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公正証書遺言のオンライン化|2025年10月施行の変更点

2025年10月施行の公正証書遺言のデジタル化・オンライン化を解説。リモート方式の要件、従来制度との変更点、証人の要否など宅建試験で狙われるポイントを整理。

公正証書遺言のデジタル化が始まった

2025年(令和7年)10月1日から、公証人法の改正により公正証書遺言のデジタル化(オンライン化)がスタートしました。従来は公証役場に出向いて対面で作成する必要があった公正証書遺言が、Web会議を使ったリモート方式でも作成できるようになりました。

宅建試験では遺言の方式が繰り返し出題されます。2026年の試験では、この制度変更を踏まえた出題が十分に予想されるため、変更点と変わらない点を正確に押さえましょう。


公正証書遺言の基本(従来制度の復習)

民法969条に定める方式

公正証書遺言は、民法第969条に基づき、以下の方式で作成されます。

公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
一 証人二人以上の立会いがあること。
二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。
五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。
――民法第969条

3種類の遺言方式の比較

比較項目 自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
作成者 遺言者本人 公証人 遺言者本人
証人 不要 2人以上 2人以上
検認 必要(※) 不要 必要
家裁の関与 検認時に必要 不要 検認時に必要
秘密性 高い 低い(公証人・証人が内容を知る) 高い
費用 無料 有料 有料

※法務局の遺言書保管制度を利用した場合は検認不要


デジタル化による変更点

従来とデジタル化後の比較

項目 従来の制度 デジタル化後(2025年10月〜)
作成場所 公証役場への出頭が原則 リモート方式で自宅等からも可能
面談方式 対面のみ Web会議(映像・音声)も可
原本の形式 紙で作成・保管 電子データ(PDF)で作成・保管が原則
署名方法 紙に自署・押印 電子サイン(タッチペン等)
正本・謄本 紙のみ 紙出力、メール、USBメモリ等から選択
公証人の認証 署名・押印 電子署名

リモート方式とは

リモート方式とは、遺言者や証人が公証役場に出向かず、Web会議システム(Microsoft Teams)を通じて公証人と面談し、公正証書遺言を作成する方法です。

高齢や病気で外出が困難な場合にも、自宅から遺言書を作成できるようになりました。


リモート方式の利用要件

リモート方式を利用するには、以下の要件を満たす必要があります。

要件 内容
嘱託人の申出 遺言者(嘱託人)からリモート方式の申出が必要
公証人の判断 公証人が「リモートでも本人確認・真意確認が可能」と認めること
必要機材 パソコン(スマートフォンは不可)、Webカメラ、マイク、タッチ入力対応ディスプレイ

必要な機材

  • パソコン(スマートフォンでは不可)
  • Webカメラ・マイク・スピーカー
  • タッチ入力可能なディスプレイまたはペンタブレット(電子サイン用)
  • メールアドレス(正本・謄本の受領等に使用)

変わらないポイント(試験で最も重要)

デジタル化によって手続きの方法は変わりましたが、公正証書遺言の本質的な要件は変わっていません。ここが試験で最も狙われるポイントです。

証人2人以上の立会いは引き続き必要

リモート方式であっても、証人2人以上の立会いが必要です。

証人はWeb会議に参加し、遺言の内容を確認したうえで電子サインを行います。「オンライン化により証人が不要になった」ということはありません

証人になれない者の制限も従来通り

以下の者は、公正証書遺言の証人になることができません(民法第974条)。

  1. 未成年者
  2. 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
  3. 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

遺言者の口授も必要

リモート方式でも、遺言者は遺言の趣旨を公証人に口授(口頭で伝えること)しなければなりません。Web会議のマイクを通じて行います。

公証人による読み聞かせ・閲覧も必要

公証人が筆記した内容を遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させる手続きも従来通り必要です。


公証人がリモートを認めない場合

公証人が「判断能力や真意の確認がリモートでは困難」と判断した場合は、リモート方式を利用できません。この場合は従来通り対面方式で作成することになります。

例えば以下のような場合にはリモート不可とされる可能性があります。

  • 遺言者の判断能力に疑義がある場合
  • 本人確認が映像だけでは十分にできない場合
  • 第三者による不当な影響が疑われる場合

電子データによる保管

デジタル化後の公正証書遺言の原本は、電子データ(PDF)で作成・保管されます。

項目 内容
原本 電子データ(PDF)として公証役場が保管
正本・謄本の交付方法 ①紙に出力 ②メール・クラウドダウンロード ③USBメモリ等
保管期間 従来通り、公証人が退職するまで(実務上は永久保管)

試験でのひっかけパターン

ひっかけ1:「リモート方式では証人の立会いは不要」

誤りです。リモート方式であっても証人2人以上の立会いが必要です。証人はWeb会議に参加して立ち会います。

ひっかけ2:「リモート方式では遺言者の口授は不要」

誤りです。リモート方式でも遺言者は遺言の趣旨を公証人に口授しなければなりません。Web会議のマイクを通じて行います。

ひっかけ3:「デジタル化により公正証書遺言にも検認が必要になった」

誤りです。デジタル化後も公正証書遺言には検認は不要です。公証人が関与して作成される信頼性の高い遺言であることに変わりはありません。

ひっかけ4:「リモート方式はすべての場合に利用できる」

誤りです。公証人が「リモートでも本人確認・真意確認が可能」と認めた場合にのみ利用できます。公証人が困難と判断した場合は対面方式で作成する必要があります。


理解度チェッククイズ

Q1. 公正証書遺言のリモート方式では、証人の立会いは不要である。

答えを見る **× 誤り。** リモート方式であっても**証人2人以上の立会いが必要**です(民法第969条第1号)。証人はWeb会議に参加して立ち会います。オンライン化によって証人要件が廃止されたわけではありません。

Q2. 推定相続人の配偶者は、公正証書遺言の証人になることができる。

答えを見る **× 誤り。** 推定相続人及び受遺者並びにこれらの**配偶者及び直系血族**は証人になることができません(民法第974条第2号)。

Q3. 公正証書遺言をリモート方式で作成した場合でも、検認は不要である。

答えを見る **○ 正しい。** 公正証書遺言は、対面方式・リモート方式を問わず**検認は不要**です。公証人が関与して作成される遺言であるため、家庭裁判所での検認手続きは必要ありません。

Q4. リモート方式での公正証書遺言はスマートフォンでも作成できる。

答えを見る **× 誤り。** リモート方式で公正証書遺言を作成するには**パソコン**が必要です。スマートフォンでは利用できません。電子サインのためにタッチ入力対応のディスプレイまたはペンタブレットも必要です。

まとめ

  1. デジタル化の概要 → 2025年10月から公正証書遺言のリモート作成(Web会議方式)が可能に。従来の対面方式も引き続き利用できる。
  2. 変わらないポイント → 証人2人以上の立会い、遺言者の口授、公証人の読み聞かせ・閲覧、検認不要。これらの本質的要件は従来通り。
  3. 試験対策の核心 → 「オンライン化で要件が緩和された」と誤解させるひっかけに注意。証人の要件・口授の要件は変わっていない。

遺言の方式の全体像は遺言の方式を解説を、相続の基礎は相続の基本をあわせてご確認ください。

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