無権代理むけんだいり
代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約のことで、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じません(113条1項)。つまり、勝手に代理人を名乗って結ばれた契約は、本人が認めない限り本人を縛りません。
息子が、父に無断で「父の代理人です」と名乗り、父の土地を買主に売る契約を結んでしまった。父は息子に代理権を与えていません。このように、代理権を持たない人が代理人としてした契約を無権代理といいます。父(本人)は何も頼んでいないので、この契約の効果は父に生じません(113条1項)。ただし、父が「その売買でよい」と認めれば、契約は有効になります。この認めることを追認といいます。

本人は、追認することも拒絶することもできます
本人が追認すると、別段の意思表示がない限り、契約の時にさかのぼって効力を生じます(116条本文)。初めから代理権があったのと同じ扱いになるわけです。ただし、さかのぼることで第三者の権利を害することはできません(116条ただし書)。本人が追認を拒絶すると、契約の効力が本人に及ばないことが確定します。いったん拒絶した後は、本人であっても、あらためて追認して有効にすることはできません。

相手方には、催告・取消し・責任の追及が認められます
本人が態度を決めない間、相手方は宙ぶらりんになります。そこで相手方は、本人に対し、相当の期間を定めて追認するかどうかの確答を求める催告ができ、期間内に確答がなければ追認を拒絶したものとみなされます(114条)。代理権がないことを知らなかった相手方は、本人が追認しない間は、契約を取り消すこともできます(115条)。無権代理人に対しては、履行又は損害賠償の責任を追及できます(117条1項)。ただし、代理権がないことを相手方が知っていたとき、過失によって知らなかったとき(無権代理人が自分に代理権がないことを知っていたときを除きます)、無権代理人が行為能力の制限を受けていたときは、この責任を追及できません(117条2項)。本人が代理権を与えたと表示していた場合など、本人の側に原因があり、相手方が代理権がないことを過失なく知らなかったときは、本人が契約の責任を負うこともあります(109条、110条、112条の表見代理)。
無権代理人が本人を相続すると、追認を拒絶できません
無権代理をした息子が、その後に亡くなった父(本人)を一人で相続した場合です。本人の地位を引き継いだ息子は、本人として追認を拒絶できそうに見えます。しかし、自分で契約しておきながら拒絶するのは信義に反するので、本人が自ら売ったのと同じ効果が生じます(判例)。ただし、父が生前に追認を拒絶していたときは、効力が及ばないことがすでに確定しているので、その後に息子が相続しても契約は有効になりません(判例)。

本人が無権代理人を相続しても、当然には有効になりません
逆に、無権代理をした息子が先に亡くなり、父(本人)が息子を相続した場合です。父は自分では何もしていないので、追認を拒絶しても信義に反しません。そのため、相続したというだけで契約が当然に有効になることはありません(判例)。誰が誰を相続したかで結論が分かれるのは、追認を拒絶することが、自分のした行為と矛盾するかどうかが違うからです。
民法 113条1項・116条(113条1項)代理権を有しない者が他人の代理人としてした契約は、本人がその追認をしなければ、本人に対してその効力を生じない。 (116条)追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
試験ではこう問われる
- 無権代理行為の追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼって効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない(116条)
- 本人が追認を拒絶した後は、本人であっても追認によって有効な行為とすることはできない
- 無権代理人が本人を単独で相続した場合、本人が自ら売却したのと同様の法律上の効果が生じる(判例)
- 本人が追認を拒絶した後に無権代理人が本人を相続しても、無権代理行為は有効にならない。追認拒絶の前に相続した場合とは法律効果が異なる(判例)
- 本人が無権代理人を相続した場合、無権代理行為は、その相続により当然には有効とならない(判例)
- 代理権を与えられた者が後見開始の審判を受けた後にした契約は、代理権が消滅しているので無権代理行為となる(111条1項2号)
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