民法465条の10)。

  1. 財産及び収支の状況
  2. 主たる債務以外に負担している債務の有無、その額及び履行状況
  3. 主たる債務の担保として提供するもの(又は提供しようとするもの)がある場合にはその旨及びその内容

この情報提供義務に違反し、保証人が誤認して保証契約を締結した場合で、債権者が情報提供義務違反の事実を知り又は知ることができたときは、保証人は保証契約を取り消すことができます。


債権者の情報提供義務

2020年改正では、保証人を保護するため、債権者から保証人に対する情報提供義務も新設されました。

主たる債務の履行状況に関する情報提供(民法458条の2)

委託を受けた保証人から請求があった場合、債権者は遅滞なく、主たる債務の元本、利息、違約金、損害賠償、その他の債務に従たるすべてのものについての不履行の有無、残額、弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければなりません。

主たる債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供(民法458条の3)

主たる債務者が期限の利益を喪失した場合、債権者は、個人の保証人に対し、その喪失を知った時から2か月以内にその旨を通知しなければなりません。通知を怠った場合、債権者は期限の利益喪失時から通知時までの遅延損害金を保証人に請求できなくなります。


過去問で問われるポイント

出題頻度の高い論点

論点 出題のされ方
絶対的効力事由 改正後は更改・相殺・混同の3つのみ
催告の抗弁権・検索の抗弁権 連帯保証人にはない(通常の保証人にはある)
分別の利益 連帯保証人にはない
求償権 連帯債務者間の求償、保証人から主債務者への求償
個人根保証の極度額 極度額を定めないと無効

覚え方のコツ

連帯債務の絶対的効力事由は語呂合わせで覚えましょう。

こう(更改)そう(相殺)こん(混同)」→ 「更・相・混」

また、保証・連帯保証・連帯債務の比較は、「連帯」がつくと保護が弱くなると覚えると整理しやすくなります。

  • 保証 → 催告の抗弁・検索の抗弁・分別の利益が全部ある
  • 連帯保証全部ない
  • 連帯債務 → そもそも保証ではないので抗弁権の問題は生じない

関連論点として、債務不履行と損害賠償抵当権も併せて学習すると、担保・保証の全体像が把握しやすくなります。


まとめ

連帯債務と保証債務は、宅建試験の権利関係で確実に得点したいテーマです。以下のポイントを整理して押さえましょう。

項目 要点
連帯債務 各自が独立して全額の給付義務を負う。負担部分を超えて弁済すれば求償可能
絶対的効力事由 改正後は「更改・相殺・混同」の3つのみ。請求・免除・時効完成は相対的効力に変更
保証債務の性質 付従性・随伴性・補充性の3つ
催告の抗弁権 通常の保証人にはある、連帯保証人にはない
検索の抗弁権 通常の保証人にはある、連帯保証人にはない
分別の利益 通常の共同保証にはある、連帯保証にはない
個人根保証 極度額を書面で定めなければ無効(2020年改正で全ての個人根保証に拡大)
事業用融資の保証 個人保証人は原則として公正証書による意思確認が必要
保証契約の要式性 書面(または電磁的記録)でしなければ無効

特に2020年改正のポイント(絶対的効力事由の縮小、個人根保証の極度額、事業用融資の公正証書)は近年の試験で重点的に出題されています。正確な知識を身につけて、確実に得点につなげましょう。

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