事務所じむしょ
宅地建物取引業法でいう事務所は、本店、支店のほか、継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で、宅地建物取引業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くものをいいます(3条1項、施行令1条の2)。免許を誰から受けるか、営業保証金をいくら供託するか、専任の宅地建物取引士を何人置くかは、すべてこの事務所を基準に決まります。
不動産会社の看板を掲げた店舗には、本店もあれば、駅前の支店も、分譲地に建てた仮設の案内所もあります。このうち法律が「事務所」と呼ぶのは、腰を据えて営業を続ける拠点だけです。事務所に当たると、標識、報酬額の掲示、帳簿、従業者名簿、専任の宅地建物取引士という五つの備えが必要になり、営業保証金も事務所の数に応じて増えます。案内所のように一時的に設ける場所は事務所ではなく、求められる備えも軽くなります。

本店と支店のほか、契約を結ぶ権限のある人を置く場所も事務所です
施行令1条の2は事務所を二つ挙げています。一つは本店又は支店で、会社のような商人でない者では主たる事務所又は従たる事務所です。もう一つは、継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で、宅地建物取引業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くものです。「営業所」や「出張所」という名前で商業登記簿に載っていなくても、施設があって契約を結ぶ権限を持つ人が置かれていれば、事務所に当たります。名前や登記ではなく、そこで契約まで行える拠点かどうかという実態で決まります。
宅地建物取引業を営まない支店は、事務所に当たりません
支店は、そこで宅地建物取引業を営んでいるときに限って事務所になります。建設業だけを営む支店のように、宅地建物取引業を営まない支店は事務所に数えません。これに対して本店は、そこで直接宅地建物取引業を営んでいなくても、支店で営んでいれば事務所として扱われます。条文に明文はありませんが、本店は支店の業務を統括する立場にあるためと説明されています。甲県の本店では建設業だけを営み、乙県の支店で宅地建物取引業を営む会社は、二つの県に事務所があることになり、国土交通大臣の免許を受けます。

事務所の代表者は「政令で定める使用人」と呼ばれます
条文に繰り返し出てくる「政令で定める使用人」とは、宅地建物取引業者の使用人で、事務所の代表者であるものをいいます(施行令2条の2)。支店長や営業所長がこれに当たります。役員ではありませんが、その事務所の取引を取り仕切る立場なので、法律は役員と並べて扱います。免許申請書に氏名を記載し、代わったときは30日以内に変更の届出をします。政令で定める使用人が免許の欠格事由に当たると、会社そのものが免許を受けられず、すでに受けた免許は取り消されます。
事務所ごとに備えるものは五つあります
事務所には、公衆の見やすい場所に標識を掲げ(50条1項)、国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示します(46条4項)。業務に関する帳簿(49条)と従業者名簿(48条3項)を備え、業務に従事する者の5分の1以上の数の成年者である専任の宅地建物取引士を置きます(31条の3)。これらは本店だけでなく、事務所の一つひとつに求められます。本店にまとめて備えておけば支店の分を省ける、という扱いはありません。免許証を掲げる義務は、条文のどこにも置かれていません。

宅地建物取引業法施行令 1条の2法第三条第一項の事務所は、次に掲げるものとする。一 本店又は支店(商人以外の者にあつては、主たる事務所又は従たる事務所) 二 前号に掲げるもののほか、継続的に業務を行なうことができる施設を有する場所で、宅地建物取引業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くもの
試験ではこう問われる
- 商業登記簿に載っていない営業所でも、継続的に業務を行える施設があり、契約締結権限を有する使用人を置けば事務所(施行令1条の2第2号)
- 宅地建物取引業を営まず、他の兼業業務だけを営む支店は、事務所に当たらない
- 甲県の本店で宅地建物取引業を営まず、乙県の支店だけで営む場合も、本店は事務所に当たり、国土交通大臣の免許を受ける
- 政令で定める使用人は事務所の代表者。この者が欠格事由に当たると、法人は免許を受けられず、受けた免許は取り消される
- 標識、報酬額の掲示、帳簿、従業者名簿は事務所ごとに必要で、主たる事務所だけに備えれば足りるわけではない。免許証を掲げる義務はない
- 案内所は事務所ではないので、報酬額の掲示、帳簿、従業者名簿の備付けは要らない
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