建替え決議たてかえけつぎ
集会において、区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、その敷地などに新たに建物を建築する旨を決める決議です(区分所有法62条1項)。つまり、古くなったマンションを壊して建て直すことを、全員の同意がなくても多数決で決められるようにした仕組みです。
築50年を超え、配管は傷み、耐震性も足りないマンションを、壊して建て直したいという話が持ち上がったとします。区分所有者は一人ひとりが自分の住戸の所有権を持っているので、本来は全員が同意しなければ建物を取り壊せません。しかし何十戸、何百戸もあるマンションで全員の同意を取るのは現実には難しく、一人の反対で危険な建物が残り続けることになります。そこで区分所有法は、5分の4以上という重い多数決で建替えを決められるようにしました。建替えに参加しない人の住戸と敷地利用権は、参加する側が時価で買い取ります。

建替えは、区分所有者全体の5分の4以上で決めます
建替え決議は、集会において、区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数でします(62条1項)。規約の変更や共用部分の変更が出席者の中の多数で決まるのと違い、欠席した人も含めた全体の5分の4以上が必要です。分母から外れるのは、裁判で所在等不明とされた区分所有者など、議決権を有しない者だけです。地震や火災に対する安全性が法務大臣の定める基準に適合していない建物、外壁などが剝離し落下して周辺に危害を生ずるおそれがある建物などでは、5分の4が4分の3に下がります(62条2項)。この引下げは、令和8年4月1日施行の改正で設けられました。危険な建物ほど早く建て替えられるようにするためです。

集会の2月前までに通知し、1月前までに説明会を開きます
建替え決議を会議の目的とする集会を招集するときは、招集の通知を、会日より少なくとも2月前に発しなければなりません(62条6項)。ふつうの集会の1週間前と比べて長いのは、住まいを建て直すかどうかという重い判断に、十分な時間を与えるためです。この期間は、規約で伸長することができます。通知には、建物の建替えを必要とする理由、建替えをしない場合に建物の効用の維持又は回復に要する費用の額と内訳、修繕の計画の内容、修繕積立金として積み立てられている金額も示します(62条7項)。集会を招集した者は、会日より少なくとも1月前までに、これらの事項について説明会を開催しなければなりません(62条8項)。決議では、新たに建築する建物の設計の概要、費用の概算額、費用の分担、新しい建物の区分所有権の帰属を定めます(62条4項)。
賛成しなかった人には、時価での売渡しを請求できます
建替え決議があったときは、集会を招集した者は、遅滞なく、決議に賛成しなかった区分所有者に対し、建替えに参加するか否かを回答すべき旨を書面で催告しなければなりません(63条1項)。催告とは、返事をするよう求めることです。催告を受けた区分所有者は2月以内に回答しなければならず、回答しなかったときは、参加しない旨を回答したものとみなされます(63条3項・4項)。この期間が経過すると、賛成した区分所有者などは、期間の満了の日から2月以内に、参加しない区分所有者に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができます(63条5項)。反対した人は、建替えに付き合わされるかわりに、住戸を時価のお金に換えて出ていくことになります。

建て直さずに、売却や取壊しを決めることもできます
令和8年4月1日施行の改正で、建替えのほかに四つの決議が区分所有法に加わりました。建物の骨組みを残したまま共用部分と全ての専有部分を造り直す建物更新決議、建物と敷地を売る建物敷地売却決議、建物を取り壊して敷地を売る建物取壊し敷地売却決議、建物を取り壊す取壊し決議です(64条の5から64条の8まで)。改正の前は、これらを多数決で決める定めが区分所有法になく、区分所有者全員の同意が必要でした。どれも建替え決議と同じく区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数が必要で、敷地を売る二つの決議では、敷地利用権の持分の価格の5分の4以上も必要です。耐震性の不足などの事由があるときに4分の3に下がること、賛成しなかった人への売渡し請求の仕組みも、建替え決議と同じです。
建物の区分所有等に関する法律 62条1項集会においては、区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という。)をすることができる。
試験ではこう問われる
- 建替え決議は、区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数でする(62条1項)。出席した者の中ではなく、議決権を有しない者を除いた全体で数える
- 耐震性の不足など62条2項各号の事由がある建物では、各4分の3以上の多数で足りる
- 建替え決議を会議の目的とする集会の招集の通知は、会日より少なくとも2月前に発する。この期間は規約で伸長することができる(62条6項)。会日より少なくとも1月前までに説明会を開催する(62条8項)
- 集会を招集した者は、決議に賛成しなかった区分所有者に、建替えに参加するか否かを回答すべき旨を書面で催告する。2月以内に回答しなかった者は、参加しない旨を回答したものとみなす(63条1項・3項・4項)
- 建替えに参加する区分所有者などは、参加しない区分所有者に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる(63条5項)
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