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宅建士の仕事内容|独占業務と取引の流れ

キャリア・試験情報 読了 約24分

宅建士の仕事を条文にもとづいて解説。重要事項説明と35条・37条書面への記名という独占業務、専任の宅建士の設置義務、取引の各段階での役割、調査の中身までを整理します。

目次

    この記事は、宅地建物取引士が実際に何をする資格なのかを、宅地建物取引業法の条文に沿って整理したものです。取得後のキャリアの選択肢そのものは宅建士のキャリアパス宅建士の転職先で扱うので、ここでは業務の中身に絞ります。この独占業務が資格の価値としてどう働くのかを、業務独占・需要の法定・参入の開放という三つの構造から条文で確認したものは宅建を取ってよかった理由にあります。

    結論から述べます。宅建士の仕事の中核は、宅地建物取引業法が宅建士にしか認めていない3つの業務、すなわち重要事項の説明、35条書面への記名、37条書面への記名です。この3つは法律上ほかの誰にもできないため、宅地建物取引業を営む会社にとって宅建士は代替のきかない存在になります。そして、この3つを適正に行うために必要な調査と確認の作業が、実務時間の大半を占めます。以下では独占業務の内容から始めて、取引の流れのどこで何をするのかまでを追っていきます。

    宅建士でなければできない3つの業務

    重要事項の説明

    宅地建物取引業法35条1項は、宅地建物取引業者に対し、宅地建物の取得者または借主となろうとする者に対して、その者が取得または借りようとしている宅地建物に関する事項について、契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、重要事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならないと定めています。

    ここで押さえるべき点が4つあります。第一に、義務を負っているのは宅地建物取引業者であって、宅建士個人ではありません。宅建士は、業者が負う義務を履行する担い手として指名されています。第二に、説明を受ける相手は取得者または借主となろうとする者です。売主や貸主に対する説明義務ではありません。第三に、時期は契約が成立するまでの間です。契約と同時、あるいは契約後では義務を果たしたことになりません。第四に、説明を行うのは宅建士であればよく、専任の宅建士である必要はありません。

    この4点は、そのまま試験の出題ポイントになります。詳細な要件と例外は重要事項説明の基本で扱っています。

    35条書面への記名

    35条5項は、1項から3項までの書面の交付に当たっては、宅地建物取引士が当該書面に記名しなければならないと定めています。記名するのは宅建士であり、宅地建物取引業者の代表者ではありません。

    実務上、記名は「この書面に書かれている内容を専門家として確認した」という意思表示にあたります。したがって、自分が調べていない事項について安易に記名することはできません。記名した宅建士は、内容に誤りがあったときに責任を問われる立場に立ちます。

    なお、説明を行う宅建士と記名する宅建士が同一人物である必要はありません。組織によっては、調査と書面作成を担当する宅建士と、説明の場に立つ宅建士が分かれていることもあります。ただしその場合でも、説明する宅建士は書面の内容を理解していなければ説明ができないので、実際には両者が密に連携することになります。

    かつては「記名押印」が求められていましたが、令和4年5月18日施行の改正により押印が不要となり、現在は記名のみで足ります。あわせて、相手方の承諾を得れば電磁的方法による提供も認められるようになりました。

    37条書面への記名

    37条3項は、宅地建物取引業者が37条1項または2項により交付すべき書面を作成したときは、宅地建物取引士をして当該書面に記名させなければならないと定めています。契約が成立したあと、遅滞なく交付する書面です。

    35条書面との違いは明確です。35条書面は契約前に交付して説明までするのに対し、37条書面は契約後に交付するだけで、説明義務はありません。交付先も違い、35条書面は取得者・借主となろうとする者に交付するのに対し、37条書面は契約の各当事者、つまり売主と買主の双方に交付します。この対比は毎年のように問われるので、35条書面と37条書面の横断整理で確認しておいてください。

    独占業務でないものを区別する

    宅建士の業務を理解するうえで、独占業務に含まれないものを押さえておくと輪郭がはっきりします。

    媒介契約を締結したときに作成・交付する媒介契約書について、34条の2第1項が記名を求めているのは宅地建物取引業者であって、宅建士ではありません。ここを宅建士の記名と覚えていると失点します。また、契約そのものを締結する行為、広告を出す行為、物件を案内する行為、価格の査定を行う行為は、いずれも宅建士でなければできない業務ではありません。無資格の従業者でも行えます。

    つまり、宅建士の独占業務は「取引の相手方に情報を確定して渡す」場面に集中しています。ここが法律上、最も消費者の利益を左右する場面だからです。独占業務の位置づけをさらに詳しく確認したい場合は宅建士の独占業務を参照してください。

    宅建士の責務と宅建士証

    3つの責務規定

    宅地建物取引業法15条は、宅建士は宅地建物取引業の業務に従事するときは、宅地建物の取引の専門家として、購入者等の利益の保護および円滑な宅地建物の流通に資するよう、公正かつ誠実に業務を行うとともに、宅地建物取引業に関連する業務に従事する者との連携に努めなければならない、と定めています。

    続く15条の2は信用失墜行為の禁止を定め、宅建士は宅建士の信用または品位を害するような行為をしてはならないとしています。この規定は業務中の行為に限られず、私生活上の行為も対象になりうる点が特徴です。

    15条の3は知識および能力の維持向上を定め、宅建士は宅地建物取引業を営む事務所において従事することとなる事務について、必要な知識および能力の維持向上に努めなければならないとしています。5年ごとの法定講習は、この責務を制度として担保するものです。

    これら3か条は、宅地建物取引主任者から宅地建物取引士へ名称が変更された際に整備されたもので、宅建士が単なる手続きの担い手ではなく専門家として位置づけられていることを示しています。

    宅建士証の提示は2つの場面がある

    宅建士証の提示義務には、性質の異なる2つの規定があります。

    第一に、35条4項です。宅建士は重要事項の説明をするときは、説明の相手方に対し、宅建士証を提示しなければなりません。ここでは相手方からの請求は不要です。請求がなくても、自分から提示する義務があります。

    第二に、22条の4です。宅建士は、取引の関係者から請求があったときは、宅建士証を提示しなければなりません。こちらは請求があったときの義務です。

    両者の違いは罰則にも表れます。86条は、22条の2第6項もしくは7項、35条4項または75条の規定に違反した者は10万円以下の過料に処すると定めており、35条4項の提示義務違反は過料の対象です。一方、22条の4は86条に挙げられておらず、過料の定めがありません。「請求がなくても提示」と「過料あり」がセットになっているのが35条4項だと覚えると整理しやすくなります。

    なお、宅建士証の携帯そのものを義務づける規定はありません。従業者証明書の携帯義務(48条1項)とは別の制度なので、混同しないでください。

    宅建士証と混同しやすい従業者証明書

    現場では宅建士証のほかに従業者証明書を持ち歩きます。この二つは別の制度なので、区別しておく必要があります。

    48条1項は、宅地建物取引業者は従業者に従業者証明書を携帯させなければ、その者を業務に従事させてはならないと定めています。対象は従業者全員であり、宅建士かどうかは関係ありません。そして48条2項により、従業者は取引の関係者から請求があったときに従業者証明書を提示しなければなりません。

    つまり、携帯義務があるのは従業者証明書のほうで、宅建士証には携帯を義務づける条文がありません。重要事項説明の場面で提示するのは宅建士証であって従業者証明書ではない、という点も含めて、どちらの話をしているかを常に確認してください。

    あわせて48条3項は、宅地建物取引業者に対し、事務所ごとに従業者名簿を備えることを求めています。名簿は最終の記載をした日から10年間保存しなければなりません(施行規則17条の2第4項)。これとは別に、49条が定める帳簿は、各事業年度の末日をもって閉鎖し、閉鎖後5年間、業者が自ら売主となる新築住宅に係るものは10年間の保存が必要です(施行規則18条3項)。名簿と帳簿で保存期間が異なる点が出題されます。

    専任の宅建士としての役割

    事務所ごとに5人に1人以上

    宅地建物取引業法31条の3第1項は、宅地建物取引業者はその事務所その他国土交通省令で定める場所ごとに、国土交通省令で定める数の成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければならないと定めています。その数を定めているのが施行規則15条の5の3で、事務所については、業務に従事する者5人に1人以上の割合とされています。

    契約行為等を行う案内所等については、少なくとも1人以上の専任の宅建士を置く必要があります。逆に、契約や申込みの受付を行わない案内所には設置義務がありません。何を行う場所かで結論が変わる点が、試験でも実務でも重要です。

    この設置義務があるために、宅地建物取引業を営む会社は常に一定数の宅建士を抱えている必要があります。宅建士が不足すれば、その事務所は法令に適合しない状態になり、業務を続けられません。宅建士の求人が景気にかかわらず一定数存在する理由は、この構造にあります。

    「専任」とは何か

    専任とは、その事務所に常勤し、専ら宅地建物取引業の業務に従事することをいいます。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」がこの内容を示しています。したがって、他社に勤務しながら名義だけ貸すこと、実際には別の事業に従事していること、通常の勤務時間に在籍していないことは、いずれも専任性を満たしません。

    ただし、常勤の意味は硬直的に運用されているわけではありません。令和3年の「解釈・運用の考え方」の改正により、ITの活用等により事務所以外の場所でも適切に業務を行える体制が確保されている場合には、テレワークによる勤務も専任と認めて差し支えないことが明確化されました。働き方の多様化に対応した整理です。専任の宅建士に関する要件の詳細は専任の宅建士にまとめてあります。

    不足したときは2週間以内

    31条の3第3項は、宅地建物取引業者は同条1項の規定に抵触する事務所等を開設してはならず、既存の事務所等が同項の規定に抵触するに至ったときは、2週間以内に必要な措置を執らなければならないと定めています。

    退職や異動によって専任の宅建士が基準を下回った場合、2週間以内に補充するか、従業者の数を減らすかして適合させなければなりません。この2週間という期間は、宅地建物取引業法に登場する数字の中でも頻出のものです。

    取引の流れに沿って何をするか

    ここからは、実際の取引の進行に沿って、宅建士がどこで何をするのかを見ていきます。売買仲介を例にとりますが、賃貸でも大枠は同じです。取引全体の流れは不動産売買の流れでも扱っています。

    問い合わせへの対応と取引態様の明示

    物件への問い合わせを受けた段階で、宅地建物取引業者は取引態様を明示しなければなりません。34条は、広告をするときと、注文を受けたときの2回、自己が売主となるのか、代理なのか、媒介なのかを明示することを求めています。広告で明示していても、注文を受けた際に改めて明示する必要があります。

    この明示義務は宅建士の独占業務ではありませんが、報酬の受け取り方も、8種制限が適用されるかどうかも態様によって変わるため、実務の出発点になります。詳細は取引態様の明示義務を参照してください。

    媒介契約の締結

    依頼を受けることが決まれば、媒介契約を締結します。34条の2第1項により、宅地建物取引業者は遅滞なく所定の事項を記載した書面を作成し、記名して依頼者に交付しなければなりません。前述のとおり、この記名は業者が行います。

    一般媒介、専任媒介、専属専任媒介のどれを選ぶかで、業務処理状況の報告頻度と指定流通機構への登録期限が変わります。専任媒介は2週間に1回以上の報告と契約締結日から7日以内の登録、専属専任媒介は1週間に1回以上の報告と5日以内の登録で、いずれの期間も業者の休業日を算入しません。契約類型ごとの規制は媒介契約の3類型にまとめてあります。

    物件調査

    ここからが実質的な作業量の中心です。宅地建物取引業法には「調査しなければならない」という一般的な条文はありませんが、35条の説明義務を果たすには調査が不可欠であり、また47条1号が重要な事実の不告知や不実告知を禁じているため、調査を怠れば説明義務違反や禁止行為に直結します。調査は義務の前提として組み込まれています。何を調べるかは次の章で詳しく扱います。調査手順の実務的な整理は不動産の物件調査の方法にあります。

    広告

    広告を出す段階では3つの規制がかかります。32条の誇大広告等の禁止は、著しく事実に相違する表示や、実際のものより著しく優良もしくは有利であると人を誤認させるような表示を禁じています。注文がなく実害が発生していなくても、広告をした時点で違反が成立する点が特徴です。33条は広告開始時期の制限で、未完成物件については建築確認や開発許可などの処分があった後でなければ広告できません。そして前述の34条による取引態様の明示です。詳細は広告に関する規制で扱っています。

    重要事項説明

    買主が購入の意思を固めた段階で、契約成立前に重要事項説明を行います。宅建士が宅建士証を提示し、35条書面を交付して説明します。ここが宅建士の業務の山場です。

    説明の場では、書面を読み上げるだけでは不十分な場面が生じます。相手方が理解していない様子であれば補足し、質問には答えなければなりません。買主が判断を誤ったまま契約に進むことを防ぐのが制度の目的だからです。

    契約の締結と37条書面

    契約が成立したら、遅滞なく37条書面を交付します。宅建士が記名した書面を、契約の各当事者に交付します。実務では、売買契約書に37条書面としての記載事項をすべて盛り込み、契約書そのものを37条書面として兼用する形が一般的です。記載事項の一覧は37条書面の記載事項で確認できます。

    決済と引渡し

    決済の場では、代金の授受、鍵の引渡し、所有権移転登記の申請を同時に進めます。登記申請は司法書士が担当するのが通例ですが、必要書類がそろっているか、抵当権の抹消手続きが整っているかを事前に確認するのは仲介業者の役割です。ここで書類の不備が判明すると決済が延期になり、買主の住宅ローン実行や引越しの予定にまで影響します。

    重要事項説明のために何を調べるか

    35条1項が列挙する説明事項は、そのまま調査項目の一覧になります。実務の中身は、ここに集約されると言ってよいでしょう。

    登記記録

    35条1項1号は、登記された権利の種類および内容ならびに登記名義人等について説明することを求めています。法務局で登記事項証明書を取得し、所有者が誰か、抵当権や根抵当権が設定されていないか、差押えや仮処分の登記がないか、賃借権や地役権が設定されていないかを確認します。

    土地については、公図、地積測量図、建物については建物図面を取得し、登記されている面積と現地の状況、隣地との境界を突き合わせます。登記記録上の地目と現況が異なることも珍しくありません。

    法令にもとづく制限

    35条1項2号は、都市計画法、建築基準法その他の法令にもとづく制限で政令に定めるものの概要について説明を求めています。用途地域、建ぺい率、容積率、防火地域や準防火地域の指定、高さ制限、日影規制、都市計画道路の計画線がかかっていないか、市街化調整区域ではないか。市区町村の都市計画課で確認します。

    あわせて建築指導課で道路を確認します。前面道路が建築基準法上のどの道路に当たるか、幅員はいくつか、42条2項の道路であればセットバックの範囲はどこまでか。接道義務を満たしていなければ再建築ができないため、この確認は物件の価値そのものに直結します。

    私道負担とインフラ

    35条1項3号は私道に関する負担について定めており、建物の貸借の場合を除いて説明事項となります。前面道路が私道であれば、持分があるか、通行や掘削についての承諾が得られるかを確認します。

    35条1項4号は、飲用水、電気およびガスの供給ならびに排水のための施設の整備状況について説明を求めています。整備されていない場合は、その整備の見通しと整備についての特別の負担に関する事項も説明します。水道局や下水道課で、前面道路にどの口径の管が埋設されているか、引込みがあるかを調べます。

    災害に関する情報

    近年追加された説明事項として、災害関連のものがあります。造成宅地防災区域内か、土砂災害警戒区域内か、津波災害警戒区域内か。そして令和2年8月28日から加わった、水防法にもとづく水害ハザードマップにおける物件の所在地の説明です。市区町村が水害ハザードマップを作成している場合、これを提示して所在地を示さなければなりません。

    これらは施行規則で定められた説明事項で、法改正のたびに追加されてきた領域です。自治体のハザードマップを取得し、対象物件の位置を特定する作業が必要になります。

    区分所有建物の場合

    マンションなど区分所有建物では、専有部分に関する事項に加えて建物全体の事項が加わります。敷地に関する権利の種類と内容、共用部分に関する規約の定め、専用使用権に関する規約の定め、管理費および修繕積立金の額、滞納があればその額、管理の委託先、修繕積立金の積立総額、大規模修繕の計画。これらは管理会社に管理に関する事項の証明書を発行してもらって確認します。

    滞納の有無は特に重要です。区分所有法により、管理費等の債権は特定承継人に対しても行使できるため、前所有者の滞納分を買主が負担することになりかねません。区分所有建物特有の説明事項は区分所有建物の重要事項説明にまとめてあります。

    既存建物の状況

    既存の建物については、建物状況調査を実施しているかどうか、実施している場合はその結果の概要、および設計図書、点検記録その他の建物の建築および維持保全の状況に関する書類の保存の状況を説明します。建物状況調査を実施していないこと自体は違反ではありませんが、実施の有無を説明しない、あるいは実施しているのに結果を伝えないことは違反になります。

    取引条件に関する事項

    物件そのものに加えて、代金や借賃以外に授受される金銭の額と目的、契約の解除に関する事項、損害賠償額の予定または違約金に関する事項、手付金等の保全措置の概要、支払金または預り金の保全措置の概要、ローンのあっせんの内容とローン不成立時の措置などを説明します。貸借の場合は、契約期間や更新に関する事項、用途その他の利用の制限、敷金等の精算に関する事項が加わります。貸借特有の項目は賃貸借の重要事項説明で扱っています。

    調査で分からないことをどう扱うか

    調査を尽くしても確定しない事項は必ず残ります。境界が確定していない、越境物の処理について隣地所有者の意向が不明、土壌汚染の有無が未調査。このような場合、分からないことを分からないまま伝えるのが正しい対応です。

    「調べていないので分からない」という説明は不十分に見えますが、推測で断定するほうが重大な問題を生みます。調査の範囲と限界を明示したうえで、必要なら追加の調査を提案する。これが実務における宅建士の判断です。書面の読み方を買主側から整理した記事として重要事項説明書の読み方があります。

    報酬の受領

    仲介業務の対価である報酬は、宅地建物取引業法46条1項により、国土交通大臣が定めるところによるとされ、同条2項が定めた額を超えて受領することを禁じています。売買の媒介であれば代金に応じた区分ごとの料率、貸借であれば借賃1か月分が上限の基準になります。

    ここで実務上重要なのは、告示が定めているのが上限であって定額ではない点、そして報酬を受け取れるのは原則として契約が成立したときである点です。調査に何日かけても、契約に至らなければ報酬は発生しません。この構造が、仲介という業務の性質を規定しています。報酬とは別に受領できるのは、依頼者の依頼によって行う広告の料金など、限られた場合だけです。計算方法と例外は報酬額の制限にまとめてあります。

    業務の類型ごとの違い

    同じ宅建士でも、勤務先の業態によって日々の仕事はかなり異なります。

    売買仲介

    一件あたりの金額が大きく、調査項目も最も多い分野です。土地の境界、道路、法令上の制限、既存建物の状態、ローンの審査状況と、確認すべきことが広範囲に及びます。契約から決済まで1か月から2か月かかることが多く、その間の進行管理も業務に含まれます。宅建士としての知識を最も広く使う領域だと言えます。

    賃貸仲介

    一件あたりの期間が短く、件数を多く扱うのが特徴です。調査項目は売買より限定されますが、貸借特有の説明事項があります。用途の制限、契約期間と更新、敷金の精算、定期借家契約であればその旨。とくに定期借家契約については、借地借家法38条により、契約前に書面を交付して更新がないことを説明する手続が別途必要で、これを怠ると定期借家としての効力が認められません。賃貸仲介の実務は賃貸仲介の仕組みで扱っています。

    賃貸管理

    賃貸住宅の管理を受託する業務は、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の規律を受けます。管理戸数が一定数以上の事業者は国土交通大臣の登録を受ける必要があり、営業所または事務所ごとに業務管理者を置かなければなりません。業務管理者になる経路のひとつが、宅地建物取引士であることに加えて指定の講習を修了することです。宅建士資格が管理分野でも入口になっている構造です。

    また、サブリース、すなわち特定転貸事業については、誇大広告等の禁止、不当な勧誘等の禁止、契約締結前の重要事項説明が同法で義務づけられています。管理会社での業務については不動産管理会社の仕事内容を参照してください。

    デベロッパー

    自社で開発した物件を自ら売主として販売する立場では、宅地建物取引業法の8種制限が適用されます。買主が宅建業者でない場合、クーリング・オフ、手付の額の制限、手付金等の保全措置、契約不適合責任の特約の制限などがすべてかかります。仲介の立場では意識しなくてよい規律なので、ここが仲介との最大の違いになります。8種制限の全体像は8種制限とはにまとめてあります。

    加えて、用地の取得段階では、都市計画法上の開発許可、農地法の許可、建築基準法の接道要件など、法令上の制限を精査する作業が発生します。宅建試験の法令上の制限で学ぶ内容が、そのまま業務の対象になる分野です。

    金融機関その他

    銀行や保険会社では、宅建士の独占業務そのものを行う場面は多くありませんが、担保となる不動産の評価、相続に関する相談対応、法人顧客への提案などで知識が使われます。宅建業を営まない事業者に勤務する場合、宅建士証を用いた業務は発生しませんが、登録と宅建士証の交付を受けておけば、その後の異動や転職で選択肢が広がります。営業職としての実際は不動産営業の仕事内容を参照してください。

    宅建士証の更新と法定講習

    宅建士証の有効期間は5年です(22条の2第3項)。有効期間の満了後も業務を続けるには、更新を受ける必要があります。

    交付または更新にあたっては、登録をしている都道府県知事が指定する講習で、交付の申請前6か月以内に行われるものを受講しなければなりません(22条の2第2項)。これが法定講習です。ただし、試験に合格した日から1年以内に宅建士証の交付を受けようとする場合は、法定講習が不要とされています。合格後すぐに登録と交付まで進めば、この講習を省略できるということです。

    法定講習では、最近の法改正の内容、紛争事例、業務上の留意点などが扱われます。前述の15条の3が定める知識および能力の維持向上の責務を、制度として担保する仕組みです。手続きの流れは宅建士の法定講習に、登録そのものの手続きは宅建士登録の手続きにまとめてあります。実務経験が2年に満たない場合に受ける登録実務講習については宅建士の実務講習を参照してください。

    働き方を変えた2つの制度改正

    IT重説

    テレビ会議システム等を用いて重要事項説明を行うIT重説は、賃貸取引について平成29年10月から、売買取引について令和3年3月から本格運用が始まりました。宅建士証は画面上で提示し、相手方が記載事項を確認できる状態を確保したうえで説明を行います。

    これにより、遠隔地の当事者が移動せずに説明を受けられるようになり、宅建士の側も勤務地に縛られにくくなりました。IT重説の要件はIT重説の実務と出題で扱っています。

    書面の電子化

    令和4年5月18日施行の改正により、35条書面と37条書面について、相手方の承諾を得たうえで電磁的方法による提供が可能になりました。同時に、これらの書面および媒介契約書における押印義務が廃止されています。

    紙の書面を郵送してやり取りする工程が減り、契約までの日数が短縮されるようになりました。ただし、電子化されても宅建士が記名すべきこと、重要事項の説明をすべきことは変わりません。手続の形式が変わっただけで、宅建士が果たすべき役割そのものは維持されています。不動産取引の電子化の全体像はIT重説と書面電子化にまとめてあります。

    試験での出題ポイント

    宅建士の業務に関する規定は、宅建業法の分野で繰り返し出題されます。狙われ方には型があります。

    主体を入れ替える

    「宅地建物取引士は、重要事項を記載した書面を交付しなければならない」といった選択肢が典型です。35条1項が義務を課しているのは宅地建物取引業者であり、宅建士は業者がその義務を履行するために説明をさせられる立場です。同様に、媒介契約書に記名するのは業者であって宅建士ではありません。誰が義務者で、誰が実行者かを読み分けてください。

    専任かどうかを入れ替える

    重要事項の説明を行うのは宅建士であれば足り、専任の宅建士である必要はありません。「専任の宅地建物取引士が説明しなければならない」という選択肢は誤りです。逆に、事務所に置くべきなのは専任の宅建士なので、こちらを単に宅建士とする記述も誤りになります。

    提示義務の場面を入れ替える

    35条4項は請求がなくても提示、22条の4は請求があったときに提示です。この二つを入れ替える選択肢が出ます。また、35条4項違反には10万円以下の過料がありますが、22条の4違反には過料の定めがありません。罰則の有無まで問われることがあります。

    数字を入れ替える

    専任の宅建士は業務に従事する者5人に1人以上、不足したときは2週間以内、宅建士証の有効期間は5年、法定講習は申請前6か月以内、試験合格から1年以内なら講習不要。これらの数字を別の場面に付け替えた選択肢が並びます。

    説明義務と交付義務を混同させる

    37条書面には説明義務がありません。「37条書面を交付して説明しなければならない」という記述は誤りです。逆に、35条書面については、業者間取引の場合に説明を省略して交付のみで足りるとされていますが、交付そのものを省略できるわけではありません。記載事項の全体像は35条書面の完全整理で確認してください。

    覚え方・整理の仕方

    独占業務は「情報を確定して渡す場面」

    3つの独占業務を個別に暗記するより、共通する性質で束ねるほうが定着します。重要事項の説明、35条書面への記名、37条書面への記名は、いずれも取引の相手方に対して情報を確定した形で渡す場面です。案内や広告や査定が独占業務でないのは、それらが情報を確定して渡す行為ではないからです。この基準を持っておくと、見慣れない業務が出てきても判断がつきます。

    35条と37条は4つの軸で対比する

    交付の時期、説明義務の有無、交付先、宅建士証の提示の要否。この4軸で対比すると混ざりません。35条書面は契約前、説明あり、取得者・借主となろうとする者へ、宅建士証の提示あり。37条書面は契約後遅滞なく、説明なし、契約の各当事者へ、提示不要。記名が宅建士であることだけが両者に共通しています。

    提示義務は「請求」の有無で分ける

    35条4項と22条の4は、「請求がなくても」か「請求があったときに」かで区別します。そして過料があるのは前者だけです。重要事項説明という最も重要な場面だから、請求を待たずに提示させ、違反には過料を科す。理由から思い出せるようにしておくと、罰則の有無まで含めて答えられます。

    数字は場面ごとに束ねる

    事務所の体制に関する数字は5人に1人と2週間。宅建士証に関する数字は5年、6か月、1年。この2群に分けておけば、どちらの話をしているかで探す範囲が半分になります。宅建業法全体の数字は宅建業法の全体像とあわせて整理してください。

    理解度チェッククイズ

    Q1. 重要事項の説明は、その事務所に置かれた専任の宅地建物取引士が行わなければならない。(○か×か)

    答えを見る×:宅地建物取引業法35条1項が求めているのは、宅地建物取引業者が宅地建物取引士をして説明をさせることです。宅建士であれば足り、専任である必要はありません。一方、事務所ごとに業務に従事する者5人に1人以上の割合で置かなければならないのは専任の宅建士です(31条の3第1項、施行規則15条の5の3)。「宅建士でよい場面」と「専任でなければならない場面」を取り違えさせる出題が頻出します。

    Q2. 宅地建物取引士は、取引の関係者から請求がなくても、重要事項の説明をするときは宅地建物取引士証を提示しなければならない。(○か×か)

    答えを見る○:35条4項により、宅建士は重要事項の説明をするときは、説明の相手方に対し宅建士証を提示しなければなりません。請求は不要です。これとは別に、22条の4は取引の関係者から請求があったときの提示義務を定めています。なお35条4項違反は10万円以下の過料の対象ですが(86条)、22条の4違反には過料の定めがありません。

    Q3. 媒介契約を締結したときに依頼者へ交付する書面には、宅地建物取引士が記名しなければならない。(○か×か)

    答えを見る×:34条の2第1項が記名を求めているのは宅地建物取引業者です。宅建士の記名が必要なのは35条書面(35条5項)と37条書面(37条3項)であり、媒介契約書は含まれません。3つの書面のうち、どれが業者の記名でどれが宅建士の記名かを整理しておいてください。

    Q4. 37条書面は、契約が成立した後、宅地建物取引士が契約の各当事者に対して内容を説明したうえで交付しなければならない。(○か×か)

    答えを見る×:37条書面に説明義務はありません。宅建士が記名した書面を、契約成立後遅滞なく契約の各当事者に交付すれば足ります。説明義務があるのは35条書面のほうで、こちらは契約成立前に、取得者または借主となろうとする者に対して行います。交付先も、37条書面が契約の各当事者であるのに対し、35条書面は取得者・借主となろうとする者である点が異なります。

    Q5. 宅地建物取引士証の交付を受けようとする者は、試験に合格した日から1年以内に交付を申請する場合であっても、申請前6か月以内に行われる法定講習を受講しなければならない。(○か×か)

    答えを見る×:22条の2第2項により、宅建士証の交付を受けようとする者は登録先の知事が指定する講習で申請前6か月以内に行われるものを受講する必要がありますが、試験に合格した日から1年以内に交付を受けようとする場合は不要とされています。合格直後に登録と交付まで進めば法定講習を省略できるということです。なお宅建士証の有効期間は5年で、更新の際には法定講習の受講が必要になります。

    まとめ

    宅建士の仕事の中核は、重要事項の説明、35条書面への記名、37条書面への記名という3つの独占業務です。いずれも取引の相手方に情報を確定した形で渡す場面であり、法律がここに専門家の関与を要求しているのは、判断を誤ったときの不利益が最も大きい場面だからです。

    そして、この3つを適正に行うために必要な調査こそが、実務時間の大半を占めます。登記記録、法令にもとづく制限、道路、インフラ、災害に関する情報、区分所有建物であれば管理に関する事項。35条1項が列挙する説明事項の一覧が、そのまま調査項目の一覧になっています。宅建試験で学ぶ内容が業務にそのまま接続しているのは、この構造によります。

    制度面では、事務所ごとに業務に従事する者5人に1人以上の専任の宅建士を置く義務があり(31条の3第1項)、不足すれば2週間以内に是正しなければなりません。宅建士証の有効期間は5年で、更新には法定講習が必要です。IT重説と書面の電子化によって手続の形式は変わりましたが、宅建士が果たすべき役割そのものは変わっていません。合格後の手続きの全体像は宅建合格後にやることで確認できます。

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