営業保証金えいぎょうほしょうきん
宅地建物取引業者が、取引の相手に損害を与えたときの弁済に充てるため、主たる事務所の最寄りの供託所にあらかじめ供託しておく金銭又は有価証券です(25条)。額は主たる事務所につき1,000万円、その他の事務所につき事務所ごとに500万円で、供託した旨を届け出た後でなければ事業を開始できません。
不動産会社に手付金を払ったのに、会社が倒産して返ってこない。こういうときに備えて、業者は開業の前にまとまったお金を国の機関である供託所に預けておきます。これが営業保証金です。被害を受けた客は、会社に資産が残っていなくても、供託所からこのお金の払渡し(還付)を受けることができます。預ける額は事務所の数で決まり、本店だけなら1,000万円、支店が一つあれば1,500万円です。

供託して届け出るまで、事業を開始できません
営業保証金は、主たる事務所の最寄りの供託所に、支店の分もまとめて供託します(25条1項)。金銭のほか有価証券でもよく、併用もできます。有価証券は、国債証券は額面金額どおり、地方債証券と政府保証債は額面金額の100分の90、それ以外の債券は100分の80で評価します(施行規則15条)。供託したら、供託書の写しを添えて免許権者に届け出て、その届出の後でなければ事業を開始してはなりません(25条4項・5項)。免許の日から3月以内に届出がないと免許権者は催告をしなければならず、催告が到達した日から1月以内に届出がないときは、免許を取り消すことができます(同条6項・7項)。事業の開始後に事務所を新設したときも、その分を主たる事務所の最寄りの供託所に供託して届け出た後でなければ、新しい事務所で事業を開始できません(26条)。
還付を受けられるのは、宅地建物取引業の取引で生じた債権です
業者と宅地建物取引業に関し取引をした者は、その取引により生じた債権について、営業保証金から弁済を受ける権利を有します(27条1項)。手付金の返還請求権や、業者の債務不履行による損害賠償請求権がこれに当たります。広告の代金、建設工事の請負代金、家賃の収納代行の委託から生じた債権、現地案内中の交通事故による損害賠償請求権は、宅地建物取引業の取引から生じた債権ではないので、対象になりません。取引をした者が宅地建物取引業者であるときは、還付を受けられません。弁済を受けられる額は、取引をした事務所の分ではなく、その業者が供託している営業保証金の全額が上限です。

不足したら、通知から2週間以内に補います
還付が行われると、供託している額が政令で定める額に足りなくなります。業者は、免許権者から不足額を供託すべき旨の通知書の送付を受けた日から2週間以内に、不足額を供託しなければなりません(28条1項、宅地建物取引業者営業保証金規則5条)。供託したら、その日から2週間以内に、供託書の写しを添えて免許権者に届け出ます(28条2項)。数えはじめは還付があった日ではなく、通知書の送付を受けた日です。
取り戻すには、原則として6月以上の公告が要ります
免許の有効期間の満了、廃業、免許の取消し、一部の事務所の廃止などで営業保証金が要らなくなったときは、取り戻すことができます(30条1項)。ただし、還付を受ける権利を持つ人が残っているかもしれないので、6月を下らない一定期間内に申し出るべき旨を官報で公告し、その期間内に申出がなかった場合でなければ取り戻せません(同条2項、宅地建物取引業者営業保証金規則7条)。公告が要らないのは三つの場合です。主たる事務所の移転で新しい供託所に供託し直した後に元の供託所の分を取り戻すとき、保証協会の社員になって供託が要らなくなったとき、取り戻せる事由が発生してから10年を経過したときです。主たる事務所を移転して最寄りの供託所が変わった場合、金銭だけで供託しているなら、遅滞なく、費用を予納して今の供託所に保管替えを請求します。有価証券を含むときは保管替えができないので、遅滞なく、移転後の最寄りの供託所に新たに供託します(29条)。

宅地建物取引業法 25条1項・5項、27条1項宅地建物取引業者は、営業保証金を主たる事務所のもよりの供託所に供託しなければならない。/宅地建物取引業者は、前項の規定による届出をした後でなければ、その事業を開始してはならない。/宅地建物取引業者と宅地建物取引業に関し取引をした者(宅地建物取引業者に該当する者を除く。)は、その取引により生じた債権に関し、宅地建物取引業者が供託した営業保証金について、その債権の弁済を受ける権利を有する。
試験ではこう問われる
- 額は主たる事務所1,000万円、その他の事務所は1か所500万円。本店と支店2か所なら2,000万円。支店で取引をした者も、供託された全額を限度に弁済を受けられる
- 供託先は主たる事務所の最寄りの供託所。他県に従たる事務所を新設したときも同じで、供託して届け出た後でなければその事務所で事業を開始できない
- 金銭と有価証券は併用できる。国債証券は額面の100%、地方債証券は90%で評価する。地方債800万円は720万円に評価され、1,000万円にするには国債280万円が要る
- 免許の日から3月以内に届出がなければ催告、催告の到達から1月以内に届出がなければ免許を取り消すことができる。供託所から免許権者への通知で届出に代わることはない
- 還付の対象は宅地建物取引業に関する取引により生じた債権。建設工事の請負代金、家賃収納代行の債権、交通事故の損害賠償は対象外。取引をした者が宅地建物取引業者なら権利がない
- 不足額は通知書の送付を受けた日から2週間以内に供託し、供託した日から2週間以内に届け出る。30日以内ではない
- 取戻しには6月以上の公告が要り、一部の事務所の廃止でも要る。主たる事務所の移転による供託し直し、保証協会への加入、事由発生から10年経過のときは不要。金銭のみの供託なら移転時は保管替えを請求する
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