占有せんゆう
自己のためにする意思をもって物を所持することをいい、これによって占有権を取得します(民法180条)。つまり、所有者かどうかとは別に、物を現に支配しているという事実そのものを法律が保護する仕組みです。
家に住んでいる、畑を耕している、車を乗り回している。このように、自分のために物を現に支配している状態を占有といいます。民法は、自己のためにする意思をもって物を所持することによって占有権を取得すると定めています(180条)。所有者はもちろん、借りて住んでいる賃借人も占有者で、所有権があるかどうかとは別に、支配しているという事実そのものが保護されます。占有は、長く続けば取得時効で所有権を得る土台になり、奪われれば占有の訴えで取り戻すことができます。

人に貸していても、借主を通じて占有が続きます
占有権は、代理人によって取得することができます(181条)。土地や建物を人に貸して引き渡すと、現に使っているのは借主ですが、貸主も借主を通じて占有していることになり、これを代理占有(間接占有)といいます。だから、他人の土地を自分の物として占有している人がその土地を誰かに賃貸しても、占有は途切れず、取得時効に必要な占有の期間は進み続けます。
占有は相続や売買で引き継がれ、前の占有も併せて主張できます
占有者が亡くなると、特別の事情がない限り、被相続人の占有は当然に相続人に移るというのが判例で、相続人が相続の開始を知っているかどうかは問われないと解されています。占有を引き継いだ者(承継人)は、自分の占有だけを主張することも、前の占有者の占有を併せて主張することもできます(187条1項)。父が17年、相続した子が3年占有していれば、子は合わせて20年の占有を主張できます。ただし、併せて主張するときは、前の占有者の瑕疵(悪意や過失があったことなど)も引き継ぎます(同条2項)。占有を併せて主張するときの善意・無過失は、最初の占有者が占有を始めた時点で判定するというのが判例です。

占有を奪われたら、占有回収の訴えで取り戻せます
占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還と損害の賠償を請求できます(200条1項)。訴えは、占有を奪われた時から1年以内に提起しなければなりません(201条3項)。奪われたとは、占有者の意思に反して所持を失うことをいい、だまされたとはいえ自分の意思で引き渡した場合は当たらないと解されています。占有を奪った者から物を譲り受けた特定承継人に対しては、その者が侵奪の事実を知っていたときに限り、訴えを提起できます(200条2項)。占有を妨害されたときは占有保持の訴え、妨害されるおそれがあるときは占有保全の訴えが用意されています。

訴えで占有を回復すれば、占有は続いていたものと扱われます
占有権は、占有者が占有物の所持を失うと消滅しますが、占有回収の訴えを提起したときは消滅しません(203条)。判例は、占有を奪われても、占有回収の訴えに勝って現実に占有を回復したときは、奪われていた間も占有が続いていたものと扱っています。取得時効の完成前に土地を奪われた占有者も、この訴えで占有を回復すれば、奪われていた期間を時効の期間に算入できます。
民法 200条占有者がその占有を奪われたときは、占有回収の訴えにより、その物の返還及び損害の賠償を請求することができる。 占有回収の訴えは、占有を侵奪した者の特定承継人に対して提起することができない。ただし、その承継人が侵奪の事実を知っていたときは、この限りでない。
試験ではこう問われる
- 占有している土地を他人に賃貸して引き渡しても、借主を通じた占有が続き、取得時効は妨げられない
- 占有を奪われても、占有回収の訴えで占有を回復すれば、奪われていた期間も時効期間に算入される
- だまされて任意に占有を移した場合は、占有を奪われたことにならず、占有回収の訴えで返還を請求できない
- 借主が貸主の立入りを拒んでも、貸主の間接占有が侵奪されたことにはならず、貸主は占有回収の訴えを起こせない
- 相続人は、相続の開始を知らなくても、被相続人の占有を相続開始の時に承継する
- 占有の承継人は前の占有者の占有を併せて主張でき、善意・無過失は最初の占有者の占有開始の時で判定する
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