事務所等(クーリング・オフができない場所)じむしょとう
宅地建物取引業者の事務所と、施行規則16条の5が定める場所をまとめた呼び名で、ここで買受けの申込みをした買主はクーリング・オフができません(37条の2第1項)。つまり、買主が落ち着いて判断できると法律が見ている場所の一覧です。
クーリング・オフの条文は、使える場所を書かずに、使えない場所を「事務所等」として先に決めています。業者の事務所、売主から頼まれて販売する業者の事務所、分譲地のモデルハウスに置かれた案内所などがそれで、ここで申し込んだ買主は撤回できません。逆に、喫茶店、ホテルのロビー、仮設テントの案内所、業者が押しかけた自宅で申し込んだ買主は撤回できます。事務所等の中身は37条の2第1項が「事務所」を挙げ、残りを施行規則16条の5が並べています。

事務所等の中心は、専任の取引士を置くべき場所です
施行規則16条の5第1号は、事務所以外で継続的に業務を行うことができる施設、一団の宅地建物の分譲を行う案内所などを挙げ、そのうち31条の3第1項で専任の宅地建物取引士を置くべきものに限っています。専任の取引士を置くべき場所とは、契約を締結し、又は契約の申込みを受ける場所です(施行規則15条の5の2)。条文に理由は書いていませんが、取引士が常にいて、腰を据えて契約の話ができる場所なら、買主は冷静に判断できると考えられるためです。申込みも受けない単なる案内だけの場所は、専任の取引士を置く場所ではないので、事務所等に当たりません。
案内所は、土地に定着する建物内のものに限られます
一団の宅地建物の分譲を行う案内所が事務所等になるのは、土地に定着する建物内に設けられるものに限られます(施行規則16条の5第1号ロ)。マンションの現地に建てたモデルルームや分譲地の建物内の案内所は事務所等で、仮設テント張りの案内所は事務所等に当たりません。テントのように一時的で移動が容易な場所は、その場の雰囲気で申し込んでしまいやすいからと考えられます。テント張りの案内所に掲げる標識には、クーリング・オフ制度の適用がある旨を表示します(50条1項、施行規則19条)。

売主から依頼を受けた業者の事務所や案内所も含まれます
売主である業者が他の業者に売却の代理や媒介を依頼したときは、依頼を受けた業者の事務所、継続的に業務を行う施設、分譲の代理・媒介のために設けた案内所も、事務所等に当たります(施行規則16条の5第1号ハ・ニ)。買主から見れば、どちらの業者の店で申し込んでも、取引のプロが構える落ち着いた場所であることに変わりがないためと考えられます。ただし、ここでも専任の取引士を置くべき場所であることが前提で、媒介業者の案内所も土地に定着する建物内のものに限られます。
自宅や勤務先は、買主が自ら申し出たときだけ事務所等です
買主が自宅又は勤務する場所で売買契約に関する説明を受けると自分から申し出た場合は、その自宅や勤務先が事務所等になります(施行規則16条の5第2号)。自分で選んだ慣れた場所なら、押し切られる心配が小さいからと考えられます。業者の側から自宅へ伺うと申し出た場合は事務所等に当たらず、そこで申し込んだ買主は撤回できます。買主が自分から指定しても、喫茶店、ホテルのロビー、取引先の銀行は自宅でも勤務先でもないので、事務所等に当たりません。どの場合も、見るのは買受けの申込みをした場所で、契約を締結した場所ではありません。

宅地建物取引業法施行規則 16条の5(抜粋)法第三十七条の二第一項の国土交通省令・内閣府令で定める場所は、次に掲げるものとする。一 次に掲げる場所のうち、法第三十一条の三第一項の規定により同項に規定する宅地建物取引士を置くべきもの … 二 当該宅地建物取引業者の相手方がその自宅又は勤務する場所において宅地又は建物の売買契約に関する説明を受ける旨を申し出た場合にあつては、その相手方の自宅又は勤務する場所
試験ではこう問われる
- 売主業者の事務所で申し込めば撤回できない。売主から媒介を依頼された業者の事務所で申し込んだ場合も同じで、申込みの日から8日以内に書面を出しても撤回できない
- 土地に定着する建物内に設けた一団の分譲の案内所は事務所等。仮設テント張りの案内所は事務所等に当たらず、そこで申し込んだ買主は撤回できる
- 専任の取引士を置くべき案内所で申し込み、後日喫茶店で契約した買主は撤回できない。喫茶店で申し込み、後日事務所で契約した買主は撤回できる
- 買主が自らの申出により勤務する会社の事務所で申し込めば撤回できない。業者の申出で買主の自宅や勤務先に出向いた場合は撤回できる
- 買主が自ら申し出ても、喫茶店や融資を受ける銀行は事務所等に当たらず、撤回できる
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