工事完了前の物件(未完成物件)こうじかんりょうまえのぶっけん
宅地の造成又は建物の建築に関する工事が完了していない宅地建物のことで、宅地建物取引業法は「工事の完了前」の物件について、広告と契約の時期、手付金等の保全、重要事項説明で特別の決まりを置いています。つまり、まだ形のない物件を買う人が、完成しない危険や思っていた物と違う危険を負わないようにするための区分です。
駅前の更地に「来春完成」の看板が立ち、モデルルームでマンションの販売が始まる。買主が見ているのは図面とパンフレットだけで、建物はまだ地面の下の基礎工事の段階です。このような物件を、宅地建物取引業法は「宅地の造成又は建物の建築に関する工事の完了前」の物件と呼び、未完成物件と言い習わされています。実物がないまま代金の一部を払う買主は、売主が倒産すれば建物もお金も失い、出来上がりが説明と違っても契約の前には確かめられません。そこで法律は、広告と契約を始められる時期、手付金等の保全、出来上がりの姿の説明について、完成した物件より厳しい決まりを置いています。

完成しているかどうかは、売買契約の時に見ます
41条1項は「工事の完了前において行う」売買と定めていて、完成前か後かは売買契約を結んだ時で決まります(国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」41条1項関係)。契約の時に未完成だった物件は、中間金を受け取る時に完成していても、未完成物件として扱います。工事の完了とは、外観の工事が終わっただけでなく、内装などの工事も終わって住める状態をいいます。条文に理由は書いていませんが、契約の時点で買主が負った危険の大きさで扱いを決めるためと考えられます。

処分があるまでは、広告も売買の契約もできません
工事の完了前の物件は、開発許可や建築確認などの処分があった後でなければ、広告をすることも(33条)、売買や交換の契約を結ぶことも(36条)できません。申請をしただけでは足りず、「建築確認申請済」と書いて広告することもできません。処分の後なら、工事の完了前でも広告や契約ができます。どちらの制限も自ら売主の8つの制限ではないので、業者どうしの取引にも、媒介や代理をする業者にも掛かります。
手付金等は、代金の5%を超えれば保全が要ります
業者が自ら売主として未完成物件を売るときは、受け取る手付金等が代金の5%以下で、かつ1,000万円以下でなければ、保全措置を講じた後でなければ受け取れません(41条1項、施行令3条の5)。完成した物件の10%より基準が低いのは、完成しないまま売主が倒れる危険があるからと考えられます。措置の方法も、銀行等の保証か保険会社の保証保険に限られ、指定保管機関による保管は完成した物件にしか使えません(41条の2)。自己の所有に属しない物件は原則として売れませんが、未完成物件でこの保証か保険の措置を講じていれば、売ることができます(33条の2第2号)。

出来上がりの姿は、重要事項説明と37条書面で示します
未完成物件の重要事項説明では、工事の完了時の形状・構造などを、必要なときは図面を交付して説明します(35条1項5号)。契約の後に交付する37条書面では、物件を特定する表示を、重要事項の説明で使った図面などの図書を交付する方法で行います(解釈・運用の考え方37条1項2号関係)。実物を見ずに買うので、説明と書面の図面が、出来上がりを確かめる手がかりになります。
宅地建物取引業法 41条1項(柱書の前半)宅地建物取引業者は、宅地の造成又は建築に関する工事の完了前において行う当該工事に係る宅地又は建物の売買で自ら売主となるものに関しては、次の各号のいずれかに掲げる措置を講じた後でなければ、買主から手付金等…を受領してはならない。
試験ではこう問われる
- 未完成物件の手付金等は、代金の5%以下かつ1,000万円以下なら保全不要。代金5,000万円で手付金200万円は不要、代金4,000万円で手付金300万円は保全が要る
- 保全措置は受領する前に講じる。手付金と中間金を受け取った後に講じても違反。判定は既に受け取った額との合計で行う
- 未完成物件では指定保管機関による保管は使えない。保証の期間は「建築工事の完了まで」では足りず、引渡しまで
- 建築確認の申請中に「建築確認申請済」と表示して広告すれば違反。処分の後なら、工事完了前でも、処分があったことを示して広告できる
- 未完成の建物を37条書面で特定するときは、重要事項の説明で使った図書を交付する方法でよい
- 業者間の取引なら、未完成の建物でも重要事項は説明を省ける。書面の交付は省けない
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