代理制度|無権代理と表見代理を条文で整理
民法99条から118条までの代理を条文で整理。顕名、代理行為の瑕疵、無権代理の追認と相手方の三つの権利、表見代理の3類型と重畳適用、相続の処理まで解説します。
目次
本記事の役割 — この記事は代理の全体像と、無権代理・表見代理の対比を扱います。
復代理と自己契約・双方代理の各論は復代理と自己契約・双方代理に、代理権の消滅事由と代理行為の瑕疵の各論は代理権の消滅と代理行為の瑕疵にまとめています。
代理は、本人・代理人・相手方という三者の利害をどう配分するかという制度です。この一文を軸に据えると、ばらばらに見える条文が一本につながります。
代理人が代理権の範囲内で顕名をして行為すれば、効果は本人に帰属します(99条1項)。ここでは本人が利益も不利益も引き受けます。ところが代理権がなければ、効果は本人に帰属しません(113条1項)。身に覚えのない契約を押し付けられない、という本人の保護です。しかし、本人の側にも代理権があるかのような外観を作った落ち度があり、相手方がその外観を信じたのであれば、例外的に効果を本人に帰属させます。これが表見代理です(109条・110条・112条)。
つまり無権代理と表見代理は、本人と相手方のどちらを守るかという同じ天秤の両端にあります。表見代理の三つの類型が109条・110条・112条と並んでいるのも、本人のどんな行為が帰責性を生むかという観点で整理されているからです。代理権を与えたと表示した、代理権を与えた、かつて代理権を与えていた。帰責性の中身が違うだけで、天秤の傾け方は同じです。
本記事では、99条から118条までを条文の順に追いかけたうえで、無権代理と表見代理を対比します。細かい各論は上のリンク先に譲り、ここでは全体を貫く構造に集中します。
なお法令の基準日についても確認しました。民法は令和8年法律第45号により2026年6月24日施行の版がありますが、代理を定める99条から118条までを条単位で比較したところ、2026年4月1日時点の条文との差分はありません。この記事の内容は令和8年度の出題範囲そのままです。
代理は三者の利害をどう配分するかという制度
本人・代理人・相手方の三本の線
代理には三つの関係があります。本人と代理人の関係、代理人と相手方の関係、そして本人と相手方の関係です。
本人と代理人の間にあるのは代理権です。任意代理であれば本人が代理権を授与し、法定代理であれば法律の規定によって代理権が発生します。代理権の授与の原因になる契約は多くの場合は委任ですが、委任契約そのものと代理権の授与は概念として別のものです。委任契約の内容については委任と請負で扱っています。
代理人と相手方の間で実際の意思表示のやりとりが行われます。契約書に署名するのも、交渉するのも代理人です。
そして本人と相手方の間に、法律効果だけが発生します。本人は交渉の場にいなかったのに、契約の当事者になります。
効果が本人に帰属することの異常さ
この三つ目の線が、代理という制度の核心であり、同時に危うさでもあります。自分がした行為でないのに義務を負うのですから、本来はありえないことです。
だからこそ99条は、効果が本人に帰属するための条件を厳しく設定しています。代理人が「その権限内において」「本人のためにすることを示して」した意思表示に限る、という二重の限定です。この限定を外れれば、効果は本人に帰属しません。無権代理の問題も顕名の問題も、この二重の限定のどちらかが欠けた場合の処理だと理解してください。
任意代理と法定代理は出発点が違う
任意代理は本人の意思に基づいて発生します。本人が「この範囲でお願いします」と決めた以上、その範囲を超えた行為の効果を本人に帰属させるのは筋が通りません。代理権の範囲も本人が決めます。
法定代理は本人の意思とは無関係に発生します。未成年者の親権者や成年後見人がその例で、本人が判断できないからこそ法律が代理人を用意する制度です。代理権の範囲も法律が定めます。制限行為能力者の保護の仕組みは制限行為能力者で扱っています。
この違いは、復代理人を選任できるか(104条と105条)、代理権がどんな事由で消滅するか(111条)といった各論に効いてきます。任意代理の条文を法定代理に持ち込む選択肢が典型的な引っかけなので、問題文がどちらの話をしているかを最初に確認してください。
この節の要点
- 代理の三つの関係のうち、本人と相手方の間には効果だけが発生する。
- 効果帰属には代理権と顕名の二つが必要(99条1項)。
- 任意代理と法定代理は発生原因が違い、各論の結論も分かれる。
代理が成立するための二つの要件
99条1項は「代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる」と定めます。要件は二つです。
代理権が存在し、その範囲内であること
「その権限内において」が代理権の要件です。代理権がまったくない場合はもちろん、代理権はあるがその範囲を超えた場合も、この要件を満たしません。どちらも無権代理になります。
無権代理には二つの型があるということを、ここで押さえておいてください。代理権が皆無の型と、代理権はあるが範囲を超えた型です。表見代理のどの類型が問題になるかは、この型の違いで決まります。皆無の型なら109条か112条、範囲を超えた型なら110条です。
本人のためにすることを示すこと
「本人のためにすることを示して」が顕名の要件です。契約書に「A代理人B」と署名するのが典型です。
「本人のために」というのは、本人の利益のために、という意味ではありません。本人に効果を帰属させる意思で、という意味です。代理人が本人を害する意図を持っていたとしても、顕名の要件は満たされます。その場合は107条の代理権の濫用の問題として別に処理されます。
相手方からの意思表示も同じ扱い
99条2項は「前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する」と定めます。代理人が意思表示を発する場合(能動代理)だけでなく、代理人が意思表示を受ける場合(受動代理)にも、効果は直接本人に帰属します。
契約の申込みを代理人が受けた場合、その申込みは本人に対してされたものとして扱われます。解除の意思表示や催告を代理人が受けた場合も同じです。
顕名を欠いたらどうなるか
原則は代理人自身のためにしたものとみなす
100条本文は「代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす」と定めます。
顕名がなければ、相手方から見れば代理人本人が契約の当事者に見えます。その外観を信じた相手方を守るために、代理人自身が当事者になるという扱いにします。本人ではなく代理人が契約の相手になるということです。
「みなす」ですから、代理人が「実は本人のためだった」と反証して覆すことはできません。
ただし書による例外
100条ただし書は「ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する」と定めます。
相手方が、代理人が本人のために行為していることを知っていた場合(悪意)、または知ることができた場合(有過失)は、99条1項が準用され、効果は本人に帰属します。保護すべき信頼がない相手方まで守る必要はないからです。
「知り、又は知ることができた」という表現は、悪意または有過失を意味します。逆に言えば、本人に効果を帰属させないためには、相手方が善意かつ無過失でなければなりません。
顕名の程度
顕名は「A代理人B」という形式でなくても構いません。周囲の状況から本人のためにする意思が示されていれば足ります。契約書に本人の名義だけを記載した場合も、本人に効果を帰属させる意思が表れているといえます。
問題文が「Bは自己の名で契約した」と書いていれば100条本文の場面、「Bは自らがAの代理人であることを告げた」と書いていれば顕名がある場面です。書き分けを読み取ってください。
善意・悪意は誰について決めるのか
101条は、意思表示の効力に影響する主観的事情を、本人と代理人のどちらについて判定するかを定めます。三つの項があり、それぞれ場面が違います。
1項 代理人がした意思表示
101条1項は「代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする」と定めます。
実際に意思表示をするのは代理人ですから、錯誤に陥ったかどうか、詐欺を受けたかどうかは代理人について判断します。本人が冷静であっても、代理人が騙されて契約したのであれば、詐欺による取消しの可能性が生じます。意思表示の瑕疵そのものの規律は意思表示の瑕疵で扱っています。
2項 代理人が受けた意思表示
101条2項は「相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする」と定めます。
受動代理の場面です。相手方の心裡留保や虚偽表示について、悪意や有過失があったかどうかは、意思表示を受けた代理人について判断します。
1項が「意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又は……」と広く並べているのに対し、2項は「ある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったこと」だけを挙げています。受け取る側には錯誤や詐欺という問題が生じないためです。この書き分けは細かいですが、条文を引く問題では効いてきます。
3項 本人が知っていた事情
101条3項は「特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする」と定めます。
1項と2項だけだと、本人が事情を知っていながら、何も知らない代理人を立てて行為させることで、善意を装えてしまいます。それを封じる規定です。
適用の条件は「特定の法律行為をすることを委託された代理人」であることです。包括的な代理権を与えただけでは足りず、特定の行為を委託した場合に限られます。この限定を落とすと、本人の主観がつねに問題になってしまい、1項と2項の原則が崩れるからです。
そして3項は本人が「主張することができない」という書き方をしています。代理人の善意を本人が援用できないというだけで、代理人の主観そのものを本人の主観に置き換える規定ではありません。
制限行為能力者を代理人にできるか
原則は取り消せない
102条本文は「制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない」と定めます。
未成年者や被保佐人を代理人に選ぶことは可能で、その者がした代理行為を、行為能力の制限を理由に取り消すことはできません。
理由は、代理行為の効果が代理人に帰属しないからです。制限行為能力者の保護は、その者自身が不利益を被らないようにする制度です。代理人として行為した場合、不利益を受けるのは本人であって代理人ではありません。保護の必要がないので、取消権も与えないという整理です。
そして本人の側から見れば、制限行為能力者と知りながら代理人に選んだのは自分ですから、その結果を引き受けるべきだということになります。
ただし書の例外
102条ただし書は「ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない」と定めます。
たとえば、成年被後見人である親が未成年の子の法定代理人として行為した場合です。この場合、本人(子)は代理人を選んでいません。法律が代理人を決めているのですから、選任の責任を本人に負わせることはできません。そこで例外的に、行為能力の制限を理由とする取消しが認められます。
任意代理では本人が代理人を選ぶので原則どおり、法定代理では本人が選べないので例外、という対応関係で覚えてください。
代理権の範囲と、範囲内でも無権代理になる場合
権限の定めのない代理人(103条)
103条は「権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する」として、保存行為と、代理の目的である物または権利の性質を変えない範囲内において、その利用または改良を目的とする行為の二つを挙げます。
処分行為は含まれません。建物の修繕は保存行為として可能でも、建物を売却することはできません。「権限の定めのない代理人は、本人の財産を有利に処分することができる」という選択肢は誤りです。
代理権の濫用(107条)
107条は「代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす」と定めます。
代理権の範囲内であることが前提です。範囲内なのに無権代理として扱われる、という点がこの条文の特徴です。
もっとも、常に無権代理になるわけではありません。相手方が濫用の目的を知り、または知ることができたときに限られます。相手方が善意かつ無過失であれば、有効な代理行為として本人に効果が帰属します。本人は代理人に対して損害賠償を請求するしかありません。
自己契約・双方代理・利益相反(108条)
108条1項は、同一の法律行為について、相手方の代理人として、または当事者双方の代理人としてした行為を、代理権を有しない者がした行為とみなします。ただし、債務の履行および本人があらかじめ許諾した行為は除かれます。
108条2項は、自己契約・双方代理に当たらなくても、代理人と本人との利益が相反する行為を、同じく無権代理とみなします。ただし、本人があらかじめ許諾した行為は除かれます。1項が形式的な類型を並べるのに対し、2項が実質的な利益相反を拾う受け皿になっています。
除外される「債務の履行」と「あらかじめ許諾した行為」の意味、利益相反の具体例は復代理と自己契約・双方代理で扱っています。
「みなす」の意味を正確に取る
107条も108条も、効果を「代理権を有しない者がした行為とみなす」としています。無効とするのでも、取り消せるとするのでもありません。
みなされた結果、113条以下の無権代理の規定が適用されます。したがって本人が追認すれば有効になりますし(113条1項)、追認は契約の時にさかのぼって効力を生じます(116条)。「双方代理でされた契約は無効であり、本人が追認しても有効にならない」という選択肢は誤りです。
改正前の108条は「してはならない」という禁止の形で書かれており、効果は解釈に委ねられていました。現在の条文は効果まで書き込んでいるので、条文どおりに処理すれば足ります。
復代理と代理権の消滅の骨格
この二つは各論の記事に譲りますが、全体像の中での位置づけと、間違えやすい条文番号だけ確認しておきます。
復代理の骨格(104条・105条・106条)
104条は「委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない」と定めます。任意代理人は原則として復代理人を選任できません。本人が信頼して選んだ人だからです。
105条は「法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う」と定めます。法定代理人はいつでも選任できる代わりに、原則として全責任を負います。
ここで条文番号に注意してください。法定代理人による復代理人の選任は105条です。106条ではありません。106条は復代理人の権限等を定める条文で、1項が「復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する」、2項が「復代理人は、本人及び第三者に対して、その権限の範囲内において、代理人と同一の権利を有し、義務を負う」です。
106条1項が示すとおり、復代理人は代理人の代理人ではなく、本人を直接代理します。復代理人が選任されても代理人の代理権は消滅しません。
なお、任意代理人が復代理人を選任した場合の責任について、改正前の民法は選任・監督についての責任に限定する規定を置いていましたが、この規定は削除されました。現在は委任契約上の善管注意義務(644条)と債務不履行の一般原則で処理されます。古い教材の「任意代理人は選任・監督についてのみ責任を負う」という記述は、現行法の条文には対応していません。
代理権の消滅事由の骨格(111条)
111条1項は、本人の死亡、代理人の死亡、代理人が破産手続開始の決定を受けたこと、代理人が後見開始の審判を受けたことを消滅事由として挙げます。2項は「委任による代理権は、前項各号に掲げる事由のほか、委任の終了によって消滅する」と定めます。
そして653条は、委任者または受任者の死亡、委任者または受任者が破産手続開始の決定を受けたこと、受任者が後見開始の審判を受けたことを委任の終了事由としています。
この二つを重ねると、任意代理では本人の破産も代理権の消滅事由になることが分かります。111条1項には本人の破産が書かれていませんが、653条2号を経由して111条2項で消滅するからです。法定代理では本人の破産は消滅事由になりません。条文を二段で辿る必要がある論点で、詳細は代理権の消滅と代理行為の瑕疵にまとめています。
無権代理は本人に効果が帰属しない状態から始まる
113条1項の原則
113条1項は「代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない」と定めます。
「効力を生じない」であって「無効」とは書いていません。本人が追認すれば効力が生じる、いわば宙に浮いた状態です。有効か無効かが本人の選択に委ねられている状態だと理解してください。
追認と追認拒絶
本人には追認する自由と、追認を拒絶する自由があります。どちらを選んでも構いません。追認を拒絶すれば、契約が本人に対して効力を生じないことが確定します。
一度追認を拒絶すれば、その後に翻して追認することはできません。逆に、一度追認すれば取り消すことはできません。宙に浮いた状態を確定させる行為だからです。
113条2項 相手方に対抗するには
113条2項は「追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗することができない。ただし、相手方がその事実を知ったときは、この限りでない」と定めます。
本人が無権代理人に対して「追認する」と伝えただけでは、相手方に対抗できません。相手方に対して直接しなければならないのが原則です。
ただし書があります。相手方がその事実を知ったときは対抗できます。本人が無権代理人に追認を伝え、無権代理人がそれを相手方に伝えて相手方が知った、という場合には対抗できるということです。
116条 追認の遡及効
116条は「追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない」と定めます。
追認があれば、追認の時からではなく契約の時から有効だった扱いになります。「別段の意思表示がないときは」とあるので、当事者が合意すれば遡及しない追認も可能です。
ただし書の「第三者の権利を害することはできない」は、追認前に利害関係に入った第三者を守る規定です。
相手方に与えられた三つの権利
無権代理の相手方は、本人が追認するかどうかを待つだけの立場ではありません。民法は三つの手段を用意しています。
催告権(114条)
114条は「相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて、その期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなす」と定めます。
宙に浮いた状態を早く確定させるための権利です。条文には相手方の主観について何も書かれていません。したがって、相手方が無権代理であることを知っていた場合(悪意)でも催告できます。三つの権利のうち、主観要件がないのはこれだけです。
確答がないときの扱いにも注意してください。追認したものとみなすのではなく、追認を拒絶したものとみなすです。沈黙を本人に不利に扱うことはしない、という発想です。
取消権(115条)
115条は「代理権を有しない者がした契約は、本人が追認をしない間は、相手方が取り消すことができる。ただし、契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない」と定めます。
こちらは自分から契約関係を断ち切る権利です。行使できるのは本人が追認するまでの間に限られます。追認された後は有効な契約になっているので、取り消せません。
主観要件はただし書にあります。「代理権を有しないことを相手方が知っていたとき」、つまり悪意の相手方は取り消せません。裏を返せば、善意であれば足り、無過失までは要求されていません。過失があっても知らなかったのであれば取り消せます。
催告権は善意悪意を問わず、取消権は善意で足りる。この二段の違いは毎年のように問われます。取消権について「善意かつ無過失」と書いた選択肢は誤りです。
無権代理人の責任(117条1項)
117条1項は「他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う」と定めます。
本人が追認しないなら、代理人と名乗った者自身に責任を取らせる規定です。責任の内容は履行または損害賠償で、どちらを求めるかは相手方が選択します。無権代理人が選ぶのではありません。
免責されるのは、自己の代理権を証明したときと、本人の追認を得たときの二つだけです。この場合はそもそも無権代理ではないか、有効になったかのどちらかですから、当然といえます。
117条2項の三つの免責事由
117条2項は、1項が適用されない場合を三つ挙げます。
1号は、代理権を有しないことを相手方が知っていたときです。悪意の相手方は保護されません。
2号は、代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったときです。ただし書があり、無権代理人自身が代理権のないことを知っていたときは、この限りでないとされています。相手方に過失があっても、無権代理人が悪意であれば責任を免れないということです。落ち度の程度を比べて、より悪い側に負担させる構造になっています。
3号は、無権代理人が行為能力の制限を受けていたときです。117条の責任は重いので、制限行為能力者にまで負わせるのは酷だという判断です。102条が代理行為そのものは取り消せないとしていることと、混同しないでください。代理行為は取り消せないが、無権代理人としての責任は負わない、という組み合わせになります。
単独行為の無権代理(118条)
118条は「単独行為については、その行為の時において、相手方が、代理人と称する者が代理権を有しないで行為をすることに同意し、又はその代理権を争わなかったときに限り、第百十三条から前条までの規定を準用する」と定めます。後段は、代理権を有しない者に対しその同意を得て単独行為をしたときも同様だとします。
契約であれば相手方も交渉に加わっているので、追認によって有効になる余地を認めてよいのですが、解除や取消しのような単独行為は一方的です。無権代理でされた解除が後から追認によって有効になるとすると、相手方の地位が不安定になります。そこで、相手方が同意していたか代理権を争わなかった場合に限って、無権代理の規定を準用します。それ以外の場合は確定的に無効です。
この節の要点
- 催告権は主観要件なし、取消権は善意で足りる、117条の責任は善意かつ無過失が必要(2項1号・2号)。
- 催告に確答しないと追認拒絶とみなされる。
- 117条の責任は履行か損害賠償かを相手方が選ぶ。
表見代理は本人の帰責性で三つに並ぶ
表見代理は、無権代理でありながら本人に効果を帰属させる制度です。本人に何らかの帰責性があり、相手方が外観を信頼した場合に限って認められます。三つの類型は、本人の帰責性の中身で分かれています。
109条1項 代理権授与の表示
109条1項は「第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない」と定めます。
本人の帰責性は「代理権を与えた旨を表示した」ことです。実際には代理権を与えていないのに、与えたと第三者に伝えた。委任状を交付したのに実際には授権していなかった場合が典型です。
相手方の主観要件はただし書に書かれています。知っていたとき(悪意)または過失によって知らなかったとき(有過失)は責任を負わない、という書き方ですから、裏返せば相手方は善意かつ無過失でなければなりません。
110条 権限外の行為
110条は「前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する」と定めます。
本人の帰責性は「代理権を与えた」ことそのものです。何らかの代理権(基本代理権)を与えた以上、その代理人が範囲を超えて行為する危険を作り出したのは本人だ、という理屈です。
したがって110条を使うには、基本代理権が存在することが前提になります。まったく代理権のない者が勝手に代理人を名乗った場合は、110条の場面ではありません。
相手方の主観要件は「代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるとき」です。109条1項や112条1項の「善意かつ無過失」とは書き方が違います。
112条1項 代理権消滅後
112条1項は「他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後にその代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、代理権の消滅の事実を知らなかった第三者に対してその責任を負う。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない」と定めます。
本人の帰責性は「かつて代理権を与えていた」ことと、消滅したことを外部に知らせなかったことです。委任契約を解除したのに委任状を回収しなかった、といった状況が典型です。
相手方の主観要件は、消滅の事実を知らなかったこと(善意)に加え、ただし書により過失によって知らなかった場合を除くので、結局善意かつ無過失です。ここで問われるのは「代理権が消滅した事実」についての善意である点に注意してください。かつて代理権があったこと自体は事実ですから、そこは問題になりません。
帰責性の強さで並べる
三つを本人の帰責性の観点で並べると、記憶が安定します。
109条は、代理権がないのに「ある」と言った。作り出した外観が最も強い。
110条は、代理権を現に与えた。与えた範囲を超えられたのは、与えたこと自体から生じた危険です。
112条は、かつて与えていた。すでに消滅しているが、消滅を知らせなかった落ち度があります。
いずれも、本人が何もしていないのに責任を負わされる場面はありません。まったく身に覚えのない代理行為であれば、表見代理は成立せず、無権代理のまま処理されます。
重畳適用は条文に書かれている
古い教材は、109条と110条の重畳適用、112条と110条の重畳適用を判例上の処理として説明しますが、現在はいずれも条文に書き込まれています。
109条2項
109条2項は「第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う」と定めます。
代理権授与の表示があり、しかも表示された範囲すら超えて行為された、という二段構えの場面です。表示された範囲内の行為であれば1項で責任を負うべき場合であることが前提になっています。
112条2項
112条2項は「他人に代理権を与えた者は、代理権の消滅後に、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間で行為をしたとすれば前項の規定によりその責任を負うべき場合において、その他人が第三者との間でその代理権の範囲外の行為をしたときは、第三者がその行為についてその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り、その行為についての責任を負う」と定めます。
代理権が消滅した後に、かつての代理権の範囲すら超えて行為された場合です。構造は109条2項とまったく同じです。
主観要件は「正当な理由」に一本化される
109条2項も112条2項も、相手方の要件を「正当な理由があるときに限り」としています。110条と同じ表現です。
つまり、範囲を超えた行為が問題になる場面では、常に「正当な理由」が基準になります。範囲内の行為であれば「善意かつ無過失」、範囲外に出れば「正当な理由」。この対応で覚えておくと、五つの規定(109条1項・109条2項・110条・112条1項・112条2項)の主観要件が二つに整理できます。
なお、「正当な理由」と「善意かつ無過失」は実質的には近い判断になりますが、条文の文言としては別です。条文の文言を問う問題では書き分けてください。
無権代理と相続
無権代理人と本人が相続によって同一人になった場合、追認を拒絶できるのかという問題が生じます。この場面について、民法は直接の規定を置いていません。関係する条文を組み合わせて処理することになります。
使う条文は896条と1条2項
896条は「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない」と定めます。相続によって、本人の追認権・追認拒絶権も、無権代理人の117条の責任も、相続人に承継されます。
1条2項は「権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない」と定めます。承継した権利を行使することが信義則に反する場合には、その行使が制限されます。
この二つの条文の組み合わせで、以下の三つの場面が処理されます。条文が答えを書いていない領域なので、結論だけを暗記するのではなく、どちらの地位が優先するかという観点で考えられるようにしてください。
無権代理人が本人を単独相続した場合
無権代理人Bが、本人Aを単独で相続した場合です。
Bは896条により本人の追認拒絶権を承継します。しかしBは、自分で無権代理行為をしておきながら、本人の地位を得たとたんにそれを拒絶することになります。他方でBは117条の責任も負っており、相手方が履行を選択すれば結局履行しなければなりません。
このように、追認を拒絶しても最終的に履行に行き着く関係にあるため、追認拒絶を認める実益がありません。結論として、本人が自ら法律行為をしたのと同様の状態になり、追認を拒絶することはできないものとして扱われます。
無権代理人が本人を共同相続した場合
無権代理人Bが、他の相続人Cとともに本人Aを共同相続した場合です。
追認権は本人の地位に属する権利で、共同相続人全員に不可分に帰属します。Bひとりの意思で追認したことにしてしまうと、無権代理に関与していないCの権利まで奪うことになります。
したがって、単独相続の場合と異なり、当然に有効にはなりません。共同相続人全員が追認しなければ、無権代理行為は本人に効果を帰属させません。Bが自分の相続分についてだけ追認する、という処理も認められません。相続財産が共有になることの意味は共有、相続の効力は相続の基本ルールで扱っています。
本人が無権代理人を相続した場合
本人Aが、無権代理人Bを相続した場合です。
Aはもともと追認拒絶権を持っています。無権代理をしたのはBであってAではありませんから、Aが追認を拒絶しても、自分の行為と矛盾する態度をとったことにはなりません。追認拒絶は認められます。
ただし、Aは896条によりBの117条の責任も承継しています。追認を拒絶できることと、117条の責任を負うことは別の話です。相手方が117条により損害賠償を請求してきた場合、Aは相続した債務としてこれに応じることになります。
追認拒絶は可能だが117条の責任は承継する、という二段の結論をセットで覚えてください。「本人が無権代理人を相続した場合は当然に有効になる」という選択肢は誤りです。
判断の順序
三つの場面を丸暗記するのではなく、次の順で考えると安定します。
まず、無権代理行為をした本人が誰かを確認します。無権代理人の側が本人の地位を得たのであれば、自分の行為と矛盾する主張になるので拒絶が制限されます。本人の側が無権代理人の地位を得たのであれば、矛盾は生じないので拒絶できます。
次に、共同相続かどうかを確認します。追認権が他の相続人と共同で帰属するのであれば、ひとりの意思で確定させることはできません。
最後に、117条の責任が承継されていないかを確認します。追認を拒絶できても、責任は別途残ります。
無権代理と表見代理はどういう関係にあるか
表見代理は無権代理の一種
表見代理は、代理権がないという点では無権代理そのものです。代理権がある場合には、そもそも表見代理を持ち出す必要がありません。
その無権代理のうち、本人に帰責性があり相手方が外観を信頼したという条件を満たすものについて、例外的に効果を本人に帰属させるのが表見代理です。無権代理という大きな箱の中に、表見代理という小さな箱が入っている関係になります。
相手方はどちらを選べるのか
表見代理が成立する場面では、相手方は本人に対して契約の履行を求められます。同時に、その場面はなお無権代理でもあるので、117条により無権代理人に責任を追及する余地もあります。
117条1項が定める免責事由は「自己の代理権を証明したとき」と「本人の追認を得たとき」の二つだけで、表見代理が成立することは免責事由として挙げられていません。2項の三つの免責事由にも入っていません。条文の書きぶりからは、表見代理が成立する場合であっても無権代理人の責任が当然に消えるわけではない、と読めます。
試験対策としては、「表見代理が成立するときは無権代理人の責任を追及できない」という断定的な選択肢を疑う、という形で押さえておけば足ります。
本人の側が表見代理を持ち出せるか
表見代理は相手方を保護するための制度です。条文もいずれも「その責任を負う」という形で、本人が責任を負う側として書かれています。相手方を守る制度を、本人が自分の都合のために持ち出すという使い方は、条文の構造に合いません。
無権代理人の責任を追及された無権代理人が「表見代理が成立するから自分は責任を負わない」と言えるかという問題も、同じ観点から考えます。117条の免責事由に挙げられていない以上、条文上の根拠がないことになります。
試験での出題ポイント
パターン1 催告権と取消権の主観要件をずらす
「無権代理の相手方は、善意でなければ催告をすることができない」は誤りです。114条は主観要件を定めていません。「無権代理の相手方が契約を取り消すには、善意かつ無過失であることを要する」も誤りで、115条ただし書は悪意の相手方を除くだけです。
パターン2 確答がない場合の効果を逆にする
「相当の期間内に本人が確答をしないときは、追認をしたものとみなされる」は誤りです。114条は追認を拒絶したものとみなすと定めています。
パターン3 117条の選択権の所在をずらす
「無権代理人は、履行または損害賠償のいずれかを選択して責任を負う」は誤りです。117条1項は「相手方の選択に従い」と定めており、選ぶのは相手方です。
パターン4 117条2項2号のただし書を落とす
「相手方に過失があるときは、無権代理人は責任を負わない」は、それだけでは誤りです。2号ただし書により、無権代理人が自己に代理権がないことを知っていたときは責任を負います。
パターン5 102条と117条2項3号を混ぜる
「制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限を理由に取り消すことができる」は102条本文により誤りです。一方「無権代理人が制限行為能力者であるときは、117条の責任を負わない」は2項3号により正しい記述です。代理行為の効力と無権代理人の責任は別だと切り分けてください。
パターン6 表見代理の主観要件を取り違える
110条の要件は「正当な理由」であって「善意かつ無過失」ではありません。逆に109条1項・112条1項は、条文の書き方としては悪意・有過失を除く形になっており、「正当な理由」とは書かれていません。
パターン7 重畳適用を判例の話にする
「代理権授与の表示がされ、かつ表示された範囲を超えて行為された場合について、民法に規定はない」は誤りです。109条2項が定めています。112条と110条の組合せも112条2項にあります。
パターン8 無権代理と相続の結論を入れ替える
「本人が無権代理人を相続した場合、無権代理行為は当然に有効となる」は誤りです。「無権代理人が本人を他の相続人とともに共同相続した場合、無権代理人の相続分については当然に有効となる」も誤りです。
パターン9 顕名の例外を落とす
「代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、常に代理人自身のためにしたものとみなされる」は誤りです。100条ただし書により、相手方が知りまたは知ることができたときは本人に効果が帰属します。
パターン10 101条3項の限定を落とす
「本人が知っていた事情については、常に代理人が知らなかったことを主張できない」は誤りです。101条3項は「特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたとき」に限っています。権利関係の学習の優先順位づけは権利関係の頻出論点を参考にしてください。
覚え方・整理の仕方
判定は「代理権」「顕名」「主観」の三段で
問題文を読んだら、次の順で処理します。
第一に、代理権があるかを確認します。まったくないのか、あるが範囲を超えたのか、範囲内なのかで、その後の分岐が変わります。範囲内なら107条・108条の可能性を検討します。
第二に、顕名があるかを確認します。なければ100条の問題です。
第三に、相手方の主観を確認します。無権代理なら表見代理の成否、115条の取消権、117条の責任のそれぞれで要求される主観が違うので、どの制度の話かを固定してから当てはめます。
相手方の主観要件は三段階で覚える
代理の分野に出てくる相手方の主観要件は、実質的に三段階です。
問わないのが114条の催告権。善意で足りるのが115条の取消権。善意かつ無過失を要するのが117条の責任(2項1号・2号)と、109条1項・112条1項の表見代理です。そして範囲外の行為に関する110条・109条2項・112条2項は「正当な理由」という別の言い回しを使います。
要件が厳しくなるほど、相手方が得られる保護も大きくなります。催告は状態を確定させるだけなので誰でもできる、取消しは自分が離脱するだけなので善意で足りる、履行や損害賠償を求めるには落ち度がないことが必要、という順序で理解すると忘れません。
表見代理は「言った・与えた・切れた」
三類型は、本人の行為を三語で覚えます。
109条は「言った」。代理権を与えたと表示した。
110条は「与えた」。基本代理権を現に与えた。
112条は「切れた」。与えていた代理権が消滅した。
そして、範囲を超えたら「正当な理由」に切り替わる、と付け加えれば五つの規定が整理できます。
相続は「矛盾するか」で決める
無権代理と相続は、自分の行為と矛盾する主張になるかどうかで判断します。
無権代理をした本人が本人の地位を得た場合は矛盾するので、拒絶が制限されます。無権代理をしていない本人が無権代理人の地位を得た場合は矛盾しないので、拒絶できます。共同相続なら他の相続人の権利を奪えないので、全員の追認が必要です。
条文番号は枝番と近接番号に注意
代理の分野で番号を取り違えやすいのは三か所です。法定代理人による復代理人の選任は105条(106条ではない)。代理権の消滅事由は111条で、表見代理の112条と隣り合っています。無権代理の相手方の権利は催告が114条、取消しが115条、追認の遡及効が116条、無権代理人の責任が117条という並びです。改正で入った規定の位置づけは民法改正のポイントでも触れています。
理解度チェッククイズ
Q1. 無権代理の相手方は、契約の時に代理権がないことを知っていた場合であっても、本人に対して追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。(○か×か)
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○:民法114条は催告権について相手方の主観要件を定めていません。悪意の相手方でも催告できます。なお、本人が相当の期間内に確答をしないときは、追認を拒絶したものとみなされます。Q2. 無権代理の相手方が契約を取り消すためには、代理権がないことについて善意であり、かつ無過失でなければならない。(○か×か)
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×:民法115条ただし書は「契約の時において代理権を有しないことを相手方が知っていたときは、この限りでない」と定めるにとどまります。善意であれば足り、無過失までは要求されていません。Q3. 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかった場合、その者が自己に代理権のないことを知っていたときであっても、相手方は民法117条の責任を追及することができない。(○か×か)
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×:民法117条2項2号はただし書で「他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない」と定めています。無権代理人が悪意であれば、相手方に過失があっても責任を追及できます。Q4. 制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限を理由として取り消すことができる。(○か×か)
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×:民法102条本文は、制限行為能力者が代理人としてした行為は行為能力の制限によっては取り消すことができないと定めています。代理行為の効果は本人に帰属し、代理人が不利益を受けないためです。ただし同条ただし書により、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為は例外です。Q5. 本人が第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した場合において、その他人が表示された代理権の範囲外の行為をしたときは、民法に規定がないため表見代理は成立しない。(○か×か)
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×:民法109条2項が、この場合について第三者にその他人の代理権があると信ずべき正当な理由があるときに限り本人が責任を負うと定めています。代理権消滅後に範囲外の行為がされた場合についても112条2項が同様の規定を置いています。Q6. 無権代理人が本人を他の相続人とともに共同相続した場合、無権代理人の相続分に相当する部分については、無権代理行為は当然に有効となる。(○か×か)
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×:追認権は本人の地位に属する権利で、共同相続人全員に不可分に帰属します。無権代理人ひとりの意思で確定させると、無権代理に関与していない他の共同相続人の権利を奪うことになるため、相続分に相当する部分についても当然には有効になりません。共同相続人全員が追認する必要があります。Q7. 委任による代理人は、本人の許諾を得たときまたはやむを得ない事由があるときでなければ復代理人を選任することができず、法定代理人は自己の責任で復代理人を選任することができる。(○か×か)
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○:前段は民法104条、後段は民法105条のとおりです。なお105条は、やむを得ない事由があるときは本人に対して選任および監督についての責任のみを負うと続けています。条文番号は105条であり、106条は復代理人の権限等を定める別の条文です。まとめ
代理は、次の四点に集約できます。
- 効果帰属には代理権と顕名の二つが要る(99条1項)。 顕名を欠けば代理人自身のためにしたものとみなされますが、相手方が知りまたは知ることができたときは本人に帰属します(100条)。善意・悪意は原則として代理人について決し、特定の法律行為を委託された場合には本人の悪意も考慮されます(101条)。
- 代理権の範囲内でも無権代理とみなされる場合がある。 代理権の濫用で相手方が悪意または有過失のとき(107条)、自己契約・双方代理(108条1項)、利益相反行為(108条2項)です。いずれも「みなす」なので、本人の追認によって有効になりえます。
- 無権代理の相手方には三つの権利がある。 催告権は主観要件なし(114条)、取消権は善意で足り(115条)、無権代理人の責任は善意かつ無過失が必要で履行か損害賠償かを相手方が選びます(117条)。確答がなければ追認拒絶とみなされる点に注意してください。
- 表見代理は本人の帰責性で三つに並ぶ。 代理権授与の表示(109条1項)、権限外の行為(110条)、代理権消滅後(112条1項)です。範囲外の行為に及んだ場合の重畳適用は109条2項と112条2項に条文化されており、主観要件はいずれも「正当な理由」に一本化されています。
権利関係全体のどこにこの論点が位置するかは権利関係の全体像、宅建業者が代理や媒介を引き受ける場面の規律は媒介契約の種類と規制で扱っています。
宅建試験AIブートラボでは、代理の肢別トレーニングを収録しています。無権代理と表見代理は、相手方の主観要件を入れ替えた肢で失点しやすいので、条文の文言に戻りながら繰り返し解いてください。
民法・借地借家法・区分所有法など、条文だけでは判断しづらい論点は、過去問の肢で覚えるのが最短です。