宅建の勉強はいつから?試験日から逆算する
宅建の学習開始時期を、動かせない4つの日付から逆算して決める方法を解説。試験日、申込期間、法改正の基準日、登録講習の期限を押さえ、期間別に何を諦めるかまで整理します。
目次
この記事は、宅建試験の学習をいつ始めるかという「時点の決定」だけを扱います。決めたあとにスケジュールをどう組むかは宅建のスケジュール管理術、総学習時間の考え方は宅建の勉強時間は本当に300時間か、科目ごとの得点設計は宅建の合格戦略で扱っているので、そちらと組み合わせて読んでください。
これらの日付を確認する前に済ませておく手続や費用の確認は宅建を始める前に確認することにまとめてあります。学習の巧拙とは無関係に、事前の確認だけで避けられる損失がそちらに整理してあるので、先に一読しておくと開始時期の決定が具体になります。
結論を先に述べます。開始時期は「何か月前がよいか」という問いから決めるものではありません。宅建には動かせない日付が4つあり、それぞれに締切としての性格があります。試験日、申込期間、法改正の基準日、そして5問免除を使う場合の登録講習の期限です。この4つを先にカレンダーに置くと、自分がいつまでに何を終えていなければならないかが自動的に決まり、開始時期はその結果として出てきます。逆に、この4つを知らないまま「そろそろ始めよう」と動き出すと、最も多い失敗である申込みの取りこぼしや、前年度版の教材による空回りが起きます。
動かせない4つの日付を先に置く
試験日は10月の第3日曜日
宅地建物取引士資格試験は、原則として毎年1回、10月の第3日曜日に実施されます。試験時間は13時から15時までの2時間で、四肢択一のマークシート方式により50問が出題され、配点は1問1点です。登録講習を修了した5問免除者は、13時10分から15時までの110分で45問を解きます。
例外があった年もあります。2020年度と2021年度は、会場の収容人数を確保する必要から、10月と12月に分けて実施されました。ただしこれは特殊な事情によるもので、通常は10月の1回だけです。試験日そのものの詳細は宅建試験日はいつか、年間の流れは2026年の宅建試験日程で扱っています。
重要なのは、この日付が個人の都合で動かないことです。仕事が忙しくなっても、体調を崩しても、試験は10月の第3日曜日に実施されます。すべての計画は、この一点から逆向きに引くしかありません。
申込期間は7月、公告は6月上旬
試験の実施は、試験実施機関である一般財団法人不動産適正取引推進機構が例年6月上旬に公告します。申込みの受付は例年7月に行われ、インターネットによる申込みと郵送による申込みで受付期間が異なります。とくにインターネット申込みは受付期間が短く設定されるため、6月の公告を見た時点で自分の手続き方法と締切日を確定させておく必要があります。
申込期間を過ぎてからの申込みは、理由を問わず一切受け付けられません。学習が順調に進んでいても、申込みを忘れればその年は受験できず、翌年まで待つことになります。学習開始日をいつにするかを考える前に、まず申込みの締切を押さえる。順序としてはこちらが先です。申込みの具体的な手順は宅建試験の申込みから当日までにまとめられています。
受験手数料は、令和6年度試験から8,200円に改定されています。金額や支払方法は年度によって変わる可能性があるため、申込時に公告で確認してください。
申込みの前後には、自分では動かせない事務日程がいくつか挟まります。試験地の決定通知は例年8月下旬ごろ、受験票の発送は9月下旬から10月上旬にかけてです。試験地は原則として、申込時点で住民票のある都道府県に割り当てられます。単身赴任や進学で住民票と実際の居住地が離れている人は、申込みの前に住所の扱いを整理しておかないと、試験当日に長距離の移動が発生します。移動時間は当日のコンディションに直結するため、これも逆算に含めるべき要素です。なお受験資格には制限がなく、年齢、学歴、実務経験を問わず誰でも申し込めます。
法改正の基準日は4月1日
見落とされやすいのが3つ目の日付です。宅建試験は、法令に関する出題について、試験を実施する年度の4月1日時点で施行されている規定にもとづいて出題されます。
この一文には、学習開始時期に直結する意味が2つあります。ひとつは、4月2日以降に施行された改正は、その年の試験には反映されないということです。学習中に新しい改正のニュースを見かけても、施行日が4月2日以降であれば、その年の試験対策として追う必要はありません。もうひとつは、前年度版の教材をそのまま使うと、4月1日までに施行された改正が反映されていない可能性があるということです。
したがって、4月より前に学習を始める場合は、教材の扱いに一手間が必要になります。1月や2月の時点では、その年度版の受験対策教材がまだ出そろっていないことがあるためです。前年度版で全体像をつかむこと自体は無駄になりませんが、当年度版が出た時点で改正部分を上書きする作業を、計画の中にあらかじめ組み込んでおく必要があります。この上書きを予定に入れていないと、早く始めたことがかえって不利に働きます。宅建業法まわりの近年の改正論点は宅建業法の法改正まとめで扱っています。
5問免除を使うなら、登録講習の期限が加わる
宅地建物取引業に従事している人が国土交通大臣の登録を受けた登録講習を修了すると、試験の一部が免除されます(宅建業法16条3項)。免除されるのは問46から問50までの5問で、修了証は修了した日から3年以内に実施される試験に有効です。
ここで効いてくるのが、講習の修了が試験の申込みまでに完了していなければならないという点です。登録講習は通信学習とスクーリング、修了試験という工程を踏むため、申し込んでから修了証を手にするまでに一定の期間がかかります。7月の試験申込みに間に合わせるには、逆算して春先には講習の申込みを済ませておく必要があります。つまり、5問免除を使う人にとっては、学習開始時期よりも先に講習の申込時期が来ます。制度の詳細は宅建の5問免除制度を確認してください。
「何か月前がよいか」という問いが答えにならない理由
決まるのは期間ではなく、期間と密度の積
学習開始時期の相談は、たいてい「何か月前から始めればよいか」という形で立てられます。しかしこの問いには答えがありません。到達点を決めるのは期間そのものではなく、期間と1日あたりに投じられる量の積だからです。
同じ「半年前から」でも、平日に30分しか取れない人と、平日に2時間取れる人とでは、試験日までに積み上がるものがまったく違います。前者が半年で到達する地点に、後者は2か月足らずで届きます。したがって、開始時期を決める前に確認すべきなのは、月数ではなく「平日に何分、休日に何時間を、実際に確保できるか」です。
ここで重要なのは、希望ではなく実績で見積もることです。これから毎日2時間やるつもりだ、という前提で計画を立てると、ほぼ確実に崩れます。直近の1週間で、勉強以外の何かに実際に使えた自由時間がどれだけあったかを数えるほうが、はるかに正確な材料になります。
生活の変動を先に織り込む
10月までの期間には、多くの人にとって動かせない予定が含まれます。年度替わりの繁忙、長期休暇、家族の行事。これらは学習を止める要因として後から現れるのではなく、最初から分かっている変数です。
計画を立てる際は、平常時のペースを引き延ばすのではなく、走れない期間を先に差し引いてください。7月から8月にかけて業務が集中する人であれば、その2か月をゼロと見積もったうえで残りの期間で組む。そう設計しておけば、実際に走れた分はすべて前倒しの貯金になります。逆に、変動を織り込まない計画は、最初の躓きで全体が破綻します。
隙間時間の扱いも同じです。通勤や休憩の時間に一問一答を回すやり方は有効ですが、それを前提に総量を積んでおくと、生活が変わった瞬間に計画が成立しなくなります。隙間時間は上乗せとして扱い、土台は確保できる時間だけで組むのが安全です。
到達点で管理すると、遅れが可視化される
期間で管理すると、遅れているかどうかが分かりません。「3か月やった」という事実は、何ができるようになったかを何も語らないためです。
そこで、開始時点で日付つきの到達点を2つか3つだけ決めます。たとえば、4月1日までに宅建業法のテキストを1周する、7月の申込みまでに宅建業法の過去問で7割を超える、9月初めまでに全科目を1周する、といった形です。日付と対象がセットになっていれば、その日が来た時点で遅れの有無が判定できます。
判定できれば手が打てます。遅れているなら範囲を削るか密度を上げるかを選べますし、進んでいるなら権利関係に踏み込む余地があると分かります。開始時期を早めることよりも、この判定点を持つことのほうが、最終的な得点に効きます。
申込みを起点に置くと、離脱率の意味が見えてくる
申込者の約2割は受験しない
不動産適正取引推進機構が公表した「令和7年度宅地建物取引士資格試験結果の概要」(令和7年11月26日公表)によると、令和7年度試験の申込者は306,099人、実際の受験者は245,462人で、受験率は80.2パーセントでした。申し込んだ人の約5人に1人が、試験当日に会場へ来ていない計算になります。
この数字は、宅建の学習でつまずくポイントがどこにあるかを示しています。同じ資料によれば、合格者は45,821人、合格率は18.7パーセント、合格判定基準は50問中33点以上でした。しかし申込者306,099人を分母にすると、合格した人の割合は約15パーセントまで下がります。つまり、不合格になる以前に、受験そのものを回避する段階での脱落が相当数あるということです。
受験を見送る理由は人それぞれですが、7月に申し込んでから10月の試験日までの約3か月をどう過ごしたかが影響していることは想像に難くありません。学習開始時期を考えるときは、「試験日までに間に合うか」だけでなく、「申込みから試験日までの3か月を走りきれる状態で申し込めるか」という視点を持っておくと、判断が現実的になります。
申込みを先に済ませるという考え方
学習が思うように進んでいないと、申込みそのものをためらう心理が働きます。しかし、申込みを見送れば選択肢は完全に消え、申し込んでおけば「行くかどうか」を後から選べます。受験手数料は戻りませんが、8,200円で10月までの選択肢を確保できると考えれば、判断としては単純です。
そのうえで、申込みを済ませた自分に対して、8月と9月に何をするかを決めておく。受験率80.2パーセントという数字を、自分がどちら側に入るかの問題として引き受けるところから、学習計画は実効性を持ちはじめます。
配点構成が、開始時期ごとの投資先を決める
50問の内訳
宅建試験の50問は、宅建業法から20問、権利関係から14問、法令上の制限から8問、税その他から8問という構成になっています。この配分は毎年安定しており、開始時期が遅いほど、この数字の意味が重くなります。
学習開始が遅い場合に最初に手をつけるべきなのは宅建業法です。理由は3つあります。第一に、20問という最大の配点を占めていること。第二に、出題の中心が条文の要件と期限であり、理解に長い時間を要する分野が少ないこと。第三に、宅建業法の問題は、条文を正確に覚えていれば選択肢を消去法ではなく積極的に判断できるため、得点が安定しやすいことです。学習期間が短いほど、投じた時間が得点に変わる速度が重要になります。宅建業法を集中的に仕上げる進め方は宅建業法を2週間で仕上げるにまとめられています。
逆に、後回しにできる部分
権利関係14問は、範囲が広いうえに理解に時間がかかります。ただし、この14問がすべて同じ性質というわけではありません。借地借家法から2問、区分所有法から1問、不動産登記法から1問というように、毎年安定して出題される領域があります。これらは条文と手続きの知識で対応でき、民法の一般理論よりも短時間で得点に変わります。
時間が足りない場合に真っ先に削るべきなのは、民法のうち出題頻度が低く理解に時間のかかる領域です。どこまで踏み込み、どこで止めるかの線引きは宅建の合格戦略で扱っています。開始時期の判断としては、「権利関係を深くやる余裕があるかどうか」が、期間の長短を分ける実質的な分岐点になると理解しておけば十分です。
学習時間の相場をどう扱うか
宅建の合格に必要な学習時間として300時間という数字がよく挙げられますが、これは公表された調査にもとづく数値ではありません。受験者の予備知識、教材、1回あたりの学習の密度によって必要な時間は大きく変わるため、この数字を計画の前提に据えると、根拠のない安心や不安を抱えることになります。
現実的なのは、時間の総量ではなく到達点で管理することです。テキストを1周したか、過去問を分野別に1周したか、宅建業法で安定して8割を超えるようになったか。こうした到達点で進捗を測れば、想定より早く進んだ場合も遅れた場合も、次の判断ができます。時間という尺度の使い方については宅建の勉強時間は本当に300時間かで詳しく扱っています。
期間別に、何ができて何を諦めるか
1年前から始める場合
10月の試験に対して前年の秋から始めるパターンです。時間の余裕は最大ですが、注意点が2つあります。
ひとつは法改正の基準日です。前年の秋に学習を始めると、使う教材は前々年度版か前年度版になります。当年度の4月1日時点で施行されている法令にもとづく出題である以上、当年度版が出た段階で改正部分を確認し直す工程が必ず必要になります。これを計画に入れておかないと、覚え直しではなく覚え間違いを抱えたまま試験日を迎えます。
もうひとつは、記憶の保持です。1年前に学んだ内容を10月まで保持するには、定期的に戻る仕組みが要ります。長い期間があること自体は有利ですが、それは「復習の回数を増やせる」という意味であって、「一度やれば覚えている」という意味ではありません。長期で組む場合は、インプットを早く終わらせて演習の周回数を増やす設計にするのが素直です。
半年前から始める場合
4月前後から始めるパターンです。当年度版の教材が出そろう時期と重なるため、法改正の扱いで悩む必要がほとんどありません。この点だけを取れば、開始時期として最も摩擦が少ないタイミングです。
半年あれば、宅建業法、法令上の制限、税その他を仕上げたうえで、権利関係にも一定の時間を割けます。7月の申込みの時点で全科目を一通り終えているか、少なくとも宅建業法が終わっている状態を目標にすると、申込みから試験日までの3か月を演習に使えます。時期の区切り方と週単位の型の作り方は宅建のスケジュール管理術を参照してください。
この期間で注意すべきなのは、中盤の失速です。4月に始めて7月に申し込み、10月に受験するという流れは、区切りが少なく、緊張感が抜けやすい形をしています。とくに6月から8月にかけては、試験日がまだ遠く、始めたばかりの新鮮さも消えている時期にあたります。ここを乗り切る仕掛けとして有効なのは、7月の申込みを心理的な区切りとして使うことです。申し込んだ日を境に、インプット中心から演習中心へ明示的に切り替える。区切りを外から与えられる数少ない機会なので、活用しない手はありません。
3か月前から始める場合
7月ごろから始めるパターンです。申込みと学習開始がほぼ同時になるため、申込みの手続きを先に片づけてから学習に入ることになります。
この期間で諦めることになるのは、主に権利関係の網羅性です。民法の全体を体系的に理解する時間はないため、頻出領域に絞り、それ以外は解けなくても構わないと割り切る判断が必要になります。逆に、宅建業法20問と法令上の制限8問は、3か月あれば十分に仕上がる範囲です。この期間の具体的な進め方は宅建に3ヶ月で合格するで扱っています。
3か月で始める場合に最も避けたいのは、テキストの通読に時間をかけすぎることです。読み終わってから演習に入る順序だと、演習期間が残りません。分野ごとに、読んだらすぐその分野の問題を解く形に切り替える必要があります。
直前期から始める場合
8月以降に始める場合、全科目を仕上げることは現実的ではありません。ここで必要なのは、合格を目指すのか、来年に向けた土台作りとして今年を使うのかを先に決めることです。この判断を曖昧にしたまま走ると、どちらにも届かない結果になります。
今年の合格を狙うなら、宅建業法に大半の時間を投じ、法令上の制限は数字と手続きに絞り、権利関係は借地借家法・区分所有法・不動産登記法のように条文で解ける領域だけを拾う、という優先順位になります。税その他のうち問46から問50までは、直前期の学習で得点に変わりやすい部分です。直前期の使い方そのものは宅建の直前期にやることにまとめられています。
来年に向けた土台作りと位置づける場合でも、今年の試験を受ける意味はあります。試験の時間配分、問題の分量、会場の雰囲気は、受けてみないと分かりません。この場合は、点数ではなく「来年の自分に何を残すか」を目標に設定します。
なお、8月以降に始める場合でも、申込みが済んでいるかどうかで状況はまったく変わります。7月の申込みを済ませていれば、8月に学習を始めて今年の試験を受けるという選択肢が残ります。申し込んでいなければ、どれだけ勉強しても今年は受験できません。この非対称性が、申込みを学習開始より先に置くべき理由です。学習を始めるかどうか迷っている段階でも、7月の申込みだけは済ませておく。その判断が、8月以降の選択肢を作ります。
今年を見送る判断をどこで下すか
見送りの判断は、8月末から9月初めに一度だけ行うのが現実的です。それより早い時期では挽回の余地がまだあり、それより遅い時期では判断すること自体に意味がなくなります。
判断の材料は、宅建業法の到達度に置くのが分かりやすい方法です。9月初めの時点で、宅建業法の過去問で安定して7割以上を取れているなら、残りの期間で他科目を積み上げる余地があります。宅建業法が半分程度にとどまっているなら、他科目に手を広げるより、宅建業法を仕上げて来年の土台にするほうが合理的です。見送りを決めた場合でも、申し込んでいるなら受験して感触をつかんでおくことをすすめます。
5問免除を使うなら、春までに動く
免除される問題と対象者
5問免除は、宅地建物取引業に従事している人が登録講習を修了した場合に、問46から問50までの5問について解答が免除される制度です(宅建業法16条3項)。免除されるのは、住宅金融支援機構、景品表示法、統計、土地、建物に関する5問です。5問免除者の試験時間は13時10分から15時までの110分となり、45問を解きます。
令和7年度試験では、全体の合格率が18.7パーセントであったのに対し、登録講習修了者の合格率は24.2パーセントでした(不動産適正取引推進機構「令和7年度宅地建物取引士資格試験結果の概要」)。この差のすべてが免除そのものによるとは言えず、業務で宅建業法に触れている人が多いという受験者層の違いも含まれます。ただ、5問分の負担が減ることが有利に働くのは確かです。
逆算すると春先が締切になる
登録講習は、通信学習を経てスクーリングを受け、最後に修了試験に合格するという流れで進みます。全体で数か月を要するため、7月の試験申込みまでに修了証を得るには、遅くとも春先には講習に申し込んでおく必要があります。
つまり、宅建業に従事していて5問免除を使うつもりなら、学習開始時期を考えるより先に「登録講習の申込みをいつまでに済ませるか」が決まってしまいます。ここを逃すと、その年は一般受験者として50問を解くことになり、問46から問50までの対策時間を別に確保しなければなりません。免除がない場合の問46から問50の対策は5問免除の範囲を攻略するで扱っています。
修了証の有効期間が3年である点も、計画に影響します。今年の受験を見送っても、修了証は3年以内の試験に使えるため、講習を先に済ませておくという選択には無駄がありません。
一方で、免除を使わないという判断も十分に成り立ちます。登録講習には受講料と、通信学習およびスクーリングに充てる時間が必要です。学習開始が遅く、その時間を本試験の対策に回したいのであれば、5問分の免除より50問への準備を優先するほうが合理的な場合があります。問46から問50までは、住宅金融支援機構、景品表示法、統計、土地、建物という、比較的短期間で仕上がる範囲です。免除の有無は有利不利の問題である以前に、春先の時間をどこに投じるかという配分の問題だと捉えてください。
途中から始める場合の教材の選び方
当年度版かどうかを最初に確認する
学習開始が年の途中になる場合、教材選びで最初に見るべきは内容の良し悪しではなく、当年度版かどうかです。4月1日時点で施行されている法令にもとづいて出題される以上、対応年度が合っていない教材は、正しく覚えるほど失点につながる箇所を含みます。
中古で安く手に入る前年度版を使う場合は、当年度の改正点を別途確認する工程を必ず入れてください。改正の量が少ない年もありますが、量が少ないほど出題側は狙いやすくなります。
冊数を増やさない
開始が遅いほど、教材を増やしたくなる心理が働きます。しかし、期間が短いときに効くのは網羅性ではなく反復です。基本テキスト1冊と過去問集1つに絞り、同じものを繰り返すほうが、結果として広い範囲をカバーできます。
判断に迷ったときは、「試験日までにこの教材を3周できるか」を基準にしてください。3周できない量を抱えている場合、それは自分にとって多すぎる教材です。独学で進める場合の教材の絞り方は宅建の独学合格法で扱っています。
年度別と分野別の使い分け
過去問の形式には、年度ごとに50問を通して解く年度別と、論点ごとにまとめられた分野別があります。学習の途中段階では分野別が有効です。学んだ分野をその場で確認でき、間違えた原因が知識の不足なのか理解の誤りなのかを切り分けやすいためです。
年度別は、全科目を一通り終えたあとに使います。時間配分の練習、解く順序の確定、そして本番と同じ分量に対する耐性をつけるのが目的です。開始時期が遅い場合、年度別に取り組めるのが9月以降になることも珍しくありませんが、最低でも数年分は通しで解いてから本番に臨むべきです。
講座を使う場合、開始時期の自由度は下がる
独学ではなく通信講座や予備校を使う場合、開始時期の選択肢は講座側の開講時期に制約されます。年間のカリキュラムが組まれている以上、途中から入れば未受講分をどう埋めるかという問題が発生します。
したがって、講座の利用を検討しているなら、学習開始時期の決定と講座の申込時期の確認は同時に行う必要があります。ここでも順序は同じで、自分がいつ始めたいかより先に、講座側の日程という動かせない要素を置きます。開講済みの講座に途中から入る場合は、配信済みの回をどのくらいの速度で消化できるかを見積もったうえで、追いつける見込みがあるかを判断してください。
一方で、講座には開始時期の判断を肩代わりしてくれる面もあります。カリキュラムが引かれていれば、いつ何をやるかを自分で決める必要が減り、遅れも可視化されます。自分でスケジュールを組み切る自信がない場合、その管理コストを外部化する選択には合理性があります。独学で組み立てる場合の判断軸は宅建の独学合格法にまとめられています。
前年に不合格だった場合、いつ再開するか
記憶が新しいうちにやるべきこと
前年に受験して不合格だった場合、次の学習の質を最も左右するのは、合格発表の直後の行動です。11月下旬に結果が出た時点で、自分がどの問題をどう間違えたかを記録しておくと、翌年の学習の焦点が定まります。時間が経つと、なぜその選択肢を選んだのかを思い出せなくなり、単なる点数の記憶しか残りません。
見るべきなのは、何点足りなかったかだけではなく、失点の性質です。知識がなかったのか、覚えていたのに問題文の条件を読み違えたのか、時間が足りずに手をつけられなかったのか。この3つは対策がまったく異なります。詳しい分類の仕方は宅建の再受験戦略で扱っています。
本格的な再開は年明け以降でよい
記録を残したあと、すぐに本格的な学習へ戻る必要はありません。前年の学習で得た知識は残っており、ゼロからのやり直しではないからです。むしろ、11月から翌年10月まで11か月間走り続けようとして、途中で失速するほうが危険です。
再開の目安としては、年明けから前年の弱点分野に絞って戻り、当年度版の教材が出そろう春に全体を通し直す、という順序が扱いやすい形になります。このとき、法改正の確認を飛ばさないでください。前年の知識がそのまま使えるという前提が、改正部分では成り立ちません。前年に正解できた問題が、改正によって翌年は誤りになる場合があります。
前年の教材をどこまで使い回すか
再受験で迷いやすいのが、前年に使った教材を続けるか買い替えるかです。判断の基準は愛着ではなく、当年4月1日時点で施行されている法令に対応しているかどうかです。
書き込みが残っているテキストには、自分がどこでつまずいたかの記録という価値があります。それを捨てるのは惜しいので、前年のテキストは弱点の記録として手元に残し、正確さが要求される暗記は当年度版で行う、という使い分けが現実的です。過去問集についても同様で、選択肢の正誤は改正で変わり得るため、解説が当年度の法令に対応しているかを確認してから使ってください。
なお、改正が絡む可能性が高いのは、宅建業法の手続きまわりと法令上の制限の数値です。民法の一般理論のように長く動かない領域は、前年の理解をそのまま使えます。すべてを疑う必要はなく、動きやすい場所だけを見直せば十分です。
開始時期の判断が試験の得点に関わる場面
学習の開始時期そのものが出題されるわけではありませんが、開始時期の判断に使った知識が、そのまま得点に関わる場面があります。
第一に、法改正です。4月1日時点で施行されている規定にもとづいて出題されるという原則は、改正があった年の出題を予測する手がかりになります。改正直後の論点は出題されやすいため、いつ施行された改正なのかを意識して教材を読む習慣が、そのまま得点につながります。
第二に、統計問題です。問48では、地価公示、住宅着工統計、法人企業統計、土地白書といった資料の最新の数値が問われます。この問題は直前期に覚えるのが最も効率的で、早い時期に覚えても数値が更新されて無駄になります。開始時期が早い人ほど、統計を最後に回す判断が必要になります。
第三に、問46から問50までの範囲です。5問免除を使うかどうかによって、この5問に時間を割く必要があるかが変わります。免除を使わない受験者は、住宅金融支援機構、景品表示法、土地、建物という比較的取り組みやすい分野で確実に点を積む設計にしておくと、権利関係の不確実性を吸収できます。
第四に、合格点が固定されていないことです。令和7年度試験の合格判定基準は50問中33点以上でしたが、この数字は毎年同じではありません。問題の難易度に応じて上下するため、「33点取れば受かる」という前提で目標を置くと、難易度が下がった年に足りなくなります。開始が早い人ほど、目標点を早い段階で固定してしまいがちですが、狙うべきは特定の点数ではなく、確実に取れる分野を増やすことです。合格点が動く仕組みは宅建の合格戦略で扱っています。
第五に、時間配分です。一般受験者は120分で50問、5問免除者は110分で45問を解きます。1問あたりに使える時間はほぼ同じですが、解く順序の設計は自分の得意分野によって変わります。この練習を試験直前になって始めると間に合わないため、年度別演習をいつから始めるかは、開始時期の判断に含めておくべき要素です。
覚え方・整理の仕方
4つの日付を1枚のカレンダーに置く
開始時期の判断で迷ったら、次の4つを実際にカレンダーへ書き込んでください。順序があります。
- 試験日。10月の第3日曜日。
- 申込期間。例年7月。公告は6月上旬。
- 法改正の基準日。当年の4月1日。
- 登録講習の申込期限。5問免除を使う場合のみ、春先。
この4つを置いた時点で、自分に残された期間が視覚的に確定します。「何か月前に始めるべきか」という一般論ではなく、「4月1日までに何を終えているか」「7月の申込みまでに何を終えているか」という形で目標を持てるようになります。
期間の長短ではなく、諦める順序で考える
開始が遅いことの本質は、時間が足りないことではなく、選べる範囲が狭まることです。したがって考えるべきは「間に合うか」ではなく「何から諦めるか」になります。
諦める順序は一定です。最初に諦めるのは民法のうち出題頻度の低い領域、次に税に関する細かい特例、その次に法令上の制限の細部です。最後まで諦めてはならないのが宅建業法20問です。この順序を先に決めておけば、途中で予定が崩れても、削るべきものを迷わず削れます。
「早く始める」と「長く続ける」を分けて考える
早く始めることと、長く学習を続けることは別のことです。1年前に始めても、実際に手を動かした期間が3か月なら、3か月前に始めた人と条件は変わりません。むしろ、早く始めた分だけ「まだ時間がある」という判断が働き、着手が遅れることがあります。
対策は単純で、開始時期を決めると同時に、最初の到達点と期限を決めることです。たとえば「4月1日までに宅建業法のテキストを1周する」というように、日付と対象をセットで置きます。期限のない長期計画は、期間が長いほど機能しません。
迷ったら申込みから逆算する
学習の開始時期で迷ったときは、試験日ではなく申込日を基準にしてください。7月の申込みの時点で、宅建業法が仕上がっていれば、残り3か月を他科目と演習に使えます。逆算すると、宅建業法に必要な期間の分だけ手前が開始時期になります。
試験日から逆算すると「まだ間に合う」という判断になりやすいのに対し、申込日から逆算すると期限が3か月手前に来るため、判断が現実的になります。社会人が限られた時間で組み立てる方法は社会人の宅建合格法にまとめられています。
理解度チェッククイズ
Q1. 宅建試験は、試験を実施する年度の4月1日時点で施行されている法令にもとづいて出題される。(○か×か)
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○:法令に関する出題は、その年度の4月1日現在で施行されている規定にもとづきます。したがって、4月2日以降に施行される改正はその年の試験には反映されません。逆に、前年度版の教材を使う場合は、当年4月1日までに施行された改正が反映されていない可能性があるため、改正部分を確認し直す工程が必要になります。Q2. 登録講習を修了して5問免除を受ける場合でも、講習の修了は試験日までに間に合えばよい。(○か×か)
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×:登録講習の修了は、試験の申込みまでに完了している必要があります。申込みは例年7月に行われるため、通信学習とスクーリング、修了試験という工程に要する期間を逆算すると、春先には講習に申し込んでおく必要があります。なお修了証は、修了した日から3年以内に実施される試験に有効です(宅建業法16条3項)。Q3. 令和7年度試験では、申込者の約8割が実際に受験した。(○か×か)
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○:不動産適正取引推進機構「令和7年度宅地建物取引士資格試験結果の概要」によれば、申込者306,099人に対し受験者は245,462人で、受験率は80.2パーセントでした。申し込んだ人の約5人に1人が受験していない計算になります。同年度の合格者は45,821人、合格率は18.7パーセント、合格判定基準は50問中33点以上でした。Q4. 学習開始が遅い場合は、配点が最も大きい権利関係から手をつけるのが効率的である。(○か×か)
答えを見る
×:二重に誤りです。配点が最も大きいのは権利関係14問ではなく宅建業法20問です。また、権利関係は理解に時間を要するため、投じた時間が得点に変わるまでが遅く、短期では効率が悪くなります。開始が遅い場合は宅建業法を最優先にし、権利関係は借地借家法・区分所有法・不動産登記法のように条文で解ける領域に絞るのが定石です。Q5. 8月末の時点で今年の合格が難しいと判断した場合、申し込んでいても受験しないほうがよい。(○か×か)
答えを見る
×:今年を来年への土台と位置づける場合でも、受験する価値があります。時間配分、問題の分量、会場の雰囲気は実際に受けなければ分かりません。この場合は点数ではなく、来年の自分に何を残すかを目標に設定します。なお見送りの判断は8月末から9月初めに一度だけ行い、判断材料は宅建業法の到達度に置くのが現実的です。まとめ
学習をいつから始めるかは、一般論として決まるものではなく、動かせない4つの日付から逆算して決まります。10月第3日曜日の試験日、例年7月の申込期間、当年4月1日という法改正の基準日、そして5問免除を使う場合の登録講習の期限です。この4つをカレンダーに置けば、自分がいつまでに何を終えていなければならないかが確定します。
そのうえで、開始が遅い場合に必要なのは焦りではなく、諦める順序を先に決めておくことです。宅建業法20問を最後まで守り、民法の出題頻度が低い領域から順に削る。この方針を持っていれば、3か月からでも、直前期からでも、その時点で最善の選択ができます。令和7年度試験の受験率が80.2パーセントであったことが示すように、多くの人は不合格になる前に受験自体をやめています。始める日を決めることと同じくらい、走りきる設計を持つことが結果を分けます。
宅建試験AIブートラボのアプリでは、分野別の肢別演習と年度別演習を切り替えて使えるので、この記事で決めた開始時期に合わせて、どちらから着手するかを試してみてください。
肢別演習と年度別演習で、立てた学習計画をそのまま実行に移せます。間違えた肢だけを繰り返す復習にも対応しています。