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取消し・解除・時効と登記とりけしかいじょじこうととうき

権利関係 民法(物権・抵当権)

契約の取消しや解除、取得時効によって不動産の所有権が動くときに、その不動産を別に取得した第三者との優劣を登記で決めるかどうかという問題です。第三者が取消し・解除・時効完成の前に現れたか後に現れたかで扱いが分かれ、後に現れた第三者とは登記の先後で決まります。

AさんがBさんに土地を売って登記も移し、Bさんがその土地をCさんに転売したとします。その後、AさんがBさんとの契約を詐欺を理由に取り消したり、代金の不払を理由に解除したりすると、土地はAさんに戻るのか、Cさんのものになるのかが争いになります。他人の土地を長年占有して時効取得した人と、その土地を元の所有者から買った人との間でも、同じ争いが起こります。この争いは、第三者が現れたのが取消し・解除・時効完成の前か後かで場合を分けて考えます。後に現れた第三者との関係は、二重譲渡と同じように登記の先後で決まります。

第三者が現れたのが前か後かで分け、後なら登記の先後で決まる。
第三者が現れたのが前か後かで分け、後なら登記の先後で決まる。

取消しや解除の後の第三者とは、登記の先後で決まります

取消しや解除をすると、いったんBに移った所有権がAに戻ります。その後にBがCへ売ると、Bを起点にしてAへ戻る動きとCへ移る動きが並ぶので、二重譲渡と同じ対抗関係になります。解除の後に現れた第三者について、判例は、Aは登記をしなければ所有権が戻ったことを対抗できないとしています。取消しの後に現れた第三者についても、取消しの原因が詐欺でも強迫でも、同じように先に登記を備えた方が優先すると解されています。Cが取消しや解除を知っていたかどうかも、背信的悪意者に当たらない限り関係がありません。取り消したり解除したりした者は、すぐに登記を自分に戻しておかなければ、後から現れた第三者に優先されることがあります。

取消し前の第三者は、取消しの原因で結論が変わります

取消し前にBから買ったCとの関係は、登記の先後ではなく、取消しを第三者に対抗できるかを定めた条文で決まります。詐欺による取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができません(96条3項)。条文に理由は書いていませんが、だまされたAにも落ち度があるので、事情を知らず、知らないことに過失もないCを優先させたものと考えられます。強迫による取消しにはこのような規定がなく、Aは善意無過失のCにも取消しを対抗して土地を取り戻せます。錯誤による取消しは、詐欺と同じく、善意でかつ過失がない第三者に対抗できません(95条4項)。

詐欺の取消しは善意無過失の第三者に対抗できず、強迫の取消しは対抗できる。
詐欺の取消しは善意無過失の第三者に対抗できず、強迫の取消しは対抗できる。

解除前の第三者は、登記を備えていれば保護されます

契約を解除すると、当事者は互いに相手方を原状に復させる義務を負いますが、第三者の権利を害することはできません(545条1項ただし書)。解除前にBから買ったCは、この第三者として守られます。解除の原因になる代金の不払などをCが知っていたかどうかは問われません。ただし判例は、Cが保護されるには登記を備えていることが必要としています。結局、解除では、Cが現れたのが前でも後でも、Cは登記を備えていればAに所有権を主張できます。

時効は、完成の前に現れたか後に現れたかで分けます

Bが他人の土地を占有して取得時効が完成する前に、元の所有者Aからその土地を買ったCは、時効が完成した時の所有者です。BとCは時効によって権利を得る者と失う者という当事者の関係に立つので、Bは登記がなくても時効取得をCに対抗できます。時効が完成した後にAから買ったCとの関係は、Aを起点とする二重譲渡と同じ対抗関係になり、Bは登記がなければ、先に登記を備えたCに対抗できません。もっとも、Cが登記を備えた時からBがさらに時効取得に必要な期間の占有を続ければ、Bは登記がなくてもCに対抗できます。時効完成後に設定された抵当権も、設定登記の後にBが引き続き必要な期間の占有を続ければ、特段の事情がない限り消滅します。これらはいずれも判例が示した扱いです。

時効完成前の買主には登記なしで対抗でき、完成後の買主とは登記の先後で決まる。
時効完成前の買主には登記なしで対抗でき、完成後の買主とは登記の先後で決まる。
民法 545条1項

当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。

試験ではこう問われる

  1. 詐欺による取消しの後に買い受けて登記を備えた第三者に対しては、背信的悪意者でない限り、登記がなければ返還を請求できない
  2. 詐欺による取消しの前に買い受けた第三者は、善意無過失なら保護される。詐欺を知っていた第三者には、取り消して返還を請求できる
  3. 強迫による取消しは、取消し前に現れた善意無過失の第三者にも対抗できる
  4. 解除の前に現れた第三者も、後に現れた第三者も、登記を備えれば元の売主に所有権を主張できる
  5. 時効完成の前に譲り受けて登記を備えた者に対しては、登記がなくても時効取得を対抗できる
  6. 時効完成の後に譲り受けて登記を備えた者には対抗できないが、その登記の日からさらに時効取得に必要な期間占有を続ければ、登記がなくても対抗できる
  7. 時効完成後に設定登記がされた抵当権は、その後引き続き時効取得に必要な期間占有を続ければ、特段の事情がない限り消滅する
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