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不動産営業の仕事|宅建業法で読む営業実務

キャリア・試験情報 読了 約25分

不動産営業の仕事を、広告規制32条から勧誘規制47条の2、媒介契約34条の2、報酬の制限46条まで条文に沿って解説。反響から決済までの流れ、物件調査の項目、宅建士でなければできない業務の境界を整理します。

目次

    この記事は、不動産営業という仕事を、精神論ではなく宅地建物取引業法の条文から説明するものです。宅建士の独占業務そのものは宅建士の仕事内容に、職種の選び方や求人の読み方は宅建の転職先に譲り、ここでは「営業の一日の動きに、どの条文がどう効いているか」に絞ります。

    先に結論を述べます。不動産営業の仕事は、他の業界の営業と決定的に違う点が一つあります。営業活動そのものが法律で規制されているという点です。どんな広告を出せるか、いつから出せるか、どう勧誘してよいか、いくら受け取れるか、いつ契約を結べるか。これらはすべて宅建業法の条文が枠を決めており、外れれば監督処分と罰則の対象になります。宅建の学習内容が「実務で役に立つ」というのは比喩ではなく、学習した条文が業務の可否をそのまま決めているという意味です。以下、取引の流れに沿って、各段階で働く規制と必要になる知識を見ていきます。

    営業活動そのものが法律の規制対象になっている

    なぜ営業に規制がかかるのか

    不動産取引には二つの特徴があります。第一に、扱う金額が大きく、多くの人にとって生涯に数回しかない取引であること。第二に、物件の状態や法令上の制限について、売る側と買う側の情報量が大きく違うことです。この情報の差を放置すると、売り手側が有利な情報だけを示して契約させることが構造的に可能になってしまいます。

    そこで宅建業法は、参入を免許制にしたうえで(3条)、業務の各段階に具体的な行為規制を置きました。免許制度そのものは宅建業の免許制度で扱っています。営業担当者から見ると、これらの規制は「守るべきルール」であると同時に、「顧客が自社を信用する根拠」でもあります。

    規制の地図を先に持つ

    営業の流れに沿って条文を並べると、次のようになります。物件を預かるところで34条の2の媒介契約、広告を出すところで32条の誇大広告等の禁止・33条の広告開始時期の制限・34条1項の取引態様の明示、問い合わせを受けたところで34条2項の取引態様の明示、勧誘の場面で47条と47条の2、契約の時期について36条、契約前の説明で35条、契約時の書面で37条、そして受け取る金額について46条。

    これに加えて、場面を限定せず業務全般に及ぶ規制として、44条の不当な履行遅延の禁止と45条の秘密を守る義務があります。営業担当者が扱う情報のほとんどは顧客の資産と家族の事情に関わるものなので、45条は日常的に効いてくる条文です。

    違反したときに何が起きるか

    宅建業法違反の効果は二系統あります。一つは行政処分で、指示処分、業務停止処分、免許取消処分があります(65条、66条)。もう一つは刑事罰です。どの条文に違反するとどの罰則が適用されるかは条文ごとに違い、罰則が置かれていない規定もあります。処分の区別は監督処分、罰則の対応関係は宅建業法の罰則一覧にまとめています。

    重要なのは、行政処分の名宛人が宅建業者、つまり会社だという点です。担当者個人の判断で行った違反であっても、業者の業務としてなされたものであれば業者の違反として扱われます。営業担当者の行為が会社の免許に直結する、という構造がここにあります。業者と宅建士それぞれが負う義務の切り分けは宅建業者と宅建士の義務の違いで整理しています。

    広告の段階で働く規制

    営業活動の入口は広告です。ここには内容・時期・記載事項の三方向から規制がかかります。

    内容の規制(32条の誇大広告等の禁止)

    32条は、著しく事実に相違する表示や、実際のものより著しく優良・有利であると誤認させる表示を禁じています。押さえるべき点が三つあります。

    第一に、対象事項が限定列挙されている点です。所在、規模、形質、現在または将来の利用の制限、環境、交通その他の利便、代金・借賃等の対価の額や支払方法、代金や交換差金に関する金銭の貸借のあっせんが対象です。列挙外の事項、たとえば自社の営業成績についての誇張は32条には当たりません。ただしそれが相手方の判断に重要な影響を及ぼす事実であれば、47条1号の問題になり得ます。

    第二に、「著しく」という限定がある点です。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」32条関係は、相違の度合いの大きさだけで判断するのではなく、一般購入者等が誤認するかどうかで判断すべきとしています。基準は数値のずれ幅ではなく受け手の認識です。

    第三に、損害の発生も契約の成立も要件でない点です。誇大広告を出した時点で違反が成立します。実際に取引可能でない物件を掲載する、いわゆるおとり広告も、32条の誇大広告等に含まれるものとして扱われます。詳細は広告に関する規制にまとめています。

    時期の規制(33条の広告開始時期の制限)

    33条は、宅地の造成または建物の建築に関する工事の完了前においては、都市計画法29条1項・2項の許可、建築基準法6条1項の確認その他政令で定める許可等の処分があった後でなければ、その工事に係る宅地建物の売買その他の業務に関する広告をしてはならないと定めています。

    営業実務でとくに意味があるのは、「申請中である旨を明示すれば広告できる」という扱いが認められていないことです。処分が現に存在していなければ広告は出せません。また、33条は「売買その他の業務に関する広告」なので、貸借の広告も対象です。建築中のアパートの入居者募集を建築確認前に出すことも違反になります。工事が完了した物件については、この制限は働きません。

    記載事項の規制(34条の取引態様の明示)

    34条1項は、売買・交換・貸借に関する広告をするときに、自ら当事者となるのか、代理なのか、媒介なのかの別を明示することを求めています。34条2項は、注文を受けたときに、遅滞なくその注文者に対して取引態様の別を明らかにすることを求めています。つまり明示の場面は広告時と注文時の二回あります。

    営業実務では、この二回目が抜けやすい規定です。広告に「媒介」と書いてあっても、問い合わせを受けた時点で改めて明らかにする義務があります。明示の方法は条文で定められておらず、口頭でも足ります。また、相手方が取引態様を既に知っていても、相手方が宅建業者であっても、明示義務はなくなりません。この論点は取引態様の明示義務で詳しく扱っています。

    取引態様が実務上重要なのは、誰から報酬を受け取れるかがここで決まるからです。自ら売主であれば報酬という概念がなく、媒介であれば依頼者から報酬を受け取り、代理であれば媒介の2倍が上限になります。営業が最初に確認すべき前提条件と言えます。

    勧誘の段階で働く規制

    営業活動でもっとも直接的に効いてくるのが、47条と47条の2です。この二本は場面を限定せず業務全般に及びます。

    二本の条文の違い

    47条は宅建業者を名宛人とし、内容の悪質性から刑事罰まで用意されています。47条の2は「宅地建物取引業者等」、すなわち業者だけでなく代理人・使用人その他の従業者までを名宛人とし、勧誘の方法そのものを規制する規定で、罰則は置かれていません。「誰に対する規定か」と「刑罰があるか」の二軸を先に固定すると、細かい号の中身が整理できます。全体像は宅建業法47条の禁止行為にまとめています。

    47条1号 重要な事実の故意の不告知・不実告知

    47条1号は、一定の事項について故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為を禁じています。対象事項には、35条各号に掲げる事項、37条各号に掲げる事項、供託所等に関する事項に加えて、「相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの」が含まれます。この最後の受け皿があるため、35条書面や37条書面に列挙されていない事柄でも対象に入り得ます。

    適用場面が二つある点も重要です。契約の締結について勧誘をするに際しての行為だけでなく、契約の申込みの撤回や解除、債権の行使を妨げるための行為も禁じられています。「クーリング・オフはもうできない」と事実に反することを告げて撤回を妨げる行為は、契約締結後の行為ですがこの号に当たります。クーリング・オフの要件はクーリング・オフ制度で確認できます。

    47条1号には「故意に」という主観的要件があります。知らなかった事実を告げなかった場合は、この号には当たりません。ただし、営業として当然に調査すべき事項を調査せずに説明を誤った場合には、別途、民事上の説明義務違反や調査義務違反が問題になり得ます。宅建業法上の規制と民事上の責任は別系統だという点は、宅建業者の説明義務まとめで扱っています。

    物件で人が亡くなった事案の扱いについては、国土交通省が令和3年10月8日に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表しています。同ガイドラインは、そこで示した対応を行わなかったことだけをもって直ちに宅建業法違反となるものではないとしつつ、トラブルとなった場合には監督に当たって参考にされるとしています。判断の枠組みは心理的瑕疵と告知義務にまとめています。

    47条2号 不当に高額の報酬の要求

    47条2号は、不当に高額の報酬を要求する行為を禁じています。条文の動詞は「要求する」であって「受け取る」ではないため、相手が拒んで支払わなかった場合でも違反が成立します。上限を超えて実際に受領した場合の46条2項違反とは、成立時点が違うという点で対比されます。

    47条3号 手付の貸付けによる契約締結の誘引

    47条3号は、手付について貸付けその他信用の供与をすることにより契約の締結を誘引する行為を禁じています。典型は手付金の貸付けですが、手付金を分割で支払わせること、支払を後日に猶予すること、手付金の代わりに約束手形を受け取ることも信用の供与に当たります。これに対して、手付金の額そのものを引き下げることは、業者が信用を与える構造になっていないため、この号には当たらないと考えられます。手付の額の制限は手付金の制限で扱っています。

    営業の現場では「手付が用意できない」という相談が起きます。そこで会社が立て替える、あるいは分割にするという提案は、契約を取るための便宜に見えて条文が正面から禁じている行為です。しかも47条3号は自ら売主かどうかを問わず、媒介や代理でも適用され、相手方が宅建業者であっても適用されます。適用範囲が8種制限より広い点に注意してください。

    47条の2 断定的判断の提供と威迫

    47条の2第1項は、契約締結の勧誘をするに際し、利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供する行為を禁じています。「この物件は数年で必ず値上がりします」「家賃収入で確実にローンを返済できます」といった言い方が典型です。実際に値上がりしたかどうかは関係ありません。禁じられているのは、不確実なことを確実だと誤解させる言い方そのものです。

    47条1号との違いは対象の時制です。47条1号は過去または現在の「事実」について嘘を言うことや黙っていることを禁じ、故意を要件としています。47条の2第1項は「将来の見通し」について確実だと誤解させることを禁じ、条文に故意の文言はありません。

    47条の2第2項は、契約を締結させ、または申込みの撤回もしくは解除を妨げるために、相手方等を威迫することを禁じています。威迫は、脅迫に至らない程度の、相手を困惑させ不安を覚えさせる言動を指すものと理解されています。刑法の脅迫罪のように生命や身体への害悪の告知までは必要とされていません。

    施行規則16条の11が定める不当な勧誘行為

    47条の2第3項は、1項・2項のほか、相手方等の保護に欠ける行為として国土交通省令で定めるものを禁じており、その中身は宅地建物取引業法施行規則16条の11に置かれています。1号のイからヘまでの六つが、勧誘に際しての禁止行為です。

    イは、将来の環境または交通その他の利便について誤解させるべき断定的判断を提供すること。法47条の2第1項が「利益が確実」という点を捉えているのに対し、規則のイは環境や利便を捉えています。「数年後にここに駅ができます」という発言はこちらです。

    ロは、正当な理由なく、契約を締結するかどうかを判断するために必要な時間を与えることを拒むこと。持ち帰って検討する時間を与えずに即決を迫る行為が想定されます。

    ハは、業者の商号または名称、勧誘を行う者の氏名、勧誘をする目的である旨を告げずに勧誘を行うこと。勧誘に先立って三点を告げることが求められます。

    ニは、相手方等が契約を締結しない旨の意思を表示したにもかかわらず、勧誘を継続すること。この意思表示には、その勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思も含まれます。

    ホは、迷惑を覚えさせるような時間に電話し、または訪問すること。条文は時刻を数字で区切っていません。

    ヘは、深夜または長時間の勧誘その他の私生活または業務の平穏を害するような方法により、その者を困惑させること。ホが時間帯に着目するのに対し、ヘは長時間の拘束に着目しています。

    2号は、申込みの撤回に際して既に受領した預り金の返還を拒むこと。3号は、手付を放棄して契約を解除するに際し、正当な理由なくその解除を拒み、または妨げることです。いずれも、契約を取り消させないための引き止め行為を封じる規定です。

    これら六つを眺めると、規制されているのは営業の熱意そのものではなく、相手が判断する条件を奪う行為だと分かります。名乗らない、考える時間を与えない、断られても続ける、平穏を害する。どれも相手の判断能力に働きかける行為です。

    媒介契約の段階で負う義務

    売却の依頼を受けたときに結ぶのが媒介契約です。ここで営業が負う義務は34条の2に定められています。

    3類型と、それぞれの拘束

    媒介契約には一般媒介、専任媒介、専属専任媒介の3類型があります。一般媒介は複数の業者に重ねて依頼でき、自分で見つけた相手と直接契約することもできます。専任媒介は他の業者に重ねて依頼できませんが、自己発見取引はできます。専属専任媒介は他社への依頼も自己発見取引もできません。依頼者の自由が狭まるほど、業者側の義務は重くなるという対応関係になっています。3類型の比較は媒介契約の3類型で扱っています。

    書面の作成・交付は3類型に共通

    34条の2第1項は、宅地建物の売買または交換の媒介契約を締結したときは、遅滞なく一定事項を記載した書面を作成して記名し、依頼者に交付しなければならないと定めています。一般媒介であっても書面の作成・交付は必要です。「一般媒介は規制が緩い」という印象で書面まで不要と処理するのは誤りです。

    条文が「売買又は交換の媒介」と書いているため、貸借の媒介は34条の2の対象外です。賃貸で媒介契約書を作るのは実務の慣行であって、法律上の義務ではありません。また34条の3により、売買・交換の代理を依頼する契約にも準用されます。

    価額の意見には根拠が要る

    34条の2第2項は、売買すべき価額または評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないと定めています。査定額を示すときに、比較した成約事例や算出の考え方を示す義務がここから出ています。根拠の明示を怠っても媒介契約が無効になるわけではありませんが、監督処分の対象になり得ます。

    営業の観点からは、この条文は依頼を取るための道具にもなります。根拠を示す義務があるという前提で査定書を組み立てれば、それがそのまま説明の説得力になるからです。

    有効期間・レインズ登録・報告

    専任媒介と専属専任媒介については、34条の2第3項が有効期間の上限を3か月と定めています。これより長い期間を定めたときは、契約が無効になるのではなく期間が3か月に短縮されます。更新は依頼者の申出により可能で、更新の時から3か月を超えることはできません。一般媒介には法律上の期間制限がありません。

    指定流通機構への登録義務と、業務処理状況の報告義務も、専任・専属専任にのみ課されています。登録の期限と報告の頻度は類型ごとに違い、混同しやすいところです。数字の対応関係は媒介契約書の記載事項に、指定流通機構という仕組みそのものはレインズとはにまとめています。

    営業実務では、この登録義務と報告義務が「専任を取りに行く理由」と「専任を取った後の負荷」の両方になります。専任を預かれば他社に横取りされませんが、その代わりに期限内の登録と定期的な報告を継続する義務が発生します。

    受け取れる金額の制限

    46条が定める上限

    46条1項は、宅建業者が受けることのできる報酬の額を国土交通大臣が定めることとし、2項は、その額を超える報酬を受けてはならないと定めています。上限は告示で定められており、売買の媒介では代金額に応じた区分計算、または速算式で求めます。代理の場合は媒介の2倍が上限で、双方から受け取る場合の合計も媒介の2倍を超えることはできません。計算方法は報酬額の制限仲介手数料の計算方法と上限で扱っています。

    46条4項は、事務所ごとに、公衆の見やすい場所に報酬の額を掲示することを義務づけています。店頭に報酬額表が貼ってあるのはこの条文によるものです。

    別に受け取れるものは限られている

    営業実務で誤解が生じやすいのが、報酬とは別に費用を請求できるかという点です。告示および国土交通省の解釈・運用の考え方によれば、報酬とは別に受領できるのは、依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額と、依頼者の特別の依頼により支出を要する費用で、事前に依頼者の承諾があるものに限られます。

    ここでの分かれ目は「依頼者の依頼によるものか」です。業者が通常の営業活動として行う広告や、通常の物件調査に要する費用は、報酬に含まれているものとして扱われ、別途請求できません。依頼者が特別に希望した遠隔地への出張旅費のような場合に限って、事前の承諾を前提に別枠になります。

    なお、低廉な空家等の売買・交換の媒介については、現地調査等の費用を勘案した特例が告示に置かれています。適用要件と上限額は改正で変わっているため、最新の告示で確認してください。

    47条2号との関係

    上限を超えて受領すれば46条2項違反、不当に高額の報酬を要求すれば47条2号違反です。前者は受領して初めて成立し、後者は要求だけで成立します。両方に当たる場面もあります。営業の現場では「値引き交渉の余地があるのは上限の内側だけ」という理解で足ります。

    物件調査で何を見るか

    営業が扱う情報の正確さは、物件調査の質で決まります。ここは宅建で学んだ内容がもっとも直接的に実務になる領域です。調査の手順そのものは不動産の物件調査の方法で扱っているので、ここでは試験知識との対応に絞ります。

    登記記録

    登記記録は表題部と権利部に分かれ、権利部は甲区と乙区に分かれます。表題部には所在、地番、地目、地積、建物であれば家屋番号、種類、構造、床面積が記録されます。甲区には所有権に関する事項、乙区には所有権以外の権利、すなわち抵当権、根抵当権、賃借権、地役権などが記録されます。

    営業が確認するのは、まず売主として名乗る人が甲区の所有者と一致しているか。次に乙区に担保権が付いているか、付いているなら決済時に抹消できる見込みがあるか。そして差押えや仮処分の登記がないか。権利関係の基礎は物権変動と対抗要件、登記記録の見方は不動産登記簿の読み方で確認できます。

    登記記録上の地積と実測面積が一致しないことは珍しくありません。公簿売買とするか実測売買とするかは契約条件の問題であり、営業段階で決めておくべき事項です。

    法令上の制限

    役所での調査で確認するのは、用途地域、建蔽率・容積率、防火地域・準防火地域の指定、高度地区や日影規制、都市計画道路の予定地に掛かっていないか、地区計画の有無などです。用途地域ごとの制限は用途地域13種類と建築制限、面積の計算に直結する規制は建ぺい率と容積率で扱っています。

    道路の調査も欠かせません。建築基準法上の道路に該当するか、幅員はいくつか、42条2項道路であればセットバックが必要か。接道義務を満たさない土地は、原則として建物を建て替えられません。この一点で価格が大きく変わるため、調査の抜けがそのまま取引の事故につながります。私道に関する負担は、建物の貸借を除いて重要事項説明の項目でもあります(35条1項3号)。

    インフラ

    飲用水、電気、ガスの供給施設および排水施設の整備の状況は、35条1項4号の説明事項です。整備されていない場合は、その整備の見通しと特別の負担についても説明する必要があります。実務では、上水道が公営か私設か、下水道が公共下水か浄化槽か、ガスが都市ガスかプロパンかを確認します。前面道路の下を通る給排水管が他人の私設管である場合、掘削の承諾が必要になることがあり、これは価格と工期の両方に影響します。

    ハザード情報と建物の安全性

    水防法に基づき市町村長が提供する水害ハザードマップにおける物件の所在地は、重要事項説明の対象です。令和2年8月28日から施行規則16条の4の3に加えられた項目で、比較的新しい規定にあたります。あわせて、土砂災害警戒区域内か、津波災害警戒区域内か、造成宅地防災区域内かも説明事項です。

    建物については、既存建物の売買・交換の媒介において、建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を媒介契約書面に記載すること、建物状況調査を実施しているかどうかとその結果の概要を35条書面で説明すること、そして構造耐力上主要な部分等の状況について当事者双方が確認した事項を37条書面に記載することが求められます。中古住宅の営業では、この三点が媒介契約から契約書までを貫く軸になります。

    契約の段階と、宅建士でなければできないことの境界

    契約締結時期の制限(36条)

    36条は、工事の完了前においては、必要な許可等の処分があった後でなければ、その工事に係る宅地建物について、自ら当事者としてもしくは当事者を代理して売買・交換の契約を締結し、またはその売買・交換の媒介をしてはならないと定めています。

    33条との違いは二つあります。一つは規制の対象で、33条が広告、36条が契約締結です。もう一つは取引の範囲で、33条が貸借の広告も含むのに対し、36条は売買・交換に限定され、貸借を対象外としています。建築確認前のアパートについて、広告を出すことは33条違反になりますが、貸借の契約を結ぶこと自体は36条の射程外です。この一点が繰り返し狙われます。

    重要事項説明(35条)

    35条1項は、宅建業者に対し、契約が成立するまでの間に、宅建士をして重要事項を説明させることを義務づけています。義務を負うのは業者ですが、説明を行う主体は宅建士でなければならず、その宅建士は説明の相手方に宅建士証を提示しなければなりません(35条4項)。記載事項の全体像は35条書面の記載事項一覧にまとめています。

    営業実務での位置づけは、「調査結果の最終確認」です。物件調査で集めた情報が漏れなく書面に反映されているかを確認する場面であり、ここで初めて調べ始めるようでは間に合いません。

    37条書面

    契約が成立したときは、遅滞なく37条書面を交付します。35条書面と違い、説明義務はなく、宅建士の記名が求められます。交付の相手方も違い、35条書面が買主・借主等に交付されるのに対し、37条書面は契約の両当事者に交付されます。記載事項の区別は37条書面の記載事項で扱っています。

    宅建士でなければできないことと、そうでないこと

    営業活動の大部分は、宅建士でなくてもできます。物件の調査、資料の作成、案内、条件の交渉、住宅ローンの相談への同席、契約日程の調整。これらに資格要件はありません。

    宅建士でなければできないのは三つです。重要事項の説明(35条1項)、35条書面への記名(35条5項)、37条書面への記名(37条3項)です。

    境界が問題になるのは、顧客への説明の場面です。物件の設備や周辺環境について説明することは、独占業務ではありません。しかし、35条の説明事項にあたる内容を、契約前に、法定の重要事項説明として行うのであれば宅建士でなければなりません。実務では、無資格の営業担当が調査結果を先に伝え、契約前に宅建士が改めて35条書面を交付して説明する、という運用になります。

    注意すべきは、無資格者が説明したから責任が軽くなるわけではないという点です。47条1号は宅建業者を名宛人とし、47条の2は従業者までを名宛人としています。資格の有無にかかわらず、事実と異なることを告げれば規制の対象です。この構造は宅建業者と宅建士の義務の違いで整理しています。

    なお、35条の説明も37条書面の交付も、一定の要件を満たせばオンラインおよび電磁的方法で行えるようになっています。要件はIT重説と書面電子化で扱っています。

    業態による違いと、待遇の調べ方

    業態で変わるのは規制ではなく頻度

    売買仲介、賃貸仲介、新築分譲、投資用不動産、法人向けの仲介。営業と呼ばれる仕事はこれらに分かれますが、適用される条文が変わるわけではありません。変わるのは、どの条文が何回働くかです。

    売買仲介では、媒介契約(34条の2)から35条・37条までの全工程が一件ごとに動きます。賃貸仲介では34条の2の適用がなく、35条の説明事項も貸借に固有のものになり、一件あたりの工程が短い代わりに件数が多くなります。賃貸の実務は賃貸仲介の実務、貸借に固有の説明事項は賃貸の重要事項説明で扱っています。

    自社が売主となる新築分譲では、媒介ではないため報酬の制限が働かない代わりに、8種制限が適用されます。クーリング・オフ、手付の額の制限、手付金等の保全措置、契約不適合責任の特約の制限などが一件ごとに関わってきます。全体像は8種制限とはにあります。

    投資用不動産の営業では、47条の2第1項の断定的判断の提供と、規則16条の11第1号の各行為が、他の業態より前面に出ます。将来の賃料収入や値上がりを語る場面が構造的に多いためです。

    法人向けの仲介では、相手方が宅建業者である場合に一部の規制の適用が変わる点を押さえる必要があります。8種制限は業者間取引に適用されません(78条2項)。一方で、47条や47条の2は相手方が業者でも適用されます。適用除外の範囲は8種制限が適用されないケースで扱っています。

    待遇は求人票ではなく統計と内訳で見る

    不動産営業の収入は、固定給と歩合の組み合わせで決まる会社が多く、提示される年収額だけでは実態が分かりません。確認すべきは、固定で保証される部分がいくらか、固定残業代が含まれているなら何時間分か、歩合の計算根拠が売上か粗利か、そして求人票の年収例が平均値か上位層の実績かです。

    業界全体の水準を知りたい場合は、公的統計に当たるのが確実です。厚生労働省の賃金構造基本統計調査は、産業別・企業規模別・年齢階級別に、きまって支給する現金給与額と年間賞与その他特別給与額を公表しており、不動産業についての区分もあります。求人票の数字がこの分布のどこに位置するかを見れば、提示額の意味が分かります。年収の見方は宅建士の年収、資格手当の扱いは宅建士の資格手当で扱っています。

    未経験からの入り方は未経験で不動産業界に転職、その後の進路は宅建士のキャリアパスにまとめています。

    試験での出題ポイント

    この記事で扱った条文は、宅建業法の出題範囲そのものです。営業実務として理解しておくと、条文の並びが記憶に残りやすくなります。

    33条と36条の対比

    もっとも問われるのがこの二つです。33条は広告、36条は契約締結。33条は貸借を含み、36条は売買・交換に限られる。この二点をセットで押さえます。「建築確認前でも、申請中である旨を表示すれば広告できる」は誤り、「建築確認前でも貸借の媒介はできる」は正しい、という形で出ます。

    34条の明示は二回

    広告時と注文時の二回。方法は書面に限らず口頭でも可。相手方が既に知っていても、相手方が業者でも省略できない。この三点が繰り返されます。

    47条と47条の2の名宛人と罰則

    47条は業者が名宛人で罰則あり、47条の2は従業者まで名宛人で罰則なし。「47条の2に違反した従業者は拘禁刑に処せられる」という記述は誤りです。また47条2号は「要求」で成立し、46条2項は「受領」で成立する、という成立時点の違いも狙われます。

    34条の2の数字は系統別に

    有効期間の3か月、指定流通機構への登録期限、業務処理状況の報告頻度は、それぞれ別の項に定められた別の義務です。一列に並べて覚えると、系統をまたいだ入れ替えに崩されます。また、書面の作成・交付義務は3類型に共通で、貸借には適用がなく、代理には準用がある、という適用範囲も出題されます。

    覚え方・整理の仕方

    条文を「営業の一日」の順に並べ替える

    宅建業法の条文は、おおむね取引の時系列に沿って並んでいます。媒介契約(34条の2)、広告(32条・33条・34条)、重要事項説明(35条)、契約締結時期(36条)、書面の交付(37条)、そして業務全般の規制(46条・47条・47条の2)。条番号の順に暗記するより、営業が実際に動く順に並べ直したほうが定着します。

    33条と36条は「宣伝」と「握手」

    33条は宣伝、36条は握手。宣伝は貸借でもしてはいけないが、握手は売買・交換だけの話。この二語で覚えると、貸借を含むかどうかで迷わなくなります。

    47条の2の規則は「判断を奪う四つ」で束ねる

    規則16条の11第1号のイからヘは、六つを個別に暗記するより、何を守っている規定かで束ねます。名乗らない(ハ)、考える時間を与えない(ロ)、断られても続ける(ニ)、平穏を害する(ホ・ヘ)。イだけが性質の違う断定的判断の提供です。「相手が落ち着いて判断する条件を奪うな」という一本の趣旨から、五つは思い出せます。

    報酬の別枠は「依頼者が頼んだかどうか」

    報酬とは別に受け取れるのは、依頼者の依頼による広告の料金と、依頼者の特別の依頼による費用で事前承諾のあるものだけです。判断の基準は一つ、依頼者が自分から頼んだかどうか。業者が勝手にやったことは請求できない、と覚えます。

    独占業務は「説明ひとつ、記名ふたつ」

    宅建士でなければできないのは、重要事項の説明が一つと、35条書面・37条書面への記名が二つ。合わせて三つです。「説明ひとつ、記名ふたつ」と唱えると、案内や交渉が独占業務に含まれないことも同時に思い出せます。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 宅地建物取引業者は、建築確認を受けていない建築工事完了前の建物について、建築確認申請中である旨を明示すれば、その売買の広告をすることができる。

    × 誤り。 宅建業法33条は、必要とされる許可等の処分があった「後でなければ」広告をしてはならないと定めています。申請中である旨を明示しても、処分が現に存在していない以上は違反です。

    Q2. 宅地建物取引業者は、建築確認を受けていない建築工事完了前の建物について、貸借の媒介をすることはできないが、貸借の広告をすることはできる。

    × 誤り。 記述が逆です。36条は売買・交換の契約締結とその代理・媒介を制限しており、貸借は対象外なので貸借の媒介はできます。一方33条は「売買その他の業務に関する広告」を対象としており貸借の広告も含むため、確認前の広告はできません。

    Q3. 宅地建物取引業者が、広告に取引態様の別を明示していた場合であっても、その広告を見た者から注文を受けたときは、遅滞なく取引態様の別を明らかにしなければならない。

    ○ 正しい。 34条1項が広告時の明示を、34条2項が注文を受けたときの明示を、それぞれ別に義務づけています。広告で明示していたことは、2項の義務を免れる理由になりません。

    Q4. 宅地建物取引業者の従業者が、契約締結の勧誘に際して、利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供した場合、その従業者は宅建業法47条の2第1項違反として拘禁刑に処せられる。

    × 誤り。 47条の2は宅地建物取引業者等、すなわち従業者までを名宛人としているため、名宛人の点は正しいのですが、47条の2には罰則が置かれていません。刑事罰が用意されているのは47条のほうです。

    Q5. 宅地建物取引業者は、媒介の依頼者から、依頼者の依頼によって行った広告の料金に相当する額を、報酬の上限額とは別に受領することができる。

    ○ 正しい。 報酬とは別に受領できるのは、依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額と、依頼者の特別の依頼による支出で事前に承諾を得た費用に限られます。業者が通常の営業活動として行う広告の費用は報酬に含まれ、別途請求できません。

    まとめ

    1. 不動産営業は、営業活動そのものが宅建業法の規制対象になっている職種である。広告(32条・33条・34条)、勧誘(47条・47条の2と規則16条の11)、媒介契約(34条の2)、契約時期(36条)、報酬(46条)が、業務の可否を直接決めている。
    2. 宅建士でなければできないのは、重要事項の説明と35条・37条書面への記名の三つだけで、調査・案内・交渉は無資格でもできる。ただし47条・47条の2は資格の有無を問わず適用される。
    3. 物件調査は宅建の試験範囲がそのまま実務になる領域で、登記記録、法令上の制限と接道、インフラ、ハザード情報が中心。ここでの抜けが、後の説明義務違反に直結する。

    よくある質問

    Q. 宅建がなくても不動産営業はできますか。

    A. できます。独占業務は重要事項の説明と35条・37条書面への記名の三つで、調査、案内、条件交渉は無資格でも行えます。ただし契約のたびに宅建士に依頼する必要があり、任される範囲は狭くなります。多くの会社が有資格者を求めるのは、業務効率と、31条の3が定める専任の宅建士の設置義務の両方の理由からです。設置義務の中身は専任の宅建士の設置義務にあります。

    Q. 営業で法令違反をした場合、責任を負うのは会社ですか、担当者個人ですか。

    A. 行政処分の名宛人は宅建業者、つまり会社です。担当者個人の判断で行った行為でも、業者の業務としてなされた以上は業者の違反として扱われます。刑事罰については条文ごとに定めが異なり、47条には罰則があり、47条の2にはありません。

    Q. 顧客に「絶対に値上がりする」と言ってはいけないのはなぜですか。

    A. 47条の2第1項が、利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断の提供を禁じているためです。実際に値上がりしたかどうかは関係なく、不確実なことを確実だと誤解させる言い方そのものが禁じられています。将来の環境や交通の利便についての断定的判断は、施行規則16条の11第1号イが別に禁じています。

    Q. トラブルになりやすいのはどの段階ですか。

    A. 制度上の枠組みから言えば、調査の抜けが後で説明義務違反として現れる構造になっています。接道、私道の負担、インフラ、ハザード情報は、いずれも重要事項説明の項目でありながら、現地と役所の両方を見ないと分からないものです。類型ごとの整理は不動産取引トラブルの類型で扱っています。


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