善良な管理者の注意ぜんりょうなかんりしゃのちゅうい
その人の職業や地位、契約の内容に照らして、一般に求められる程度の注意のことで、善管注意とも呼ばれます。受任者(民法644条)、特定物を引き渡す債務者(400条)、留置権者(298条)、配偶者居住権を持つ配偶者(1032条)などが負い、自己の財産に対するのと同一の注意より重い注意です。
人の物を預かったり、人の用事を引き受けたりした人は、どこまで気を付ければよいのでしょうか。自分の物なら多少雑に扱っても自分が損をするだけですが、他人の物ではそうはいきません。民法は多くの場面で、他人の物や事務を扱う人に「善良な管理者の注意」を求めています。その立場にある普通の人なら当然払う注意、という意味で、本人が不注意な性格かどうかは関係なく、外から見て決まる基準です。これより軽い「自己の財産に対するのと同一の注意」で足りる場面もあり、民法は両者を使い分けています。

善管注意は、その立場の人に一般に求められる注意です
善良な管理者の注意は、注意を払う人の能力ではなく、同じ職業や地位にある人に一般に期待される水準で決まります。不動産の管理を引き受けた会社なら管理会社として普通払う注意、物を預かった人なら預かった物を保管する人として普通払う注意です。特定物の引渡しの債務者については、契約その他の債権の発生原因と取引上の社会通念に照らして定まると、基準の決め方まで条文に書かれています(400条)。この注意を怠って相手に損害を与えれば、債務不履行として賠償の責任を負います。
受任者は、報酬がなくても善管注意を負います
受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負います(644条)。委任は特約がなければ報酬を請求できない契約ですが(648条1項)、無報酬でも注意の程度は軽くなりません。条文に理由は書いていませんが、他人を信頼して用事を任せる契約なので、引き受けた以上は無償でも責任をもって処理させる趣旨と考えられます。義務なく他人の事務を始めた事務管理の管理者も、最も本人の利益に適合する方法で管理する義務を負い(697条1項)、受任者と同じ程度の注意を負うと解されています。

自分の物と同じ注意で足りる場面もあります
無報酬で物を預かった受寄者は、自己の財産に対するのと同一の注意で保管すれば足ります(659条)。自分の物と同じ程度に扱えば責任を問われない、善管注意より軽い注意です。急迫の危害を免れさせるために事務管理をした管理者は、悪意又は重大な過失がなければ損害賠償の責任を負わず(698条)、さらに責任が軽くなります。
民法 644条受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。
試験ではこう問われる
- 受任者は、報酬の有無にかかわらず善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する。「自己の財産に対するのと同一の注意」で足りるとするのは誤り
- 緊急事務管理の管理者は、悪意又は重大な過失がなければ損害賠償の責任を負わない。「善良な管理者の注意をもって修理しなければならない」は誤り
- 配偶者居住権を持つ配偶者は、従前の用法に従い善良な管理者の注意をもって居住建物を使用・収益する
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