手付金等の保全措置てつけきんとうのほぜんそち
宅地建物取引業者が自ら売主となる売買で、業者でない買主から手付金等を受領する前に講じなければならない、手付金等の返還を確実にするための措置です(41条、41条の2)。つまり、引渡しの前に業者が倒産しても支払ったお金が戻るよう、銀行等の保証や保険などを先に付けさせる決まりです。
建築中のマンションを買う契約をして、手付金と中間金を支払った後に売主の会社が倒産したら、建物は完成せず、支払ったお金も戻らないおそれがあります。そこで宅地建物取引業法は、業者が自ら売主となる売買では、手付金等の返還を銀行などに保証させる措置を講じた後でなければ、買主から手付金等を受領してはならないと定めました。手付金等とは、手付金や中間金など名義を問わず代金に充当される金銭で、契約の締結の日以後、物件の引渡し前に支払われるものをいいます。受領する額が小さいときと、買主に所有権の登記が移ったときは、措置は要りません。買主が業者なら適用されません(78条2項)。

未完成は5%、完成は10%、どちらも1,000万円が線です
工事完了前の物件では、受領しようとする手付金等の額が代金の額の5%以下、かつ1,000万円以下なら、保全措置は要りません(41条1項ただし書、施行令3条の5)。工事完了後の物件では、代金の額の10%以下、かつ1,000万円以下なら不要です(41条の2第1項ただし書)。割合と1,000万円のどちらかを超えれば措置が必要で、そのときは超えた部分だけでなく手付金等の全額について講じます。代金3,000万円なら、工事完了前は150万円、完了後は300万円が境目です。条文に理由は書いていませんが、未完成の物件は完成しないまま終わる危険があるので、基準を厳しくしていると考えられます。工事が完了しているかどうかは売買契約の時で判断するので、契約の時に未完成だった物件は、中間金を受け取る時に完成していても5%で判定します。

措置は受領の前に講じ、既に受け取った額と合算します
41条1項は、措置を「講じた後でなければ」受領してはならないと定めています。受領してから速やかに講じるのでは遅く、措置を講じないことを買主に告げても省けません。判定する額は、受領しようとする額に、既に受領した手付金等の額を加えた額です。代金4,000万円の工事完了前の物件で手付金200万円を受領するときは5%ちょうどなので不要ですが、次に中間金200万円を受領する前には、合計400万円について措置を講じなければなりません。業者が必要な措置を講じないときは、買主は手付金等を支払わないことができます(41条4項、41条の2第5項)。

未完成は保証か保険、完成はそれに加えて保管も使えます
工事完了前の物件の措置は二つです。銀行等が手付金等の返還債務を連帯して保証する保証委託契約と、保険事業者が損害をうめる保証保険契約で、どちらも保証を約する書面や保険証券を買主に交付して初めて措置を講じたことになります(41条1項)。保証や保険の期間は、少なくとも物件の引渡しまでを覆うものでなければなりません(同2項・3項)。工事完了後の物件では、この二つのほか、指定保管機関が手付金等を業者に代わって受領して保管する手付金等寄託契約と、買主との質権設定契約を組み合わせる方法も使えます(41条の2第1項)。指定保管機関による保管は、工事完了前の物件には使えません。書面の交付は、買主の承諾を得れば電磁的方法による措置に代えることができます(41条5項、41条の2第6項)。
買主に所有権の登記が移れば、措置は要りません
買主への所有権移転の登記がされたとき、又は買主が所有権の登記をしたときは、保全措置は不要です(41条1項ただし書、41条の2第1項ただし書)。条文に理由は書いていませんが、登記を得た買主は、業者が倒産しても物件を確保できるためと考えられます。引渡しと同時に支払う残代金は「引渡し前に支払われるもの」ではないので、そもそも手付金等に当たりません。
宅地建物取引業法 41条1項(柱書)宅地建物取引業者は、宅地の造成又は建築に関する工事の完了前において行う当該工事に係る宅地又は建物の売買で自ら売主となるものに関しては、次の各号のいずれかに掲げる措置を講じた後でなければ、買主から手付金等(代金の全部又は一部として授受される金銭及び手付金その他の名義をもつて授受される金銭で代金に充当されるものであつて、契約の締結の日以後当該宅地又は建物の引渡し前に支払われるものをいう。以下同じ。)を受領してはならない。ただし、当該宅地若しくは建物について買主への所有権移転の登記がされたとき、買主が所有権の登記をしたとき、又は当該宅地建物取引業者が受領しようとする手付金等の額(既に受領した手付金等があるときは、その額を加えた額)が代金の額の百分の五以下であり、かつ、宅地建物取引業者の取引の実情及びその取引の相手方の利益の保護を考慮して政令で定める額以下であるときは、この限りでない。
試験ではこう問われる
- 工事完了前は代金の5%以下かつ1,000万円以下、完了後は10%以下かつ1,000万円以下なら不要。代金5,000万円の未完成物件で手付金200万円は不要、代金4,000万円の完成物件で手付金400万円も不要
- 措置は受領する前に講じる。「受領した後に速やかに講じる」「講じないことを書面で告げれば不要」は誤り
- 既に受領した手付金等と合算して判定する。合計が基準を超えるときは、合計額について措置を講じた後でなければ中間金を受領できない
- 工事の完了前か後かは売買契約の時で判断する。契約時に未完成なら、完成後に受領する中間金も5%で判定する
- 指定保管機関による保管が使えるのは完成物件だけ。保証・保険の期間は少なくとも引渡しまでで、「建築工事の完了まで」では足りない
- 保証を約する書面や保険証券を買主に交付して初めて措置になる。電磁的方法に代えるには買主の承諾が要る
- 必要な措置が講じられないときは、買主は手付金等の支払を拒める。保全措置の概要は重要事項説明の対象で、37条書面の記載事項ではない
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