他人物売買たにんぶつばいばい
他人の権利を売買の目的とする契約で、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負います(民法561条)。つまり、他人の物を売る契約も契約としては有効で、売主が所有者から手に入れて買主に渡す責任を負います。
Aが、父親の名義になっている土地を「近いうちに譲り受けるから」と言って、Cに売る契約を結びました。土地はまだ父親のものですが、AとCの売買契約は無効になりません。Aは、父親から土地を取得してCに移転する義務を負い、果たせなければ債務不履行の責任を負います。もっとも、契約が有効であることと、買主が所有権を取得することは別の話です。所有者である父親が手放さない限り、Cは土地の所有者になれません。

契約は有効でも、所有権はすぐには買主に移りません
売買契約は売主と買主の約束なので、他人の物についても約束はできます。しかし、売主は自分が持っていない所有権を買主に移すことはできません。買主が売主を所有者だと信じ、そう信じたことに過失がない、つまり善意無過失であっても、契約をした時に所有権を取得することはありません。判例は、売主が後で所有者から所有権を取得したときは、特段の約定がない限り、売主が取得すると同時に買主に移転するとしています。契約の時にさかのぼって移転するわけではありません。

移転できなければ、買主は解除と損害賠償を求められます
売主が所有者から権利を取得できず、買主に移転できないときは、売主の債務不履行になります。買主は、債務不履行の一般の規定に従って契約を解除でき、売主に責めに帰すべき事由があれば損害賠償も請求できます。現行の民法に、買主が他人の物であることを知っていたかどうかで区別する規定はありません。他人の物と知っていた悪意の買主も、解除と損害賠償の請求ができます。権利の一部だけが他人に属していて移転できないときは、契約不適合責任の規定によって、追完や代金の減額も請求できます(565条)。
民法 561条他人の権利(権利の一部が他人に属する場合におけるその権利の一部を含む。)を売買の目的としたときは、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負う。
試験ではこう問われる
- 他人の物を目的とする売買契約も有効に成立する。売買の時に目的物が売主の父親の所有物であっても、契約は有効
- 買主が売主の無権利について善意無過失でも、売買契約が成立した時に所有権を取得するわけではない
- 売主が後に所有者から目的物を取得したときは、その取得の時に買主に所有権が移転する。買主が購入した時点にさかのぼらない
- 売主が所有権を取得して移転することができないとき、買主は、他人の物と知っていても契約を解除できる
- 売主の責めに帰すべき事由で移転できないときは、他人の物と知っていた買主も損害賠償を請求できる
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