不当利得ふとうりとく
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者が、その利益を返還する義務を負う制度です(民法703条)。つまり、受け取る理由のない利益は、損をした人に返すという決まりです。
賃借人が、同じ月の賃料を誤って二度振り込みました。賃貸人は1か月分を余計に受け取りましたが、それを受け取る理由はありません。賃借人は、余計に払った分を返すよう請求できます。契約に基づく請求でも、不法行為に基づく請求でもなく、理由のない利益の移動そのものを元に戻すのが不当利得です。利益を受けた側を受益者といい、受け取る理由がないことを知っていたかどうかで、返す範囲が変わります。

善意の受益者は残っている利益を、悪意の受益者は利息も返します
法律上の原因がないことを知らずに利益を受けた善意の受益者は、その利益の存する限度で返還すれば足ります(703条)。受け取った利益のうち、今も手元に残っている分を返せばよいということです。法律上の原因がないことを知っていた悪意の受益者は、受けた利益に利息を付けて返還しなければならず、それでも損害があれば賠償の責任も負います(704条)。知らなかった人に重い負担をかけず、知っていた人には損失をすべて埋めさせるという区別です。
返還債務は、請求を受けた時から遅滞になります
不当利得の返還債務には、いつまでに返すという期限がありません。期限を定めなかった債務は、債務者が履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負います(412条3項)。善意の受益者は、返還を請求された時から遅延損害金を負担することになります。不法行為による損害賠償債務が、請求を待たずに損害の発生と同時に遅滞になるのとは扱いが異なります。

対価を払って得た利益は、法律上の原因のない利益ではありません
建物の賃借人から修理を請け負った業者が、賃借人が無資力になって代金を回収できなくなったとします。修理で建物の価値が上がり、得をしたのは所有者である賃貸人です。判例は、業者が所有者に不当利得の返還を請求できるのは、賃貸借契約を全体としてみて、所有者が対価関係なしにその利益を受けたときに限られるとしています。権利金を受け取らない代わりに修理費用を賃借人の負担とする特約があったなら、所有者は権利金をあきらめるという対価を払っているので、業者は請求できません。
民法 703条法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
試験ではこう問われる
- 善意の受益者は、不当利得の返還債務について、履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う
- 善意の受益者は利益の存する限度で返還し、悪意の受益者は受けた利益に利息を付けて返還する
- 賃借人から建物の修理を請け負った者は、所有者が対価関係なしに利益を受けたときに限り、所有者に不当利得の返還を請求できる。権利金を支払わない代わりに修理費用を賃借人の負担とする特約があり、修理費用と権利金が相応していたときは請求できない
- 賃借人との請負契約に基づいて修理をした者は、契約上の義務として修理をしたのであって、義務なく他人の事務を管理したのではないので、所有者に対して事務管理に基づく費用の支払を求めることはできない(697条)
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