特定行政庁とくていぎょうせいちょう
建築主事または建築副主事を置く市町村の区域ではその市町村の長、その他の市町村の区域では都道府県知事をいいます。つまり、建築基準法で「許可する」「指定する」「命ずる」と書かれた条文の主語になる、役所の長のことです。
建築確認は図面を法律に照らす仕事なので、資格を持つ職員である建築主事や、民間の指定確認検査機関が行います。ところが、狭い道の奥の敷地に建ててよいと許可する、違反した建物に工事の停止を命じる、といった判断は、職員一人の名前ではなく役所の長の名前で行います。この長を建築基準法は特定行政庁と呼びます。市役所に建築主事がいれば市長、いなければ県知事です。条文に「特定行政庁は、許可することができる」「命ずることができる」とあれば、市長か知事のことだと読み替えてください。

建築主事を置く市町村では市町村長、置かない区域では知事です
2条35号は、建築主事または建築副主事を置く市町村の区域についてはその市町村の長、その他の市町村の区域については都道府県知事、と定義しています。人口25万以上で政令で指定する市は必ず建築主事を置き、それ以外の市町村は置くことができます。97条の2により、小さな市や町村が一部の事務に限って建築主事を置くこともでき、その場合は政令で定める建築物についてだけ知事が特定行政庁のままです。既存不適格建築物への除却などの命令(10条)では、国や都道府県、建築主事を置く市町村の建物が相手から除かれ、国の機関などの建物は18条の別の手続で扱います。
仕事は、許可と指定と命令の三つです
許可は、接道義務の例外(43条2項2号)、道路内の公衆便所などの公益上必要な建築物(44条1項2号)、用途地域で建てられない建物の特例許可(48条)、絶対高さ制限の例外(55条4項)、総合設計(59条の2)のように、原則を外して個別に認めるものです。指定は、法律によらずに造る私道を道路とする位置指定(42条1項5号)、幅4メートル未満の道を道路とみなす2項道路の指定(42条2項)、街区の建物の位置をそろえる壁面線の指定(46条)のように、土地の扱いを役所が決めるものです。命令は、違反建築物への工事停止や是正の命令(9条)、既存不適格建築物のうち著しく危険なものへの除却などの命令(10条3項)です。どれも建築主でなく役所の長が主語で、市町村に建築主事がいるかどうかで、その長が市町村長なのか知事なのかが変わります。
許可の多くは、建築審査会の同意を得て行います
原則を外す許可を長が一人で決めると、周りの敷地との公平が保てません。そこで接道義務の例外の許可(43条2項2号)や道路内の公衆便所などの許可(44条1項2号)は、条文の中に「建築審査会の同意を得て許可したもの」と書き込まれています。44条2項は、公共用歩廊などの許可(44条1項4号)にあらかじめ建築審査会の同意を求める定めで、この項が絶対高さ制限の例外(55条5項)や総合設計(59条の2第2項)などに準用されています。指定でも、壁面線の指定は建築審査会の同意を得て行い、あらかじめ利害関係者の出頭を求めて公開の意見聴取を行います(46条1項)。幅1.8メートル未満の道を2項道路に指定するときも、同意が要ります(42条6項)。
災害のあった市街地では、区域を指定して建築を制限できます
大火や地震で市街地が焼け、壊れた直後に思い思いに家が建ち始めると、道路を広げる都市計画や土地区画整理事業ができなくなります。そこで84条1項は、特定行政庁が区域を指定して、災害が発生した日から1月以内の期間を限り、建築を制限し、または禁止できるとしています。さらに1月を超えない範囲で延長できるので(84条2項)、合わせて最大2月です。

建築基準法 2条35号特定行政庁 この法律の規定により建築主事又は建築副主事を置く市町村の区域については当該市町村の長をいい、その他の市町村の区域については都道府県知事をいう。ただし、第九十七条の二第一項若しくは第二項又は第九十七条の三第一項若しくは第二項の規定により建築主事又は建築副主事を置く市町村の区域内の政令で定める建築物については、都道府県知事とする。
試験ではこう問われる
- 建築主事または建築副主事を置く市町村の区域ではその市町村の長、その他の市町村の区域では都道府県知事(2条35号)
- 建築確認と完了検査をするのは建築主事等または指定確認検査機関。許可・指定・命令をするのは特定行政庁。主語を入れ替えた肢に注意
- 違反建築物には、工事の施工停止、除却、使用禁止などを命令できる(9条1項)。緊急の必要がある場合は、意見書の提出などの手続によらないで、仮に使用禁止または使用制限の命令ができる(9条7項)
- 2項道路の指定、位置指定道路の指定、建蔽率が加算される角地の指定、建築協定の認可も特定行政庁が行う
- 原則を外す許可の多くは、建築審査会の同意を得て行う。幅員1.8m未満の2項道路の指定にも、あらかじめ同意が要る
- 災害のあった市街地では、区域を指定して、災害が発生した日から1月以内の期間を限り建築を制限または禁止できる。さらに1月を超えない範囲で延長できる(84条)
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