宅建を始める前に確認すること|手続・費用・期限
宅建の学習を始める前に決めておくべきことを手続と費用から整理。申込期限、5問免除が使えるか、合格後に必要な登録実務講習、政令が定める手数料まで出典つきで解説します。
目次
本記事の役割 — この記事は学習を始める前の意思決定と手続に絞ります。試験の概要と科目別の学習導線は宅建試験の全体像にまとめてあるので、そちらを先に読んでから戻ってきても構いません。ここで扱うのは、知らないまま走り出すと後から取り返しがつかない部分です。
宅建の学習を始めるとき、多くの人はまず「何時間必要か」「どの教材がいいか」を調べます。それも必要ですが、先に確認しておかないと後から動かせないことが別にあります。
申込みの締切を逃せばその年は受験できません。5問免除が使えるのに気づかず一般受験の準備をすれば、範囲を余分に抱えます。合格したのに登録できないと知るのは、合格後では遅い場面があります。これらはいずれも学習の巧拙とは無関係に、事前の確認だけで避けられる損失です。
この記事では、そうした確認事項を判断の順序で並べます。学習法そのものは扱いません。以下の制度情報は2026年8月時点で確認できる内容にもとづくので、受験する年の受験案内で最新を確認してください。
まず確認すること:受験できるか、今年に間に合うか
受験資格の壁はほぼない
最初の確認は受験資格です。ここは制度として明快で、年齢、学歴、実務経験のいずれも問われません。
一般財団法人不動産適正取引推進機構は、受験資格について「日本国内に居住する方であれば、年齢、学歴等に関係なく、誰でも受験できます」と案内しています。国内居住という条件は付いていますが、それ以外の門はありません。学生でも、他業種で働いていても、定年後でも受験できます。
法律系の資格には受験資格に実務経験や学歴の要件を置くものもありますが、宅建にはそれがありません。「自分が受けられるかどうか」で悩む必要はまずない、というのが出発点です。
動かせないのは試験日と申込期限
次に確認すべきは日程です。ここが実質的な最初の関門になります。
試験は毎年1回、10月の第3日曜日に実施されます。年に一度しかなく、日程を選ぶことはできません。そして申込受付期間は、機構の案内によればインターネット申込みが7月上旬から下旬まで、郵送申込みが7月上旬から7月中旬までです。
郵送のほうが締切が早い点に注意してください。そして何より、この期間を逃すとその年は受験できません。どれだけ準備が仕上がっていても、申し込んでいなければ受けられない。次のチャンスは1年後です。
学習計画を立てるより先に、7月の受付期間をカレンダーに入れてください。申込みの具体的な手順と必要書類は宅建試験の申し込み方法、その年の確定日程は2026年の宅建試験の日程・概要にまとめています。
逆算すると開始時期が決まる
試験日が固定されているということは、残り期間が自動的に決まるということでもあります。
これは制約であると同時に利点でもあります。締切が動かないので、そこから逆算した計画が立てられます。何月から始めるべきかという問いは、実は「試験日から逆算して自分が確保できる時間で足りるか」という問いに置き換えられます。逆算の考え方は宅建の勉強はいつから?、月別の割り振りは宅建の勉強スケジュール表を参照してください。
5問免除が使えるかを最初に確認する
使えるなら学習範囲そのものが変わる
学習を始める前に確認すべき二つ目が、5問免除です。これは学習法の話ではなく、扱う範囲が変わる話なので、最初に決着させる必要があります。
宅地建物取引業法16条3項は、国土交通大臣の登録を受けた登録講習機関が行う講習(登録講習)の課程を修了した者について、国土交通省令で定めるところにより試験の一部を免除すると定めています。
免除の中身は同法施行規則10条の14にあります。登録講習修了者については、登録講習修了試験に合格した日から3年以内に行われる試験について、施行規則8条に掲げる試験すべき事項のうち同条1号及び5号に掲げるものを免除する、と。これが問46から問50までにあたります。
免除を受ける場合、試験時間も変わります。通常が午後1時から午後3時までの2時間であるのに対し、登録講習修了者は午後1時10分から午後3時までの1時間50分です。45問を解きます。
対象は宅建業に従事している人
ただし、登録講習は誰でも受けられるわけではありません。宅建業に従事している人が対象で、受講には宅地建物取引業者の従業者証明書が必要になります。
したがって確認の手順はこうなります。自分が宅建業に従事しているか。していれば、勤務先を通じて従業者証明書を用意できるか。用意できるなら、登録講習の日程は今年の試験に間に合うか。
三つ目が見落とされがちです。登録講習は通信学習とスクーリングで構成され、修了試験があります。この日程が学習期間に食い込むうえ、修了試験に合格した日から3年以内という期間制限の起算点にもなります。修了証の交付日ではなく修了試験に合格した日である点は、条文どおりに押さえてください。
制度の詳細と費用感は5問免除(登録講習)制度にまとめています。免除を受けられない場合にこの5問をどう扱うかは免除科目5問の攻略法です。
使えないなら5問を取りにいく前提で組む
免除が使えない場合、問46から問50は自分で取りにいく範囲になります。ここは施行規則8条1号(土地・建物の形質、構造等)と5号(宅地建物の需給に関する法令及び実務)にあたり、住宅金融支援機構法、不当景品類及び不当表示防止法、統計、土地・建物の知識が含まれます。
条文の解釈ではなく事実と実務の知識を問う枠なので、他の45問とは学習の性質が違います。特に統計は毎年数値が変わるため直前期に確認する必要があり、逆に土地・建物の基礎知識は一度覚えれば動きません。この違いを最初に知っておくと、直前期の時間配分を誤りません。
合格は終点ではない
三つの段階がある
三つ目の確認事項は、合格後に何が必要かです。合格した時点では、まだ宅地建物取引士ではありません。
段階は三つあります。試験に合格する、都道府県知事の登録を受ける、そして宅地建物取引士証の交付を受ける。それぞれ別の要件がかかります。
合格については、宅建業法に有効期間を定める規定が置かれていません。何年後に登録しても構いません。問題は次の段階です。
登録には実務経験2年か登録実務講習が要る
宅建業法18条1項は、試験に合格した者で、宅地もしくは建物の取引に関し国土交通省令で定める期間以上の実務の経験を有するもの、または国土交通大臣がその実務の経験を有するものと同等以上の能力を有すると認めたものが登録を受けることができる、と定めます。
この期間は同法施行規則13条の15により2年です。そして実務経験に代わる道が施行規則13条の16に置かれており、登録実務講習を修了した者などが同等以上の能力を有すると認められます。
つまり、不動産の実務経験がない合格者は、登録実務講習を受けなければ登録できません。この講習は講義および演習の総時間数がおおむね50時間とされ、修了試験を伴います(施行規則13条の21第4号)。受講料と日程が別途かかるということです。中身は宅建士の実務講習とは?にまとめています。
「合格したらすぐ宅建士として働ける」わけではない、というのはこの意味です。未経験から不動産業界を目指す場合、合格後にもう一段階あることを見込んで計画を立てる必要があります。
合格しても登録できない場合がある
もう一つ、事前に知っておく価値があるのが登録の欠格事由です。18条1項は、試験に合格しても登録を受けられない場合を各号に列挙しています。
1号が「宅地建物取引業に係る営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者」です。受験に年齢制限はありませんが、登録の段階では未成年者の扱いに条文が置かれています。2号が破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者。6号が拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者。7号が宅建業法違反や暴力団対策法違反、刑法の傷害・暴行・脅迫・背任などの罪により罰金の刑に処せられ、5年を経過しない者。8号が暴力団員等。12号が心身の故障により宅地建物取引士の事務を適正に行うことができない者として国土交通省令で定めるものです。
該当する人は多くありませんが、該当するかどうかは受験前に確認できます。合格してから登録できないと知るより、始める前に確かめるほうが確実です。なお6号の「拘禁刑以上の刑」という文言は、2025年6月1日に懲役と禁錮が拘禁刑へ一本化されたことを受けたもので、以前は「禁錮以上の刑」と書かれていました。
宅建士証には期限がある
登録を受けた者は、宅建士証の交付を申請できます(22条の2第1項)。交付を受けようとする者は、知事が指定する講習で交付の申請前6月以内に行われるものを受講しなければなりませんが、試験に合格した日から1年以内に交付を受けようとする者は不要です(同条2項)。
つまり、合格から1年以内に手続を終えれば法定講習を一つ省略できます。逆に、登録実務講習の日程や書類の取り寄せで手間取ると、この1年を超えて余分な講習が必要になります。合格発表が11月下旬であることを考えると、時間に余裕があるようで意外とありません。
そして宅建士証の有効期間は5年です(同条3項)。更新のたびに法定講習を受けます。取ったら終わりではなく、維持に費用と時間がかかる資格だという点は、始める前に知っておく価値があります。更新の実際は宅建士の法定講習、手続全体は宅建士の登録と宅建士証と宅建合格後にやることにあります。
いくらかかるかを先に数える
政令が標準額を定めている
費用の見積もりは、根拠のある部分と幅のある部分に分けて考えてください。
手数料については、地方公共団体の手数料の標準に関する政令(平成12年政令第16号)が標準額を定めています。実際の額は各都道府県の手数料条例によりますが、この政令が基準になります。宅地建物取引士に関する事務として、同政令が挙げる額は次のとおりです。
宅建業法16条1項にもとづく宅地建物取引士資格試験の実施が8,200円。18条1項にもとづく宅地建物取引士資格登録簿への登録が37,000円。19条の2にもとづく登録の移転の申請に対する審査が8,000円。22条の2第1項または第5項にもとづく宅地建物取引士証の交付の申請に対する審査が4,500円。22条の3第1項にもとづく宅地建物取引士証の有効期間の更新の申請に対する審査が4,500円。
受験料8,200円も、この政令に根拠があります。受験から宅建士証の交付までを通しで見ると、手数料だけで49,700円という計算になります。
幅のある部分
これに加わるのが、教材費、講座を利用する場合の受講料、そして実務経験が2年に満たない場合の登録実務講習の受講料です。
これらは実施機関や商品によって異なり、公表された相場というものがありません。この記事では金額を示しません。登録実務講習の受講料は実施機関ごとに公表されているので、受講を検討する段階で複数を比較してください。講座の比較軸は宅建の通信講座の選び方にまとめています。
5問免除を使う場合の登録講習の受講料も、この幅のある部分に入ります。免除のために講習費用を払う形になるので、5問という得点差とのバランスで判断することになります。ただし宅建業に従事している人が対象の講習である以上、勤務先が費用を負担する運用になっている場合があるため、自己負担が生じるかどうかは先に確認する価値があります。
大事なのは、費用を「受験料だけ」と見積もらないことです。合格後の登録まで進む前提なら、手数料だけで受験料の6倍かかります。未経験で登録実務講習が必要なら、さらに上乗せされます。受験料8,200円で始められる資格だが、宅建士になるには8,200円では終わらない、という構造を先に把握しておいてください。
登録は都道府県ごとに紐づく
費用に関連してもう一点。登録は都道府県知事が行うため、どの都道府県に登録するかが決まります。転勤や転職で勤務地が他県に変わった場合、登録の移転という手続があり(19条の2)、その審査手数料の標準額は8,000円です。
移転は義務ではありませんが、宅建士証の扱いが変わります。登録の移転があると従前の宅建士証は効力を失い(22条の2第4項)、移転後の知事が、従前の有効期間が経過するまでの期間を有効期間とする宅建士証を交付します(同条5項)。移転しても有効期間が延びるわけではない点は押さえておいてください。
就職を目的にするなら宅建士証まで進む
不動産業界への就職や転職を目的に受験する場合、どこまで進めば目的を達するかを確認しておいてください。
宅建業者は、事務所等ごとに国土交通省令で定める数の成年者である専任の宅地建物取引士を置かなければならず(31条の3第1項)、その数は事務所については業務に従事する者の数に対する宅建士の数の割合が5分の1以上となる数です(同法施行規則15条の5の3)。この「専任の宅建士」として数えられるには、登録を受けて宅建士証の交付まで済んでいる必要があります。
つまり、求人票の「宅建士資格必須」が合格を指すのか、宅建士証まで持っていることを指すのかで、必要な準備が変わります。未経験からの転職なら、合格後に登録実務講習と登録手続の期間が加わることを見込んでおいてください。
会社の支援制度を確認する
費用の話には続きがあります。勤務先に資格取得支援制度がある場合、この負担が大きく変わります。
確認すべきは金額だけではありません。どこまでが対象かが制度によって違います。受験料だけなのか、教材費や講座費用も含むのか、登録手数料や登録実務講習まで含むのか。そして初回だけなのか、5年ごとの更新時にも支給されるのか。
もう一つ確認したいのが、資格手当の有無と条件です。宅建士証の交付を受けていることが条件なのか、合格していれば足りるのか。専任の宅地建物取引士として届け出られていることが条件になっている場合もあります。同じ「宅建の資格手当」でも、支給の条件は会社ごとに違います。
支援制度と手当の見方は宅建の資格手当に整理しています。学習を始める前に一度就業規則を確認しておくだけで、後から使えたはずの制度を逃す事態を防げます。
何を差し出すことになるか
時間は必ずどこかから持ってくる
学習には時間が要ります。そして時間は湧いて出ないので、いま何かに使っている時間を差し替えることになります。
ここで注意したいのが、必要な学習時間として流通している数字の扱いです。「300時間」「400時間」といった目安は広く見かけますが、公表された調査にもとづくものではありません。参考として眺めるのはよいとしても、「これだけやれば受かる」「これに届かないから無理」という判断には使えません。目安の出所も含めた検討は宅建の勉強時間は本当に300時間?で扱っています。
代わりに確認できることがあります。自分が1週間に何時間を確保できるかは、いまの生活を書き出せば分かります。試験日までの週数を掛ければ総量が出ます。外から与えられた目安ではなく、この数字を出発点にしてください。
受験者層から分かること
参考になる公表値はあります。一般財団法人不動産適正取引推進機構「令和7年度宅地建物取引士資格試験結果の概要」(令和7年11月26日公表)によれば、受験者の平均年齢は36.2歳でした。職業別の構成比は不動産業が33.2%で、残りの3分の2は不動産業以外です。
つまりこの試験は、多くが仕事を持つ社会人が、日常と並行して受ける試験です。まとまった時間を確保できる前提で計画を立てると、たいてい破綻します。細切れの時間をどう積み上げるかが実際の課題になります。社会人としての組み立て方は社会人の宅建学習、続かなくなったときの立て直しは宅建の勉強が続かないにまとめています。
申込者と受験者の差が示すもの
同じ資料で、申込者数は306,099人、受験者数は245,462人、受験率は80.2%でした。約6万人が申し込んだのに受験していません。
この差は、途中で学習が続かなくなった層を含んでいると考えられます。受験資格に制限がなく、申込みが7月であることを踏まえると、始めることの難しさより、続けることの難しさのほうが大きいという現実を示す数字です。
同じ資料によれば、令和7年度の合格者数は45,821人、合格率は18.7%でした。合格判定基準は50問中33問以上(登録講習修了者は45問中28問以上)です。
この二つの数字は、セットで読んでください。合格率18.7%という数字だけを見ると狭き門に見えますが、この母集団には準備が整わないまま受験した層が含まれます。他方、33点という基準は50問中17問を落としても届く水準です。全問正解を目指す試験ではありません。
ただし基準は年により動きます。令和6年度は37点でした。同じ試験で4点の幅があるので、「33点取れれば十分」という前提で設計すると届かない年があります。この幅を見込んだ目標設定をしてください。
だからこそ、始める前に費用と手続と時間を数えておく意味があります。見積もりを持たずに始めると、途中で「思っていたより負担が大きい」と感じて止まります。
独学か講座かの判断軸
費用と自己管理のトレードオフ
学習方法の選択も、始める前の意思決定です。ただしここで重要なのは、どちらが優れているかではなく、自分の条件でどちらが続くかです。
判断軸は主に二つあります。第一に、計画の設計と修正を自分でできるか。独学ではこれを全部自分でやります。第二に、分からない箇所で止まったときに自力で抜け出せるか。法律の学習が初めての場合、条文の読み方そのものでつまずくことがあります。
費用を抑えられるのが独学、設計と質問対応を外部化できるのが講座、という関係です。どちらを選んでも、最後は自分で問題を解いて知識を定着させる工程が残ります。選択そのものが合否を決めるわけではありません。
独学の進め方は宅建試験に独学で合格する方法、講座を選ぶ場合の比較軸は宅建の通信講座の選び方を参照してください。
決めきれないなら期限を切る
判断がつかない場合は、期限を切って試すのが現実的です。テキストを一定範囲まで自分で読んでみて、進められそうかを確かめる。進められないと分かった時点で講座を検討する。
ただし、この判断に時間をかけすぎないでください。試験日は動きません。迷っている期間も残り時間を消費します。
教材をいつ買うか
4月1日基準がすべてを決める
最後の確認事項が教材の購入時期です。ここには明確な基準があります。
機構は試験の内容について「出題の根拠となる法令は、試験を実施する年度の4月1日現在施行されているものです」と案内しています。
つまり、前年度版の教材を使うと、その年の4月1日までに施行された改正が反映されていません。近年は改正が続いており、条文の文言そのものが置き換わった例もあります。たとえば懲役と禁錮の拘禁刑への一本化は2025年6月1日に施行され、宅建業法の欠格事由の文言が「禁錮以上の刑」から「拘禁刑以上の刑」に改まりました。区分所有法の決議要件や不動産登記法の申請義務も2026年4月1日に変わっています。
古い版で覚えた文言が、そのまま誤りの選択肢になるという関係です。改正の中身は宅建試験の全体像の該当節にまとめてあります。
過去問には改正前のものが混ざる
教材の中でも扱いに注意が要るのが過去問です。過去問は出題された当時の法令にもとづいて作られているため、改正があった論点では現行法と結論が食い違うことがあります。
たとえば、改正前の「瑕疵担保責任」は現在の契約不適合責任に置き換わっており、買主が使える権利の構成も期間制限の書き方も変わりました。時効の「中断・停止」は「更新・完成猶予」という用語に改まっています。欠格事由の「禁錮以上の刑」は「拘禁刑以上の刑」です。
古い年度の過去問を解くこと自体は有効ですが、解説が現行法に対応しているかを確認してください。その年度版として市販されている問題集は、改正に合わせて問題文や解説が補訂されているのが通例です。無償で公開されている過去問を単体で使う場合は、この補訂がありません。
早く始めたい場合の考え方
年明けから学習を始めたいが、その年度版の教材がまだ出ていない、という状況は起こります。
判断としては、改正の影響を受けにくい領域から手をつけるのが無難です。民法の基本構造や不動産の基礎知識は、年度をまたいでも大きくは動きません。一方、欠格事由や決議要件のように数字と文言がそのまま答えになる論点は、最新版で確認してから固めたほうが安全です。
いずれにせよ、手元の教材がどの年度に対応した版かを最初に確認する習慣を持ってください。
手続の規定は試験にも出る
学習を始める前の手続の話は、それ自体が試験範囲でもあります。試験・登録・宅建士証に関する規定は宅建業法16条から22条の3までに置かれており、宅建業法の出題対象です。自分が通る手続が、そのまま問われます。
実施主体について、16条1項の主語は都道府県知事です。「国土交通大臣が試験を行う」という記述は誤りになります。実際の事務を指定試験機関が担うことと、法律上の主体が知事であることは別です。
登録の要件について、18条1項は実務経験2年(施行規則13条の15)または同等以上の能力を有すると認められることを求めます。「合格すれば当然に登録できる」は誤りです。
宅建士証の交付について、22条の2第2項の講習は交付の申請前6月以内のもので、合格から1年以内なら不要です。「合格から1年以内でも講習が必要」も「いつでも講習は不要」も誤りになります。
有効期間について、宅建士証は5年(22条の2第3項)です。宅建業の免許の有効期間も5年(3条2項)ですが別の制度なので、主語で判別してください。
合格の取消しという規定も置かれています。17条1項は、都道府県知事は不正の手段によって試験を受け、または受けようとした者に対して合格の決定を取り消し、またはその試験を受けることを禁止することができるとし、3項は情状により3年以内の期間を定めて受験を禁止できるとしています。合格に有効期間の定めはないと述べましたが、それは適法に取得した合格の話です。
つまり、この記事で確認した手続を正確に押さえておくこと自体が、宅建業法の得点につながります。自分が通る手続なので実感を伴って覚えられ、しかも条文がそのまま出題対象になる。始める前の確認が、そのまま最初の学習になるという関係です。科目としての整理は宅建試験の科目別攻略法にあります。
覚え方・整理の仕方
確認の順序を固定する
やることが多く見えますが、順序を固定すれば一度で済みます。
第一に、今年の申込みに間に合うかを確認する。7月の受付期間を押さえ、カレンダーに入れる。第二に、5問免除が使えるかを確認する。宅建業に従事しているなら、従業者証明書と講習日程を確認する。第三に、合格後に登録実務講習が要るかを確認する。実務経験2年に満たないなら要る。第四に、費用の総額を数える。手数料だけで受験から宅建士証まで49,700円。第五に、会社の支援制度を就業規則で確認する。第六に、その年度版の教材を用意する。
この六つは、いずれも一度確認すれば終わります。学習を始めてからでは動かせないものが上に来ているという並びです。
「合格・登録・交付」を動詞で分ける
三段階の混同を防ぐには、それぞれ何をする段階かを動詞で押さえてください。
試験に合格する。ここに有効期間の定めはない。次に知事の登録を受ける。ここで実務経験2年または登録実務講習が要り、手数料37,000円がかかる。最後に宅建士証の交付を受ける。ここで法定講習が要るが合格から1年以内なら不要で、手数料は4,500円。そして5年ごとに更新する。更新の手数料も4,500円。
合格は消えないが、宅建士証は5年で切れる。この対比が、三段階を思い出す起点になります。合格後の全体像は宅建合格後にやることにあります。
数字は「動くもの」と「動かないもの」で分ける
始める前に触れる数字は、性質で二つに分かれます。
動きにくいものは、条文や政令が定める数字です。登録の実務経験2年、宅建士証の有効期間5年、法定講習の申請前6月以内、合格から1年以内、5問免除の3年、そして各手数料の額。これらは改正がない限り変わりません。
動くものは、その年の合格判定基準、統計値、教材や講座の価格、そして試験日程の具体的な日付です。合格判定基準は令和7年度が50問中33問以上でしたが、令和6年度は37点でした。基準は年により動くので、固定の目標点を前提にした設計は危険です。推移は宅建試験の合格ライン予想、受験者データは宅建試験の受験者データにあります。
始める前に決めなくてよいこと
確認事項を挙げてきましたが、逆に始める前に決め込まなくてよいこともあります。ここを取り違えると、準備だけで時間が過ぎます。
科目をどの順で学ぶか、1日何時間やるか、過去問を何周するか。これらは始めてみないと自分に合うかどうか判断できません。最初に立てた計画どおりに進むことはまずないので、粗い見通しを持って走り出し、二週間ほどで実績を見て修正するほうが早く落ち着きます。
テキストをどれにするかも、書店で数ページ読んで決めれば十分です。比較検討に時間をかけるほど得点が上がるという関係にはありません。
この記事で挙げた確認事項が「後から動かせないもの」に限られているのは、そのためです。申込期限、免除の可否、登録に必要な講習、費用、支援制度、教材の年度版。この六つだけ先に固めて、あとは走りながら調整してください。
見積もりを紙に書く
最後に、実務的な助言を一つ。確認した内容を紙に書き出してください。
申込みの締切日。5問免除が使えるか否かと、使えるなら講習の日程。合格後に登録実務講習が要るか否か。手数料の総額と、会社の支援でカバーされる範囲。試験日までの週数と、1週間に確保できる時間。
書き出すと、負担の総量が具体的に見えます。見えていれば、途中で「思っていたより大変だ」と感じて止まる確率が下がります。逆に、見積もりを持たないまま始めると、想定と現実のずれがそのまま挫折の理由になります。続けるための設計は宅建試験の挫折を防ぐ方法にまとめています。
理解度チェッククイズ
問1 宅地建物取引士資格試験を受験するには、宅地建物取引業での実務経験が必要である。
答え:×。受験資格に実務経験の要件はありません。一般財団法人不動産適正取引推進機構は「日本国内に居住する方であれば、年齢、学歴等に関係なく、誰でも受験できます」と案内しています。実務経験2年が必要になるのは受験ではなく登録の段階で、宅地建物取引業法18条1項および同法施行規則13条の15がこれを定めています。実務経験がない場合は登録実務講習を修了することで登録の道が開けます(施行規則13条の16)。受験段階と登録段階の要件を混同しないでください。
問2 登録講習を修了すれば、その後に受験するすべての試験で問46から問50までの免除を受けられる。
答え:×。宅地建物取引業法施行規則10条の14は、登録講習修了者について「登録講習修了試験に合格した日から3年以内に行われる試験について」試験の一部を免除すると定めています。期間の制限があり、しかも起算点は修了証の交付日でも受講日でもなく、修了試験に合格した日です。また登録講習は宅建業に従事している人が対象で、誰でも受けられる講習ではありません。
問3 宅地建物取引士資格試験に合格した者は、合格した日から1年以内に宅地建物取引士証の交付を受けようとする場合、都道府県知事が指定する講習を受講しなければならない。
答え:×。宅地建物取引業法22条の2第2項は、交付を受けようとする者は交付の申請前6月以内に行われる講習を受講しなければならないとしたうえで、ただし書で「試験に合格した日から一年以内に宅地建物取引士証の交付を受けようとする者」等については、この限りでないと定めています。合格から1年以内に手続を終えれば法定講習は不要です。逆に1年を超えると受講が必要になるため、登録実務講習の日程や書類の取り寄せに時間がかかる場合は注意が要ります。
問4 宅地建物取引士資格登録簿への登録の手数料は、地方公共団体の手数料の標準に関する政令において37,000円と定められている。
答え:○。地方公共団体の手数料の標準に関する政令(平成12年政令第16号)は、宅地建物取引士に関する事務の手数料の標準額として、試験の実施が8,200円、宅地建物取引士資格登録簿への登録が37,000円、登録の移転の申請に対する審査が8,000円、宅地建物取引士証の交付の申請に対する審査が4,500円、宅地建物取引士証の有効期間の更新の申請に対する審査が4,500円と定めています。実際の額は各都道府県の手数料条例によりますが、この政令が基準になります。
問5 宅地建物取引士証の有効期間は5年であり、更新の際には改めて法定講習を受ける必要がある。
答え:○。宅地建物取引業法22条の2第3項が宅地建物取引士証の有効期間を5年と定めています。有効期間の更新については22条の3が定めており、更新にあたっては改めて知事が指定する講習を受けます。更新の申請に対する審査の手数料も4,500円が標準額とされています。資格は取得して終わりではなく、5年ごとに費用と時間がかかるという点は、学習を始める前に知っておく価値があります。
まとめ
- 受験資格の壁はほぼありません(日本国内に居住していれば年齢・学歴・実務経験を問わず)。動かせないのは試験日が10月の第3日曜日であることと、申込みが7月で郵送のほうが締切が早いことです。この期間を逃すと次は1年後になるため、学習計画より先にカレンダーへ入れてください。
- 5問免除が使えるかを最初に確認してください。宅建業に従事していれば登録講習の対象になり、修了試験に合格した日から3年以内の試験で問46から問50が免除されます(宅建業法16条3項、同法施行規則10条の14)。使える場合と使えない場合で、扱う範囲そのものが変わります。
合格は終点ではありません。登録には実務経験2年または登録実務講習が必要で(18条1項、施行規則13条の15・13条の16)、宅建士証の交付には申請前6月以内の法定講習が要りますが合格から1年以内なら不要です(22条の2第2項)。手数料は地方公共団体の手数料の標準に関する政令により、受験8,200円、登録37,000円、宅建士証の交付4,500円。受験から交付まで通して49,700円を先に見込んでおいてください。
合格しても登録を受けられない場合があります。18条1項は、宅地建物取引業に係る営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者、拘禁刑以上の刑に処せられ5年を経過しない者などを列挙しています。該当するかどうかは受験前に確認できるので、先に確かめてください。就職を目的にする場合は、専任の宅地建物取引士として数えられるには宅建士証の交付まで必要である点(31条の3第1項)もあわせて押さえておくと、必要な準備の範囲を見誤りません。
確認が済んだら、宅建試験AIブートラボの肢別トレーニングで宅建業法から演習を始められます。
肢別演習と年度別演習で、立てた学習計画をそのまま実行に移せます。間違えた肢だけを繰り返す復習にも対応しています。